(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-216880(P2017-216880A)
(43)【公開日】2017年12月7日
(54)【発明の名称】積層鉄心の製造方法
(51)【国際特許分類】
H02K 15/02 20060101AFI20171110BHJP
H02K 1/30 20060101ALI20171110BHJP
H02K 1/18 20060101ALI20171110BHJP
【FI】
H02K15/02 F
H02K1/30 A
H02K1/18 B
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2017-171134(P2017-171134)
(22)【出願日】2017年9月6日
(62)【分割の表示】特願2013-123990(P2013-123990)の分割
【原出願日】2013年6月12日
(71)【出願人】
【識別番号】000144038
【氏名又は名称】株式会社三井ハイテック
(74)【代理人】
【識別番号】100090697
【弁理士】
【氏名又は名称】中前 富士男
(74)【代理人】
【識別番号】100176142
【弁理士】
【氏名又は名称】清井 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100127155
【弁理士】
【氏名又は名称】来田 義弘
(72)【発明者】
【氏名】小園 武明
(72)【発明者】
【氏名】馬場 慎太郎
(72)【発明者】
【氏名】緒方 萌
【テーマコード(参考)】
5H601
5H615
【Fターム(参考)】
5H601AA29
5H601DD11
5H601EE13
5H601EE19
5H601GA03
5H601GA23
5H601GA33
5H601GA50
5H601GC02
5H601GC12
5H601JJ06
5H601KK08
5H601KK10
5H601KK25
5H601KK30
5H615AA01
5H615BB14
5H615BB16
5H615PP01
5H615PP02
5H615PP07
5H615SS05
5H615SS25
5H615SS44
(57)【要約】
【課題】鉄心密度を高めると共に、渦電流の発生を極力少なくした積層鉄心の製造方法を提供する。
【解決手段】複数のコア片10をかしめ部23を介して積層して形成された積層鉄心の製造方法において、積層鉄心は固定子積層鉄心14であって、かしめ部23はヨーク部15の外側に形成された切り離し可能な複数の保持部17、17aにそれぞれ形成され、一の保持部17aの円周方向の幅は、他の保持部17の幅と異なっている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のコア片をかしめ部を介して積層して形成された積層鉄心の製造方法において、
前記積層鉄心は固定子積層鉄心であって、
前記かしめ部はヨーク部の外側に形成された切り離し可能な複数の保持部にそれぞれ形成され、一の前記保持部の円周方向の幅は、他の前記保持部の幅と異なっていることを特徴とする積層鉄心の製造方法。
【請求項2】
複数のコア片をかしめ部を介して積層して形成された積層鉄心の製造方法において、
前記積層鉄心は回転子積層鉄心であって、
軸孔の内側に凹部を設け、前記かしめ部は前記凹部に形成された切り離し可能な保持部に形成されていることを特徴とする積層鉄心の製造方法。
【請求項3】
請求項1記載の積層鉄心の製造方法において、
前記保持部と前記ヨーク部は断面縮幅部を介して連結されており、該断面縮幅部には切欠きが設けられていることを特徴とする積層鉄心の製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の積層鉄心の製造方法において、
前記保持部は(360度/n)毎にn個設けられていることを特徴とする積層鉄心の製造方法。但し、nは3以上の整数である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は積層鉄心(固定子積層鉄心、又は回転子積層鉄心をいう)の製造方法に係り、特に、積層鉄心を形成する際の残留応力を減少すると共に、積層鉄心内に発生する渦電流を減らして、モータの効率を上げる積層鉄心の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コア片(鉄心片)をかしめ積層して積層鉄心を形成する場合、コア片の表面は絶縁処理していても、かしめ部で上下のコア片が電気的に接続されるので、渦電流が発生し、積層鉄心の電力損失が発生するという問題があった。
そこで、特許文献1には、各コア片に複数のオリフィスを設け、非導電性材料(例えば、樹脂)を挿入して、各コア片を積層方向に連結し、渦電流の発生を減少する技術が提案されている。
【0003】
また、特許文献2、3には、積層鉄心を加熱して焼鈍する技術が提案されており、これによって、コア片を製造(例えば、プレス加工)する場合に発生する歪や残留応力を除去することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2003−529309号公報
