【解決手段】自治体が保有する基本データ、介護保険データ、医療保険データ、及び自治体が実行する施策等の固有データを、一元化してデータベース10に構成する。クライアントコンピュータ31は、データベース10に所定のデータテーブルを構成するためのテーブル定義情報、及びデータ入力用の入力シート定義情報を備え、入力シート定義情報に従い入力用シート44を自動生成する。入力用シート44に入力されたデータはCSVファイル48に変換される。サーバコンピュータ32は、データテーブル作成部50により、テーブル定義情報からデータテーブルを作成する言語文52を自動生成し、言語文52によりデータテーブルを作成する。CSVファイル48を取り込み部54が取り込み、生成されたデータテーブルに記憶する。
クライアントコンピュータと、このクライアントコンピュータと接続されたサーバコンピュータと、このサーバコンピュータによりデータの記憶/読出しが制御されるデータベースとを有し、前記クライアントコンピュータが取り込んだ自治体が保有する住民に関する基本データ、介護保険データ、医療保険データ、及び自治体が実行する施策等の固有データを、サーバコンピュータにより一元化されたデータとして前記データベースに構成する地域包括ケア事業システムであって、
クライアントコンピュータは、
前記データベースに所定のデータテーブルを構成するためのテーブル定義情報、及びデータ入力用の入力シート定義情報がそれぞれ設定されており、前記入力シート定義情報に従って前記データテーブルに記憶させるデータを入力するための入力用シートを自動生成する自動生成部と、この入力用シートに入力されたデータのファイルを前記データベースに取り込み可能なファイル形式のファイルに変換するファイル変換部とを有し、
前記サーバコンピュータは、
前記クライアントコンピュータにより設定されたテーブル定義情報から、前記データベースに前記データテーブルを作成する言語文を自動生成し、この言語により前記データベースに前記データテーブルを自動生成するデータテーブル作成部と、前記データベースに取り込み可能なファイル形式の前記ファイルを取り込み、作成された前記データテーブルに記憶させる取り込み部と、
有する地域包括ケア事業システム。
前記分析部は、前記現状分析機能で得られた前記指標毎の格差の大きさから、格差の大きい指標を抽出し、かつ平均値からの乖離の大きい指標を多く有する集計単位を抽出する課題抽出機能を備えたことを特徴とする請求項2に記載の地域包括ケア事業システム。
前記分析部は、各指標の値を用いて、各指標間の相関係数をそれぞれ算出して、相関係数が高い指標の組み合わせを有効施策として抽出する有効施策抽出機能を備えたことを特徴とする請求項3に記載の地域包括ケア事業システム。
前記分析部は、前記有効施策に掛かる投資額を整理し、各有効施策実施による介護給付費の抑制額を算出して、これら投資額と抑制額との差を有効施策ごとに比較し、この比較結果により有効施策に優先順位をつける費用対効果シミュレーション機能を備えたことを特徴とする請求項4に記載の地域包括ケア事業システム。
前記分析部は、前記有効施策の実行により、格差が大きい指標がどのように変化するかをモニタリングする指標モニタリング機能、及び前記有効施策の実行により、平均からの乖離が大きい指標がどのように変化するかを集計単位別にモニタリングする集計単位モニタリング機能を備えたことを特徴とする請求項5に記載の地域包括ケア事業システム。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0010】
本発明の実施形態は前述のように、自治体における介護保険事業を含む各種の業務や事業を包括的に実施運用する地域包括ケア事業システムを得ることにあるので、
図1で示すように、各種の業務や事業に関係するデータを一元化したデータベース10を作成する。
図1は、データベース10に構成されるデータ種類、及びデータベース10と地域包括ケア事業システムが提供するソリューション機能15、及び地域包括ケア事業の対象事業領域16との関係を表す模式図である。
【0011】
前述のように、市町村などの自治体は、住民の生活に密接した各種事業を実現することであり、
図1で示すように、基本データ11として、住民住所データ111、住民共通番号(仮称)112、地域特性データ113、地域別取組み事例114、などのデータを保有している。また、自治体では、介護保険事業を実施しており、介護保険データ12として、要介護認定データ121、介護レセプトデータ122、介護事業所台帳123、などのデータを保有している。さらに、医療保険に関するデータ13として、高齢者特定健診データ131、国保/後期高齢者医療レセプトデータ132、医療機関台帳133、などのデータも入手可能である。
