【課題】低温定着性と光沢性及び耐ホットオフセット性を両立しつつ、トナーの流動性、耐熱保存性、帯電安定性、粉砕性、画像強度、耐折り曲げ性及びドキュメントオフセット性のすべてを満足する優れたトナーバインダー及びトナーを提供することを目的とする。
【解決手段】構成原料が、カルボン酸成分(x)、アルコール成分(y)及び数平均分子量が500〜3,000のカルボジイミド化合物(a)であり、N−アシルウレア結合を有する変性ポリエステル樹脂(A)を含有するトナーバインダーであって、(A)が有するN−アシルウレア基の濃度がトナーバインダーの重量に基づいて0.14〜1.50ミリモル/gであり、−20℃〜80℃の温度範囲にガラス転移温度(Tg)を少なくとも1個有すること特徴とするトナーバインダー。
構成原料が、カルボン酸成分(x)、アルコール成分(y)及び数平均分子量が500〜3,000のカルボジイミド化合物(a)であり、N−アシルウレア結合を有する変性ポリエステル樹脂(A)を含有するトナーバインダーであって、(A)が有するN−アシルウレア基の濃度がトナーバインダーの重量に基づいて0.14〜1.50ミリモル/gであり、−20℃〜80℃の温度範囲にガラス転移温度(Tg)を少なくとも1個有すること特徴とするトナーバインダー。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のトナーバインダーは、構成原料が、カルボン酸成分(x)、アルコール成分(y)及び数平均分子量が500〜3,000のカルボジイミド化合物(a)であり、N−アシルウレア結合を有する変性ポリエステル樹脂(A)を含有するトナーバインダーであって、(A)が有するN−アシルウレア基の濃度がトナーバインダーの重量に基づいて0.14〜1.50ミリモル/gであり、−20℃〜80℃の温度範囲にガラス転移温度(Tg)を少なくとも1個有すること特徴とする。
【0014】
本発明のN−アシルウレア基は、カルボキシル基とカルボジイミド基が下記の化学式(1)で示される反応で得られるN−アシルウレア基のことである。
【0016】
化学式(1)中、R
1は樹脂(A)又は樹脂(B)からカルボキシル基を除いた残基を表し、R
2とR
3はカルボジイミド化合物(D2)からカルボジイミド基を除いた残基を表す。
【0017】
(A)が有するN−アシルウレア基の濃度(ミリモル/g)は、単位質量あたりのトナーバインダーに含まれる、(A)の構造中に存在するN−アシルウレア結合の数である。本発明のN−アシルウレア基はカルボキシル基とカルボジイミド基が反応したときに得られるN−アシルウレア基のことである。
そして、本発明のトナーバインダーは示差走査熱量測定(DSC)により得られるチャートの−20℃〜80℃の温度範囲に、ガラス転移温度(Tg)を少なくとも1個有する。本発明のトナーバインダーはTgを2個以上有していてもよい。
【0018】
本発明のトナーバインダーには変性ポリエステル樹脂(A)を必須成分として含有するが、カルボン酸成分(x)とアルコール成分(y)とカルボジイミド化合物(a)とを構成原料とすれば、その樹脂の組成は特に限定されない。
また、変性ポリエステル樹脂(A)は単独で含有してもいいし、条件を満足する2種以上の変性ポリエステル樹脂(A)の組み合わせでもいいし、更に、後述する別のポリエステル樹脂(B)との併用でもよく、低温定着性と光沢性及び耐ホットオフセット性を両立し易い点で別のポリエステル樹脂(B)との併用が好ましい。
【0019】
カルボン酸成分(x)としては、ジカルボン酸(x1)、3価以上のポリカルボン酸(x2)が挙げられる。
【0020】
ジカルボン酸(x1)としては、炭素数2〜50のアルカンジカルボン酸(シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、レパルギン酸及びセバシン酸等)、炭素数4〜50のアルケンジカルボン酸(ドデセニルコハク酸等のアルケニルコハク酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸、イタコン酸及びグルタコン酸等)、炭素数8〜36の芳香族ジカルボン酸(フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸及びナフタレンジカルボン酸等)、不飽和カルボン酸のビニル重合体[数平均分子量(以下Mnと記載、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による):450〜10,000](α−オレフィン/マレイン酸共重合体等)等が挙げられる。
【0021】
3価以上の価数のポリカルボン酸(x2)としては、炭素数9〜20の芳香族ポリカルボン酸(トリメリット酸及びピロメリット酸等)、炭素数6〜36の脂肪族トリカルボン酸(ヘキサントリカルボン酸等)、不飽和カルボン酸のビニル重合体[Mn:450〜10,000](スチレン/マレイン酸共重合体、スチレン/アクリル酸共重合体、及びスチレン/フマル酸共重合体等)等が挙げられる。
カルボン酸成分(x)として、これらのカルボン酸の無水物、低級アルキル(炭素数1〜4)エステル(メチルエステル、エチルエステル及びイソプロピルエステル等)を用いてもよいし、これらのカルボン酸と併用してもよい。
【0022】
これらのカルボン酸成分(x)のうち、低温定着性と耐ホットオフセット性の両立の観点から好ましいものは、炭素数2〜50のアルカンジカルボン酸、炭素数4〜50のアルケンジカルボン酸、炭素数8〜20の芳香族ジカルボン酸、及び炭素数9〜20の芳香族ポリカルボン酸である。
【0023】
保存安定性の観点から更に好ましくは、アジピン酸、炭素数16〜50のアルケニルコハク酸、テレフタル酸、イソフタル酸、マレイン酸、フマル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、及びこれらの併用である。
特に好ましくは、アジピン酸、テレフタル酸、トリメリット酸、及びこれらの併用である。これらの酸の無水物や低級アルキルエステルも、同様に好ましい。
【0024】
アルコール成分(y)としては、ジオール(y1)、3価以上のポリオール(y2)が挙げられる。
【0025】
ジオール(y1)としては、炭素数2〜36のアルキレングリコール(エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール及び1,12−ドデカンジオール等);
炭素数4〜36のアルキレンエーテルグリコール(ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール及びポリテトラメチレンエーテルグリコール等);
炭素数6〜36の脂環式ジオール(1,4−シクロヘキサンジメタノール及び水素添加ビスフェノールA等);
上記脂環式ジオールの(ポリ)オキシアルキレン〔アルキレン基の炭素数2〜4(オキシエチレン及びオキシプロピレン等)以下のポリオキシアルキレン基も同じ〕エーテル〔オキシアルキレン単位(以下、「オキシアルキレン単位」を「AO」単位と略記することがある。)の数1〜30〕;
2価フェノール〔単環2価フェノール(例えばハイドロキノン)、ビスフェノール類のポリオキシアルキレンエーテル(AO単位の数2〜30)等が挙げられる。
【0026】
ビスフェノール類のポリオキシアルキレンエーテルは、ビスフェノール類にアルキレンオキサイド(以下、「オキシアルキレン」を「AO」と略記することがある。)を付加して得られる。ビスフェノール類としては、下記一般式(2)で示されるものが挙げられる。
【0027】
OH−Ar−X−Ar−OH (2)
[式中、Xは炭素数1〜3のアルキレン基、−SO
2−、−O−、−S−、又は直接結合を表わす。Arは、ハロゲン原子又は炭素数1〜30のアルキル基で置換されていてもよいフェニレン基を表す。]
【0028】
ビスフェノール類としては、具体的には、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールB、ビスフェノールAD、ビスフェノールS、トリクロロビスフェノールA、テトラクロロビスフェノールA、ジブロモビスフェノールF、2−メチルビスフェノールA、2,6−ジメチルビスフェノールA及び2,2’−ジエチルビスフェノールFが挙げられ、これらは2種以上を併用することもできる。
【0029】
