【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に係るバラスト水処理装置の実施形態について、以下図面を参照しながら説明する。以下に示す実施形態中で示した各種特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。また、各特徴について独立して発明が成立する。
【0018】
1.全体構成
図1〜
図9を用いて、本発明の一実施形態のバラスト水処理装置について説明する。
図1は、本実施形態に係るバラスト水処理装置の構成概略を示す概略図である。
図1に示すように、本実施形態のバラスト水処理装置は、フィルタ2を有するバラスト水濾過装置1と、紫外線を照射して微生物を殺滅処理する紫外線リアクタ50(特許請求の範囲における「微生物殺滅手段」の一例)と、バラスト水を貯留するバラストタンク51とを備える。
【0019】
また、本実施形態に係るバラスト水処理装置は、各構成要素を流通する複数のラインを備え、特にラインL1〜L6を備える。後述の変形例に関しては、更にラインL7を備える。なお、「ライン」とは、流路、経路、管路等の流体の流通が可能なラインの総称である。
【0020】
本明細書において「バラスト水」については、バラストタンク51に導入(流入)される前又はバラストタンク51から排出(流出)された後に拘わらず、また、フィルタ2に導入(流入)される前又はフィルタ2から排出(流出)された後に拘わらず、更には、紫外線リアクタ50に導入(流入)される前又は紫外線リアクタ50から排出(流出)された後に拘わらず、船内に取り込まれた水を全て「バラスト水」と表現し、これは、海水、淡水、汽水等を含む。
【0021】
<バラスト水濾過装置1>
図2は、バラスト水濾過装置1の詳細を示す概略図である。バラスト水濾過装置1は、円筒状のケーシング1aと、ケーシング1a内に収容され内部に流入した海水等の濾過処理前のバラスト水を濾過して外部へ流出させる円筒状のフィルタ2と、フィルタ2をその軸心を中心に回転させるフィルタ回転手段3とを備えている。
【0022】
ケーシング1aは、円筒状に形成され、上部開口部が蓋部10で、下部開口部が底部11で密閉されている。蓋部10には、ケーシング1a内のエアを抜くエア抜き弁12が設けられている。ケーシング1a内に配置された円筒状のフィルタ2は、その上部開口部が上閉止部13で密閉され、下部開口部が下閉止部14及び後述する下部回転軸部材16とで閉止される。これらの構成により、フィルタ2内部が、ケーシング1aとフィルタ2の間に形成されフィルタ2を通過後のバラスト水W2が流出する流出空間27側と隔てられている。
【0023】
フィルタ2にあっては、多数の穴を設けた2枚の金属薄板を円筒形に形成した支持体の間に円筒状に形成した金網などの濾過体を挟んだ構成が好ましいが、多数の穴を設けた金属薄板を円筒形に形成した支持体の外周面に濾過体を設けた構成であってもよい。
【0024】
フィルタ2を回転させるフィルタ回転手段3は、フィルタ2の上閉止部13と下閉止部14に、フィルタ2の軸心位置に軸心方向に突設して設けた上部回転軸部材15と下部回転軸部材16と、上部回転軸部材15を回転させるモータ17とで構成されている。
【0025】
上部回転軸部材15はケーシング1aの蓋部10を貫通し、シーリングされた軸受部材18を介して蓋部10に回転自在に且つ液密に支持され、下部回転軸部材16はケーシング1aの底部11を貫通し、シーリングされた軸受部材19を介して底部11に回転自在に且つ液密に支持されている。
【0026】
下部回転軸部材16はフィルタ2内と連通する管状体となっており、ケーシング1aの底部11からケーシング1aの外に突出する下部回転軸部材16に濾過処理前であって未処理のバラスト水W1をフィルタ2内部に導入する導入口20が接続されている。導入口20には、導入路21が接続されている。導入路21には、開閉弁23が設けられ、開閉弁23の下流側の導入路21には、排水路24が接続され、排水路24には開閉弁25が設けられている。
【0027】
