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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-217668(P2017-217668A)
(43)【公開日】2017年12月14日
(54)【発明の名称】溶接状態の検査方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 11/24 20060101AFI20171117BHJP
   B23K 31/00 20060101ALI20171117BHJP
   B23K 11/16 20060101ALI20171117BHJP
   B23K 11/00 20060101ALI20171117BHJP
【FI】
   B23K11/24 338
   B23K31/00 K
   B23K11/16 101
   B23K11/00 560
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-113632(P2016-113632)
(22)【出願日】2016年6月7日
(71)【出願人】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】三村 和史
(72)【発明者】
【氏名】江川 晃浩
(57)【要約】
【課題】溶接状態の良否判定の精度の低下を抑えられる溶接状態の検査方法を提供する。
【解決手段】金属母材である銅板10a上にめっき層10bを有するバスバー10及び金属母材である銅線20a上にめっき層20bを有するリード20が抵抗溶接された溶接部3の溶接状態の検査方法は、抵抗溶接されたバスバー10及びリード20を互いの各溶接部11,21(溶接部3)から引き剥がす第1の工程と、第1の工程後のバスバー10について、バスバー側溶接部11におけるリード20を第1の工程で引き剥がした後にバスバー10に残る溶接痕の表面状態として、表面の曲線を検出する第2の工程と、第2の工程で検出した表面の曲線を用いて、第1の工程前のバスバー10及びリード20の抵抗溶接の溶接部の溶接状態を良否判定する第3の工程とを含むようにしている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属母材上にめっき層を有する金属部材同士が抵抗溶接された溶接部の溶接状態の検査方法であって、
抵抗溶接された金属部材同士を互いの溶接部から引き剥がす第1の工程と、
前記第1の工程後の金属部材のうち少なくとも一方について、前記溶接部における相手の金属部材が溶接されていた側の表面状態を表す指標となる表面情報を検出する第2の工程と、
前記第2の工程で検出した前記表面情報を用いて、前記第1の工程前の前記金属部材同士の抵抗溶接の溶接部の溶接状態を良否判定する第3の工程と、
を含む溶接状態の検査方法。
【請求項2】
前記表面情報は、前記第1の工程後の前記溶接部における相手の金属部材が溶接されていた側の表面状態として、表面の曲線を検出するものであり、
前記第3の工程では、前記表面情報に基づき、前記めっき層が完全に溶融し切って金属同士が接合される金属接合部位、及び前記めっき層が完全に溶融し切れず、前記金属同士ではなくめっき層同士が接合されるめっき接合部位の少なくとも一方の表面積を算出し、当該表面積を用いて前記溶接状態を良否判定する請求項1に記載の溶接状態の検査方法。
【請求項3】
前記表面情報は、前記第1の工程後の前記溶接部における相手の金属部材が溶接されていた側の表面状態として、表面の曲線を検出するものであり、
前記第3の工程では、前記表面情報に基づき、前記めっき層が完全に溶融し切って金属同士が接合される金属接合部位、及び前記めっき層が完全に溶融し切れず、前記金属同士ではなくめっき層同士が接合されるめっき接合部位の少なくとも一方の二次元上の面積を算出し、当該面積を用いて前記溶接状態を良否判定する請求項1に記載の溶接状態の検査方法。
【請求項4】
前記金属接合部位は、前記溶接部における相手の金属部材により引き千切られた状態の部位、及び前記溶接部における相手の金属部材から引き千切った状態の部位の少なくともいずれかの部位に対応付けられる請求項2又は請求項3の溶接状態の検査方法。