【特許文献2】特開昭62−56521号公報
【特許文献3】特公平7−110115号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1記載の技術においては、確かに渦電流損の発生は減少するが、コア片を製造する過程で、コア片に歪や残留応力が残り、仮にプレスで上下に押圧しても、コア片間に隙間が発生し、樹脂漏れ等が発生し易いという問題がある。
【0006】
そこで、特許文献2、3に記載するように、コア片を焼鈍すると、コア片間の隙間は小さくなるが、単に焼鈍のみの状態では、うねりや撓みは残り、鉄心密度を高めることはできない。また、各コア片をかしめ積層していない場合は、コア片がバラバラになるため、取扱がしにくいという問題もある。
【0007】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、鉄心密度を高めると共に、渦電流の発生を極力少なくした積層鉄心の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的に沿う第1の発明に係る積層鉄心の製造方法は、複数のコア片を積層して形成した積層鉄心を焼鈍した後、前記積層鉄心を積層方向に加圧し、樹脂モールドによって固着して一体化する積層鉄心の製造方法であって、前記樹脂モールドは、前記積層鉄心が焼鈍された後、降温する過程で、前記焼鈍の熱を利用して行われる。
【0009】
【0010】
第2の発明に係る積層鉄心の製造方法は、第1の発明に係る積層鉄心の製造方法において、前記樹脂モールドは、前記積層鉄心が焼鈍された後、再加熱又は保温して行われる。
【0011】
第3の発明に係る積層鉄心の製造方法は、第1、第2の発明に係る積層鉄心の製造方法において、前記積層鉄心は、前記コア片を積層したブロックコアを複数積層して形成され、前記樹脂モールドによって一体化される。なお、焼鈍はブロックコアを製造した時点で、又はブロックコアを積み重ねて積層鉄心とした時点で行ってもよい。
【0012】
第4の発明に係る積層鉄心の製造方法は、第3の発明に係る積層鉄心の製造方法において、前記ブロックコアはそれぞれ前記コア片がかしめ部を介して積層されている。
【0013】
第5の発明に係る積層鉄心の製造方法は、第4の発明に係る積層鉄心の製造方法において、前記積層鉄心は固定子積層鉄心であって、前記かしめ部は環状のヨーク部の外側に形成された切り離し可能の複数の保持部にそれぞれ形成されている。
【0014】
第6の発明に係る積層鉄心の製造方法は、第5の発明に係る積層鉄心の製造方法において、前記保持部は前記ヨーク部の外側に(360度/n)毎にn個設けられている。
但し、nは3以上の整数である。
【0015】
第7の発明に係る積層鉄心の製造方法は、第6の発明に係る積層鉄心の製造方法において、前記保持部と前記ヨーク部は断面縮幅部を介して連結されている。
【0016】
第8の発明に係る積層鉄心の製造方法は、第3〜第7の発明に係る積層鉄心の製造方法において、前記ブロックコアは、該ブロックコア単位毎で転積されている。
【0017】
第9の発明に係る積層鉄心の製造方法は、第1〜第8の発明に係る積層鉄心の製造方法において、前記樹脂モールドは、前記積層鉄心を貫通する孔の全部又は一部を利用して行われている。
【0018】
そして、第10の発明に係る積層鉄心の製造方法は、第1、第2の発明に係る積層鉄心の製造方法において、前記積層鉄心は回転子積層鉄心又は固定子積層鉄心である。
【発明の効果】
【0019】
第1〜第10の発明に係る積層鉄心の製造方法においては、積層鉄心を焼鈍した後、加圧して樹脂モールドによって固着一体化しているので、積層鉄心はかしめ部を必要としない。よって、渦電流発生による伴う電力損失を抑制することができる。また各コア片が焼鈍されて再結晶化された後に、加圧された状態で樹脂封止されるので、歪、残留応力、うねり、撓みの影響による樹脂漏れが少なく、鉄心密度も上昇し、優れた積層鉄心となる。
【0020】
特に、第1の発明に係る積層鉄心の製造方法は、樹脂モールドが、積層鉄心が焼鈍された後、降温する過程で、焼鈍の熱を利用して行われるので、焼鈍の余熱を利用でき、予熱装置が不要となり、予熱にかかる時間が不要となる。また、全体として熱効率が向上する。
【0021】
第2の発明に係る積層鉄心の製造方法は、樹脂モールドが、積層鉄心が焼鈍された後、再加熱又は保温して行われるので、適正温度で積層鉄心の樹脂封止ができる。
【0022】
第3の発明に係る積層鉄心の製造方法は、積層鉄心が、複数のコア片を積層したブロックコアを複数積層して形成され、樹脂モールドによって一体化されるので、製造や搬送がより簡単になる。
【0023】
第4の発明に係る積層鉄心の製造方法は、ブロックコアがそれぞれコア片がかしめ部を介して積層されているので、ブロックコアが分解しないで済む。
【0024】
第5の発明に係る積層鉄心の製造方法は、積層鉄心が固定子積層鉄心であって、かしめ部は環状のヨーク部の外側に形成された切り離し可能の複数の保持部にそれぞれ形成されているので、積層鉄心にかしめ部を無くすことができ、より確実に渦電流の発生を減らせる。また、積層鉄心を構成するコア片がバラバラになることがなく、取扱がし易い。
