【解決手段】電子機器1に組み込まれ、外部機器と電磁界信号を介して通信するアンテナ装置100であって、その開口部102bを介して幅方向に対向する導線102aが互いに近接するように巻回して設けられ、長手方向に開口部102bを縦断する中心線Lを介して導線102aが一方向に周回する一方側部103aと導線が他方向に周回する他方側部103bに二分され、外部機器と誘導結合されるアンテナコイル102と、開口部104を有する電子機器1のカバー101とを備え、カバー101は磁気シールド機能を有し、カバー101に設けられた開口部104内に、アンテナコイル102が、カバー101と互いに重畳することなく、かつ、一方側部103a側のカバーの開口部104aの面積Saよりも他方側部103b側のカバー101の開口部104bの面積Sbの方が広くなるように配置される。
前記カバーと重畳又は接触するとともに、前記アンテナコイルの前記外部機器と対向する面と反対側の面と、少なくとも一部が重畳するシート状の導電体を備える請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のアンテナ装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ノートパソコン等の電子機器の小型化、高機能化による部品点数の増大等に伴い、電子機器筐体内において、上述のようなアンテナ装置を搭載するのに割り当てられるスペースは小さくなってきている。そこで、十分な通信性能を確保した状態でRFID用のアンテナ装置を狭小化されたスペースに搭載するために、アンテナ装置の薄型化の要求が強まっている。
【0008】
特許文献1及び2では、アンテナコイルの一部が開口部周りの金属板と重畳する態様であるため重畳している分だけ厚みが増している。したがって、この点に関するアンテナ装置の薄型化については記載されていない。
【0009】
本発明は、このような実情に鑑みて提案されたものであり、十分な通信性能を確保した状態で薄型化を実現できる、新規かつ改良されたアンテナ装置、及び電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様は、電子機器に組み込まれ、外部機器と電磁界信号を介して通信するアンテナ装置であって、その開口部を介して幅方向に対向する導線が互いに近接するように巻回して設けられ、長手方向に開口部を縦断する中心線を介して導線が一方向に周回する一方側部と導線が他方向に周回する他方側部に二分され、外部機器と誘導結合されるアンテナコイルと、開口部を有する電子機器のカバーとを備え、カバーは磁気シールド機能を有し、カバーに設けられた開口部内に、アンテナコイルが、カバーと互いに重畳することなく、かつ、一方側部側のカバーの開口部の面積よりも他方側部側のカバーの開口部の面積の方が広くなるように配置される。
【0011】
本発明の一態様によれば、電子機器のカバーに設けられた開口部内にアンテナコイルを配置することにより、アンテナコイルとカバーが重畳することがないため、アンテナ装置の薄型化を実現でき、アンテナコイルの他方側部側に広く開口部をとることでアンテナ装置の磁場が十分に空間に広がり通信性能を確保することができる。
【0012】
このとき、本発明の一態様では、アンテナコイルは、一方側部がカバーの開口部の端部に近接して配置されるようにしてもよい。
【0013】
このように配置することで、他方側部側のカバーの開口部を最も広くとることができるため、良好な通信性能を確保することができる。
【0014】
また、本発明の一態様では、アンテナコイルの開口部に外部機器から発信される磁界を引き込む磁性シートが差し込まれ、アンテナコイルの一方側部では磁性シートがアンテナコイルよりも外部機器側に配置され、アンテナコイルの他方側部ではアンテナコイルが磁性シートよりも外部機器側に配置されて、アンテナコイルと磁性シートとが互いに重畳されるようにしてもよい。
【0015】
このようにすれば、磁性シートによって、外部機器からの磁束を集めて、アンテナコイルの中心部に誘導するので、アンテナ装置の通信特性を高められる。
【0016】
このとき、本発明の一態様では、他方側部側のカバーの開口部にも磁性シートが配置されるようにしてもよい。
【0017】
これにより、さらに磁束を集めることができるため、よりアンテナ装置の通信特性が高まる。
【0018】
また、本発明の一態様では、カバーと重畳又は接触するとともに、アンテナコイルの外部機器と対向する面と反対側の面と、少なくとも一部が重畳するシート状の導電体を備えるようにしてもよい。
【0019】
これにより、磁界のシールド効果を利用してアンテナ装置の通信特性を高めることができる。
【0020】
また、本発明の他の態様は、上述の何れかに記載のアンテナ装置が組み込まれ、外部機器と電磁界信号を介して通信可能な電子機器である。
