特開2017-218501(P2017-218501A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特開2017218501-光硬化性組成物および硬化物 図000014
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-218501(P2017-218501A)
(43)【公開日】2017年12月14日
(54)【発明の名称】光硬化性組成物および硬化物
(51)【国際特許分類】
   C08F 2/44 20060101AFI20171117BHJP
   C08F 2/50 20060101ALI20171117BHJP
【FI】
   C08F2/44 A
   C08F2/50
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2016-113646(P2016-113646)
(22)【出願日】2016年6月7日
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504159235
【氏名又は名称】国立大学法人 熊本大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森永 貴大
(72)【発明者】
【氏名】久米 誠
(72)【発明者】
【氏名】大江 靖
(72)【発明者】
【氏名】伊原 博隆
(72)【発明者】
【氏名】高藤 誠
【テーマコード(参考)】
4J011
【Fターム(参考)】
4J011PA13
4J011PB40
4J011PC02
4J011PC08
4J011QA03
4J011QA06
4J011QA23
4J011QA24
4J011SA61
4J011SA84
4J011UA01
4J011VA01
4J011WA10
(57)【要約】
【課題】ヘテロポリ酸化合物と重合性化合物を含む光硬化性組成物であって、高温の加熱処理を行っても着色しない十分な耐熱性を持つ複合体を形成することが可能な光硬化性組成物を提供する。
【解決手段】1種または複数種のヘテロポリ酸化合物と、1種または複数種の重合性化合物と、1種または複数種の光重合開始剤とを含み、ヘテロポリ酸化合物は、タングステンを含むヘテロポリ酸およびその塩、ならびに、モリブデンを含むヘテロポリ酸およびその塩からなる群から選択され、重合性化合物が、式(1)および式(2)からなる群から選択される構造を有する少なくとも1種の化合物を含むことを特徴とする光硬化性組成物。
【化1】

【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a) 1種または複数種のヘテロポリ酸化合物と、
(b) 1種または複数種の重合性化合物と、
(c) 1種または複数種の光重合開始剤と
を含み、
前記ヘテロポリ酸化合物は、タングステンを含むヘテロポリ酸およびその塩、ならびに、モリブデンを含むヘテロポリ酸およびその塩からなる群から選択され、および
前記重合性化合物が、式(1)
【化1】
(式中、R1は、水素およびメチル基からなる群から選択され、R2およびR3は、それぞれ独立的に、水素、ヒドロキシル基またはオキソ基で置換されていてもよい1〜18炭素原子を有するアルキル基、メチル基で置換されていてもよい6〜18炭素原子を有するアリール基、7〜18炭素原子を有するアラルキル基、3〜18炭素原子を有する複素環基、3〜18炭素原子を有する脂環式炭化水素基、2〜20の重合度を有するポリエチレンオキシド基、2〜20の重合度を有するポリプロピレンオキシド基、およびグリシジル基からなる群から選択され、ここで、R2およびR3は、エーテル酸素を介して結合されていてもよい。)、および
式(2)
【化2】
(式中、R1は、水素およびメチル基からなる群から選択され、R4は、ヒドロキシル基またはオキソ基で置換されていてもよい1〜18炭素原子を有するアルキレン基、メチル基で置換されていてもよい6〜18炭素原子を有するアリーレン基、7〜18炭素原子を有するアリールアルカンから誘導される2価基、3〜18炭素原子を有する複素環から誘導される2価基、および3〜18炭素原子を有する脂環式炭化水素から誘導される2価基なる群から選択される。)
からなる群から選択される構造を有する少なくとも1種の化合物を含む
ことを特徴とする光硬化性組成物。
【請求項2】
前記重合性化合物は、分子中に1個のエチレン性炭素−炭素二重結合を有する、1種または複数種の追加の化合物をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の光硬化性組成物。
【請求項3】
