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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-217064(P2017-217064A)
(43)【公開日】2017年12月14日
(54)【発明の名称】昇降棚
(51)【国際特許分類】
   A47B 51/00 20060101AFI20171117BHJP
【FI】
   A47B51/00 501C
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-111595(P2016-111595)
(22)【出願日】2016年6月3日
(71)【出願人】
【識別番号】390013321
【氏名又は名称】株式会社ダイドー
(74)【代理人】
【識別番号】100080746
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 武嗣
(72)【発明者】
【氏名】竹島 拓史
(57)【要約】
【課題】棚部材の降下量を大きくでき、収納物の出し入れを容易としながらも、棚収容室をコンパクトに形成可能な昇降棚を提供する。
【解決手段】固定部6に固着され前後水平状に設けられた左右一対のレール5,5と、レール5に沿って前後往復移動自在なスライド部材3と、収納物を載置するための棚部材1に先端側が枢着されると共に基端側がスライド部材3に枢着された平行リンク部材2と、平行リンク部材2を構成する第1リンク部材21及び第2リンク部材22の一方においてスライド部材3との枢着点P4を超えて延設された延伸部22cに一端部71aが枢着された第1連結リンク部材71と、第1連結リンク部材71の他端部71bに枢結されると共に固定部6に枢支される第2連結リンク部材72と、スライド部材3と第1連結リンク部材71の中間部71dとを連結する接続リンク部材7と、を備え、平行リンク部材2の上下揺動に伴ってスライド部材3を前後往復移動させて棚部材1が上下揺動しつつ前後水平移動するように構成した。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定部(6)に固着され前後水平状に設けられた左右一対のレール(5)(5)と、該レール(5)に沿って前後往復移動自在なスライド部材(3)と、収納物を載置するための棚部材(1)に先端側が枢着されると共に基端側が上記スライド部材(3)に枢着された平行リンク部材(2)と、該平行リンク部材(2)を構成する第1リンク部材(21)及び第2リンク部材(22)の一方において上記スライド部材(3)との枢着点(P4)を超えて延設された延伸部(22c)に一端部(71a)が枢着された第1連結リンク部材(71)と、該第1連結リンク部材(71)の他端部(71b)に枢結されると共に上記固定部(6)に枢支される第2連結リンク部材(72)と、上記スライド部材(3)と上記第1連結リンク部材(71)の中間部(71d)とを連結する接続リンク部材(7)と、を備え、
上記平行リンク部材(2)の上下揺動に伴って上記スライド部材(3)を前後往復移動させて上記棚部材(1)が上下揺動しつつ前後水平移動するように構成したことを特徴とする昇降棚。
【請求項2】
上記平行リンク部材(2)の上下揺動途中状態において上記平行リンク部材(2)を上方揺動方向へ弾発付勢するバネ部材(80)を備えた請求項1記載の昇降棚。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、昇降棚に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、図9に示すように、収納物を載置するための棚部材91と、棚部材91を収容するための棚収容室90を有する固定筐体96と、を備え、固定筐体96の側壁部に平行リンク部材92の先端側を枢着すると共に、棚部材91に平行リンク部材92の基端側を枢着した昇降棚が公知である(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−286131号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の昇降棚は、図9に二点鎖線で示すように棚収容室90に収容されている収納状態の棚部材91を引き出すと、棚部材91が収納位置から前方に膨出する円弧状の軌跡を描きつつ、使用者側へ引き出されて、実線で示すように、降下完了状態となる。
