を含み、1,250〜1,400℃で焼結されて400〜740MPaの強度を有し、1μm以下の粒子サイズを有する絶縁体組成物であって、Al2O3粒子重量に対して、重量比でCaCO
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下では、添付の図面を参照し、本発明の好ましい実施例について説明する。しかし、本発明の実施例は様々な他の形態に変形されることができ、本発明の範囲は以下で説明する実施例に限定されない。また、本発明の実施例は、当該技術分野で平均的な知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。したがって、図面における要素の形状及び大きさなどはより明確な説明のために拡大縮小表示(または強調表示や簡略化表示)がされることがある。
【0015】
また、以下の実施例を説明するにあたり、関連する公知技術を詳細に説明すると本発明の要旨を却って不明確なものとする可能性があると判断される場合は公知技術に関するそのような詳細な説明を省略する。
【0016】
本実施例の絶縁体組成物は、母材の主成分として粒子サイズ(size)が120〜500nmである酸化アルミニウム(Al
2O
3)を含む。
【0017】
このとき、Al
2O
3のサイズが500nmを超えると、焼結温度が大きく上昇するという問題があり、Al
2O
3のサイズが120nm未満の場合は、焼結温度をわずかに低下させるという効果しか得られない。また、Al
2O
3のサイズが250nmを下回るようになると焼結温度の低下効果が急激に低下するため、より好ましくはAl
2O
3のサイズは、250〜500nmに設定することができる。
【0018】
上述のように、母材であるAl
2O
3の粒子サイズを調節して絶縁体組成物を製造すると、絶縁体組成物の焼結温度をHTCCの1600℃以上から1,250〜1,400℃まで低くしてもHTCCと同等の水準の耐圧強度を実現することができる。このとき、上記絶縁体組成物の強度は、400〜740MPaの圧力に耐え得る耐圧強度となり、粒子サイズは1μmとなり得る。
【0019】
上述のように形成される絶縁体組成物を用いると、セラミックパッケージなどの電子部品を製造するとき、焼結雰囲気の制御が容易であるため、内部電極として希少なタングステンまたはモリブデンを主成分とする電極の代わりに調達が容易なニッケル(Ni)を主成分とする電極を用いることができるという効果がある。
【0020】
例えば、セラミック絶縁材を0.001〜10重量%の含有比率で含むNi電極に上記絶縁体組成物を適用して成る電子部品を製造する場合、1,250〜1,400℃の焼結温度範囲で還元雰囲気の制御(H
2濃度3%以下)を通じて焼結すると、上記Niの酸化が抑制されるようにして400〜740MPaの圧力に耐え得る耐圧強度を有する電子部品を製造することができる。
【0021】
図1は焼結力の作用下で焼結時に発生する基本的な現象の例を示す図面である。
【0022】
図1は焼結時の緻密化(densification)効果及び粒成長による粗粒化(coarsening、grain growth)効果によってセラミック材料に一定の作用を及ぼす現象の例を示している。
【0023】
図1を参照すると、焼結(sintering)を進行させる一般的な駆動エネルギーは、材料の表面エネルギー(γ)及び粒界エネルギー(A)で構成される。
【0024】
このとき、表面エネルギーを減少させるエネルギーが優勢であると、材料は緻密化(densification)されるようになる。また、粒界エネルギーを減少させるエネルギーが優勢であると、材料は粒成長によって粗粒化されるようになる。
【0025】
材料が有する表面エネルギーは、BET(Brunauer、Emmett、Teller)を測定することで知ることができる。このBET値が高いほど、表面エネルギーが高いためこれを減らす方向に焼結を進行させるように制御することが望ましい。
【0026】
換言すると、粒成長による粗粒化の進行よりも緻密化がさらに大幅に進行するようにすることが好ましい。同じ元素では出発原料の粒子サイズが小さいほどBET値が高くなる。
