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  • 特開2017215252-物標検出方法、及び、レーダ装置 図000008
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-215252(P2017-215252A)
(43)【公開日】2017年12月7日
(54)【発明の名称】物標検出方法、及び、レーダ装置
(51)【国際特許分類】
   G01S 13/34 20060101AFI20171110BHJP
   G01S 13/93 20060101ALI20171110BHJP
【FI】
   G01S13/34
   G01S13/93 220
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-110317(P2016-110317)
(22)【出願日】2016年6月1日
(71)【出願人】
【識別番号】000237592
【氏名又は名称】富士通テン株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100549
【弁理士】
【氏名又は名称】川口 嘉之
(74)【代理人】
【識別番号】100106622
【弁理士】
【氏名又は名称】和久田 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100113608
【弁理士】
【氏名又は名称】平川 明
(74)【代理人】
【識別番号】100085006
【弁理士】
【氏名又は名称】世良 和信
(72)【発明者】
【氏名】森 昭太
(72)【発明者】
【氏名】西尾 大介
(72)【発明者】
【氏名】駒井 翔
(72)【発明者】
【氏名】松永 康孝
(72)【発明者】
【氏名】木下 大輔
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 浩二
【テーマコード(参考)】
5J070
【Fターム(参考)】
5J070AB19
5J070AC02
5J070AC06
5J070AD08
5J070AF03
5J070AH14
5J070AH35
5J070AK32
(57)【要約】
【課題】ミスペアリングを抑制する。
【解決手段】アップチャープ期間の周波数スペクトルのピークとダウンチャープ期間の周波数スペクトルのピークとのペアから物標を検出するレーダ装置の物標検出方法であって、レーダ装置が、検出された前記物標までの距離の時間微分値と前記ピークから求められる前記物標の前記レーダ装置に対する相対速度との差とが所定値以上であり、車体の側面の反射による不適切なペアが発生しやすい条件を満たす場合、当該ペアによる物標が不要物標であると判定する、物標検出方法である。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アップチャープ期間の周波数スペクトルのピークとダウンチャープ期間の周波数スペクトルのピークとのペアから物標を検出するレーダ装置の物標検出方法であって、
前記レーダ装置が、検出された前記物標までの距離の時間微分値と前記ピークから求められる前記物標の前記レーダ装置に対する相対速度との差とが所定値以上であり、車体の側面の反射による不適切なペアが発生しやすい条件を満たす場合、当該ペアによる物標が不要物標であると判定する、
物標検出方法。
【請求項2】
前記条件は、
前記レーダ装置が搭載される装置の移動速度が所定値以上であり、前記物標が移動物であると判定されることを含む、
請求項1に記載の物標検出方法。
【請求項3】
前記条件は、
前記物標の前記レーダ装置に対する前記相対速度が、所定の範囲内であることを含む、請求項1または2に記載の物標検出方法。
【請求項4】
前記条件は、
検出された物標の前記アップチャープ期間または前記ダウンチャープ期間の前記周波数スペクトルの前記ピークの予測された出現位置と実際の出現位置との差が所定値以上であること、及び、
検出された物標のアップチャープ期間とダウンチャープ期間のピークのペア信頼度をあらわすペア信頼性判定値が所定値以上であること、
のうち少なくとも1つを含む、
請求項1から3のいずれか1項に記載の物標検出方法。
【請求項5】
前記条件は、
検出された物標が、連続性の判定において、静止物と判定された物標と連続性のある物標であることを含む、
請求項1から4のいずれか1項に記載の物標検出方法。
【請求項6】
アップチャープ期間の周波数スペクトルのピークとダウンチャープ期間の周波数スペクトルのピークとのペアから物標を検出するレーダ装置であって、
