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特開2017-216837回転電気機械およびそのロータに付設されるファンブレード
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-216837(P2017-216837A)
(43)【公開日】2017年12月7日
(54)【発明の名称】回転電気機械およびそのロータに付設されるファンブレード
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/32 20060101AFI20171110BHJP
   H02K 9/02 20060101ALI20171110BHJP
【FI】
   H02K1/32 D
   H02K9/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-110046(P2016-110046)
(22)【出願日】2016年6月1日
(71)【出願人】
【識別番号】000002059
【氏名又は名称】シンフォニアテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137486
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 雅直
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼井 信男
【テーマコード(参考)】
5H601
5H609
【Fターム(参考)】
5H601AA16
5H601CC02
5H601CC14
5H601DD01
5H601DD09
5H601DD11
5H601DD25
5H601DD29
5H601EE11
5H601EE18
5H601EE25
5H601GE01
5H609BB03
5H609BB18
5H609PP02
5H609PP07
5H609QQ02
5H609QQ23
5H609RR73
5H609RR75
(57)【要約】
【課題】冷却空気の移動方向を変えるファンブレードを特別な固定部材なしにロータに取付け、安価に冷却効果を得る回転電気機械を提供する。
【解決手段】
半径方向外方に延びる4個の突極6cを有するロータ6を備え、各突極6cに巻回されるロータコイル9の隣接する二つを押さえるコイル押さえ11を配置し、このコイル押さえ11をボルト12によりロータ6に一体に固定するとともに、このボルト12に座金を兼用する板部15aおよびロータ6の回転方向後方または回転方向前方に延びる羽部15bを持つファンブレード15を組込むことを特徴としている。この構成によれば、ロータ6の回転にともなって半径方向外方に移動する冷却空気の移動速度を低下させずに、その移動方句を変えるファンブレード15が特別な固定部材を用いず、ロータ6に取付けることができ、部品点数の増加を招くことなく、安価に冷却効果を得ることができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータコイルが巻回されるスロットを内周側に有するステータと、ロータコイルが巻回されかつ半径方向外方に延びる複数の突極を有し、前記ステータ内に配置されるロータとを備え、当該ロータに巻回される隣接する二つのロータコイルを押さえるコイル押さえを少なくとも1個配置し、このコイル押さえをボルトによりロータに一体に固定するとともに、このボルトに座金を兼用する板部およびロータの回転方向後方または回転方向前方に延びる羽部を持つファンブレードを組込むことを特徴とする回転電気機械。
【請求項2】
ステータが半径方向に延びる通風ダクトを有し、ファンブレードがロータからステータに向かってギャップ中間位置を越えたステータの内周近くにまで延びていることを特徴とする請求項1に記載の回転電気機械。
【請求項3】
前記ファンブレードは、ロータの回転方向後方側または回転方向前方側に延びる複数の羽部を有することを特徴とする請求項1または2に記載の回転電気機械。
【請求項4】
回転電気機械のロータに付設されるファンブレードであって、座金を兼用する板部およびロータの回転方向後方または回転方向前方に延びる羽部を持つことを特徴とするファンブレード。
【請求項5】
