上記絶縁体部は、第1の軸方向に幅方向、第2の軸方向に長さ方向、第3の軸方向に高さ方向を有し、非磁性材料で構成される。上記コイル部は、上記第1の軸方向のまわりに巻回された周回部を有し、上記絶縁体部の内部に配置される。上記絶縁体部の長さ寸法に対する高さ寸法の比率は、上記第2の軸方向に沿った上記周回部の内周部間の長さ寸法に対する上記第3の軸方向に沿った上記周回部の内周部間の高さ寸法の比率の1.5倍以下である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
【0020】
<第1の実施形態>
[基本構成]
図1は、本発明の一実施形態に係る電子部品の概略透視斜視図、
図2はその概略透視側面図、
図3はその概略透視上面図である。
なお、各図においてX軸、Y軸及びZ軸方向は相互に直交する3軸方向を示している。
【0021】
本実施形態の電子部品100は、表面実装用のコイル部品として構成される。電子部品100は、絶縁体部10と、内部導体部20と、外部電極30とを備える。
【0022】
絶縁体部10は、天面101、底面102、第1の端面103、第2の端面104、第1の側面105及び第2の側面106を有し、X軸方向に幅方向、Y軸方向に長さ方向、Z軸方向に高さ方向を有する直方体形状に形成される。絶縁体部10は、例えば、幅寸法が0.05〜0.2mm、長さ寸法が0.1〜0.4mm、高さ寸法が0.05〜0.4mmに設計される。本実施形態において、幅寸法は約0.2mm、長さ寸法は約0.35mm、高さ寸法は約0.2mmである。
【0023】
絶縁体部10は、本体部11と天面部12とを有する。本体部11は、内部導体部20を内蔵し、絶縁体部10の主要部を構成する。天面部12は、絶縁体部10の天面101を構成する。天面部12は、例えば電子部品100の型番等を表示する印刷層として構成されてもよい。
【0024】
本体部11及び天面部12は、樹脂を主体とする絶縁材料で構成される。本体部11を構成する絶縁材料としては、熱、光、化学反応等により硬化する樹脂が用いられ、例えば、ポリイミド、エポキシ樹脂、液晶ポリマ等が挙げられる。一方、天面部12は、上記材料のほか、樹脂フィルム等で構成されてもよい。あるいは、絶縁体部10はガラス等のセラミックス材料で構成されてもよい。
【0025】
絶縁体部10は、樹脂中にフィラーを含む複合材料が用いられてもよい。フィラーとしては、典型的には、シリカ、アルミナ、ジルコニア等のセラミック粒子が挙げられる。セラミックス粒子の形状は特に限定されず、典型的には球状であるが、これに限られず、針状、鱗片状等であってもよい。
【0026】
内部導体部20は、絶縁体部10の内部に設けられる。内部導体部20は、複数の柱状導体21と、複数の連結導体22とを有し、これら複数の柱状導体21及び連結導体22とによりコイル部20Lが構成される。
【0027】
複数の柱状導体21は、Z軸方向に平行な軸心を有する略円柱形状に形成される。複数の柱状導体21は、概略Y軸方向に相互に対向する2つの導体群で構成される。このうち一方の導体群を構成する第1の柱状導体211は、X軸方向に所定の間隔をおいて配列され、他方の導体群を構成する第2の柱状導体212も同様に、X軸方向に所定の間隔をおいて配列される。
【0028】
なお、略円柱形状とは、軸直方向(軸心に垂直な方向)の断面形状が円形である柱体のほか、上記断面形状が楕円形または長円形である柱体をも含み、楕円形または長円形としては、例えば、長軸/短軸の比が3以下のものを意味する。
【0029】
第1及び第2の柱状導体211,212は、それぞれ同一径及び同一高さで構成される。図示の例において第1及び第2の柱状導体211,212は、それぞれ5本ずつ設けられている。後述するように、第1及び第2の柱状導体211,212は、複数のビア導体をZ軸方向に積層することで構成される。
【0030】
なお、略同一径とは、抵抗の増加を抑制するためのもので、同一方向で見た寸法のバラツキが例えば10%以内に収まっていることをいい、略同一高さとは、各層の積み上げ精度を確保するためのもので、高さのバラツキが例えば±1μmの範囲に収まっていることをいう。
【0031】
複数の連結導体22は、XY平面に平行に形成され、Z軸方向に相互に対向する2つの導体群で構成される。このうち一方の導体群を構成する第1の連結導体221は、Y軸方向に沿って延び、X軸方向に間隔をおいて配列され、第1及び第2の柱状導体211,212の間を個々に接続する。他方の導体群を構成する第2の連結導体222は、Y軸方向に対して所定角度傾斜して延び、X軸方向に間隔をおいて配列され、第1及び第2の柱状導体211,212の間を個々に接続する。図示の例において、第1の連結導体221は5つの連結導体で構成され、第2の連結導体222は4つの連結導体で構成される。
【0032】
図1において、第1の連結導体221は、所定の一組の柱状導体211,212の上端に接続され、第2の連結導体222は、所定の一組の柱状導体211,212の下端に接続される。より詳細には、第1及び第2の柱状導体211,212と第1及び第2の連結導体221,222は、コイル部20Lの周回部Cn(C1〜C5)を構成し、これら周回部CnがX軸方向のまわりに矩形の螺旋を描くように相互に接続される。これにより、絶縁体部10の内部において、X軸方向に軸心(コイル軸)を有する開口形状が矩形のコイル部20Lが形成される。
【0033】
本実施形態において周回部Cnは、5つの周回部C1〜C5で構成される。各周回部C1〜C5の開口形状は、それぞれ概略同一の形状に形成される。
【0034】
内部導体部20は、引出し部23と、櫛歯ブロック部24とをさらに有し、これらを介してコイル部20Lが外部電極30(31,32)へ接続される。
【0035】
引出し部23は、第1の引出し部231と、第2の引出し部232とを有する。第1の引出し部231は、コイル部20Lの一端を構成する第1の柱状導体211の下端に接続され、第2の引出し部232は、コイル部20Lの他端を構成する第2の柱状導体212の下端に接続される。第1及び第2の引出し部231,232は、第2の連結導体222と同一のXY平面上に配置されており、Y軸方向に平行に形成される。
【0036】
櫛歯ブロック部24は、Y軸方向に相互に対向するように配置された第1及び第2の櫛歯ブロック部241,242を有する。第1及び第2の櫛歯ブロック部241,242は、各々の櫛歯部の先端を
図1において上方へ向けて配置される。絶縁体部10の両端面103,104及び底面102には、櫛歯ブロック部241,242の一部が露出している。第1及び第2の櫛歯ブロック部241,242各々の所定の櫛歯部の間には、第1及び第2の引出し部231,232がそれぞれ接続される(
図3参照)。第1及び第2の櫛歯ブロック部241,242各々の底部には、外部電極30の下地層を構成する導体層301,302がそれぞれ設けられる(
図2参照)。
【0037】
外部電極30は、表面実装用の外部端子を構成し、Y軸方向に相互に対向する第1及び第2の外部電極31,32を有する。第1及び第2の外部電極31,32は、絶縁体部10の外面の所定領域に形成される。
