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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-217421(P2017-217421A)
(43)【公開日】2017年12月14日
(54)【発明の名称】浴槽装置
(51)【国際特許分類】
   A47K 3/28 20060101AFI20171117BHJP
   A47K 3/12 20060101ALI20171117BHJP
   A47K 3/00 20060101ALI20171117BHJP
   E03C 1/06 20060101ALI20171117BHJP
   A47K 4/00 20060101ALI20171117BHJP
【FI】
   A47K3/22
   A47K3/12
   A47K3/00 Z
   E03C1/06
   A47K4/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2016-116713(P2016-116713)
(22)【出願日】2016年6月10日
(71)【出願人】
【識別番号】302045705
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】長瀬 徳彦
(72)【発明者】
【氏名】西澤 研一
(72)【発明者】
【氏名】小川 朋位
(72)【発明者】
【氏名】江口 智人
(72)【発明者】
【氏名】森岡 真也
【テーマコード(参考)】
2D005
2D060
2D132
【Fターム(参考)】
2D005FA00
2D060BA01
2D060BB01
2D060BC01
2D060BC11
2D060BE04
2D060BF01
2D060BF08
2D132DA07
2D132DA09
2D132FA03
2D132FB02
2D132FC02
2D132FD01
2D132FH18
2D132FJ11
2D132FJ31
2D132FK01
2D132GA00
2D132GA02
(57)【要約】
【課題】新しい態様の水浴びを実現するのに適した浴槽装置を提供する。
【解決手段】槽部24を上側から部分的に覆う座部材16を載せるための載せ面部28を有する浴槽12と、載せ面部28上の座部材16を位置決めするための位置決め構造18と、位置決め構造18により位置決めされた座部材16上に座る入浴者Hに当たるように水Wbを吐き出し可能な吐水具20、22とを備える。これにより、入浴者Hが座部材16上に座位姿勢にあるとき、浴槽12内の水Waに脚を入れつつ、吐水具20、22から吐き出された水Wbを浴びられる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
槽部を上側から部分的に覆う座部材を載せるための載せ面部を有する浴槽と、
前記載せ面部上の前記座部材を位置決めするための位置決め構造と、
前記位置決め構造により位置決めされた前記座部材上に座る入浴者に当たるように水を吐き出し可能な吐水具と、を備えることを特徴とする浴槽装置。
【請求項2】
前記吐水具は、前記浴槽の端辺部から立ち上がるように設けられる浴槽側浴室壁部又は前記浴槽に取り付けられる請求項1に記載の浴槽装置。
【請求項3】
前記槽部の長手方向及び短手方向のうちの一方を第1方向としたとき、
前記位置決め構造は、前記座部材の前記第1方向の一方側の端辺部に当接することにより、前記座部材を前記第1方向に位置決め可能であり、
前記吐水具は、前記位置決め構造と前記座部材との当接位置より前記第1方向の一方側にオフセットした位置に配置される請求項1又は2に記載の浴槽装置。
【請求項4】
前記吐水具には、同時に水を吐き出し可能な複数の吐水具が含まれる請求項1から3のいずれかに記載の浴槽装置。
【請求項5】
前記吐水具には、上下方向の異なる位置で入浴者に当たるように水を吐き出し可能な複数の吐水具が含まれる請求項1から4のいずれかに記載の浴槽装置。
【請求項6】
前記吐水具は、前記浴槽に対する相対位置を調整して保持可能である請求項1から5のいずれかに記載の浴槽装置。
【請求項7】
前記吐水具は、前記浴槽に対する相対位置を上下方向に調整可能である請求項6に記載の浴槽装置。
【請求項8】
前記座部材は、前記槽部の長手方向の一方側部分を部分的に覆うように前記位置決め構造により位置決めされ、
前記吐水具は、前記位置決め構造により位置決めされた前記座部材に対して前記長手方向の一方側に配置され、かつ、
前記槽部の短手方向の中心線に対して重なる位置に配置されるように、前記浴槽に対する相対位置を調整可能である請求項6又は7に記載の浴槽装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴室に用いられる浴槽装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、浴室に用いられる浴槽装置として、様々な水浴びを実現できるものが提案されている。この種の浴槽装置として、特許文献1には、浴槽に載せられる風呂蓋を座椅子として使用し、シャワーヘッドから吐き出される水を座位姿勢のまま浴びられるようにしたものが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−141577号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
浴室用設備の事業者は、種々の態様の水浴びを実現できる浴槽装置を提供することにより、市場の拡大を目指している。本発明者は、更なる市場の拡大を展開するうえで、新しい水浴びの態様の必要性を感じ、本発明を想到するに到った。
【0005】
本発明は、このような課題に鑑みてなされ、その目的は、新しい態様の水浴びを実現するのに適した浴槽装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するための本発明の第1の態様は浴槽装置である。第1態様の浴槽装置は、槽部を上側から部分的に覆う座部材を載せるための載せ面部を有する浴槽と、前記載せ面部上の前記座部材を位置決めするための位置決め構造と、前記位置決め構造により位置決めされた前記座部材上に座る入浴者に当たるように水を吐き出し可能な吐水具と、を備える。ここでの入浴者とは浴槽装置の使用国での平均体格をもつ成人をいう。