検出された前記物標までの距離の時間微分値と前記ピークから求められる前記物標の前記レーダ装置に対する相対速度との差とが所定値以上であり、車体の側面の反射による不適切なペアが発生しやすい条件を満たす場合、当該ペアによる物標が不要物標であると判定する演算部を
備えるレーダ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物標検出方法、及び、レーダ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、交通事故の防止等のために、周囲の車両までの距離や当該車両との相対速度を計測するレーダ装置が車両に搭載されている。レーダ装置の1つの方式として、FM−CW(Frequency Modulated Continuous Wave)方式がある。FM−CW方式のレーダ装置は
、三角波で周波数変調した送信波を送信し、車両等の物標で反射された反射波を受信し、送信信号と受信信号とをミキシングして得られるビート信号に基づいて、物標までの距離や物標との相対速度を求めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−149325号公報
【特許文献2】特開2010−175256号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
FM−CW方式のレーダ装置において、三角波で周波数変調された送信信号は、周波数の上昇下降を繰り返す。送信信号のうち、送信信号の周波数が時間とともに上昇する期間をアップチャープ期間、送信信号の周波数が時間とともに下降する期間をダウンチャープ期間という。レーダ装置は、アップチャープ期間のビート信号とダウンチャープ期間のビート信号とに対して、それぞれ、高速フーリエ変換(FFT:Fast Fourier Transfer)
を行い、周波数スペクトルを得る。各期間の周波数スペクトルにおいて、1つの物標に対して1つの周波数ピークが現れる。レーダ装置は、アップチャープ期間の周波数スペクトルのピークの周波数と、ダウンチャープ期間の周波数スペクトルのピークの周波数とのペアに基づいて、物標までの距離や物標との相対速度を求めることができる。複数の物標が存在すると、各期間の周波数スペクトルには、複数のピークが現れる。このとき、ピークの誤った組み合わせでペアを作る(ミスペアリングする)と、レーダ装置は、実際には存在しない物標を認識し、実際に存在する物標を認識しないことがあるため、物標の誤認識の原因であるミスペアリングを避けることが求められる。
【0005】
また、側面に複数の反射点がある車両、特に、トラック等の車長が長い(例えば10m以上)車両をレーダが捉えた場合、車両の側面の反射点でミスペアリングを起こし、接近する物標が存在するとレーダ装置が誤認識することがある。
【0006】
本発明は、ミスペアリングを抑制する物標検出方法、レーダ装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、以下の手段を採用する。
即ち、第1の態様は、
アップチャープ期間の周波数スペクトルのピークとダウンチャープ期間の周波数スペクトルのピークとのペアから物標を検出するレーダ装置の物標検出方法であって、
レーダ装置が、検出された前記物標までの距離の時間微分値と前記ピークから求められる前記物標の前記レーダ装置に対する相対速度との差とが所定値以上であり、車体の側面の反射による不適切なペアが発生しやすい条件を満たす場合、当該ペアによる物標が不要
物標であると判定する、
物標検出方法とする。
【0008】
開示の態様は、プログラムが情報処理装置によって実行されることによって実現されてもよい。即ち、開示の構成は、上記した態様における各手段が実行する処理を、情報処理装置に対して実行させるためのプログラム、或いは当該プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体として特定することができる。また、開示の構成は、上記した各手段が実行する処理を情報処理装置が実行する方法をもって特定されてもよい。開示の構成は、上記した各手段が実行する処理を行う情報処理装置を含むシステムとして特定されてもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ミスペアリングを抑制する物標検出方法、レーダ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本実施形態に係るレーダ装置の構成例を示す図である。