【0021】
本発明の他の態様によれば、上述したアンテナ装置を備えることで、十分な通信性能を確保した状態で薄型化を実現可能な電子機器とすることができる。
【発明の効果】
【0022】
以上説明したように本発明によれば、電子機器のカバーに設けられた開口部内にアンテナコイルを配置し、一方側に十分な面積の開口部を有することで十分な通信性能を確保した状態で薄型化を実現できるアンテナ装置、及び電子機器を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、以下に説明する本実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成の全てが本発明の解決手段として必須であるとは限らない。
【0025】
まず、本発明の一実施形態に係るアンテナ装置100を適用した電子機器1の一例となるパーソナルコンピュータの構成について、図面を使用しながら説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るアンテナ装置100を搭載したパーソナルコンピュータの外観を示す斜視図である。
【0026】
本発明の一実施形態に係るアンテナ装置100は、電子機器1として主にラップトップ型のパーソナルコンピュータに適用される。電子機器1(パーソナルコンピュータ)は、本体2とディスプレー3を有し、本体2とディスプレー3は、ヒンジ等を介して結合されている。ディスプレー3は、通常平置きされる本体2に重ね合わされた状態(閉状態)から、ヒンジを支点として回転させられることにより可逆的に本体2に対して立った状態(開状態)になる。
【0027】
ディスプレー3は、例えば、樹脂製のディスプレーハウジング4を有する。ディスプレーハウジング4は、扁平な箱形状をなし、例えば、A4用紙と略等しい大きさを有する。ディスプレーハウジング4は、閉状態にあるときに本体2と対向する面(内面)を有し、ディスプレーハウジング4の内面には、略全域に渡る開口が形成されている。ディスプレーハウジング4の開口4aには、例えば、液晶パネル5が表出している。
【0028】
本体2は、扁平な箱形状のメインハウジング6を有する。閉状態のときにディスプレー3と対向するメインハウジング6の上面には、液晶パネル5に向かって見たとき奥側、すなわち、ヒンジ側に開口6aが設けられ、この開口6a内にキーボード7が配置されている。なお、メインハウジング6の上面の大きさは、ディスプレーハウジング4の内面と略同一である。
【0029】
また、メインハウジング6の上面には、キーボード7よりも手前の中央に開口部6bが形成されている。この開口部6bには、タッチパッド10のフェイスシート12が表出している。さらに、メインハウジング6の上面には、開口部6bよりも手前に開口部6cが形成され、この開口部6cには、2つの操作ボタン14a、14bがメインハウジング6の幅方向に並んで表出している。
【0030】
本発明の一実施形態に係るアンテナ装置100は、例えば、上述したようなラップトップ型のパーソナルコンピュータ(電子機器1)において、キーボード7やタッチパッド10が配置されている開口6aや開口部6b、6cとは別に、メインハウジング6(磁気シールド機能を有するカバー101)上に開口部104を設け、開口部104内にアンテナコイル102を備えるものである。このような電子機器1のカバー101に設けられた開口部104内にアンテナコイル102をカバー101とは重畳しないように配置することで、電子機器の薄型化を実現することができる。なお、ここでいうカバー101は、例えば、金属製であって磁気シールド機能を有するものをいう。また、アンテナ装置100が組み込まれた電子機器1は、例えば、磁気シールド機能を有さない部材で覆うことで、開口部104を有するアンテナ装置100が外部に露出しないようにすることが好ましい。
【0031】
また、本発明の一実施形態に係るアンテナ装置100が組み込まれた電子機器1は、ラップトップ型のパーソナルコンピュータに限定されず、アンテナ装置100を配置することができるスペースがあるものであればよく、例えば、テレビや冷蔵庫などの他の電子機器にも適用可能である。また、本発明の一実施形態に係るアンテナ装置100は、配置するための開口部104をカバー101上に設けてもよいが、例えば、電気機器1の構造上すでに開けられている開口部を利用してもよい。
【0032】
次に、本発明の一実施形態に係るアンテナ装置100について、図面を使用しながらさらに詳しく説明する。
図2は、本発明の一実施形態に係るアンテナ装置100の平面図である。
【0033】