ケーシング1aの側部にはフィルタ2を通過した濾過処理後のバラスト水W2が流出する流出口26が設けられており、導入路21を流れ導入口20から導入されたバラスト水W1は下部回転軸部材16を通ってフィルタ2内に入り、フィルタ2を通過し濾過処理されてケーシング1aとフィルタ2の間に形成される流出空間27に入り、バラスト水W2として流出口26から流出するようになっている。なお、流出口26から流出した濾過処理後のバラスト水W2は、流出水路32を通って紫外線リアクタ50やバラストタンク51等の他の構成要素に流通する。
【0028】
なお、フィルタ2の洗浄(水中洗浄及び空間洗浄)に係る他の構成要素ついては、後に詳述するものとする。
【0029】
<紫外線リアクタ50>
紫外線リアクタ50は、フィルタ2により濾過処理されて得られたバラスト水W2に対して紫外線を照射し、微生物の殺滅処理を行う。当該殺滅処理が行われたバラスト水W2をバラスト水W3と称する。
【0030】
<バラストタンク51>
バラストタンク51は、バラスト水W3が流入するように構成され、これらを貯留する。すなわち、フィルタ2により濾過処理されたバラスト水W2が紫外線リアクタ50によって微生物の殺滅処理がなされバラスト水W3となり、後述のラインL5を介してバラストタンク51に流入し、これが貯留される。
【0031】
2.ライン
続いて、バラスト水処理装置においてバラスト水が流通する各ラインについて説明する。ラインの各所に設けられている蝶印は開閉弁を示し、丸印はポンプを示している。特に説明が必要な開閉弁やポンプにのみ符号を付していることに留意したい。
【0032】
<ラインL1>
図3に太線で示されるように、ラインL1は、船体のシーチェストとバラスト水濾過装置1におけるフィルタ2の一次側とを接続するラインである。換言すると、ラインL1は、一端部からバラスト水W1(主に海水)が導入され、他端部においてバラスト水濾過装置1の導入口20に接続しているラインであって、バラスト水W1がバラスト水濾過装置1におけるフィルタ2の一次側に向けて流通するラインである。ラインL1は、シーチェストから、開閉弁23、開閉弁59、開閉弁61及びポンプ60を介してバラスト水濾過装置1に連通するように構成される。
【0033】
ラインL1上に位置するポンプ60は、ラインL1の一端部からバラスト水W1(主に海水)を汲み上げる。つまり、ポンプ60は、ラインL1を流通するバラスト水W1を圧送する(吸引して加圧し、吐出して送り出す)圧送部として機能することとなる。またラインL1は、開閉弁23、開閉弁59、開閉弁61のうち少なくとも何れかによってバラスト水W1に係る流通のオン/オフや流量を制御可能に構成されている。
【0034】
<ラインL2>
図4に太線で示されるように、ラインL2は、フィルタ2の二次側と紫外線リアクタ50の一次側とを接続するラインである。すなわち、フィルタ2によって濾過処理されたバラスト水W2が、ラインL2を介して紫外線リアクタ50に流通する。またラインL2は、開閉弁62によってバラスト水W2に係る流通のオン/オフや流量を制御可能に構成されている。
【0035】
<ラインL3>
図5に太線で示されるように、ラインL3は、紫外線リアクタ50の二次側とフィルタ2の二次側に設けられたフィルタ洗浄手段6,40とを接続するラインである。すなわち、ラインL3は、紫外線リアクタ50において殺滅処理が施されたバラスト水W3をフィルタ2の洗浄水として使用するために、フィルタ洗浄手段6,40へバラスト水W3を導入するラインである。なお、本実施形態に係るフィルタ洗浄手段6,40は、
図2に示すように、水中洗浄用の洗浄水噴出ノズル6及び空間洗浄用の高圧流体噴出ノズル40とから成る。なお、便宜上両者の名称を異なるものとしたが何れも洗浄水噴出ノズルであることに留意したい。したがって、これらを共通の洗浄水噴出ノズルとして実施してもよい。ここでは、洗浄水噴出ノズル6に流通するラインをラインL3aと称し、高圧流体噴出ノズル40に流通するラインをラインL3bと称するものとする。
【0036】
ラインL3a上に位置する洗浄水供給手段7はポンプであって、洗浄水として洗浄水噴出ノズル6にバラスト水W3を加圧供給する。ラインL3b上に位置する高圧流体供給手段41はポンプであって、高圧流体として高圧流体噴出ノズル40にバラスト水W3を加圧供給する。すなわち、洗浄水供給手段7及び高圧流体供給手段41によってラインL3の一端部からバラスト水W3が汲み上げられる。また、ラインL3は、開閉弁35、開閉弁44、開閉弁63の少なくとも何れかによってバラスト水W3に係る流通のオン/オフや流量を制御可能に構成されている。
