イソα酸を添加する工程、カルシウムの含有量を80〜180質量ppmに調整する工程、及びマグネシウムの含有量を0〜50質量ppmに調整する工程を含む、飲料の製造方法。
カルシウムの含有量を80〜180質量ppmに調整し、マグネシウムの含有量を0〜50質量ppmに調整することを含む、イソα酸を含有する飲料にまろやかな酸味を付与する方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
イソα酸を含む、ノンアルコールビールテイスト飲料等の飲料においては、酸味の質が悪くなる、すなわち、まろやかさに欠けた酸味となることが、本発明者らにより新たな課題として見出された。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、イソα酸を含有しながら、まろやかな酸味を有する飲料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、イソα酸、80〜180質量ppmのカルシウム、及び0〜50質量ppmのマグネシウムを含有する、飲料を提供する。本発明の飲料は、カルシウムの含有量が80〜180質量ppmであり、マグネシウムの含有量が0〜50質量ppmであることにより、まろやかな酸味を有している。
【0007】
上記飲料において、イソα酸の含有量は3質量ppm以上であってもよい。これにより、飲料にまろやかな酸味を付与する効果がより発揮される。
【0008】
上記飲料は、酸味物質を更に含んでいてもよい。これにより、飲料に一層まろやかな酸味を付与することができる。
【0009】
上記飲料において、酸味物質の含有量はクエン酸換算量として60〜720質量ppmであってもよい。これにより、飲料により一層まろやかな酸味を付与することができる。
【0010】
上記飲料は、ノンアルコールビールテイスト飲料であってもよい。
【0011】
本発明はまた、イソα酸を添加する工程、カルシウムの含有量を80〜180質量ppmに調整する工程、及びマグネシウムの含有量を0〜50質量ppmに調整する工程を含む、飲料の製造方法を提供する。本発明の飲料の製造方法は、上記工程を含むことにより、飲料にまろやかな酸味を付与することができる。
【0012】
本発明はまた、カルシウムの含有量を80〜180質量ppmに調整し、マグネシウムの含有量を0〜50質量ppmに調整することを含む、イソα酸を含有する飲料にまろやかな酸味を付与する方法を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、まろやかな酸味を有する飲料、及びそれらの製造方法を提供することができる。また、本発明によれば、飲料にまろやかな酸味を付与する方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0015】
本実施形態に係る飲料は、イソα酸を含有し、カルシウムの含有量が80〜180質量ppmであり、マグネシウムの含有量が50質量ppm以下である。
【0016】
本明細書においてカルシウムとは、カルシウムイオン(Ca
2+)と同義であり、マグネシウムとは、マグネシウムイオン(Mg
2+)と同義である。
【0017】
本明細書において質量ppmとは、10
−4質量%を意味する。
【0018】
本実施形態に係る飲料において、カルシウムの含有量は、一層まろやかな酸味を付与できる観点から、例えば、90質量ppm以上であることが好ましく、100質量ppm以上であることがより好ましく、105質量ppm以上であることが更に好ましい。また、160質量ppm以下であることが好ましく、145質量ppm以下であることがより好ましく、135質量ppm以下であることが更に好ましい。
【0019】
本実施形態に係る飲料において、マグネシウムの含有量は、一層まろやかな酸味を付与できる観点から、例えば、30質量ppm以下であることが好ましく、10質量ppm以下であることがより好ましく、実質的にマグネシウムを含まないことが更に好ましく、マグネシウムを含まないこと(0質量ppm)が特に好ましい。
【0020】
カルシウム及びマグネシウムの含有量は、例えば、改訂BCOJビール分析法(公益財団法人日本醸造協会発行、ビール酒造組合国際技術委員会〔分析委員会〕編集、2013年増補改訂)の「8.12 無機物」に記載されている方法によって測定することができる。
【0021】
イソα酸は、ホップに含まれる苦味のもととなるα酸が異性化したものである。飲料がイソα酸を含有することで、ビールらしい苦味が付与される。イソα酸の含有量は通常3質量ppm以上であってよく、10質量ppm以上であることが好ましい。一方、イソα酸の含有量の上限は、一層まろやかな酸味を付与できる観点から、例えば、50質量ppm以下であることが好ましく、30質量ppm以下であることがより好ましい。
【0022】
イソα酸の含有量は、例えば、改訂BCOJビール分析法(公益財団法人日本醸造協会発行、ビール酒造組合国際技術委員会〔分析委員会〕編集、2013年増補改訂)の「8.25 イソα酸、α酸−HPLC法」に記載されている方法によって測定することができる。
【0023】
