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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-218342(P2017-218342A)
(43)【公開日】2017年12月14日
(54)【発明の名称】ハニカム構造体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 41/85 20060101AFI20171117BHJP
   B28B 11/08 20060101ALI20171117BHJP
   F28F 21/04 20060101ALN20171117BHJP
【FI】
   C04B41/85 C
   B28B11/08
   F28F21/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-112741(P2016-112741)
(22)【出願日】2016年6月6日
(71)【出願人】
【識別番号】000000158
【氏名又は名称】イビデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】古賀 祥啓
【テーマコード(参考)】
4G055
【Fターム(参考)】
4G055AA08
4G055AA10
4G055AB03
4G055AC10
4G055BA43
4G055BA73
4G055BA83
(57)【要約】      (修正有)
【課題】製造コストを抑制することのできるハニカム構造体の製造方法を提供する。
【解決手段】セラミック粒子、有機バインダー、及び分散媒を含有する混合物を成形して成形体を得る成形工程と、成形体に含まれる有機バインダーを除去して脱脂体を得る脱脂工程と、脱脂体の周壁11及び区画壁12各壁の内部に金属ケイ素を含浸させる含浸工程とを有するハニカム構造体10の製造方法において、前記セラミック粒子は、炭化ケイ素からなる粒子であり、含浸工程を、不活性ガス雰囲気下又は真空下で、1400〜1900℃の温度にて行うハニカム構造体の製造方法。含浸工程において、脱脂体の気孔容積の1.00〜1.05倍の体積に相当する量の金属ケイ素を用い、前記金属ケイ素が純度98%未満であり、脱脂体に対して金属ケイ素の塊を接触した状態で、加熱する、ハニカム構造体の製造方法。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の周壁と、前記周壁の内部を前記周壁の軸方向に延びる複数のセルに区画する断面ハニカム形状の区画壁とを備えるハニカム構造体の製造方法であって、
セラミック粒子、有機バインダー、及び分散媒を含有する混合物を成形して成形体を得る成形工程と、
前記成形体に含まれる前記有機バインダーを除去して脱脂体を得る脱脂工程と、
前記脱脂体の前記周壁及び前記区画壁の内部に金属ケイ素を含浸させる含浸工程とを有し、
前記含浸工程は、不活性ガス雰囲気下又は真空下で、1400〜1900℃にて行うことを特徴とするハニカム構造体の製造方法。
【請求項2】
前記セラミック粒子は、炭化ケイ素からなる粒子であることを特徴とする請求項1に記載のハニカム構造体の製造方法。
【請求項3】
前記含浸工程において、前記脱脂体の気孔容積の1.00〜1.05倍の体積に相当する量の金属ケイ素を用いることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のハニカム構造体の製造方法。
【請求項4】
前記含浸工程において、純度98%未満の金属ケイ素を用いることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のハニカム構造体の製造方法。
【請求項5】
前記含浸工程において、前記脱脂体に対して金属ケイ素の塊を接触させた状態で加熱することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のハニカム構造体の製造方法。
【請求項6】
前記成形工程は、押し出し成形により前記成形体を得る工程であり、
前記含浸工程において、押し出し成型時における押し出し方向が上下方向となるように前記脱脂体を設置するとともに、前記脱脂体の上に金属ケイ素の塊を載せた状態として加熱することを特徴とする請求項5に記載のハニカム構造体の製造方法。