これらビスフェノール類に付加するアルキレンオキサイドとしては、炭素数が2〜4のアルキレンオキサイドが好ましく、具体的には、エチレンオキサイド(以下、エチレンオキサイドをEOと略記することがある。)、プロピレンオキサイド(以下、プロピレンオキサイドをPOと略記することがある。)、1,2−、2,3−、1,3−又はiso−ブチレンオキサイド、テトラヒドロフラン及びこれらの2種以上の併用が挙げられる。
これらの中で好ましくはEO及び/又はPOである。AOの付加モル数は、好ましくは2〜30モル、更に好ましくは2〜10モルである。
ビスフェノール類のポリオキシアルキレンエーテルのうち、トナーの定着性の観点から好ましいものは、ビスフェノールAのEO及び/又はPO付加物である。
【0030】
3価以上のポリオール(y2)としては、炭素数3〜36の3価以上の脂肪族多価アルコール(アルカンポリオール及びその分子内又は分子間脱水物、例えばグリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、ソルビタン、ポリグリセリン及びジペンタエリスリトール);
糖類及びその誘導体(例えばショ糖及びメチルグルコシド);
上記脂肪族多価アルコールの(ポリ)オキシアルキレンエーテル(AO単位の数1〜30);
トリスフェノール類(トリスフェノールPA等)のポリオキシアルキレンエーテル(AO単位の数2〜30);
ノボラック樹脂(フェノールノボラック及びクレゾールノボラック等、平均重合度3〜60)のポリオキシアルキレンエーテル(AO単位の数2〜30)等が挙げられる。
【0031】
これらのアルコール成分(y)のうち、低温定着性と耐ホットオフセット性の両立の観点から好ましいものは、炭素数2〜12のアルキレングリコール、ビスフェノール類のポリオキシアルキレンエーテル(AO単位の数2〜30)、3価以上の脂肪族多価アルコール、及びノボラック樹脂のポリオキシアルキレンエーテル(AO単位の数2〜30)である。
【0032】
保存安定性の観点から更に好ましいものは、炭素数2〜10のアルキレングリコール、ビスフェノール類のポリオキシアルキレンエーテル(AO単位の数2〜5)、ノボラック樹脂のポリオキシアルキレンエーテル(AO単位の数2〜30)である。
特に好ましくは、炭素数2〜6のアルキレングリコール、ビスフェノールAのポリオキシアルキレンエーテル(AO単位の数2〜5)であり、最も好ましくは、エチレングリコール、プロピレングリコール、ビスフェノールAのポリオキシアルキレンエーテル(AO単位の数2〜3)である。
【0033】
本発明で使用するカルボジイミド化合物(a)としては、分子内にカルボジイミド基を有し、結着樹脂のカルボキシル基との反応によって、アシルウレア結合を形成するものであれば、特に限定されるものではないが、たとえば、カルボジイミド基を1個含有する化合物(a1)、又は2個以上有する化合物(a2)が挙げられる。
【0034】
カルボジイミド基を1個含有する化合物(a1)としては、例えば、ジシクロヘキシルカルボジイミド、ジイソプロピルカルボジイミド、ジメチルカルボジイミド、ジイソブチルカルボジイミド、ジオクチルカルボジイミド、t−ブチルイソプロピルカルボジイミド、ジフェニルカルボジイミド、ジ−t−ブチルカルボジイミド、ジ−β−ナフチルカルボジイミド、N−イソプロピル−N’−[2−(メタクリロイルオキシ)エチル]カルボジイミド等が挙げられる。
【0035】
カルボジイミド基を2個以上有する化合物(a2)としては、ポリカルボジイミド(a21)が挙げられる。
ポリカルボジイミド化合物(a21)は、原材料であるイソシアネート化合物を、3−メチル−1−フェニル−2−フォスフォレンオキシド、1−フェニル−2−フォスフォレン−1−オキシドなどのカルボジイミド化触媒の存在下、120〜150℃の反応温度で、加圧下で行うか、脂肪族アセテート系、ハロゲン系、脂環式エーテルなどの溶媒中で行うことによる脱炭酸縮合反応で得られる。
【0036】
ポリカルボジイミド化合物(a21)を製造するための原材料のイソシアネート化合物としては、本発明で使用できる前記のイソシアネート化合物(b1)n−ブチルイソシアネート、tert−ブチルジイソシアネート、iso−ブチルイソシアネート、エチルイソシアネート、n−プロピルイソシアネート、iso−プロピルイソシアネート、シクロヘキシルイソシアネート、n−オクタデシルイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、o−トリレンジイソシアネート、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、4,4−ジフェニルエーテルジイソシアネート、3,3−ジメトキシ−4,4−ビフェニルジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、ナフチレン−1,5−ジイソシアネート、m−キシリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、m−テトラメチルキシリレンジイソシアネート、p−テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどを挙げることができる。
【0037】
上記の原材料より得られるポリカルボジイミド化合物(a21)としては、ポリtert−ブチルカルボジイミド、ポリテトラメチルキシリレンカルボジイミド、ポリ2,4−トリレンカルボジイミド、ポリ2,6−トリレンカルボジイミド、ポリo−トリレンカルボジイミド、ポリ4,4−ジフェニルメタンカルボジイミド、ポリ4,4−ジシクロヘキシルメタンカルボジイミド、ポリ4,4−ジフェニルエーテルカルボジイミド、ポリ3,3−ジメトキシ−4,4−ビフェニルカルボジイミド、ポリp−フェニレンカルボジイミド、ポリナフチレン−1,5−カルボジイミド、ポリm−キシリレンカルボジイミド、ポリ水添キシリレンカルボジイミド、ポリヘキサメチレンカルボジイミド、ポリトリメチルヘキサメチレンカルボジイミド、ポリイソホロンカルボジイミドなどが挙げられる。
【0038】
カルボジイミド基を2個以上有するカルボジイミド化合物(a2)の具体例としては、カルボジライト(登録商標)(日清紡ケミカル株式会社製)V−02B、V−03、V−05、V−09、E−02などの市販品が挙げられる。
【0039】
本発明に用いられるカルボジイミド化合物(a)としては、分子中に2個以上のカルボジイミド基を有する化合物(a2)を用いることが耐ホットオフセット性の点で好ましい。
【0040】
カルボジイミド化合物(a)の使用量は、アルコール成分(y)と反応するカルボキシル基を除いたカルボキシル基1当量あたりカルボジイミド基として0.4〜1.6当量であることが好ましい。更に好ましくは0.6〜1.4当量である。この範囲にあると分子量が十分伸びることで耐ホットオフッセット性が良好となる。
【0041】
カルボジイミド化合物(a)の数平均分子量は、500〜3000であり、好ましくは500〜2500、更に好ましくは500〜2000である。(a)の数平均分子量が500未満だと耐ホットオフセット性が悪くなる場合があり、3000を超えると低温定着性、光沢度が悪くなる場合がある。
【0042】
変性ポリエステル樹脂(A)を製造する方法としては、特に制限されないが、例えば、以下の(1)〜(3)の方法が挙げられ、任意に選ぶことができる。
(1)カルボン酸成分(x)とアルコール成分(y)とカルボジイミド化合物(a)を投入し、重縮合と重付加と同時に行い、変性ポリエステル樹脂(A)を製造する方法
(2)一旦、カルボン酸成分(x)とアルコール成分(y)からポリエステル樹脂(P)を重合した後に、カルボジイミド化合物(a)を投入し、重付加を行って変性ポリエステル樹脂(A)を製造する方法
(3)一旦、カルボン酸成分(x)とカルボジイミド化合物(a)から変性ポリエステル樹脂(A)の前駆体(Q)を重合した後に、アルコール成分(y)を投入し、重縮合を行って変性ポリエステル樹脂(A)を製造する方法
【0043】
これらのうち、一旦、ポリエステル樹脂(P)を重合した後に、変性ポリエステル樹脂(A)を製造する(2)の方法が反応速度の制御や樹脂の均一性の点で好ましい。
【0044】
変性ポリエステル樹脂(A)を製造する際に好ましい上記の(2)の方法について、更に詳細に説明する。
【0045】
ポリエステル樹脂(P)はカルボン酸成分(x)とアルコール成分(y)から重合して得られる。
ポリエステル樹脂(P)はカルボジイミド基と反応したときに得られるN−アシルウレア基を形成するためにカルボキシル基を有する。更にポリエステル樹脂(P)の酸価は、耐ホットオフセット性、トナーとして用いた時の低温定着性、光沢性の観点から、好ましくは5mgKOH/g超80mgKOH/g以下、更に好ましくは10〜65mgKOH/g、特に好ましくは30〜60mgKOH/gである。