【0007】
第1態様の浴槽装置によれば、入浴者が座部材上に座位姿勢にあるとき、浴槽内の水に脚を入れつつ、吐水具から吐き出された水を浴びられる。よって、新しい態様の水浴びを実現するのに適した浴槽装置を得られる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態の浴槽装置の第1使用態様での使用例を示す図である。
図2】第1実施形態の浴槽装置が用いられる浴室ユニットを示す平面図である。
図3】第1実施形態の浴槽装置を示す斜視図である。
図4】第1実施形態の浴槽装置の側面断面図である。
図5】第1実施形態の浴槽装置を槽部の長手方向の一方側から見た断面図である。
図6】第1実施形態の浴槽に座部材を載せた状態を図5と同じ視点から見た部分断面図である。
図7】第1実施形態の浴槽に座部材を載せた状態を示す平面図である。
図8】第1実施形態の浴槽装置の第1使用態様での使用例を示す図である。
図9】第1実施形態の浴槽装置の第2使用態様での使用例を示す図である。
図10】第1実施形態の浴槽装置の第3使用態様での他の使用例を示す図である。
図11】第2実施形態の浴槽装置の使用例を示す図である。
図12】第3実施形態の浴槽装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態、変形例では、同一の構成要素に同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、各図面では、説明の便宜のため、構成要素の一部を適宜省略したり、構成要素の寸法を適宜拡大、縮小して示す。
【0010】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態の浴槽装置10の使用例を示す図である。浴槽装置10は、浴槽12上に載せた座部材16上に入浴者Hが座った座位姿勢のまま、浴槽12内に溜めた水Waに脚の一部を入れつつ、吐水具20、22から吐き出された水Wbを入浴者Hが浴びることで用いられる。
【0011】
図2は、浴槽装置10が用いられる浴室ユニット100を示す平面図である。浴室ユニット100は、主に、浴槽装置10と、床102と、囲い壁104と、間仕切り106とを備える。
【0012】
浴槽装置10は、詳細は後述するが、浴槽12を有する。床102は、浴槽12に対して、浴槽12の槽部24(後述する)の短辺方向Yに隣り合う位置に設けられる。囲い壁104は、浴槽12及び床102の上方の空間を取り囲むように設けられ、浴室空間を内部に形成する。囲い壁104は、浴槽12の四周の端辺部のうち、床102側の端辺部とは別にある三方の端辺部から立ち上がるように設けられる浴槽側浴室壁部34−Aを有する。また、囲い壁104は、床102の四周の端辺部のうち、浴槽12側とは別にある三方の端辺部から立ち上がるように設けられる床側浴室壁部34−Bを有する。浴槽側浴室壁部34−Aは、床側浴室壁部34−Bとは別の位置に設けられることになる。浴槽側浴室壁部34−Aと床側浴室壁部34−Bとは鉛直に立ち上がるように設けられ、これらの間の境界位置35も鉛直に延びるように設けられる。本実施形態では、浴槽12の槽部24の短辺方向Yに隣り合う浴槽側浴室壁部34−Aと床側浴室壁部34ーBとは、別部材により構成されるが、同部材により構成されてもよい。
【0013】
浴槽側浴室壁部34−Aには、浴槽12の槽部24の長手方向X(後述する)の一方側にある第1浴槽側浴室壁部34−Aaと、その長手方向Xの他方側にある第2浴槽側浴室壁部34−Abと、その槽部24の短手方向Y(後述する)の床102とは反対側にある第3浴槽側浴室壁部34−Acとが含まれる。第1浴槽側浴室壁部34−Aaには後述する第1吐水具20や第2吐水具22が取り付けられる。以下、浴槽側浴室壁部34−Aa〜34−Acや床側浴室壁部34−Bを総称するときは単に「浴室壁部34」という。
【0014】
間仕切り106は、浴槽12の上側の浴槽側空間108と、浴槽12の脇側の脇側空間110とに浴室空間を区画する。本実施形態の間仕切り106は、引き戸として機能する可動壁106aと、固定壁106bとを有し、可動壁106aを方向P1にスライドさせることで開閉可能である。間仕切り106は、開状態にあるとき、浴槽側空間108と脇側空間110との間での入浴者Hの出入りを許容する。間仕切り106が閉状態にあるときに可動壁106aがある位置には、間仕切り106が開状態にあるとき、入浴者Hが出入りする出入口が形成される。間仕切り106は、閉状態にあるとき、浴槽側空間108と脇側空間110との間での入浴者Hの出入りの他に、浴槽側空間108から脇側空間110への水の飛び散りを制限する。これにより、浴槽側空間108内で水浴びするときでも脇側空間110をドライな状態に保ち易くなり、脇側空間110を脱衣空間や物干し空間等として利用することで、住居内の空間効率を高められる。
【0015】
可動壁106aは、浴槽12の槽部24の長手方向Xの両側のうち、第1吐水具20や第2吐水具22が取り付けられる第1浴槽側浴室壁部34−Aaがある側とは反対側に配置される。固定壁106bは、浴槽12の槽部24の長手方向Xの両側のうち、第1浴槽側浴室壁部34−Aaがある側に配置される。これにより、間仕切り106が開状態にあるとき、各吐水具20、22が取り付けられる第1浴槽側浴室壁部34−Aaから長手方向Xに離れた位置に、入浴者Hが出入りするための出入口が形成される。よって、入浴者Hが出入口を通して出入りするとき、各吐水具20、22との干渉を抑えられる。
【0016】
図3は、浴槽装置10を示す斜視図である。図4は、浴槽装置10の側面断面図である。浴槽装置10は、主に、浴槽12と、背もたれ部材14と、座部材16と、位置決め構造18と、複数の吐水具20、22とを備える。
【0017】
(浴槽)
図3に示すように、浴槽12は、槽部24と、フランジ部26A〜26Dと、載せ面部28とを有する。本実施形態の浴槽12は、槽部24及びフランジ部26A〜26Dとともに載せ面部28が一体成形された一体成形品である。
【0018】