【請求項5】
めっき層を有する前記金属部材は、板状のバスバーと電子部品のリードである請求項1〜請求項4のうちいずれか一項に記載の溶接状態の検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶接状態の検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
酸化による腐食を抑える等の目的で、めっき加工された金属部品同士を溶接する場合、例えば、特許文献1に記載のような抵抗溶接が用いられる。特許文献1には、黄銅等の銅系金属の部品同士を抵抗溶接の一種であるマイクロ抵抗溶接によって、溶接する方法が開示されている。この種の抵抗溶接を用いてめっき加工された金属部品同士を溶接する場合、めっき層が溶融してその下層にある金属同士が溶融接着することによって、当該金属部品同士が接合される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−314353号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
溶接後の金属部品の接合の状態、すなわち溶接状態の良否判定には、溶接後の金属部品を専用の樹脂で固定した後、溶接部を切断し、その断面を研磨して電子顕微鏡等を用いて観察する検査方法が用いられるのが一般的である。この溶接状態の一般的な検査方法では、溶接部の一部の断面について観察した結果を定量評価することによって、溶接状態を良否判定する。
【0005】
これに対して、めっき加工された金属部品同士を上述のような抵抗溶接により溶接すると、めっき層が完全に溶融し切って金属同士が接合される金属接合部位と、めっき層が完全に溶融し切れず、金属同士ではなくめっき層同士が接合される部位であって、金属接合部位と比較して接合の状態を維持する強度が弱い部位であるめっき接合部位とが混在する。そのため、めっき加工された金属部品同士を抵抗溶接により溶接した場合、上述の一般的な検査方法では、金属接合部位とめっき接合部位との溶接部における分布に偏りがあると、溶接状態の良否判定を定量評価しようとしてもその精度が低下してしまう。
【0006】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、溶接状態の良否判定の精度の低下を抑えられる溶接状態の検査方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する溶接状態の検査方法は、金属母材上にめっき層を有する金属部材同士が抵抗溶接された溶接部の溶接状態を検査するものである。この溶接状態の検査方法は、抵抗溶接された金属部材同士を互いの溶接部から引き剥がす第1の工程と、第1の工程後の金属部材のうち少なくとも一方について、溶接部における相手の金属部材が溶接されていた側の表面状態を表す指標となる表面情報を検出する第2の工程と、第2の工程で検出した表面情報を用いて、第1の工程前の金属部材同士の抵抗溶接の溶接部の溶接状態を良否判定する第3の工程とを含むようにしている。
【0008】
上記構成によれば、第1の工程において、抵抗溶接によって溶接した金属部材同士を互いの溶接部から引き剥がすことにより、互いの溶接部の相手の金属部材が溶接されていた側には、上記金属接合部位及び上記めっき接合部位であったことを把握可能な溶接痕が現れる。第2の工程において、溶接痕の表面状態を表面の曲線として検出することにより、上記金属接合部位及び上記めっき接合部位の分布を検出することができる。特に、第2の工程では、溶接痕の全体を検出対象とすることができるので、上記金属接合部位と、上記めっき接合部位との分布に偏りがあったとしても、上記金属接合部位及び上記めっき接合部位を定量的に検出することができる。これにより、第3の工程において、上記金属接合部位と、上記めっき接合部位との分布に偏りがあったとしても、この偏りに左右されることなく溶接状態を良否判定することができる。したがって、溶接状態の良否判定の精度の低下を抑えて定量評価することができ、溶接部の一部についてしか観察されない、上記[発明が解決しようとする課題]で記載した一般的な検査方法と比較して、溶接状態の良否判定の精度を高めることができる。