【請求項7】
前記有機バインダーが焼失する温度に加熱された加工具を前記成形体に接触させることによって、前記成形体の一部を除去する加工工程を有し、
前記加工工程の後に前記脱脂工程を行うことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のハニカム構造体の製造方法。
【請求項8】
前記ハニカム構造体は、一部の前記セル同士を連通するとともに一端が前記周壁に開口する連通部を備えるものであり、
前記加工工程は、前記連通部を形成する工程であることを特徴とする請求項7に記載のハニカム構造体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハニカム構造体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、蓄熱体等の熱交換器として用いられるハニカム構造体として、金属ケイ素が含浸された炭化ケイ素質のハニカム構造体が開示されている。特許文献1において、上記ハニカム構造体は、以下のように製造されている。
【0003】
まず、炭化ケイ素粉末、カーボン粉末、有機バインダー、及び水又は有機溶剤を含有する成形用原料を混練し押し出し可能な坏土にした後、ハニカム形状に押出成形する。次いで、得られた成形体を十分に乾燥させた後、金属ケイ素雰囲気下で、減圧の不活性ガス雰囲気又は真空中に置き、内部へ金属ケイ素を含浸させつつ成形体を焼成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−94268号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示される上記の製造方法の場合、焼成時において、成形体を構成する炭化ケイ素粉末を焼結させるに十分な温度である2000℃程度の高温環境下にハニカム構造体を曝す必要があるが、上記高温環境を用意することは、設備やエネルギー等の観点において、製造コストを増大させる大きな要因となっている。
【0006】
この発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、製造コストを抑制することのできるハニカム構造体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するためのハニカム構造体の製造方法は、筒状の周壁と、前記周壁の内部を前記周壁の軸方向に延びる複数のセルに区画する断面ハニカム形状の区画壁とを備えるハニカム構造体の製造方法であって、セラミック粒子、有機バインダー、及び分散媒を含有する混合物を成形して成形体を得る成形工程と、前記成形体に含まれる前記有機バインダーを除去して脱脂体を得る脱脂工程と、前記脱脂体の前記周壁及び前記区画壁の内部に金属ケイ素を含浸させる含浸工程とを有し、前記含浸工程は、不活性ガス雰囲気下又は真空下で、1400〜1900℃にて行うことを特徴とする。
【0008】
上記構成によれば、含浸工程において、セラミック粒子を焼結させるための2000℃以上の高温環境を用意する必要がなく、設備やエネルギー等の観点において、製造コストを抑制することができる。さらに、含浸工程における加熱温度を1900℃以下の温度とすることにより、脱脂体の熱膨張が抑制されて、熱膨張に起因する破損が生じ難くなる。したがって、製造時に熱衝撃による破損が生じ難い製造方法となる。
【0009】
また、上記構成の製造方法により得られたハニカム構造体は、その構成成分であるセラミック粒子の殆どが焼結されずに、それぞれ独立して存在する未焼結のハニカム構造体となる。この未焼結のハニカム構造体は、ヤング率が高く、変形し難い性質を有しており、熱交換器として有用である。
【0010】
上記ハニカム構造体の製造方法において、前記セラミック粒子は、炭化ケイ素からなる粒子であることが好ましい。
炭化ケイ素は、熱伝導率が高いため、熱交換器として有用である。さらに、炭化ケイ素は、金属ケイ素との熱膨張係数が近いため、熱応力に起因する破損が生じ難いハニカム構造体を製造することができる。
【0011】
上記ハニカム構造体の製造方法において、前記含浸工程においては、前記脱脂体の気孔容積の1.00〜1.05倍の体積に相当する量の金属ケイ素を用いることが好ましい。