【0038】
より具体的に、第1及び第2の外部電極31,32は、
図2に示すように、絶縁体層10の底面102のY軸方向両端部を被覆する第1の部分30Aと、絶縁体層10の両端面103,104を所定の高さにわたって被覆する第2の部分30Bとを有する。第1の部分30Aは、導体層301,302を介して第1及び第2の櫛歯ブロック部241,242の底部に電気的に接続される。第2の部分30Bは、第1及び第2の櫛歯ブロック部241,242の櫛歯部を被覆するように絶縁体層10の端面103,104に形成される。
【0039】
柱状導体21、連結導体22、引出し部23、櫛歯ブロック部24及び導体層301,302は、例えば、Cu(銅)、Al(アルミニウム)、Ni(ニッケル)等の金属材料で構成され、本実施形態ではいずれも銅又はその合金のめっき層で構成される。第1及び第2の外部電極31,32は、例えばNi/Snめっきで構成される。
【0040】
図4は、電子部品100の上下を反転して示す概略透視側面図である。電子部品100は、
図4に示すように、フィルム層L1と、複数の電極層L2〜L6の積層体で構成される。本実施形態では、天面101から底面102に向けてフィルム層L1及び電極層L2〜L6をZ軸方向に順次積層することで作製される。層の数は特に限定されず、ここでは6層として説明する。
【0041】
フィルム層L1及び電極層L2〜L6は、当該各層を構成する絶縁体部10及び内部導体部20の要素を含む。
図5A〜Fはそれぞれ、
図4におけるフィルム層L1及び電極層L2〜L6の概略上面図である。
【0042】
フィルム層L1は、絶縁体部10の天面101を形成する天面部12で構成される(
図5A)。電極層L2は、絶縁体部10(本体部11)の一部を構成する絶縁層110(112)と、第1の連結導体221とを含む(
図5B)。電極層L3は、絶縁層110(113)と、柱状導体211,212の一部を構成するビア導体V1とを含む(
図5C)。電極層L4は、絶縁層110(114)、ビア導体V1のほか、櫛歯ブロック部241,242の一部を構成するビア導体V2を含む(
図5D)。電極層L5は、絶縁層110(115)、ビア導体V1,V2のほか、引出し部231,232や第2の連結導体222を含む(
図5E)。そして、電極層L6は、絶縁層110(116)と、ビア導体V2とを含む(
図5F)。
【0043】
電極層L2〜L6は、接合面S1〜S4(
図4)を介して高さ方向に積層される。したがって各絶縁層110やビア導体V1,V2は、同じく高さ方向に境界部を有する。そして電子部品100は、各電極層L2〜L6を、電極層L2から順に作製しながら積層するビルドアップ工法により製造される。
【0044】
[基本製造プロセス]
続いて、電子部品100の基本製造プロセスについて説明する。電子部品100は、ウェハレベルで複数個同時に作製され、作製後に素子毎に個片化(チップ化)される。
【0045】
図6〜
図8は、電子部品100の製造工程の一部を説明する素子単位領域の概略断面図である。具体的な製造方法としては、支持基板S上に天面部12を構成する樹脂フィルム12A(フィルム層L1)が貼着され、その上に電極層L2〜L6が順次作製される。支持基板Sには、例えば、シリコン、ガラス、あるいはサファイア基板が用いられる。典型的には、内部導体部20を構成する導体パターンを電気めっき法により作製し、その導体パターンを絶縁性樹脂材料で被覆して絶縁層110を作製する工程が繰り返し実施される。
【0046】
図6及び
図7は、電極層L3の製造工程を示している。
【0047】
この工程では、まず、電極層L2の表面に電気めっきのためのシード層(給電層)SL1が例えばスパッタ法等により形成される(
図6A)。シード層SL1は導電性材料であれば特に限定されず、例えば、Ti(チタン)又はCr(クロム)で構成される。電極層L2は、絶縁層112と、連結導体221とを含む。連結導体221は、樹脂フィルム12Aと接するように絶縁層112の下面に設けられる。
【0048】
続いて、シード層SL1の上にレジスト膜R1が形成される(
図6B)。レジスト膜R1に対する露光、現像等の処理が順に行われることで、シード層SL1を介して、柱状導体21(211,212)の一部を構成するビア導体V13に対応する複数の開口部P1を有するレジストパターンが形成される(
図6C)。その後、開口部P1内のレジスト残渣を除去するデスカム処理が行われる(
図6D)。
【0049】
続いて、支持基板SがCuめっき浴に浸漬され、シード層SL1への電圧印加によって開口部P1内にCuめっき層からなる複数のビア導体V13が形成される(
図6E)。そして、レジスト膜R1及びシード層SL1が除去された後(
図7A)、ビア導体V13を被覆する絶縁層113が形成される(
図7B)。絶縁層113は、樹脂材料を電極層L2の上に印刷、塗布、あるいは樹脂フィルムを貼着した後、硬化させる。硬化後、CMP(化学的機械的研磨装置)やグラインダ等の研磨装置を用いて、ビア導体V13の先端が露出するまで絶縁層113の表面が研磨される(
図7C)。
図7Cは、一例として、支持基板Sがその上下を反転して自転可能な研磨ヘッドHにセットされ、公転する研磨パッドPで絶縁層113の研磨処理(CMP)が行われている様子を示している。
以上のようにして、電極層L2の上に電極層L3が作製される(
図7D)。
【0050】
なお、絶縁層112の形成方法について記載を省略したが、典型的には、絶縁層112もまた、絶縁層113と同様に印刷、塗布、あるいは貼着した後、硬化させ、CMP(化学的機械的研磨装置)やグラインダ等により研磨を行う方法で作製される。
【0051】
以後同様にして、電極層L3の上に電極層L4が作製される。
【0052】
まず、電極層L3の絶縁層113(第2の絶縁層)上に、複数のビア導体V13(第1のビア導体)と接続される複数のビア導体(第2のビア導体)が形成される。すなわち、上記第2の絶縁層の表面に上記第1のビア導体の表面を被覆するシード層が形成され、上記シード層の上に、上記第1のビア導体の表面に対応する領域が開口するレジストパターンが形成され、上記レジストパターンをマスクとする電気メッキ法により上記第2のビア導体が形成される。続いて、上記第2の絶縁層上に、上記第2のビア導体を被覆する第3の絶縁層が形成される。その後、上記第2のビア導体の先端が露出するまで上記第3の絶縁層の表面が研磨される。
【0053】
なお、上記第2のビア導体の形成工程においては、櫛歯ブロック部24(241,242)の一部を構成するビア導体V2もまた同時に形成される(
図4、
図5D参照)。この場合、上記レジストパターンとして、上記第2のビア導体の形成領域のほか、ビア導体V2の形成領域が開口するレジストパターンが形成される。
【0054】
図8A〜Dは、電極層L5の製造工程の一部を示している。
【0055】
ここでもまず、電極層L4の表面に、電気めっき用のシード層SL3と、開口部P2,P3を有するレジストパターン(レジスト膜R3)とが順に形成される(