前記重合性化合物は、式(1)で表される構造を有する化合物および式(2)で表される構造を有する化合物からなる群から選択される1種または複数種の化合物からなることを特徴とする請求項1に記載の光硬化性組成物。
【請求項4】
(d) 1種または複数種の溶媒
をさらに含み、前記溶媒の常圧下における沸点が250℃以下であり、前記溶媒は常温で液体であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の光硬化性組成物。
【請求項5】
前記ヘテロポリ酸化合物(a)の含有量は、前記光硬化性組成物の質量を基準として5〜95質量%であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の光硬化性組成物。
【請求項6】
前記ヘテロポリ酸化合物(a)の含有量は、成分(d)を除いた前記光硬化性組成物の質量を基準として5〜95質量%であることを特徴とする請求項4に記載の光硬化性組成物。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載の光硬化性組成物に光を照射することによって得られることを特徴とする硬化物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タングステンおよび/またはモリブデンを含むヘテロポリ酸と光硬化性樹脂とを含む光硬化性組成物、ならびに、ヘテロポリ酸と硬化された光硬化性樹脂とが複合化した硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
屈折率は物質の特性の1つである。屈折率は、構成元素、分子構造、結晶構造、荷電に大きく影響され、屈折率の変調は容易ではない。通常、有機化合物からなる高分子の屈折率は1.4〜1.6付近に限定され、無機材料の0.17(銀)〜4.2(シリコン)に比べてバリエーションに欠ける。これは、高分子の主成分が原子屈折の低い炭素を主成分としているためである。しかし、高分子の成形性および/または軽量性を利用するため、レンズなど光学材料の用途では、硫黄原子および/または臭素原子の導入などの分子設計により、高分子材料の屈折率を増大させる試みが行われている。また、高分子材料と、高屈折率を有する金属酸化物微粒子との複合化による屈折率変調も行われている。これは、機能性を有する高分子の屈折率変調は、構成元素の組み替えでは達成できないためである。用いられる金属酸化物は、アルミナ、チタニア、ジルコニアなどを含む(たとえば、特許文献1参照)。しかしながら、複合材料の透明性を高めるために、数nmの粒径を有する金属酸化物微粒子を複合材料中に均一に分散させる必要がある。そのため、金属酸化物微粒子を含む複合材料の製造は容易ではない。
【0003】
上記のような課題を解決するため、タングステン酸および/またはモリブデン酸と高分子との複合体を容易に製造するための方法と、その方法により得られ、高い透明性と、所望の屈折率を有する複合体が提案されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−221598号公報
【特許文献2】国際公開第2013/191130号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
タングステン酸および/またはモリブデン酸と高分子との複合体は屈折率を調整する光学材料として、ディスプレイや半導体への使用が想定される。その場合、後工程で200℃前後の加熱処理を行う場合がある。
【0006】
しかしながら、タングステン酸および/またはモリブデン酸と高分子との複合体は耐熱性が乏しいという問題があった。具体的には、100℃以上の加熱処理によって着色が生じる場合があった。本発明は、この問題を解決するためになされたものであり、広い屈折率の調整範囲を有すると同時に、高温での加熱処理でも着色しない十分な耐熱性を持つ光硬化性組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の実施態様の光硬化性組成物は、(a)1種または複数種のヘテロポリ酸化合物と、(b)1種または複数種の重合性化合物と、(c)1種または複数種の光重合開始剤とを含み、前記ヘテロポリ酸化合物は、タングステンを含むヘテロポリ酸およびその塩、ならびに、モリブデンを含むヘテロポリ酸およびその塩からなる群から選択され、前記重合性化合物が、式(1)および式(2)からなる群から選択される構造を有する少なくとも1種の化合物を含むことを特徴とする。
【0008】
【化1】
【0009】