上記構成によれば、ハニカム構造体の各壁の気孔率を0%に近づけることができる。また、1.05倍以下にすることで、含浸される金属ケイ素によりハニカム構造体のセルが塞がれてしまうことを抑制できるとともに、製造コストを抑制することができる。
【0012】
上記ハニカム構造体の製造方法において、前記含浸工程においては、純度98%未満の金属ケイ素を用いることが好ましい。
低純度の金属ケイ素は、その融点が低いことから、低純度の金属ケイ素を用いることにより、含浸工程に要する加熱温度を低く抑えることができる。よって、製造コストを抑制することができる。
【0013】
上記ハニカム構造体の製造方法において、前記含浸工程においては、前記脱脂体に対して金属ケイ素の塊を接触させた状態で加熱することが好ましい。
上記構成によれば、特許文献1のような金属ケイ素雰囲気の環境を用意する必要がないため、製造コストを抑制することができる。
【0014】
上記ハニカム構造体の製造方法において、前記成形工程は、押し出し成形により前記成形体を得る工程であり、前記含浸工程において、押し出し成型時における押し出し方向が上下方向となるように前記脱脂体を設置するとともに、前記脱脂体の上に金属ケイ素の塊を載せた状態として加熱することが好ましい。
【0015】
上記構成によれば、溶融した金属ケイ素が脱脂体の各壁をつたって下方側へと流れる作用を利用することで、効率的に金属ケイ素を含浸させることができる。また、上記押し出し方向を上下方向として脱脂体を設置することによって、含浸工程時に脱脂体に作用する荷重(脱脂体の自重や金属ケイ素の塊の重量)に対して、脱脂体の形状を維持することが容易となる。
【0016】
上記ハニカム構造体の製造方法において、前記有機バインダーが焼失する温度に加熱された加工具を前記成形体に接触させることによって、前記成形体の一部を除去する加工工程を有し、前記加工工程の後に前記脱脂工程を行うことが好ましい。
【0017】
上記ハニカム構造体の製造方法において、前記ハニカム構造体は、一部の前記セル同士を連通するとともに一端が前記周壁に開口する連通部を備えるものであり、前記加工工程は、前記連通部を形成する工程であることが好ましい。
【0018】
上記各構成によれば、加工具に接触した部分の有機バインダーが焼失するため、加工具を接触させた際の抵抗が小さく、加工具が接触した部分の周辺部分に変形や破壊が生じ難い。また、発生する加工屑の量が減少する。
【発明の効果】
【0019】
本発明のハニカム構造体の製造方法によれば、製造コストを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】ハニカム構造体の斜視図。
図2図1の2−2線端面図。
図3図1の3−3線端面図。
図4】成形工程の説明図。
図5】加工工程(第1加工)の説明図。
図6】加工工程(第2加工)の説明図。
図7】加工工程(第3加工)の説明図。
図8】脱脂工程の説明図。
図9】含浸工程の説明図。
図10】加工工程(第2加工)の説明図。
図11】(a)、(b)は含浸工程の説明図。
図12】未焼結のハニカム構造体の顕微鏡写真。
図13】焼結ハニカム構造体の顕微鏡写真。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一実施形態を説明する。
まず、熱交換器に用いられるハニカム構造体の一例について説明する。
図1に示すように、ハニカム構造体10は、筒状の周壁11と、周壁11の内部を周壁11の軸方向に延びる複数のセルに区画する断面ハニカム形状の区画壁12と備えている。周壁11の両端部には、径方向外方に突出する環状のリブ13がそれぞれ設けられている。
【0022】
図1〜3に示すように、区画壁12により区画されたセルSは、その両端部が共に開放された第1セルS1と、その両端部が共に封止された第2セルS2との二種類のセルから構成されている。図1に示すように、第1方向(図1の上下方向)に並ぶ各セルSは全て同種のセルとなっている。また、第1方向に直交する第2方向(図1の紙面手前奥方向)において隣り合う各セルSは、互いに異なる種類のセルとなっている。
【0023】
図1及び図3に示すように、ハニカム構造体10において、第1方向に並ぶ第2セルS2により構成される部分(第2セルS2からなるセル列)のそれぞれには、第1方向に延びるように形成されて、第1方向に隣接する第2セルS2同士を連通する第1連通部14a及び第2連通部14bが設けられている。
【0024】