【0046】
ポリエステル樹脂(P)はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)における重量平均分子量が100,000以下であることが好ましく、更に好ましくは重量平均分子量が3000〜100,000である。
【0047】
本発明において、ポリエステル樹脂等の数平均分子量(以下、Mnと略称することがある。)及び重量平均分子量(以下、Mwと略称することがある。)は、ポリエステル樹脂等を0.25重量%になるようにテトラヒドロフラン(THF)に溶解し、それを試料溶液として、GPCを用いて以下の条件で測定することができる。
装置(一例) : 東ソー(株)製 HLC−8120
カラム(一例): TSK GEL GMH6 2本 〔東ソー(株)製〕
測定温度 : 40℃
試料溶液 : 0.25重量%のTHF溶液
溶液注入量 : 100μl
検出装置 : 屈折率検出器
基準物質 : 東ソー(株)製 標準ポリスチレン(TSKstandard POLYSTYRENE)12点(分子量 500 1,050 2,800 5,970 9,100 18,100 37,900 96,400 190,000 355,000 1,090,000 2,890,000)
【0048】
ポリエステル樹脂(P)のガラス転移温度(Tg)は、−35℃〜80℃であることが好ましい。Tgが80℃以下であると低温定着性が良好になり、−35℃以上であると耐熱保存性が良好になる。
なお、ガラス転移温度(Tg)は、例えばセイコーインスツル(株)製DSC20、SSC/580を用いて、ASTM D3418−82に規定の方法(DSC法)で測定することができる。
【0049】
ポリエステル樹脂(P)の水酸基価は、帯電性、耐熱保存性の観点から好ましくは0〜60mgKOH/g、更に好ましくは3〜40mgKOH/g、特に好ましくは5〜30mgKOH/gである。
ポリエステル樹脂(P)の酸価、水酸基価は、JIS K0070(1992年版)に規定の方法で測定することができる。
【0050】
本発明において、ポリエステル樹脂(P)及び後記するポリエステル樹脂(B)は、次の様にして製造することができる。
例えば、不活性ガス(窒素ガス等)雰囲気中で、反応温度が好ましくは150〜280℃、更に好ましくは160〜250℃、とくに好ましくは170〜235℃で反応させることにより行うことができる。また反応時間は、重縮合反応を確実に行う観点から、好ましくは30分以上、とくに好ましくは2〜40時間である。
【0051】
このとき必要に応じてエステル化触媒を使用することができる。エステル化触媒の例には、スズ含有触媒(例えばジブチルスズオキシド)、三酸化アンチモン、チタン含有触媒〔例えばチタンアルコキシド、シュウ酸チタン酸カリウム、テレフタル酸チタン、テレフタル酸チタンアルコキシド、特開2006−243715号公報に記載の触媒〔チタニウムジヒドロキシビス(トリエタノールアミネート)、チタニウムモノヒドロキシトリス(トリエタノールアミネート)、チタニルビス(トリエタノールアミネート)及びそれらの分子内重縮合物等〕、及び特開2007−11307号公報に記載の触媒(チタントリブトキシテレフタレート、チタントリイソプロポキシテレフタレート、及びチタンジイソプロポキシジテレフタレート等)]、ジルコニウム含有触媒(例えば酢酸ジルコニル)、及び酢酸亜鉛等が挙げられる。これらの中で好ましくはチタン含有触媒である。反応末期の反応速度を向上させるために減圧することも有効である。
【0052】
また、ポリエステル重合安定性を得る目的で、安定剤を添加してもよい。安定剤としては、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、ヒンダードフェノール化合物などが挙げられる。
【0053】
ポリオール成分(x)とポリカルボン酸成分(y)との反応比率は、水酸基とカルボキシル基の当量比[OH]/[COOH]として、好ましくは2/1〜1/2、更に好ましくは1.5/1〜1/1.3、とくに好ましくは1.4/1〜1/1.2である。
【0054】
本発明のトナーバインダーは−20℃〜80℃の温度範囲にガラス転移温度(Tg)を少なくとも1個有する。好ましくは、35〜65℃の温度範囲である。1つしかない変曲点が−20℃未満の場合は、耐熱保存性が悪化し、80℃を超えると定着性が悪化する。
なお、2個以上のTgが存在する場合は、そのうちの1個がこの温度範囲に存在すれば十分である。
【0055】
なお、ガラス転移温度(Tg)は、ASTM D3418−82に規定の方法(DSC法)で示差走査熱量測定され、示差走査熱量測定(DSC)によるチャートで示された変曲点の温度である。例えばセイコーインスツル(株)製DSC20、SSC/580を用いて測定できる。
【0056】
具体的には試料5mgをDSC装置の容器に入れ,ガラス転移終了時より約30℃高い温度まで毎分20℃で加熱し、ガラス転移温度より約50℃低い温度まで毎分60℃で冷却した後、ガラス転移終了時より約30℃高い温度まで毎分20℃で加熱する。
上記測定から吸発熱量と温度とのグラフを描き、そのグラフの低温側のベースラインを高温側に延長した直線と、ガラス転移の階段状変化部分の曲線の勾配が最大になるような点で引いた接線との交点の温度をガラス転移温度(Tg)とする。
【0057】
本発明の(A)が有するN−アシルウレア基の濃度は、トナーバインダーの重量に基づいて0.14〜1.50ミリモル/gであり、好ましくは0.20〜1.20ミリモル/g、更に好ましくは0.20〜1.00ミリモル/gである。
N−アシルウレア基の濃度が0.14ミリモル/g未満であると凝集力が低下し、耐ホットオフセット性が悪化する場合があり、1.50ミリモル/gを超えると凝集力が高すぎるため、光沢性、低温定着性が悪化する場合がある。
【0058】
本発明の(A)が有するN−アシルウレア基濃度C(ミリモル/g)の定量方法としては、特に制限されないが、例えば、以下の(1)から(3)の方法が挙げられ、任意に選ぶことができる。本願のN−アシルウレア基濃度(C)の測定は以下の(1)の方法で実施した。
(1)トナーバインダー中の酸価を、JIS K0070(1992年版)に規定の方法で測定し、定量を行い以下の計算式に従って算出され得る方法。
C(ミリモル/g)={ポリエステル樹脂(P)の酸価×トナーバインダー中のポリエステル樹脂(P)の重量比+ポリエステル樹脂(B)の酸価×トナーバインダー中のポリエステル樹脂(B)の重量比−トナーバインダーの酸価}/56100×1000
N−アシルウレア基は、カルボキシル基とカルボジイミド基が前記化学式(1)で示される反応で得られるので、変性ポリエステル樹脂(A)を変性する前後におけるトナーバインダーの酸価の差を計算し、減少したカルボキシル基濃度から、(A)が有するN−アシルウレア基濃度を求める。
【0059】
(2)トナーバインダー中の未反応のカルボジイミド化合物をTHFやメタノールなどの有機溶媒に抽出させ高速液体クロマトグラフ質量分析計(LC−MS)で測定し、カルボジイミド化合物の定量を行い、以下の計算式に従って算出され得る方法。
C(ミリモル/g)={(使用したカルボジイミド化合物の量(g)−トナーバインダー中の未反応のカルボジイミド化合物の量(g))/使用したカルボジイミド化合物の量}×反応前の理論カルボジイミド基量(ミリモル/g)/トナーバインダーの重量(g)
【0060】
(3)トナーバインダー中のN−アシルウレア基由来のN−アシルウレア基に含まれるNに結合する水素原子を核磁気共鳴装置(NMR)で測定し、化学組成の同定と定量を行う方法。
【0061】
本発明のトナーバインダーの酸価は、以下の方法で測定することができる。
1)トナーバインダーの粉砕品約0.5gを精秤し、その重さをS(g)とする。
2)200ml三角フラスコにトナーバインダーの粉砕品を入れ、THF50mlを加え、フェノールフタレイン指示薬を数滴加え、0.1規定のKOH・THF溶液を用いて滴定する。この時のKOH溶液の量をA(ml)とする。同時にブランクテストをし、この時のKOH溶液量をB(ml)とする。
3)次式によりトナーバインダーの酸価を測定する。
トナーバインダーの酸価=(A−B)×f×5.61÷S(f:KOH溶液の力価)
【0062】
本発明のトナーバインダーは、下記の関係式(1)〜(3)を満足することが低温定着性、光沢性、耐ホットオフセット性、耐熱保存性両立の観点から好ましい。
