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特開2017-218384網膜疾患の予防または治療のための医薬組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-218384(P2017-218384A)
(43)【公開日】2017年12月14日
(54)【発明の名称】網膜疾患の予防または治療のための医薬組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 45/00 20060101AFI20171117BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20171117BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20171117BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20171117BHJP
   A61K 31/343 20060101ALI20171117BHJP
   A61K 31/192 20060101ALI20171117BHJP
   A61K 31/165 20060101ALI20171117BHJP
   A61K 31/4184 20060101ALI20171117BHJP
【FI】
   A61K45/00
   A61P27/02
   A61K9/14
   A61K9/20
   A61K31/343
   A61K31/192
   A61K31/165
   A61K31/4184
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-111591(P2016-111591)
(22)【出願日】2016年6月3日
(71)【出願人】
【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
(71)【出願人】
【識別番号】516165930
【氏名又は名称】グリーン・テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100126354
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】久米 利明
(72)【発明者】
【氏名】赤池 昭紀
(72)【発明者】
【氏名】杉本 八郎
(72)【発明者】
【氏名】丹羽 眞一郎
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA29
4C076AA30
4C076AA31
4C076AA36
4C076AA53
4C076BB01
4C076CC10
4C084AA17
4C084MA52
4C084NA14
4C084ZA331
4C084ZA332
4C086AA01
4C086AA02
4C086BA06
4C086BC39
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA35
4C086MA37
4C086MA41
4C086MA52
4C086NA14
4C086ZA33
4C206AA01
4C206AA02
4C206DA16
4C206GA02
4C206GA30
4C206MA01
4C206MA04
4C206MA55
4C206MA57
4C206MA61
4C206MA72
4C206NA14
4C206ZA33
(57)【要約】
【課題】網膜色素上皮障害を原因とする網膜疾患を治療または予防しうる薬剤を探索すること。
【解決手段】本発明は、ヨウ素酸ナトリウム誘発網膜色素上皮(RPE)細胞死に対する保護効果を有する薬剤を含有する、RPEの障害を原因とする網膜疾患の予防または治療のための医薬製剤を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヨウ素酸ナトリウム誘発網膜色素上皮細胞の細胞死を抑制する薬剤またはその医薬的に許容される塩を含有する、網膜色素上皮の障害を原因とする網膜疾患の予防または治療のための医薬製剤。
【請求項2】
前記ヨウ素酸ナトリウム誘発網膜色素上皮細胞の細胞死を抑制する薬剤が、(3,5―ジブロモ―4―ヒドロキシフェニル)―(2―エチル―3―ベンゾフラニル)メタノン、(RS)―2―(p―イソブチルフェニル)プロピオン酸、N―[(7S)―1,2,3,10―テトラメトキシ―9―オキソ―5,6,7,9―テトラヒドロベンゾ[α]ヘプタレン―7―イル]アセトアミド、およびメチル(5―ベンゾイル―1H―ベンズイミダゾール―2―イル)カルバマートからなる群から選択される、請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項3】