ステータコイルが巻回される磁極を内周側に有するステータと、ロータコイルが巻回されかつ半径方向外方に延びる複数の突極を有し、前記ステータ内に配置されるロータとを備え、当該ロータに巻回される隣接する二つのロータコイルを押さえるコイル押さえを少なくとも1個配置し、このコイル押さえは隣接する二つの突極間にロータの全長方向に延びるように配置されるファンブレードのボルト取付用切欠内にて固定されるボルトとこれに螺合するナットとにより固定され、前記ファンブレードはロータの回転方向後方または回転方向前方に延びる羽部を持つことを特徴とする回転電気機械。
【請求項6】
前記ファンブレードはT型係止部を有し、このT型係止部をロータ基部に形成されるT型溝に挿通してファンブレードをロータに取付けることを特徴とする請求項5に記載の回転電気機械。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円筒状のステータ内で回転するロータを備える同期機のような回転電気機械およびそのロータに付設可能なファンブレードに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電気から機械,または機械から電気へとエネルギーを変換する役割を担う同期機のような回転電気機械51にあっては、図13に示すように円筒形状のステータ54と、このステータ54内で回転するように配置された4個の突極56c,56c(図中、2個のみ記載)を有するロータ56とを備えたものが知られている。前記ステータ54にあっては、円板状の薄板を多数積層して積層筒部54bを形成し、この積層筒部54bをダクトピース54cを介して複数個重ね合わせて、隣接する積層筒部54b,54b間に通風ダクト54dを形成し、ステータ54の冷却効果を高めるようにしたものが多用されている。この円筒状のステータ54の内周側にはその全長にわたって放射状に延びる複数のスロット54eが設けられており、これらスロット54eにはステータコイル55が嵌入されている。このステータコイル55には位相の異なる交流電流(以下、電流という)が流れるように構成されている。
【0003】
前記ロータ56の各突極56cには、ロータコイル59が多層に巻回され、その表面が凹凸となって冷却フィンとなっており(図示せず)、ロータコイル59の露出面積が多くなるように構成されている。また、前記突極56cには前記ロータコイル59がロータ56の回転時に生じる遠心力で突極56cから飛散しないように、絶縁板(図示せず)を介してポールシュー60が、また隣接する二つのロータコイル59を押さえて遠心力による膨らみを防止するコイル押さえ61が取付けられている。
【0004】
この種の回転電気機械51にあっては、ステータ54のスロット54eに嵌入されるステータコイル55に電流が流れると、ステータコイル55および磁極を持つステータ54に熱が発生し、これらを冷却する必要が生じている。そのため、ステータ54の両端の近くに軸流ファン(図示せず)が配置され、ステータ54とロータ56との間のエアギャップ内はもとより隣接する二つの突極56c,56c間の空間からステータ54の内部に冷却空気が送られている。これにより、この冷却空気が積層筒部54b間の通風ダクト54dに流入することとなり、ステータ54の冷却が行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実公平2−18682号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述の回転電気機械51によれば、軸流ファンから送られる冷却空気はステータ54の中央部分で衝突することにより半径方向外方に移動し、積層筒部54b、54b間の通風ダクト54dに流入することができる。しかしながら、ステータ54の両端付近では冷却空気の流れる方向と通風ダクト54dとがほぼ直交する方向となっていることから、冷却空気が通風ダクト54d内に流入しにくく、冷却効率の悪いものとなっている。
【0007】
また、ロータ56の回転にともなってロータ56の突極56cも回転することから、ロータ56のファン効果により隣接する二つの突極56c,56c間に収容された冷却空気はロータ56の遠心力を受けてロータ56の半径方向外方に移動する。この時、突極56cの先端にポールシュー60が取付けられ、またロータコイル59の表面も凹凸に形成されている。これにより、冷却空気はポールシュー60やロータコイル59の凹凸と直交する方向に移動することとなってステータ54に向かう方向に円滑に移動できず、前述のステータ54の通風ダクト54dに流入する冷却空気の量が制限されることとなる。