【0012】
上述した各種の業務及び事業は、長年にわたって実施されている定型のものであり、各種データ11,12,13は、個別ではあるが定型のフォーマットにより管理されている。
【0013】
自治体では、これらのほかに、自治体固有の住民のケアに関する施策が実施されており、それに伴う施策等固有データ14として、基本チェックリスト(日常生活圏域ニーズ調査)141、小地域・事業者・利用者向けの施策計画・実績142、などのデータが発生し、これらを保有している。これらの施策等固有データ14は、それぞれの施策に応じた各種の形式のものであり、担当部署毎に固有のフォーマットで保管されているのが現状である。
【0014】
そこで、この発明の実施の形態では、これらのデータ11,12,13,14を一元化したデータベース10を作成する。なお、このデータベース10を作成するための具体的システム構成は後述する。
【0015】
このデータベース10では、これらデータ11,12,13,14の関連する部分を紐付けして一元化している。このため、基本データ11、介護保険データ12、医療保険データ13及び施策等固有データ14が一元化された分析用の基盤となるデータベース10が得られる。また、自治体固有の施策等固有データ14をデータベース化することにより、施策実施効果の定量的検証が可能となる。特に、従来困難だった小地域・事業者・利用者の状態像や投資実行してきた多種多様な施策の実施効果の定量的検証が可能になる。
【0016】
地域包括ケア事業は図示のように対象事業領域16として複数の事業領域161,162,163,164,165,166を持っており、各事業領域161,162,163,164,165,166において各種の施策が実行される。このため、これら施策を達成させるための指標が各事業領域161,162,163,164,165,166別に設定されており、ソリューション機能15は、これら指標が登録された指標メニュー151を有する。
【0017】
ソリューション機能15はコンピュータにより実現されるものであり、データベース10に一元化された各データ11,12,13,14を用いて、後述するように、各事業領域161,162,163,164,165,166において実行される施策の達成状況や実施状況を、施策ごとに設定された指標の値を集計して分析する。このために、集計単位152や各種の分析機能153が具備されている。
【0018】
地域包括ケア事業は、
図2で示すように、事業計画策定フェーズP、施策実行フェーズD、課題抽出フェーズC、施策策定フェーズAからなるPDCAサイクルにより実施する。すなわち、各フェーズPDCAは、
図1で示したデータベース10、及びフェーズPDCA毎に機能するコンピュータシステム(
図3により後述する)により実行される。なお、通常、PDCAサイクルは文字通り事業計画策定フェーズPからスタートするが、介護保険事業や医療保険事業等が、個別ではあるが既に実施されているので、この発明の実施形態では、既実施部分の課題抽出フェーズCからスタートする。
【0019】
図3は、上述したPDCAサイクルを実行すると共に、前述したデータベース10を作成するためのコンピュータシステムの構成を示している。
【0020】
このコンピュータシステムは、クライアントコンピュータ(以下、単にクライアントと呼ぶ)31と、このクライアントと接続されたサーバコンピュータ(以下、単にサーバと呼ぶ)32とを有し、データベース10は、このサーバ32によりデータの記憶/読出しが制御される。
【0021】
クライアント31は、自治体の各事業担当部署などに設けられるコンピュータであり、データ取り込み部311にて、自治体が保有する住民に関する基本データ11、介護保険データ12、医療保険データ13、及び自治体が実行する施策を含む施策等固有データ14を取り込み、サーバ32に提供する。
【0022】
サーバ32は、データベース作成部321により、上述した各データ11,12,13,14を一元化されたデータとしてデータベース10の元データ保管部101に記憶させる。データベース作成部321による一元化は、各データ11,12,13に保有される個人や事業者を特定するユニークな番号、又は個人や事業者を特定するユニークな番号を暗号化したコード(たとえば、ハッシュ変換による変換コード)を利用し、施策等固有データ14は事業者を特定するユニークな番号を付加して、データを作成・収集する。