図5は、浴槽装置10を槽部24の長手方向Xの一方側から見た断面図である。図2図4図5に示すように、槽部24は、上方に向けて開いた槽状をなし、平面視において、互いに直交する水平な第1方向X及び第2方向Yのうち、第1方向Xに長く第2方向Yに短い長方形を呈する形状をもつ。以下、第1方向Xを長手方向X、第2方向Yを短手方向Yとし、これらを用いて各構成要素の位置関係を説明する。槽部24は、底壁部24aと、底壁部24aの四周の端辺部から立ち上がる複数の側壁部24bとを有する。複数の側壁部24bのうち、短手方向Yの一方側(床102側)にある側壁部24bの内壁面には、オーバーフロー水を排水するための開閉可能な排水栓24cが取り付けられる。側壁部24bの内壁面は、上方に向かうにつれて、槽部24の外周側に向かって傾くように設けられる。
【0019】
フランジ部26A〜26Dは、槽部24の上縁部から外側に張り出すように設けられる。フランジ部26は、後フランジ部26Aと、左フランジ部26Bと、右フランジ部26Cと、前フランジ部26Dとを含む。後フランジ部26Aは、長手方向Xの一方側にある側壁部24b(以下、後側壁部24bともいう)から張り出す。左フランジ部26Bは短手方向Yの一方側(床102側)にある側壁部24bから張り出し、右フランジ部26Cは短手方向Yの他方側にある側壁部24bから張り出す。前フランジ部26Dは、後フランジ部26Aとは長手方向Xの反対側にある側壁部24bから張り出す。左フランジ部26Bの張り出し寸法は右フランジ部26Cの張り出し寸法より大きくなるように設定される。
【0020】
図4図5に示すように、各フランジ部26A〜26Dの内周縁部には外周側から内周側に向かって高さ位置が低くなる凹部30が設けられる。ここでの高さ位置とは上下方向(鉛直方向)での位置をいう。各フランジ部26の凹部30は、上方に臨む上面部30aと、上面部30aの外周縁部から立ち上がる段差面30bとを有する。各凹部30の上面部30aや段差面30bは周状に連なるように設けられる。
【0021】
各フランジ部26の凹部30より外周側には上方に臨む天面部32が設けられる。前フランジ部26D、右フランジ部26C及び後フランジ部26Aの天面部32には囲い壁104を構成する浴槽側浴室壁部34−Aa〜Acが載せられる。前フランジ部26D、右フランジ部26C及び後フランジ部26Aの段差面30bは鉛直方向に沿って延びるとともに、浴槽側浴室壁部34−Aa〜Acの内壁面と面一となるように設けられる。左フランジ部26Bの天面部32には間仕切り106が載せられる。左フランジ部26Bの段差面30bは、上方に向かうにつれて、浴槽12の外周側に向けて傾くように設けられ、水返しとして機能する。
【0022】
図6は、浴槽12に座部材16を載せた状態を図5と同じ視点から見た部分断面図である。左フランジ部26Bと右フランジ部26Cとの凹部30の上面部30aは座部材16を載せるための載せ面部28として機能する。載せ面部28は、浴槽12の左フランジ部26Bと右フランジ部26Cとの内周縁部に設けられており、槽部24の短手方向Yに対向する位置に設けられることになる。本実施形態の載せ面部28は浴槽12の前フランジ部26Dから後フランジ部26Aまでの範囲に設けられる(図2も参照)。
【0023】
(背もたれ部材)
図3図4に示すように、背もたれ部材14は、浴槽12の後側壁部24bの内側面より内側に背もたれ面14aを設けるため、浴槽12に取り付けられる。背もたれ部材14は、浴槽12の外面に一部を突き当てたうえで、面ファスナー、磁石、接着等の取付手段を用いて、浴槽12に取り付けられる。本実施形態の背もたれ部材14はクッション性のある軟質素材を用いて構成される。
【0024】
背もたれ部材14は、浴槽12の内側に臨む位置に設けられる背もたれ面14aを有する。背もたれ面14aは、浴槽12の槽部24の上端縁より上側にはみ出るように設けられる。背もたれ面14aは、浴槽12の外側に向かって傾いており、その上端縁は上向きに凸となる円弧面14bに連ねられている。背もたれ面14aは、浴槽12に入浴者Hが腰をおろした座位姿勢にあるとき、入浴者Hの肩部を突き当て可能な高さをもつ。
【0025】
(座部材)
図7は、浴槽12に座部材16を載せた状態を示す平面図である。座部材16は、平面視にて、短手方向Yに長い長方形を呈する形状をもつ板材である。座部材16は、短手方向Yの両端辺部が浴槽12の一対の載せ面部28上に載せられる。座部材16は、浴槽12の載せ面部28上に載せられた状態のもと、入浴者Hが座部材16に座ったとき、自らの形状を保持できる程度の剛性をもつ。本実施形態の座部材16は、クッション性のない硬質素材を用いて構成されるが、その一部にクッション性のあるクッション材を設けてもよい。
【0026】
(位置決め構造)
図4図6図7に示すように、位置決め構造18は、浴槽12の載せ面部28上の座部材16を位置決めするためのものである。位置決め構造18は、座部材16を長手方向Xに位置決めする第1位置決め部18aと、座部材16を短手方向Yに位置決めする第2位置決め部18bとを有する。本実施形態の第1位置決め部18aは、背もたれ部材14の背もたれ面14aにより構成される。本実施形態の第2位置決め部18bは、浴槽12の短手方向Yに対向する位置に設けられる左フランジ部26Bと右フランジ部26Cとの段差面30bにより構成される。各位置決め部18a、18bは浴室壁部34とは別部材により構成されることになる。
【0027】
第1位置決め部18aは、座部材16の長手方向Xの端辺部に当接することにより、座部材16を長手方向Xに位置決め可能である。詳しくは、座部材16の長手方向Xの端辺部であって、座部材16の短手方向Yの中間部に当接することにより、座部材16を長手方向Xに位置決め可能である。第2位置決め部18bは、座部材16の短手方向Y両側の端部に当接することにより、座部材16を短手方向Yに位置決め可能である。座部材16は、槽部24の長手方向Xの一方側部分(図4中の左側部分)を部分的に覆うように位置決め構造18により位置決めされる。これにより、槽部24の上部開口部に脚入れ口24dが残るように設けられる。ここで、この槽部24の脚入れ口24dとは座部材16を挟んだ反対側のことを「背側」とする。本実施形態では長手方向Xの一方側(図4の左側)が「背側」となる。
【0028】
なお、第2位置決め部18bは、座部材16を載せ面部28上に載せて長手方向Xに移動させるとき、座部材16が摺動することで、座部材16の長手方向Xでの動きをガイドする機能もある。