【0008】
しかも、前述のロータ56の回転にともなって隣接する二つの突極56c,56c間の冷却空気は半径方向外方に移動するが、突極56cとステータ54の内壁部54fとの間にエアギャップが形成されていることから、冷却空気の大部分はポールシュー60の表面に沿って移動する。そのため、ステータ54の近くでは冷却空気の半径方向外方の速度Vp2は極めて小さくなってしまう。この時、当該冷却空気の絶対速度Vp0はロータ56の周速Vp1と前述の半径方向外方の移動速度Vp2との合成速度となるものの、ロータ56の周速Vp1が半径方向の移動速度Vp2よりも極めて大きいことから、ロータ56の周速方向とほぼ同方向に送り出される。そのため、突極56c、56c間の冷却空気はステータ54に形成された半径方向に延びる通風ダクト54dに斜め方向から流入することとなり、その流入量が減少する。
【0009】
これを防止するため、図14に示すように特許文献1に記載された回転電気機械101の回転子(以下、ロータという)106が創案されている。このロータ106は、外周に複数個の磁極106gを有し、隣接する二つの磁極106g,106gにより形成される空間を塞ぐようにガイドカバー116が取付けられている。また、このガイドカバー116は回転方向後方に位置する磁極106gとの間に冷却空気の噴出路106hが形成されるように取付けられており、この噴出路106hから冷却空気が回転方向後方に噴出されるように構成されている。この構成によれば、ロータ106の回転にともなってガイドカバー116に沿って移動する冷却空気の噴出速度が大きくなる上に、その噴出方向がロータ106の周速の影響を受けることから、当該冷却空気の噴出方向はステータ104の半径方向に近づくように変化する。
【0010】
しかしながら、当該冷却空気の噴出速度を増加させて、その移動方向をステータ104の半径方向に延びる通風ダクト104dに向かうように変えることができるものの、当該冷却空気の噴出量が前述の噴出路106hの開口面積により制限される。そのため、結局のところ冷却空気の流入量を増加させることが困難で、依然としてステータ104を十分に冷却できないという問題が生じている。しかも、前述の構成であれば、冷却空気の移動方向を変えるガイドカバー116の取付けに際して、ガイドカバー116をロータ106に取付ける固定部材と、隣接する二つの磁極106gの一方との間隙を確保するためのスペーサ117とが必要となっている。そのため、部品点数の増加を招くばかりか、ガイドカバー116を磁極106gの形状に合わせて加工しなければならず、装置のコストアップを招くという問題が発生している。
【0011】
本発明の目的は、上記問題を解消することであり、ロータの回転にともなってほぼ回転方向(円周方向)に移動する冷却空気の移動方向を半径方向外側に変えるファンブレードを部品点数の増加なしにロータに取付けることができ、安価にステータの冷却効果が得られる回転電気機械および当該回転電気機械のロータに付設可能なファンブレードを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の回転電気機械は、上記目的を達成するために、ステータコイルが巻回されるスロットを内周側に有するステータと、ロータコイルが巻回されかつ半径方向外方に延びる複数の突極を有して前記ステータ内に配置されるロータを備え、当該ロータに巻回される隣接する二つのロータコイルを押さえるコイル押さえを少なくとも1個配置し、このコイル押さえをボルトによりロータに一体に固定するとともに、このボルトに座金を兼用する板部およびロータの回転方向後方または回転方向前方に延びる羽部を持つファンブレードを組込むことを特徴としている。
【0013】
この構成によれば、ロータの回転にともなって半径方向外方に移動する冷却媒体の大部分はファンブレードの回転方向前方を通過する。これにより、当該冷却媒体はロータの回転方向後方または回転方向前方に案内されながら、その速度を低下させることなくステータの近くに達する。この時、ロータの周速の影響で、ファンブレードに沿って移動する冷却媒体の移動方向はロータの周速との合成速度となる。しかも、このようなファンブレードであれば突極間の開口を狭めることがなく、そこに存在する冷却媒体を適切な方向に設定することにより、冷却媒体をステータ側に案内することができる。そのため、前述の冷却媒体がロータの回転方向後方に移動する時には、冷却媒体の移動方向はロータが配置されるステータの半径方向に近くなるばかりか、冷却媒体がステータの内周近くで半径方向に噴出される。これにより、当該ステータの冷却したい部位に冷却媒体を適切に供給して、ステータを効率よく冷却することができる。