本発明の一実施形態に係るアンテナ装置100は、電子機器1に組み込まれ、外部機器と電磁界信号を介して通信するアンテナ装置100であって、その開口部102bを介して幅方向に対向する導線102aが互いに近接するように巻回して設けられ、長手方向に開口部102bを縦断する中心線Lを介して導線102aが一方向に周回する一方側部103aと導線が他方向に周回する他方側部103bに二分され、外部機器と誘導結合されるアンテナコイル102と、開口部104を有する電子機器1のカバー101とを備える。そして、カバー101は磁気シールド機能を有し、カバー101に設けられた開口部104内に、アンテナコイル102が、カバー101と互いに重畳することなく、かつ、一方側部103a側のカバー101の開口部104aの面積Saよりも他方側部103b側のカバー101の開口部104bの面積Sbの方が広くなるように配置される。
【0034】
このように、電子機器1のカバー101に設けられた開口部内104にアンテナコイル102を配置することにより、アンテナコイル102とカバー101が重畳することがないため、アンテナ装置100の薄型化を実現でき、アンテナコイル102の他方側部103b側に広く開口部104bをとることでアンテナ装置100の磁場が十分に空間に広がり良好な通信性能を確保することができる。
【0035】
アンテナ装置100は、
図2に示すように、その開口部102bを介して幅方向に対向する導線102aが互いに近接するように巻回して設けられ、外部機器119(
図3(B)参照)と誘導結合されるアンテナコイル102を備える。アンテナコイル102は、例えば、可撓性のあるフレキシブル基板等によって構成されるアンテナ基板の一面に、可撓性のある導線102aをパターニング処理することによって形成される。
【0036】
本実施形態では、アンテナコイル102は、限られた狭いスペースにおいて有効に実装するため、導線102aを長手方向に細長い略短冊形状に巻回して設けられる構成となっていることが好ましい。また、アンテナの磁場を空間に広げるため、アンテナコイル102は、一方側部103a側のカバーの開口部104aの面積Saよりも他方側部103b側のカバー101の開口部104bの面積Sbの方が広くなるように配置される。特に、アンテナコイル102は、一方側部103aがカバー101の開口部104の端部101aに近接又は接するようにして配置されるようにすることが好ましい。このように配置することで、他方側部103b側のカバー101の開口部104bを最も広くとることができるため、良好な通信性能を確保することができる。なお、ここで近接して配置するとは、カバー101の開口部の一端101aからアンテナコイル102の一方側部103aの外縁までの距離がアンテナコイル102の短辺の長さの1/10以下(例えば、コイル外形が50mm×12.5mmの場合は、1.25mm以下)となるように配置することとする。
【0037】
なお、ここで一方側部103a側のカバー101の開口部104aの面積Saとは、カバー101の開口部の一端101aからアンテナコイル102の一方側部103aの外縁までの間に占める開口部104aの面積Saを言い、他方側部103b側のカバー101の開口部104bの面積Sbとは、カバー101の開口部の他端101bからアンテナコイル102の他方側部103bの外縁までの間に占める開口部104bの面積Sbを言う。アンテナコイル102の一方側部103aがカバー101の開口部の端部101aに接する場合には、一方側部103a側のカバー101の開口部104aの面積Saはほぼ0となる。
【0038】
また、アンテナコイル102をカバー101の開口部の一端101aに近接して配置した場合、通信するための外部機器の位置はアンテナコイル102が配置されている位置よりもカバー101がある側にずれる。(すなわち、
図2におけるアンテナコイル102よりも左側のカバー101側にずれる。)したがって、電子機器のカバー101上に開口部104を設ける場合、アンテナコイル102を配置する側のカバーの面積が多く残るように開口部104を設けることが望ましい。
【0039】
開口部104の面積は特に限定されないが、開口部104内にアンテナコイル102を配置することから、少なくともアンテナコイル102の面積以上の開口部104が必要である。開口部104の面積は大きいほど良いが、開口部104を設けることができる電子機器1のカバー101のスペースとの関係で決定される。一例として、開口部104の一辺がアンテナコイル102の長辺と略同じかそれ以上の大きさであればよい。
【0040】
本発明の一実施形態に係るアンテナ装置110は、アンテナコイル112の開口部112bに外部機器119から発信される磁界を引き込む磁性シート115が差し込まれる構成としてもよい。
図3(A)は、本発明の一実施形態に係るアンテナ装置の斜視図であり、
図3(B)は、
図3(A)のA−A断面図である。
【0041】