【0063】
G’
x150≧10,000 (1)
G’
x150/G’
x180≦10 (2)
G’
x150/G’
y150≧30 (3)
但し、関係式(1)〜(3)中、G’
x150はトナーバインダーをテトラヒドロフラン(以下、THFと略称する。)に溶かそうとしたときのTHF不溶解分の150℃における貯蔵弾性率(単位Pa)を表す。また、G’
x180はTHFに対する不溶解分の180℃における貯蔵弾性率(単位Pa)を表し、G’
y150はTHFに対する溶解分の150℃における貯蔵弾性率(単位Pa)を表す。
【0064】
関係式(1)、(2)を満たすためには、変性ポリエステル樹脂(A)の架橋度を調整することで達成できる。例えば架橋度を上げる手法は特に限定されないが、例えばカルボジイミド化合物(a)の使用量を増やす、カルボジイミド基含量(モル/g)の多いカルボジイミド化合物(a)を使用する、カルボジイミド基が反応して生成するN−アシルウレア基濃度を上げる、変性ポリエステル樹脂(A)中の3価以上のポリカルボン酸(x2)量を増やす、変性ポリエステル樹脂(A)中の3価以上のポリオール(y2)量を増やす等が挙げられる。
関係式(3)を満たす手法は特に限定されないが、例えば、(3)の左辺を大きくするには、カルボジイミド化合物(a)の使用量を減らす、N−アシルウレア基濃度を下げる、酸価が5KOHmg/g以下のポリエステル樹脂(B)を併用する、等が挙げられる。
関係式(1)〜(3)全てを満たすためには、カルボジイミド化合物(a)の使用量、種類、カルボジイミド基で変性して生成するN−アシルウレア基濃度、変性ポリエステル樹脂(A)の分子量等を調整することが重要である。
【0065】
本発明のトナーバインダー中のTHFに対する不溶解分の150℃における貯蔵弾性率G’
x150(単位Pa)は、トナー化時の耐ホットオフセット性の観点から、次の関係式(1)を満たすことが好ましい。
G’
x150≧10,000 (1)
【0066】
左辺のG’
x150の下限が更に好ましくは30,000以上であり、特に好ましくは50,000以上であり、上限は更に好ましくは300,000以下であり、特に好ましくは100,000以下である。
【0067】
本発明のトナーバインダー中のTHFに対する不溶解分の150℃における貯蔵弾性率G’
x150(単位Pa)とTHFに対する不溶解分の180℃における貯蔵弾性率G’
x180(単位Pa)は、トナー化時の耐ホットオフセット性の観点から、次の関係式(2)を満たすことが好ましい。
【0068】
G’
x150/G’
x180≦10 (2)
G’
x150/G’
x180の上限が更に好ましくは9以下であり、特に好ましくは8以下であり、下限は更に好ましくは0.1以上であり、特に好ましくは、0.5以上である。である。
【0069】
本発明のトナーバインダー中のTHFに対する不溶解分の150℃における貯蔵弾性率G’
x150(単位Pa)とTHFに対する溶解分の150℃における貯蔵弾性率G’
y150(単位Pa)は、トナー化時の耐ホットオフセット性、低温定着性の観点から、次の関係式(3)を満たすことが好ましい。
【0070】
G’
x150/G’
y150≧30 (3)
左辺のG’
x150/G’
y150の下限が更に好ましくは35以上であり、特に好ましくは40以上であり、上限は更に好ましくは100,000以下であり、特に好ましくは50,000以下である。
【0071】
貯蔵弾性率と軟化点測定用の本発明のトナーバインダー中のTHFに対する不溶解分とTHFに対する溶解分は、以下の方法で得たものである。
試料0.5gに50mlのTHFを加え、3時間撹拌還流させる。室温まで冷却後、グラスフィルターにて不溶解分をろ別し、グラスフィルター上の樹脂分を80℃で3時間減圧し、THFを完全に除去するまで乾燥する。乾燥して得られた樹脂をトナーバインダー中のTHFに対する不溶解分とした。
つぎに、上記グラスフィルターにてろ別した溶解液を80℃で3時間減圧し、THFを完全に除去するまで乾燥する。ここで得られた樹脂分をトナーバインダー中のTHFに対する溶解分とした。
【0072】
本発明において、トナーバインダー中のTHFに対する不溶解分と溶解分の貯蔵弾性率G’
x150、G’
x180、G’
y150は、下記粘弾性測定装置を用いて測定される。
装置 :ARES−24A(レオメトリック社製)
治具 :25mmパラレルプレート
周波数 :1Hz
歪み率 :5%
昇温速度:5℃/分
昇温開始:100℃
昇温終了:200℃
【0073】
本発明において、トナーバインダー中のTHFに対する不溶解分の貯蔵弾性率G’
x60は、下記粘弾性測定装置を用いて測定される。
装置 :ARES−24A(レオメトリック社製)
治具 :8mmパラレルプレート
周波数 :1Hz
歪み率 :5%
昇温速度:5℃/分
昇温開始:40℃
昇温終了:130℃
【0074】
本発明のトナーバインダー中のTHF不溶解分のフローテスターによる軟化点Tm
x(単位℃)は、トナー化時の耐ホットオフセット性の観点から、次の関係式(4)を満たすことが好ましい。
【0075】
150≦Tm
x≦250 (4)
Tm
xが更に好ましくは170以上245以下であり、最も好ましくは190以上240以下である。
関係式(4)を満たすためには、変性ポリエステル樹脂(A)の架橋度を調整する必要がある。架橋度は、カルボジイミド化合物(a)の使用量、カルボジイミド化合物(a)の種類、カルボジイミド基で変性して生成するN−アシルウレア基濃度、変性ポリエステル樹脂(A)中の3価以上のポリカルボン酸(x2)量、変性ポリエステル樹脂(A)中の3価以上のポリオール(y2)量等で調整可能である。
【0076】
本発明のトナーバインダー中のTHF不溶解分のフローテスターによる軟化点Tm
x(単位℃)とTHF溶解分のフローテスターによる軟化点Tm
y(単位℃)は、トナー化時の耐ホットオフセット性、低温定着性の観点から、次の関係式(5)を満たすことが好ましい。
【0077】
Tm
x−Tm
y≧70 (5)
左辺のTm
x−Tm
yの下限が更に好ましくは80以上であり、特に好ましくは100以上であり、上限は更に好ましくは180以下であり、特に好ましくは160以下である。
関係式(5)を満たす手法としては特に限定されないが、例えば、カルボジイミド化合物(a)の使用量を減らす、N−アシルウレア基濃度を下げる、酸価が5KOHmg/g以下のポリエステル樹脂(B)を併用する、等が挙げられる。
【0078】
本発明において、トナーバインダー中のTHF不溶解分のフローテスターによる軟化点Tm
x(単位℃)とTHF溶解分のフローテスターによる軟化点Tm
y(単位℃)は以下の方法で測定される。
<軟化点〔Tm〕>
降下式フローテスター{たとえば、(株)島津製作所製、CFT−500D}を用いて、1gの測定試料を昇温速度6℃/分で加熱しながら、プランジャーにより1.96MPaの荷重を与え、直径1mm、長さ1mmのノズルから押し出して、「プランジャー降下量(流れ値)」と「温度」とのグラフを描き、プランジャーの降下量の最大値の1/2に対応する温度をグラフから読み取り、この値(測定試料の半分が流出したときの温度)を軟化点〔Tm〕(単位℃)とする。
【0079】
本発明のトナーバインダーのTHF可溶分のMnは、トナーの耐熱保存性と低温定着性の両立の観点から、500〜24,000が好ましく、更に好ましくは700〜17,000、特に好ましくは900〜12,000である。
【0080】
本発明のトナーバインダーのTHF可溶分のMwは、トナーの耐ホットオフセット性と低温定着性の両立の観点から、4,000〜120,000が好ましく、更に好ましくは6,000〜100,000、特に好ましくは8,000〜80,000である。
【0081】
本発明のTHF不溶解分の含有量は、耐ホットオフセット性、低温定着性、光沢性両立の点から、トナーバインダーの重量に基づいて好ましくは1〜40重量%であり、更に好ましくは3〜40重量%である。
THF不溶解分の含有量は、変性ポリエステル樹脂(A)の架橋度を調整すること、酸価が5KOHmg/g以下のポリエステル樹脂(B)を併用すること等で調整することができる。
【0082】
本発明のトナーバインダーには変性ポリエステル樹脂(A)以外に、光沢度及び粉砕性を向上させる目的で、更にポリエステル樹脂(B)を含有させることが好ましい。
【0083】
変性ポリエステル樹脂(A)と併用することが好ましいポリエステル樹脂(B)は、酸価が5KOHmg/g以下のポリエステル樹脂である。ポリエステル樹脂(B)は、N−アシルウレア基を含まない樹脂である。
