【課題】車体への取付けに必要な取付具付き芯パッドを埋設して表層パッドの一体発泡成形を行って、軽量化を可能にして異音発生をなくし、且つ該取付具のバリ除去作業を必要としない車両用シートパッド及びその製造方法を提供する。
【解決手段】少なくとも乗員が当接する側の受け面部分41を軟質ポリウレタン発泡成形体で形成した車両用シートパッドにおいて、第一取付具3Aをインサート品とするビーズ発泡成形体にして、その側壁21に設けた外鍔部221の肉厚面221eから、第一取付具3Aのワイヤ先端部31が外方へ突出する状態で発泡成形されている第一取付具3A付き芯パッド2と、第一取付具3A付き芯パッド2を埋設一体化している軟質ポリウレタン発泡成形体にして、その意匠面4a側に受け面部分41を形成し、且つワイヤ先端部31及びワイヤ先端部31寄りの外鍔部221の部位を露出状態にして、意匠面4a側と反対の内面4b側が芯パッド2の表面2aに接合する表層パッド4と、を具備する。
前記外鍔部が前記芯パッドの側壁を周回して囲うフランジに形成され、さらに前記芯パッドは、第二取付具をインサート品にして、そのワイヤ突端部が芯パッド裏面から外方へ突出する状態で発泡成形されている請求項1記載の車両用シートパッド。
前記芯パッドの表面側から裏面側へ貫通する透孔が設けられ、さらに該透孔内を埋める前記表層パッドの軟質ポリウレタン発泡成形部が設けられた請求項1乃至3のいずれか1項に記載の車両用シートパッド。
前記外鍔部が前記芯パッドの側壁を周回して囲うフランジに形成され、さらに第二取付具がインサート品になって、芯パッド裏面から該第二取付具に係るワイヤ突端部が外方へ突出する状態で、前記芯パッドが発泡成形された第一取付具及び第二取付具付き芯パッドを、上型にセットする傍ら、前記フランジは裏面側が全周に亘って上型型面に当接するようにセットし、
次いで、下型キャビティ面上に軟質ポリウレタン発泡成形体用原料を注入すると共に、前記フランジの表面側が全周に亘って下型型面に当接するようにして、前記フランジが下型型面と上型型面との挟着を伴って型閉じする請求項6記載の車両用シートパッドの製造方法。
前記芯パッドの表面側から裏面側へ貫通する透孔が設けられ、前記型閉じ後、意匠面側に前記受け面部分を形成すると共に、該透孔内を埋める軟質ポリウレタン発泡成形部を形成して、前記意匠面側と反対の内面側が前記芯パッドの表面に接合一体化した表層パッドを発泡成形する請求項6乃至8のいずれか1項に記載の車両用シートパッドの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係る車両用シートパッド(以下、単に「シートパッド」ともいう。)及びその製造方法について詳述する。
図1〜
図10は本発明のシートパッド及びその製造方法の一形態で、
図1はシートパッドの全体斜視図、
図2は裏面側から見た第一取付具付き芯パッドの斜視図、
図3は型開状態の発泡成形型に芯パッドをセットし、発泡原料を注入する断面図、
図4は型閉じした断面図、
図5は第一取付具付き芯パッドと一体の表層パッドを発泡成形した断面図、
図6は他態様の発泡成形型に芯パッドをセットした部分断面図、
図7は他態様の第一取付具付き芯パッドと一体の表層パッドを発泡成形した部分断面図、
図8は他態様の第一取付具付き芯パッドを裏面側から見た斜視図、
図9は
図8の第一取付具付き芯パッドを上型にセットした断面図、
図10は
図9の後、発泡原料を注入し第一取付具付き芯パッドと一体の表層パッドを発泡成形した断面図である。
各図は図面を判り易くするため発明要部のフランジ22、外鍔部221を強調図示し、また本発明と直接関係しない部分を省略する。
図7の芯パッド2は断面表示のハッチングを省く。
図1のV-V線矢視図に対応する
図3〜
図5、及び
図9,
図10には、二つの第二取付具3Bや表皮取付け用の溝28は現れないが、それらを含めた周囲の断面形状を明らかにするため便宜的に各断面図に取り入れている。
【0010】
(1)車両用シートパッドの製造方法