【0025】
第6の発明に係る積層鉄心の製造方法は、保持部がヨーク部の外側に(360度/n)毎にn個設けられているので、各コア片を形成する金型の形状が同一となる。
【0026】
第7の発明に係る積層鉄心の製造方法は、保持部とヨーク部が断面縮幅部を介して連結されているので、保持部の分離除去が容易となる。
【0027】
第8の発明に係る積層鉄心の製造方法は、ブロックコアがブロックコア単位毎で転積されているので、コア片の厚み偏差を解消できる。
【0028】
第9の発明に係る積層鉄心の製造方法は、樹脂モールドが積層鉄心を貫通する孔の全部又は一部を利用して行われているので、より確実にコア片の連結を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本発明の一実施の形態に係る積層鉄心の製造方法の工程図である。
【
図2】(A)、(B)、(C)は同積層鉄心の製造方法の一工程を示す説明図である。
【
図5】(A)、(B)、(C)、(D)はそれぞれ同積層鉄心の製造方法の説明図である。
【
図6】(A)、(B)、(C)、(D)はそれぞれ本発明の他の実施の形態に係る積層鉄心の製造方法の説明図である。
【
図7】本発明の更に他の実施の形態に係る積層鉄心の製造方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
続いて、添付した図面を参照しながら、本発明を具体化した実施の形態について説明する。
図1、
図2に示すように、本発明の一実施の形態に係る積層鉄心の製造方法は、帯状電磁鋼板から所定形状のコア片10を打ち抜き積層して、ブロックコア11を製造する第1工程(a)と、ブロックコア11を焼鈍炉に入れて焼鈍する第2工程(b)と、焼鈍したブロックコア11を積層して搬送台12(
図3参照)に載せる第3工程(c)と、搬送台12に所定数載ったブロックコア11をモールド金型装置13(
図4参照)に搬送して加圧する第4工程(d)と、ブロックコア11の貫通孔(孔の一例)を樹脂封止(樹脂モールド)して、固着一体化する第5工程(e)と、樹脂封止の完了した固定子積層鉄心14(積層鉄心の一例)をモールド金型装置13より取り出す第6工程(f)とを有する。以下、これらについて詳しく説明する。
【0031】
なお、以下の説明において、コア片10とブロックコア11の平面形状は略同一であるので、原則同一の番号を付して説明する。
コア片10は、
図2(A)、(B)、(C)、
図3に示すように、環状のヨーク片部15とその内側に均等配置された磁極片部16と、ヨーク片部15の外周に複数(この例では4)が均等配置された保持片部17、17aとを有する。複数の磁極片部16の内側には、円(円に近い多角形を含む)を形成するロータ空間18が形成されている。なお、磁極片部16の先部には磁極歯片部が設けられることもある。
【0032】
この実施の形態では4つの保持片部17、17aが設けられ、3の保持片部17の円周方向の幅はw1となっているが、1つの保持片部17aの幅はw2(<w1)となっている。この保持片部17aによって、コア片10及びブロックコア11の角度位置をセンサー又は目視で検知できる。
【0033】
各保持片部17、17aはヨーク片部15の外周に均等角度(例えば、90度)で配置され、矩形のかしめ形成片部20、20aとかしめ形成片部20、20aをヨーク片部15の外周に接続する断面縮幅部21、21aとを有している。かしめ形成片部20、20aの中央にはかしめ部23が形成されている。かしめ部23は周知の半抜きかしめ、又はVかしめからなっている。このかしめ部23を介して複数枚のコア片10が連結されてブロックコア11を形成している。各ブロックコア11の端部にあるコア片10のかしめ部23は周知のかしめ孔であるのが好ましいが、必須の要件ではない。
【0034】
コア片10は、打ち抜き装置(プレス装置)によって打ち抜き形成され、最終工程でかしめ積層されてブロックコア11となる。各ブロックコア11で積層されたコア片10の保持片部17、17aは、環状のヨーク部15の外側にブロックコア11の保持部17、17aを形成する。
【0035】
また、磁極片部16の中心線上で、ヨーク片部15の半径方向中間位置又は中間位置より半径方向内側位置には、円形又は角形の抜き孔10aを備えている。直径は任意であるが、例えば3〜10mmの範囲で選定される。抜き孔10aはブロックコア11では樹脂孔10b(積層鉄心を貫通する孔の一例)となって、最終的には樹脂が充填され、各コア片10を連結する役目を果たす(以上、第1工程)。
【0036】
打ち抜き装置で製造された単数又は複数のブロックコア11は焼鈍炉に入れられ、700〜850℃程度(好ましくは、750〜800℃)の絶縁皮膜を破壊しない温度で焼鈍処理され、残留応力の除去を行う(以上、第2工程)。これによって、コア片10は多少軟化し、歪等が除去される。焼鈍炉から取り出したブロックコア11は、複数個(m個、この実施の形態では4つ)が積層状態で一つの搬送台12に載置される。この場合、ブロックコア11の温度は250〜300℃程度(焼鈍して降温する過程の温度)とするのがよい。