図8A)。その後、開口部P2,P3内のレジスト残渣を除去するデスカム処理が行われる(
図8B)。
【0056】
電極層L4は、絶縁層114と、ビア導体V14,V24とを有する。ビア導体V14は、柱状導体21(211,212)の一部を構成するビア(V1)に相当し、ビア導体V24は櫛歯ブロック部24(241,242)の一部を構成するビア(V2)に相当する(
図5C,D参照)。開口部P2は、シード層SL3を介して電極層L4内のビア導体V14と対向し、開口部P3は、シード層SL3を介して電極層L4内のビア導体V24と対向する。開口部P2は、各連結導体222に対応する形状に形成される。
【0057】
続いて、支持基板SがCuめっき浴に浸漬され、シード層SL3への電圧印加によって開口部P2,P3内にCuめっき層からなるビア導体V25と連結導体222とがそれぞれ形成される(
図8C)。ビア導体V25は、櫛歯ブロック部24(241,242)の一部を構成するビア(V2)に相当する。
【0058】
続いて、レジスト膜R3及びシード層SL3が除去され、ビア導体V25と連結導体222とを被覆する絶縁層115が形成される(
図8D)。その後図示せずとも、ビア導体V25の先端が露出するまで絶縁層115の表面が研磨され、さらにシード層の形成、レジストパターンの形成、電気めっき処理等の工程を繰り返すことで、
図4及び
図5Eに示す電極層L5が作製される。
【0059】
その後、絶縁層115の表面(底面102)に露出する櫛歯ブロック部24(241,242)に導体層301,302が形成された後、第1及び第2の外部電極31,32がそれぞれ形成される。
【0060】
[本実施形態の構造]
近年における部品の小型化に伴い、コイル特性の確保が困難になる傾向にある。すなわちコイル部品の特性は、内蔵するコイル部の大きさ、形状等に大きく依存し、典型的には、コイル部の開口が大きいほど高いインダクタンス特性が得られる。
しかしながら、部品の小型化により絶縁体部の大きさに制約が生じ、その結果、コイル部の有効面積が減少し、インダクタンス特性の低下を招くことになる。
そこで本実施形態では、コイル部の開口の寸法比率を最適化することで、小型化を図りつつ、コイル部品の高特性化を図るようにしている。
【0061】
図9A〜Cは、コイル部品の高周波特性を説明する模式図である。
図9Aに示すコイル部品200は、直方体形状の絶縁体部210と、その内部に配置されたコイル部220Cとを有する。ここでは理解を容易にするため、コイル部220Cの周回部Cnを斜線(ハッチング)が施された単純な矩形環状領域で表すものとする(
図10においても同様)。なお符号230は外部電極である。
【0062】
コイル部品の典型的な小型化手法では、絶縁体部210が低背化し、このため周回部Cnの上辺側(以下、A側という)と下辺側(以下、B側という)とが相互に接近する。周回部CnのA側とB側とが接近すると、A側とB側とで形成される磁束(磁界)間の影響が大きくなる。すなわち
図9Bに示すように、A側に流れる電流IAで形成される磁束ΦAは、B側に流れる電流IBで形成されるΦBと逆向きであるため、A側とB側とが接近するほど磁束ΦAと磁束ΦBとの相互干渉(打ち消し合い)が大きくなる。その結果、周回部Cnの開口全体の磁束ΦTも小さくなり、設計通りのインダクタンスを得ることができなくなる。
【0063】
そこで本実施形態では
図9Cに示すように、A側とB側との間の距離を大きくすることで、双方において形成される磁束ΦA、ΦBの相互干渉を抑制し、周回部Cn全体の磁束ΦTを大きくして、インダクタンスを高くするようにしている。また、インダクタンスを高くできるということは同時に線路長を短くすることができることにつながり、その結果、抵抗が低く抑えられることからQ値を高くすることができるようになる。
【0064】
周回部CnのA側及びB側の離間距離は、絶縁体部210の高背化で実現することができる。これにより、コイル部品の実装面積が大きくなることはないため、コイル部品の小型化を図りつつ、コイル特性の向上が図れることになる。
【0065】
上記典型的な小型化手法が用いられたコイル部品200では、チップ部品の外形寸法の制約から、周回部の開口(コア)に当たる導体内周面の寸法比率(hd/ld)が小さくならざるをえなかった(
図9A参照)。これに対して本実施形態では、チップ部品の外形寸法から見直し、絶縁体部10の大きさ(部品体積)を変えることなく、寸法比率(hd/ld)を大きくしたことを特徴としている。これにより、効率よくインダクタンスを高くすることができ、結果としてQ値の高いコイル部品を得ることができる。
【0066】
具体的に本実施形態のコイル部品100は、
図10に示すように、絶縁体部10の長さ寸法(La)に対する高さ寸法(Ha)の比率(Ha/La)は、Y軸方向に沿った周回部Cnの内周部間の長さ寸法(ld)に対するZ軸方向に沿った周回部Cnの内周部間の高さ寸法(hd)の比率(hd/ld)の1.5倍以下となるように構成される。これにより、コイル部品100のQ値を効率良く高めることができる。
【0067】
ここで、「Y軸方向に沿った周回部Cnの内周部間の長さ寸法(ld)」は、当該周回部Cnを構成する第1及び第2の柱状導体211,212の対向面間の距離をYZ平面に投影したY軸方向に関する長さをいう。
また、「Z軸方向に沿った周回部Cnの内周部間の高さ寸法(hd)」は、当該周回部Cnを構成する第1及び第2の連結導体221,222の対向面間の距離をYZ平面に投影したZ軸方向に関する長さをいう。
寸法の測定については、Z軸方向(高さ方向)から絶縁体の高さ方向の中心を通る面まで断面研磨、ミリングを行い、走査型電子顕微鏡(SEM)による200倍程度の観察により、第1の柱状導体211と第2の柱状導体212の間隔を測定し、周回部Cnの内周部間の長さ寸法(ld)とする。また、X軸方向(幅方向)から絶縁体部の幅方向の中心を通る面まで断面研磨、ミリングを行い、第1の連結導体221と第2の連結導体222の間隔をSEMにより測定し、周回部Cnの内周部間の高さ寸法(hd)とする。他の部分の寸法測定についても、それぞれ上記の観察試料を用いて行う。
【0068】
周回部Cnの開口寸法比率(hd/ld)は特に限定されず、本実施形態では、0.6以上1.2以下である。これにより高いインダクタンス値及びQ値をより安定して確保することができる。
【0069】
また、コイル軸方向(X軸方向)から見た絶縁体部12の面積(Sa)に対する周回部Cnの内周部で区画される面積(Sd)の比率(Sd/Sa)も特に限定されないが、本実施形態では、0.22以上0.45以下(22%以上45%以下)である。これにより、コイル部品100のインダクタンス値を効率よく高めることができる。
【0070】
さらに本実施形態によれば、第1及び第2の櫛歯ブロック部241,242が各々の櫛歯部の先端を
図1において上方へ向けて配置されているため、高背化に伴う絶縁体部10の剛性不足を補うことができる。これにより、コイル部品100の信頼性を高めることができる。
【0071】
<実験例>
以下、
図10及び