車両用シートパッドの製造方法は、少なくとも乗員が当接する側の受け面部分41を軟質ポリウレタン発泡成形体で構成し、該軟質ポリウレタン発泡成形体の表層パッド4の発泡成形で、その内面4b側を軽量の芯パッド2に接合一体化させる製法である(
図5)。シートパッドPは、車両用座席シートの座部や背もたれに使用される。ここでは、
図1に示す車両後部座席の座部用クッションパッドPに適用する。
図1のクッションパッドPは紙面の右斜め上方が車両前方、左斜め下方が車両後方、左斜め上方が車両上方である。表層パッド4の発泡成形に先立ち、第一取付具3A付き芯パッド2,発泡成形型7が用意される。
【0011】
第一取付具3A付き芯パッド2は、本製法に先立ち、予め第一取付具3Aのワイヤ基部32を埋設して芯パッド2が一体発泡成形された第一取付具3A付き芯部材である(
図2)。芯パッド2は、見掛け密度が前記軟質ポリウレタン発泡成形体よりも小のビーズ発泡成形体であって、その側壁21に設けた外鍔部221の肉厚面221eから、インサート品たる第一取付具3Aのワイヤ先端部31が外方へ突出する状態にして発泡成形されている。詳しくは、車両へのクッションパッドPの設置状況下、ワイヤ先端部31が車両後方へ向けやや斜め上方に突出するように配される。
ワイヤ加工品の第一取付具3Aは、ワイヤ先端部31が図示のごとくU字状に折曲形成される一方、根元にあたるワイヤ基部32が芯パッド2内に在る図示しないインサート部材のループ部に固着されている。第一取付具3Aは車体へクッションパッドに表皮が被着されたシートクッションを取付け固定するのに用いられる。
【0012】
芯パッド2は、塊状のビーズ発泡成形体である。表層パッド4を形成する軟質ポリウレタン発泡成形体の見掛け密度よりも見掛け密度が小のビーズ発泡成形体で構成し、クッションパッドPの裏面側に配される芯部材である。芯パッド2と表層パッド4との密度比較は、発泡前の素材の密度でなく、発泡後の見掛け密度で比較する。
芯パッド2のビーズ発泡成形体は、見掛け密度が表層パッド4を形成する軟質ポリウレタン発泡成形体の見掛け密度よりも小さければ充足するが、非通気性の発泡ポリプロピレン、発泡スチロール、又はこれらの一方を少なくとも含む成形体であるのがより好ましい。例えばビーズ法発泡スチロールの発泡スチロールの成形体は、気泡が内部に密閉されたビーズ発泡成形体となっており、且つ体積の大部分が気体で軽量にして、その見掛け密度を軟質ポリウレタン発泡成形体の見掛け密度よりも小さくできる。ビーズ法発泡ポリプロピレンの発泡ポリプロピレンも発泡スチロールに酷似し、気泡が内部に密閉されたビーズ発泡成形体にして芯パッド2の材料として機能的に優れ、且つその見掛け密度を小さくできる。本実施形態の芯パッド2も発泡ポリプロピレンを用いる。発泡ポリプロピレンは、発泡スチロールよりも弾力があり、表層パッド4の発泡成形で、外鍔部221がガスケットとしてシール機能発揮でき、またクッション性が求められるシートパッドP用芯パッド2の構成材としてより好ましくなっている。
【0013】
本実施形態は、外鍔部221が芯パッド側壁21の下縁211沿いを周回して囲うフランジ22に形成され、補助席部4Cの車両後方側壁21に位置する該フランジ22の肉厚面221eから車両後方に向けて、第一取付具3Aのワイヤ先端部31が突出する(
図1,
図2)。さらに、第二取付具3Bがインサート品になって、芯パッド2の裏面から該第二取付具3Bのワイヤ突端部36が下向き外方へ突出する状態で、芯パッド2が発泡成形される第一取付具3A及び第二取付具3B付き芯パッド2(以下、単に「第一取付具3A付き芯パッド2」ともいう。)になっている。第二取付具3Bも車体へのクッションパッドPを取付け固定するのに用いられる。芯パッド裏面2bの車両前方域で、車幅方向の両外方寄りに第二取付具3Bを夫々一本設けるが、複数本設けてもよい。第二取付具3Bは、第一取付具3Aと同様、ワイヤ突端部36が図示のごとくU字状に折曲形成される一方、その根元にあたるワイヤ基部37が芯パッド2内に在る図示しないループ部に固着される。
ここで、芯パッド2の「表面」側,「裏面」側は、車両に取付け姿態にある
図1のクッションパッドPでいえば、文字通り紙面の「表面」側,「裏面」側となる。表層パッド4の「意匠面」側,「内面」側も、車両に取付け姿態にある