【0037】
搬送台12は、
図3に2点鎖線で示すように、矩形の台板26と台板26の中央に形成されたガイドロッド27を有する。ガイドロッド27の直径は、ロータ空間18の外形と実質一致し、ブロックコア11の位置決めができる。ここで、この実施の形態においては、4つのブロックコア11を積層しているが、保持部17の数の倍数の範囲で変えてもよい。なお、ガイドロッドはブロックコアのロータ空間に限らず、例えば、複数のスロット空間に任意の数だけ設置してブロックコアを位置決めしてもよい。
【0038】
そして、1段目、2段目、3段目及び4段目のブロックコア11は90度毎に回転して配置する(即ち、転積する)。90度毎の判別は、この実施の形態では幅狭の保持部17aの位置が上に行くに従い、所定角度(この例では90度)ずれていることを確認して決める。
各ブロックコア11の位置合わせは、保持部17、17aの側部が上方向に直線状に並んでいることを確認することによって行う。平行部材で保持部17、17aを円周方向からクランプすることもできる(以上、第3工程)。
【0039】
次に、ブロックコア11の温度が下がらないうちに、
図4に示すように、モールド金型装置13に搬送し、上下の樹脂注入型29、受け型30の間に軸心及び角度を合わせて配置する。軸心はガイドロッド27の先部を樹脂注入型29のセンター穴32に合わせることによって、角度は受け型30に設けられた矩形の台板26をガイドする角溝形状のガイド部材を用いて行う。
【0040】
樹脂注入型29には、
図3、
図4に示すように、円筒状の樹脂ポット33が樹脂孔10bに応じて形成され、プランジャ34によって樹脂ポット33から樹脂を押し出し、ランナー35、ダミープレート36に設けられた注入孔37を介して、樹脂孔10bに樹脂を充填する構成となっている。なお、注入孔の真上に樹脂ポットを配置すれば、ランナーを省略することができる。
ダミープレート36は省略することもできるが、これを設けることによって、固定子積層鉄心14からの樹脂剥離が容易となる。なお、ダミープレート36は直径がコア片10より大きく、中央に軸孔38を有しており、ガイドロッド27により位置決めされる。ブロックコア11を積層した固定子積層鉄心14の樹脂注入側にダミープレート36を配置するのがよい。
【0041】
この状態で、固定子積層鉄心14をダミープレート36ごと樹脂注入型29及び受け型30によって積層方向に加圧する(以上、第4工程)。プランジャ34を移動させて、樹脂を樹脂孔10bに注入する。複数のブロックコア11からなる固定子積層鉄心14は焼鈍の熱で加熱されているので、樹脂封止に先立って固定子積層鉄心を予熱する必要がなく、また、樹脂注入型に加熱機構がなくても、注入された樹脂(通常、エポキシ等の熱硬化性樹脂)が硬化し樹脂封止が完了する(以上、第5工程)。
【0042】
注入した樹脂が硬化した後、樹脂注入型29及び受け型30の加圧を解いて、搬送台12ごと樹脂封止された固定子積層鉄心14をモールド金型装置13から取り出し、ダミープレート36を外す。これにより、樹脂によってコア片10が連結された積層鉄心ができる(以上、第6工程)。次に、
図5(A)、(B)に示すプレスカッター39を用いて、周囲の保持部17、17aを断面縮幅部21、21aの付け根の部分でヨーク部15から切り離し、除去する。
図5(A)、(B)において、40は上刃物を、41は下刃物を示す。これによって、固定子積層鉄心14が完成する。
【0043】
なお、
図5(C)に示すように、断面縮幅部21、21aに切欠き43を設けて、より小さい荷重で切断するようにすることもできる。
また、断面縮幅部21、21aの切断部に溝を設けておき、プレスカッター39の負担を小さくすることもできる。更に、
図5(D)に示すように、プッシュバックでアリ溝状の嵌合部57を形成しておき、樹脂封止後に嵌合部57を含む保持部17を押し抜き除去してもよい。
【0044】
前記実施の形態においては、固定子積層鉄心14に樹脂孔10bを設けて樹脂を充填して、各コア片10を連結しているが、1)
図6(A)に示すように、軸孔内に一定の厚みで樹脂を充填した場合、2)
図6(B)、(C)に示すように積層鉄心の磁極部を形成するスロットの内側に所定厚みで樹脂層を形成した場合、3)
図6(D)に示すように、磁極部の先端のエアギャップ部に樹脂層を形成する場合、あるいはこれらを組み合わせた場合であっても、本発明は適用される。
【0045】
前記実施の形態は、固定子積層鉄心14について説明したが、
図7に示すように回転子積層鉄心45にも本発明を適用できる。この場合は、永久磁石46が配置された磁石挿入孔47(孔の一例)を利用し、樹脂封止を行うのが好ましいが、他の部分に樹脂を充填する貫通孔(孔の一例)を形成する方法、積層鉄心の一部(例えば、磁石挿入孔)を樹脂層で覆ってコア片を連結する方法等がある(特開2007−282392号公報、特開2008−54376号公報等を参照)。
【0046】