この降下完了状態は、平行リンク部材92が棚収容室90の下壁部90dと干渉するのを防止するため、平行リンク部材92が水平状姿勢となる位置で揺動が停止するように構成している。従って、所定収納位置から降下完了位置までの棚降下量Hが小さく、降下完了位置の棚部材91に対して収納物の出し入れが困難といった問題があった。
また、棚降下量Hを大きくするために、底壁部90dを下方へ移設して、平行リンク部材92を、水平を超えて下方へ揺動可能にすると、棚収納状態において、移設後の底壁部90d´と所定収納位置の棚部材91との隙間寸法hが大きくなって、棚収容室(棚収容空間)90が無駄に大きくなるといった問題が発生する。また、水平を超えて下方へ大きく揺動させると降下完了状態で棚部材91の後壁部91eが固定筐体96の前部に干渉するといった問題も発生する。
【0005】
そこで、本発明は、棚部材の降下量を大きくでき、収納物の出し入れを容易としながらも、棚収容空間をコンパクトに形成可能な昇降棚の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の昇降棚は、固定部に固着され前後水平状に設けられた左右一対のレールと、該レールに沿って前後往復移動自在なスライド部材と、収納物を載置するための棚部材に先端側が枢着されると共に基端側が上記スライド部材に枢着された平行リンク部材と、該平行リンク部材を構成する第1リンク部材及び第2リンク部材の一方において上記スライド部材との枢着点を超えて延設された延伸部に一端部が枢着された第1連結リンク部材と、該第1連結リンク部材の他端部に枢結されると共に上記固定部に枢支される第2連結リンク部材と、上記スライド部材と上記第1連結リンク部材の中間部とを連結する接続リンク部材と、を備え、上記平行リンク部材の上下揺動に伴って上記スライド部材を前後往復移動させて上記棚部材が上下揺動しつつ前後水平移動するように構成したものである。
また、上記平行リンク部材の上下揺動途中状態において上記平行リンク部材を上方揺動方向へ弾発付勢するバネ部材を備えたものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、棚部材を収納位置から下方へ大きく引き出すことができ、降下完了位置の棚部材に対して収納物の出し入れを容易に行うことができる。収納物が倒れにくく安全に使用できると共に棚収容空間の無駄を無くしてコンパクト化が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施の一形態を示し、棚収納状態の要部断面側面図である。
図2】棚昇降途中状態の要部断面側面図である。
図3】棚昇降途中状態の要部断面側面図である。
図4】棚降下完了状態の要部断面側面図である。
図5】棚降下完了状態の作用説明図である。
図6】作用を説明するための簡略構成図である。
図7】作用する力を説明するためのベクトル図であって、(a)は第1連結枢着点で第1連結リンク部材に作用する力のベクトル図であり、(b)は第2基端枢着点で第2リンク部材に作用する力のベクトル図であり、(c)は第2基端枢着点でスライド部材に作用する力のベクトル図であり、(d)は第1接続枢着点でスライド部材に作用するベクトル図である。
図8】バネ部材の一例を示す側面図である。
図9】従来技術の問題点を説明するための断面側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図示の実施形態に基づき本発明を詳説する。
本発明に係る昇降棚は、図1乃至図4に示すように、固定部6に前後水平状に固着された左右一対のレール5,5と、レール5に沿って前後往復移動自在なスライド部材3と、収納物を載置するための棚部材1の側壁部11に先端側が枢着されると共に基端側がスライド部材3に枢着された平行リンク部材2と、を備え、棚部材1が、所定収納位置に収容された棚収納状態と、所定収納位置から前方下方位置に引き出された棚降下完了状態(図4参照)と、に切換自在に構成している。
【0010】
図示の実施形態において固定部6は、図示省略の流し台や調理台の上方位置の壁面や柱等に固着された筐体型(固定筐体)である。
筐体型の固定部(固定筐体)6は、棚部材1が収容可能な上段の前方開口状の棚収容室61と、棚収容室61の下方位置に設けられ他の収納物を保管可能な下段の前方開口状の収納室62と、を有する上下複数段型(2段型)の前方開口状の箱形状である。また、図示省略するが、前方開口部に、扉部材を付設するも良い。