(式中、R1は、水素およびメチル基からなる群から選択され、R2およびR3は、それぞれ独立的に、水素、ヒドロキシル基またはオキソ基で置換されていてもよい1〜18炭素原子を有するアルキル基、メチル基で置換されていてもよい6〜18炭素原子を有するアリール基、7〜18炭素原子を有するアラルキル基、3〜18炭素原子を有する複素環基、3〜18炭素原子を有する脂環式炭化水素基、2〜20の重合度を有するポリエチレンオキシド基、2〜20の重合度を有するポリプロピレンオキシド基、およびグリシジル基からなる群から選択され、ここで、R2およびR3は、エーテル酸素を介して結合されていてもよい。)
【0010】
【化2】
【0011】
(式中、R1は、水素およびメチル基からなる群から選択され、R4は、ヒドロキシル基またはオキソ基で置換されていてもよい1〜18炭素原子を有するアルキレン基、メチル基で置換されていてもよい6〜18炭素原子を有するアリーレン基、7〜18炭素原子を有するアリールアルカンから誘導される2価基、3〜18炭素原子を有する複素環から誘導される2価基、および3〜18炭素原子を有する脂環式炭化水素から誘導される2価基なる群から選択される。)
【0012】
第1の実施態様の光硬化性組成物において、重合性化合物は、分子中に1個のエチレン性炭素−炭素二重結合を有する、1種または複数種の追加の化合物をさらに含んでもよい。好ましくは、第1の実施態様の重合性化合物は、式(1)で表される化合物および式(2)で表される化合物からなる群から選択される少なくとも1種の化合物からなる。また、ヘテロポリ酸化合物(a)の含有量は、光硬化性組成物の質量を基準として5〜95質量%であってもよい。
【0013】
第1の実施態様の変形例の光硬化性組成物は、(d)1種または複数種の溶媒をさらに含んでもよい。ここで溶媒の常圧下における沸点が250℃以下であり、前記溶媒は常温で液体であることが望ましい。また、本変形例において、ヘテロポリ酸化合物(a)の含有量は、成分(d)を除いた光硬化性組成物の質量を基準として5〜95質量%であってもよい。
【0014】
本発明の第2の実施態様の硬化物は、第1の実施態様の光硬化性組成物に光を照射することによって得られる。
【発明の効果】
【0015】
以上の構成を採用することにより、タングステンおよび/またはモリブデンのヘテロポリ酸を含み、かつ、高温で加熱処理を行っても着色しない十分な耐熱性を有する硬化物を形成することが可能となる。また、得られた硬化物において、屈折率を広い範囲で調整することが可能となる。
【0016】
また、以上の構成を採用した硬化物は、CCD、C−MOSセンサーなどに用いられるマイクロレンズアレイ;照明およびディスプレイに用いられる光散乱層;発光素子(有機EL素子、発光ダイオード(LED)、半導体レーザーなどを含む)、ディスプレイ、光電池、光学フィルターなどに用いられる反射防止層(膜);光導波路レジスト;フォトニック構造を利用した表示素子、分布反射(DBR)型もしくは分布帰還(DFB)型レーザー素子に用いられる光閉込め素材;ランダム型レーザー発振素子の散乱体;分光フィルター、バンドパスフィルターなどに用いられる多層反射膜として利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】硬化物中のヘテロポリ酸化合物の含有量と硬化物の屈折率との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の第1の実施態様の光硬化性組成物は、(a)1種または複数種のヘテロポリ酸化合物と、(b)1種または複数種の重合性化合物と、(c)1種または複数種の光重合開始剤とを含み、前記ヘテロポリ酸化合物は、タングステンを含むヘテロポリ酸およびその塩、ならびに、モリブデンを含むヘテロポリ酸およびその塩からなる群から選択され、前記重合性化合物が、式(1)および式(2)からなる群から選択される構造を有する少なくとも1種の化合物を含むことを特徴とする。
【0019】
【化3】
【0020】
(式中、R1は、水素およびメチル基からなる群から選択され、R2およびR3は、それぞれ独立的に、水素、ヒドロキシル基またはオキソ基で置換されていてもよい1〜18炭素原子を有するアルキル基、メチル基で置換されていてもよい6〜18炭素原子を有するアリール基、7〜18炭素原子を有するアラルキル基、3〜18炭素原子を有する複素環基、3〜18炭素原子を有する脂環式炭化水素基、2〜20の重合度を有するポリエチレンオキシド基、2〜20の重合度を有するポリプロピレンオキシド基、およびグリシジル基からなる群から選択され、ここで、R2およびR3は、エーテル酸素を介して結合されていてもよい。)
【0021】
【化4】
【0022】