前記網膜疾患が、萎縮型加齢黄斑変性、滲出型加齢黄斑変性、初期加齢黄斑症、網膜色素変性症、シュタルガルト病、レーベル病、脈絡膜硬化症、全脈絡膜萎縮症、卵黄状黄斑ジストロフィ、小口病、眼底白点症、および白点状網膜炎からなる群から選択される、請求項1または2に記載の医薬製剤。
【請求項4】
投与経路が経口投与である、請求項1〜3のいずれかに記載の医薬製剤。
【請求項5】
剤型がカプセル剤、細粒剤、顆粒剤、散剤、丸剤または錠剤である、請求項1〜4のいずれかに記載の医薬製剤。
【請求項6】
網膜色素上皮細胞の障害を抑制するための組成物であって、(3,5―ジブロモ―4―ヒドロキシフェニル)―(2―エチル―3―ベンゾフラニル)メタノン、(RS)―2―(p―イソブチルフェニル)プロピオン酸、N―[(7S)―1,2,3,10―テトラメトキシ―9―オキソ―5,6,7,9―テトラヒドロベンゾ[α]ヘプタレン―7―イル]アセトアミド、およびメチル(5―ベンゾイル―1H―ベンズイミダゾール―2―イル)カルバマートからなる群から選択される薬剤またはその医薬的に許容される塩、および医薬的に許容される添加剤を含む、組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、網膜色素上皮の障害に起因する網膜疾患の治療用または予防用の医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
網膜色素上皮(Retinal pigment epithelium; 以下、「RPE」ともいう。)は、網膜組織の最外層に位置し、視細胞への栄養補給や視細胞外節の貪食と消化、ならびに視物質であるレチナールのリサイクルに関与し視物質を再生する等、視覚の維持において極めて重要な役割を果たしている。また、脈絡膜と視細胞の間にあって血管―網膜関門を形成し、血管を透過する成分からの網膜の防御機能を果たしている。
【0003】
このため、網膜色素上皮が萎縮、変性などにより障害されると、視力低下を伴う種々の網膜疾患が引き起こされる。更に、網膜色素上皮の萎縮、変性等の障害は、二次的な障害として、脈絡膜血管新生(以下CNVともいう。: choroidal neovascularization)といわれる脈絡膜から網膜における脆弱血管の新生/伸展の引き金となり、この脆弱血管が、破壊する事により黄斑部における出血、滲出、網膜剥離など視力低下を生じる要因ともなっている。
【0004】
この網膜色素上皮の障害を原因とする網膜疾患は、多数存在し、代表的な例として、萎縮型加齢黄斑変性(atrophic age−related macular degeneration : atrophic AMD)を含む、ドライ型加齢黄斑変性(Dry−type AMD)が挙げられる。ドライ型加齢黄斑変性は、加齢に伴い網膜色素上皮組織下に形成される蛋白質や細胞で構成される瘢痕塊ドルーゼンに起因するといわれる網膜色素上皮の変性・萎縮による障害により、生じる視力低下を伴う疾患である。同様に網膜色素上皮の障害による疾患の例としては、網膜色素変性症(retinitis pigmentosa)、シュタルガルト病(Stargardt’s disease)、レーベル病(Leber’s disease)、脈絡膜硬化症(choroidal sclerosis)、全脈絡膜萎縮症(chorioderemia)、卵黄状黄斑ジストロフィ(vitelliform macular dystrophy)、小口病(Oguchi’s disease)、眼底白点症(fundus albipunctatus)、白点状網膜炎(retinitis punctata albescens)等を挙げることができる。
【0005】
これらの視力障害に基づく上記の疾患は、いずれも初期過程として網膜色素上皮の萎縮、変性のような障害を起因とするものであり、網膜色素上皮における萎縮、変性のような障害が疾患の発症の要因となっている。
【0006】
これら網膜色素上皮細胞の萎縮、変性等の障害に起因する疾患の中で、最も患者数の多い疾患が、加齢黄斑変性症であり、米国における罹患者数は、1,300万人に達しており、既に欧米では、老人性失明の第一位となっている。
【0007】