第1連通部14aは、ハニカム構造体10の第1端部側に設けられている。第1連通部14aにおける第1方向の一方側(図3の上側)の端部は、周壁11に開口するとともに、同他方側(図3の下側)の端部は、第1方向において最も他方側に位置する第2セルS2にまで達している。
【0025】
第2連通部14bは、ハニカム構造体10の第2端部側に設けられている。第2連通部14bにおける第1方向の他方側(図3の下側)の端部は、周壁11に開口するとともに、同一方側(図3の上側)の端部は、第1方向において最も一方側に位置する第2セルS2にまで達している。
【0026】
したがって、ハニカム構造体10の内部には、第1セルS1により構成され、ハニカム構造体10の軸方向両端部を流入口又は流出口とする第1流路と、第2セルS2により構成され、ハニカム構造体10の周壁11に形成された、第1連通部14a及び第2連通部14bの各開口を流入口又は流出口とする第2流路とが形成されている。上記構成のハニカム構造体10は、第1流路を直線状に流れる流体と、第2流路をS字状に流れる流体との間で、区画壁12を通じて熱交換を行うことができる。
【0027】
次に、図4〜11に基づいて、上記のハニカム構造体10の製造方法について説明する。
ハニカム構造体10は、以下に記載する成形工程、加工工程、脱脂工程、含浸工程を順に経ることにより製造される。
【0028】
(成形工程)
ハニカム構造体10の成形に用いる原料として、セラミック粒子と、有機バインダーと、分散媒とを含有する粘土状の混合物を調製する。
【0029】
上記セラミック粒子の材質としては、例えば、炭化ケイ素、炭化タンタル、炭化タングステン等の炭化物、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化ホウ素等の窒化物が挙げられる。これらの中でも、炭化ケイ素、窒化ケイ素が特に好ましい。また、混合物には、一種類のセラミック粒子が含まれていてもよいし、種類の異なるセラミック粒子が含まれていてもよい。また、セラミック粒子の平均粒子径は特に限定されるものではないが、例えば、10〜50μmの範囲であることが好ましい。
【0030】
有機バインダーとしては、例えば、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロースが挙げられる。これらの有機バインダーの中でも、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースが特に好ましい。また、上記の有機バインダーのうちの一種のみを用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0031】
分散媒としては、例えば、水、有機溶剤が挙げられる。有機溶剤としては、例えば、エタノールが挙げられる。また、上記の分散媒のうちの一種のみを用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0032】
また、混合物中にその他の成分を更に含有させてもよい。その他の成分としては、例えば、可塑剤、潤滑剤が挙げられる。可塑剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシプロピレンアルキルエーテル等のポリオキシアルキレン系化合物が挙げられる。潤滑剤としては、例えば、グリセリンが挙げられる。
【0033】
図4に示すように、成形工程では、上記組成の混合物を用いて、筒状の周壁11と、周壁11の内部を周壁11の軸方向に延びる複数のセルSに区画する断面ハニカム形状の区画壁12とを備える成形体10Aを成形する。この成形体10Aは、環状のリブ13が未成形の形状であるとともに、全てのセルSについて、その両端が開放された状態となっている。
【0034】
成形体10Aは、例えば、押し出し成形により成形することができる。押し出し成形により成形体10Aを成形する場合、成形体10Aの断面形状に対応する金型を用いて、成形体10A全体を一度に成形してもよいし、成形体10Aの断面形状の一部に対応する金型を用いて、成形体10Aを部位毎に成形し、それらを組み合わせることによって成形体10Aを成形してもよい。
【0035】
得られた成形体10Aに対して、成形体10Aを乾燥させる乾燥処理を行う。乾燥処理の具体的方法としては、例えば、マイクロ波乾燥機、熱風乾燥機、誘電乾燥機、減圧乾燥機、真空乾燥機、凍結乾燥機等を用いた乾燥処理が挙げられる。