図2図2は、送信信号、受信信号、ミキシング後の信号の時間変化の例を示す図である。
図3図3は、レーダ装置1による物標検出処理の全体の動作フローの例を示す図である。
図4図4は、ミスペアリング検出の動作フローの例を示す図である。
図5図5は、距離の時間微分値と、対象物標の相対速度の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して実施形態について説明する。実施形態の構成は例示であり、発明の構成は、開示の実施形態の具体的構成に限定されない。発明の実施にあたって、実施形態に応じた具体的構成が適宜採用されてもよい。
【0012】
(構成例)
図1は、本実施形態に係るレーダ装置の構成例を示す図である。本実施形態に係るレーダ装置1は、車両に搭載され、他の車両、標識、ガードレール等、車両の周囲に存在する物標を検知することに用いることができる。物標の検知結果は、車両の記憶装置やECU(Electrical Control Unit)2等に対して出力され、例えばPCS(Pre-crash Safety System)などの車両制御に用いることができる。但し、本実施形態に係るレーダ装置1は、車載レーダ装置以外の各種用途(例えば、飛行中の航空機や航行中の船舶の監視等)に用いられてもよい。
【0013】
レーダ装置1は、送信アンテナ7、発振器8、信号生成部9を備える。また、レーダ装置1は、等間隔に配置された受信アンテナ3(ch1−4)、各受信アンテナ3に各々繋がるミキサ4(ch1−4)、各ミキサ4に各々繋がるAD(Analog to Digital)変換
器5(ch1−4)、各AD変換器5のデータを処理する信号処理装置15を備える。ここでは、受信アンテナ3、ミキサ4、AD変換器5の個数を4個ずつとしているが、これらの個数は、4個ずつに限定されるものではない。
【0014】
なお、レーダ装置1は、受信アンテナ毎に専用の受信回路を設けてもよいが、全受信アンテナによる受信信号をまとめて受信する受信回路を設けてもよい。この場合、時分割で受信回路が対応する受信アンテナを順次切り替える制御が必要となるが、レーダ装置1の回路構成をコンパクトにできる。
【0015】
レーダ装置1は、信号生成部9で送信波STを生成して、発振器8で変調し、送信アンテナ7を介して送信する。レーダ装置1は、受信アンテナ3を介して、車両等の物標からの反射波を受信波SRとして受信する。ミキサ4(ch1−4)は、受信波SRと送信波STとをミキシングし、ビート信号SBを得る。FM−CWの場合、送信波STと受信波SRとの周波数差が物標とレーダ装置との距離に対して線形に増減するため、この周波数差が距離の変動成分となる。また、送信波STが物標で反射した際に受信波SRが物標の速度による影響を受け、物標とレーダ装置1との相対速度に対して線形にパルス間の周波数の差が増減するため、このパルス間の周波数差によるビート信号SBの変動成分が速度の変動成分となる。なお、相対速度や距離の異なる物標が複数存在する場合、各受信アンテナ3にはフェーズシフト量やドップラシフト量の異なる反射波が複数受信され、各ミキサ4(ch1−4)から得られるビート信号SBには各物標に対応した様々な成分が含まれることになる。
【0016】
AD変換器5(ch1−4)は、各ミキサ4(ch1−4)からビート信号SBを得て、アナログ信号であるビート信号SBを所定の周波数でサンプリングしてデジタル信号に変換する。
【0017】
信号処理装置15は、コンピュータプログラムに従って信号の演算処理を行うプロセッサ6や、演算処理に係る情報を記憶するメモリ16を備えたコンピュータである。メモリ16は、コンピュータプログラムや設定値を記憶する補助記憶部や、演算処理に用いる情報を一時的に記憶する主記憶部など、複数のメモリから構成されてもよい。信号処理装置15は、車両から電力が供給されるとプロセッサ6がコンピュータプログラムを実行し、送信制御部10やフーリエ変換部11、ピーク抽出部12、演算部13といった機能部を実現する。例えば、送信制御部10は、予め設定されたパラメータに基づいて送信信号を生成して出力させるように信号生成部9を制御する。フーリエ変換部11は、複数の物標からの反射波が重なり合った状態で受信信号SRとして受信されるため、この受信信号SRに基づいて生成されたビート信号SBから、各物標の反射波に基づく周波数成分を分離する処理(例えば、FFT(Fast Fourier Transfer)処理)を行う。FFT処理では、