(式中、R1は、水素およびメチル基からなる群から選択され、R4は、ヒドロキシル基またはオキソ基で置換されていてもよい1〜18炭素原子を有するアルキレン基、メチル基で置換されていてもよい6〜18炭素原子を有するアリーレン基、7〜18炭素原子を有するアリールアルカンから誘導される2価基、3〜18炭素原子を有する複素環から誘導される2価基、および3〜18炭素原子を有する脂環式炭化水素から誘導される2価基なる群から選択される。)
【0023】
本実施態様において、ヘテロポリ酸化合物(a)は、光硬化性組成物中に粒子として分散している状態ではなく、光硬化性組成物中に溶解した状態で、均一に存在している。本実施態様の光硬化性組成物に光を照射することによって、ヘテロポリ酸化合物(a)が均一に存在した硬化物を得ることができる。
【0024】
本実施態様において、式(1)および/または式(2)で表される構造を有する化合物を重合性化合物として用いることによって、高温での加熱処理を行っても、着色の発生しない光硬化性組成物を得ることができる。
【0025】
(a) ヘテロポリ酸化合物
本実施態様で用いられるヘテロポリ酸化合物は、タングステンを含むヘテロポリ酸およびその塩、ならびに、モリブデンを含むヘテロポリ酸およびその塩からなる群から選択される。タングステンを含むヘテロポリ酸およびモリブデンを含むヘテロポリ酸の非制限的な例は、ケイタングステン酸(H4[SiW1240]など)、リンタングステン酸(H3[PW1240]など)、ケイモリブデン酸(H4[SiMo1240]など)、リンモリブデン酸(H3[PMo1240]など)、リンタングストモリブデン酸(H3[PW12-xMox40]など)、およびリンバナドモリブデン酸(H3[PV12-xMox40]など)を含む。これらのヘテロポリ酸の塩の具体的な例は、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属塩、およびアンモニウム塩を含む。さらに、前述のヘテロポリ酸およびその塩は、水和物であってもよいし、水和物を加熱処理して得られる無水物または結晶水の含有量の少ない形態であってもよい。また、本実施態様において、前述のヘテロポリ酸またはその塩の1種を用いてもよいし、2種以上のヘテロポリ酸またはその塩を組み合わせて用いてもよい。
【0026】
ヘテロポリ酸化合物(a)の含有量を調整することで、硬化物の屈折率を調整することができる。光硬化性組成物が溶媒(d)を含まない場合、ヘテロポリ酸化合物(a)の含有量は、光硬化性組成物の質量を基準として、典型的には5〜95質量%である。光硬化性組成物が溶媒(d)を含む場合、ヘテロポリ酸化合物(a)の含有量は、溶媒(d)を除いた光硬化性組成物の質量を基準として、典型的には5〜95質量%である。このような範囲内の含有量とすることにより、コストの増大および硬化物の脆化を防止するとともに、硬化物の屈折率を汎用アクリレート樹脂で調整可能な範囲よりも高い範囲で調整することが可能となる。なお、ヘテロポリ酸化合物(a)として水和物を用いる場合、ヘテロポリ酸化合物(a)の質量および組成物の総質量から水和水の質量を除外する。以上をまとめると、ヘテロポリ酸化合物(a)の含有量は、以下の式で算出される。
【0027】
【数1】
【0028】
さらに、光硬化後の硬化物中のヘテロポリ酸化合物(a)の含有量は、硬化物を酸素存在下で550℃まで加熱する熱質量分析−示差熱分析(TG−DTA)によって求めることができる。上記の条件でTG−DTAを行うことにより、残存する水和水および溶媒(d)の質量、および重合性化合物(b)および光重合開始剤(c)から誘導される樹脂成分の質量と、ヘテロポリ酸化合物(a)中のヘテロポリ酸またはその塩(水和水を含まない)の質量とを、明確に区別して定量することができる。
【0029】
(b) 重合性化合物
本実施態様で用いられる重合性化合物は、式(1)および式(2)からなる群から選択される構造を有する化合物を含む。また、本実施態様の重合性化合物は、ヘテロポリ酸化合物(a)を均一に分散または溶解できることを条件として、分子中に1個のエチレン性炭素−炭素二重結合を有する、1種または複数種の追加の化合物をさらに含んでもよい。好ましくは、第1の実施態様の重合性化合物は、式(1)で表される化合物および式(2)で表される化合物からなる群から選択される少なくとも1種の化合物からなる。
【0030】
【化5】
【0031】
(式中、R1は、水素およびメチル基からなる群から選択され、R2およびR3は、それぞれ独立的に、水素、ヒドロキシル基(−OH)またはオキソ基(=O)で置換されていてもよい1〜18炭素原子を有するアルキル基、メチル基で置換されていてもよい6〜18炭素原子を有するアリール基、7〜18炭素原子を有するアラルキル基、3〜18炭素原子を有する複素環基、3〜18炭素原子を有する脂環式炭化水素基、2〜20の重合度を有するポリエチレンオキシド基、2〜20の重合度を有するポリプロピレンオキシド基、およびグリシジル基からなる群から選択され、ここで、R2およびR3は、エーテル酸素を介して結合されていてもよい。)