【0014】
また、前述の冷却媒体がロータの回転方向前方に移動する時には、ステータの周速に、ファンブレードにより生じる冷却媒体の周速方向成分が加わることとなる。そのため、ステータに対して冷却媒体の移動方向は大して変わらないとしても、冷却媒体が周速以上に加速されることでステータに多量に供給して、ステータを効率よく冷却することができる。
【0015】
しかも、冷却媒体の移動方向を変えるファンブレードは遠心力によるロータコイルの膨らみを押さえるためのコイル押さえをロータに取付けるボルトに座金として組込まれる。そのため、ファンブレードを取付けるための特別な固定部材が不要となり、部品点数を少なくして安価にステータの冷却効果が得られる回転電気機械を提供することができる。
【0016】
特に、ステータが半径方向に延びる通風ダクトを有する構造であり、ファンブレードがロータからステータに向かってギャップ中間位置を越えたステータの内周の近くにまで延びていることが望ましい。
【0017】
さらに、本発明に係るファンブレードはステータの冷却効果を倍増するために、ロータの回転方向後方側もしくは回転方向前方側に延びる複数の羽部を有することが望ましい。
【0018】
その他、本発明はロータの回転にともなってその半径方向に移動する冷却媒体の移動方向を変える種々の用途に適用するにあたり、座金を兼用する板部およびロータの回転方向後方もしくは回転方向前方に延びる羽部を持つファンブレードとして構成することが望ましい。
【0019】
また、他の構成に係る本発明の回転電気機械は、ステータコイルが巻回される磁極を内周側に有するステータと、ロータコイルが巻回されかつ半径方向外方に延びる複数の突極を有して前記ステータ内に配置されるロータとを備え、当該ロータに巻回される隣接する二つのロータコイルを押さえるコイル押さえを少なくとも1個配置し、このコイル押さえは隣接する二つの突極間にロータの全長方向に延びるように配置されるファンブレードのボルト取付用切欠内にて固定されるボルトとこれに螺合するナットとにより固定され、前記ファンブレードはロータの回転方向後方または回転方向前方に延びる羽部を持つことを特徴としている。
【0020】
このように構成しても、先に述べた回転電気機械と同様に、ロータの周速の影響で、ファンブレードに沿って移動する冷却媒体の移動方向はロータの周速との合成速度となるので、そこに存在する冷却媒体を適切な方向に設定することにより、冷却媒体をステータ側に案内することができる。そのため、前述の冷却媒体がロータの回転方向後方に移動する時には、冷却媒体の移動方向はロータが配置されるステータの半径方向に近くなるばかりか、冷却媒体がステータの内周近くで半径方向に噴出される。これにより、当該ステータの冷却したい部位に冷却媒体を適切に供給して、ステータを効率よく冷却することができる。
【0021】
この場合、ファンブレードはT型係止部を有し、このT型係止部をロータ基部に形成されるT型溝に挿通してファンブレードをロータに取付けることが望ましい。これにより、ファンブレードをロータ基部へ取付ける際には、T型係止部をT型溝に挿通するだけでよく、簡単な作業で済む。
【発明の効果】
【0022】
以上説明した本発明によれば、ロータの回転にともなって半径方向外方に移動する冷却媒体の速度を低下させることなく、その移動方向を変えるファンブレードを実質的な部品点数の増加なく、ロータに取付けることができ、安価にステータ冷却効果が得られる回転電気機械および当該ロータに付設可能なファンブレードを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の第1の実施形態に係る回転電気機械の一例である同期機の要部を説明する説明図。
図2】本発明の第1の実施形態に係る同期機の概略構造を示す要部切欠き正面図。
図3図2のA−A線に沿った要部拡大断面図。
図4図3の要部拡大断面図。