【0037】
<ラインL4>
図6に太線で示されるように、ラインL4は、紫外線リアクタ50の二次側と船体の船外排出口とを接続するラインである。すなわちラインL4は、一端部において紫外線リアクタ50に接続しており、他端部からバラスト水W3(貯留処理水、排水)を系外(船外)へ排出するラインである(デバラスト処理)。また、ラインL4は、開閉弁64、開閉弁65の少なくとも何れかによってバラスト水W3に係る流通のオン/オフや流量を制御可能に構成されている。
【0038】
<ラインL5>
図7に太線で示されるように、ラインL5は、紫外線リアクタ50の二次側とバラストタンク51とを接続するラインである。すなわち、ラインL5は、紫外線リアクタ50を介して微生物の殺滅処理がなされたバラスト水W3をバラストタンク51に流通する。また、ラインL5は、開閉弁64、開閉弁68の少なくとも何れかによってバラスト水W3に係る流通のオン/オフや流量を制御可能に構成されている。なお本実施形態において、ラインL5は、ラインL3及びラインL4と一部が重複して構成されているが、これに限定されるものではない。
【0040】
図8の太線で示されるように、ラインL6は、バラストタンク51とフィルタ2の二次側に設けられたフィルタ洗浄手段6,40とを接続するラインである。すなわち、ラインL6は、紫外線リアクタ50において殺滅処理が施されたバラスト水W3であってバラストタンク51に貯留されたバラスト水W3をフィルタ2の洗浄水として使用するために、フィルタ洗浄手段6,40へバラスト水W3を導入するラインである。ここでは、洗浄水噴出ノズル6に流通するラインをラインL6aと称し、高圧流体噴出ノズル40に流通するラインをラインL6bと称するものとする。
【0041】
ラインL6a上に位置する洗浄水供給手段7は、ポンプであって洗浄水噴出ノズル6に洗浄水としてバラスト水W2又はバラスト水W3を加圧供給する。ラインL6b上に位置する高圧流体供給手段41は、ポンプであって高圧流体噴出ノズル40に高圧流体としてバラスト水W3を加圧供給する。すなわち、洗浄水供給手段7及び高圧流体供給手段41によってラインL6を介してバラストタンク51からバラスト水W3が汲み上げられる。また、ラインL6は、開閉弁35、開閉弁44、開閉弁69、開閉弁75の少なくとも何れかによってバラスト水W3に係る流通のオン/オフや流量を制御可能に構成されている。
【0042】
3.フィルタの洗浄
続いて再び
図2を参照しながら、フィルタ2の洗浄について説明する。ところで
図2では、洗浄水噴出ノズル6と高圧流体噴出ノズル40とがケーシング1aにおいて対向するように図示されていて、
図1及び
図3〜
図9においては両方同じ側であるように図示されているが、後者については視認性を考慮したものであることに留意したい。
【0043】
バラスト水濾過装置1において、排出手段5は、複数の吸引ノズル4と接続し、吸引ノズル4で吸引したバラスト水が集合する集合管28と、集合管28に接続し、集合したバラスト水を外部へ排出する排出管29と、排出管29に備えた開閉弁30とで構成される。集合管28は、フィルタ2の軸心に配置され、上端部が閉鎖し、下端部が開口しており、上端部はフィルタ2の上閉止部13の中央に設けられた穴に軸受部材31を介して回転自在に嵌合している。また、集合管28の下端部はフィルタ2の下閉止部14の下部回転軸部材16内を、フィルタ2の回転を妨げないように通り、ケーシング1aの導入口20に固定されて支持されている。集合管28の下端部には吸引したバラスト水を外部へ排出する排出管29が接続されており、排出管29には、濾過運転中は常時開いている開閉弁30が備えられている。
【0044】