図7において、48は軸孔を、49は樹脂注入型に形成される樹脂ポットを、50はランナーを示している。一部の形状が異なる保持部52は軸孔48の周囲に均等角度で設けられるのがよい。この場合、軸孔48の内側に凹部53を設け、この凹部53に保持部52を設けると、保持部52を除去した場合、軸孔48の精度が維持されるという利点がある。また、55はかしめ部を示す。この凹部53を設けることは固定子積層鉄心の外周部にも適用される。
【0047】
前記実施の形態において、保持部は一般的に(360度/n)の角度でn個設けられる(nは3以上の整数)。転積角度は(360度/n)×pとなる(pは例えば、1、2、3、・・・)。
また、前記実施の形態においては、積層鉄心に設けた樹脂孔の全てを樹脂封止したが、そのうちの一部を利用することもできる。
【0048】
本発明は前記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲でその形状、構成を変更することもできる。
前記実施の形態においては、積層鉄心の昇温は焼鈍後の余熱を用いて行ったが、焼鈍後の余熱を使用せず、焼鈍後冷却した積層鉄心を、加熱手段によって適当温度に加熱又は保温する場合も本発明は適用される。また焼鈍後の余熱と加熱手段による加熱を併用することもできる。
また、前記実施の形態においては、ブロックコアの転積を行っているが、転積は必須の要件ではない。
また、焼鈍工程において、積層鉄心を化成処理(ブルーイング)してもよく、この積層鉄心を樹脂モールドするようにしてもよい。
更に、本発明は積層鉄心が円周方向に複数分割されたものにも適用することができる。
【0049】
この実施の形態においては、積層鉄心の焼鈍は各ブロックコアを製造した段階で行っているが、複数枚のコア片を必要枚数積層して積層鉄心を造り(即ち、ブロックコアとしないで)、この積層鉄心を焼鈍する場合も本発明は適用される。
【符号の説明】
【0050】
10:コア片、10a:抜き孔、10b:樹脂孔、11:ブロックコア、12:搬送台、13:モールド金型装置、14:固定子積層鉄心、15:ヨーク片部(ヨーク部)、16:磁極片部、17、17a:保持片部(保持部)、18:ロータ空間、20、20a:かしめ形成片部、21、21a:断面縮幅部、23:かしめ部、26:台板、27:ガイドロッド、29:樹脂注入型、30:受け型、32:センター穴、33:樹脂ポット、34:プランジャ、35:ランナー、36:ダミープレート、37:注入孔、38:軸孔、39:プレスカッター、40:上刃物、41:下刃物、43:切欠き、45:回転子積層鉄心、46:永久磁石、47:磁石挿入孔、48:軸孔、49:樹脂ポット、50:ランナー、52:保持部、53:凹部、55:かしめ部、57:嵌合部
【手続補正書】
【提出日】2017年9月7日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のコア片をかしめ部を介して積層して形成された積層鉄心の製造方法において、
前記積層鉄心は固定子積層鉄心であって、
前記かしめ部はヨーク部の外側に形成された切り離し可能な複数の保持部にそれぞれ形成され、一の前記保持部の円周方向の幅は、他の前記保持部の幅と異なっていることを特徴とする積層鉄心の製造方法。
【請求項2】
複数のコア片をかしめ部を介して積層して形成された積層鉄心の製造方法において、
前記積層鉄心は回転子積層鉄心であって、
軸孔の内側に凹部を設け、前記かしめ部は前記凹部に形成された切り離し可能な保持部に形成されていることを特徴とする積層鉄心の製造方法。
【請求項3】
請求項1記載の積層鉄心の製造方法において、
前記保持部と前記ヨーク部は断面縮幅部を介して連結されており、該断面縮幅部には切欠きが設けられていることを特徴とする積層鉄心の製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の積層鉄心の製造方法において、
前記保持部は(360度/n)毎にn個設けられていることを特徴とする積層鉄心の製造方法。但し、nは3以上の整数である。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は積層鉄心(固定子積層鉄心、又は回転子積層鉄心をいう)の製造方法に係り、特に、積層鉄心を形成する際の残留応力を減少すると共に、積層鉄心内に発生する渦電流を減らして、モータの効率を上げる積層鉄心の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コア片(鉄心片)をかしめ積層して積層鉄心を形成する場合、コア片の表面は絶縁処理していても、かしめ部で上下のコア片が電気的に接続されるので、渦電流が発生し、積層鉄心の電力損失が発生するという問題があった。
そこで、特許文献1には、各コア片に複数のオリフィスを設け、非導電性材料(例えば、樹脂)を挿入して、各コア片を積層方向に連結し、渦電流の発生を減少する技術が提案されている。
【0003】
また、特許文献2、3には、積層鉄心を加熱して焼鈍する技術が提案されており、これによって、コア片を製造(例えば、プレス加工)する場合に発生する歪や残留応力を除去することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2003−529309号公報