【0029】
(吐水具)
図5に示すように、吐水具20、22には、第1吐水具20と、第2吐水具22とが含まれる。第1吐水具20は、全体として短手方向Yに長い柱状をなし、その両端部が個別のブラケット36A、36Bにより支持される。これにより、第1吐水具20は、浴槽12に対する相対位置が他部材(ブラケット36A、36B)により保持される。ブラケット36A、36Bは、座部材16の背側にある第1浴槽側浴室壁部34−Aに取り付けられており、第1吐水具20は、第1浴槽側浴室壁部34−Aにブラケット36A、36Bを介して取り付けられる。
【0030】
第1吐水具20の外面には水を吐き出すための複数の吐出口20aが形成される。複数の吐出口20aは短手方向Yに列状に並ぶように配置される。第1吐水具20は、後述する給水路から給水されると、第1浴槽側浴室壁部34−Aの正面側に向けて複数の吐出口20aからシャワー状の水Wbを吐き出す(図4も参照)。このシャワー状の水は短手方向Yに幅広で扁平な範囲を通るように吐き出される。なお、第1吐水具20は、ブラケット36に対して短手方向Yに延びる軸Ax周りに回転可能に支持され、その回転により吐出角度を調整可能である。
【0031】
第2吐水具22は、シャワー装置38に用いられるシャワーヘッドである。シャワー装置38は、第2吐水具22と、シャワーフック40と、スライドバー42と、シャワーホース44とを備える(図3も参照)。第2吐水具22は、シャワーホース44の先端部に連結される。第2吐水具22は、シャワーフック40の保持孔40a(後述する)に挿通される軸部22aと、軸部22aの先端部に設けられるヘッド部22bとを有する。ヘッド部22bには複数の吐出口22cが形成される。複数の吐出口22cは同心状に並ぶように配置される。第2吐水具22は、後述する給水路からシャワーホース44を通して水が供給されると、第1浴槽側浴室壁部34−Aの正面側に向けて複数の吐出口22cからシャワー状の水Wbを吐き出す(図4も参照)。
【0032】
シャワーフック40は、第2吐水具22の軸部22aを着脱可能に保持する保持孔40aと、スライドバー42が挿通される貫通孔40bとを有する。シャワーフック40は一方向に延びる柱状をなし、保持孔40aと貫通孔40bとのそれぞれはシャワーフック40の一端部と他端部とに設けられる。第2吐水具22は、シャワーフック40の保持孔40aに軸部22aが挿通されたとき、浴槽12に対する相対位置が保持される。スライドバー42は第1浴槽側浴室壁部34−Aに取り付けられており、第2吐水具22はシャワーフック40やスライドバー42を介して第1浴槽側浴室壁部34に取り付けられる。
【0033】
シャワーフック40は、スライドバー42に沿って上下方向にスライド可能である。シャワーフック40は、スライドバー42に対するスライド可能範囲において摩擦等により任意の位置で保持される。これにより、第2吐水具22は、浴槽12に対する相対位置を上下方向に調整して保持可能となる。シャワーフック40は、スライドバー42の中心軸周りに回転可能である。これにより、浴槽12に対する第2吐水具22の水平面内での相対位置を調整して保持できる。第2吐水具22の軸部22aはシャワーフック40の保持孔40aに自らの軸部22a周りに回転可能に挿通される。これにより、第2吐水具22は、平面視において、第2吐水具22から吐き出される水の方向である吐出方向を調整して保持可能となる。シャワーフック40は、第2吐水具22の軸部22aが鉛直線に対してなす角度を調整して保持する角度調整機構(不図示)を有する。これにより、第2吐水具22は、第2吐水具22から吐き出された直後の水が鉛直線に対してなす角度である吐出角度を調整して保持可能となる。
【0034】
第1吐水具20、スライドバー42及び各ブラケット36の内部には第1吐水具20の吐出口や第2吐水具22の吐出口に給水するための給水路(不図示)が形成される。給水路には、上流側の冷水供給路から供給される冷水と、上流側の温水供給路から供給される温水との混合比を調整する湯水混合弁(不図示)が設置される。湯水混合弁の湯水混合比は、第1吐水具20に対して短手方向Yの一方側(図中左側)のブラケット36に取り付けられる第1ハンドル46により操作される。
【0035】
給水路には、湯水混合弁より下流側において、給水路の給水先を切り替えるための切替弁が設置される。切替弁は、第1吐水具20に対して短手方向Yの他方側(図中右側)のブラケット36に取り付けられる第2ハンドル48により操作される。この給水路の給水先は、第2ハンドル48の操作によって、第1吐水具20の吐出口と、第2吐水具22の吐出口との何れか、又は、これら両方に切り替え可能である。給水路の給水先が第1吐水具20の吐出口と、第2吐水具22の吐出口との何れか一方に切り替えられたとき、その給水先となる第1吐水具20の吐出口又は第2吐水具22の吐出口の何れか一方から水が吐き出される。給水路の給水先が第1吐水具20と第2吐水具22との両方に切り替えられたとき、第1吐水具20の吐出口と第2吐水具22の吐出口とから同時に水が吐き出される。このように、複数の吐水具20、22は吐出動作の有無を個別に切り替え可能である。
【0036】
図4に示すように、第1吐水具20及び第2吐水具22は、位置決め構造18の第1位置決め部18aと座部材16との当接位置Paより、座部材16の背側(図中左側)にオフセットした位置に配置される。これは、位置決め構造18の第1位置決め部18aと座部材16との当接位置を通り鉛直に延びる線を基準線Laとしたとき、第1吐水具20及び第2吐水具22が基準線Laより座部材16の背側に配置されることを意味する。
【0037】
次に、本実施形態の浴槽装置10の使用態様を説明する。入浴者Hは、たとえば、以下の態様で浴槽装置10を使用できる。
・第1使用態様:浴槽12に入浴者Hが腰をおろした座位姿勢で使用する。
・第2使用態様:浴槽12上に入浴者Hが立った立位姿勢で使用する。
・第3使用態様:浴槽12上に載せた座部材16に座る座位姿勢で使用する。
【0038】