なお、本発明において、固定部6とは、図示の筐体型(固定筐体)に限らず、図示省略の流し台や調理台の上方位置の壁面や柱等の固設部そのもの、或いは、その固設部に固着された板状や棒状の固定部材(固定金具)であっても良い。また、筐体型(箱型)に限らず枠型であっても良い。言い換えると、固定部6は、棚収容空間90の左右両側に対応する位置に配設され、レール5や第2リンク部材72が取着可能な部材であれば良く形状や数は自由である。
【0011】
棚部材1は、左右一対の側壁部11,11と、左右各側壁部11,11の前下部から下方延伸状に設けた垂下部11cを左右方向に連結する棒状部材12と、該棒状部材12に垂下状に取着されると共に棒状部材12に沿って左右スライド自在な操作棒部材13と、左右の側壁部11,11の間に配設され収納物が載置される水平面状の載置部16と、を有している。
【0012】
スライド部材3は、レール5に沿って前後方向に往復直線移動自在な走行部材31と、走行部材31に起立状に固着された取付部材32と、を備えている。
スライド部材3は、棚収納状態においては、側面視で、棚収容室61内で、レール5に沿った所定の後方位置に配設され、棚降下完了状態においては、レール5に沿った所定の前方位置に配設される。
【0013】
平行リンク部材2は、第1リンク部材21と第2リンク部材22から成る。
第1リンク部材21の先端部21a及び第2リンク部材22の先端部22aは棚部材1の側壁部11の上後部に夫々左右水平状枢着軸心をもって枢着している。
第1リンク部材21の基端部21bと第2リンク部材22の基端部22bとはスライド部材3の取付部材32に夫々左右水平状枢着軸心をもって枢着している。
【0014】
側面視で、第1リンク部材21と棚部材1の枢着点(第1先端枢着点)P1と、第1リンク部材21とスライド部材3の枢着点(第1基端枢着点)P2と、第2リンク部材22と棚部材1の枢着点(第2先端枢着点)P3と、第2リンク部材22とスライド部材3の枢着点(第2基端枢着点)P4は、側面視で平行四辺形の頂点位置に配設されている。図例においては、第2基端枢着点P4は、第1基端枢着点P2よりも後方かつ上方位置に配設している。
【0015】
棚収納状態において、第1先端枢着点P1と第1基端枢着点P2を結ぶ一点鎖線で示す第1リンク要素直線J1と、第2先端枢着点P3と第2基端枢着点P4を結ぶ一点鎖線で示す第2リンク要素直線J2と、は後方上傾状である。
【0016】
さらに、第2リンク部材22において第2基端枢着点P4を超えて延設された延伸部22cに、一端部71aが左右水平状枢着軸心をもって枢着された第1連結リンク部材71を備えている。
側面視で、第1連結リンク部材71と第2リンク部材22との枢着点(第1連結枢着点)P5は、第2リンク要素直線J2の延長線上に配設している。
【0017】
そして、第1連結リンク部材71の他端部71bに一端部72aが左右水平状枢着軸心をもって枢結されると共に、固定部6(棚収容室61の奥部に設けた固定枢支部69)に他端部72bが左右水平状枢着軸心をもって枢支される第2連結リンク部材72を備えている。
第2連結リンク部材72と固定部6の枢支点(固定側枢支点)P9は、側面視で、スライド部材3よりも後方位置に配設している。
棚収納状態において、第1連結リンク部材71と第2連結リンク部材72の枢結点(第2連結枢着点)P8と、第1連結枢着点P5と、を結ぶ第1連結リンク要素直線J71は、前方下傾状(後方上傾状)姿勢に保持されている。
棚収納状態において、固定側枢支点P9と、第2連結枢着点P8と、を結ぶ第2連結リンク要素直線J72は、前方上傾状(後方下傾状)姿勢に保持されている。
【0018】
第1連結リンク部材71と第2連結リンク部材72とによって、スライド部材3と筐体型の固定部6(の固定枢支部69)を連結する連動リンク部70を構成している。
棚収納状態において第1連結リンク要素直線J71と第2連結リンク要素直線J72と、で倒立V字状のリンク要素線を描くように設けている。
棚降下完了状態において第1連結リンク要素直線J71と第2連結リンク要素直線J72とがヘの字状乃至一文字状のリンク要素線を描くように設けている。
【0019】
さらに、第1連結リンク部材71の中間部71dと、スライド部材3と、を連結する接続リンク部材7を備えている。
接続リンク部材7は、一端部(上端部)7aがスライド部材3に左右水平状枢着軸心をもって枢着し、他端部(下端部)7bが第1連結リンク部材71に左右水平状枢着軸心をもって枢着している。
【0020】