所定の周波数間隔(ステップ)で設定された周波数ポイント(周波数BINという場合がある)ごとに受信レベルや位相情報が算出される。例えば、周波数BINの数は、1024である。ピーク抽出部12は、フーリエ変換部11によるFFT処理等の結果からピークを検出する。また、ピーク抽出部12は、各物標との距離に応じたピークが生じた周波数ビンを検出する。受信信号SRから生成されたビート信号SBを取得しピークを検出する処理は、受信アンテナ3で受信された受信信号SRから生成されたビート信号のそれぞれについて実行される。演算部13は、ピークの履歴の抽出、静止物のピークの抽出、方位演算処理、ピークのペアリング処理、ピークの連続性判定処理、移動物判定処理、フィルタ処理、上下方物処理、次回予測処理、不要物除去処理などの物標検出処理を行い、物標までの距離、物標の方向、物標の相対速度等を求める。
【0018】
信号処理装置15は、例えばMCU(Micro Controller Unit)として構成されるが、
これに限定されるものではなく、送信制御部10やフーリエ変換部11、ピーク抽出部12、演算部13の機能を実現できるものであれば、どのような構成を採用してもよい。また、送信制御部10やフーリエ変換部11、ピーク抽出部12、演算部13は、プロセッサ6がメモリ16と協働してコンピュータプログラムを実行することによって実現される機能部であるが、説明の便宜上、図1ではプロセッサ6内に各機能部を図示している。なお、これらの機能部は、汎用のプロセッサ6がコンピュータプログラム(ソフトウェア)に基づいて実現する構成に限定されず、例えば、プロセッサ6の内部あるいは外部に配置された専用の演算回路(ハードウェア)によってその全部または一部が実現される構成であってもよい。メモリ16には、計算で使用される計算式や値、計算結果、各種フラグ、カウンタ、過去に検出された物標の情報等が格納される。信号処理装置15は、レーダ装
置1から独立したコンピュータであってもよい。このとき、信号処理装置15は、受信信号等のデータをレーダ装置1から受信する。
【0019】
〈ミスペアリング〉
FM−CW方式のレーダ装置1は、三角波で周波数変調した送信波を送信する。送信波は、車両等の物標に到達し、反射される。レーダ装置1は、物標で反射された反射波を受信する。レーダ装置1は、送信波(送信信号)と受信した受信波(受信信号)とをミキサ4でミキシングして、ビート信号を得る。レーダ装置は、得られたビート信号に基づいて、物標までの距離や物標との相対速度を求めることができる。
【0020】
図2は、送信信号、受信信号、ミキシング後の信号の時間変化の例を示す図である。レーダ装置は、周波数f0に対して周波数変調幅Δf、周期Tの三角波の周波数変調をかけ
て送信信号として、送信する。送信信号の周波数が時間とともに上昇する期間をアップチャープ期間、送信信号の周波数が時間とともに下降する期間をダウンチャープ期間という。レーダ装置から距離Lの位置にあり、レーダ装置との相対速度Vで移動する物標に送達した送信信号は、物標で反射される。受信信号は、物標までの距離がLであることから、送信信号の送信時刻から時間2L/Cだけ遅れて受信される。また、受信信号の周波数は、ドップラー効果により、送信信号の周波数に対して、2f0V/Cだけシフトする。ド
ップラシフト量は、相対速度に依存する。ここで、Cは光速である。送信信号と受信信号とをミキシングすると、次のように、2つのビート信号(周波数fH、fL)が得られる。
【数1】
【0021】
この2つのビート信号から、次のように、距離Lと相対速度Vを求めることができる。
【数2】
距離や相対速度は、周波数BINを単位として表わされることがある。周波数BINは、FFTの際の周波数の1つのステップである。1周波数BIN当たりの周波数ステップ幅をX[Hz/周波数BIN]とすると、距離Lや相対速度は、周波数BINを単位として、次のように表される。
【数3】
ここで、1周波数BINあたりの距離は(CT)/(8ΔfL)であり、1周波数BINあたりの相対速度はC/(4f0)である。
【0022】
ビート信号の周波数(fL、fH)は、アップチャープ期間及びダウンチャープ期間において、それぞれ、FFTを行った結果の周波数スペクトルのピークとして求められる。物標が1つである場合、アップチャープ期間(または、ダウンチャープ期間)の周波数スペクトルのピークは、原則として、1つである。一方、物標が複数存在する場合、アップチャープ期間(または、ダウンチャープ期間)の周波数スペクトルのピークは、原則として、物標毎に現れることになる。物標までの距離や物標との相対速度を求めるには、アップチャープ期間のピークと、ダウンチャープ期間のピークとが必要となる。アップチャープ期間におけるピークとダウンチャープ期間におけるピークの組み合わせ(ペアリング)は、ピークの大きさや方向等から判定されるが、想定外の反射等が発生し、異なる物標からの反射に基づくピーク同士をペアリングすることがある。間違えてピークのペアリングをする(ミスペアリングする)と、実際には存在しない物標を認識し、実際に存在する物標を認識しないことがある。ミスペアリングによる物標は、早めに除去されることが望ましい。