図3(A)、(B)に示すように、アンテナ装置110では、アンテナコイル112の一方側部113aでは磁性シート115がアンテナコイル112よりも外部機器119側に配置され、アンテナコイル112の他方側部113bではアンテナコイル112が磁性シート115よりも外部機器119側に配置されるように、アンテナコイル112の開口部112bに磁性シート115が差し込まれ、アンテナコイル112と磁性シート115とが互いに重畳されている。
【0042】
磁性シート115は、酸化鉄や酸化クロム、コバルト、フェライト等の磁性体から形成され、アンテナ装置110の通信特性を高めるために、当該アンテナ装置110の通信時に外部機器119から送られる磁束をアンテナコイル112の中心側に向けて誘導する機能を有する。
【0043】
このようにして、本発明の一実施形態に係るアンテナ装置110は、一方側部113a側では、磁性シート115がアンテナコイル112よりも外部機器119側に位置するように配置され、他方側部113b側ではアンテナコイル112が外部機器119側に位置するように配置されることで、外部機器119からの磁束を集めて、アンテナコイル112の中心側に誘導して、アンテナ装置110の通信特性を高めるようにしている。すなわち、外部機器119からの磁束は、磁性シート115に沿ってアンテナコイル112の開口部112bを通り、アンテナコイル112の他方側部113b側のカバー111の開口部114bから外部機器119に抜けることで、ループを形成することが出来るので、通信可能となる。さらに、本発明の一態様では、
図3(B)に示すように、アンテナコイル112や磁性シート115はカバー111とは重畳することがないため、アンテナ装置110の薄型化を実現することができる。
【0044】
本発明に係るアンテナ装置120の他の実施形態に関し、
図4(A)は、本発明の一実施形態に係るアンテナ装置の斜視図であり、
図4(B)は、
図4(A)のB−B断面図である。本発明の一態様では、
図4(A)、(B)に示すように、他方側部123b側のカバー121の開口部124bにも磁性シート126が配置されるようにしてもよい。これにより、さらに磁束を集めることができるため、よりアンテナ装置120の通信特性が高まる。
【0045】
なお、
図4(B)においては、アンテナコイル122に差し込まれた磁性シート125と他方側部123b側のカバー121の開口部124bに配置された磁性シート126はそれぞれ別のものとなっているが、例えば、2つの磁性シートが合わさった長尺状の1枚の磁性シートをアンテナコイル122の開口部122bに差し込んで配置してもよい。
【0046】
本発明に係るアンテナ装置130の他の実施形態に関し、
図5(A)は、本発明の一実施形態に係るアンテナ装置130の斜視図であり、
図5(B)は、
図5(A)のC−C断面図である。本発明の一態様では、
図5(A)、(B)に示すように、カバー131と重畳又は接触するとともに、アンテナコイル132の外部機器139と対向する面と反対側の面と、少なくとも一部が重畳するシート状の導電体(導電性シート)137を備えるようにしてもよい。導電性シート137としては銅やアルミ箔等が挙げられる。このように、導電性シート137を設けることによって、導電性シート137による磁界のシールド効果を利用して、アンテナ装置130の通信特性を高めることができる。
【0047】
また、本発明に係るアンテナ装置130のように、シート状の導電体137を備える場合には、カバー131の開口部134は矩形状でなくてもよい。例えば、カバーの開口部が多角形状や円形状の場合であっても、その端部に(矩形状の)導電シート137を配置することで、開口部134の端部を直線状にすることができるからである。
【0048】
以上説明したように、本発明が適用されたアンテナ装置、及び当該アンテナ装置が組み込まれた電子機器では、電子機器のカバーに設けられた開口部内にアンテナコイルを配置し、アンテナコイルの他方側部側の開口部を広く設けることで、良好な通信特性を維持しつつ、電子機器の筐体の薄型化を図ることができる。
【実施例】
【0049】
次に、本発明の各実施形態に係るアンテナ装置の検討評価の実施例について、図面を使用しながら説明する。なお、本発明は、本実施例に限定されるものではない。
【0050】
以下に説明する、実施例1〜3、比較例、及び、参考例にかかるアンテナ装置について、通信特性の評価を行った。
図6は、本発明の一実施形態に係るアンテナ装置140の作用・効果を確認するための評価方法の説明図であり、(A)は、斜視図であり、(B)は、平面図である。通信特性は通信機148(NFC Forumの定めるListener-1)との結合係数を40mmの距離で評価し、通信機(Listener-1)をX軸方向に移動して通信特性の分布を評価した。
【0051】
(実施例1)