図8は、第1使用態様での使用例を示す図である。第1使用態様にあるとき、入浴者Hは、浴槽12に腰をおろして両脚を突き出した座位姿勢になる。入浴者Hは、自らの背中を浴槽12の後側壁部24bに向けておき、背もたれ部材14の背もたれ面14aに自らの背中をもたせ掛けた姿勢になる。この座位姿勢のまま、浴槽12内に溜めておいた温水Waで腰部や下半身を暖めながら使用できる。この座位姿勢にあるとき、第1吐水具20から吐き出した水Wbや第2吐水具22から吐き出した水Wbを受けつつ使用してもよい。
【0039】
図9は、第2使用態様での使用例を示す図である。第2使用態様にあるとき、第2吐水具22をオーバーヘッドシャワーとして用いる。これを実現するため、立位姿勢にある入浴者Hの頭部より高位置に第2吐水具22が配置されるように、第2吐水具22の浴槽12に対する相対位置を上下方向に調整する。また、第2吐水具22から入浴者Hに向けて水が吐き出されるように、第2吐水具22の吐出方向や吐出角度を調整する。
【0040】
図1は、第3使用態様にあるときの使用例を示す図でもある。第3使用態様にあるとき、座部材16は、槽部24の上部開口部に脚入れ口24dが残るように槽部24の一方側部分を上側から部分的に覆う。座部材16は、浴槽12の槽部24を上側から覆うとき、このような脚入れ口24dが槽部242の上部開口部に形成されるように、その寸法や形状が設定されているといえる。これにより、入浴者Hは、自らの両脚の一部を脚入れ口24dから浴槽12内に入れた状態で座部材16に座る座位姿勢をとれる。
【0041】
浴槽12の載せ面部28上の座部材16は、位置決め構造18により長手方向Xや短手方向Yに位置決めされる。詳しくは、座部材16は、背もたれ部材14の第1位置決め部18aとの当接により、座部材16の背側(吐水具20、22に近づく側)に向かう変位が規制されるように長手方向Xに位置決めされる。また、座部材16は、浴槽12の第2位置決め部18bとの当接により、短手方向Yでの変位が規制されるように短手方向Yに位置決めされる。
【0042】
第1吐水具20は、位置決め構造18により位置決めされた座部材16上に入浴者Hが座る座位姿勢にあるとき、入浴者Hの腰部に当たるように水を吐き出し可能である。この条件を満たすうえで、第1吐水具20の吐出角度を調整してもよい。第2吐水具22は、前述の座位姿勢に入浴者Hがあるとき、入浴者Hの肩部に当たるように水を吐き出し可能である。この条件を満たすうえで、第2吐水具22の浴槽12に対する相対位置、吐出方向や吐出角度を調整してもよい。このように、第2吐水具22は、第1吐水具20による水当て位置より高位置で入浴者Hに当たるように水を吐き出し可能である。言い換えると、第2吐水具22は、第1吐水具20による水当て位置とは上下方向の異なる位置で入浴者Hに当たるように水を吐き出し可能である。
【0043】
第1吐水具20は、座部材16上に座位姿勢にある入浴者Hの腰部より腰幅方向(短手方向Y)に広い範囲を通るように、座部材16の背側の第1浴槽側浴室壁部34−Aの正面側に向けて水を吐き出す。第2吐水具22は、第1浴槽側浴室壁部34−Aの法線方向に第2吐水具22の吐出方向を合わせたとき、第1吐水具20から吐き出される水の通過範囲より短手方向Yに狭い範囲を通るように水を吐き出す。このように、第1吐水具20と第2吐水具22とは、吐き出された水が異なる範囲を通るように、異なる水の吐出態様をもっている。このような条件を満たすように、第1吐水具20及び第2吐水具22それぞれの吐出口の数、位置等が設定されている。
【0044】
以上のように、第1吐水具20や第2吐水具22は、位置決め構造18により位置決めされた座部材16上に座る入浴者Hに当たるように水を吐き出し可能である。これにより、前述の座位姿勢にあるとき、浴槽12内に溜めた水に両脚の一部を入れしつつ、吐水具20、22から吐き出された水を入浴者Hが浴びられる。このため、入浴者Hの上半身を浴槽12内の水に漬けないことで心肺への負担を抑えつつ、入浴者Hが座位姿勢のまま足元や上半身を暖められ、高いリラックス効果を得られる。
【0045】
図10は、第3使用態様にあるときの他の使用態様を示す図である。第2吐水具22は、浴槽12に対する相対位置を保持する他部材としてのシャワーフック40に対して着脱可能である。よって、入浴者Hが座部材16上に座位姿勢にあるとき、シャワーフック40から第2吐水具22を取り外したうえで入浴者Hが手に持ち、入浴者Hの好みの箇所に第2吐水具22から吐き出される水Wbを浴びせられる。これにより、入浴者Hが座位姿勢のまま足浴しつつ、入浴者Hの好みの箇所に水浴びでき、より高いリラックス効果を得られる。
【0046】
本実施形態の浴槽装置10の作用効果を説明する。
浴槽装置10によれば、入浴者Hが座部材16上に座る座位姿勢にあるとき、浴槽12内の水に脚を入れつつ、吐水具20、22から吐き出された水を浴びられる。よって、入浴者Hが座部材16上に座位姿勢のまま足浴しつつ水浴びでき、新しい態様の水浴びを実現するのに適した浴槽装置10を得られる。
【0047】
浴槽装置10は、座部材16との当接により座部材16を位置決めするための位置決め構造18を備える。よって、入浴者Hが座部材16上に座位姿勢にあるとき、浴槽12に対する座部材16の位置ずれを位置決め構造18との当接により規制でき、安定して座位姿勢をとり続け易くなる。
【0048】
第1吐水具20や第2吐水具22は、浴槽12に対する相対位置が他部材(ブラケット36、シャワーフック40)により保持される。よって、入浴者Hが座部材16上に座位姿勢にあるとき、両手を自由にしたままで吐水具20、22から吐き出される水を浴びられ、より高いリラックス効果を得やすくなる。
【0049】
第1吐水具20や第2吐水具22は、位置決め構造18の第1位置決め部18aと座部材16との当接位置より座部材16の背側にオフセットした位置に配置される。よって、入浴者Hが長手方向Xの背側とは反対側を向いた状態で座部材16上に座ったとき、入浴者Hから長手方向Xの背側に離れた位置に各吐水具20、22が配置され、入浴者Hと各吐水具20、22との干渉を抑え易くなる。このため、各吐水具20、22との干渉を気にせず、入浴者Hが座部材16上に深く腰かけた状態で足浴しつつ水浴びでき、より高いリラックス効果を得やすくなる。
【0050】
なお、このような作用効果を得るうえで、浴槽12に対する相対位置や吐出角度を調整できる第2吐水具22に関しては、その調整可能な範囲の少なくとも一部において、前述の当接位置Paより座部材16の背側にオフセットした位置に配置されていればよい。