【0032】
3〜18炭素原子を有する複素環基は、環構成原子として窒素(N)、酸素(O)、ケイ素(Si)、硫黄(S)などを含んでもよい。3〜18炭素原子を有する脂環式炭化水素基は、環構造のみで構成されていてもよいし、環構造にアルキル鎖が結合した構造を有してもよい。R2および/またはR3として用いる場合、脂環式炭化水素基は、環構造またはアルキル鎖のいずれに遊離原子価(結合手)を有してもよい。2〜20の重合度を有するポリエチレンオキシド基は、−(CH2CH2O)n-1CH2CH2OH(式中、nは、重合度を表す2〜20の整数である)の構造を有する。2〜20の重合度を有するポリプロピレンオキシド基は、−(CH2CH(CH3)O)n-1CH2CH(CH3)OH(式中、nは、重合度を表す2〜20の整数である)の構造を有する。
【0033】
式(1)の構造を有する重合性化合物の非限定的な例は、アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド
N-メトキシメチルアクリルアミド、ダイアセトンアクリルアミド、N−アクリロイルモルホリン、N−ヒドロキシメチルアクリルアミド、およびN−ヒドロキシエチルアクリルアミドを含む。
【0034】
【化6】
【0035】
(式中、R1は、水素およびメチル基からなる群から選択され、R4は、ヒドロキシル基またはオキソ基で置換されていてもよい1〜18炭素原子を有するアルキレン基、メチル基で置換されていてもよい6〜18炭素原子を有するアリーレン基、7〜18炭素原子を有するアリールアルカンから誘導される2価基、3〜18炭素原子を有する複素環から誘導される2価基、および3〜18炭素原子を有する脂環式炭化水素から誘導される2価基なる群から選択される。)
【0036】
7〜18炭素原子を有するアリールアルカンから誘導される2価基は、当該アリールアルカンの異なる炭素原子に結合した2つの水素原子を遊離原子価(結合手)に変更した基を意味する。アリールアルカンから誘導される2価基の2つの遊離原子価(結合手)は、アリール部分またはアルカン部分のいずれに存在してもよい。3〜18炭素原子を有する複素環から誘導される2価基は、環構成原子として窒素(N)、酸素(O)、ケイ素(Si)、硫黄(S)などを含んでもよい。複素環から誘導される2価基は、複素環の異なる炭素原子に結合した2つの水素原子を除去して、遊離原子価(結合手)とした基を意味する。3〜18炭素原子を有する脂環式炭化水素から誘導される2価基は、環構造のみで構成されていてもよいし、環構造にアルキル鎖が結合した構造を有してもよい。脂環式炭化水素から誘導される2価基は、当該脂環式炭化水素の異なる炭素原子に結合した2つの水素原子を遊離原子価(結合手)に変更した基を意味する。R4として用いる場合、脂環式炭化水素から誘導される2価基の2つの遊離原子価(結合手)は、環構造またはアルキル鎖のいずれに遊離原子価(結合手)を有してもよい。
【0037】
式(2)の構造を有する重合性化合物の非限定的な例は、2−イソシアナトエチルメタクリレートおよび2−イソシアナトエチルアクリレートを含む。また、式(2)を有する重合性化合物のイソシアナート基(−NCO)を、アセトンオキシム、メチルエチルケトンオキシムなどのオキシム類、あるいは、ピラゾール、3−メチルピラゾールなどのピラゾール類を用いて保護して、安定性を向上させてもよい。イソシアナート基の脱保護は、熱解離により実施することができる。たとえば、後述する(3)硬化物をアニールする工程において、イソシアナート基を脱保護してもよい。
【0038】
本実施態様の重合性化合物は、1分子あたり1個のエチレン性炭素−炭素二重結合を有する、1種または複数種の追加の化合物をさらに含んでもよい。追加の化合物の含有量は、耐熱性を維持することができ、かつヘテロポリ酸化合物(a)を均一に分散または溶解できる限りにおいて、特に制限はない。本実施態様の重合性化合物は、100質量部の重合性化合物あたり、好ましくは50重量部以下、より好ましくは30重量部以下の追加の化合物を含んでもよい。
【0039】
追加の化合物の非制限的な例は、以下の化合物を含む:
2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート;
n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート;
グリシジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリール(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシプロピレングリコール(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−2−ヒドロキシプロピルフタレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート;
ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート;
トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、ヘキサフルオロプロピル(メタ)アクリレート、;
2−アダマンタンまたはアダマンタンジオールから誘導され、1つのモノ(メタ)アクリレートを有するアダマンチル(メタ)アクリレート;
リン酸化アルキル(メタ)アクリレート、EO変性リン酸化アルキル(メタ)アクリレート。
【0040】
あるいはまた、オリゴマーまたはポリマーを、追加の化合物として用いてもよい。用いることができるオリゴマーは、側鎖にエチレン性炭素−炭素二重結合を含むエポキシオリゴマー、側鎖にエチレン性炭素−炭素二重結合を含むウレタンオリゴマー、側鎖にエチレン性炭素−炭素二重結合を含むポリエステルオリゴマーなどを含む。用いることができるポリマーは、側鎖にエチレン性炭素−炭素二重結合を有するエポキシポリマー、側鎖にエチレン性炭素−炭素二重結合を有するポリウレタン、側鎖にエチレン性炭素−炭素二重結合を有するポリエステルなどの種々のポリマーを含む。用いるオリゴマーおよびポリマーは、1分子あたり1つのエチレン性炭素−炭素二重結合を有することが望ましい。
【0041】
(c) 光重合開始剤
本実施態様の光硬化性組成物は、1種または複数種の光重合開始剤を含む。光重合開始剤は、光が照射された際にラジカルを発生させる。用いることができる光重合開始剤は、アセトフェノン類、ベンゾイン類、ベンゾフェノン類、ホスフィンオキシド類、ケタール類、アントラキノン類、チオキサントン類などから適宜選択することができる。
【0042】
本実施態様の光硬化性組成物は、100質量部の重合性化合物(b)に対して、典型的には0.1質量部以上20質量部以下、好ましくは1質量部以上10質量部以下の光重合開始剤(c)を含む。
【0043】
(d) 溶媒
本実施態様の光硬化性組成物は、粘度調整などの目的のために、溶媒をさらに含んでもよい。用いることができる溶媒は、常圧(大気圧)での沸点が250℃以下であり、常温(25℃)で液体の化合物を含む。また、溶媒には、光硬化性組成物に用いられる材料を溶解できることが求められる。用いることができる溶媒の非制限的な例は:
水;
ジブチルエーテル、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、プロピレンオキシド、ジオキサン、ジオキソラン、トリオキサン、テトラヒドロフラン、アニソールおよびフェネトールなどのエーテル類;
アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジプロピルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、およびメチルシクロヘキサノンなどのケトン類;
蟻酸エチル、蟻酸プロピル、蟻酸n−ペンチル、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン醸エチル、酢酸n−ペンチル、2−エトキシエチルアセテート、およびγ−ブチロラクトンなどのエステル類;
エタノール、イソプロピルアルコール、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−ブトキシエタノールなどのアルコール類;および
ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどのアミド類
を含む。
【0044】
本実施態様においては、1種の溶媒を用いてもよいし、2種以上の溶媒の混合物を用いてもよい。
【0045】
(e) 添加剤
本実施態様の光硬化性組成物は、所望される用途の属する技術分野において知られている任意の添加剤をさらに含んでもよい。用いることができる添加剤は、たとえば、光増感剤、連鎖移動剤、表面調整剤、酸化防止剤、密着性向上剤、離型剤などを含む。
【0046】
本発明の第2の実施態様の硬化物は、第1の実施態様の光硬化性組成物に光を照射することによって形成される。
【0047】