ヨウ素酸ナトリウム(sodium iodate)は経口または静脈内投与によりRPE細胞特異的な障害を惹起し、神経網膜の機能の低下、すなわち網膜の光に対する反応性の低下を導くことが報告されている(非特許文献1:J. Toxicol. Sci. 21:Suppl 1, 15−32(1996))。また、このことから、ヨウ素酸ナトリウムの投与によるラット網膜障害動物モデルはRPE障害疾患の病態モデルであるといわれている(特許文献1:特願2011−6406)。
【0008】
このため、ヨウ素酸ナトリウムにより誘発されるRPE細胞の障害に対する防御作用を評価する事により、薬剤のRPE障害疾患に対する治療または予防効果を判定する事が可能である。
【0009】
最近、ジクロロフェナクナトリウムなどの薬剤が網膜色素上皮障害を原因とし、かつ脈絡膜血管新生を伴わない網膜治療の治療薬または予防薬として有用であることが開示されている(特許文献2:WO2015/029948)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2011−6406
【特許文献2】WO2015/029948
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】J. Toxicol. Sci. 21:Suppl 1, 15−32(1996)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上記のような状況下、RPE障害疾患を治療または予防しうる新たな薬剤を探索することが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、ヨウ素酸ナトリウムによるRPE細胞障害に対する薬剤の保護作用の評価を行った。
【0014】
具体的には、ヨウ素酸ナトリウムをRPE細胞に作用させるインビトロ評価系を用いて、薬剤のヨウ素酸ナトリウムによるRPE細胞死に対する薬剤の保護効果を評価し、いくつかの候補薬剤のRPE障害疾患に対する防御作用を確認し、本発明を完成するに至った。
【0015】
すなわち、本発明は、以下を提供する。
【0016】
[1]ヨウ素酸ナトリウム誘発網膜色素上皮細胞の細胞死を抑制する薬剤またはその医薬的に許容される塩を含有する、網膜色素上皮の障害を原因とする網膜疾患の予防または治療のための医薬製剤。
[2]上記ヨウ素酸ナトリウム誘発網膜色素上皮細胞の細胞死を抑制する薬剤が、(3,5―ジブロモ―4―ヒドロキシフェニル)―(2―エチル―3―ベンゾフラニル)メタノン、(RS)―2―(p―イソブチルフェニル)プロピオン酸、N―[(7S)―1,2,3,10―テトラメトキシ―9―オキソ―5,6,7,9―テトラヒドロベンゾ[α]ヘプタレン―7―イル]アセトアミド、およびメチル(5―ベンゾイル―1H―ベンズイミダゾール―2―イル)カルバマートから選択される、上記[1]に記載の医薬製剤。
[3]上記網膜疾患が、萎縮型加齢黄斑変性、滲出型加齢黄斑変性、初期加齢黄斑症、網膜色素変性症、シュタルガルト病、レーベル病、脈絡膜硬化症、全脈絡膜萎縮症、卵黄状黄斑ジストロフィ、小口病、眼底白点症、および白点状網膜炎からなる群から選択される、上記[1]または[2]に記載の医薬製剤。
[4]投与経路が経口投与である、上記[1]〜[3]のいずれかに記載の医薬製剤。
[5]剤型がカプセル剤、細粒剤、顆粒剤、散剤、丸剤または錠剤である、上記[1]〜[4]のいずれかに記載の医薬製剤。
[6]網膜色素上皮細胞の障害を抑制するための組成物であって、(3,5―ジブロモ―4―ヒドロキシフェニル)―(2―エチル―3―ベンゾフラニル)メタノン、(RS)―2―(p―イソブチルフェニル)プロピオン酸、N―[(7S)―1,2,3,10―テトラメトキシ―9―オキソ―5,6,7,9―テトラヒドロベンゾ[α]ヘプタレン―7―イル]アセトアミド、およびメチル(5―ベンゾイル―1H―ベンズイミダゾール―2―イル)カルバマートからなる群から選択される薬剤または医薬的に許容されるその塩、および医薬的に許容される添加剤を含む、組成物。
【発明の効果】
【0017】
本発明により、網膜色素上皮障害疾患の予防または治療のための医薬製剤または医薬組成物が提供される。本発明の医薬製剤または医薬組成物は、網膜色素上皮障害疾患の予防または治療において予想外の効果を発揮し得る。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】ヨウ素酸ナトリウムにより誘発される網膜色素上皮障害に対する防御作用の評価系を用いて、3,5―ジブロモ―4―ヒドロキシフェニル)―(2―エチル―3―ベンゾフラニル)メタノン:化合物1の作用効果を試験した結果を示すグラフである。3,5―ジブロモ―4―ヒドロキシフェニル)―(2―エチル―3―ベンゾフラニル)メタノンをヨウ素酸ナトリウムと同時に処置することによって、細胞生存率が上昇した。