【0051】
吐水具20、22には同時に水を吐き出し可能な複数の吐水具20、22が含まれる。よって、入浴者Hが座部材16上に座位姿勢にあるとき、複数の吐水具20、22から同時に水を吐き出すことで、入浴者Hの身体の広い範囲で多くの水を浴び易くなり、高いリラックス効果をより得やすくなる。
【0052】
吐水具20、22には、上下方向の異なる位置で入浴者Hに当たるように水を吐き出し可能な複数の吐水具20、22が含まれる。よって、入浴者Hが座部材16上に座位姿勢にあるとき、複数の箇所から好みの箇所に水浴び位置を選択でき、入浴者Hが座位姿勢で水浴びするうえでの使い勝手が良好になる。
【0053】
また、第2吐水具22は、浴槽12に対する相対位置を調整して保持可能である。よって、第2吐水具22の吐出位置を入浴者Hの好みに応じて調整でき、入浴者Hが座部材16上に座位姿勢で水浴びするうえでの使い勝手が良好になる。
【0054】
また、第2吐水具22は、浴槽12に対する相対位置を上下方向に調整して保持可能である。よって、入浴者Hの身長に応じて、入浴者Hの肩部や頭部等に水を当てるのに適した位置に配置されるように、第2吐水具22の吐出位置を上下方向に調整でき、入浴者Hが座部材16上に座位姿勢で水浴びするうえでの使い勝手が良好になる。
【0055】
本実施形態の浴槽装置10の他の特徴を説明する。
図7に示すように、第2吐水具22は、平面視において、槽部24の短手方向Yの中心線Lcに対して重なる位置に配置されるように、浴槽12に対する相対位置を調整可能である。ここでの槽部24の短手方向Yの中心線Lcとは、平面視において、槽部24の短手方向Yでの最大内幅寸法Saを二等分する位置Pb(短手方向Yの中心位置)を通るとともに長手方向Xに沿って延びる線をいう。このような位置に第2吐水具22が配置されている場合、入浴者Hの座部材16に対する座位置を短手方向Yに微調整するだけで、入浴者Hの左右中央部に対して座部材16の背側に第2吐水具22を配置できる。この位置関係のもと、第2吐水具22から水が吐き出されると、入浴者Hの左右方向の広い範囲で水浴びし易くなる。よって、第2吐水具22の吐出位置の調整により使い勝手を良好にしつつ、入浴者Hの身体の広い範囲での水浴びにより高いリラックス効果を得やすくなる。
【0056】
スライドバー42は、槽部24の長手方向Xの一方側にある第1浴槽側浴室壁部34−Aに取り付けられる。スライドバー42は、槽部24の短手方向Yの中心線Lcに対して短手方向Yにオフセットした位置に配置される。スライドバー42は、平面視において、この槽部24の中心線Lcと重ならない位置に配置されることになる。本実施形態では、槽部24の中心線Lcからスライドバー42が短手方向Yにオフセットした量であるオフセット量は、槽部24の最大内幅寸法Saを四等分した大きさを基準寸法Sbとしたとき、基準寸法Sbより大きくなるように設定されている。第1浴槽側浴室壁部34−Aは、鋼板等の内装材と、内装材の裏面に裏打ちされた石膏ボード等の構造用面材とを備える。スライドバー42は、締結具を用いて第1浴槽側浴室壁部34−Aに締結するうえで、第1浴槽側浴室壁部34−Aの構造用面材に締結具を締結可能な位置に配置される。
【0057】
以上の浴槽装置10によれば、スライドバー42が槽部24の短手方向Yの中心線Lcに対して短手方向Yにオフセットした位置に配置される。よって、図8を用いて説明したように、浴槽12に腰をおろして両脚を突き出した座位姿勢になったとき、入浴者Hの頭部がスライドバー42に当たり難くなる利点がある。また、平面視において、槽部24の中心線Lcの近傍で第1浴槽側浴室壁部34−Aの内側面に他部品を設置するスペースSc(図5参照)を確保できる。このスペースScに鏡や棚を設置することで、浴槽12内で洗体行為をし易くなる利点がある。
【0058】
本実施形態の浴槽装置10はシャワー装置38にも特徴がある。
図3図5に示すように、シャワー装置38は、第2吐水具22(シャワーヘッド)と、シャワーフック40と、スライドバー42と、シャワーホース44とを備える。第2吐水具22やシャワーフック40の詳細は前述の通りである。
【0059】
スライドバー42は、シャワーフック40を上下方向にスライド可能に支持するバー状をなし、その上側部分と下側部分とがブラケット36B、36Cにより支持される。ブラケット36B、36Cは、スライドバー42の下側部分を支持する下側ブラケット36Bと、スライドバー42の上側部分を支持する上側ブラケット36Cとを含む。下側ブラケット36Bは、第1吐水具20を支持するブラケットでもある。
【0060】
下側ブラケット36Bや上側ブラケット36Cは、シャワーフック40と当接することにより、スライドバー42に対するシャワーフック40のスライド可能範囲Sdを定める。下側ブラケット36Bは、シャワーフック40と当接することにより、シャワーフック40のスライド可能範囲Sdの下限位置を定める。上側ブラケット36Cは、シャワーフック40と当接することにより、シャワーフック40のスライド可能範囲Sdの上限位置を定める。
【0061】
シャワーホース44は、第2吐水具22に給水するためのものであり、可とう性をもつ。シャワーホース44は、本実施形態において、上側ブラケット36Cから引き出されており、上側ブラケット36やスライドバー42の内部に形成される前述の給水路を通して給水される。シャワーホース44は、シャワーフック40のスライド可能範囲Sdの上下方向での中心位置Pcより高位置に基端部44aが配置される。本実施形態のシャワーホース44は、シャワーフック40のスライド可能範囲Sdの上限位置と同等の高さ位置に基端部44aが配置される。
【0062】
以上のシャワー装置38によれば、シャワーフック40のスライド可能範囲Sdの中心位置Pcより高位置にシャワーホース44の基端部44aが配置される。よって、シャワーフック40をスライド可能範囲Sdの下限位置に近づけたとき、シャワーホース44の中間部が浴槽12内の浴槽水に漬かり難くなる。入浴者Hの心理面や衛生面からは浴槽水に物品が漬かるのを避ける方が好ましい。このため、本実施形態によれば、シャワーホース44が浴槽水に漬かることによる悪影響の発生を防止できる。
【0063】