【0009】
上記溶接状態の検査方法において、例えば、表面情報は、第1の工程後の溶接部における相手の金属部材が溶接されていた側の表面状態として、表面の曲線を検出するものであり、第3の工程では、表面情報に基づき、めっき層が完全に溶融し切って金属同士が接合される金属接合部位、及びめっき層が完全に溶融し切れず、金属同士ではなくめっき層同士が接合されるめっき接合部位の少なくとも一方の表面積を算出し、当該表面積を用いて溶接状態を良否判定するものである。
【0010】
上記構成によれば、全体の表面状態が表面情報として、三次元的に検出されるようになり、上記一般的な検査方法と比較して、金属接合部位及びめっき接合部位を定量的に検出する際の精度を高めることができる。またさらに、溶接状態の良否判定のパラメータとしては、表面積を用いるため、良否判定についても三次元的なパラメータが用いられるようになり、定量評価する場合には有利である。したがって、溶接状態の良否判定の精度の向上を図ることができる。
【0011】
一方、上記溶接状態の検査方法において、表面情報は、第1の工程後の溶接部における相手の金属部材が溶接されていた側の表面状態として、表面の曲線を検出するものであり、第3の工程では、表面情報に基づき、めっき層が完全に溶融し切って金属同士が接合される金属接合部位、及びめっき層が完全に溶融し切れず、金属同士ではなくめっき層同士が接合されるめっき接合部位の少なくとも一方の二次元上の面積を算出し、当該面積を用いて溶接状態を良否判定するようにすることもできる。
【0012】
上記構成によれば、全体の表面状態が表面情報として、三次元的に検出されるようになり、上記一般的な検査方法と比較して、金属接合部位及びめっき接合部位を定量的に検出する際の精度を高めることができる。一方、溶接状態の良否判定のパラメータとしては、二次元上の面積を用いるため、良否判定については二次元的な情報が用いられるようになる。ただし、二次元上の面積は、溶接痕の全体から収集されているため、溶接部の一部についてしか観察されない、上記一般的な検査方法と比較して、溶接部の良否判定の精度を高めることができる。
【0013】
また、溶接状態の検査方法において、金属接合部位は、溶接部における相手の金属部材により引き千切られた状態の部位、及び溶接部における相手の金属部材から引き千切った状態の部位の少なくともいずれかの部位に対応付けられることが望ましい。
【0014】
上記構成によれば、金属接合部位を定量的に検出することができるため、溶接状態の良否判定の精度のさらなる向上を図ることができる。
また、上記溶接状態の検査方法の検査対象として、例えば、めっき層を有する金属部材は、板状のバスバーと電子部品のリードであったりする。
【0015】
この場合、電子部品のリードの線径等に左右される剛性に応じて、抵抗溶接された金属部材同士を互いの溶接部から引き剥がす工程を経ると、電子部品のリードが折れ曲がったりする可能性があれば、表面情報を検出する工程では、バスバーの表面情報を検出すればよい。一方、抵抗溶接された金属部材同士を互いの溶接部から引き剥がす工程を経ても、電子部品のリードが折れ曲がったりする可能性がなければ、表面情報を検出する工程では、バスバー及び電子部品のリードの何れの表面情報を検出してもよい。このように、上記溶接状態の検査方法では、検査対象の構成に応じた検査を実施することができるようになり、検査の適用の自由度を高めることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、溶接状態の良否判定の精度の低下を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】バスバーとリードとの抵抗溶接の態様を示す図。
図2】バスバーとリードとを抵抗溶接した後の状態を示す図。
図3】溶接状態を良否判定する検査工程について第1の工程を示す図。
図4】溶接状態を良否判定する検査工程について第2の工程を示す図。
図5】引き剥がした後のバスバーの表面状態を示す写真。
図6】溶接状態を良否判定する検査工程について第3の工程を示す図であって、特に第1実施形態において表面の曲線の検出結果、及び表面積を算出する方法を示す図。