【特許文献2】特開昭62−56521号公報
【特許文献3】特公平7−110115号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1記載の技術においては、確かに渦電流損の発生は減少するが、コア片を製造する過程で、コア片に歪や残留応力が残り、仮にプレスで上下に押圧しても、コア片間に隙間が発生し、樹脂漏れ等が発生し易いという問題がある。
【0006】
そこで、特許文献2、3に記載するように、コア片を焼鈍すると、コア片間の隙間は小さくなるが、単に焼鈍のみの状態では、うねりや撓みは残り、鉄心密度を高めることはできない。また、各コア片をかしめ積層していない場合は、コア片がバラバラになるため、取扱がしにくいという問題もある。
【0007】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、鉄心密度を高めると共に、渦電流の発生を極力少なくした積層鉄心の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的に沿う第1の発明に係る積層鉄心の製造方法は、複数のコア片を
かしめ部を介して積層して形成された積層鉄心の製造方法において、前記積層鉄心は固定子積層鉄心であって、前記かしめ部はヨーク部の外側に形成された切り離し可能な複数の保持部にそれぞれ形成され、一の前記保持部の円周方向の幅は、他の前記保持部の幅と異なっている。
【0009】
第2の発明に係る積層鉄心の製造方法は、複数のコア片をかしめ部を介して積層して形成された積層鉄心の製造方法において、前記積層鉄心は回転子積層鉄心であって、軸孔の内側に凹部を設け、前記かしめ部は前記凹部に形成された切り離し可能な保持部に形成されている。
【0010】
第
3の発明に係る積層鉄心の製造方法は、第1の発明に係る積層鉄心の製造方法において、
前記保持部と前記ヨーク部は断面縮幅部を介して連結されており、該断面縮幅部には切欠きが設けられている。
【0011】
【0012】
【0013】
【0014】
第
4の発明に係る積層鉄心の製造方法は、
第1〜第3の発明に係る積層鉄心の製造方法において、前記保持部は前記ヨーク部の外側に(360度/n)毎にn個設けられている。但し、nは3以上の整数である。
【0015】
【0016】
【0017】
【0018】
【発明の効果】
【0019】
第1の発明に係る積層鉄心の製造方法においては、
かしめ部がヨーク部の外側に形成された切り離し可能な複数の保持部にそれぞれ形成され、一の保持部の円周方向の幅は、他の保持部の幅と異なっているので、一の保持部の角度位置をセンサー又は目視で検知できる。
【0020】
第
2の発明に係る積層鉄心の製造方法は
、軸孔の内側に凹部を設け、かしめ部が凹部に形成された切り離し可能な保持部に形成されているので、保持部を除去した場合、軸孔の精度が維持される。
【0021】
第
3の発明に係る積層鉄心の製造方法は、
保持部とヨーク部が断面縮幅部を介して連結されており、断面縮幅部には切欠きが設けられているので、より小さな荷重で切断できる。
【0022】
【0023】
【0024】
【0025】
第
4の発明に係る積層鉄心の製造方法は、保持部がヨーク部の外側に(360度/n)毎にn個設けられているので、各コア片を形成する金型の形状が同一となる。
【0026】
【0027】
【0028】
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本発明の一実施の形態に係る積層鉄心の製造方法の工程図である。
【
図2】(A)、(B)、(C)は同積層鉄心の製造方法の一工程を示す説明図である。
【
図5】(A)、(B)、(C)、(D)はそれぞれ同積層鉄心の製造方法の説明図である。
【
図6】(A)、(B)、(C)、(D)はそれぞれ本発明の他の実施の形態に係る積層鉄心の製造方法の説明図である。
【
図7】本発明の更に他の実施の形態に係る積層鉄心の製造方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
続いて、添付した図面を参照しながら、本発明を具体化した実施の形態について説明する。
図1、
図2に示すように、本発明の一実施の形態に係る積層鉄心の製造方法は、帯状電磁鋼板から所定形状のコア片10を打ち抜き積層して、ブロックコア11を製造する第1工程(a)と、ブロックコア11を焼鈍炉に入れて焼鈍する第2工程(b)と、焼鈍したブロックコア11を積層して搬送台12(
図3参照)に載せる第3工程(c)と、搬送台12に所定数載ったブロックコア11をモールド金型装置13(
図4参照)に搬送して加圧する第4工程(d)と、ブロックコア11の貫通孔(孔の一例)を樹脂封止(樹脂モールド)して、固着一体化する第5工程(e)と、樹脂封止の完了した固定子積層鉄心14(積層鉄心の一例)をモールド金型装置13より取り出す第6工程(f)とを有する。以下、これらについて詳しく説明する。
【0031】
なお、以下の説明において、コア片10とブロックコア11の平面形状は略同一であるので、原則同一の番号を付して説明する。
コア片10は、
図2(A)、(B)、(C)、