図2】ヨウ素酸ナトリウムにより誘発される網膜色素上皮障害に対する防御作用の評価系を用いて、(RS)―2―(p―イソブチルフェニル)プロピオン酸:化合物2の作用効果を試験した結果を示すグラフである。(RS)―2―(p―イソブチルフェニル)プロピオン酸をヨウ素酸ナトリウムと同時に処置することによって、細胞生存率が上昇した。
図3】ヨウ素酸ナトリウムにより誘発される網膜色素上皮障害に対する防御作用の評価系を用いて、N―[(7S)―1,2,3,10―テトラメトキシ―9―オキソ―5,6,7,9―テトラヒドロベンゾ[α]ヘプタレン―7―イル]アセトアミド:化合物3の作用効果を試験した結果を示すグラフである。N―[(7S)―1,2,3,10―テトラメトキシ―9―オキソ―5,6,7,9―テトラヒドロベンゾ[α]ヘプタレン―7―イル]アセトアミドをヨウ素酸ナトリウムと同時に処置することによって、細胞生存率が上昇した。
図4】ヨウ素酸ナトリウムにより誘発される網膜色素上皮障害に対する防御作用の評価系を用いて、メチル(5―ベンゾイル―1H―ベンズイミダゾール―2―イル)カルバマート:化合物4の作用効果を試験した結果を示すグラフである。メチル(5―ベンゾイル―1H―ベンズイミダゾール―2―イル)カルバマートをヨウ素酸ナトリウムと同時に処置することによって、細胞生存率が上昇した。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本明細書中、「網膜色素上皮障害」とは、加齢、遺伝的素因などを原因とする網膜色素上皮の変性、萎縮などにより網膜色素上皮が物理的に障害されること、および/または、網膜色素上皮の機能が低下することを意味する。
【0020】
本明細書中、「網膜色素上皮障害を原因する網膜疾患」とは、上述した定義に合致する全ての疾患を意味する。具体例としては、萎縮型加齢黄斑変性、滲出型加齢黄斑変性、初期加齢黄斑症、網膜色素変性症、シュタルガルト病、レーベル病、脈絡膜硬化症、全脈絡膜萎縮症、卵黄状黄斑ジストロフィ、小口病、眼底白点症、白点状網膜炎などを挙げることができる。
【0021】
本明細書中、「対象薬剤」とは、ヨウ素酸ナトリウム誘発網膜色素上皮細胞の細胞死を抑制する薬剤を意味する。
【0022】
これらの対象薬剤またはその医薬的に許容される塩は、有機合成化学の分野における通常の方法に従って製造でき、あるいは、市販されている。
【0023】
対象薬剤の塩としては、医薬的に許容される塩であれば特に制限はなく、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硝酸、硫酸、リン酸などの無機酸との塩、酢酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、クエン酸、酒石酸、アジピン酸、グルコン酸、グルコヘプト酸、グルクロン酸、テレフタル酸、メタンスルホン酸、乳酸、馬尿酸、1,2−エタンジスルホン酸、イセチオン酸、ラクトビオン酸、オレイン酸、パモ酸、ポリガラクツロン酸、ステアリン酸、タンニン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、硫酸ラウリルエステル、硫酸メチル、ナフタレンスルホン酸、スルホサリチル酸などの有機酸との塩、臭化メチル、ヨウ化メチルなどとの四級アンモニウム塩、臭素イオン、塩素イオン、ヨウ素イオンなどのハロゲンイオンとの塩、リチウム、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属との塩、カルシウム、マグネシウムなどのアルカリ土類金属との塩、鉄、亜鉛などとの金属塩、アンモニアとの塩、トリエチレンジアミン、2−アミノエタノール、2,2−イミノビス(エタノール)、1−デオキシ−1−(メチルアミノ)−2−D−ソルビトール、2−アミノ−2−(ヒドロキシメチル)−1,3−プロパンジオール、プロカイン、N,N−ビス(フェニルメチル)−1,2−エタンジアミンなどの有機アミンとの塩などが挙げられる。また、対象薬剤は水和物または溶媒和物の形態をとっていてもよい。
【0024】
選択したこれらの候補薬剤のRPE細胞死に対する保護効果、すなわち、RPE細胞の細胞死を抑制する効果を、ヨウ素酸ナトリウムを使ったインビトロの評価系を用いて確認した。その結果、後述の実施例に記載されるような、具体的な対象薬剤を得た。
【0025】
これらの対象薬剤についてのインビトロ評価系での結果は、生体内においても同様の結果を生じることが、例えば、特開2011−6406、J.Toxicol.Sci.21:Suppl 1,15−32(1996)等に示される技術常識から合理的に予測される。