【0036】
(加工工程)
加工工程は、成形体10Aの外形状をハニカム構造体10の外形状と略同一形状に加工した加工成形体10Bを得る工程である。加工工程においては、成形体10Aにリブ13を形成する第1加工、成形体10Aに第1連通部14a及び第2連通部14bを形成する第2加工、及び成形体10Aにおける一部のセルSの両端部を封止する第3加工を行う。
【0037】
図5に示すように、第1加工では、成形体10Aの周壁11の外面に対して、成形工程において用いた粘土状の混合物を所定形状に付着させることによって、環状のリブ13を形成する。その後、成形体10Aに対して、形成されたリブ13を乾燥させる乾燥処理を行う。
【0038】
図6に示すように、第2加工では、成形体10Aにおける周壁11及び区画壁12の一部を除去して、第1連通部14a及び第2連通部14bを形成する。第1連通部14a及び第2連通部14bを形成する方法は特に限定されるものではないが、加熱された加工具を成形体10Aに接触させる方法を採用することが好ましい。
【0039】
具体的には、図10に示すように、加工具として、第1連通部14a及び第2連通部14bに対応する外形状を有するブレード20を用意する。このブレード20は、耐熱性の金属(例えば、ステンレス鋼)により形成され、その厚さは、第2セルS2の幅を超えない厚さに設定されている。次に、成形体10Aに含まれる有機バインダーが焼失する温度となるようにブレード20を加熱する。例えば、有機バインダーがメチルセルロースである場合には、ブレード20を400℃以上に加熱する。
【0040】
そして、加熱されたブレード20を外方から成形体10Aに差し込んだ後、これを引き抜くことによって、第1連通部14a及び第2連通部14bを形成する。このとき、加熱されたブレード20と成形体10Aとが接触すると、その接触部分において成形体10Aに含まれる有機バインダーが燃焼して焼失する。そのため、成形体10Aに対するブレード20の挿入抵抗は非常に小さいものとなり、ブレード20の挿入時に、挿入された部分の周辺部分に変形や破壊が生じ難い。また、有機バインダーが焼失することによって、発生する加工屑の量が減少する。
【0041】
図7に示すように、第3加工では、成形体10Aに形成される複数のセルSのうち、第2セルS2を構成するセルSの両端部に対して、成形工程において用いた粘土状の混合物を充填して、当該セルSの両端部を封止する封止部15を形成する。その後、成形体10Aに対して、封止部15を乾燥させる乾燥処理を行う。
【0042】
上記の第1加工、第2加工、第3加工からなる加工工程を経ることにより、加工成形体10Bが得られる。
(脱脂工程)
脱脂工程は、加工成形体10Bを加熱することによって、加工成形体10Bに含まれる有機バインダーを燃焼させ、焼失させることにより、加工成形体10Bから有機バインダーが除去された脱脂体10Cを得る工程である。脱脂工程における加熱温度は、混合物に用いた有機バインダーに応じて、有機バインダーが焼失可能な温度に適宜、設定する。例えば、有機バインダーとしてメチルセルロースを用いた場合には、加熱温度を400℃以上とすることが好ましい。
【0043】
図8に示すように、脱脂工程を経ることにより、加工成形体10Bから有機バインダーが除去されて、セラミック粒子間に隙間を有する脱脂体10Cが得られる。
(含浸工程)
含浸工程は、脱脂体10Cの周壁11及び区画壁12の内部に金属ケイ素を含浸させる工程である。含浸工程においては、脱脂体10Cに対して金属ケイ素の塊を接触させた状態として、アルゴンや窒素等の不活性ガス雰囲気下、又は真空下にて、1400〜1900℃に加熱する。これにより、図9に示すように、溶融した金属ケイ素が毛細管現象によって、脱脂体10Cの各壁を構成するセラミック粒子間の隙間へ入り込み、同隙間に金属ケイ素が含浸される。
【0044】
金属ケイ素としては、その純度が98%未満の金属ケイ素を用いることが好ましい。金属ケイ素(金属ケイ素の塊)は、その純度が低くなるにしたがって融点が低くなる傾向がある。そのため、低純度の金属ケイ素を用いることにより、含浸工程に要する加熱温度を低く抑えることができる。その結果、製造コストを抑制することができる。なお、金属ケイ素の純度は、例えば、95%以上である。
【0045】