図11を参照して、本発明者らにより行われた実験例について説明する。周回部Cnの開口をコア部という。
【0072】
(実験例1)
各部の寸法が以下のとおりであるガラス製の絶縁体部及びコイル部を備えたコイル部品サンプルを作製した。
【0073】
・絶縁体部:長さ(La)370μm、幅(Wa)200μm、高さ(Ha)215μm
・コイル部:Y軸方向の導体寸法(lc)35μm、X軸方向の導体寸法(wc)10μm、Z軸方向の導体寸法(hc)35μm、X軸方向に隣接する周回部間の距離(導体間距離g)20μm、Y軸方向のコア部寸法(ld)200μm、全周回部CnにおけるX軸方向のコア部寸法(wd)130μm、Z軸方向のコア部寸法(hd)85μm
・サイドマージン:Y軸方向の寸法(lb)50μm、X軸方向の寸法(wb)30μm、Z軸方向の寸法(hb)30μm
【0074】
作製したサンプルについて、RFインピーダンスアナライザ(Agilent社製E4991A)を用いてインダクタンス(L値)(測定周波数500MHz)及びQ値(測定周波数1.8GHz)をそれぞれ測定したところ、L値は2.6nH、Q値は27であった。
【0075】
(実験例2)
絶縁体部を長さ(La)350μm、幅(Wa)200μm、高さ(Ha)230μm、コア部寸法をY軸方向(ld)180μm、X軸方向(wd)130μm、Z軸方向(hd)100μmとした以外は、実験例1と同一の条件でサンプルを作製した。
作製したサンプルについて、実験例1と同一の条件でインダクタンス(L値)及びQ値を測定したところ、L値は2.7nH、Q値は28であった。
【0076】
(実験例3)
絶縁体部を長さ(La)320μm、幅(Wa)200μm、高さ(Ha)250μm、コア部寸法をY軸方向(ld)150μm、X軸方向(wd)130μm、Z軸方向(hd)120μmとした以外は、実験例1と同一の条件でサンプルを作製した。
作製したサンプルについて、実験例1と同一の条件でインダクタンス(L値)及びQ値を測定したところ、L値は2.8nH、Q値は29であった。
【0077】
(実験例4)
絶縁体部を長さ(La)305μm、幅(Wa)200μm、高さ(Ha)265μm、コア部寸法をY軸方向(ld)135μm、X軸方向(wd)130μm、Z軸方向(hd)135μmとした以外は、実験例1と同一の条件でサンプルを作製した。
作製したサンプルについて、実験例1と同一の条件でインダクタンス(L値)及びQ値を測定したところ、L値は2.9nH、Q値は30であった。
【0078】
(実験例5)
絶縁体部を長さ(La)275μm、幅(Wa)200μm、高さ(Ha)290μm、コア部寸法をY軸方向(ld)105μm、X軸方向(wd)130μm、Z軸方向(hd)160μmとした以外は、実験例1と同一の条件でサンプルを作製した。
作製したサンプルについて、実験例1と同一の条件でインダクタンス(L値)及びQ値を測定したところ、L値は2.6nH、Q値は29であった。
【0079】
(実験例6)
絶縁体部を長さ(La)265μm、幅(Wa)200μm、高さ(Ha)300μm、コア部寸法をY軸方向(ld)95μm、X軸方向(wd)130μm、Z軸方向(hd)170μmとした以外は、実験例1と同一の条件でサンプルを作製した。
作製したサンプルについて、実験例1と同一の条件でインダクタンス(L値)及びQ値を測定したところ、L値は2.3nH、Q値は28であった。
【0080】
(実験例7)
各部の寸法が以下のとおりである樹脂製の絶縁体部及びコイル部を備えたコイル部品サンプルを作製した。
【0081】
・絶縁体部:長さ(La)410μm、幅(Wa)200μm、高さ(Ha)195μm
・コイル部:Y軸方向の導体寸法(lc)35μm、X軸方向の導体寸法(wc)24μm、Z軸方向の導体寸法(hc)35μm、導体間距離(g)10μm、Y軸方向のコア部寸法(ld)250μm、X軸方向のコア部寸法(wd)160μm、Z軸方向のコア部寸法(hd)85μm
・サイドマージン:Y軸方向の寸法(lb)45μm、X軸方向の寸法(wb)20μm、Z軸方向の寸法(hb)20μm
【0082】
作製したサンプルについて、実験例1と同一の条件でインダクタンス(L値)及びQ値を測定したところ、L値は3.0nH、Q値は31であった。
【0083】
(実験例8)
絶縁体部を長さ(La)380μm、幅(Wa)200μm、高さ(Ha)210μm、コア部寸法をY軸方向(ld)220μm、X軸方向(wd)160μm、Z軸方向(hd)100μmとした以外は、実験例7と同一の条件でサンプルを作製した。
作製したサンプルについて、実験例1と同一の条件でインダクタンス(L値)及びQ値を測定したところ、L値は3.2nH、Q値は32であった。
【0084】
(実験例9)
絶縁体部を長さ(La)350μm、幅(Wa)200μm、高さ(Ha)230μm、コア部寸法をY軸方向(ld)190μm、X軸方向(wd)160μm、Z軸方向(hd)120μmとした以外は、実験例7と同一の条件でサンプルを作製した。
作製したサンプルについて、実験例1と同一の条件でインダクタンス(L値)及びQ値を測定したところ、L値は3.3nH、Q値は33であった。
【0085】
(実験例10)
絶縁体部を長さ(La)320μm、幅(Wa)200μm、高さ(Ha)250μm、コア部寸法をY軸方向(ld)160μm、X軸方向(wd)160μm、Z軸方向(hd)140μmとした以外は、実験例7と同一の条件でサンプルを作製した。
作製したサンプルについて、実験例1と同一の条件でインダクタンス(L値)及びQ値を測定したところ、L値は3.4nH、Q値は34であった。
【0086】
(実験例11)
絶縁体部を長さ(La)310μm、幅(Wa)200μm、高さ(Ha)260μm、コア部寸法をY軸方向(ld)150μm、X軸方向(wd)160μm、Z軸方向(hd)150μmとした以外は、実験例7と同一の条件でサンプルを作製した。
作製したサンプルについて、実験例1と同一の条件でインダクタンス(L値)及びQ値を測定したところ、L値は3.5nH、Q値は34であった。
【0087】
(実験例12)
絶縁体部を長さ(La)275μm、幅(Wa)200μm、高さ(Ha)290μm、コア部寸法をY軸方向(ld)115μm、X軸方向(wd)160μm、Z軸方向(hd)180μmとした以外は、実験例7と同一の条件でサンプルを作製した。
作製したサンプルについて、実験例1と同一の条件でインダクタンス(L値)及びQ値を測定したところ、L値は3.3nH、Q値は32であった。
【0088】
(実験例13)
絶縁体部を長さ(La)255μm、幅(Wa)200μm、高さ(Ha)315μm、コア部寸法をY軸方向(ld)95μm、X軸方向(wd)160μm、Z軸方向(hd)205μmとした以外は、実験例7と同一の条件でサンプルを作製した。
作製したサンプルについて、実験例1と同一の条件でインダクタンス(L値)及びQ値を測定したところ、L値は3.1nH、Q値は31であった。
【0089】
(実験例14)