【0023】
(動作例)
〈全体〉
図3は、レーダ装置1による物標検出処理の全体の動作フローの例を示す図である。図2の動作フローは、レーダ装置1を搭載する車両からレーダ装置1に電力が供給された場合にプロセッサ6が実行する動作フローである。プロセッサ6は、車両の駆動源が作動状態、例えば、駆動源が内燃機関であればイグニッションスイッチがオンになった場合、ハイブリッドシステムやEV(Electric Vehicle)システムであればシステム電源がオンになった場合、図3の動作フローが開始される。当該動作フローは、送信信号のアップチャープとダウンチャープとによる1周期毎に実行される。
【0024】
S101では、レーダ装置1のプロセッサ6は、レーダ装置1の要求仕様に目的の検知速度範囲や速度分解能、検知距離範囲等に応じて予め定めたパラメータに従って送信信号STを出力させるように、送信制御部10に、信号生成部9へ送信信号STの生成及び出力を指示させる。送信制御部10は、信号生成部9へ送信信号STの生成及び出力を指示する。信号生成部9は、指示に基づいて送信信号STを生成する。
【0025】
当該指示に基づいて生成された送信信号STが発振器8を介して送信アンテナ7から送信され、物標で反射された反射波が受信信号SRとして受信アンテナ3で受信されると、ミキサ4で送信信号STと受信信号SRとからビート信号SBが生成され、AD変換器5(ch1−4)がビート信号SBをA/D変換する。
【0026】
S102では、プロセッサ6のフーリエ変換部11は、AD変換器5(ch1−4)で、A/D変換された信号を取得し、アップチャープ期間及びダウンチャープ期間のそれぞれに対して、FFT(Fast Fourier Transform)処理する。
【0027】
S103では、プロセッサ6のピーク抽出部12は、S102の処理結果から、アップチャープ期間及びダウンチャープ期間のそれぞれで、ピーク(の周波数ビン)を検出する。
【0028】
S104では、プロセッサ6の演算部13は、物標で反射された反射波を受信アンテナ3で受信した受信信号SRまたは受信信号SRに基づく信号に基づいて、周波数スペクトルのピークのペアリングをし、物標までの距離、物標の方向、物標との相対速度の推定を含む物標検出処理演算をする。演算部13は、物標の検出結果を、記憶装置(メモリ16等)やECU2等に対して出力する。物標の検知結果には、物標までの距離や物標の方向が含まれる。
【0029】
〈ミスペアリング検出処理〉
ここでは、図3の動作フローのS104の物標検出処理におけるミスペアリング検出処理について説明する。ここでは、主に、周波数のピークのペアリングされた各ペアに対して、車長が長い車両の側面を起因とするミスペアリングを検出する。ミスペアリングの検出は、物標検出処理の不要物除去処理で行われる。
【0030】
図4は、ミスペアリング検出の動作フローの例を示す図である。前提として、アップチャープ期間及びダウンチャープ期間のピークのペアリングがされているとする。ペアリングによる各ペアは、それぞれ物標に対応する。ペアリングによって、各ピークの位置(周波数)から物標までの距離、物標との相対速度が算出され得る。各ペアは、過去に検出された物標に対応するか否かを判定されている。過去に検出された物標には、識別子が割り当てられている。過去に検出された物標は、移動物であるか否かを判定されている。移動物であると判定された物標に対しては、移動物フラグがONにされている。移動物でない物標は、静止物である。静止物の物標に対しては、移動物フラグがOFFにされている。過去に移動物であると判定された物標に対しては、過去移動物フラグがONにされている。過去移動物フラグは、自車速が15km/hであるときに移動物フラグがONである場合にONにされ、対応する物標が消失するまで、ON状態が継続される。各種フラグや各種カウンタは、メモリ16に格納される。
【0031】