集合管28と接続しフィルタ2の内周面に向かって開口する吸引ノズル4は、フィルタ2の軸方向全域から吸引可能であることが好ましいが、その構成は特に限定されるものではない。例えば、吸引ノズル4を、フィルタ2の軸方向に直線状及び/又は周方向に角度を変えて複数配置することができる。周方向に角度を変えて複数配置される吸引ノズル4は、同じ高さに配置しても、或いは高さを変えて配置してもよい。本実施形態では、複数の吸引ノズル4が用いられ、フィルタ2の軸方向に直線状に配置されて集合管28と接続している。そして、上下に配置されている吸引ノズル4の間の未吸引部を無くすため、本実施形態では、フィルタ2の軸方向に2列に配置され、1方の列の吸引ノズル4の間に他方の列の吸引ノズル4が位置している。具体的には、集合管28の左右側に、高さ方向に交互に配置されている。
【0045】
フィルタ2の一次側と二次側の差圧を検出する差圧検出手段8は、フィルタ2内と流出空間27に設けた圧力センサ37,38でフィルタ2の一次側と二次側の圧力を検知し、フィルタ2の一次側と二次側の差圧を検出するようになっている。フィルタ2の一次側と二次側の差圧はフィルタ2の汚れ具合を判断でき、差圧が大きい場合はフィルタ2への異物の堆積量が多くなっていることを示し、差圧が小さい場合はフィルタ2が初期状態に近い状態であることを示している。
【0046】
ここで、水中洗浄及び空間洗浄の何れであっても、本実施形態に係るバラスト水処理装置のフィルタ洗浄方法では、バラスト水W1をフィルタ2で濾過処理してバラスト水W2とし、バラスト水W2に含有される微生物を紫外線リアクタ50によって殺滅処理してバラスト水W3とし、バラスト水W3をフィルタ2に向けて噴出することによって、フィルタ2を洗浄する。
【0047】
ここで、フィルタ2の洗浄に際してはフィルタ2を回転させながら行う。詳述すると、フィルタ2の回転方向に対向する方向に向かって吸引ノズル4の前に洗浄水噴出ノズル6又は高圧流体噴出ノズル40からフィルタ2の外周面に洗浄水としてバラスト水W3を噴出することにより、フィルタ2の一次側に堆積した異物の効率のよい剥離を行うことができる。そして、剥離した直後に吸引ノズル4による吸引が行われるので、異物を効果的に吸引除去することができる。
【0048】
3.1 水中洗浄
水中洗浄は、バラスト水がケーシング1a内(フィルタ2の一次側及び二次側)に満たされた液密状態で行われるフィルタ2の洗浄方法である。液密状態で行われるため、主にバラスト水の処理運転中に行われるものである。
【0049】
水中洗浄に際して、フィルタ2に向かって洗浄水を噴出する洗浄水噴出ノズル6(特許請求の範囲における「フィルタ洗浄手段」の一例)は、ケーシング1aの側部に設けられており、ケーシング1a内に開口している。洗浄水噴出ノズル6は、フィルタ2の軸方向全域に洗浄水を噴出できることが好ましいが、その構成は特に限定されるものではない。例えば、洗浄水噴出ノズル6を、フィルタ2の軸方向に直線状及び/又は周方向に角度を変えて複数配置することができる。周方向に角度を変えて複数配置される洗浄水噴出ノズル6は、同じ高さに配置しても、或いは高さを変えて配置してもよい。
【0050】
本実施形態では、洗浄水噴出ノズル6は、複数配置された各吸引ノズル4と同周上に位置し、且つ、フィルタ2の回転方向に対向する方向に向かって、吸引ノズル4の前に位置するように設けられているが、各吸引ノズル4と対向するそれぞれの位置に設けられていてもよく、又は、フィルタ2の回転方向に対向する方向に向かって、吸引ノズル4の後に位置するように設けられていてもよい。
【0051】
本実施形態では、洗浄水噴出ノズル6に洗浄水を加圧供給する洗浄水供給手段7は、ラインL3に係る
図5においても示すように、フィルタ2で濾過処理され且つ紫外線リアクタ50で微生物の殺滅処理がなされたバラスト水W3を、当該洗浄水として使用する。
【0052】
フィルタ2で濾過処理され且つ紫外線リアクタ50によって微生物が殺滅処理されたバラスト水W3が、
図5に示されるラインL3(その一部に洗浄水供給路33を含む)を通って各洗浄水噴出ノズル6に供給されるようになっている。洗浄水供給路33には、バラスト水W3を各洗浄水噴出ノズル6に圧送するポンプである洗浄水供給手段7と、洗浄水供給手段7の下流側に開閉弁35が設けられている。
【0053】
本発明に係るバラスト水処理装置全体として考えると、本実施形態に係る水中洗浄は、次のようなステップに沿って実施されるものである。
【0054】
[開始]
(ステップS1−1)