絶縁体部を長さ(La)310μm、幅(Wa)200μm、高さ(Ha)260μm、Y軸方向の導体寸法(lc)30μm、X軸方向の導体寸法(wc)24μm、Z軸方向の導体寸法(hc)30μm、コア部寸法をY軸方向(ld)160μm、X軸方向(wd)160μm、Z軸方向(hd)160μmとした以外は、実験例7と同一の条件でサンプルを作製した。
作製したサンプルについて、実験例1と同一の条件でインダクタンス(L値)及びQ値を測定したところ、L値は3.6nH、Q値は36であった。
【0090】
(実験例15)
絶縁体部を長さ(La)310μm、幅(Wa)200μm、高さ(Ha)260μm、Y軸方向の導体寸法(lc)25μm、X軸方向の導体寸法(wc)24μm、Z軸方向の導体寸法(hc)25μm、コア部寸法をY軸方向(ld)170μm、X軸方向(wd)160μm、Z軸方向(hd)170μmとした以外は、実験例7と同一の条件でサンプルを作製した。
作製したサンプルについて、実験例1と同一の条件でインダクタンス(L値)及びQ値を測定したところ、L値は3.8nH、Q値は37であった。
【0091】
(実験例16)
絶縁体部を長さ(La)310μm、幅(Wa)200μm、高さ(Ha)260μm、Y軸方向の導体寸法(lc)20μm、X軸方向の導体寸法(wc)24μm、Z軸方向の導体寸法(hc)20μm、コア部寸法をY軸方向(ld)180μm、X軸方向(wd)160μm、Z軸方向(hd)180μmとした以外は、実験例7と同一の条件でサンプルを作製した。
作製したサンプルについて、実験例1と同一の条件でインダクタンス(L値)及びQ値を測定したところ、L値は4.2nH、Q値は37であった。
【0092】
(実験例17)
絶縁体部を長さ(La)310μm、幅(Wa)200μm、高さ(Ha)260μm、Y軸方向の導体寸法(lc)15μm、X軸方向の導体寸法(wc)24μm、Z軸方向の導体寸法(hc)15μm、コア部寸法をY軸方向(ld)190μm、X軸方向(wd)160μm、Z軸方向(hd)190μmとした以外は、実験例7と同一の条件でサンプルを作製した。
作製したサンプルについて、実験例1と同一の条件でインダクタンス(L値)及びQ値を測定したところ、L値は4.8nH、Q値は36であった。
【0093】
(比較例1)
絶縁体部を長さ(La)400μm、幅(Wa)200μm、高さ(Ha)200μm、コア部寸法をY軸方向(ld)230μm、X軸方向(wd)130μm、Z軸方向(hd)70μmとした以外は、実験例1と同一の条件でサンプルを作製した。
作製したサンプルについて、実験例1と同一の条件でインダクタンス(L値)及びQ値を測定したところ、L値は2.2nH、Q値は22であった。
【0094】
(比較例2)
絶縁体部を長さ(La)407μm、幅(Wa)200μm、高さ(Ha)202μm、コア部寸法をY軸方向(ld)237μm、X軸方向(wd)130μm、Z軸方向(hd)72μmとした以外は、実験例1と同一の条件でサンプルを作製した。
作製したサンプルについて、実験例1と同一の条件でインダクタンス(L値)及びQ値を測定したところ、L値は2.3nH、Q値は23であった。
【0095】
実験例1〜17及び比較例1,2の上述した各部の条件、寸法比、コイル軸方向(X軸方向)から見た絶縁体部及びコア部の面積及びその面積比、ならびにコイル特性を表1〜3にまとめて示す。
【0099】
表2及び表3に示すように、絶縁体部の寸法比率(Ha/La)がコア部の寸法比率(hd/ld)の1.5倍以下である実験例1〜17によれば、絶縁体部の寸法比率(Ha/La)がコア部の寸法比率(hd/ld)の1.5倍を超える比較例1,2よりも、高いQ値が得られることが確認された。
【0100】
また、コア部の寸法比率(hd/ld)が0.8以上1.5以下である実験例3〜5によれば、実験例1,2,6よりも高い(29以上の)Q値が得られることが確認された。同様に、コア部の寸法比率(hd/ld)が0.6以上1.0以下である実験例9〜11,14〜17によれば、実験例7,8、12,13よりも高い(32を超える)Q値が得られることが確認された。
【0101】
また、コア部の寸法比率(hd/ld)が0.6以上1.0以下である実験例2〜4によれば、実験例1,5,6よりも高い(2.7nH以上)L値が得られることが確認された。
【0102】
さらに、絶縁体部の面積(Sa)に対するコア部の面積(Sd)の比率(Sd/Sa)が22%以上45%以下である実験例2〜4、7〜17によれば、2.7nH以上の高いインダクタンス値が得られることが確認された。
【0103】
以下個別に見ていくと、実験例1においては、比較例2とほぼ同じのコア面積であるにもかかわらず、コア部の寸法比(wd/ld)が比較例2よりも大きいため、比較例2よりも高いQ値が得られた。
【0104】
実験例4においては、コア部の寸法比(wd/ld)がほぼ1となるため、実験例1〜6の中では最も高いQ値が得られた。
【0105】
実験例7〜17においては、実験例1〜6と比較して、絶縁体部の絶縁性が高く、導体寸法を最大限まで大きくすることができるため、インダクタンス値を高くすることができる。これに伴い、Q値も31以上と高くすることができる。
【0106】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく種々変更を加え得ることは勿論である。
【0107】
例えば以上の実施形態では、コイル部品が天面側から底面側に向かって絶縁層及びビア導体を順次積層する方法について説明したが、これに限られず、底面側から天面側に向かって絶縁層及びビア導体が順次積層されてもよい。
【0108】
また、コイル部の各周回部をコイル軸方向に順次積層するコイル部品の製造方法にも、本発明は適用可能である。
【0109】
また、上記実施形態では、Z軸方向から見る周回部が、四角形であるが、多角形でも、一部にR付けなどが有っても、周回部導体が対向する位置関係にあれば、同様の効果を得ることができる。
【0110】
また、上記実施形態ではコイル部品のコイル軸をX軸方向(幅方向)としているが、コイル軸方向はZ軸方向(高さ方向)であっても同様の効果を得ることはできる。
【0111】
更に、絶縁体部は、用いる材料がガラスであっても、樹脂であっても、例えば一部にフェライト粉などを含んでいたとしても、透磁率が2以下であれば、同様の効果を得ることができる。また、絶縁体は、誘電率が5以下であれば、特に高周波特性を良くでき、誘電率が4以下であれば、端子電極との間で生じる浮遊容量を更に小さくでき、高周波でのQ値を高くできる。
【0112】
<第2の実施形態>
上記第1の実施形態においては櫛歯ブロック部が配置された電子部品について説明したが、上記の
図1〜
図3に示すように櫛歯ブロック部24が配置されていない電子部品としてもよく、以下変形例として説明する。下記各構成例においても、絶縁体部の長さ寸法(La)に対する高さ寸法(Ha)の比率(Ha/La)は、Y軸方向に沿った周回部Cnの内周部間の長さ寸法(ld)に対するZ軸方向に沿った周回部Cnの内周部間の高さ寸法(hd)の比率(hd/ld)の1.5倍以下となるように構成される。
【0113】