図5】本発明の第1の実施形態に係る同期機のロータに付設されるファンブレードの要部外観図。
図6】本発明の第1の実施形態に係る同期機のロータに付設されるファンブレードの変形例を示す要部外観図。
図7】本発明の第1の実施形態に係る同期機のロータに付設されるファンブレードの別の変形例を示す外観図。
図8】本発明の第1の実施形態に係る同期機のロータに付設されるファンブレードのもう一つの変形例を示す外観図。
図9】本発明の第1の実施形態に係るファンブレードの変形例を重ねて使用する応用例を示す要部断面図。
図10】本発明の第2の実施形態に係る回転電気機械の一例である同期機の要部を説明する説明図。
図11】本発明の第2の実施形態に係るファンブレードの正面図。
図12図10のB−B線に沿った要部拡大断面図。
図13】従来の同期機を説明する要部説明図。
図14】従来の同期機のロータにガイドカバーを取付けた状態を説明する要部断面図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(第1の実施形態)
以下、本発明の第1の実施形態に係る回転電気機械の一例である同期機を図面に基づき説明する。
【0025】
図2および図3に示すように、1は発電機として使用される同期機であり、基台2にステータ取付台3が固定されている。このステータ取付台3は、その両端付近では横断面が小径のU字状をなしかつ中央付近では横断面が拡開されたU字状をなすU字部3aを有している。また、このU字部3aは両端部で円筒形状のステータ4を支持してこれと一体となるように固定され、同時に中央付近でステータ4の外周との間に冷却媒体の一例である冷却空気が通過する空気通過路4aが形成されるように構成されている。
【0026】
前記ステータ4は、円板状の薄板を多数積層してなる積層筒部4bを複数個放射状に延びる複数のダクトピース4cを介して重ね合わせる構造となっている。これにより、隣接する積層筒部4b、4b間にはその半径方向に延びる通風ダクト4dが形成され、この通風ダクト4dを通過する冷却空気によりステータ4が冷却され、また通風ダクト4dを通過する冷却空気がステータ4の熱を吸収後、前述の空気通過路4aから排出されるように構成されている。この円筒状のステータ4の内周側には、その全長にわたって放射状に延びる複数のスロット4eが設けられており、隣接する二つのスロット4e,4eにより内壁部4fが形成されている。前記スロット4eには、内壁部4fを囲むように亀の甲形状に巻き上げられたステータコイル5が嵌入されており、このステータコイル5は絶縁処理され、また、前記ステータコイル5には交流電流(以下、電流という)が位相を変えて流れるように構成されている。
【0027】
前記ステータ5の内周側には、両端中央部から水平方向に延びるロータ軸6aを有するロータ6が配置されており、このロータ6のロータ軸6aは後記軸受ケース7により軸支され、しかも軸受ケース7から外部に露出するように配置されている。このロータ軸6aにはそれぞれファン6bが取付けられており、ロータ軸6aの回転にともなって、ロータ6の端面側から冷却空気がロータ6の内部に供給されるように構成されている。また、前記ロータ軸6aの一方の端部には接合部(図示せず)が形成されており、外部からの回転を受けたり、外部に回転を伝達したりできるように構成されている。さらに、前記ロータ軸6aの他方には本発明の同期機1が発電機として利用されることから、永久磁石発電ユニット8が付設されており、前述の接合部に外部から回転が加わると、永久磁石発電ユニット8が作動して補助発電が行われるように構成されている。
【0028】
前記ロータ6は、ロータ軸6aを中心に直交する方向に延びる4個の突極6c(部品番号は、1個のみ付す)を有し、各突極6cには絶縁処理されたロータコイル9が多層に巻回され、対向する一対の突極6c,6cおよび隣接する突極6c,6cがN極、S極をなすように構成されている。
【0029】
前記突極6cには、前記ロータコイル9がロータ6の回転時に生じる遠心力で突極6cから飛散しないように、絶縁板(図示せず)を介してポールシュー10が取付けられている。さらに、隣接する二つの突極6c,6c間には各突極6cに巻回されるロータコイル9,9を押さえて遠心力による膨らみを防止するコイル押さえ11が突極6cの延びる方向に所定間隔をおいて2個所に配置されており、これらがそれぞれボルト12によりロ−タ6に一体に固定されている。これにより、ロータコイル9に遠心力が加わっても、ロータコイル9が遠心力により飛散しない構成が得られている。