シーチェストより船内に流入した未処理のバラスト水W1が、
図3に示されるラインL1を介して、フィルタ2の一次側に導入される。フィルタ2を通ることで、バラスト水W1が濾過処理されてバラスト水W2となる。
【0055】
(ステップS1−2)
ステップS1−1において濾過処理されたバラスト水W2が、フィルタ2の二次側から排出され、
図4に示されるラインL2を介して、紫外線リアクタ50の一次側に導入される。紫外線リアクタ50は、バラスト水W2に紫外線を照射することによって微生物の殺滅処理を行いバラスト水W3とする。
【0056】
(ステップS1−3)
ステップS1−2において微生物の殺滅処理がされたバラスト水W3が、紫外線リアクタ50の二次側から排出され、
図5に示される洗浄水供給手段7を含むラインL3(ラインL3a)を介して、洗浄水噴出ノズル6に導入される。すなわち、洗浄水噴出ノズル6から洗浄水としてバラスト水W3がフィルタ2に向けて噴射される。
[終了]
【0057】
なお、不図示ではあるが、水中洗浄中に使用したバラスト水W3を系外へ排水せずに、再び紫外線リアクタ50に流通させ、ラインL3を介して再び水中洗浄するというように、バラスト水W3を循環させてもよい。バラスト水W3の循環中にはバラスト水の処理が実行されてバラストタンク51にバラスト水W3が貯留される。
【0058】
集合管28と接続する吸引ノズル4は、複数の吸引ノズル4が用いられ、吸引ノズル4の開口部はフィルタ2の内周面に摺動可能に密着した状態で、フィルタ2の軸方向に直線状に配置されて集合管28と接続しており、上下に配置されている吸引ノズル4は、各吸引ノズル4間の未吸引部を無くすため、集合管28の左右側に、高さ方向に交互に配置されているので、フィルタ2の1回の回転でフィルタ2の内周面全域からの吸引が行えることになる。そして、排出管29に備えられた開閉弁30は、運転中は常時開いており、開閉弁30の二次側の圧力は大気圧に解放されているので、集合管28内の圧力がフィルタ2の二次側の圧力よりも低くなり、フィルタ2の二次側にあるバラスト水(処理水)が洗浄汚水となって集合管28内に流れ、排出管29から外部へ排出される。
【0059】
加えて、制御部9は、差圧検出手段8により検出された差圧が所定の差圧P1に達したとき、洗浄水噴出ノズル6から洗浄水を噴出するように制御する。ここでいう所定圧にあっては、フィルタ2への異物の堆積量が吸引ノズル4の吸引では除去しきれないと判断される差圧を所定圧として設定されている。
【0060】
また、フィルタ2に向かって洗浄水を噴出する洗浄水噴出ノズル6は、複数の洗浄水噴出ノズル6が用いられ、フィルタ2の軸方向全域に洗浄水としてバラスト水W3を噴出できるように配置され、複数配置された各吸引ノズル4と同周上に位置し、且つ、フィルタ2の回転方向に対向する方向に向かって、吸引ノズル4の前に位置するように設けられているので、フィルタ2の1回の回転でフィルタ2の外周面全域にバラスト水W3を噴出することになり、フィルタ2の一次側に堆積した異物の効率のよい剥離が行え、そして、剥離した直後に吸引ノズル4による吸引が行われるので洗浄水噴出ノズル6から噴出したバラスト水W3でフィルタ2から剥離した異物が吸引ノズル4により効果的に吸引される。なお、差圧に応じて洗浄水の噴出圧力を調整する制御を行ってもよい。
【0061】
3.2 空間洗浄
空間洗浄は、バラスト水がケーシング1a内から除去された非液密状態で行われるフィルタ2の洗浄方法である。非液密状態で行われ又水中洗浄に比して高精度な洗浄効果が得られるため、主にバラスト水の処理終了後に行われるものである。
【0062】
空間洗浄に際して、フィルタ2の外周面に向かって開口し、フィルタ2に向かって高圧流体を噴出する高圧流体噴出ノズル40がフィルタ2の二次側に設けられる。また、高圧流体噴出ノズル40に高圧流体を供給する高圧流体供給手段41が設けられる。高圧流体噴出ノズル40は、フィルタ2の軸方向全域に噴出可能であることが好ましいが、その構成は特に限定されるものではない。例えば、高圧流体噴出ノズル40を、フィルタ2の軸方向に直線状及び/又は周方向に角度を変えて複数配置することができる。周方向に角度を変えて複数配置される高圧流体噴出ノズル40は、同じ高さに配置しても、或いは高さを変えて配置してもよい。