金属ケイ素の塊の量は、脱脂体10Cの各壁を構成するセラミック粒子間の隙間の容積(気孔容積)の1.00〜1.05倍の体積に相当する量とすることが好ましい。金属ケイ素の塊の量を、脱脂体10Cの気孔容積の1.00倍以上の体積に相当する量とすることにより、得られるハニカム構造体10の各壁の気孔率を0%に近づけることができる。また、金属ケイ素の塊の量を、脱脂体10Cの気孔容積の1.05倍以下の体積に相当する量とすることにより、金属ケイ素によってハニカム構造体10のセルSが塞がれてしまうことを抑制できるとともに、製造コストを抑制することができる。
【0046】
また、脱脂体10Cにおいて、金属ケイ素の塊を接触させる部位は特に限定されるものではないが、効率化の観点においては、脱脂体10Cの上部に金属ケイ素の塊を接触させることが好ましい。
【0047】
具体的には、図11(a)に示すように、耐熱性及び耐圧性に優れた材質(例えば、グラファイト)からなる支持台30の上に脱脂体10Cを載置し、脱脂体10Cの上に更に金属ケイ素の板材31を載置する。そして、上記のように設置された脱脂体10C及び金属ケイ素の板材31を、アルゴンや窒素等の不活性ガス雰囲気下、又は真空下にて加熱する。
【0048】
この場合には、図11(b)に示すように、溶融した金属ケイ素が自重により、脱脂体10Cの各壁の壁面をつたって下方側へと流れる。そして、溶融した金属ケイ素は、壁面を流れる途中において、毛細管現象により脱脂体10Cの各壁内へと流れ込む。そのため、脱脂体10Cの側部や下部に金属ケイ素の塊を接触させた状態で加熱して、毛細管現象のみによって、脱脂体10Cの各壁の内部に金属ケイ素を含浸させる場合と比較して、より短い時間で金属ケイ素を含浸させることができる。
【0049】
また、この場合には、成形工程の押し出し成型時における押し出し方向が上下方向となるように脱脂体10Cを設置することが好ましい。これにより、含浸工程時に脱脂体10Cに作用する荷重(脱脂体10Cの自重や金属ケイ素の塊の重量)に対して、脱脂体10Cの形状を維持することが容易となる。
【0050】
上記の含浸工程を経ることにより、ハニカム構造体10が得られる。
ここで、本実施形態においては、脱脂工程以降の工程において特別な温度管理を行っている。すなわち、脱脂工程以降の工程においては、成形工程に用いた混合物に含まれるセラミック粒子の焼結が生じ難い温度下にて実施し、加工成形体10B、脱脂体10Cを、セラミック粒子の大部分が焼結される温度下に曝さないようにしている。具体的には、加工成形体10B、脱脂体10Cを1900℃以下の温度で保持している。なお、炭化ケイ素等かならなるセラミック粒子を焼結するために必要な温度は、2000℃程度である。
【0051】
したがって、脱脂工程においては、有機バインダーが焼失可能な温度以上、かつ1900℃以下の温度で加熱を行う。同様に、含浸工程においては、金属ケイ素の融点以上、かつ1900℃以下の温度で加熱を行う。
【0052】
こうした温度管理を行った場合に得られるハニカム構造体は、図12の顕微鏡写真に示すように、その構成成分であるセラミック粒子が焼結されずに、それぞれ独立して存在する未焼結のハニカム構造体となる。なお、図13に示す顕微鏡写真は、比較として、脱脂工程後に焼成を行い、得られた焼成体に対して含浸工程を行うことにより得られたハニカム構造体(以下、焼結ハニカム構造体と記載する。)を撮影したものである。焼結ハニカム構造体においては、セラミック粒子が焼結されて、粒子間にネックといわれる結合部分が形成されている。これに対して、図12に示すように、未焼結のハニカム構造体においては、上記ネックは形成されていない。
【0053】
未焼結のハニカム構造体においても、焼結ハニカム構造体と同程度の強度が得られる。
また、未焼結のハニカム構造体は、焼結ハニカム構造体と比較して、ヤング率が高く、変形し難い性質を有している。焼結ハニカム構造体の場合、セラミック粒子のいずれかに亀裂が生じた際に、その亀裂がネックを通じて別の粒子にまで進行することがある。一方、未焼結のハニカム構造体の場合、粒子同士が結合されていないため、いずれかの粒子に亀裂が生じたとしても、その亀裂が別の粒子にまで進行し難い。こうした作用によって、未焼結のハニカム構造体には、変形し難い性質が付与されていると考えられる。
【0054】
なお、焼結ハニカム構造体であるか、未焼結のハニカム構造体であるかは、例えば、ハニカム構造体をフッ酸処理して金属ケイ素を溶解させた際、セラミック粒子からなる骨格部分の形状が保持されるか、保持されずに崩れるかを確認することによって判別することができる。