図7】第2実施形態において表面の曲線の検出結果、及び二値化する方法を示す図。
図8】二値化した結果を示す図。
図9】バスバーとリードとの抵抗溶接の他の態様を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(第1実施形態)
以下、溶接状態の検査方法の第1実施形態を説明する。本実施形態の溶接状態の検査方法は、めっき加工された金属部品同士を抵抗溶接した場合における溶接状態を良否判定するための方法である。めっき加工された金属部品は、電気機器等に実装される複数の部品のうち、例えば、板状のバスバーや、コンデンサ等のリードのことである。
【0019】
図1及び図2に示すように、板状のバスバー10と、電子部品のリード20とは、それぞれの伸長方向が交差するように、抵抗溶接により電気的に接続される。この抵抗溶接は、所謂、クロスワイヤ溶接である。
【0020】
バスバー10は、導電性を有する金属である銅からなる銅板10aを金属母材とし、酸化による腐食を抑える等の目的で銅板10a上に錫のめっき層10bを有するようにめっき加工されている。同じくリード20は、銅線20aを金属母材とし、銅線20a上に錫のめっき層20bを有するようにめっき加工されている。なお、銅板10a及び銅線20aは、銅のなかでも略同一の銅の含有率を有するものである。また、リード20の線径は、バスバー10の板幅及び板厚よりも小さく設定されている。
【0021】
図1に示すように、抵抗溶接では、互いの長手方向を交差(クロス)させた溶接対象であるバスバー10及びリード20を、図示しない電源に接続される溶接用電極1,2の間に挟み込み、バスバー10及びリード20の接合方向に加圧しながら溶接用電極1,2に電流を流してバスバー10及びリード20を溶融させることにより接合させる。
【0022】
図2に示すように、抵抗溶接後のバスバー10及びリード20は、溶接用電極1,2の間に形成される溶接部3を介して互いに接合されている。溶接部3は、バスバー10の銅板10a及びめっき層10bが溶融してなるバスバー側溶接部11と、リード20の銅線20a及びめっき層20bが溶融してなるリード側溶接部21とからなる。
【0023】
溶接部3(各溶接部11,21)には、バスバー10及びリード20のめっき層10b,20bが完全に溶融し切って、金属母材である銅板10a及び銅線20aの金属同士が接合される金属接合部位と、バスバー10及びリード20のめっき層10b,20bが完全に溶融し切れず、上記金属同士ではなくめっき層10b,20b同士が接合されるめっき接合部位とが混在している。なお、めっき接合部位は、バスバー10及びリード20のめっき層10b,20bの間に接合し切っていない境界を有するものであり、金属接合部位と比較して接合の状態を維持する強度(以下、「接合強度」という)が弱い部位である。
【0024】
そして、バスバー10及びリード20の抵抗溶接の溶接状態は、接合強度として所望の強度を確保できているか否かにより良否判定される。抵抗溶接後の溶接状態の接合強度は、溶接部3(図2中、仮想線Aで示す領域)において、金属接合部位がどれだけ存在しているか定量的に検出することによって、定量評価することができる。
【0025】
以下、バスバー10及びリード20の抵抗溶接の溶接状態を良否判定する検査工程(検査方法)について、詳しく説明する。この検査工程には、大きく3つの工程がある。
図3に示すように、まず検査工程の第1の工程では、抵抗溶接されたバスバー10及びリード20を互いの各溶接部11,21から引き剥がす。このとき、バスバー10(バスバー側溶接部11)を固定した状態で、当該バスバー10からリード20(リード側溶接部21)を引き剥がす。
【0026】
図4に示すように、検査工程の第2の工程では、バスバー側溶接部11(溶接部3)における相手の金属部材であるリード20を第1の工程で引き剥がした後にバスバー10に残る溶接痕4の表面状態を表す指標として、表面の曲線Csを検出(観察)する。本実施形態において、表面の曲線Csは表面情報の一例である。
【0027】