図1のクッションパッドPでいえば、紙面の「表面」側,紙面の「裏面」側となり、同じ意である。文言を使い分けて部位を特定し易くしている。
【0014】
図中、符号25は芯パッド2の座部用隆起部、符号251はその前端部分、符号26はバックレストとの合せ部用隆起部、符号261はその後端部分を示す。符号28は芯パッド裏面2bの外周縁に沿って点在形成される表皮取付け用の溝、符号29は後加工カット用の切欠溝で、フランジ22の幅方向に横切り、またフランジ22の内周縁沿いに該切欠溝が走る。切欠溝29を設けることによって、クッションパッドPに表皮を被せてシートクッションにする際、邪魔になるフランジ22の部分は簡単に取除くことができる。
芯パッド2は、
図7の他態様図に示すごとく芯パッド2の表面2a側から裏面2b側へ貫通する透孔23が設けられると、表層パッド4と芯パッド2の接合一体化が強力になり、より好ましくなる(詳細後述)。ここでは、
図7のように芯パッド2の外周縁沿いやフランジ22に、表面22a側から裏面22b側へ貫通する透孔23を設け、さらにその芯パッド2の裏面側部分の孔径を拡径して大きな孔径の窪み24を設けている。
【0015】
発泡成形型7は、
図3ごとくの分割型で、下型8と上型9は開閉可能に接続されている。
図4のごとく型閉じすると、全体が椀状にへこんで受け面部分41の意匠面4aを形成する下型キャビティ面81と、第二取付具3B用の凹所93の箇所を除き、全体が平坦な芯パッド2の裏面2bに合わせた上型キャビティ面91とで、クッションパッドPのキャビティCをつくる。そして、型閉じに伴い、フランジ22の両面全周に亘って下型型面89と上型型面99とでフランジ22を挟着する発泡成形型7としている。符号931は上型キャビティ面91に設けられた芯パッド2との隙間余裕代で、芯パッド裏面2bに多少の製作誤差があっても、第一取付具3A付き芯パッド2を上型キャビティ面91へセットすると、フランジ22の全周に亘ってその裏面22bが上型型面99に確実に当接するようにしている。
図7(ロ)の符号86は下型キャビティ面81に設けた余剰ガス放出用の細長溝を示す。
尚、
図3〜
図7の発泡成形型7は、車両設置状態に在る
図1のクッションパッドPと上下が逆の姿態で、該クッションパッドPたる第一取付具3A付き芯パッド2と一体の表層パッド4を造る型構造になっている。
【0016】
前記発泡成形型7、第一取付具3A付き芯パッド2を用いて、シートパッドPが例えば次のように製造される。
まず、発泡成形型7を
図3の型開状態とする。この型開状態下、第一取付具3A付き芯パッド2を上型9にセットする傍ら、フランジ22は裏面22b側が全周に亘って上型型面99に当接するようにセットする(
図3)。
ここで、上型型面99に、
図6のような芯パッド2に係るフランジ22の大きさに合わせた段差面99aが設けられると、上型9への第一取付具3A付き芯パッド2のセットを円滑に進めることができる。上型9への芯パッド2のセットで、凹所93に第二取付具3Bのワイヤ突端部36が収容される。
【0017】
上型9への第一取付具3A付き芯パッド2のセット後、椀状にへこむ下型キャビティ面81上に、注入ノズルNL等を使用して表層パッド4成形用発泡原料g(軟質ポリウレタン発泡成形体用原料)を所定量注入する。
続いて、上型9を作動させ、フランジ22の表面22a側が全周に亘って下型型面89に当接するようにして、且つ下型型面89と上型型面99とでフランジ22を挟着状態に保って型閉じする(
図4)。上型9と下型8との型閉じで、第一取付具3A付き芯パッド2がインサートセットされたクッションパッドP用キャビティCができる。尚、本実施形態は発泡原料gを注入後に型閉じしたが、型閉じした後、発泡原料gを注入することもできる。
【0018】