【0023】
上述のように、データ11、12、13は個別ではあるが定型のフォーマットである。これに対し、施策等固有データ14はそれぞれの施策に応じた各種の形式のものであり、各担当部署が施策実施の都度、データを収集するための入力用シートとデータベース10のフォーマット(データテーブル)を作成している。クライアント31及びサーバ32の機能により、施策等固有データ14を収集するための入力シート及びデータベース10のフォーマット(データテーブル)を作成し、データベース10に施策等固有データ14を保存させるための構成を
図4により説明する。
【0024】
図4において、クライアント31には、テーブル定義情報/入力シート定義情報41が、一般的に使用される表計算ソフォトウェアの方式、例えば、EXCEL(登録商標)方式でそれぞれ設定されている。
【0025】
テーブル定義情報は、一般的に使用されるデータベース管理システムの方式、例えば、ORACLE(登録商標)方式の汎用データベース10に所定のデータテーブルを構成するための情報で、データの型、大きさ、格納場所等が定義されている。入力シート定義情報は、データベース10に構成されたデータテーブルに記憶させるデータを入力するための入力用シート44を生成するための定義情報である。
【0026】
自動生成部42は、入力シート定義情報及びクライアント31が有する入力シート種別テンプレート(EXCEL(登録商標)ファイル)/入力シート種別テンプレート定義情報43とから入力用シート(EXCEL(登録商標)ファイル)44を自動生成する。この入力用シート44は、自治体の事業者等がデータを入力するために用いられる。この実施の形態では、自動生成部45にて、事業領域単位に、複数事業者の入力用シート(EXCEL(登録商標)ファイル)44から、事業領域別データ(EXCEL(登録商標)ファイル)46を自動生成している。
【0027】
入力用シート44に入力されたデータは事業領域別データ46を経てファイル変換部47によりデータベースに取り込み可能なファイル形式であるCSVファイル48に変換される。
【0028】
サーバ32では、クライアント31により設定されたテーブル定義情報41に基づき、データテーブル作成部50にて、データベース10にデータテーブルを作成する。すなわち、テーブル定義情報41に基づいて自動生成部51によりデータテーブル作成言語文52を自動生成する。自動生成部51は、テーブル定義情報(EXCEL(登録商標)ファイル)から、ORACLE(登録商標)テーブル生成に必要なDDL(Data Definition Language)文を自動生成する。
【0029】
このデータテーブル作成言語文52によりデータベース10にデータテーブルを自動生成するべく自動生成部53にて出力する。すなわち、自動生成部53は、ORACLE(登録商標)データテーブル生成に必要なDDL (Data Definition Language)文から、ORACLE (登録商標)データテーブルを自動生成する
また、サーバ32は、取り込み部54により、CSVファイル48を取り込み、生成されたデータテーブルに記憶させる。
【0030】
ここで、データベース10へのファイル取り込みチェック項目定義情報56は、自動生成部55により、テーブル定義情報(EXCEL(登録商標)ファイル)41から自動生成される。取り込み部54は、CSVファイル48を取り込む際、ファイル取り込みチェック項目定義情報56に従い、取り込みファイルをチェックしながら、ファイルを取り込む。
【0031】
これらの機能により、
図1及び
図3で示したデータ14は、データベース10に保管される。データ11,12,13及びデータ14は、データベース作成部321により、互いに関連する項目が、個人や事業者を特定するユニークな番号、又は個人や事業者を特定するユニークな番号を暗号化したコード(たとえば、ハッシュ変換による変換コード)により紐付けられ,相互に利用可能な状態に一元化され、データベース10の元データ保管部101に保管される。
【0032】
サーバ32は、上述したデータベース作成機能だけでなく,前述のように、地域包括ケア事業を実施するため、
図2で示すPDCAサイクルを実行する。そのために、サーバ32は、指標算出部322と、集計部323と、分析部324とを有する。
【0033】
先ず、指標算出部322について説明する。
【0034】
地域包括ケア事業は、
図1で説明したように、複数の事業領域161,162,163,164,165,166を持っており、これら事業領域毎に所定の施策を実行する。そして、これら施策を達成するために指標が、指標算出部322に設けられた指標メニュー(