【0084】
ポリエステル樹脂(B)の酸価は、5mgKOH/g以下、好ましくは0.001〜3mgKOH/g、更に好ましくは0.01〜1mgKOH/gである。酸価が5mgKOH/g以下のポリエステル樹脂を用いると、トナーとして用いた時の低温定着性、光沢性が良好となる。
【0085】
ポリエステル樹脂(B)の水酸基価は、好ましくは0〜80mgKOH/g、更に好ましくは5〜70mgKOH/g、とくに好ましくは10〜60mgKOH/gである。酸価が80mgKOH/g以下であるとトナーとして用いた時の耐熱保存性が良好である。
【0086】
ポリエステル樹脂(B)のガラス転移温度(Tg)は、45℃〜80℃であることが好ましい。Tgが80℃以下であると低温定着性が良好になり、45℃以上であると耐熱保存性が良好になる。
なお、ガラス転移温度(Tg)は、例えばセイコーインスツル(株)製DSC20、SSC/580を用いて、ASTM D3418−82に規定の方法(DSC法)で測定することができる。
【0087】
ポリエステル樹脂(B)を併用する際の、本発明の変性ポリエステル樹脂(A)とポリエステル樹脂(B)の重量比(A)/(B)は、低温定着性と耐ホットオフセット性、光沢性の両立の観点から、好ましくは1/99〜99/1、更に好ましくは3/97〜50/50、とくに好ましくは5/95〜30/70である。
【0088】
トナーバインダーの製造方法について説明する。
トナーバインダーは変性ポリエステル樹脂(A)を含有していればとくに限定されず、たとえば2種類のポリエステル樹脂や添加剤を混合する場合、混合方法は公知の方法でよく、粉体混合、溶融混合、溶剤混合のいずれでもよい。また、トナー化時に混合してもよい。この方法の中では、均一に混合し、溶剤除去の必要のない溶融混合が好ましい。
【0089】
粉体混合する場合の混合装置としては、ヘンシェルミキサー、ナウターミキサー、及びバンバリーミキサー等が挙げられる。好ましくはヘンシェルミキサーである。
溶融混合する場合の混合装置としては、反応槽等のバッチ式混合装置、及び連続式混合装置が挙げられる。適正な温度で短時間で均一に混合するためには、連続式混合装置が好ましい。連続混合装置としては、エクストルーダー、コンティニアスニーダー、3本ロール等が挙げられる。
【0090】
溶剤混合の方法としては、2種類のポリエステル樹脂を溶剤(酢酸エチル、THF及びアセトン等)に溶解し、均一化させた後、脱溶剤、粉砕する方法や、2種類のポリエステル樹脂を溶剤(酢酸エチル、THF及びアセトン等)に溶解し、水中に分散させた後、造粒、脱溶剤する方法などがある。
【0091】
また、例えば変性ポリエステル樹脂(A)と別のポリエステル樹脂(B)の2種類の樹脂を混合する場合において、均一化しづらい場合は、ポリエステル樹脂(B)中でポリエステル樹脂(P)とカルボジイミド化合物(a)を反応させて変性ポリエステル樹脂(A)を作成し、変性ポリエステル樹脂(A)とポリエステル樹脂(B)を混合し均一化してもよく、好ましい方法である。
【0092】
この溶融混合を行うための具体的方法としては、酸価が5mgKOH/g超のポリエステル樹脂(P)と酸価が5mgKOH/g以下のポリエステル樹脂(B)との混合物を二軸押出機に一定速度で注入し、同時にカルボジイミド化合物(a)も一定速度で注入し、100〜200℃の温度で混練搬送しながら反応を行わせるなどの方法がある。
【0093】
このとき、二軸押出機に投入又は注入される反応原料であるポリエステル樹脂(P)とポリエステル樹脂(B)は、それぞれ樹脂反応溶液から冷却することなくそのまま直接押出機に注入するようにしてもよいし、また一旦製造した樹脂を冷却、粉砕したものを二軸押出機に供給することにより行ってもよい。
また、溶融混合する方法がこれら具体的に例示された方法に限られるわけではなく、例えば反応容器中に原料を仕込み、溶液状態となる温度に加熱し、混合するような方法など適宜の方法で行うことができることはもちろんである。
【0094】
本発明のトナーは、本発明のトナーバインダー及び着色剤を含有する。
【0095】
着色剤としては、トナー用着色剤として使用されている染料、顔料等のすべてを使用することができる。具体的には、カーボンブラック、鉄黒、スーダンブラックSM、ファーストイエローG、ベンジジンイエロー、ピグメントイエロー、インドファーストオレンジ、イルガシンレッド、パラニトロアニリンレッド、トルイジンレッド、カーミンFB、ピグメントオレンジR、レーキレッド2G、ローダミンFB、ローダミンBレーキ、メチルバイオレットBレーキ、フタロシアニンブルー、ピグメントブルー、ブリリアントグリーン、フタロシアニングリーン、オイルイエローGG、カヤセットYG、オラゾールブラウンB及びオイルピンクOP等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を混合して用いることができる。また、必要により磁性粉(鉄、コバルト、ニッケル等の強磁性金属の粉末若しくはマグネタイト、ヘマタイト、フェライト等の化合物)を着色剤としての機能を兼ねて含有させることができる。
着色剤の含有量は、本発明のトナーバインダー100重量部に対して、好ましくは1〜40重量部、更に好ましくは3〜10重量部である。なお、磁性粉を用いる場合は、好ましくは20〜150重量部、更に好ましくは40〜120重量部である。
【0096】
本発明のトナーは、トナーバインダー、着色剤以外に、必要により、離型剤、荷電制御剤、流動化剤等から選ばれる1種以上の添加剤を含有する。
【0097】
離型剤としては、フローテスターによる軟化点〔Tm〕が50〜170℃のものが好ましく、ポリオレフィンワックス、天然ワックス、炭素数30〜50の脂肪族アルコール、炭素数30〜50の脂肪酸及びこれらの混合物等が挙げられる。
【0098】
ポリオレフィンワックスとしては、オレフィン(例えばエチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブチレン、1−ヘキセン、1−ドデセン、1−オクタデセン及びこれらの混合物等)の(共)重合体[(共)重合により得られるもの及び熱減成型ポリオレフィンを含む]、オレフィンの(共)重合体の酸素及び/又はオゾンによる酸化物、オレフィンの(共)重合体のマレイン酸変性物[例えばマレイン酸及びその誘導体(無水マレイン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノブチル及びマレイン酸ジメチル等)変性物]、オレフィンと不飽和カルボン酸[(メタ)アクリル酸、イタコン酸及び無水マレイン酸等]及び/又は不飽和カルボン酸アルキルエステル[(メタ)アクリル酸アルキル(アルキルの炭素数1〜18)エステル及びマレイン酸アルキル(アルキルの炭素数1〜18)エステル等]等との共重合体、及びサゾールワックス等が挙げられる。
【0099】
天然ワックスとしては、例えばカルナウバワックス、モンタンワックス、パラフィンワックス及びライスワックスが挙げられる。炭素数30〜50の脂肪族アルコールとしては、例えばトリアコンタノールが挙げられる。炭素数30〜50の脂肪酸としては、例えばトリアコンタンカルボン酸が挙げられる。
【0100】
荷電制御剤としては、ニグロシン染料、3級アミンを側鎖として含有するトリフェニルメタン系染料、4級アンモニウム塩、ポリアミン樹脂、イミダゾール誘導体、4級アンモニウム塩基含有ポリマー、含金属アゾ染料、銅フタロシアニン染料、サリチル酸金属塩、ベンジル酸のホウ素錯体、スルホン酸基含有ポリマー、含フッ素系ポリマー、ハロゲン置換芳香環含有ポリマー等が挙げられる。
【0101】
流動化剤としては、コロイダルシリカ、アルミナ粉末、酸化チタン粉末、炭酸カルシウム粉末等が挙げられる。
【0102】
離型剤はトナー重量に基づき、0〜30重量%、好ましくは0.5〜20重量%、特に好ましくは1〜10重量%である。
荷電制御剤はトナー重量に基づき、0〜20重量%、好ましくは0.1〜10重量%、特に好ましくは0.5〜7.5重量%である。
流動化剤はトナー重量に基づき、0〜10重量%、好ましくは0〜5重量%、特に好ましくは0.1〜4重量%である。
また、添加剤の合計量はトナー重量に基づき、3〜70重量%、好ましくは4〜58重量%、特に好ましくは5〜50重量%である。トナーの組成比が上記の範囲であることで帯電性が良好なものを容易に得ることができる。
【0103】
本発明のトナーは、公知の混練粉砕法、乳化転相法、重合法等のいずれの方法により得られたものであってもよい。