接続リンク部材7は、棚収納状態において、側面視で、スライド部材3との枢着点(第1接続枢着点)P6と、第1連結リンク部材71との枢着点(第2接続枢着点)P7と、を結ぶ接続リンク要素直線J7が、前方下傾状(後方上傾状)となるように設けている。
接続リンク部材7は、第1接続枢着点P6を揺動中心として下端部7bが下方突出円弧状の軌跡を描いて揺動するように設けている。
また、第2接続枢着点P7は、第1連結リンク要素直線J71上に配設している。
【0021】
そして、接続リンク部材7は、連動リンク部70が、第2連結枢着点P8を中心として、棚収納状態での倒立V字状姿勢と、棚降下完了状態でのへの字状乃至一文字状姿勢と、に前後開閉自在となるように、第1連結リンク部材71を規制(制御)している。
【0022】
ここで、平行リンク部材2の姿勢、接続リンク部材7の姿勢、連動リンク部70(第1・第2連結リンク部材71,72)の姿勢を、見た目(外形状)姿勢に関係無く、各リンク要素直線の姿勢で呼ぶ。
つまり、棚収納状態において平行リンク部材2は後方上傾状姿勢であり、接続リンク部材7は後方上傾状姿勢であり、連動リンク部70は、倒立V字状姿勢である。
棚降下完了姿勢において、平行リンク部材2は前方下傾状姿勢であり、接続リンク部材7は前方上傾状姿勢であり、連動リンク部70は、第1連結リンク部材71及び第2連結リンク部材72が前方上傾状となって、全体として、ヘの字状乃至一文字状姿勢(180度未満の直線状姿勢)である。
【0023】
さらに、図8に示すように、スライド部材3の取付部材32の左右外方側取付部32gに、平行リンク部材2の上下揺動途中状態において平行リンク部材2を上方揺動方向へ弾発付勢するための渦巻きバネから成るバネ部材80を設けている。
そして、図1及び図8に示すように、バネ部材80からの弾発力を(直接的に)受けると共に先端部82aが前後に揺動自在な伝達揺動部材82と、伝達揺動部材82の先端部82aに基端部81bが枢着されると共に先端部81aが平行リンク部材2の第2リンク部材22の中間部22dに枢着された伝達連結部材81と、を備えている。
バネ部材80は、図8に矢印Yで示すように、伝達揺動部材82の先端部82aが後方かつ下方へ向かうように常時弾発付勢している。
つまり、バネ部材80と伝達揺動部材82と伝達連結部材81とによって、棚部材1を上昇させるための操作力を軽減する上昇負荷軽減手段(上昇アシスト手段)8を構成している。
【0024】
なお、平行リンク部材2、スライド部材3、レール5、連動リンク部70、接続リンク部材7、上昇負荷軽減手段8、固定枢支部69は、左右一対に設けている(筐体型の固定部6の左右両側に夫々設けている)。
そして、図示省略するが左右一方のスライド部材3と左右他方のスライド部材3とを左右方向に連結する棒状のスライド連結部材を備えている。スライド連結部材によって、左右一対のスライド部材3,3が同期して走行(同速度で移動)し、左右で走行量が相違せず、スムーズな往復移動を可能としている。
また、図示省略するが、左右一方の第1リンク部材21と、左右他方の第1リンク部材21と、を左右方向に連結する棒状の平行リンク連結部材を備えている。
平行リンク部材2の動作が、左右で同期し、こじれることなくスムーズに揺動可能としている。
【0025】
次に、本発明の昇降棚の使用方法(作用)について説明する。
図1に示すように、棚収納状態においては、バネ部材80の弾発付勢力及び棚部材1の自重や収納物の荷重によって、棚部材1は棚収容室61内の所定収容位置に配設されている。また、棚部材1の後方揺動、平行リンク部材2の後方揺動、スライド部材3の後方走行の少なくとも1つを、図示省略の後方阻止ストッパ部で阻止している。従って、棚部材1は水平状姿勢に保持され、スライド部材3は所定の後方位置に配設されている。
【0026】
そして、使用者が操作棒部材13を把持して前下方へ引っ張る操作力を付与すると、図2に示すように、棚部材1が前方へ向かって起立状姿勢に揺動すると共にスライド部材3が前進する。
【0027】
ここで、図6及び図7を用いてスライド部材3の前進について説明する。
先ず、図6に示すように、第1連結リンク部材71は、第2連結枢着点P8で第2連結リンク部材72によって下後方への力F8を受けると共に、第2接続枢着点P7で接続リンク部材7によって上後方への力F7を受ける。従って、第1連結枢着点P5では、図6及び図7(a)に示すように、力F7と力F8の合力Faが後方側へ向かって発生する。
【0028】