【0026】
したがって、本発明において使用される対象薬剤またはその医薬的に許容される塩は、RPE障害疾患を予防または治療するため、患者に対して経口的または非経口的に投与され得る。本発明にしたがう好ましい投与形態としては、経口投与、眼への局所投与(点眼投与、結膜嚢内投与、硝子体内投与、結膜下投与、テノン嚢下投与など)、静脈内投与、経皮投与などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0027】
本発明において使用される対象薬剤またはその医薬的に許容される塩は、必要に応じて医薬的に許容され得る添加剤と共に、投与に適した剤型に製剤化される。経口投与に適した剤型としては、例えば、カプセル剤、細粒剤、顆粒剤、散剤、丸剤、錠剤などが挙げられる。また、非経口投与に適した剤型としては、例えば、注射剤、点眼剤、眼軟膏、貼布剤、ゲル、挿入剤などが挙げられる。なお、これらは当該分野で汎用されている通常の技術を用いて調製することができる。さらに、本発明において使用される対象薬剤またはその医薬的に許容される塩は、これらの製剤の他に眼内インプラント用製剤やマイクロスフェアーなどのDDS(ドラッグデリバリーシステム)化された製剤にすることもできる。
【0028】
本発明において使用される対象薬剤またはその医薬的に許容される塩の好ましい剤型は、カプセル剤、細粒剤、顆粒剤、散剤、丸剤または錠剤である。
【0029】
例えば、本発明において使用される対象薬剤またはその医薬的に許容される塩は、例えば、結晶セルロース、乳糖、ブドウ糖、D−マンニトール、無水酸水素カルシウム、デンプン、ショ糖などの賦形剤(diluents);カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウム、クロスポピドン、デンプン、部分アルファー化デンプン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースなどの崩壊剤(disintegrants);ヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース、アラビアゴム、デンプン、部分アルファー化デンプン、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコールなどの結合剤(binders);ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、タルク、含水二酸化ケイ素、硬化油などの滑沢剤(luburicants);精製白糖、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルピロリドンなどのコーティング剤(coating agents);クエン酸、アスパルテーム、アスコルビン酸、メントールなどの矯味剤(flavoring substance)などの医薬的に許容される添加剤とともに、カプセル剤(capsules)、細粒剤(subtle granules)、顆粒剤(granules)、散剤(powder)、丸剤(pills)または錠剤(tablets)として調製することができる。
【0030】
すなわち、カプセル剤は、対象薬剤またはその医薬的に許容される塩をそのまま、または上記の医薬的に許容される添加剤を加えて顆粒状粉末状、ペースト状、懸濁状または液状とした上で、カプセル封入することで調製することができる。
【0031】
細粒剤、顆粒剤、散剤および丸剤は、上記添加剤を加えて対象薬剤またはその医薬的に許容される塩を細粒状、粒状、粉末状または球状とすることで調製することができる。また、錠剤は、本発明において使用される対象薬剤またはその医薬的に許容される塩に上記添加剤を加えた上で、間接圧縮法(indirect compression)または間接圧縮法(indirect compression)を用いて調製することができる。
【0032】
注射剤は、塩化ナトリウムなどの等張化剤;リン酸ナトリウムなどの緩衝化剤;ポリオキシエチレンソルビタンモノオレートなどの界面活性剤;メチルセルロースなどの増粘剤
などから必要に応じて選択して用い、調製することができる。
【0033】