【0055】
次に、本実施形態の効果について記載する。
(1)ハニカム構造体の製造方法は、セラミック粒子、有機バインダー、及び分散媒を含有する混合物を成形して成形体を得る成形工程と、成形体に含まれる有機バインダーを除去して脱脂体を得る脱脂工程と、脱脂体の周壁及び区画壁の内部に金属ケイ素を含浸させる含浸工程とを有している。含浸工程を、不活性ガス雰囲気下又は真空下で、1400〜1900℃の温度にて行っている。
【0056】
上記構成によれば、含浸工程において、セラミック粒子を焼結させるための2000℃以上の高温環境を用意する必要がなく、設備やエネルギー等の観点において、製造コストを抑制することができる。さらに、含浸工程における加熱温度を1900℃以下の温度とすることにより、脱脂体の熱膨張が抑制されて、熱膨張に起因する破損が生じ難くなる。したがって、製造時に熱衝撃による破損が生じ難い製造方法となる。
【0057】
また、上記構成の製造方法により得られたハニカム構造体は、その構成成分であるセラミック粒子の殆どが焼結されずに、それぞれ独立して存在する未焼結のハニカム構造体となる。この未焼結のハニカム構造体は、ヤング率が高く、変形し難い性質を有しており、熱交換器として有用である。
【0058】
(2)セラミック粒子として、炭化ケイ素からなる粒子を用いている。
炭化ケイ素は、熱伝導率が高いため、熱交換器として有用である。さらに、炭化ケイ素は、金属ケイ素との熱膨張係数が近いため、熱応力に起因する破損が生じ難いハニカム構造体を製造することができる。
【0059】
(3)加工工程において、有機バインダーが焼失する温度に加熱されたブレードを成形体に接触させることによって、成形体の一部を除去している。
上記構成によれば、ブレードに接触した部分の有機バインダーが焼失するため、ブレード挿入時の抵抗が小さく、挿入された部分の周辺部分に変形や破壊が生じ難い。また、発生する加工屑の量が減少する。
【0060】
(4)含浸工程において、脱脂体の気孔容積の1.00〜1.05倍の体積に相当する量の金属ケイ素を用いている。
上記構成によれば、ハニカム構造体の各壁の気孔率を0%に近づけることができる。また、含浸される金属ケイ素によりハニカム構造体のセルが塞がれてしまうことを抑制できるとともに、製造コストを抑制することができる。
【0061】
(5)含浸工程において、純度98%未満の金属ケイ素を用いている。
低純度の金属ケイ素は、その融点が低いことから、低純度の金属ケイ素を用いることにより、含浸工程に要する加熱温度を低く抑えることができる。よって、製造コストを抑制することができる。
【0062】
(6)含浸工程において、脱脂体に対して金属ケイ素の塊を接触させた状態として、金属ケイ素の融点以上の温度で加熱することによって、脱脂体に金属ケイ素を含浸させている。
【0063】
上記構成によれば、特許文献1のような金属ケイ素雰囲気の環境を用意する必要がなく、製造コストを抑制することができる。
(7)含浸工程において、脱脂体の上に金属ケイ素の塊を載せた状態として加熱を行っている。
【0064】
上記構成によれば、溶融した金属ケイ素が脱脂体の各壁をつたって下方側へと流れる作用を利用することで、効率的に金属ケイ素を含浸させることができる。
(8)含浸工程において、押し出し成型時における押し出し方向が上下方向となるように脱脂体を設置している。
【0065】
上記構成によれば、含浸工程時に脱脂体に作用する荷重(脱脂体の自重や金属ケイ素の塊の重量)に対して、脱脂体の形状を維持することが容易となる。
なお、本実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
【0066】
・ハニカム構造体の形状(例えば、ハニカム構造体の外形やセル形状)は、上記実施形態に限定されるものではなく、適宜、変更することができる。
・第1セルS1と第2セルS2は、第2の方向において隣り合ってなくてよく、例えば、第2セルS2、第1セルS1、第1セルS1(以下繰り返し)の順番で配置することもできる。
【0067】
・加工工程の一部又は全部を省略してもよい。加工工程は、成形工程により得られる成形体の形状を、製造されるハニカム構造体の形状に近づけるための工程である。そのため、加工工程においては、製造されるハニカム構造体の形状、及び成形体の形状に応じて、必要な加工のみを行えばよい。例えば、製造されるハニカム構造体にリブがない場合には、成形体にリブを形成する第1加工は不要である。