次に、図6に示すように、第2リンク部材22には、第1連結枢着点P5で上述の後方側への合力Faの反力Fbが発生する。また、第2リンク部材22は、第2先端枢着点P3で棚部材1の操作によってかかる前下方への外力F3を受ける。従って、第2基端枢着点P4では、図6及び図7(b)に示すように、前方下方側への外力F3と、上述の前方側への反力Fbと、の合力F4が前方側へ向かって発生する。
【0029】
そして、第2リンク部材22は第2基端枢着点P4においてスライド部材3に枢着されているため、図7(c)に示すように、スライド部材3は前方側への合力F4の水平成分Eaと鉛直成分Ebを受ける。スライド部材3は、レール5に上下移動不可能に保持されているため前方への水平成分Eaが作用する。
【0030】
さらに、図6に示すように、接続リンク部材7は、第1接続枢着点P6にて力F7に対向する前下方への力F6を受ける。そして、接続リンク部材7は第1接続枢着点P6においてスライド部材3に枢着されているため、スライド部材3は、図7(d)に示すように、第1接続枢着点P6において、前下方側への力F6の水平成分Ecと鉛直成分Edを受ける。
スライド部材3は、レール5に上下移動不可能に保持されているため前方への水平成分Eaが作用する。
【0031】
従って、棚部材1に操作力が付与されると、スライド部材3には、第2基端枢着点P4に作用する水平成分Eaと、第1接続枢着点P6に作用する水平成分Ecと、の合力が、前進力(推進力)となって作用する。なお、図示省略するが、第1リンク部材21にかかる操作力の内、前方への水平成分の力がスライド部材3に前進力として作用する。
【0032】
そして、図2図3に示すように、平行リンク部材2が水平状姿勢(第1リンク要素直線J1及び第2リンク要素直線J2が水平状)になるように揺動しつつ、延伸部22cが第2基端枢着点P4廻りに上方へ揺動すると共に連動リンク部70が倒立V字状姿勢から、への字状に開いて、スライド部材3が前方へ走行(スライド)する。
【0033】
さらに、図4に示すように、平行リンク部材2が前方下傾状姿勢になるように揺動しつつ、延伸部22cが第2基端枢着点P4廻りに上方へ揺動すると共に連動リンク部70が直線状に開いて、スライド部材3が前方へ走行する。そして、棚部材1が所定降下完了位置に配設された状態で、棚部材1の降下、平行リンク部材2の下方揺動、スライド部材3の前進走行の少なくとも1つを、図示省略の降下ストッパ部で阻止することで、棚部材1は、自重によって、降下完了位置(姿勢)で保持される。
【0034】
つまり、使用者が棚部材1を前下方に引き出そうとすると、図2乃至図4に示すように、平行リンク部材2が後方上傾状姿勢から前方下傾状姿勢に揺動すると共に、平行リンク部材2の基端側がスライド部材3によって所定後方位置から所定前方位置に前方水平移動する。つまり、棚部材1は、前方へ水平移動しながら僅かに上昇した後に降下する。
【0035】
ここで、図5に二点鎖線で示す参考例は、スライド部材3を設けずに(スライド部材3が移動せずに)、かつ、参考第1リンク要素直線J1´と参考第2リンク要素直線J2´とが水平となって降下が完了しているものである。
この二点鎖線で示す参考例と比べて、実線で示す実施形態は、平行リンク部材2の揺動中心点である基端側の枢着点(第1基端枢着点P2及び第2基端枢着点P4)を、筐体型の固定部(固定筐体)6の棚収容室61の前方開口縁部に配設でき、平行リンク部材2が筐体型の固定部6(棚収容室61の下壁部65)に干渉することなく、前方下方への揺動を可能としている。
【0036】
つまり、第1リンク要素直線J1と第2リンク要素直線J2と、が水平を超えて前方下傾状姿勢に揺動可能で、棚部材1は、参考例の棚部材1´と比べて下方位置に配設される。
なお、水平面(線)Kと、第1・第2リンク要素直線J1,J2との間の下傾揺動角度θを、20度以上70度以下に設定するのが好ましい。20度未満であると、降下量が小さく、70度を超えると、筐体型の固定部6の前部との干渉を防止するため、筐体型の固定部6の前後寸法を小さくする必要があり、結果として棚部材1や棚収容室61や収納室62が小さくなって収納容量が低下する。
【0037】
そして、棚降下完了状態から、操作棒部材13を使用者が把持して棚部材1を上昇させようと操作すれば、平行リンク部材2の先端部2aが上昇揺動を開始すると共にスライド部材3が後方走行を開始する。
また、棚上昇途中状態(平行リンク部材2の上方揺動途中状態)において、バネ部材80によって、平行リンク部材2が上方揺動方向へ弾発付勢されるため、使用者が受ける収納物や棚部材1等の荷重が軽減され、棚部材1を容易に上昇させることが可能となる。