また、周回部Cnの開口寸法比率(hd/ld)は特に限定されないが、本実施形態では、0.6以上1.0以下である。これにより高いインダクタンス値及びQ値をより安定して確保することができる。
【0114】
また、コイル軸方向(X軸方向)から見た絶縁体部の面積(Sa)に対する周回部Cnの内周部で区画される面積(Sd)の比率(Sd/Sa)も特に限定されないが、本実施形態では、0.22以上0.65以下(22%以上65%以下)である。これにより、コイル部品のインダクタンス値を効率よく高めることができる。
【0115】
(第1の構成例)
第1の構成例に係る電子部品は、櫛歯ブロック部が配置されていない。これにより、同じ体積の絶縁体部内に内部導体部を配置する場合、櫛歯ブロック部が配置される場合と比較して、コイル部の設計範囲が広くなりコイル部の開口面積を拡大することが可能となってL値、Q値を向上させることができる。
【0116】
また、本構成例では、櫛歯ブロック部が配置されていないので、直方体形状の絶縁体部の1つの面にのみ外部電極が形成される構造が可能となり、1面実装タイプの電子部品とすることができる。上記実施形態のコイル部品は、直方体形状の絶縁体部の3つの面102、103、104に外部電極が形成された3面実装タイプの電子部品であるが、これに限定されず、本構成例のように絶縁体部の1つの面にのみ外部電極が形成された1面実装タイプの電子部品としてもよい。
更に、上記実施形態ではコイル部と外部電極との接続は櫛歯ブロック部及び引出し線を介して行われているが、本構成例ではコイル部と外部電極との接続は接続用ビア導体層を介して行われる。
【0117】
以下、
図12〜
図14を用いて第1の構成例に係る電子部品について説明する。
図12Aは、本実施形態の第1の構成例に係るコイル部品の概略透視斜視図、
図12Bはその外観斜視図、
図13Aはその概略透視側面図、
図13Bはその外観側面図、
図14はその概略透視上面図である。
なお、各図においてX軸、Y軸及びZ軸方向は相互に直交する3軸方向を示している。
【0118】
本構成例の電子部品1100は、表面実装用のコイル部品として構成される。電子部品1100は、絶縁体部1010と、内部導体部1020と、外部電極1030とを備える。
【0119】
絶縁体部1010は、天面1101、底面1102、第1の端面1103、第2の端面1104、第1の側面1105及び第2の側面1106を有し、X軸方向に幅方向、Y軸方向に長さ方向、Z軸方向に高さ方向を有する直方体形状に形成される。底面1102は実装面となる。
【0120】
絶縁体部1010は、本体部1011と天面部12とを有する。本体部1011は、内部導体部1020を内蔵し、絶縁体部1010の主要部を構成する。天面部12は、絶縁体部1010の天面1101を構成する。絶縁体部1010に用いられる材料は上記実施形態と同様である。
【0121】
内部導体部1020は、絶縁体部1010の内部に設けられる。内部導体部1020は、複数の柱状導体1021と、複数の連結導体1022と、接続用ビア導体層V1023を有し、これら複数の柱状導体1021及び連結導体1022とによりコイル部1020Lが構成される。また、接続用ビア導体層V1023は、コイル部1020Lの両端部それぞれに接続される。
【0122】
複数の柱状導体1021は、Z軸方向に平行な軸心を有する略円柱形状に形成される。複数の柱状導体1021は、概略Y軸方向に相互に対向する2つの導体群で構成される。このうち一方の導体群を構成する第1の柱状導体10211は、X軸方向に所定の間隔をおいて配列され、他方の導体群を構成する第2の柱状導体10212も同様に、X軸方向に所定の間隔をおいて配列される。
【0123】
なお、略円柱形状とは、軸直方向(軸心に垂直な方向)の断面形状が円形である柱体のほか、上記断面形状が楕円形または長円形である柱体をも含み、楕円形または長円形としては、例えば、長軸/短軸の比が3以下のものを意味する。
【0124】
第1及び第2の柱状導体10211,10212は、それぞれ同一径及び同一高さで構成される。図示の例において第1及び第2の柱状導体10211,10212は、それぞれ5本ずつ設けられている。後述するように、第1及び第2の柱状導体10211,10212は、複数のビア導体をZ軸方向に積層することで構成される。
【0125】
なお、略同一径とは、抵抗の増加を抑制するためのもので、同一方向で見た寸法のバラツキが例えば10%以内に収まっていることをいい、略同一高さとは、各層の積み上げ精度を確保するためのもので、高さのバラツキが例えば±10μmの範囲に収まっていることをいう。
【0126】
複数の連結導体1022は、XY平面に平行に形成され、Z軸方向に相互に対向する2つの導体群で構成される。このうち一方の導体群を構成する第1の連結導体10221は、Y軸方向に沿って延び、X軸方向に間隔をおいて配列され、第1及び第2の柱状導体10211,10212の間を個々に接続する。他方の導体群を構成する第2の連結導体10222は、Y軸方向に対して所定角度傾斜して延び、X軸方向に間隔をおいて配列され、第1及び第2の柱状導体10211,10212の間を個々に接続する。図示の例において、第1の連結導体10221は5つの連結導体で構成され、第2の連結導体10222は4つの連結導体で構成される。
【0127】
図12において、第1の連結導体10221は、所定の一組の柱状導体10211,10212の上端に接続され、第2の連結導体10222は、所定の一組の柱状導体10211,10212の下端に接続される。より詳細には、第1及び第2の柱状導体10211,10212と第1及び第2の連結導体10221,10222は、コイル部1020Lの周回部Cn(C1〜C5)を構成し、これら周回部CnがX軸方向のまわりに矩形の螺旋を描くように相互に接続される。これにより、絶縁体部1010の内部において、X軸方向に軸心(コイル軸)を有する開口形状が矩形のコイル部1020Lが形成される。
【0128】
本実施形態において周回部Cnは、5つの周回部C1〜C5で構成される。各周回部C1〜C5の開口形状は、それぞれ概略同一の形状に形成される。
【0129】
接続用ビア導体層V1023は第1の接続用ビア導体層V10231と、第2の接続用ビア導体層V10232とを有する。第1の接続用ビア導体層V10231は、コイル部1020Lの一端を構成する第1の柱状導体10211の下端に連結して接続され、第2の接続用ビア導体層V10232は、コイル部1020Lの他端を構成する第2の柱状導体10212の下端に連結して接続される。第1及び第2の接続用ビア導体層V10231,V10232は、Z軸方向に垂直な断面形状が略円形であり、柱状導体1021のZ軸方向に垂直な断面とほぼ同じ大きさ及び形状を有している。
【0130】
外部電極1030は、表面実装用の外部端子を構成し、Y軸方向に相互に対向する第1及び第2の外部電極1031,1032を有する。第1及び第2の外部電極1031,1032は、絶縁体部1010の1面としての底面1102にのみ形成される。外部電極1030は絶縁体部1010の外側に形成される。