なお、バスバー10の板幅及び板厚と比較して線径が小さいリード20は、バスバー10と比較して剛性が低く、溶接状態の良否に関係なく、第1の工程を経ることにより折れ曲がる等、変形する可能性が高い。そのため、本実施形態において、第2の工程では、第1の工程を経てもリード20と比較して、折れ曲がる等、変形し難いバスバー10における溶接痕4の表面状態を観察することとしている。
【0028】
表面の曲線Csは、3Dレーザー顕微鏡30を用いて、バスバー10のバスバー側溶接部11の全体(図4中、仮想線Aで示す領域)について、表面の凹凸を測定することによって検出される、所謂、粗さ曲線等の輪郭曲線である。3Dレーザー顕微鏡30は、所謂、共焦点レーザー顕微鏡であり、レーザー(光線)の焦点を測定対象(本実施形態では、バスバー側溶接部11)の様々な場所に合わせて、三次元画像を構築することができる。3Dレーザー顕微鏡30は、内部に搭載するマイコン等の演算処理部30aによって、表面の曲線Csに基づいてデータを構築し、図示しない液晶モニタ等の画像表示装置に溶接痕4の全体についての三次元画像を画像表示することができる。
【0029】
例えば、図5において、実際の状態を写真で示すように、バスバー10上に残る溶接痕4には、溶接の際の加圧によりリード20がバスバー10に一部めり込んで接合されていた部位であって、他の部位と比較して隆起している隆起部4aと、隣り合う隆起部4aの間に形成される、リード20の円柱状外面の一部の輪郭に沿った略半円形の溝状をなす溝部4bとが現れる。ここで現れる溝部4bの表面は、ランダムな凹凸を有しており、[特許請求の範囲]で記載する「表面」とは、特にこの溝部4bの表面のことを言う。溝部4bの表面のランダムな凹凸は、色の濃淡によって、金属接合部位の痕と、めっき接合部位の痕とを示している。
【0030】
溝部4bの表面のうち、他の部位と比較して色が濃い部位は、めっき接合部位の痕であって、バスバー10のめっき層10bが現れているめっき層痕5である。溝部4bの表面のうち、めっき層痕5と比較して色が淡い(薄い)部位は、金属接合部位の痕であって、バスバー10の銅板10a又はリード20の銅線20aの金属母材が現れている金属痕6である。
【0031】
金属痕6には、めっき層痕5に対して深さを有する凹状のディンプル6aと、めっき層痕5に対して高さを有する凸状の山部6bとが混在している。ディンプル6aは、第1の工程を経ることによって、バスバー10の銅板10aの一部がリード20により引き千切られた状態(取り去られた状態)の部位である。山部6bは、第1の工程を経ることによって、バスバー10がリード20の銅線20aの一部を引き千切った状態(取り込んだ状態)の部位である。
【0032】
なお、ディンプル6a及び山部6bとは、金属母材の材質の組み合わせに応じた割合で現れる。本実施形態において、金属母材の材質の組み合わせは、略同一の銅の含有率を有する銅であることから、バスバー10の溝部4bの表面にディンプル6a及び山部6bが略均等割合で現れる。これは、リード20においても同様であり、第1の工程でバスバー10から引き剥がされたリード20について、リード側溶接部21(溶接部3)における相手の金属部材であるバスバー10が溶接されていた側には、ディンプル及び山部が略均等割合で現れる。この場合のディンプルは、リード20の銅線20aの一部がバスバー10により引き千切られた状態の部位である。また、この場合の山部は、リード20がバスバー10の銅板10aの一部を引き千切った状態の部位である。
【0033】
次に、検査工程の第3の工程では、第2の工程で検出した表面の曲線Csを用いて、第1の工程前のバスバー10及びリード20の抵抗溶接の溶接部3(各溶接部11,21)の溶接状態を良否判定する。この良否判定は、3Dレーザー顕微鏡30の演算処理部30aにより判定される。演算処理部30aは、表面の曲線Csの検出結果を用いて、バスバー10の溝部4bの表面に現れるディンプル6aの表面積Saを算出し、当該表面積Saが閾値Sathを超えているか否かを判定する。閾値Sathは、バスバー10及びリード20の材質やこれらが実装される電気機器等の種類やその使用環境に応じて、必要な接合強度を確保できる範囲の定量的な値として設定される。
【0034】