【0030】
前記基台2には、前記ロータ軸6aを露出させながらステータ取付台3およびロータ6の周囲を取り囲むように軸受ケース7が取付けられている。この軸受ケース7の上部にはトップカバー13が取付けられており、これら軸受ケース7およびトップカバー13により冷却空気循環空間が形成されている。前記トップカバー13には空気冷却器14が取付けられており、この空気冷却器14の下方には前記ステータ取付台3の上部を囲む空気取込口14aが、また空気冷却器14の上部には冷却空気を吐出する吐出口(図示せず)が設けられている。これにより、ステータ4に形成される通風ダクト4dを通過して発電機の熱を吸収した冷却空気が空気冷却器14に取り込まれて、再び冷却された冷却空気が吐出口から前述の冷却空気循環空間に吐出される構成が得られる。
【0031】
前記軸受ケース7には、永久磁石発電ユニット8に冷却空気を送る空気ダクト8aが設けられており、空気冷却器14から吐出される冷却空気が永久磁石発電ユニット8内にも供給されるように構成されている。
【0032】
次に本発明の要部について説明する。本発明の要部は前述のロータ6の回転にともなって、隣接する二つの突極6c,6c間に収容される冷却空気がロータ6の遠心力によりその半径方向外方に移動する際に、その移動方向を変えるファンブレードにある。このファンブレードは、図4および図5に示すように座金を兼用する板部15aおよびロータ6の回転方向後方に延び、遠心ファンとして機能する羽部15bからなっている。前記羽部15bの先端はステータ4とロータ6との間のギャップ内にあって、ロータ6からステータ4に向かってギャップ中間位置を越えたステータ4の内周近くにまで延びている。これにより、隣接する二つの突極6c,6c間に収容される冷却空気の大部分が羽部15bに沿ってロータ6の回転方向後方に案内されてファンブレード15からステータ4の通風ダクト4dの入口に送り出され、ファンブレード15がターボファンとして機能する。このファンブレード15の板部15aには、前述する2個のコイル押さえ11に対応する位置それぞれに下穴15cが設けられ、この下穴15cを利用して前記ファンブレード15が前述のコイル押さえ11を固定するボルト12に組込まれ、2個のコイル押さえ11,11を跨ぐように固定されている。これにより、前記板部15aは座金の機能を果たし、羽部15bは冷却空気の移動方向を変える機能を果たす。前記コイル押さえ11と板部15aに設けられる下穴15cとは2個に限定されるものではなく、1個でもよく、また3個以上であってもよい。また、前記ファンブレード15の板厚は1.0〜16mmの間の値であればよい。
【0033】
上記同期機において、図1に示すようにファンブレード15がロータ6からステータ4に向かってギャップ中間位置を越えたステータ4の内周近くにまで延びていることから、ロータ6の回転にともなって半径方向外方に移動する冷却空気の大部分はファンブレード15の回転方向前方を円滑に通過する。これにより、当該冷却空気はロータ6の回転方向後方に案内されながら、ステータ4の通風ダクト4dの入口近くに達する。この時、冷却空気の半径方向外方の速度の低下はない。
【0034】
また、前記ファンブレード15に案内される冷却空気の絶対速度V0はロータ6の周速V1の影響を受けることから、当該冷却空気の移動速度V2とロータ6の周速V1との合成速度となる。そのため、前述の冷却空気がロータ6の回転方向後方に移動する時には、冷却空気の移動方向がステータ4の半径方向に近くなる。これにより、ロータ6が配置されるステータ4には半径方向に延びる通風ダクト4dが設けられていることから、冷却空気はこの通風ダクト4dに向かって移動することができ、ロータ6のファン効果を高めて、ステータ4を効率よく冷却し、同期機1の絶縁の信頼性を向上させることができる。この時、当該冷却空気の移動方向を変えるファンブレード15は遠心力によるロータコイル9の膨らみを防止するために設けられるコイル押さえ11の固定用のボルト12に座金として組込まれている。そのため、ファンブレード15を取付けるための特別な固定部材が不要となり、部品点数の増加を招くことなく、安価に冷却効果が得られる回転電気機械を提供することができる。
【0035】