実施例1では、コイル外形が50mm×12.5mmで4ターンのアンテナコイル142を用い、アンテナコイル142の開口部142bには厚さ0.2mmのフェライト(磁性シート145)を挿入した。磁性シート145が挿入されたアンテナコイル142を、外形100mm×100mmで中央部に50mm×50mmの開口部144を有するSUS板141に、アンテナコイル142の長辺がSUS板141に設けた開口部144の一辺141aに沿うように配置しアンテナ装置140とした。
図6に示すように、実施例1にかかるアンテナ装置140と通信機148とを40mmの距離に配置し、通信機をX軸方向(すなわち、
図6(B)の矢印ARの方向)に移動して相対的な位置関係を変化させたときの通信特性(結合係数k)について評価した。
【0052】
(実施例2)
実施例2では、実施例1に係るアンテナ装置において、アンテナコイルの通信機と対向する面とは反対側の面に50mm×10mmのアルミ箔をSUS板及びアンテナコイルと接するように設けたこと以外は、実施例1と同様のアンテナ装置について同様に通信機をX軸方向に移動して相対的な位置関係を変化させたときの通信特性(結合係数k)について評価した。
【0053】
(実施例3)
実施例3では、実施例2に係るアンテナ装置において、SUS板のアンテナコイル以外の開口部にもフェライト(磁性シート)を配置したこと以外は、実施例2と同様のアンテナ装置について同様に通信機をX軸方向に移動して相対的な位置関係を変化させたときの通信特性(結合係数k)について評価した。
【0054】
(比較例)
図7は、比較例に係るアンテナ装置の作用・効果を確認するための検討評価方法を説明するための斜視図である。比較例では、コイル外形が25mm×25mmで4ターンの正方形のアンテナコイル152を用い、アンテナコイル152の裏面には厚さ0.2mmのフェライト(磁性シート155)を貼り付けた。磁性シート155が裏面に貼り付けられたアンテナコイル152を、外形100mm×100mmで中央部に50mm×50mmの開口部154を有するSUS板151に、アンテナコイル152の中央とSUS板151の開口部154の中央が一致するように配置しアンテナ装置150とした。
図7に示すように、比較例に係るアンテナ装置150と通信機158とを40mmの距離に配置し、通信機158をX軸方向に移動して相対的な位置関係を変化させたときの通信特性(結合係数k)について評価した。
【0055】
(参考例)
図8は、参考例に係るアンテナ装置160の作用・効果を確認するための検討評価方法を説明するための斜視図である。参考例(Benchmark)では、コイル外形が25mm×25mmで4ターンの正方形のアンテナコイル162を用い、アンテナコイル162の裏面には厚さ0.2mmのフェライト(磁性シート165)を貼り付けたもののみを用い、周囲にSUS板を配置しないものをアンテナ装置160とした。
図8に示すように、参考例に係るアンテナ装置160と通信機168とを40mmの距離に配置し、通信機168をX軸方向に移動して相対的な位置関係を変化させたときの通信特性(結合係数k)について評価した。
【0056】
図9は、実施例1〜3、比較例及び参考例に係るアンテナ装置の作用・効果を確認するための通信性能の評価結果を示すグラフである。ベンチマークとしての参考例に対して、比較例のように、金属板の開口部に同じく正方形のNFCアンテナを実装した場合、たとえその開口の大きさをアンテナの4倍の面積にしても参考例(ベンチマーク)の60%程度の性能回復が見込める程度であった。
【0057】
これに対して、金属板の開口部の端部に長尺状のアンテナコイルを配置した実施例1では、比較例1よりも通信特性がよくなった。さらに、アンテナコイルにアルミ箔を設けた実施例2では、参考例(ベンチマーク)よりも良い通信特性を示した。また、アルミ箔を追加し、SUS板の開口部にも磁性シートを配置した実施例3が最も良い通信特性を示した。
【0058】
このように、本発明の一実施形態に係るアンテナ装置は、アンテナコイルの他方側部側に広く開口部をとることでアンテナ装置の磁場が十分に空間に広がり良好な通信性能を確保することができる。
【0059】
なお、上記のように本発明の一実施形態及び各実施例について詳細に説明したが、本発明の新規事項及び効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは、当業者には、容易に理解できるであろう。したがって、このような変形例は、全て本発明の範囲に含まれるものとする。
【0060】
例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義又は同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。また、アンテナ装置、及び電子機器の構成、動作も本発明の一実施形態及び各実施例で説明したものに限定されず、種々の変形実施が可能である。