例えば、混練粉砕法によりトナーを得る場合、流動化剤を除くトナーを構成する成分を乾式ブレンドした後、溶融混練し、その後粗粉砕し、最終的にジェットミル粉砕機等を用いて微粒化して、更に分級することにより、体積平均粒径(D50)が好ましくは5〜20μmの微粒とした後、流動化剤を混合して製造することができる。
なお、粒径(D50)はコールターカウンター[例えば、商品名:マルチサイザーIII(コールター社製)]を用いて測定される。
また、乳化転相法によりトナーを得る場合、流動化剤を除くトナーを構成する成分を有機溶剤に溶解又は分散後、水を添加する等によりエマルジョン化し、次いで分離、分級して製造することができる。トナーの体積平均粒径は、3〜15μmが好ましい。
【0104】
本発明のトナーは、必要に応じて鉄粉、ガラスビーズ、ニッケル粉、フェライト、マグネタイト、及び樹脂(アクリル樹脂、シリコーン樹脂等)により表面をコーティングしたフェライト等のキャリア粒子と混合されて電気的潜像の現像剤として用いられる。トナーとキャリア粒子との重量比は、1/99〜100/0である。また、キャリア粒子の代わりに帯電ブレード等の部材と摩擦し、電気的潜像を形成することもできる。
【0105】
本発明のトナーは、複写機、プリンター等により支持体(紙、ポリエステルフィルム等)に定着して記録材料とされる。支持体に定着する方法としては、公知の熱ロール定着方法、フラッシュ定着方法等が適用できる。
【実施例】
【0106】
以下、実施例及び比較例により本発明を更に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下、特に定めない限り、%は重量%、部は重量部を示す。
【0107】
<製造例1>[ポリエステル樹脂(P−1)の製造]
冷却管、撹拌機及び窒素導入管の付いた反応槽中に、ビスフェノールAのEO2モル付加物409部、ビスフェノールAのPO2モル付加物290部、テレフタル酸111部、アジピン酸146部、縮合触媒としてチタニウムジイソプロポキシビストリエタノールアミネート2.5部を入れ、210℃で窒素気流下に、生成する水を留去しながら5時間反応させた後、0.5〜2.5kPaの減圧下に酸価が2以下になるまで反応させた。次いで、180℃で無水トリメリット酸102部を加え、常圧下で1時間反応させた後、取り出し、ポリエステル樹脂(P−1)を得た。
(P−1)の酸価は60KOHmg/g、水酸基価は21KOHmg/g、Tgは47℃、Mnは2,500、Mwは8,100であった。
【0108】
<製造例2>[ポリエステル樹脂(P−2)の製造]
冷却管、撹拌機及び窒素導入管の付いた反応槽中に、ビスフェノールAのEO2モル付加物701部、テレフタル酸227部、アジピン酸157部、縮合触媒としてチタニウムジイソプロポキシビストリエタノールアミネート2.5部を入れ、210℃で窒素気流下に、生成する水を留去しながら5時間反応させた。次いで、0.5〜2.5kPaの減圧下に5時間反応させた後、取り出し、ポリエステル樹脂(P−2)を得た。
(P−2)の酸価は31KOHmg/g、水酸基価は4KOHmg/g、Tgは41℃、Mnは4,200、Mwは13,100であった。
【0109】
<製造例3>[ポリエステル樹脂(P−3)の製造]
冷却管、撹拌機及び窒素導入管の付いた反応槽中に、ビスフェノールAのPO3モル付加物369部、プロピレングリコール465部、テレフタル酸357部、アジピン酸134部、縮合触媒としてチタニウムジイソプロポキシビストリエタノールアミネート2.5部を入れ、210℃で窒素気流下に、生成する水を留去しながら5時間反応させた後、0.5〜2.5kPaの減圧下に酸価が2以下になるまで反応させた。次いで、180℃で無水トリメリット酸68部を加え、常圧下で1時間反応させた後、取り出し、ポリエステル樹脂(P−3)を得た。回収されたプロピレングリコールは284部であった。
(P−3)の酸価は40KOHmg/g、水酸基価は11KOHmg/g、Tgは34℃、Mnは3,700、Mwは8,400であった。
【0110】
<製造例4>[ポリエステル樹脂(P−4)の製造]
冷却管、撹拌機及び窒素導入管の付いた反応槽中に、ビスフェノールAのPO3モル付加物677部、テレフタル酸158部、アジピン酸35部、縮合触媒としてチタニウムジイソプロポキシビストリエタノールアミネート2.5部を入れ、210℃で窒素気流下に、生成する水を留去しながら5時間反応させた後、0.5〜2.5kPaの減圧下に酸価が2以下になるまで反応させた。次いで、180℃で無水トリメリット酸171部を加え、常圧下で1時間反応させた後、取り出し、ポリエステル樹脂(P−3)を得た。
(P−3)の酸価は100KOHmg/g、水酸基価は17KOHmg/g、Tgは42℃、Mnは1,600、Mwは3,800であった。
【0111】
<比較製造例1>[ポリエステル樹脂(P’−1)の製造]
冷却管、撹拌機及び窒素導入管の付いた反応槽中に、ビスフェノールAのEO2モル付加物132部、ビスフェノールAのPO3モル付加物627部、テレフタル酸283部、縮合触媒としてチタニウムジイソプロポキシビストリエタノールアミネート2.5部を入れ、210℃で窒素気流下に、生成する水を留去しながら5時間反応させた後、0.5〜2.5kPaの減圧下に酸価が2以下になるまで反応させた。次いで、180℃で無水トリメリット酸17部を加え、常圧下で1時間反応させた後、取り出し、ポリエステル樹脂(P’−1)を得た。
(P’−1)の酸価は10KOHmg/g、水酸基価は30KOHmg/g、Tgは54℃、Mnは3,100、Mwは10,400であった。なお、この(P’−1)は比較例2に使用した。
【0112】
<比較製造例2>[ポリエステル樹脂(P’−2)の製造]
冷却管、撹拌機及び窒素導入管の付いた反応槽中に、ビスフェノールAのEO2モル付加物101部、ビスフェノールAのPO3モル付加物483部、テレフタル酸24部、アジピン酸124部、縮合触媒としてチタニウムジイソプロポキシビストリエタノールアミネート2.5部を入れ、210℃で窒素気流下に、生成する水を留去しながら5時間反応させた後、0.5〜2.5kPaの減圧下に酸価が2以下になるまで反応させた。次いで、180℃で無水トリメリット酸306部を加え、常圧下で1時間反応させた後、取り出し、ポリエステル樹脂(P’−2)を得た。
(P’−2)の酸価は176KOHmg/g、水酸基価は1KOHmg/g、Tgは34℃、Mnは1,300、Mwは4,100であった。なお、この(P’−2)は、比較例3に使用した。
【0113】
<比較製造例3>[ポリエステル樹脂(P’−3)の製造]
冷却管、撹拌機及び窒素導入管の付いた反応槽中に、ビスフェノールAのPO2モル付加物405部、ビスフェノールAのPO3モル付加物302部、テレフタル酸273部、縮合触媒としてチタニウムジイソプロポキシビストリエタノールアミネート2.5部を入れ、210℃で窒素気流下に、生成する水を留去しながら5時間反応させた後、0.5〜2.5kPaの減圧下に酸価が2以下になるまで反応させた。次いで、180℃で無水トリメリット酸77部を加え、常圧下で1時間反応させた後、取り出し、ポリエステル樹脂(P’−3)を得た。
(P’−3)の酸価は45KOHmg/g、水酸基価は15KOHmg/g、Tgは85℃、Mnは3,000、Mwは10,300であった。なお、この(P’−3)は、比較例5に使用した。
【0114】
表1に、製造例1〜3で得られたポリエステル樹脂(P−1)〜(P−3)、及び比較製造例1〜3で得られたポリエステル樹脂(P’−1)〜(P’−3)の主要な分析値をまとめた。
【0115】
【表1】
【0116】
<製造例5>[ポリエステル樹脂(B−1)の製造]
冷却管、撹拌機及び窒素導入管の付いた反応槽中に、ビスフェノールAのPO2モル付加物608部、ビスフェノールAのPO3モル付加物170部、テレフタル酸280部及び縮合触媒としてテトラブトキシチタネート2.5部を入れ、210℃で窒素気流下に、生成する水を留去しながら4時間反応させた。更に0.5〜2.5kPaの減圧下に10時間反応させた。酸価が1未満になった時点で取り出し、ポリエステル樹脂(B−1)を得た。
ポリエステル樹脂(B−1)のTgは57℃、水酸基価は53KOHmg/g、酸価は0.5KOHmg/gであった。
【0117】
<製造例6>[ポリエステル樹脂(B−2)の製造]