【0027】
即ち、BET値が高いと焼結温度を低くすることができるという技術的利点があるため、このような特徴を活用することで、中温(1,250〜1,400℃)の温度条件下でもHTCCで実現可能な強度を実現することができる絶縁体組成物及び絶縁体組成物の製造方法を得ることができる。
【0028】
より具体的には、焼結温度を低くするために、出発原料のサイズをHTCCに比べて小さくしてBET値を調節することにより、粒成長による粗粒化を進行させる駆動エネルギーと比べて緻密化を進行させる駆動エネルギーをより高めることができる。
【0029】
また、このように生成された粒界に含まれる液状の添加剤(例えば、CaCO
3、MgCO
3、SiO
2)の量を調節すれば、従来の焼結温度(例えば、HTCC工法時の焼結温度)よりも低い温度で、所望する強度(例えば、HTCCと類似の水準の強度)を実現することができる。
【0030】
図2を参照すると、本実施例の絶縁体組成物では、焼結温度が1,250〜1,400℃となるような温度条件を満たすようにするために、添加剤の配合割合が調節される。100重量部のAl
2O
3に対して、添加剤として炭酸カルシウム(CaCO
3)を0.92〜2.01wt%の含有比で含み、炭酸マグネシウム(MgCO
3)を0.92〜2.67wt%の含有比で含み、及び 二酸化ケイ素(SiO
2)を2.00〜4.01wt%の含有比で含むことができる。特に、上記SiO
2の添加量が含有比で表した場合に2wt%より少ない場合は絶縁体組成物の耐圧強度が400MPaを超えないため、成形された絶縁体組成物の耐圧強度を400MPa以上に維持するためには、他の成分の含有量と関係なく、特にSiO
2の添加量が少なくとも2wt%以上となるようにする必要がある。
【0031】
ここで、上記CaCO
3、MgCO
3、及びSiO
2は、すべて三重点または二次相に寄与する元素である。このとき、耐圧強度が700MPa以上となる高強度を実現するためには、Ca、Mg及びSiが互いに完全に溶融される温度以下となるように焼結温度を調整する必要があり、具体的には、焼結温度が1,400℃以下の温度範囲内となる温度条件を満たさなければならない。
【0032】
また、上記絶縁体組成物は、100重量部のAl
2O
3に対して、添加剤として二酸化チタン(TiO
2)を含有比が0.76〜2.21wt%となるようにさらに含むことができる。上記TiO
2は、結晶粒界(grain boundary)に集中的に配置されるので、本実施例の絶縁体組成物の強度をさらに向上させる役割を果たす。
【0033】
一方、本実施例の絶縁体組成物は、液状焼結において主軸となるSiO
2の割合に応じて強度の変化が大きな影響を受ける。
【0034】
本実施例の絶縁体組成物は、含有比を重量パーセンテージで表し、CaCO
3、MgCO
3、及びSiO
2の含有比の合計をAd1としたとき、SiO
2の含有比/Ad1が44%未満の場合は強度が400Mpa未満となり、上記SiO
2の含有比/Ad1が52%を超える場合は強度が740Mpaを超過するようになる。
【0035】
また、上記絶縁体組成物は、含有比を重量パーセンテージで表し、CaCO
3、MgCO
3、SiO
2、及びTiO
2の含有比の合計をAd2としたとき、SiO
2の含有比/Ad2が34%未満の場合は強度が400Mpa未満となり、上記SiO
2の含有比/Ad2が44%を超える場合は強度が740Mpaを超過するようになる。
【0036】
<実験例>
本実験例では、上述のように、母材であるAl
2O
3と添加剤の割合を調節して、強度測定用K2バルク(bulk)を製作した。
【0037】
スラリーの製作時にジルコニアボールを混合/分散媒体として使用し、エタノール/トルエンと噴射剤及びバインダーを混合した後、母材主成分と添加剤粉末のボールミルを24時間行った。
【0038】
製造されたスラリーは、小型ドクターブレード(doctor blade)方式の成形コーター(coater)を用いて加工し、厚さ5〜10μmの形成シートを製造した。
【0039】