また、本発明に係るファンブレード15は先端がステータ4の近くに達しかつ出口角度θが15°から175°の範囲とする羽部15bを有しておればよい。この出口角度θは、ロータ6の周速度を考慮して、冷却空気がステータ4の通風ダクト4dへ流れ易くなって通風ダクト4dの入口での流体損失が極力小さくなるよう適宜選択される。この一例として、ファンブレード15は図6に示すように回転方向前方に延びる羽部15b1を有することにより、シロッコファンとして機能する構成であってもよい。この場合、ロータ(図示せず)の回転にともなって半径方向外方に移動する冷却空気はファンブレード15の回転方向前方を通過しながら、ロータの回転方向前方に案内される。この時、前述の冷却空気がロータの回転方向前方に移動する時には、その絶対速度V00はその移動速度V22と、ステータの周速V11との合成速度、すなわち周速V11にファンブレード15に沿って案内される冷却空気の移動速度V22の周速方向成分V22xが加わることとなる。そのため、前述の場合と同様にロータが配置されるステータに通風ダクトが設けられている場合には、冷却空気が多量に通風ダクトに向かって移動することができ、ステータを効率よく冷却することができる。
【0036】
本発明に係るファンブレード15の別の変形例として、ファンブレード15の板部15a2は図7に示すようにボルトが挿通される下穴15c2付近のみとし、しかもこれを羽部15b2に対して鋭角に折り曲げておいてもよい。この場合、羽部15b2がロータの中心近くから冷却空気を案内できるので、冷却空気の移動方向を円滑に変えることができる。
【0037】
本発明に係るファンブレードのもう一つの変形例として、ファンブレード15の板部15a3は図8に示すようにボルトが挿通される下穴15c3付近のみとし、しかもこれを羽部15b3に対して鈍角に折り曲げておいてもよい。この場合も同様に、羽部15b3がロータの中心近くから冷却空気を案内できるので、冷却空気の移動方向を円滑に変えることができる。
【0038】
本発明に係るファンブレード15のその他の変形例として、ロータ6の回転方向後方側または回転方向前方側に延びる複数の羽部(図示せず)を有する構成であってもよい。また、複数の羽部は1枚のファンブレード15に設けられる必要はなく、図7および図8に示す前述の二つの変形例に記載のファンブレード15、15を、図9に示すように重ね合わせて複数の羽部15b2,15b3が構成されてもよい。これらの場合、ファンブレード15により移動方向を変える冷却空気の量が倍増し、ステータの冷却効果を倍増させることができる。
【0039】
本発明は、回転電気機械に限定されるものではなく、ロータ6に付設されるファンブレード15(図1参照)であって、座金を兼用する板部15aおよびロータ6の回転方向後方もしくは回転方向前方に延びる羽部15bを持つファンブレード15であればよい。この場合、ファンブレード15はロータ6の回転にともなってその半径方向に移動する冷却空気の移動速度を低下させることなく、当該冷却空気の移動方向を変えることができるばかりか、ロータ6の任意の個所に部品を取付ける際の座金を兼用することができる。
(第2の実施形態)
【0040】
本発明の第2の実施形態に係る回転電気機械の一例である同期機を図面に基づき説明する。図10および図12に示す同期機31は、ステータコイル5が巻回されるスロット4eを内周側に有するステータ4と、ロータコイル9が巻回されかつ半径方向外方に延びる複数の突極6c,6cを有して前記ステータ4内に配置されるロータ6とを備える同期機である。この同期機31と第1の実施形態の同期機1とは、ファンブレード45を取付けるための構造において相違するのみであるので、相違点であるファンブレード45の取付構造についてのみ説明する(第1の実施形態に係る同期機1と同一の部品については、同一符号を付して説明を省略する)。前記ロータ6の隣接する二つの突極6c,6c間に位置するロータ基部36dには、ロータ6の軸心に沿った全長方向に延びるT型溝36eが設けられている。また、前記ロータ基部36dには、T型溝36eに対応するT型係止部45dを備えるファンブレード45がそのT型係止部45dをT型溝36eに挿通させて取付けられている。これにより、ファンブレード45をロータ基部36dへ取付ける際には、T型係止部45dをT型溝36eに挿通するだけでよく、簡単な作業で済む。
【0041】