本実施形態に係る飲料は、酸味物質を含有してもよい。本明細書において、酸味物質とは、食品に酸味を付与し、又は食品の酸味を増強する物質をいう。酸味物質としては、例えば、クエン酸、酒石酸(DL−酒石酸、L−酒石酸)、乳酸、リン酸、リンゴ酸(DL−リンゴ酸)、アジピン酸、グルコン酸、グルコノデルタラクトン、コハク酸、酢酸(氷酢酸)、フマル酸、及びこれらの塩(ナトリウム塩、カリウム塩等)が挙げられる。中でも、一層まろやかな酸味を付与できる観点から、クエン酸、酒石酸、乳酸、リン酸、リンゴ酸、及びこれらの塩(ナトリウム塩、カリウム塩等)が好ましく、クエン酸、乳酸がより好ましい。酸味物質は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0024】
本実施形態に係る飲料において、酸味物質の含有量は、一層まろやかな酸味を付与できる観点から、クエン酸換算量として360質量ppm以上であることが好ましく、480質量ppm以上であることがより好ましい。また、720質量ppm以下であることが好ましく、600質量ppm以下であることがより好ましい。なお、酸味物質を2種以上含有する場合は、各酸味物質の合計含有量を意味する。本明細書においてクエン酸換算量とは、クエン酸の酸味度を基準として各酸味物質の酸味度から換算される量をいう。具体的には、酒石酸100質量ppmに相当するクエン酸換算量は130質量ppmであり、乳酸100質量ppmに相当するクエン酸換算量は120質量ppmであり、リン酸100質量ppmに相当するクエン酸換算量は200質量ppmであり、リンゴ酸100質量ppmに相当するクエン酸換算量は125質量ppmである。
【0025】
換算前の酸味物質の含有量は、改訂BCOJビール分析法(公益財団法人日本醸造協会発行、ビール酒造組合国際技術委員会〔分析委員会〕編集、2013年増補改訂)の「8.24.2 キャピラリー電気泳動法」に記載されている方法によって測定することができる。
【0026】
本実施形態に係る飲料は、本発明による効果を阻害しない限り、穀物由来成分、食物繊維、甘味料、着色料、香料、ミネラル(ただし、カルシウム及びマグネシウムを除く)等の添加剤を含んでもよい。
【0027】
穀物由来成分としては、例えば、麦類(大麦、小麦、麦芽等)、豆類(大豆等)、米類、イモ類(ジャガイモ、サツマイモ等)、トウモロコシ類、及びこれらの抽出物が挙げられる。食物繊維としては、例えば、難消化性デキストリン、ポリデキストロースが挙げられる。甘味料としては、例えば、果糖ぶどう糖液糖、グルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトース、ラクトース、スクロース、マルトース、グリコーゲン、デンプン、アセスルファムK、スクラロース、アスパルテームが挙げられる。着色料としては、例えば、カラメル色素、クチナシ色素、果汁色素、野菜色素、合成色素が挙げられる。香料としては、例えば、ビールフレーバーが挙げられる。ミネラルとしては、例えば、ナトリウム、カリウムが挙げられる。
【0028】
本実施形態に係る飲料は、ノンアルコールビールテイスト飲料であってもよい。本明細書においてノンアルコールビールテイスト飲料とは、実質的にアルコールを含まず、ビールのような味及び香りを呈するものであって、飲用の際にビールを飲用したような感覚を飲用者に与える飲料をいう。ノンアルコールビールテイスト飲料のアルコール濃度は、1体積%未満であり、例えば0.5体積%以下、0.1体積%以下、0.005体積%未満であってよく、アルコールを全く含まないものとしてもよい。なお、本明細書においてアルコールとは、特に言及しない限りエタノールを意味する。
【0029】
ノンアルコールビールテイスト飲料は、発泡性であってもよく、非発泡性であってもよい。非発泡性とは、20℃におけるガス圧が0.049MPa(0.5kg/cm
2)未満であることをいい、発泡性とは、20℃におけるガス圧が0.049MPa(0.5kg/cm
2)以上であることをいう。発泡性とする場合、ガス圧の上限は0.294MPa(3.0kg/cm
2)程度としてもよい。
【0030】
本実施形態に係る飲料の製造方法は、イソα酸を添加する工程、カルシウムの含有量を80〜180質量ppmに調整する工程、及びマグネシウムの含有量を0〜50質量ppmに調整する工程を含む。本実施形態に係る飲料の製造方法は、上記工程を含むことにより、飲料にまろやかな酸味を付与することができる。
【0031】
イソα酸を添加する工程としては、例えば、市販のイソα酸を添加する工程、ホップを添加し、加熱等によりα酸を異性化させて得られるイソα酸を用いる工程が挙げられる。ホップとしては、乾燥ホップ、ホップペレット、ホップエキス(イソ化ホップ製品を含む)等を使用することができる。
【0032】
カルシウムの含有量を80〜180質量ppmに調整する工程としては、例えば、80〜180質量ppmとなるようにカルシウム源を添加する工程が挙げられる。カルシウム源としては、例えば、塩化カルシウム、硫酸カルシウムが挙げられる。
【0033】