【0063】
より詳述すると、バラスト水処理運転中、差圧検出手段8により検出された差圧が所定の差圧P2(一般的に上述のP1よりも高く設定することが好ましい。)に達したとき、排水路24の開閉弁25を開き、蓋部10に設けられているエア抜き弁12を開いてケーシング1a内の水を排出し、高圧流体供給手段41でバラスト水W3を高圧流体噴出ノズル40へ供給し、所定時間、フィルタ2を回転させながら高圧流体噴出ノズル40からフィルタ2の外周面に洗浄水を高圧流体として噴出させる。また、空間洗浄は、濾過処理運転終了後、バラスト水処理運転を停止してケーシング1a内のバラスト水を排出し、フィルタ2を回転させながら行うこともできる。
【0064】
本実施形態では、上述の水中洗浄と同様に高圧流体噴出ノズル40が噴出する高圧流体であってフィルタ2の洗浄水は、フィルタ2で濾過処理され且つ紫外線リアクタで微生物殺滅処理がなされたバラスト水W3である。しかし、バラスト水W3を使用しつつも、最終的なすすぎ処理にはバラスト水W3よりもより清浄度の高い清水を用いることが好ましい。そうであっても、すべて清水を使用する場合に比して格段に少ない清水消費量となることに留意したい。
【0065】
本発明に係るバラスト水処理装置全体として考えると、本実施形態に係る空間洗浄は、次のようなステップに沿って実施されるものである。
【0066】
[開始]
(ステップS2−1)
バラスト水処理装置の処理運転中において、
図3に示されるラインL1及び
図7に示されるラインL5を介して、バラスト水W3がバラストタンク51に貯留される。その後、バラスト水処理装置の処理運転を終了し、ケーシング1a内のバラスト水が排出される。
【0067】
(ステップS2−2)
ステップS2−1においてバラストタンク51に貯留されたバラスト水W3が、
図8に示される高圧流体供給手段41を含むラインL6(ラインL6b)を介して、高圧流体噴出ノズル40に導入される。すなわち、高圧流体噴出ノズル40から洗浄水としてバラスト水W3がフィルタに向けて噴射される。
[終了]
【0068】
4.作用効果
以上説明した実施形態によれば次の作用効果を奏することができる。
(イ)本実施形態に係るバラスト水処理装置は、水中洗浄によってフィルタ2を洗浄するにあたり、濾過処理と微生物殺滅処理とが施されたバラスト水W3を洗浄水として使用する。このため、バラスト水W2を洗浄水として使用する従来手法と異なり、水中洗浄に係るラインの内部にバイオフィルムが形成されたり、微生物が繁殖したりする蓋然性を低減することができる。これらバイオフィルムに係る微生物が次回の水中洗浄においてフィルタ2に噴き付けられることもなくなり、より清浄な状態にフィルタ2を保つことができる。
【0069】
(ロ)本実施形態に係るバラスト水処理装置は、空間洗浄によってフィルタ2を洗浄するにあたり、濾過処理と微生物殺滅処理とが施されたバラスト水W3を洗浄水として使用する。このため、生活水や飲料水として使用される貴重な清水の消費量を従来に比して低減することができる。
【0070】
5.変形例
本発明に係るバラスト水処理装置を以下の形態においても実施することができる。
【0071】
第1に、本実施形態に係るバラスト水処理装置は、バラスト水W2に含まれる微生物を殺滅処理する紫外線リアクタ50を有するものであるが、紫外線リアクタ50とともに、又はこれに代えて、次亜塩素酸等の薬剤によって微生物を殺滅処理する薬剤導入部を有するように実施してもよい。かかる場合、デバラスト処理の際には、当該薬剤を中和する中和剤導入部を合わせて備える必要があることに留意したい。
【0072】
第2に、本実施形態に係るバラスト水処理装置は、バラスト水W2に含まれる微生物を殺滅処理する紫外線リアクタ50を有するものであるが、紫外線リアクタ50とともに、又はこれに代えて、バラスト水を電気分解することで塩素を生成させ、その酸化作用によって微生物を殺滅処理する電解装置を有するように実施してもよい。
【0073】
第3に、本実施形態に係るバラスト水処理装置は、バラスト水W2に含まれる微生物を殺滅処理する紫外線リアクタ50を有するものであるが、紫外線リアクタ50とともに、又はこれに代えて、オゾンを生成させ、その酸化作用によって微生物を殺滅処理するオゾン発生装置を有するように実施してもよい。