図3に示すように、環状のヨーク片部15とその内側に均等配置された磁極片部16と、ヨーク片部15の外周に複数(この例では4)が均等配置された保持片部17、17aとを有する。複数の磁極片部16の内側には、円(円に近い多角形を含む)を形成するロータ空間18が形成されている。なお、磁極片部16の先部には磁極歯片部が設けられることもある。
【0032】
この実施の形態では4つの保持片部17、17aが設けられ、3の保持片部17の円周方向の幅はw1となっているが、1つの保持片部17aの幅はw2(<w1)となっている。この保持片部17aによって、コア片10及びブロックコア11の角度位置をセンサー又は目視で検知できる。
【0033】
各保持片部17、17aはヨーク片部15の外周に均等角度(例えば、90度)で配置され、矩形のかしめ形成片部20、20aとかしめ形成片部20、20aをヨーク片部15の外周に接続する断面縮幅部21、21aとを有している。かしめ形成片部20、20aの中央にはかしめ部23が形成されている。かしめ部23は周知の半抜きかしめ、又はVかしめからなっている。このかしめ部23を介して複数枚のコア片10が連結されてブロックコア11を形成している。各ブロックコア11の端部にあるコア片10のかしめ部23は周知のかしめ孔であるのが好ましいが、必須の要件ではない。
【0034】
コア片10は、打ち抜き装置(プレス装置)によって打ち抜き形成され、最終工程でかしめ積層されてブロックコア11となる。各ブロックコア11で積層されたコア片10の保持片部17、17aは、環状のヨーク部15の外側にブロックコア11の保持部17、17aを形成する。
【0035】
また、磁極片部16の中心線上で、ヨーク片部15の半径方向中間位置又は中間位置より半径方向内側位置には、円形又は角形の抜き孔10aを備えている。直径は任意であるが、例えば3〜10mmの範囲で選定される。抜き孔10aはブロックコア11では樹脂孔10b(積層鉄心を貫通する孔の一例)となって、最終的には樹脂が充填され、各コア片10を連結する役目を果たす(以上、第1工程)。
【0036】
打ち抜き装置で製造された単数又は複数のブロックコア11は焼鈍炉に入れられ、700〜850℃程度(好ましくは、750〜800℃)の絶縁皮膜を破壊しない温度で焼鈍処理され、残留応力の除去を行う(以上、第2工程)。これによって、コア片10は多少軟化し、歪等が除去される。焼鈍炉から取り出したブロックコア11は、複数個(m個、この実施の形態では4つ)が積層状態で一つの搬送台12に載置される。この場合、ブロックコア11の温度は250〜300℃程度(焼鈍して降温する過程の温度)とするのがよい。
【0037】
搬送台12は、
図3に2点鎖線で示すように、矩形の台板26と台板26の中央に形成されたガイドロッド27を有する。ガイドロッド27の直径は、ロータ空間18の外形と実質一致し、ブロックコア11の位置決めができる。ここで、この実施の形態においては、4つのブロックコア11を積層しているが、保持部17の数の倍数の範囲で変えてもよい。なお、ガイドロッドはブロックコアのロータ空間に限らず、例えば、複数のスロット空間に任意の数だけ設置してブロックコアを位置決めしてもよい。
【0038】
そして、1段目、2段目、3段目及び4段目のブロックコア11は90度毎に回転して配置する(即ち、転積する)。90度毎の判別は、この実施の形態では幅狭の保持部17aの位置が上に行くに従い、所定角度(この例では90度)ずれていることを確認して決める。
各ブロックコア11の位置合わせは、保持部17、17aの側部が上方向に直線状に並んでいることを確認することによって行う。平行部材で保持部17、17aを円周方向からクランプすることもできる(以上、第3工程)。
【0039】
次に、ブロックコア11の温度が下がらないうちに、
図4に示すように、モールド金型装置13に搬送し、上下の樹脂注入型29、受け型30の間に軸心及び角度を合わせて配置する。軸心はガイドロッド27の先部を樹脂注入型29のセンター穴32に合わせることによって、角度は受け型30に設けられた矩形の台板26をガイドする角溝形状のガイド部材を用いて行う。
【0040】
樹脂注入型29には、
図3、
図4に示すように、円筒状の樹脂ポット33が樹脂孔10bに応じて形成され、プランジャ34によって樹脂ポット33から樹脂を押し出し、ランナー35、ダミープレート36に設けられた注入孔37を介して、樹脂孔10bに樹脂を充填する構成となっている。なお、注入孔の真上に樹脂ポットを配置すれば、ランナーを省略することができる。
ダミープレート36は省略することもできるが、これを設けることによって、固定子積層鉄心14からの樹脂剥離が容易となる。なお、ダミープレート36は直径がコア片10より大きく、中央に軸孔38を有しており、ガイドロッド27により位置決めされる。ブロックコア11を積層した固定子積層鉄心14の樹脂注入側にダミープレート36を配置するのがよい。
【0041】