点眼剤は、塩化ナトリウム、濃グリセリンなどの等張化剤;リン酸ナトリウム、酢酸ナトリウムなどの緩衝化剤;ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート、ステアリン酸ポリオキシル40、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油などの界面活性剤;クエン酸ナトリウム、エデト酸ナトリウムなどの安定化剤;塩化ベンザルコニウム、パラベンなどの防腐剤などから必要に応じて選択して用い、調製することができ、pHは眼科製剤に許容される範囲内にあればよいが、通常4〜8の範囲内が好ましい。また、眼軟膏は、白色ワセリン、流動パラフィンなどの汎用される基剤を用い、調製することができる。
【0034】
挿入剤は、生体分解性ポリマー、例えばヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシビニルポリマー、ポリアクリル酸などの生体分解性ポリマーを対象薬剤とともに粉砕混合し、この粉末を圧縮成型することにより、調製することができ、必要に応じて、賦形剤、結合剤、安定化剤、pH調整剤を用いることができる。眼内インプラント用製剤は、生体分解性ポリマー、例えばポリ乳酸、ポリグリコール酸、乳酸・グリコール酸共重合体、ヒドロキシプロピルセルロースなどの生体分解性ポリマーを用い、調製することができる。
【0035】
本発明において使用される対象薬剤またはその医薬的に許容される塩の投与量は、剤型、投与すべき患者の症状の軽重、年令、体重、医師の判断などに応じて適宜変えることができるが、経口投与の場合、一般には、成人に対し1日あたり0.01〜10000mg、好ましくは0.1〜5000mg、より好ましくは0.5〜2500mgを1回または数回に分けて投与することができ、注射剤の場合、一般には、成人に対し0.0001〜2000mgを1回または数回に分けて投与することができる。また、点眼剤または挿入剤の場合には、0.000001〜10%(w/v)、好ましくは0.00001〜1%(w/v)、より好ましくは0.0001〜0.1%(w/v)の有効成分濃度のものを1日1回または数回投与することができる。さらに、貼布剤の場合は、成人に対し0.0001〜2000mgを含有する貼布剤を貼布することができ、眼内インプラント用製剤の場合は、成人に対し0.0001〜2000mg含有する眼内インプラント用製剤を眼内にインプラントすることができる。
【0036】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、これらの実施例は本発明をよりよく理解するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない
【実施例】
【0037】
[候補薬剤の評価試験]
ヨウ素酸ナトリウムにより誘発されるRPE細胞の障害による細胞死に対する薬剤の防御作用評価系を用いて、候補薬剤について、「網膜色素上皮障害を原因とする網膜疾患」に対する治療または予防効果の判定をおこなった。
【0038】
(実験方法)
ARPE−19細胞(ATCC、Cat.No.CRL−2302)を1×104個/ウェルで96ウェルプレートに播種し、インキュベーター(設定:37℃、5%CO2/95%空気)で培養した。培養液は、10%ウシ胎児血清を含有するDMEM/F12を用いた。播種5日後に培養液を除去し、2.5〜7.5mMヨウ素酸ナトリウムおよび対象薬剤を含有する培養液に交換した。なお、対象薬剤はDMSOに溶解し、培養液に0.1%(v/v)になるように添加した。基剤投与群として、0.1%DMSO含有培養液を用いた。培地交換後、インキュベーターで24時間培養した後に培地を取り除き、アラマーブルー試薬(Invitrogen)を10倍に希釈した培地を150μl/wellで加えた。37℃で2時間培養後、Infinite M200(TECAN)を用いて590nmにおける蛍光強度を測定した。なお、細胞を播種せず、測定溶液のみを添加したウェルをブランクとして、全ての測定値から差し引いた。ヨウ素酸ナトリウム無投与群の平均値を100%として、各ウェルの細胞生存率を計算した。
【0039】
[実施例1]
図1〜4にそれぞれ示すように、(3,5―ジブロモ―4―ヒドロキシフェニル)―(2―エチル―3―ベンゾフラニル)メタノン:化合物1、(RS)―2―(p―イソブチルフェニル)プロピオン酸:化合物2、N―[(7S)―1,2,3,10―テトラメトキシ―9―オキソ―5,6,7,9―テトラヒドロベンゾ[α]ヘプタレン―7―イル]アセトアミド:化合物3、およびメチル(5―ベンゾイル―1H―ベンズイミダゾール―2―イル)カルバマート:化合物4がRPE細胞死に対する保護効果を有していると判断された。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、RPE障害疾患の予防または治療のための医薬として有用である。
図1
図2
図3
図4