S201では、演算部13は、ミスペアリング検出対象のペアの物標(対象物標ともいう)が移動物であるか否かを判定する処理(第1処理)を行う。演算部13は、対象物標の過去移動物フラグがONであるか否かを判定する。また、演算部13は、レーダ装置1が搭載される車両の速度(自車速)が15km/h以上であるか否かを判定する。演算部13は、過去移動物フラグがONであり、かつ、自車速が15km/h以上である場合、第1判定フラグをONにする。自車速は、車両に搭載される車速センサ等により取得される。
【0032】
S202では、演算部13は、車長が長い車両を起因とするミスペアリングを検出する処理(第2処理)を行う。車長の長い車両の側面で発生するミスペアリングは、相対速度の範囲が限定されている。よって、演算部13は、対象物標の相対速度が、車長の長い車両によるミスペアリング発生時の相対速度の範囲に入っているか否かを判定する。演算部13は、対象物標の相対速度が、−9.32m/s以上、−3.26m/s以下であるか否かを判定する。演算部13は、対象物標の相対速度が当該範囲である場合、第2判定フラグをONにする。対象物標の相対速度が当該範囲外である場合には、車長が長い車両を起因とするミスペアリングは、発生しないと考えられる。ここでは、1周波数BINは、相対速度にして0.466m/sに相当する。
【0033】
S203では、演算部13は、今回の距離と前回の距離及び相対速度に基づく予測距離
との比較処理(第3処理)を行う。演算部13は、対象物標の今回のアップチャープ期間(及びダウンチャープ期間)のピークの周波数BINと、対象物標の前回の距離、相対速度から求められる予測のピークの周波数BINとの差分を算出する。予測の周波数BINは次のように求められる。
【数4】
ここで、fH2及びfL2は、それぞれ、ダウンチャープ期間及びアップチャープ期間の予測の周波数BINである。また、L1は対象物標の前回の距離であり、V1は対象物標の前回の相対速度である。予測の周波数BINは、あらかじめ求められていてもよい。以後、記載される具体的な周波数BINの差等の値は、周波数BINの数やXなどに依存して、異なる値を取ることもある。
【0034】
演算部13は、対象物標の(アップチャープ期間における今回のピークの周波数BIN)と(アップチャープ期間における予測のピークの周波数BIN)の差の絶対値が、3.5BIN超であるか否かを判定する(判定3−1)。また、演算部13は、検出された物標の(ダウンチャープ期間における今回のピークの周波数BIN)と(ダウンチャープ期間における予測のピークの周波数BIN)の差の絶対値が、3.5BIN超であるか否かを判定する(判定3−2)。演算部13は、判定3−1または判定3−2を満たす場合、第3判定フラグをONにする。予測の周波数BINと、今回の周波数BINとの差が大きい場合、ミスペアリングが発生している可能性がある。
【0035】
また、演算部13は、対象物標について、判定3−1及び判定3−2がともに満たされた場合、すなわち(アップチャープ期間における今回のピークの周波数BIN)と(アップチャープ期間における予測のピークの周波数BIN)との差の絶対値が、3.5BIN以下(判定3−3)、かつ、(ダウンチャープ期間における今回のピークの周波数BIN)と(ダウンチャープ期間における予測のピークの周波数BIN)の差の絶対値が、3.5BIN以下(判定3−4)である場合には、対象物標のアップチャープ期間における今回のピークとダウンチャープ期間における今回のピークとの間のペア信頼性判定値が30超であるか否かを判定する(判定3−5)。ペア信頼性判定値は、ペアリングのペアの信頼性を示す指標であり、値が小さいほど、ペアの信頼性が高いと考えられる。ペア信頼性判定値は、例えば、ペアを構成するピーク同士のマハラノビス距離(それぞれのピークが持つパラメータ(強度、周波数など)間の相関を表す統計量として演算される値)である。マハラノビス距離が例えば30以下であれば、ペアの信頼度が高いとみなされる。演算部13は、判定3−3、判定3−4、及び、判定3−5を満たす場合、第3判定フラグをONにする。今回の周波数BINと予測の周波数BINとの差が小さい場合であっても、ペア信頼性判定値が大きい場合には、ミスペアリングが発生している可能性がある。
【0036】
さらに、演算部13は、対象物標が、連続性の判定において、静止物と連続性のある物標と判定されたか否かを判定する。トラック等の車長が長い車両では、車体側面の前後方向に複数の反射点が存在する。そして、複数の反射点のうち近接する2つの反射点からのピーク同士がペアリングされて1つの物標として検知される可能性がある。その場合でも2つの反射点が近接しているので、実際の反射点の距離や相対速度と、検出された物標の