例えば、図6に示すように、演算処理部30aは、バスバー10及びリード20が接合されていた境界として、表面の曲線Csのための平均線(曲線)である基準曲線Csb(図6中、破線で示す)を設定する。なお、基準曲線Csbは、リード20の一部の輪郭に沿った全体として略半円形をなし、表面の曲線Csのうち、比較的凹凸が少ない部位、すなわちめっき層痕5に概ね重なる。そして、演算処理部30aは、設定した基準曲線Csbの接線方向に直交する方向であって、基準曲線Csbに対して基準値(図6中、一点鎖線で示す)以上の深さを有する部位をディンプル6aとして対応付けする。本実施形態において、基準値は、バスバー10及びリード20の材質等に応じて、ディンプルであると規定することができる範囲の定量的な値(例えば、10μm)として設定される。
【0035】
続いて、演算処理部30aは、ディンプル6aとして対応付けした部位の表面積Sa(図6中、太線で示す部位)を算出する。その後、演算処理部30aは、表面積Saと閾値Sathとを比較し、表面積Saが閾値Sathを超えている場合に溶接状態の良否判定を「良」、すなわち必要な接合強度を確保できているとして判定する。一方、演算処理部30aは、表面積Saと閾値Sathとを比較し、表面積Saが閾値Sathを超えていない場合に溶接状態の良否判定を「否」、すなわち必要な接合強度を確保できないとして判定する。なお、ここでは、図6を用いて説明をしたが、演算処理部30aは、溶接痕4の全体について三次元的に表面積Saを算出し、溶接痕4の全体について三次元的に第1の工程前のバスバー10及びリード20の抵抗溶接の溶接部3(各溶接部11,21)の溶接状態を良否判定する。
【0036】
以上に説明した本実施形態によれば、以下に示す作用及び効果を奏する。
(1)第1の工程において、抵抗溶接によって溶接したバスバー10及びリード20を互いの各溶接部11,21から引き剥がすことにより、バスバー側溶接部11のリード20が溶接されていた側には、上記金属接合部位及び上記めっき接合部位であったことを把握可能な溶接痕4が現れる。第2の工程において、バスバー10の溶接痕4の表面状態を表面の曲線Csとして検出することにより、上記金属接合部位及び上記めっき接合部位の分布を検出することができる。特に、第2の工程では、バスバー10の溶接痕4の全体を検出対象としているので、上記金属接合部位と、上記めっき接合部位との分布に偏りがあったとしても、上記金属接合部位及び上記めっき接合部位を定量的に検出することができる。これにより、第3の工程において、上記金属接合部位と、上記めっき接合部位との分布に偏りがあったとしても、この偏りに左右されることなく溶接状態を良否判定することができる。したがって、溶接状態の良否判定の精度の低下を抑えて定量評価することができ、溶接部3の一部についてしか観察されない、上記[発明が解決しようとする課題]で記載した一般的な検査方法と比較して、溶接状態の良否判定の精度を高めることができる。
【0037】
なお、本実施形態の溶接状態の検査方法では、上記一般的な検査方法では必要であった、溶接後のバスバー10及びリード20を専用の樹脂で固定し、さらに溶接部3を切断してその断面を研磨する等の工程を削減することができ、工程の数及び手間を削減する点でも有利である。
【0038】
(2)バスバー10の溶接痕4の全体の表面状態を表面の曲線Csとして、3Dレーザー顕微鏡30によって、三次元的に検出することで、金属接合部位及びめっき接合部位を定量的に検出する際の精度を高めることができる。またさらに、溶接状態の良否判定のパラメータとしては、表面積Saを用いるため、良否判定についても三次元的なパラメータが用いられるようになり、平均化等して算出されるパラメータを用いる場合と比較して、定量評価する場合には有利である。したがって、溶接状態の良否判定の精度の向上を図ることができる。
【0039】
(3)本実施形態では、バスバー側溶接部11におけるリード20により引き千切られた状態の部位に対応付けて金属接合部位を検出しているので、金属接合部位を定量的に検出することができ、溶接状態の良否判定の精度のさらなる向上を図ることができる。
【0040】
(4)本実施形態では、リード20について、線径が比較的大きく、剛性がある程度確保されている場合、バスバー10の溶接痕4に替えて、リード20の溶接痕の表面状態を検出することによって、溶接状態を良否判定することができる。このように、本実施形態の溶接状態の検査方法では、検査対象の構成に応じた検査を実施することができるようになり、検査の適用の自由度を高めることができる。