【0131】
柱状導体1021、連結導体1022、接続用ビア導体層V1023は、例えば、Cu(銅)、Al(アルミニウム)、Ni(ニッケル)等の金属材料で構成され、本実施形態ではいずれも銅又はその合金のめっき層で構成される。第1及び第2の外部電極1031,1032は、例えばNi/Snめっきで構成される。
【0132】
図15は、電子部品1100の上下を反転して示す概略透視側面図である。電子部品1100は、
図15に示すように、フィルム層L1001と、複数の電極層L1002〜L1006の積層体で構成される。本実施形態では、天面1101から底面1102に向けてフィルム層L1001及び電極層L1002〜L1006をZ軸方向に順次積層することで作製される。層の数は特に限定されず、ここでは6層として説明する。
【0133】
フィルム層L1001及び電極層L1002〜L1006は、当該各層を構成する絶縁体部1010、内部導体部1020及び外部電極1030の要素を含む。
図16A〜Fはそれぞれ、
図15におけるフィルム層L1001及び電極層L1002〜L1006の概略上面図である。
【0134】
フィルム層L1001は、絶縁体部1010の天面1101を形成する天面部12で構成される(
図16A)。電極層L1002は、絶縁体部1010(本体部1011)の一部を構成する絶縁層10110(10112)と、第1の連結導体10221とを含む(
図16B)。電極層L1003は、絶縁層10110(10113)と、柱状導体10211,10212の一部を構成するビア導体V1001とを含む(
図16C)。電極層L1004は、絶縁層10110(10114)、ビア導体V1001のほか、第2の連結導体10222を含む(
図16D)。電極層L1005は、絶縁層10110(10115)と、接続用ビア導体層V1023(第1の接続用ビア導体層V10231、第2の接続用ビア導体層V10232)を含む(
図16E)。そして、電極層L1006は、外部電極1030(第1の外部電極1031、第2の外部電極1032)を含む(
図16F)。
【0135】
電極層L1002〜L1006は、接合面S1〜S4(
図15)を介して高さ方向に積層される。したがって各絶縁層10110、ビア導体V1001、接続用ビア導体層V1023、外部電極1030は、同じく高さ方向に境界部を有する。そして電子部品1100は、各電極層L1002〜L1006を、電極層L1002から順に作製しながら積層する上記実施形態と同様のビルドアップ工法により製造される。
【0136】
以上のように、第1の構成例における電子部品1100は、櫛歯ブロック部が配置されていないためY軸方向のコア部寸法(ld)を拡大することができる。これによりコイル部1020Lの開口面積を拡大することができ、L値及びQ値を高くすることが可能となる。
【0137】
また、本構成例では、表面実装用の外部端子となる外部電極1030が電子部品1100の1面にのみ形成されているので、電子部品1100をはんだ付けにより実装する際、実装面は1面のみになるため、半田フィレットが形成されず、高密度実装が可能となる。
【0138】
また、コイル部1020Lと外部電極1030を接続用ビア導体層V1023により接続するため、櫛歯ブロック部が配置される場合と比較し、外部電極からコイル部1020に至るまでの電流経路を短くとることができる。これにより、ノイズの発生が少なく特性劣化が少ない電子部品1100を得ることができる。
【0139】
(第2の構成例)
上記第1の構成例では、接続用ビア導体層V1023はZ軸方向に垂直な断面形状が略円形を有していたがこれに限定されず、例えば長円形を有していてもよく、以下、第2の構成例として説明する。第1の構成例と異なる構成について主に説明し、同様の構成については同様の符号を付し、説明を省略する場合がある。本構成例においても、第1の構成例と同様に、コイル部の開口面積を大きくとることが可能であり、これによりL値、Q値を高くすることが可能となっている。
【0140】
以下、
図17〜
図19を用いて第2の構成例に係るコイル部品について説明する。
図17はコイル部品の概略透視斜視図である。
図18はその概略透視側面図である。
図19はその概略透視上面図である。
【0141】
本構成例の電子部品2100は、表面実装用のコイル部品として構成される。電子部品2100は、絶縁体部2010と、内部導体部2020と、外部電極1030とを備える。
【0142】
絶縁体部2010は、本体部2011と天面部12とを有する。本体部2011は、内部導体部2020を内蔵し、絶縁体部2010の主要部を構成する。
【0143】
絶縁体部2010は、天面2101、底面2102、第1の端面2103、第2の端面2104、第1の側面2105及び第2の側面2106を有し、X軸方向に幅方向、Y軸方向に長さ方向、Z軸方向に高さ方向を有する直方体形状に形成される。
【0144】
内部導体部2020は、絶縁体部2010の内部に設けられる。内部導体部2020は、複数の柱状導体1021と、複数の連結導体1022と、接続用ビア導体層V2023を有し、これら複数の柱状導体1021及び連結導体1022とによりコイル部1020Lが構成される。また、接続用ビア導体層V2023は、コイル部1020Lの両端部それぞれに接続される。
【0145】
接続用ビア導体層V2023は第1の接続用ビア導体層V20231と、第2の接続用ビア導体層V20232とを有する。第1の接続用ビア導体層V20231は、コイル部1020Lの一端を構成する第1の柱状導体10211の下端に接続され、第2の接続用ビア導体層V20232は、コイル部1020Lの他端を構成する第2の柱状導体10212の下端に接続される。第1及び第2の接続用ビア導体層V20231,V20232は、Z軸方向に垂直な断面形状が長円形であり、柱状導体1021のZ軸方向に垂直な断面よりも大きい断面形状を有している。言い換えると、柱状導体1021と接続用ビア導体層V2023をXY平面に投影したとき、柱状導体1021の略円形の投影図は、接続用ビア導体層V2023の略長円形の投影図の中に全て含まれる。
【0146】
外部電極1030は、表面実装用の外部端子を構成し、Y軸方向に相互に対向する第1及び第2の外部電極1031,1032を有する。第1及び第2の外部電極1031,1032は、絶縁体部2010の1面としての底面2102にのみ形成される。
【0147】
以上のように、本構成例では、接続用ビア導体層V2023の断面形状を長円として、コイル部1020Lの一部を構成する柱状導体1021の断面よりも大きな断面形状とすることにより、コイル部1020Lと外部電極1030との接触面積を大きくすることができる。
【0148】
(第3の構成例)
上記各構成例において、接続用ビア導体層V1023、V2023と同層で、コイル部1020Lと外部電極1030とを電気的に接続しない、ダミービア導体層を設けてもよく、以下、第3の構成例として説明する。ダミービア導体層は外部電極1030と接触して絶縁体内に複数形成される。ダミービア導体層を設けることにより外部電極1030と絶縁体部1010との密着強度を向上させることができる。ダミービア導体層の設置は、上記構成例及び上記実施形態に適用可能である。