距離や相対速度との間に大きな誤差はない。しかし、レーダ装置と対象車両との移動に伴って相対的な位置関係が変化していくと、はじめ近接していた2つの反射点がそれぞれ移動していき、距離が離れていくことがある。2つの反射点の距離が離れると、離れた位置にある2つの反射点のピークをペアリングして1つの物標として検出している状態となり、実際の反射点の位置や相対速度と検出物標の位置や相対速度との誤差が大きくなる。そして、車長が長い車両側面などの大きく離れた2つの反射点からのピーク同士がペアリングされた場合は、あたかも静止物として検知されることがある。そこで、演算部13は、対象物標が静止物として検知された物標と連続性のある物標であるか否かを判定する。言い換えれば、はじめ移動物として検知されていた対象物標が、ある時点であたかも静止物であるかのように検知されたか否かを判定する。
【0037】
なお、静止物か否かは、移動物フラグがOFFであるか否かで判定され得る。演算部13は、対処物標が、静止物と連続性のある物標と判定された場合、第3判定フラグをONにする。上述したように、静止物と連続性のある物標は、車長が長い車両側面の複数の反射点からのピークによるミスペアリングが発生している可能性がある。
【0038】
第1判定フラグ、第2判定フラグ、第3判定フラグが、ONであることは、車両の側面の反射によるミスペアリングが起こり易いことを示している。各判定フラグをONにする条件は、それぞれ、車両の側面の反射によるミスペアリング(不適切なペア)が発生しやすい条件である。これらの条件を満たすとき、車長の長い車両の側面を送信信号の反射点が先端から後端にかけて移動している可能性がある。
【0039】
S204では、演算部13は、対象物標の相対速度(今回のペアから求められる相対速度)と、今回の対象物標の位置と前回の対象物標の位置とから求める距離の時間微分値とを比較する処理(第4処理)を行う。当該距離の時間微分値は、相対速度に相当する。当該距離の時間微分値は、次のように求められる。
【数5】
ペアから求められる相対速度と、今回の距離と前回の距離との差に基づいて求められる距離の時間微分値とが異なるとき、ミスペアリングが発生している可能性がある。
【0040】
演算部13は、(距離の時間微分値)−(対象物標の相対速度)が、−5.48m/s以下であり、第1判定フラグがONであり、第2判定フラグがONであり、第3判定フラグがONである場合、第1処理カウンタをインクリメントする(カウンタ値に+1を加算する)。演算部13は、これらのうちの、いずれかの条件を満たさない場合、第1処理カウンタの値を維持する。なお、第1処理カウンタの初期値は、0である。
【0041】
図5は、距離の時間微分値と、対象物標の相対速度の例を示す図である。図5では、レーダ装置が搭載された車両と、物標である先行車とが示されている。図5の左側では、アップチャープ期間とダウンチャープ期間のピークから求めた、レーダ装置搭載車両と先行車との距離は10mであり、先行車の相対速度は−2.7m/sである。また、図5の右側は、図5の右側の0.05秒後の例を示している。図5の右側では、アップチャープ期間とダウンチャープ期間のピークから求めた、レーダ装置搭載車両と先行車との距離は9.841mであり、先行車の相対速度は−8.3m/sである。一方、前の先行車の位置と、後の先行車の位置と、前と後との時間差から求めた距離の時間微分値は、−3.18m/sであり、相対速度−8.3m/sと大きくずれている。これは、ミスペアリングが
発生していると可能性があると考えられる。
【0042】
S205では、演算部13は、相対速度の方向と物標の移動方向とを比較する処理(第5処理)を行う。当該処理は、ミスペアリングが継続しているか否かを判定する処理である。演算部13は、(アップチャープ期間における予測のピークの周波数BIN)−(アップチャープ期間における今回のピークの周波数BIN)が、−1.5BIN未満であるか否かを判定する(判定5−1)。また、演算部13は、(ダウンチャープ期間における予測のピークの周波数BIN)−(ダウンチャープ期間における今回のピークの周波数BIN)が、−1.5BIN未満であるか否かを判定する(判定5−2)。演算部13は、判定5−1を満たし、判定5−2を満たし、第1判定フラグがONであり、第2判定フラグがONであり、第3判定フラグがONである場合、第2処理カウンタをインクリメントする(カウンタ値に+1を加算する)。演算部13は、これらのうちの、いずれかの条件を満たさない場合、第2処理カウンタの値を0にする。
【0043】