そして、図4図3図2図1と順に示すように、平行リンク部材2が上方(前方下傾状姿勢から後方上傾状姿勢)へ揺動すると共にスライド部材3が水平後方移動して、棚部材1は、所定収納位置に戻る。
なお、棚降下途中状態(平行リンク部材2の下方揺動途中状態)において、バネ部材80によって、平行リンク部材2が上方揺動方向へ弾発付勢されるため、棚部材1の急激な降下を防止して、安全に降下させることが可能となる。
【0038】
また、平行リンク部材2を、前方へ移動させて、開口縁部近傍で前方下傾状姿勢にすることができるため、平行リンク部材2の基端側(第1基端枢着点P2)を、棚収容室61の下壁部(上下仕切壁部)65に、接近させて配設でき、棚収容室(棚収容空間)61の無駄を無くして、下方空間を有効に利用できる。つまり、棚収容室61の下方位置に、別の収納物を保管可能な収納室62を、大きく(広く)設けることができる。
【0039】
なお、本発明は、設計変更可能であって、レール5と走行部材31のスライド構造は、レール5と走行部材31の間に複数の球体が介装された構造や、走行部材31に設けた車輪がレール5に沿って転動する構造、リニアガイド構造等自由である。バネ部材80は、圧縮コイルバネや引っ張りコイルバネ、ガススプリング等とするも良い。また、左右一方の第2リンク部材22と、左右他方の第2リンク部材22と、を平行リンク連結部材にて連結するも良い。第1リンク部材21に延伸部22cを設けて、第1連結リンク部材71の一端部71aを、枢着するも良い。一対の平行リンク部材2,2は、棚部材1の左右両側に夫々枢着していれば良い。
【0040】
また、本発明において、筐体型の固定部(固定筐体)6の左右両側に設ける(枢着や取着、固着)とは、左右各側壁部67,67に直接的又は取着補助部材を介して間接的に取着した場合や、前壁部や後壁部の左右側縁部寄りに直接的又は間接的に取着した場合を、含む。つまり、レール5、第2連結リンク部材72を側壁部67(固定枢支部69)に直接的又は間接的に取着した場合に限らず、レール5の前端部を前壁部に固着すると共に後端部を後壁部に固着して側壁部67近傍(寄り)に設けた場合や、後壁部又は前壁部の左右側縁部から固定部6の内方へ突設した固定部69(取着補助部材)等に取着して設けた場合を含む。
なお、本発明に於て、平行リンク(平行リンク部材2)とは、側面視で各枢着点P1,P2,P3,P4が非平行四辺形の矩形の頂点位置に配設される変形平行リンク(変形平行リンク部材)の場合を含む。
【0041】
以上のように、本発明の昇降棚は、固定部6に固着され前後水平状に設けられた左右一対のレール5,5と、該レール5に沿って前後往復移動自在なスライド部材3と、収納物を載置するための棚部材1に先端側が枢着されると共に基端側が上記スライド部材3に枢着された平行リンク部材2と、該平行リンク部材2を構成する第1リンク部材21及び第2リンク部材22の一方においてスライド部材3との枢着点P4を超えて延設された延伸部22cに一端部71aが枢着された第1連結リンク部材71と、第1連結リンク部材71の他端部71bに枢結されると共に固定部6に枢支される第2連結リンク部材72と、スライド部材3と第1連結リンク部材71の中間部71dとを連結する接続リンク部材7と、を備え、平行リンク部材2の上下揺動に伴ってスライド部材3を前後往復移動させて棚部材1が上下揺動しつつ前後水平移動するように構成したので、棚部材1を収納位置から下方へ大きく引き出すことができ、降下完了位置の棚部材1に対して収納物の出し入れを容易に行うことができる。収納物が倒れにくく安全に使用できると共に棚収容室61の無駄を無くしてコンパクト化が図れる。使用者の操作力をリンク機構を利用して棚部材1を水平方向に往復させる力に変換できる。
【0042】
また、平行リンク部材2の上下揺動途中状態において平行リンク部材2を上方揺動方向へ弾発付勢するバネ部材80を備えたので、収納物や棚部材1の荷重が軽減され、棚部材1を容易に上昇させることが可能となる。棚部材1の急激な降下も防止でき安全に降下させることができる。
【符号の説明】
【0043】
1 棚部材
2 平行リンク部材
3 スライド部材
5 レール部材
6 固定部
7 接続リンク部材
21 第1リンク部材
22 第2リンク部材
22c 延伸部
71 第1連結リンク部材
71a 一端部
71b 他端部
71d 中間部
72 第2連結リンク部材
80 バネ部材
P4 枢着点
図1
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