冷却管、撹拌機及び窒素導入管の付いた反応槽中に、ビスフェノールAのPO2モル付加物769部、テレフタル酸283部及び縮合触媒としてテトラブトキシチタネート2.5部を入れ、210℃で窒素気流下に、生成する水を留去しながら4時間反応させた。更に0.5〜2.5kPaの減圧下に酸価が2以下になるまで反応させた。次いで、180℃で無水トリメリット酸7部を加え、常圧下で1時間反応させた後、取り出し、ポリエステル樹脂(B−2)を得た。
ポリエステル樹脂(B−2)のTgは64℃、水酸基価は48KOHmg/g、酸価は4KOHmg/gであった。
【0118】
<製造例7>[カルボジイミド化合物(a−1)の製造]
撹拌機及び窒素導入管の付いた反応槽中に、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)を重合してなるカルボジイミド化合物[カルボジライトV−05;日清紡ケミカル社製]を300部、トルエン300部を入れ、25℃で窒素気流下に溶解させた。次いで、n−ブチルアミン80部をトルエン100部に混合したものを、10分かけて、滴下し、常圧下で一時間反応させた後、減圧下でトルエンを除去することにより、TMXDI由来で残存しているイソシアネート基のみをn−ブチルアミンと反応させて生成したウレア基を有するカルボジイミド化合物(a−1)を得た。
カルボジイミド化合物(a−1)のMnは1,500であった。
【0119】
<製造例8>[カルボジイミド化合物(a−2)の製造]
撹拌機及び窒素導入管の付いた反応槽中に、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート(水添MDI)300部、3−メチル−1−フェニル−2−ホスホレンオキシド3部を仕込み、窒素気流下、185℃で7時間反応を行った後、トルエン300部を入れ、25℃窒素気流下で溶解させた。次いで、n−ブチルアミン20部をトルエン50部に混合したものを、10分かけて、滴下し、常圧下で一時間反応させた後、減圧下でトルエンを除去することにより、水添MDI由来で残存しているイソシアネート基のみをn−ブチルアミンと反応させて生成したウレア基を有するカルボジイミド化合物(a−1)を得た。
カルボジイミド化合物(a−2)のMnは2,800であった。
【0120】
<製造例9>[カルボジイミド化合物(a−3)の製造]
撹拌機及び窒素導入管の付いた反応槽中に、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート(水添MDI)300部、3−メチル−1−フェニル−2−ホスホレンオキシド3部を仕込み、窒素気流下、120℃で1.5時間反応を行った後、トルエン300部を入れ、25℃窒素気流下で溶解させた。次いで、n−ブチルアミン63部をトルエン150部に混合したものを、20分かけて、滴下し、常圧下で一時間反応させた後、減圧下でトルエンを除去することにより、水添MDI由来で残存しているイソシアネート基のみをn−ブチルアミンと反応させて生成したウレア基を有するカルボジイミド化合物(a−4)を得た。
カルボジイミド化合物(a−3)のMnは800であった。
【0121】
<比較製造例4>[カルボジイミド化合物(a’−1)の製造]
撹拌機及び窒素導入管の付いた反応槽中に、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート(水添MDI)300部、3−メチル−1−フェニル−2−ホスホレンオキシド3部を仕込み、窒素気流下、185℃で9時間反応を行った後、トルエン300部を入れ、25℃窒素気流下で溶解させた。次いで、n−ブチルアミン17部をトルエン50部に混合したものを、10分かけて、滴下し、常圧下で一時間反応させた後、減圧下でトルエンを除去することにより、水添MDI由来で残存しているイソシアネート基のみをn−ブチルアミンと反応させて生成したウレア基を有するカルボジイミド化合物(a’−2)を得た。
カルボジイミド化合物(a’−1)のMnは3,300であった。
【0122】
<実施例1>[トナーバインダー(C−1)の製造]
ポリエステル樹脂(P−1)100部を二軸混練器(栗本鉄工所製,KRCニーダー)に10kg/時で供給し、同時にカルボジイミド化合物(a−1)14.0部を1.4kg/時で供給して160℃で10分間混練押出反応を行った。得られたものを冷却し、本発明の変性ポリエステル樹脂(A−1)を含有するトナーバインダー(C−1)を得た。
トナーバインダー(C−1)のTgは57℃、N−アシルウレア基濃度は0.40ミリモル/g、酸価は30KOHmg/gであった。
【0123】
<実施例2>[トナーバインダー(C−2)の製造]
実施例1において、ポリエステル樹脂(P−1)を(P−2)に代え、カルボジイミド化合物(a−1)を水添MDI由来で、イソシアネート末端封鎖されたカルボジイミド化合物[カルボジライトV−02B;日清紡ケミカル社製](a−4)26.7部、2.67kg/時とした以外は、実施例1と同様な操作を行い、本発明の変性ポリエステル樹脂(A−2)を含有するトナーバインダー(C−2)を得た。
トナーバインダー(C−2)のTgは45℃、N−アシルウレア基濃度は0.33ミリモル/g、酸価は6KOHmg/gであった。
【0124】
<実施例3>[トナーバインダー(C−3)の製造]
実施例1において、ポリエステル樹脂(P−1)を(P−3)に代え、カルボジイミド化合物(a−1)を16.0部、1.6kg/時とした以外は、実施例1と同様な操作を行い、本発明の変性ポリエステル樹脂(A−3)を含有するトナーバインダー(C−3)を得た。
トナーバインダー(C−3)のTgは53℃、N−アシルウレア基濃度は0.46ミリモル/g、酸価は10KOHmg/gであった。
【0125】
<実施例4>[トナーバインダー(C−4)の製造]
実施例1において、ポリエステル樹脂(P−1)100部を、(P−1)30部とポリエステル樹脂(B−1)70部に代え、カルボジイミド化合物(a−1)を6.4部、0.64kg/時とした以外は、実施例1と同様な操作を行い、本発明の変性ポリエステル樹脂(A−4)を含有するトナーバインダー(C−4)を得た。
トナーバインダー(C−4)のTgは51℃、N−アシルウレア基濃度は0.21ミリモル/g、酸価は6KOHmg/gであった。
【0126】
<実施例5>[トナーバインダー(C−5)の製造]
実施例1において、カルボジイミド化合物(a−1)をカルボジイミド化合物(a−2)18.8部、1.6kg/時とした以外は、実施例1と同様な操作を行い、本発明の変性ポリエステル樹脂(A−5)を含有するトナーバインダー(C−5)を得た。
トナーバインダー(C−5)のTgは62℃、N−アシルウレア基濃度は0.54ミリモル/g、酸価は20KOHmg/gであった。
【0127】
<実施例6>[トナーバインダー(C−6)の製造]
実施例1において、ポリエステル樹脂(P−1)を(P−4)に代え、カルボジイミド化合物(a−1)をカルボジイミド化合物(a−2)47.1部、4.71kg/時とした以外は、実施例1と同様な操作を行い、本発明の変性ポリエステル樹脂(A−6)を含有するトナーバインダー(C−6)を得た。
トナーバインダー(C−6)のTgは56℃、N−アシルウレア基濃度は1.18ミリモル/g、酸価は2KOHmg/gであった。
【0128】
<実施例7>[トナーバインダー(C−7)の製造]
実施例1において、ポリエステル樹脂(P−1)を(P−2)に代え、カルボジイミド化合物(a−1)をカルボジイミド化合物(a−4)17.5部、1.75kg/時とした以外は、実施例1と同様な操作を行い、本発明の変性ポリエステル樹脂(A−7)を含有するトナーバインダー(C−7)を得た。
トナーバインダー(C−7)のTgは40℃、N−アシルウレア基濃度は0.24ミリモル/g、酸価は13KOHmg/gであった。
【0129】
<実施例8>[トナーバインダー(C−8)の製造]
実施例1において、ポリエステル樹脂(P−1)100部を、(P−1)40部とポリエステル樹脂(B−1)60部に代え、カルボジイミド化合物(a−1)をカルボジイミド化合物(a−2)6.1部、0.61kg/時とした以外は、実施例1と同様な操作を行い、本発明の変性ポリエステル樹脂(A−8)を含有するトナーバインダー(C−8)を得た。
トナーバインダー(C−8)のTgは65℃、N−アシルウレア基濃度は0.21ミリモル/g、酸価は11KOHmg/gであった。
【0130】
<実施例9>[トナーバインダー(C−9)の製造]
実施例1において、ポリエステル樹脂(P−1)100部を、(P−3)50部とポリエステル樹脂(B−2)50部に代え、カルボジイミド化合物(a−1)をカルボジイミド化合物(a−3)16.8部、1.68kg/時とした以外は、実施例1と同様な操作を行い、本発明の変性ポリエステル樹脂(A−9)を含有するトナーバインダー(C−9)を得た。