なお、このような作用効果を得る観点からは、シャワーホース44の基端部44aは、シャワーフック40のスライド可能範囲Sdの上限位置と同等又はそれ以上の高さ位置に配置されてもよい。本明細書での「同等」には比較対象となる両者が同一の場合とほぼ同一の場合との両方が含まれる。
【0064】
[第2実施形態]
図11は、第2実施形態の浴槽装置10の使用例を示す図である。第2実施形態の浴槽装置10は、第1実施形態と比べて、吐水具20、22、50に第3吐水具50が含まれる点が相違する。第3吐水具50は、第2吐水具22より高位置に配置されるシャワーヘッドである。第3吐水具50には、スライドバー42の上端部から延び出る中継管52が接続される。中継管52の内部には第1吐水具20や第2吐水具22に給水するための給水路の一部が分岐して形成され、第3吐水具50には給水路を通して給水される。第3吐水具50は、不図示のハンドルに対する操作を受けて、吐出動作の有無が切り替えられる。
【0065】
第3吐水具50は、前述のような、浴槽12上に入浴者Hが立った立位姿勢にあるとき、シャワー状の水Wbを吐き出すオーバーヘッドシャワーとして用いられる。また、入浴者Hが座部材16上に座位姿勢にあるとき、図11に示すように、第1吐水具20や第2吐水具22と組み合わせて用いてもよい。この場合に、第3吐水具50も第1吐水具20や第2吐水具22と同時に水を吐き出し可能に構成してもよい。
【0066】
[第3実施形態]
図12は、第3実施形態の浴槽装置10を示す図である。第3実施形態の浴槽装置10は、第1実施形態と比べて、浴室の天井54にシャワーヘッド56が埋め込まれている点が相違する。シャワーヘッド56には、不図示の給水路を通して給水される。シャワーヘッド56は、図示しないが、浴槽12上に入浴者Hが立った立位姿勢にあるとき、入浴者Hの頭部に向けてシャワー状の水Wbを吐き出すオーバーヘッドシャワーとして用いられる。シャワーヘッド56は、不図示のハンドルに対する操作を受けて、吐出動作の有無が切り替えられる。
【0067】
以上、本発明の実施形態の例について詳細に説明した。前述した実施形態は、いずれも本発明を実施するにあたっての具体例を示したものにすぎない。実施形態の内容は、本発明の技術的範囲を限定するものではなく、請求の範囲に規定された発明の思想を逸脱しない範囲において、構成要素の変更、追加、削除等の多くの設計変更が可能である。前述の実施形態では、このような設計変更が可能な内容に関して、「実施形態の」「実施形態では」等との表記を付して説明しているが、そのような表記のない内容に設計変更が許容されないわけではない。また、図面の断面に付したハッチングは、ハッチングを付した対象の材質を限定するものではない。
【0068】
浴槽12の載せ面部28は浴槽12の短手方向Yに対向する位置に設けられる例を説明したが、その位置は特に限られない。たとえば、浴槽12の長手方向Xに対向する位置に設けられてもよい。浴槽12の載せ面部28はフランジ部26の内周縁部に設けられる例を説明したが、フランジ部26の内周縁部より外周側部分に設けられてもよいし、槽部24の上下方向の途中位置に設けられてもよい。
【0069】
位置決め構造18は、槽部24の長手方向X及び短手方向Yのうち、少なくとも一方の方向に座部材16を位置決めできればよい。実施形態の位置決め構造18は、座部材16の長手方向Xの一方側の端辺部に当接することにより、座部材16を長手方向Xに位置決めする例を説明した。この他にも、位置決め構造18は、座部材16の短手方向Yの一方側の端辺部に当接することにより、座部材16を短手方向Yに位置決めしてもよい。この場合、吐水具20、22は、位置決め構造18と座部材16との当接位置より短手方向Yの一方側にオフセットした位置に配置されてもよい。つまり、槽部24の長手方向X及び短手方向Yのうちの一方を第1方向としたとき、位置決め構造18は、座部材16の第1方向の一方側の端辺部に当接することにより、座部材16を位置決め可能としてよく、吐水具20、22は、位置決め構造18と座部材16との当接位置より第1方向の一方側にオフセットした位置に配置されてもよい。このとき、座部材16は、槽部24の上部開口部に脚入れ口24dが残るように槽部24の第1方向の一方側部分を覆うことになる。また、吐水具20、22は、位置決め構造18により位置決めされた座部材16を挟んで脚入れ口24dとは第1方向の反対側に配置されることにもなる。
【0070】
実施形態の位置決め構造18は、背もたれ部材14の背もたれ面14aが第1位置決め部18aである例を説明したが、これに限られない。たとえば、浴槽12のフランジ部26に上向きに突き出る凸部を設け、その凸部を第1位置決め部としても用いてもよい。この場合、座部材16の端辺部と凸部との当接により座部材16が位置決めされる。また、この他にも、位置決め構造18は、浴槽側浴室壁部34−Aa〜34−Acのいずれかが構成してもよい。この場合、たとえば、第1浴槽側浴室壁部34−Aaを第1位置決め部18aとし、第3浴槽側浴室壁部34−Abを第2位置決め部18bとしてもよい。また、この他にも、位置決め構造18は、たとえば、浴槽12のフランジ部26等に設けられた第1嵌合部と、座部材16の下面に設けられ、第1嵌合部と嵌め合う第2嵌合部とを備えていてもよい。この場合、第1嵌合部は凸部又は凹部であり、第2嵌合部は第1嵌合部と嵌め合う凹部又は凸部となる。この場合、浴槽12の第1嵌合部と座部材16の第2嵌合部との嵌め合いにより座部材16が長手方向X及び短手方向Yの両方に位置決めされる。
【0071】
浴槽装置10は複数の吐水具20、22を備える例を説明したが、少なくとも一つの吐水具20、22があればよい。たとえば、第1実施形態の第1吐水具20及び第2吐水具22の何れかのみを備えていてもよいし、第2実施形態の第3吐水具50のみを備えていてもよい。
【0072】
吐水具20、22は、複数の吐出口からシャワー状の水を吐き出すものを例に説明したが、これに限られない。たとえば、吐水具20、22は、吐出口から膜状又は柱状の整流水を吐き出すものでもよい。
【0073】
第1吐水具20はブラケット36により保持され、第2吐水具22はシャワーフック40により保持される例を説明した。このように、吐水具20、22は他部材(ブラケット36、シャワーフック40)により保持されていてもよい。ここでの他部材は、特に限られず、浴室壁部34や浴槽12等も含まれる。
【0074】