製造された成形シート(厚さ約5〜10μm)を約40層分積層して圧着バーを製作し、上記圧着バーはカッターを使用して、横50cm、縦15cmサイズのシート(K−square)に切断した。
【0040】
このようなK−squareを340℃の窒素(N
2)雰囲気中で仮焼してから、湿潤温度(Wetter Temperature)が40℃であり、組成が0.06%H
2/99.94%N
2である雰囲気中に置き、1,330℃の焼結温度で2時間にわたって焼結を行った後、強度及び密度を測定した。
【0041】
本実験例では、母材であるAl
2O
3の重量パーセント含有比は90.5wt%に固定し、CaCO
3、MgCO
3、及びSiO
2、さらにTiO
2を添加した。このとき、試料ごとに添加剤の量を下記表1のように変更して行った。
【0042】
HTCCは1,600℃以上の温度で焼結を行うようになるが、本実施例では、下記表1のように添加剤の量を調節することで相対的に低温である1,330℃で焼結を行うことができる。
【0044】
上記表1に記載された組成物のRef組成位置は、
図2に示す酸化マグネシウム(MgO)−酸化カルシウム(CaO)−二酸化ケイ素(SiO
2)の3元系状態図(ternary phase diagram)に大まかに示されている。
【0045】
また、本実施例の工程温度である1,300℃前後の温度よりも高い位置にある状態でCaCO
3、MgCO
3、及びSiO
2の形成温度、さらにTiO
2の形成温度を調節して強度の変化を観察した。
【0046】
図2に示された組成の範囲をそれぞれ表記すると、表1に示すように、母材であるAl
2O
3に対する重量パーセントで表した含有量の割合を、それぞれ0.0092≦CaCO
3/Al
2O
3≦0.0201、0.0092≦MgCO
3/Al
2O
3≦0.0267、0.0183≦SiO
2/Al
2O
3≦0.0401、及び0.0076≦TiO
2/Al
2O
3≦0.0221の含有量の割合の範囲内で変化させる場合に、組成物の強度を400〜740MPaの水準以上に維持できることが分かる。これは、上記組成範囲内で組成物の焼結駆動力が高まり、低温で焼結できるようになったことを示す。
【0047】
また、Ca、Mg、SiまたはCa、Mg、Si、Tiの総投入量に対するSiの比を増加させると強度が向上したという結果を示している。但し、SiO
2は、上述のように、添加量が重量パーセントで2wt%より少ない場合に強度が400MPaを超えないため、他の成分の含有量と関係なく、SiO
2の添加量は2wt%以上に設定するのが好ましい。
【0048】
一方、
図2及び表1を参照すると、0.0167≦CaCO
3/Al
2O
3≦0.0201、0.0335≦SiO
2/Al
2O
3≦0.0401、0.0203≦Cr
2O
3/Al
2O
3≦0.0304、MgCO
3/Al
2O
3=0.0134、TiO
2/Al
2O
3=0.0110である試料1番及び2番で700MPa以上の強度が実現された。また、特に試料1番の組成では、740MPa以上の強度を実現することができた。
【0049】
図3は従来のHTCCでセラミック組成物のEDS分析結果を示した写真であり、
図4は本発明の一実施例によるMTCCでセラミック組成物のEDS分析結果を示した写真である。
【0050】
図3を参照すると、比較例として従来のHTCC工法の場合は、焼結温度が1,600℃以上であり、内部電極はW及びMoを用いて高水素雰囲気下で電極の酸化を抑制し、同時焼結するようになる。
【0051】
図4を参照すると、本実施例のMTCC工法で製造された製品の場合、誘電体の挙動が従来のHTCC工法で製造された製品とは異なる動きを示すことが分かる。
【0052】
即ち、比較例の場合、Ca、Si及びMgが概ね互いに完全に溶融される。このとき、非常に大きな粒度のAl−Mg−Oを形成するようになる。しかし、本発明に係る実施例の場合、Ca、Si及びMgが互いに溶融された状態であるが、Ca及びSiが大きく溶融されている位置にMgが溶融されていない状態の部分が存在するようになる。
【0053】