トナーバインダー(C−9)のTgは48℃、N−アシルウレア基濃度は0.23ミリモル/g、酸価は6KOHmg/gであった。
【0131】
<実施例10>[トナーバインダー(C−10)の製造]
実施例1において、ポリエステル樹脂(P−1)100部を、(P−2)30部とポリエステル樹脂(B−2)70部に代え、カルボジイミド化合物(a−1)をカルボジイミド化合物(a−2)4.4部、0.44kg/時とした以外は、実施例1と同様な操作を行い、本発明の変性ポリエステル樹脂(A−10)を含有するトナーバインダー(C−10)を得た。
トナーバインダー(C−10)のTgは58℃、N−アシルウレア基濃度は0.15ミリモル/g、酸価は3KOHmg/gであった。
【0132】
【表2】
【0133】
<比較例1〜6>[トナーバインダー(C’−1)〜(C’−6)の製造]
表2に示したポリエステル樹脂(P−1)、(P−2)、(P’−1)、(P’−2)、(P’−3)とカルボジイミド化合物(a−1)、(a−4)(a’−1)、カルボジライトV−09[数平均分子量が15,000のTMXDI由来のカルボジイミド樹脂;日清紡ケミカル社製](a’−2)を仕込み、実施例1に準じて反応を行い、比較用の(変性)ポリエステル樹脂(A’−1)〜(A’−6)を含有するトナーバインダー(C’−1)〜(C’−6)を得た。
【0134】
<実施例11>[トナー(T−1)の製造]
樹脂(C−1)85部に対して、顔料のカーボンブラックMA−100[三菱化学(株)製]6部、荷電制御剤T−77[保土谷化学(製)]4部、離型剤カルナバワックス4部を加え下記の方法でトナー化した。まず、ヘンシェルミキサー[三井三池化工機(株)製 FM10B]を用いて予備混合した後、二軸混練機[(株)池貝製 PCM−30]で混練した。ついで超音速ジェット粉砕機ラボジェット[日本ニューマチック工業(株)製]を用いて微粉砕した後、気流分級機[日本ニューマチック工業(株)製 MDS−I]で分級し、体積平均粒径D50が8μmのトナー粒子を得た。
次いで、トナー粒子100部に流動化剤としてコロイダルシリカ(アエロジルR972:日本アエロジル製)1部をサンプルミルにて混合して、本発明のトナー(T−1)を得た。
【0135】
【表3】
【0136】
<実施例12〜20>[トナー(T−2)〜(T−10)の製造]
原料の配合は表3を参考にして実施例5と同様にトナーを製造し、トナー(T−2)〜(T−10)を得た。
【0137】
<比較例7〜12>[トナー(T’−1)〜(T’−6)の製造]
原料の配合は表3を参考にして実施例11と同様にトナーを製造し、トナー(T’−1)〜(T’−6)を得た。
【0138】
[性能評価]
得られたトナーの低温定着性、光沢性、耐ホットオフセット性、流動性、耐熱保存性、帯電安定性、粉砕性、画像強度、耐折り曲げ性、ドキュメントオフセット試験の測定方法、評価方法、判定基準を以下の方法で行った。その結果を表3に示した。
【0139】
<低温定着性>
トナーを紙面上に0.8mg/cm
2となるよう均一に載せる。このとき粉体を紙面に載せる方法は、熱定着機を外したプリンターを用いる。上記の重量密度で粉体を均一に載せることができるのであれば他の方法を用いてもよい。
この紙を加圧ローラーに定着速度(加熱ローラ周速)213mm/sec、定着圧力(加圧ローラ圧)10kg/cm
2の条件で通した時のコールドオフセットの発生温度(MFT)を測定した。
コールドオフセットの発生温度が低いほど、低温定着性に優れることを意味する。この評価条件では一般に140℃以下が必要とされる
【0140】
<光沢性>
低温定着性と同様に定着評価を行う。
画像の下に白色の厚紙を敷き、光沢度計(株式会社堀場製作所製、「IG−330」)を用いて、入射角度60度にて、印字画像の光沢度(%)を測定した。
光沢度が高いほど、光沢性に優れることを意味する。この評価条件では一般に5以上が必要とされる
【0141】
<耐ホットオフセット性(ホットオフセット発生温度)>
低温定着性と同様に定着評価し、定着画像へのホットオフセットの有無を目視評価した。
加圧ローラー通過後、ホットオフセットが発生した温度を耐ホットオフセット性(℃)とした。この評価条件では一般に190℃以上が必要とされる
【0142】
<流動性>
ホソカワミクロン製パウダーテスターでトナーのかさ密度(g/100ml)を測定し、流動性を下記の判定基準で判定した。
【0143】
[判定基準]
○:30以上
△:25以上30未満
×:25未満
【0144】
<耐熱保存性>
トナーを45℃の雰囲気で24時間静置し、ブロッキングの程度を目視で判断し、下記判定基準で耐熱保存性を評価した。
[判定基準]
○:全くブロッキングが発生していない。
△:一部にブロッキングが発生している。
×:全体にブロッキングが発生している。
【0145】
<帯電安定性>
トナー0.5gとフェライトキャリア(パウダーテック社製、F−150)20gとを50mlのガラス瓶に入れ、これを23℃、相対湿度(1)50%(2)85%で8時間以上調湿する。
ターブラーシェーカーミキサーにて50rpm×60分間摩擦攪拌し、それぞれの湿度での帯電量を測定した。
測定にはブローオフ帯電量測定装置[東芝ケミカル(株)製]を用いた。
「相対湿度85%の帯電量/相対湿度50%の帯電量」を計算し、これを帯電安定性の指標とした。
【0146】
[判定基準]
○:0.5以上
△:0.3以上0.5未満
×:0.3未満
【0147】
<粉砕性>
二軸混練機で混練、冷却した粗粉砕物(8.6メッシュパス〜30メッシュオンのもの)を、超音速ジェット粉砕機ラボジェット[日本ニューマチック工業(株)製]により下記の条件で微粉砕した。
粉砕圧:0.5MPa
粉砕時間:10分
アジャスターリング:15mm
ルーバーの大きさ:中
これを分級せずに、体積平均粒径(μm)をコールターカウンター−TAII(米国コールター・エレクトロニクス社製)により測定し、下記の判定基準で粉砕性を評価した。
【0148】
[判定基準]
○: 10μm未満
△: 10μm以上12μm未満
×: 12μm以上
【0149】
<画像強度>
低温定着性の評価で定着した画像を、JIS K5600に準じて、斜め45度に固定した鉛筆の真上から10gの荷重をかけ引っ掻き試験を行い、傷のつかない鉛筆硬度から画像強度を評価した。
鉛筆硬度が高いほど画像強度に優れることを意味する。一般にはH以上が必要とされる。
【0150】
<耐折り曲げ性>
低温定着性の評価で定着した画像を画像面が内側になるように紙を折り曲げ、30gの加重で3往復擦る。
紙を広げて、画像上の折り曲げたあとの白すじの有無を目視で判定した。
[判定基準]
○:白すじなし
△:わずかに白すじあり
×:白すじあり
【0151】
<ドキュメントオフセット性>
低温定着性の評価で得られた画像が定着されたA4の紙2枚を、定着面同士で重ね合わせ、420gの加重(0.68g/cm
2)をかけ、50℃で30分間静置する。
重ね合わせた紙同士を引き離したときの状態について、下記の判定基準でドキュメントオフセット性を評価した。
【0152】
[判定基準]
○:抵抗なし
△:パリパリと音がするが、紙面から画像は剥がれない
×:紙面から画像が剥がれる
【0153】
表3の評価結果から明らかなように、本発明の実施例5〜8のトナーはいずれもすべての性能評価が優れた結果が得られた。
一方、構成原料にカルボジイミド化合物(a)を含有しないポリエステル樹脂(A’−1)を用いた比較例6のトナーは、耐ホットオフセット性、耐熱保存性、耐ドキュメントオフセット性が不良であり、流動性、画像強度、耐折り曲げ性も不十分であった。N−アシルウレア基濃度が0.14ミリモル/g未満のトナーバインダー(C’−2)を用いた比較例7のトナーは、耐ホットオフセット性、耐熱保存性が不良であり、流動性、耐折り曲げ性、画像強度、耐ドキュメントオフセット性も不十分であった。他方、N−アシルウレア基濃度が1.50ミリモル/gを超えるトナーバインダー(C’−3)を用いた比較例8のトナーは、低温定着性、光沢度、流動性、粉砕性、耐折り曲げ性が不良であり、帯電安定性、画像強度も不十分であった。
Mnが15,000のカルボジイミド化合物(a'−1)を使用したトナーバインダー(C’−4)を用いた比較例9のトナーは、低温定着性、光沢度、流動性、粉砕性が不良であり、帯電安定性、画像強度、耐折り曲げ性も不十分であった。
Tgが80℃を超えるトナーバインダー(C’−5)を用いた比較例10のトナーは低温定着性、光沢度が不良であった。