前記ファンブレード45は、図11および図12に示すようにT型係止部45dに連なりかつロータ6の半径方向に延びる板部45aとこの板部45aに連なる羽部45bとを備えている。前記羽部45bは、基本形状において第1の実施形態の羽部15bと同一断面形状をなしており、しかも後記コイル押さえ41が位置できるようにこれに対応する個所が切り取られている。これにより、ファンブレード45はコイル押さえ41に対応する3カ所の位置に板部45aのみとなるボルト取付用切欠45eを有する構造をなしている。なお、ファンブレード45は3個のコイル押さえ41に対応するように構成されているが、コイル押さえ41は少なくとも1個あればよく、ファンブレード45はこれに対応する数だけ設ける構成であってもよい。
【0042】
前記ファンブレード45は、ボルト取付用切欠45e内にそれぞれコイル押さえ41を取付けるためのスタッドボルト42を各2本有している。このスタッドボルト42の一端には、割溝42aが形成されており、この割溝42aに前記ファンブレード45のボルト取付用切欠45e内に位置する板部15aが嵌合して、これらが溶接等の固定手段により固定されている。また、このスタッドボルト42の一端はその固定側においてはロータコイル9との間隙が十分に保たれる位置となるように設定されており、スタッドボルト42を経由して隣接する二つのロータコイル9,9が短絡しないように配慮されている。
【0043】
前記コイル押さえ41は、それぞれ前記スタッドボルト42が挿通可能な通孔41aを有している。この通孔41aには、前記ファンブレード45のT型係止部45dがロータ基部36dの端面からT型溝36eに挿通される時にコイル押さえ41に対応する位置で半径方向に直立するスタッドボルト42が挿入されている。このスタッドボルト42は、コイル押さえ41の上面から突出ており、このスタッドボルト42にナット46を螺合させてナット46とともにコイル押さえ41がロータ6と一体となってロータコイル9を押圧するように構成されている。
【0044】
上記同期機31において、隣接する二つのロータコイル9,9を押さえるコイル押さえ41は、隣接する二つの突極6c,6c間でファンブレード45のボルト取付用切欠45e内にて固定されるスタッドボルト42とこれに螺合するナット46とにより固定される。また、前記ファンブレード45は、ロータ6の回転方向後方または回転方向前方に延びる羽部45b(ロータ6の回転方向前方に延びる羽部は図示しないが、第1の実施形態の羽部15bや15b1と同形状である)を持っている。この構成により、第1の実施形態の同期機1と同様に、ロータ6の周速の影響で、ファンブレード45に沿って移動する空気の移動方向はロータ6の周速との合成速度となるので、そこに存在する空気を適切な方向に設定することにより、空気をステータ4側に案内することができる。そのため、前述の空気がロータ6の回転方向後方に移動する時には、空気の移動方向はロータ6が配置されるステータ4の半径方向に近くなるばかりか、空気がステータ4の内周近くで半径方向に噴出される。これにより、当該ステータ4の冷却したい部位に空気を適切に供給して、ステータ4を効率よく冷却することができる。しかも、スタッドボルト42と隣接のロータコイル9,9との間隙も確保されているので、ロータコイル9,9間の短絡の恐れも解消し、ロータコイル9,9を一部削り取る加工を行なう必要もなくなる。
【0045】
なお、本発明の各部の具体的な構成は上述した第1の実施形態および第2の実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0046】
1…同期機
4…ステータ
4d…通風ダクト
5…ステータコイル
6…ロータ
6c…突極
9…ロータコイル
11…コイル押さえ
12…ボルト
15…ファンブレード
15a…板部
15b…羽部
31…同期機
36d…ロータ基部
36e…T型溝
41…コイル押さえ
42…スタッドボルト
45…ファンブレード
45b…羽部
45d…T型係止部
45e…ボルト取付用切欠
46…ナット

図1
図2
図3
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図5
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図10
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