この状態で、固定子積層鉄心14をダミープレート36ごと樹脂注入型29及び受け型30によって積層方向に加圧する(以上、第4工程)。プランジャ34を移動させて、樹脂を樹脂孔10bに注入する。複数のブロックコア11からなる固定子積層鉄心14は焼鈍の熱で加熱されているので、樹脂封止に先立って固定子積層鉄心を予熱する必要がなく、また、樹脂注入型に加熱機構がなくても、注入された樹脂(通常、エポキシ等の熱硬化性樹脂)が硬化し樹脂封止が完了する(以上、第5工程)。
【0042】
注入した樹脂が硬化した後、樹脂注入型29及び受け型30の加圧を解いて、搬送台12ごと樹脂封止された固定子積層鉄心14をモールド金型装置13から取り出し、ダミープレート36を外す。これにより、樹脂によってコア片10が連結された積層鉄心ができる(以上、第6工程)。次に、
図5(A)、(B)に示すプレスカッター39を用いて、周囲の保持部17、17aを断面縮幅部21、21aの付け根の部分でヨーク部15から切り離し、除去する。
図5(A)、(B)において、40は上刃物を、41は下刃物を示す。これによって、固定子積層鉄心14が完成する。
【0043】
なお、
図5(C)に示すように、断面縮幅部21、21aに切欠き43を設けて、より小さい荷重で切断するようにすることもできる。
また、断面縮幅部21、21aの切断部に溝を設けておき、プレスカッター39の負担を小さくすることもできる。更に、
図5(D)に示すように、プッシュバックでアリ溝状の嵌合部57を形成しておき、樹脂封止後に嵌合部57を含む保持部17を押し抜き除去してもよい。
【0044】
前記実施の形態においては、固定子積層鉄心14に樹脂孔10bを設けて樹脂を充填して、各コア片10を連結しているが、1)
図6(A)に示すように、軸孔内に一定の厚みで樹脂を充填した場合、2)
図6(B)、(C)に示すように積層鉄心の磁極部を形成するスロットの内側に所定厚みで樹脂層を形成した場合、3)
図6(D)に示すように、磁極部の先端のエアギャップ部に樹脂層を形成する場合、あるいはこれらを組み合わせた場合であっても、本発明は適用される。
【0045】
前記実施の形態は、固定子積層鉄心14について説明したが、
図7に示すように回転子積層鉄心45にも本発明を適用できる。この場合は、永久磁石46が配置された磁石挿入孔47(孔の一例)を利用し、樹脂封止を行うのが好ましいが、他の部分に樹脂を充填する貫通孔(孔の一例)を形成する方法、積層鉄心の一部(例えば、磁石挿入孔)を樹脂層で覆ってコア片を連結する方法等がある(特開2007−282392号公報、特開2008−54376号公報等を参照)。
【0046】
図7において、48は軸孔を、49は樹脂注入型に形成される樹脂ポットを、50はランナーを示している。一部の形状が異なる保持部52は軸孔48の周囲に均等角度で設けられるのがよい。この場合、軸孔48の内側に凹部53を設け、この凹部53に保持部52を設けると、保持部52を除去した場合、軸孔48の精度が維持されるという利点がある。また、55はかしめ部を示す。この凹部53を設けることは固定子積層鉄心の外周部にも適用される。
【0047】
前記実施の形態において、保持部は一般的に(360度/n)の角度でn個設けられる(nは3以上の整数)。転積角度は(360度/n)×pとなる(pは例えば、1、2、3、・・・)。
また、前記実施の形態においては、積層鉄心に設けた樹脂孔の全てを樹脂封止したが、そのうちの一部を利用することもできる。
【0048】
本発明は前記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲でその形状、構成を変更することもできる。
前記実施の形態においては、積層鉄心の昇温は焼鈍後の余熱を用いて行ったが、焼鈍後の余熱を使用せず、焼鈍後冷却した積層鉄心を、加熱手段によって適当温度に加熱又は保温する場合も本発明は適用される。また焼鈍後の余熱と加熱手段による加熱を併用することもできる。
また、前記実施の形態においては、ブロックコアの転積を行っているが、転積は必須の要件ではない。
また、焼鈍工程において、積層鉄心を化成処理(ブルーイング)してもよく、この積層鉄心を樹脂モールドするようにしてもよい。
更に、本発明は積層鉄心が円周方向に複数分割されたものにも適用することができる。
【0049】
この実施の形態においては、積層鉄心の焼鈍は各ブロックコアを製造した段階で行っているが、複数枚のコア片を必要枚数積層して積層鉄心を造り(即ち、ブロックコアとしないで)、この積層鉄心を焼鈍する場合も本発明は適用される。
【符号の説明】
【0050】
10:コア片、10a:抜き孔、10b:樹脂孔、11:ブロックコア、12:搬送台、13:モールド金型装置、14:固定子積層鉄心、15:ヨーク片部(ヨーク部)、16:磁極片部、17、17a:保持片部(保持部)、18:ロータ空間、20、20a:かしめ形成片部、21、21a:断面縮幅部、23:かしめ部、26:台板、27:ガイドロッド、29:樹脂注入型、30:受け型、32:センター穴、33:樹脂ポット、34:プランジャ、35:ランナー、36:ダミープレート、37:注入孔、38:軸孔、39:プレスカッター、40:上刃物、41:下刃物、43:切欠き、45:回転子積層鉄心、46:永久磁石、47:磁石挿入孔、48:軸孔、49:樹脂ポット、50:ランナー、52:保持部、53:凹部、55:かしめ部、57:嵌合部