本発明に係る実施例は、比較例と比較したとき、Mgの溶融の度合いがCa及びSiの溶融の度合いに比べて相対的に弱いことが分かる。したがって、比較例の場合、Ca、Si及びMgの溶融が活発で、大きな粒子のAl−Mg−Oの二次相を形成する一方で、本発明に係る実施例の場合は、Ca、Si及びMgの溶融が比較例よりも相対的に弱く、Si−Ca−O及びSi−Mg−Oの二次相を形成するようになる。
【0054】
図5は従来のHTCCで製造されたセラミック組成物の微細構造を示すSEM写真であり、
図6は本発明の一実施例によるMTCCで製造されたセラミック組成物の微細構造を示したSEM写真である。
【0055】
図5を参照すると、比較例であるHTCCの場合、焼結後のグレーンサイズが1.5μm以上の平均粒度を有し、Ca−Mg−Siが溶融された状態である微細構造を有する。
【0056】
図6を参照すると、本実施例のMTCC工法によって製造された絶縁体組成物は、微細構造における粒子サイズ(grain size)が既存のHTCC工法によって製造された絶縁体組成物に比べて非常に小さくなった約350nmの平均粒度を有し、粒度の分布範囲が120〜500nmとなる。
【0057】
また、MTCCによって製造された組成物は、Mgの固溶性が非常に弱く、添加剤の分布も非常に均一な分布となっていることが確認できる。
【0058】
したがって、本実施例によると、中温(例えば、1,250〜1,400℃)の温度範囲でもHTCCで製造された組成物と同等の水準の強度を有するセラミックパッケージを提供することができる。より詳しくは、1,250〜1,400℃の温度範囲で400MPa以上の圧力に耐え得る強度を実現できるように焼結可能なMTCC組成工法を提供することができる。
【0059】
このようなMTCC組成工法を通じて製造された絶縁体組成物は、焼結温度が低いながらも(HTCCにおける焼結温度に比べて相対的に低いながらも)既存のHTCC工法を通じて製造された組成物と同等の水準の強度を実現することができる。
【0060】
また、本発明の幾つかの実施例によれば、ニッケル電極の使用が可能な温度条件の下で、弱還元雰囲気中において焼結することができるため、雰囲気の制御が容易となるような製造方法を実現することができる。換言すると、H
2濃度が3%以下となるように還元雰囲気の制御を行うことを通じてNiの酸化が抑制されるようにすることができる。
【0061】
上述のように構成される本発明の一実施例による絶縁体組成物は、セラミックパッケージ(例えば、X−tal、ISM、SAW packageなど)またはESC(Electrostatic Chuck;静電チャック)のような電子部品の製造に用いることができる。
【0062】
セラミックパッケージを製作するためには充分な強度及び充分な平坦度を必ず確保する必要がある。本発明の一実施例による絶縁体組成物(MTCCにより製造された組成物)は、上述のように、添加剤の割合を適切に調節して、従来のLTCC及びHTCCにおける焼結温度とは異なる焼結温度である1,250〜1,400℃で焼結することができる。
【0063】
したがって、耐酸化性が非常に強いタングステンまたはモリブデンを主成分とする電極の代わりにニッケル電極を用いることにより、弱還元雰囲気で焼結することができる。その結果、焼結雰囲気の制御が容易となり、HTCCで製造された組成物と同等の水準の強度を有するセラミックパッケージを提供することができる。
【0064】
また、このように製造されたセラミックパッケージは、安価でありながら導電性に優れたNi電極を用いるため、製造コストを削減することができ、電気的散布状態の面でもより優れた製品を製作することができる。
【0065】
また、上記ESCの場合、性能項目として強度の他に比抵抗も重要であるが、上記のようにニッケル電極を使用するのであれば、上記のような理由からHTCCやLTCCではなく、本実施例のMTCCを使用して製造しなければならない。
【0066】
以上、本発明の実施例について詳細に説明したが、本発明の範囲はこれに限定されず、特許請求の範囲に記載された本発明の技術的思想から外れない範囲内で多様な修正及び変形が可能であるということは、当技術分野の通常の知識を有するものには明らかである。