型閉じ後、主工程の発泡成形に移る。意匠面4a側に着座乗員の受け面部分41(ここでは「座面部分」)を有する、軟質ポリウレタン発泡成形体からなる表層パッド4を発泡成形する。意匠面4a側に受け面部分41を形成すると共に、下型型面89と上型型面99とでフランジ22を挟着シールし、少なくともワイヤ先端部31寄りの外鍔部221の部位、さらにワイヤ先端部31をキャビティC外へ出したまま、内面4b側が芯パッド2の表面2aに接合一体化した表層パッド4を発泡成形する。発泡成形過程で、発泡原料gが挟着シールされたフランジ22を越えてワイヤ先端部31に辿り着くことはない。
図4の型閉じ状態を所定時間維持し、表層パッド4の意匠面4aと反対側にあたる内面4b側が芯パッド2の表面2aに接合した第一取付具3A及び第二取付具3B付き芯パッド2と一体の表層パッド4を造る。
尚、表層パッド4の発泡成形で発生する余剰ガス(型内に在った残留ガスも含む。)は、前記細長溝86を通って型外へ抜け出る(
図7)。
【0019】
ここで、芯パッド2に
図7のような透孔23や窪み24を設けていると、型閉じ後の発泡成形で、透孔23や窪み24内を埋める軟質ポリウレタン発泡成形部43,44を形成して、内面4b側が芯パッド2の表面2aに接合一体化した表層パッド4を発泡成形できる。表層パッド4の発泡成形過程で、発泡原料gは、乗員が当接する側の受け面部分41を有する表層パッド4本体用キャビティCを埋めるように上昇する過程で、透孔23、窪み24内へと進出する。そうして、意匠面4a側に受け面部分41を形成すると共に、透孔23及び窪み24内を埋めて軟質ポリウレタン発泡成形部43,44を形成し(
図7)、内面4b側が芯パッド2の表面2aに接合一体化した軟質ポリウレタン発泡成形体の表層パッド4を発泡成形する。
【0020】
表層パッド4の発泡成形を終え、脱型すれば、第一取付具3A及び第二取付具3B付き芯パッド2と表層パッド4が一体となったクッションパッドPが得られる(
図1)。第一取付具3A及び第二取付具3B付き芯パッド2を埋設一体化して発泡成形された表層パッド4にして、第一取付具3Aや第二取付具3Bにバリが現れず、バリ除去作業を必要としない所望のクッションパッドPが得られる。
符号4Aはメイン部、符号4Bはサイド部、符号4Dは斜面、符号4Eはバックレストとの合わせ部、符号49は吊溝で、符号491は縦溝、符号492は横溝を示す。
【0021】
図8〜
図10は、
図1〜
図7に代わる他態様のクッションパッドPの製造方法を示す。
図8〜
図10は、
図1〜
図7のように芯パッド2の側壁21を周回して囲うフランジ22でなく、該フランジ22の一部分となる外鍔部221を形成するにとどめる。
図8のごとく第一取付具3Aの箇所を含むその付近の芯パッド部分にだけ外鍔部221を形成した第一取付具3A付き芯パッド2になっている。
そして、該第一取付具3A付き芯パッド2を上型9にセットする傍ら、外鍔部221は裏面221b側が上型型面99に当接するようにセットする(
図9)。次いで、下型キャビティ面81上に軟質ポリウレタン発泡成形体用原料gを注入すると共に、外鍔部221の表面221a側を下型型面89に当接させて、下型型面89と上型型面99とによる該外鍔部221の挟着を伴って型閉じする。このとき、外鍔部221の側壁面(芯パッド2の周回方向を指向する壁面)側は、下型型面89と上型型面99との型合わせによってキャビティCが封止される。
その後、意匠面4a側に受け面部分41を形成すると共に、下型型面89と上型型面99とで外鍔部221を挟着シールし、ワイヤ先端部31寄りの外鍔部221の部位、さらにワイヤ先端部31をキャビティC外へ出したまま、意匠面4a側と反対の内面4b側が芯パッド2の表面2aに接合一体化した表層パッド4を発泡成形するクッションパッドPの製法である(
図10)。
他の構成は
図1〜
図7のシートパッドの製造方法の説明と同様で、その説明を省く。
図1〜
図7と同一符号は同一又は相当部分を示す。
【0022】
(2)シートパッド
図1〜
図7や
図8〜
図10の上記製造方法等で得られるシートパッドP(ここでは「クッションパッド」)は、少なくとも乗員が当接する側の受け面部分41を軟質ポリウレタン発泡成形体で形成して、芯パッド2と表層パッド4とを具備する。
【0023】