S206では、演算部13は、対象物標のペアにミスペアリングが発生しているか否かを判定する。演算部13は、第1処理カウンタが2以上であり、第2処理カウンタが3以上である場合、(すなわち、第4処理の判定が連続して2回、真であり、かつ第5処理の判定が連続して3回、真である場合)ミスペア物標フラグをONにする。演算部13は、ミスペア物標フラグがONである場合、対象物標のペアにミスペアリングが発生している(対象物標のペアが不適切なペアである)と、判定している。即ち、不適切なペアによる対象物標が不要物標であると判定される。ミスペア物標フラグがONである場合、後段の処理において、対象物標のペアのペアリングが解消される。
【0044】
なお、演算部13は、第3処理において、対象物標が、判定3−3及び判定3−4を満たし、判定3−5を満たさない場合、第1処理カウンタ、第2処理カウンタをともに0にするようにしてもよい。今回の周波数BINと予測の周波数BINとの差が小さく、ペア信頼性判定値が30以下である場合は、ミスペアリングが発生していないと考えられるためである。
【0045】
S207では、演算部13は、ミスペアリング判定の解除判定を行う。演算部13は、ペアの信頼性が連続して高くなった場合には、ミスペアリングが発生していないと判定して、所定のフラグの初期化を行う。演算部13は、マハラノビス距離が30以下である場合、ミスペア解除カウンタをインクリメントする(カウンタ値に+1を加算する)。演算部13は、マハラノビス距離が30超である場合、ミスペア解除カウンタの値を0にする。また、演算部13は、ミスペア解除カウンタが6以上である場合(すなわち、6回連続してミスペアリングが発生していないと判定した場合)、第1判定フラグをOFFにし、第1処理カウンタを0にし、第2処理カウンタを0にし、ミスペア物標フラグをOFFにする。
【0046】
これにより、1つの対象物標のペアの、車長の長い車両の側面の反射によるミスペアリングの発生の有無を判定することができる。他の物標に対しても、同様に判定される。また、以後の時刻においても、FFT演算、ペアリング処理等の後に、ミスペアリングの発生の有無が判定される。
【0047】
(実施形態の作用、効果)
FM−CW方式のレーダ装置1は、アップチャープ期間の周波数ピークとダウンチャープ期間の周波数ピークのペアリングにおいて、車両の側面の反射によるミスペアリングを検出する。レーダ装置1は、自車速、相対速度、予測の周波数BINと計測された周波数BINとの差分、ペアの信頼度、相対速度と距離の時間微分値との差分等に基づいて、車両の側面の反射によるミスペアリングを検出する。レーダ装置1は、周波数ピークのペア
のミスペアリングが発生を検出することで、物標検出の精度を向上させることができる。レーダ装置1は、特に、長い車両が走行している車線に合流するような場合に生じるミスペアリングを精度よく検出することができる。
【0048】
本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において変更したり組み合わせたりすることができる。
【0049】
〈コンピュータ読み取り可能な記録媒体〉
コンピュータその他の機械、装置(以下、コンピュータ等)に上記いずれかの機能を実現させるプログラムをコンピュータ等が読み取り可能な記録媒体に記録することができる。そして、コンピュータ等に、この記録媒体のプログラムを読み込ませて実行させることにより、その機能を提供させることができる。
【0050】
ここで、コンピュータ等が読み取り可能な記録媒体とは、データやプログラム等の情報を電気的、磁気的、光学的、機械的、または化学的作用によって蓄積し、コンピュータ等から読み取ることができる記録媒体をいう。このような記録媒体内には、CPU、メモリ等のコンピュータを構成する要素を設け、そのCPUにプログラムを実行させてもよい。
【0051】
また、このような記録媒体のうちコンピュータ等から取り外し可能なものとしては、例えばフレキシブルディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、CD−R/W、DVD、DAT、8mmテープ、メモリカード等がある。
【0052】
また、コンピュータ等に固定された記録媒体としてハードディスクやROM等がある。
【符号の説明】
【0053】
1 レーダ装置
2 ECU
3 受信アンテナ
4 ミキサ
5 A/D変換器
6 プロセッサ
7 送信アンテナ
8 発信器
9 信号生成部
10 送信制御部
11 フーリエ変換部
12 ピーク抽出部
13 演算部
15 信号処理装置
16 メモリ
図1
図2
図3
図4
図5