【0068】
また、加工工程において、上記の第1加工、第2加工、第3加工以外の加工を行ってもよい。ただし、成形体の一部を除去することを含む加工については、有機バインダーが焼失する温度に加熱された加工具を成形体に接触させる操作によって行うことが好ましい。
【0069】
・ハニカム構造体の製造方法において、成形工程、加工工程、脱脂工程、含浸工程以外の工程を更に行ってもよい。例えば、含浸工程後に、研磨等の表面加工を行ってもよい。ただし、脱脂工程以降に行う処理については、含浸工程と同様に1900℃以下の温度にて行う必要がある。
【実施例】
【0070】
以下、上記実施形態をさらに具体化した実施例について説明する。
(実施例)
まず、下記組成の混合物を調製した。
【0071】
平均粒子径15μmの炭化ケイ素の粒子(大粒子):52.5質量部
平均粒子径0.5μmの炭化ケイ素の粒子(小粒子):23.6質量部
メチルセルロース(有機バインダー):5.4質量部
グリセリン(潤滑剤):1.1質量部
ポリオキシアルキレン系化合物(可塑剤):3.2質量部
水(分散媒):11.5質量部
この混合物を用いて、直径35mm、長さ100mm、周壁の厚さ0.3mm、区画壁の厚さ0.1mm、セル幅0.94mmのハニカム構造を有する円柱状の成形体を成形した。次に、成形体を450℃で5時間加熱することにより、有機バインダーが除去された脱脂体を得た。その後、脱脂体の上に純度97.5%の金属ケイ素の板材20g(脱脂体の気孔容積の1倍の体積に相当する量)を載置した状態として、真空下、1550℃で7時間、加熱することにより、金属ケイ素を含浸させて、実施例のハニカム構造体を得た。なお、図12に示す顕微鏡写真は、実施例のハニカム構造体を撮影したものである。
【0072】
(比較例)
実施例と同様にして成形体及び脱脂体を得た。脱脂体をアルゴン雰囲気下、2200℃で3時間、加熱することにより焼成体を得た。そして、焼成体の上に金属ケイ素の板材20gを載置した状態として、真空下、1550℃で7時間、加熱することにより、金属ケイ素を含浸させて、比較例のハニカム構造体を得た。なお、図13に示す顕微鏡写真は、比較例のハニカム構造体を撮影したものである。
【0073】
(評価試験)
実施例及び比較例のハニカム構造体の曲げ強度及びヤング率を測定した。それらの結果を表1に示す。
【0074】
ハニカム構造体の曲げ強度は、以下の3点曲げ強度試験により測定した。測定用サンプルとして、実施例及び比較例のハニカム構造体から、周壁及び封止部を除く2セル×4セル×40mmの大きさの基材を10本切り出した。そして、測定用サンプルの主面(広い方の面)に対して垂直な方向に荷重を印加し、破壊荷重(サンプルが破壊した荷重)を測定した。10本の測定用サンプルについて破壊荷重を測定し、その平均値を曲げ強度とした。3点曲げ強度試験は、JIS R 1601を参考に、インストロン5582を用い、スパン間距離:30mm、スピード1mm/minで行った。
【0075】
ハニカム構造体のヤング率は、以下の方法で測定した。測定用サンプルとして、実施例及び比較例のハニカム構造体から、周壁及び封止部を除く、横10mm×長さ50mm×厚さ0.4mmの寸法の測定サンプルを切り出した。そして、ヤング率測定装置に設置し、共振法により、測定用サンプルのヤング率を測定した。測定装置には、JE−RT型弾性率測定装置(日本テクノプラス(株)社製)を使用した。測定雰囲気は、大気とし、測定温度は、室温とした。
【0076】
【表1】
表1に示す結果から、実施例のハニカム構造体は、比較例のハニカム構造体と同程度の曲げ強度を有していることが分かる。また、実施例のハニカム構造体は、比較例のハニカム構造体と比較して、ヤング率が高く、変形し難い性質を有していることが分かる。
【符号の説明】
【0077】
S…セル、S1…第1セル、S2…第2セル、10…ハニカム構造体、10A…成形体、10B…加工成形体、10C…脱脂体、11…周壁、12…区画壁、13…リブ、14a…第1連通部、14b…第2連通部、15…封止部、20…ブレード(加工具)、30…支持台、31…金属ケイ素の板材。
図1
図2
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