芯パッド2は、第一取付具3Aをインサート品とするビーズ発泡成形体である。芯パッド2の側壁21に設けた外鍔部221の肉厚面221eから、該第一取付具3Aのワイヤ先端部31が外方へ突出する状態で発泡成形されている第一取付具3A付き芯パッド2とする。本実施形態の芯パッド2は、さらに第二取付具3Bもインサート品にして、そのワイヤ突端部36が芯パッド裏面2bから外方へ突出する状態で発泡成形されている第一取付具3A付き芯パッド2とする。
ビーズ発泡成形体は、既述のごとく発泡ポリプロピレン、発泡スチロール、又はこれらの一方を少なくとも含む成形体であるとより好ましい。軟質ポリウレタン発泡成形体に比し低コストで、独立気泡として且つ体積の大部分が気体である発泡ポリプロピレンや発泡スチロールの成形体は、軽量にして気密性,保形性があり、適度の保形維持が必要な芯パッド2に好都合となる。
【0024】
ここで、第一取付具3Aへの発泡原料gのバリ付着を防ぐことを目的とすると、
図8〜
図10に示す芯パッド2の側壁下縁211沿いの一部に外鍔部221を形成するだけで足りるが、外鍔部221が芯パッド2の側壁21を周回して囲う
図1〜
図7のようなフランジ22を形成すると、より好ましくなる。
図4から
図5の表層パッド4の発泡成形過程で、フランジ22によって第二取付具3Bへの発泡原料gのバリ付着も防ぐことができるからである(詳細後述)。
【0025】
表層パッド4は、第一取付具3A付き芯パッド2を埋設一体化している軟質ポリウレタン発泡成形体である。軟質ポリウレタン発泡成形体の意匠面4a側に受け面部分41を形成し、且つワイヤ先端部31及び少なくとも該ワイヤ先端部31寄りの外鍔部221の部位を露出状態にして、意匠面4a側と反対の内面4b側が前記芯パッド2の表面2aに接合する発泡成形体になっている。
【0026】
加えて、
図7(イ),(ロ)のように、前記芯パッド2の表面2a側から裏面2b側へ貫通する透孔23が設けられ、且つ該透孔23内を埋める表層パッド4の軟質ポリウレタン発泡成形部43が設けられると、より好ましくなる。透孔23を埋めた軟質ポリウレタン発泡成形体部がアンカー効果を発揮し、表層パッド4と芯パッド2との接合一体化を強化できるからである。さらに、透孔23の裏面2b側付近で、孔径を拡径した窪み24が設けられ、且つ表層パッド4の発泡成形で該窪み24を埋めた軟質ポリウレタン発泡成形部44が設けられると、一層好ましくなる。透孔23の孔径よりも大きな窪み24を埋めた軟質ポリウレタン発泡成形部44が存在することで、アンカー効果が一段と強まる。また、透孔23が芯パッド2に係るフランジ22の表面22a側から裏面22b側へ貫通するように設けられ、透孔23内を埋める表層パッド4の軟質ポリウレタン発泡成形部43が設けられると(
図7のイ)、芯パッド2と表層パッド4との接合面の外周部沿いでアンカー効果を高めることになるので、芯パッド2と表層パッド4との接合一体化を安定保持させることができる。
【0027】
そして、芯パッド2を形成するビーズ発泡成形体の見掛け密度が、表層パッド4を形成する軟質ポリウレタン発泡成形体の見掛け密度よりも小さく設定されて、
図1に示す所望のクッションパッドPが出来上がっている。斯かるクッションパッドPに図示しない表皮を被せれば、車両用座席の座部側シートクッションが完成する。
他の構成は(1)シートパッドの製造方法で述べた構成と同様で、その説明を省く。(1)で述べた符号と同一符号は同一又は相当部分を示す。
【0028】
(3)効果
このように構成した車両用シートパッド及びその製造方法は、芯パッド2と表層パッド4とを備えて、芯パッド2が軟質ポリウレタン発泡成形体の見掛け密度よりも見掛け密度が小のビーズ発泡成形体で形成されるので、軽量化が進む。それでいて、軟質ポリウレタン発泡成形体で構成された表層パッド4の意匠面4a側に、着座乗員との受け面部分41が設けられているので、クッション性等の快適性は確保される。
【0029】
そして、特許文献2のように単に表層パッド4と芯パッド2を重ねてシートパッドPにするのでなく、表層パッド4がこれを形成する発泡成形で芯パッド2を埋設一体化しているので、乗員の使用時に重ね合わせ面がずれて、異音が発生するといった事態にはならない。