【0149】
図20は第3の構成例に係るコイル部品の概略透視斜視図である。
図21はその概略透視側面図である。
図22はその概略透視上面図である。第3の構成例においては、上記第1の構成例にダミービア導体層を設けた場合を例に挙げて説明し、第1の構成例と同様の構成については同様の符号を付し、説明を省略する。
【0150】
本構成例の電子部品3100は、表面実装用のコイル部品として構成される。電子部品3100は、絶縁体部3010と、内部導体部1020と、外部電極1030とを備える。
【0151】
絶縁体部3010は、本体部3011と天面部12とを有する。本体部3011は、内部導体部1020及びダミービア導体層3040を内蔵し、絶縁体部3010の主要部を構成する。
【0152】
絶縁体部3010は、天面3101、底面3102、第1の端面3103、第2の端面3104、第1の側面3105及び第2の側面3106を有し、X軸方向に幅方向、Y軸方向に長さ方向、Z軸方向に高さ方向を有する直方体形状に形成される。
【0153】
ダミービア導体層3040は、直方体形状の絶縁体部3010の底面3102に対向する外部電極1030の内面部に設けられた複数の突起部で構成され、
図21に示すように絶縁体部3010の底面3102の内部に没入される。ダミービア導体層3040の先端部は、絶縁体部3010を構成する絶縁材料を介して内部導体部1020と対向し、したがってコイル部1020Lとは接触していない。
【0154】
ダミービア導体層3040は、接続用ビア導体層V1023と同層で形成される。複数のダミービア導体層3040は、Y軸方向に相互に対向する2つの導体層群で構成される。このうち一方の導体層群を構成する第1のダミービア導体層3041は、XY平面における形状が略矩形の第1の外部電極1031の四隅に対応してそれぞれ1つずつ配置される。他方の導体層群を構成する第2のダミービア導体層3042は、XY平面における形状が略矩形の第2の外部電極1032の四隅に対応してそれぞれ1つずつ配置される。ダミービア導体層3040は、絶縁体部3011を構成する絶縁層によって内部導体部1020と電気的に絶縁されている。
【0155】
本変形例では、ダミービア導体層3040を設けることにより、外部電極1030と絶縁体部3011との密着強度が向上する。
すなわち、外部電極1030の作製方法においては、例えば上記実施形態の内部導体部を構成する導体パターンを電気めっき法により作製する方法と同様に、電気めっき用のシード層を設け、開口部を有するレジストパターンを設けた後、電気めっき法により外部電極を形成する手法をとることができる。このような手法で外部電極1030を作製することにより、ダミービア導体層3040と外部電極1030との強い接着が生じ、絶縁体部3011と外部電極1030との密着強度が向上する。
【0156】
<電子部品特性>
本発明の電子部品は上記の各実施形態に限定されず、例えば
図23及び
図24に示す構成をとってもよい。
図23、
図24の各図は、上記実施形態に係る電子部品の概略透視図である。
図23の各図は上記第1の実施形態のように櫛歯ブロック部24が配置される電子部品の図を示し、
図24の各図は上記第2の実施形態のように櫛歯ブロック部が配置されていない電子部品の図を示す。上記各実施形態と同様の構成については同様の符号を付している。
【0157】
図23及び
図24に示される各電子部品の外形寸法はいずれも同じであり、いずれの電子部品においても、絶縁体部の長さ寸法(La)に対する高さ寸法(Ha)の比率(Ha/La)は、Y軸方向に沿った周回部Cnの内周部間の長さ寸法(ld)に対するZ軸方向に沿った周回部Cnの内周部間の高さ寸法(hd)の比率(hd/ld)の1.5倍以下となるように構成される。
【0158】
図23Aは上記第1の実施形態の電子部品100の概略透視側面図である。
図23Bは、電子部品100と比較して、引出し部23が設けられておらず、上記第2の実施形態のように接続用ビア導体層V1023を介して外部電極30とコイル部1020Lとが接続する形態の電子部品4100の概略透視側面図である。
図23Cは、
図23Bの電子部品3100と比較して、櫛歯ブロック部24のY軸方向における長さが短く、コイル部1020Lと櫛歯ブロック部24との距離が長い場合の電子部品5100の概略透視側面図である
図23の各図においては、Y軸方向(図中左右方向)におけるコイル部20Lと絶縁体部端面との間のサイドマージンの寸法(1b)はいずれも45μmである。
【0159】
図24の各図は上記第2の実施形態(第1の構成例)に係る電子部品1100に対応するものであり、Y軸方向におけるサイドマージンの寸法(1b)が異なるのみで基本的な構成は同じである。
図24Aに示す電子部品1100Aのサイドマージン1bは45μmであり、
図24Bに示す電子部品1100Bのサイドマージン1bは20μmであり、
図24Cに示す電子部品1100Cのサイドマージン1bは10μmである。
【0161】
図25及び
図26に示すように、いずれの電子部品においてもL値は3.0nh以上、Q値は30以上を示し、高いインダクタンス値及びQ値を得ることができる。更に、コイル部の開口(コア)を拡大することにより、インダクタンス特性及びQ値特性をより向上せせることができる。
【0162】
図27は、電子部品の構成の違いによる内部導体部の形成可能領域を比較する図である。
図27の各図では、電子部品の外形が200μm(幅)×400μm(横)×200μm(高さ)であるものを例にして各寸法を記載している。
図27Bは、上記第2の実施形態(第1の構成例)に示す1面実装タイプの電子部品1100の概略外観側面図である。
図27Cは、上記第1の実施形態に示す3面実装タイプの電子部品100の概略透視側面図を示す。
図27Dは、従来の5面実装タイプの電子部品7100の概略外観側面図を示し、符号7030は外部電極を示す。いずれの電子部品においても、外部電極の厚みは10μmとした。
図27Aは絶縁体部の外形と電子部品の外形が等しいと仮定した場合を例に示し、この時の絶縁体部6010の体積を100%とし、
図27B〜
図27Dの各図に示す電子部品における絶縁体部の占める割合を計算した。
【0163】
図27Bの1面実装タイプの電子部品1100においては絶縁体部1010の占める割合は95%となり、
図27Cの3面実装タイプの電子部品100においては絶縁体部10の占める割合は84%となり、
図27Dの5面実装タイプの電子部品7100においては絶縁体部の占める割合は76.95%である。電子部品における絶縁体部の占める割合が高いほど、絶縁体部の内部に配置される内部導体部の形成可能領域が大きくなる。したがって、1面実装タイプの電子部品1100及び3面実装タイプの電子部品100は、いずれも従来の5面実装タイプの電子部品7100と比較して、内部導体部の形成可能領域が大きくなり、コイル部の開口(コア)を拡大することができる。これにより、L値及びQ値を高くすることが可能となる。