【実施例】
【0018】
以下に本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例により何らの制限を受けるものではない。
【0019】
<実施例1>(年齢と皮膚角層中のOPH活性との関係)
(1)皮膚角層の採取
パネラー53名について、以下に示す方法でヒト皮膚角層のサンプルを採取した。
1)メーク落としシート(製造元;株式会社コーセー)を用いて、右頬部を洗浄した。
2)精製水を含ませたコットンを用いて、メーク落としシートで洗浄した前記右頬部(以下、「前記右頬部」という)を再度拭き取った。
3)角層チェッカー(アサヒバイオメッド製)を用いて、前記右頬部の皮膚角層サンプルを採取した。すなわち、前記角層チェッカー(粘着シート;2.5cm×2.5cm/1箇所)を前記右頬部の任意の2箇所に貼り付けて剥がし、それを3回繰り返して2箇所×3枚(計6枚)の皮膚角層サンプルを採取した。
【0020】
(2)OPH活性の測定
上で得られた各パネラーのヒト皮膚角層抽出液について、OPH(酸化蛋白分解酵素)活性を、以下の方法で測定した。
【0021】
実施例1に記載した方法にて採取したスキンチェッカー(皮膚角層)の2層目の角層の半分(2.5cm×1.25cm)とφ4mmのステンレスビーズ1個を2mLスクリューキャップチューブに入れ、氷冷したTritonX-100を0.025%濃度の0.1M−リン酸バッファー(pH7.4)溶液を300μL加えた。ビーズ破砕機(タイテック(株)製、商品名「μT−12」)にて3,000rpnで5分間抽出した。その後遠心分離(4℃、10,000rpm、5分)し、上清をヒト皮膚角層抽出液とした。
【0022】
96穴マイクロプレート(透明)に、前記ヒト皮膚角層抽出液;100μLを、次いで1mM−AAPA(acetyl-L-alanine p-nitroaniline)0.1M−Tris-HClバッファー(pH7.4)溶液(少量のDMSOにてAAPAを溶解);50μLを注入し、37℃で120分間インキュベートした。インキュベート前後における、Abs.405nmでの吸光度を測定した。
【0023】
またヒト皮膚角層抽出液について、400μLをスクリューキャップチューブに採取した後100℃にて乾燥させ、8MのKOHを400μL加えて100℃で8時間インキュベートした。
【0024】
所定時間経過後、5MのHClを600μL添加してボルテックスミキサーにて完全に混合させた後、4℃,10,000rpmにて5分間遠心分離をした。この上澄み100μLに対してOPA(o-phthalaldehyde)溶液を50μL加えて混合し、蛍光強度(Ex:340nm/Em:450nm)を測定してタンパク量を算出した。単位タンパクあたり、1時間あたりのpNA(p-nitroaniline)の生成量を酵素活性(OPH活性)とした。
【0025】
各パネラーの年齢とOPH活性の測定結果を表1に示す。また、各パネラーの年齢とOPH活性(単位;pNA(pmol/h/μg protein)との関係を表すグラフを
図1に示す。
【0026】
【表1】
【0027】
上記結果より、皮膚角質層中のOPH活性は年齢とある程度の相関関係を示すことがわかる。
【0028】
<実施例2>(肌の見た目年齢とOPH活性との関係)
(1)肌の見た目年齢の評価
パネラー3名[A(年齢;64歳男性)、B(年齢;62歳男性)、C(年齢;48歳男性)]について、従来の肌の見た目年齢の評価方法として多く採用されている方法で肌の見た目年齢を評価した。具体的には、各パネラーについて以下の各項目に関する評価を行った。
【0029】
1)レプリカによるシワ個数(右目尻)とキメ個数(右目尻下)
2)肌水分量(右頬)
3)肌表面の粗さ(右頬及び右目尻の2箇所)
4)メラニン量(右頬及び右目尻の2箇所)
【0030】
上記各評価項目について、具体的な評価方法は以下の通りである。
[レプリカによるシワ個数とキメ個数の測定]
シリコーンラバーを用いて皮膚表面のレプリカを採取し、これに角度30度の平行光を照射し撮像して得られる陰影画像を基にして、皮膚の三次元形状を解析した。すなわち、前記平行光を照射して得られるシワ、キメ等の形状に応じた陰影画像をCCDカメラで撮像し、コンピュータに取り込んで画像処理し、シワ・キメ等の形状及び定量解析を行った。解析には、反射用レプリカ3D解析システム「ASA-03RXD」(アサヒバイオメド株式会社製)を用いた。
【0031】
なお、「キメ」とは、ヒトの肌表面に本来存在する「皮溝」とよばれる溝と、その溝に囲まれ隆起した「皮丘」とからなる網目構造である。若く状態の良い肌で肌年齢が低いほど、「皮溝」と「皮丘」がはっきりしていて網目構造が細かく明確に観察される。一方、年齢を重ねたり肌荒れを起こしたりして肌年齢が高くなった肌では、「皮溝」「皮丘」がはっきりしなくなり、肌表面がのっぺりとして網目構造が大きくなると同時にゆるく不明瞭になる。「キメ個数」は一定面積当りの「キメ」の数を表しており、肌年齢が高いほどキメ個数が減少する。
【0032】
なお、「シワ」とは、上述した皮溝とは異なり、加齢や紫外線、乾燥等により後天的に生じる皮膚の表皮から真皮にまで及ぶ変形をいい、上記「キメ」と明確に区別される。
上記の方法で求められた一定面積あたりのシワの個数は、少ないほどシワの数が少なく、肌の見た目(見た目の肌年齢)が若いことを示している。また、一定面積あたりのキメの個数は、大きい程キメの数が多く、見た目の肌年齢が若いことを示している。
【0033】
[肌水分量]
定圧センサープローブ接触高周波コンダクタンス交換方法(測定装置;商品名「SKICON-200EX」、株式会社ヤヨイ製)を用い、高周波正弦電流を用いて皮表の角層の水分を測定した。なお、測定条件としては、周波数;3.5MHz、時間;5秒程(安定するまで)、伝導度;0〜2000μSである。このようにして得られた肌の水分量は、数値が高い程水分量が多く、肌の見た目(見た目の肌年齢)が若いことを示している。
【0034】
「肌表面の粗さ・メラニン量]
肌表面を3Dで特定波長の光を照射して撮影し画像処理することで、肌表面の粗さ(凹凸度合い)やメラニン量を測定した(測定装置;商品名「ANTERA3D」、ガデリウスメディカル株式会社製)。
このようにして得られた肌表面の粗さ(凹凸度合い)は、数値が少ない程肌が滑らかであり、見た目の肌年齢が若いことを示している。また、肌表面のメラニン量は数値が少ない程メラニンが少なく、見た目の肌年齢が若いことを示している。
【0035】
上記各パネラー(A、B、C)については、実施例1と同様の方法で右頬のOPH活性を測定した。各パネラーの評価結果及びOPH測定結果を表2に示す。
【0036】
【表2】
【0037】
表2から、実年齢が近いパネラーAとBを比較すると、実年齢がほぼ同じなのに対し、従来の機器による肌の見た目年齢の評価方法での評価と同様、OPH活性が高い程肌の見た目年齢も高いことがわかる。またパネラーBとCを比較すると、OPHの活性がより高い程見た目年齢も若くなることがわかる。OPH活性は機器による肌の見た目年齢の評価法に新たな生化学的視点を加えるとともに、簡易的に肌の見た目年齢を評価する方法として有用である。