【0041】
(第2実施形態)
次に、溶接状態の検査方法の第2実施形態について説明する。なお、既に説明した実施形態と同一構成などは、同一の符号を付すなどして、その重複する説明を省略する。
【0042】
本実施形態において、表面の曲線Csは、3Dデジタルマイクロスコープ40を用いて、バスバー10のバスバー側溶接部11の全体(図4中、仮想線Aで示す領域)について、表面の凹凸を測定することによって検出される。3Dデジタルマイクロスコープ40は、CCDカメラと高解像度のレンズとを用いて、レンズの焦点を測定対象(本実施形態では、バスバー側溶接部11)の様々な場所に合わせて、それぞれの画像を結合させて三次元画像を構築することができる。なお、3Dデジタルマイクロスコープ40を用いる場合、3Dレーザー顕微鏡30と比較して、構築される三次元画像の精度は低いが設備の規模やコストは抑えることができる。3Dデジタルマイクロスコープ40は、内部に搭載するマイコン等の演算処理部40aによって、表面の曲線Csに基づいてデータを構築し、図示しない液晶モニタ等の画像表示装置に溶接痕4全体についての三次元画像を画像表示することができる。
【0043】
そして、本実施形態の検査工程の第3の工程では、第2の工程で検出した表面の曲線Csを用いて、第1の工程前のバスバー10及びリード20の抵抗溶接の溶接部3(各溶接部11,21)の溶接状態を良否判定する。この良否判定は、3Dデジタルマイクロスコープ40の演算処理部40aにより判定される。演算処理部40aは、表面の曲線Csの検出結果を用いて、バスバー10の溝部4bの表面に現れるディンプル6aの二次元上の面積の総和Stを算出し、当該面積の総和Stが閾値Stthを超えているか否かを判定する。閾値Stthは、バスバー10及びリード20の材質やこれらが実装される電気機器等の種類やその使用環境に応じて、必要な接合強度を確保できる範囲の定量的な値として設定される。
【0044】
例えば、図7に示すように、図4のVI−VI線上における溝部4bの表面の曲線Csが検出される場合、第1実施形態と同様、基準曲線Csb(図7中、破線で示す)に対して基準値(図7中、一点鎖線で示す)以上の深さを有する部位をディンプル6aとして対応付けする。なお、図7では、説明の便宜上、表面の曲線Csとして図6と同一曲線を用いている。
【0045】
続いて、図7に示すように、演算処理部40aは、ディンプル6aとして対応付けした部位を、3Dデジタルマイクロスコープ40に対向する対向面Fに投影した部位の面積の総和St(図7中、太線で示す部位を投影した部位)を算出する。
【0046】
例えば、図8に示すように、二次元上の対向面Fにおいて、ディンプル6aに対応付けした部位(図8中、濃い部位)と、ディンプル6aに対応付けした以外の部位(図8中、淡い(薄い)部位)とが二値化して表され、当該二値のうち、濃い部位の面積の総和Stが演算処理部40aにより算出される。
【0047】
その後、演算処理部40aは、面積の総和Stと閾値Stthとを比較し、面積の総和Stが閾値Stthを超えている場合に溶接状態の良否判定を「良」、すなわち必要な接合強度を確保できているとして判定する。一方、演算処理部40aは、面積の総和Stと閾値Stthとを比較し、面積の総和Stが閾値Stthを超えていない場合に溶接状態の良否判定を「否」、すなわち必要な接合強度を確保できないとして判定する。
【0048】
以上に説明した本実施形態によれば、上記第1実施形態の(1)、(3)及び(4)の作用及び効果に加えて、以下の作用及び効果を得ることができる。
(5)溶接痕4の表面状態を表面の曲線Csとして、3Dデジタルマイクロスコープ40によって、三次元的に検出することで、上記一般的な検査方法と比較して、金属接合部位及びめっき接合部位を定量的に検出する際の精度を高めることができる。一方、溶接状態の良否判定のパラメータとしては、面積の総和Stを用いるため、良否判定については二次元的な情報が用いられるようになる。ただし、面積の総和Stは、溶接部3(溶接痕4)の全体から収集されているため、溶接部の一部についてしか観察されない、上記一般的な検査方法と比較して、溶接部の良否判定の精度を高めることができる。