図1の151に対応)に、複数の事業領域毎にそれぞれ設定され、登録されている。
【0035】
指標算出部322は、データベース10の元データ保管部101に保管されたデータの、所定期間のデータを用いて、上述のように事業領域毎に、地域包括ケアの利用者や、地域包括ケアを実施する実施者に対して予め設定された複数の指標の値を指標毎に算出する。指標は事業領域における所定の施策を達成するために予め設定されたもので、これら複数の指標による施策の達成度、すなわち、指標の値を、データベース10に保管された対応するデータを用いて算出する。算出された指標の値は、データベースの指標保管部102に保管される。
【0036】
課題抽出フェーズCの機能は、現状分析、 課題抽出、及び 優先施策洗い出しであるため集計部323は、指標毎に算出された指標の値を、各指標別に、所定の集計単位(
図1の152が対応)毎に集計する。集計単位は、地域包括ケアを実施する小地域や事業者、或は地域包括ケア事業の利用者などであり、指標の内容に応じて決められる。分析部324(
図1の分析機能153が対応)は、指標毎に、集計単位別の数値から集計単位間の格差及び各集計単位の平均値からの乖離の大きさを捉える現状分析機能を実行する。そして、集計単位間の格差、及び平均からの乖離の大きさから、格差が大きい指標を抽出し、かつ平均からの乖離の大きい指標を多く有する集計単位を抽出し、課題を明確化する。これらの分析結果はデータベース10の分析結果保管部103に保管される。そして、クライアント31からの要求によりクライアント31に出力され、クライアント31での分析に供される。
【0037】
施策策定フェーズAの場合は、その機能が指標整備、有効施策抽出、有効施策確定であるから、分析部324は、有効施策抽出のため、各指標の値を用いて、各指標間の相関係数をそれぞれ算出する。そして、相関係数が高い指標の組み合わせを有効施策として抽出する。
【0038】
事業計画策定フェーズPは、その機能が費用対効果シミュレーションと、介護保険事業計画の策定であるため、分析部324は、費用対効果シミュレーション機能を実行する。すなわち、有効施策に掛かる投資額を整理し、各有効施策実施による介護給付費の抑制額を算出する。そして、これら投資額と抑制額との差を求め、この差を有効施策ごとに比較し、この比較結果により有効施策に優先順位をつける。このシミュレーション機能により費用対効果の高い有効施策を優先することが可能となる。
【0039】
施策実行フェーズDの場合は、その機能が関係先への周知、 施策実行、指標モニタリング、集計単位モニタリング、 事業計画実行管理であり、コンピュータの機能として、分析部324は、指標モニタリング機能と集計単位モニタリング機能とを実行する。指標モニタリング機能では、格差の大きな指標をモニタリング対象とし、モニタリング周期毎に複数の集計単位別に該当する指標の値を検出する。そして、集計単位間の格差を算出することで、時系列な格差の推移を捉える。このため有効施策の実行により、格差が大きい指標がどのように変化するかをモニタリングすることができる。
【0040】
集計単位モニタリング機能では、平均から悪い方に乖離の大きい指標を多く有する集計単位をモニタリング対象とし、この集計単位に関する複数の指標の値を、モニタリング周期毎に検出して目標値と比較することで、時系列な各指標の判定結果が得られる。このため、有効施策の実行により、平均からの乖離が大きい指標がどのように変化するかを集計単位別にモニタリングすることができる。
【0041】
以上のように、本発明の実施形態によれば、これまで、個々に実施され、個々に管理されていたそれぞれのデータをデータベースに一元化し、このデータベースを用いて、PDCAサイクルにより地域包括ケアを実施できるので、相関分析等、客観的かつ定量的なデータ分析により、施策の有効性が具体的に示される。また、分析機能等がフェーズPDCAに沿って用意されているため、継続性のある統一基準に基づく定量的事業検証が可能となる。すなわち。従来の単年度あるいは事業計画期間毎に実施する従来の調査分析事業と比較し、事業の評価検証の継続性が期待できる。さらに、各事業計画期間をまたがる指標のメンテナンスが平易となる。
【0042】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他のさまざまな形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。