吐水具20、22は、座部材16の背側にある第1浴槽側浴室壁部34−Aaに取り付けられる例を説明したが、これに限られず、座部材16の背側にある浴槽12の後フランジ部26Aに取り付けられてもよい。また、吐水具20、22は、座部材16の背側ではなく、座部材16の横側にある第3浴槽側浴室壁部34−Acや、浴槽12の右フランジ部26Cに取り付けられてもよい。つまり、吐水具20、22は、浴槽側浴室壁部34−Aa〜Acや浴槽12に直接又は他部材を介して取り付けられていてもよい。言い換えると、吐水具20、22は、床側浴室壁部34−Bには直接又は他部材を介して取り付けられていないともいえる。これら何れの場合でも、吐水具20、22は、浴槽12に隣り合う位置にある床102の上方ではなく、浴槽12の上方に全体が配置されることになる。別の観点から見ると、吐水具20、22の吐出口の全てが浴槽12の上方に配置されることになる。
【0075】
本実施形態の浴槽装置10は背もたれ部材14を備える例を説明したが、背もたれ部材14はなくともよい。また、背もたれ部材14は、クッション性のある軟質素材を用いて構成される例を説明したが、その一部にクッション性のない硬質素材を設けてもよい。また、背もたれ部材14は、クッション性のない硬質素材を用いて構成してもよいし、その一部にクッション性のある軟質素材を設けてもよい。
【0076】
シャワー装置38は、シャワーフック40のスライド可能範囲Sdの中心位置Pcより高位置にシャワーホース44の基端部44aが配置されていればよく、シャワーホース44の引き出し位置は上側ブラケット36に限られない。たとえば、シャワーホース44の引き出し位置は、上側ブラケット36の他にも、スライドバー42又は浴室壁部34でもよい。
【0077】
本実施形態の間仕切り106は、引き戸として機能する可動壁106aと、固定壁106bとを有する例を説明したが、その壁の種類や数はこれに限られない。たとえば、固定壁106bの代替として他の可動壁を用いてもよい。また、可動壁は開き戸等として機能してもよい。
【0078】
以上の実施形態、変形例により具体化される発明を一般化すると、以下の技術的思想が導かれる。以下、発明が解決しようとする課題に記載の態様を用いて説明する。
【0079】
第2態様の浴槽装置は、第1態様において、前記吐水具は、前記浴槽の端辺部から立ち上がる浴槽側浴室壁部又は前記浴槽に取り付けられてもよい。
【0080】
第3態様の浴槽装置は、第1態様又は第2態様において、前記槽部の長手方向及び短手方向のうちの一方を第1方向としたとき、前記位置決め構造は、前記座部材の前記第1方向の端辺部に当接することにより、前記座部材を位置決め可能な位置決め部を有し、前記吐水具は、前記位置決め部と前記座部材との当接位置より前記第1方向の一方側にオフセットした位置に配置されてもよい。
この態様によれば、入浴者が第1方向の一方側とは反対側を向いた状態で座部材上に座ったとき、入浴者から第1方向の一方側に離れた位置に吐水具が配置され、入浴者と吐水具との干渉を抑え易くなる。このため、吐水具との干渉を気にせず、入浴者が座部材上に深く腰かけた状態で足浴しつつ水浴びでき、高いリラックス効果を得やすくなる。
【0081】
第4態様の浴槽装置は、第1態様から第3態様のいずれかにおいて、前記吐水具には同時に水を吐き出し可能な複数の吐水具が含まれてもよい。
この態様によれば、入浴者が座部材上に座位姿勢にあるとき、入浴者の身体の広い範囲で多くの水を浴び易くなり、高いリラックス効果をより得やすくなる。
【0082】
第5態様の浴槽装置は、第1態様から第4態様のいずれかにおいて、前記吐水具には、上下方向の異なる位置で入浴者に当たるように水を吐き出し可能な複数の吐水具が含まれてもよい。
この態様によれば、入浴者が座部材上に座位姿勢にあるとき、複数の箇所から好みの箇所に水浴び位置を選択でき、入浴者が座位姿勢で水浴びするうえでの使い勝手が良好になる。
【0083】
第6態様の浴槽装置は、第1態様から第5態様のいずれかにおいて、前記吐水具は、前記浴槽に対する相対位置を調整して保持可能であってもよい。
この態様によれば、吐水具の吐出位置を入浴者の好みに応じて調整でき、入浴者が座部材上に座位姿勢で水浴びするうえでの使い勝手が良好になる。
【0084】
第7態様の浴槽装置は、第6態様において、前記吐水具は、前記浴槽に対する相対位置を上下方向に調整可能であってもよい。
この態様によれば、入浴者の身長に応じて、入浴者の肩部や頭部等に水を当てるのに適した位置に配置されるように、吐水具の吐出位置を上下方向に調整でき、入浴者が座部材上に座位姿勢で水浴びするうえでの使い勝手が良好になる。
【0085】
第8態様の浴槽装置は、第6態様又は第7態様において、前記座部材は、前記槽部の長手方向の一方側部分を部分的に覆うように前記位置決め構造により位置決めされ、前記吐水具は、前記位置決め構造により位置決めされた前記座部材に対して前記長手方向の一方側に配置され、かつ、前記槽部の短手方向の中心線に対して重なる位置に配置されるように、前記浴槽に対する相対位置を調整可能であってもよい。
この態様によれば、浴槽に対する吐水具の相対位置を調整しつつ、入浴者の座部材に対する座位置を微調整するだけで、入浴者の左右方向の広い範囲で水浴びし易くなる。よって、吐水具の吐出位置の調整により使い勝手を良好にしつつ、入浴者の身体の広い範囲での水浴びにより高いリラックス効果を得やすくなる。
【0086】
また、以上の実施形態、変形例により具体化される発明を一般化すると、以下の項目に記載の発明が含まれているともいえる。
(項目)
シャワーヘッドと、
前記シャワーヘッドを保持するシャワーフックと、
前記シャワーフックを上下方向にスライド可能に支持するスライドバーと、
前記シャワーヘッドに水を供給するためのシャワーホースと、を備え、
前記シャワーホースの基端部は、前記シャワーフックのスライド可能範囲の上下方向での中心位置より高位置に配置されていることを特徴とするシャワー装置。
【符号の説明】
【0087】
10…浴槽装置、12…浴槽、16…座部材、18…位置決め構造、18a,18b…位置決め部、20…第1吐水具、22…第2吐水具、24…槽部、24d…脚入れ口、28…載せ面部。
図1
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図12