【0074】
第4に、
図9の太線で示されるラインL7を介して、バラストタンク51に貯留されたバラスト水W3を念のため再度紫外線リアクタ50に流通させ、微生物の殺滅処理を行ってもよい。その後、
図5の太線で示されるラインL3を介してバラスト水W3を空間洗浄又は水中洗浄の洗浄水として使用することができる。
【0075】
<ラインL7>
図9に太線で示されるように、ラインL7は、バラストタンク51と紫外線リアクタ50の一次側とを接続するラインである。すなわち、ラインL7は、バラストタンク51に貯留されたバラスト水W3を再び紫外線リアクタ50に流通する。特に、長時間バラストタンク51に貯留された結果バラスト水W3に微量に含有されていた微生物が再度繁殖してバラスト水W2となっている場合に使用されるラインである。また、ラインL7は、開閉弁66、開閉弁69、開閉弁70、開閉弁71、開閉弁72、開閉弁74の少なくとも何れかによってバラスト水W3に係る流通のオン/オフや流量を制御可能に構成されている。そして、紫外線リアクタ50は、バラスト水W3に対して再び紫外線を照射し、微生物の殺滅処理を行うことができる。再び殺滅処理を施されたバラスト水W3は、ラインL3を介してフィルタ2の洗浄水として利用されてもよいし、ラインL4を介して船外排出口から系外へ排出されてもよい。なお本実施形態において、ラインL7は、ラインL1,L2と一部が重複して構成されているが、これに限定されるものではない。
【0076】
なお、バラストタンク51がバラスト水W3を貯留している場合であれば、かかる方法は水中洗浄として実施してもよい。特に、通常は従来と同様にフィルタ2によって濾過処理されたバラスト水W2を用いて水中洗浄を行い、所定の条件下においてはバラストタンク51に貯留されたバラスト水W3を用いて水中洗浄を行うように実施するという好適な制御が考えられる。
【0077】
例えば、バラストタンク51にはバラストタンク51に貯留されたバラスト水W3の水位を計測する水位計(不図示)が設けられているとする。そして、制御部9は、当該水位計の計測値が所定値未満又は以下の場合には、従来同様バラスト水W1を洗浄水として使用する。一方、当該計測値が所定値以上又はこれを超える場合には、
図8に示されるようにバラストタンク51に貯留されたバラスト水W3をラインL6を介して洗浄水噴出ノズル6から噴出させる。
【0078】
なお、制御部9は、水位計の計測値に代えて水中洗浄におけるバラスト水W2の噴出時間、噴出量、フィルタ2へのバラスト水W1の流入量等の各種パラメータに基づいて、上述の制御を実施してもよい。換言すると、制御部9は、バラスト水W2の噴出時間又は噴出量が基準値未満又は以下の場合には、従来同様バラスト水W1を洗浄水として使用し、当該基準値以上又はこれを超える場合には、バラストタンク51に貯留されたバラスト水W3をラインL6を介して洗浄水噴出ノズル6から噴出させる。或いは、制御部9は、フィルタ2の一次側に流入するバラスト水W1の流入時間又は流入量が基準値未満又は以下の場合には、従来同様バラスト水W1を洗浄水として使用する。一方、当該基準値以上又はこれを超える場合には、
図8に示されるようにバラストタンク51に貯留されたバラスト水W3をラインL6を介して洗浄水噴出ノズル6から噴出させる。
【0079】
もちろん、これらの好適な制御においては、バラストタンク51に貯留されたバラスト水W3を使用する場合に限られず、紫外線リアクタ50の二次側から流出したバラスト水W3をラインL3を介して洗浄水として使用してもよい。
【0080】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明した。しかし、本発明は、上述した実施形態に限定されることなく、種々の形態で実施することができる。特に、圧送部はポンプに制限されず、発明の均等な範囲において開閉弁やポンプの上流下流に係る順序を一部入れ替えたり、新たなライン、開閉弁、ポンプ等を追加してもかまわない。
記濾過処理且つ前記殺滅処理されたバラスト水を前記フィルタに向けて噴出することにより前記フィルタを洗浄するフィルタ洗浄手段とを備える、バラスト水処理装置が提供される。