マグネシウムの含有量を0〜50質量ppmに調整する工程としては、例えば、0〜50質量ppmとなるように必要に応じてマグネシウム源を添加する工程が挙げられる。マグネシウム源としては、例えば、硫酸マグネシウムが挙げられる。
【0034】
本実施形態に係る飲料は、具体的には例えば、水等の原料液に、イソα酸、カルシウム源、及び必要に応じてマグネシウム源、酸味物質、他の添加剤を、それぞれ所定の含有量となるように調合タンクなどに投入して撹拌し、溶解させて製造することができる。得られた飲料は、必要に応じて、炭酸ガスの添加、濾過、殺菌等を行ってもよい。
【0035】
酸味物質は、酸味料として市販されている酸味物質を添加してもよく、穀物由来成分を含有する水等の原料液(例えば、麦汁)に含まれる酸味物質を用いてもよい。
【0036】
本実施形態に係る飲料は、容器詰めされて提供されてもよい。容器としては、アルコール飲料に用いられる公知のものを用いることができ、例えば、缶、ビン、ペットボトル等のプラスチック容器、紙容器、パウチ容器等が挙げられる。
【0037】
本実施形態に係る飲料は、まろやかな酸味を有しているという効果を奏する。したがって、本発明の一実施形態として、カルシウムの含有量を80〜180質量ppmに調整し、マグネシウムの含有量を0〜50質量ppmに調整することを含む、イソα酸を含有する飲料にまろやかな酸味を付与する方法が提供される。
【実施例】
【0038】
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0039】
〔試験例1:ノンアルコールビールテイスト飲料中におけるイソα酸の効果〕
炭酸水に、酸味物質(乳酸として404質量ppm(クエン酸換算量として485質量ppm))を添加し、更に食物繊維、糖類、カラメル色素及び香料を一定量添加した。得られた飲料、及び当該飲料にホップエキスをイソα酸として表1に示す含有量となるように添加して調製した各飲料について官能評価を行った。なお、表中の各成分の含有量の単位は質量ppmである。
官能評価は、訓練された6名のパネルにより、雑味、酸味の強さ、及びまろやかな酸味の各項目について、5段階の評価(5:非常に強い、4:強い、3:普通、2:弱い、1:非常に弱い)で行い、その平均値を評価スコアとした。結果を表1に示す。
【0040】
【表1】
【0041】
イソα酸の含有量が増加するにしたがってまろやかな酸味が弱くなり、イソα酸を含有するノンアルコールビールテイスト飲料は、まろやかさに欠けた酸味となるという課題が明らかとなった。
【0042】
〔試験例2:ノンアルコールビールテイスト飲料中におけるカルシウムの効果〕
炭酸水に、酸味物質(乳酸として404質量ppm(クエン酸換算量として485質量ppm))及びホップエキス(イソα酸として11質量ppm)を添加し、更に食物繊維、糖類、カラメル色素及び香料を一定量添加した。得られた飲料、及び当該飲料に塩化カルシウムをカルシウムとして表2に示す含有量となるように添加して調製した各飲料について、パネルの人数が7名であること以外は試験例1と同様の方法で官能評価を行った。結果を表2に示す。なお、表中の各成分の含有量の単位は質量ppmである。
【0043】
【表2】
【0044】
カルシウムの含有量が81.6〜163.3質量ppmの範囲内にある2−4〜2−7の飲料では、まろやかな酸味を有していた。一方、カルシウムの含有量が0〜27.2質量ppmの範囲内にある2−1及び2−2の飲料ではまろやかな酸味が弱く、カルシウムの含有量が190.5質量ppmである2−8の飲料では雑味が強くなった。
【0045】
〔試験例3:ノンアルコールビールテイスト飲料中におけるマグネシウムの効果〕
炭酸水に、酸味物質(乳酸として404質量ppm(クエン酸換算量として485質量ppm))、ホップエキス(イソα酸として質量11ppm)及び塩化カルシウム(カルシウムとして108.8質量ppm)を添加し、更に食物繊維、糖類、カラメル色素及び香料を一定量添加した。得られた飲料、及び当該飲料に硫酸マグネシウムをマグネシウムとして表3に示す含有量となるように添加して調製した各飲料について、パネルの人数が7名であること以外は試験例1と同様の方法で官能評価を行った。結果を表3に示す。なお、表中の各成分の含有量の単位は質量ppmである。
【0046】
【表3】
【0047】
マグネシウムの含有量が増加するにしたがって、雑味が強くなる一方、まろやかな酸味が弱くなった。
【0048】
〔試験例4:ノンアルコールビールテイスト飲料中における酸味物質の効果〕
炭酸水に、ホップエキス(イソα酸として11質量ppm)及び塩化カルシウム(カルシウムとして108.8質量ppm)を添加し、更に食物繊維、糖類、カラメル色素及び香料を一定量添加した。得られた飲料に酸味物質として乳酸を表4に示す含有量となるように添加して調製した各飲料について、パネルの人数が7名であること以外は試験例1と同様の方法で官能評価を行った。結果を表4に示す。なお、表中の各成分の含有量の単位は質量ppmである。
【0049】
【表4】
【0050】
いずれの飲料もまろやかな酸味を有しており、特に酸味物質の含有量が378〜697質量ppmの範囲内にある4−2〜4−5の飲料では、一層まろやかな酸味を有していた。