勿論、軟質ポリウレタン発泡成形体の表層パッド4が、発泡成形されても、芯パッド2を構成する発泡ポリプロピレン,発泡スチロール等のビーズ発泡成形体とは接着性に乏しく、そのままでは両者の一体化が十分でない場合もある。斯かる場合は、前記透孔23を設けることで、表層パッド4の発泡成形で、芯パッド2の透孔23に充填される軟質ポリウレタン発泡成形部43にアンカー効果を発揮させ、表層パッド4とビーズ発泡成形体たる芯パッド2との一体化を強化できる。さらに、透孔23の裏面2b側の孔径を大きくした窪み24を設けると、該窪み24に充填される軟質ポリウレタン発泡成形部44がストッパになって、表層パッド4と芯パッド2との一体化を確実なものにできる。
【0030】
また、表層パッド4が、第一取付具3A付き芯パッド2を埋設一体化している軟質ポリウレタン発泡成形体のように、インサート成形で造られると、キャビティC外にセットされる第一取付具3Aのワイヤ先端部31へ向けて発泡成形時の発泡原料gが漏れ出し、バリが付着する虞があるが、外鍔部221を設けているので、ワイヤ先端部31へのバリ付着はない。表層パッド4の成形は、下型型面89と上型型面99とで外鍔部221を挟着シールし、少なくともワイヤ先端部31寄りの外鍔部221の部位、さらにワイヤ先端部31をキャビティC外へ出したままで行うので、キャビティC内の発泡原料gは挟着シール域で遮断され、ワイヤ先端部31へ行き着くことはない。
外鍔部221は、芯パッド2のビーズ発泡成形体の一部として形成され、連続気泡タイプと異なり非通気性になっているので、発泡成形型7の型面89,99の挟着によって、発泡成形時に発泡原料gの型外への漏出を防ぐ。さらに外鍔部221は発泡成形体の一部で、適度の弾性を有しており、下型型面89と上型型面99とで外鍔部221を挟着シールする際、ガスケットを用いなくても該外鍔部221のみでシールできる。ビーズ発泡成形体からなる芯パッド2に外鍔部221を設けることが、表層パッド4の成形時に、外鍔部221の挟着だけで簡単にシールでき、ワイヤ先端部31への発泡原料gの付着防止に極めて理にかなった構成になっている。
バリ除去処理をしなくても、表層パッド4の発泡成形を終えたシートパッドPは、ワイヤ先端部31及び少なくともワイヤ先端部31寄りの外鍔部221の部位が露出状態となる。第一取付具3Aのバリ除去作業もなしでシートパッドPを製品化でき、低コスト化,作業性向上に貢献する。
【0031】
さらに、外鍔部221が前記芯パッド2の側壁21を周回して囲うフランジ22に形成されると、表層パッド4の発泡成形時に芯パッド裏面2bへの発泡原料gの回り込みを阻止できる。第二取付具3Bをインサート品にして、そのワイヤ突端部36が芯パッド裏面2bから外方へ突出する状態で発泡成形されている芯パッド2に有効となる。第一取付具3A及び第二取付具3B付き芯パッド2を埋設して表層パッド4の一体発泡成形する過程で、発泡原料gが第二取付具3Bへ浸入しようとしても、フランジ22が効果的にブロックして阻止する。発泡成形を終えたシートパッドPは、第一取付具3Aのみならず第二取付具3Bにも軟質ポリウレタンフォームのバリ付着がなく、どちらもバリ除去作業がいらないクッションパッドPに仕上がっている。
加えて、芯パッド裏面2bには表皮取付け用の溝28が設けられるが、フランジ22が発泡原料gの芯パッド裏面2bへの回り込みを防いでいるので、該溝28への発泡原料gの浸入も有効阻止する。したがって、表層パッド4の成形後に、溝28に入り込んだ発泡原料gの硬化物を取除くといった作業をしなくて済む。
かくのごとく、本車両用シートパッド及びその製造方法は、上述した種々の優れた効果を発揮し極めて有益である。
【0032】
尚、本発明においては前記実施形態に示すものに限られず、目的,用途に応じて本発明の範囲で種々変更できる。芯パッド2,外鍔部221,フランジ22,透孔23,窪み24,第一取付具3A,第二取付具3B,表層パッド4,軟質ポリウレタン発泡成形部43,44,発泡成形型7等の形状,大きさ,個数,材質等は用途に合わせて適宜選択できる。実施形態は座部用クッションパッドPにしたが、背もたれ用バックパッドにも適用できる。