【0049】
なお、上記各実施形態は、以下の形態にて実施することもできる。
・第1実施形態では、表面積Saの替わりに、表面の曲線Csの表面粗さとして、例えば、算術平均粗さRaや十点平均粗さRzを用いて、溶接状態を良否判定するようにしたりもできる。この場合、溶接痕4の複数の断面部位について、図6で示したような表面の曲線Csを検出し、それぞれの表面粗さを算出し、これらを用いて溶接状態を良否判定するようにすればよい。その他、良否判定の方法としては、めっき層痕5と、金属痕6(ディンプル6a及び山部6bのいずれかを少なくとも含む)の比率を用いるようにしてもよい。いずれの場合であっても、上記一般的な検査方法と比較して、溶接部の良否判定の精度を高めることができる。
【0050】
・第1実施形態では、表面の曲線Csを検出する場合、触針式の検出装置を用いるようにしたり、溶接状態を良否判定する精度によっては上記第2実施形態と同様、3Dデジタルマイクロスコープ40を用いたりしてもよい。
【0051】
・第2実施形態では、演算処理部40aが面積の総和Stを算出する替わりに、面積の総和Stを人為的に算出するようにしてもよい。この場合、演算処理部40aは、図8で示したように、二値化した結果を上記画像表示装置に画像表示する等するようにすればよい。その他、良否判定の方法としては、単位面積当たりの面積の総和等、ディンプル6aの分布を統計的に分析するようにしてもよい。この場合であっても、溶接部3(溶接痕4)の全体から収集される情報を用いていれば、上記一般的な検査方法と比較して、溶接部の良否判定の精度を高めることができる。
【0052】
・第2実施形態では、表面の曲線Csを検出する場合、溶接状態を良否判定する精度が許容される範囲で検出精度の異なる3Dデジタルマイクロスコープを用いてもよい。
・各実施形態は、図9に示すように、バスバー10に予めプレス等によって、プロジェクション(突起)10cを設けておき、このプロジェクション10cに対してリード20を抵抗溶接する、所謂、プロジェクション溶接の溶接状態を良否判定するのに用いることもできる。
【0053】
・各実施形態では、ディンプル6aに対応付けする部位に替えて、山部6bに対応付けする部位の表面積Saや面積の総和Stを算出することによって、溶接状態を良否判定するようにしてもよい。この場合であっても、表面積Saや面積の総和Stは、溶接部3(溶接痕4)の全体から収集されているため、上記一般的な検査方法と比較して、溶接部の良否判定の精度を高めることができる。
【0054】
・各実施形態では、比較的凹凸が少ない部位を仮想的に延ばした曲線に基づき、基準曲線Csbを設定するようにしてもよい。
・各実施形態は、例えば、上記第2実施形態の溶接状態の検査方法で良否判定した結果、面積の総和Stが閾値付近であれば、さらに上記第1実施形態の検査方法で良否判定する等、互いに組み合わせて用いるようにしても効果的である。
【0055】
・各実施形態では、バスバー10及びリード20を抵抗溶接するものについて具体化したが、これに限られない。例えば、電子部品のリード同士を抵抗溶接したり、バスバーをハウジングに抵抗溶接したりする等、金属同士を抵抗溶接する場合に適用することができる。
【0056】
・各変形例は、互いに組み合わせて適用してもよく、例えば、上記図9で示したインジェクション溶接する構成と、その他の変形例の構成とは、互いに組み合わせて適用してもよい。
【符号の説明】
【0057】
1,2…溶接用電極、3…溶接部、4…溶接痕、4a…隆起部、4b…溝部、5…めっき層痕、6…金属痕、6a…ディンプル、6b…山部、10…バスバー、10a…銅板、10b…めっき層、11…バスバー側溶接部、20…リード、20a…銅線、20b…めっき層、21…リード側溶接部、30…3Dレーザー顕微鏡、30a…演算処理部、40…3Dデジタルマイクロスコープ、40a…演算処理部、Cs…表面の曲線、Csb…基準曲線、Sa…表面積、Sath…閾値、St…面積の総和、Stth…閾値。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9