本実施態様の硬化物は、(1)光硬化性組成物の膜を形成する工程と、(2)光硬化性組成物の膜に光を照射する工程とを含む方法によって形成される。必要に応じて、工程(1)と(2)との間に、(1’)光硬化性組成物の膜を乾燥させる工程を実施してもよい。また、工程(2)の後に、(3)硬化物をアニールする工程を実施してもよい。以下、それぞれの工程について説明する。
【0048】
(1) 光硬化性組成物の膜を形成する工程
本工程は、塗布、注型、流延(キャスト)、押し出しなどの当該技術において知られている任意の技術を用いて実施することができる。
【0049】
塗布を用いて本工程を実施する場合、ロールコーター、リバースロールコーター、グラビアコーター、マイクログラビアコーター、ナイフコーター、バーコーター、ワイヤーバーコーター、ダイコーター、ディップコーターなどを用いることができる。ここで、枚葉状の基材に光硬化性組成物を塗布する枚葉方式を用いてもよいし、ロール状の基材に光硬化性組成物を塗布し、引き続いて基材をロールに巻き取るロール・ツー・ロール方式を用いてもよい。なお、ロール・ツー・ロール方式を用いる場合、塗布と巻き取りとの間に、後述する(2)光硬化性組成物の膜に光を照射する工程を実施して、巻き取り前に硬化物の膜を形成してもよい。特に、ロール・ツー・ロール方式を用いることが好ましい。なぜなら、ロール・ツー・ロール方式においては、基材を、巻き出し部(供給部)から、塗布部、および任意選択的に光照射部を介して、巻き取り部まで、連続走行させることにより、光硬化性組成物または硬化物の膜を連続的に製造できるからである。また、ロール・ツー・ロール方式を用いる場合、基材は、典型的には25μm以上200μm以下、好ましくは40μm以上80μm以下の膜厚を有する。
【0050】
注型を用いて本工程を実施する場合、型の表面に凹凸を付与することによって、最終的に得られる硬化物の表面に凹凸を形成することができる。また、光を透過する材料で形成された型を用いて、型の中で(2)光硬化性組成物の膜に光を照射する工程を実施してもよい。
【0051】
本工程で用いる基材は、当該技術において知られている任意の材料を含む。基材を構成する材料の非制限的な例は、ガラス、シリコン、および、ポリエチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンテレフタレートなどの熱可塑性材料を含む。あるいはまた、硬化物の用途に依存するが、基材は、前述の材料の上に形成された種々の機能部品を有してもよい。たとえば、シリコンウェーハの上に、有機EL素子、種々のレーザー素子、光電池、受光素子などを形成したものを、本工程の基材として用いてもよい。
【0052】
(1’) 光硬化性組成物の膜を乾燥させる工程
必要に応じて、工程(1)と後述する工程(2)との間に、光硬化性組成物の膜を乾燥させる工程を設けてもよい。特に、光硬化性組成物が溶媒を含む場合に、溶媒を留去するのに有用である。本工程は、光硬化性組成物の膜を乾燥炉内を通過させる方法、光硬化性組成物の膜に乾燥風を吹き付る方法、光硬化性組成物の膜を加熱する方法など、当該技術において知られている任意の方法で実施することができる。用いることができる乾燥炉は、放射型乾燥炉、循環風型乾燥炉などを含む。また、乾燥風の形成には、熱風器などを使用することができる。光硬化性組成物の膜の加熱には、加熱ロール、赤外線ヒータなどを使用することができる。
【0053】
(2) 光硬化性組成物の膜に光を照射する工程
続いて、光硬化性組成物の膜に光を照射して、光硬化を起こして、硬化物を形成する。本工程においては、当該技術において知られている任意の光源を用いることができる。用いることができる光源は、高圧水銀灯、低圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、カーボンアークランプ、キセノンアークランプなどを含む。
【0054】
ここで、硬化物の表面に凹凸などの所定のパターンを形成することが求められる場合には、所定のパターンの反転形状を有するスタンパを光硬化性組成物の膜に押圧した状態で光を照射してもよい。スタンパが光を透過する材料で形成されている場合、スタンパを通して光の照射を行ってもよい。光硬化が終了した後に、スタンパを除去することによって、所定のパターンを得ることができる。また、光硬化性組成物そのものがスタンパを除去後も形状を維持するのに十分な稠度を有する場合、スタンパを除去した後に、光を照射してもよい。
【0055】
あるいはまた、基材上の一部の領域のみに硬化物を形成することが求められる場合においては、所定のパターンを有するフォトマスクを通して光を照射してもよい。光照射に引き続いて、光が照射されなかった領域の光硬化性組成物を、溶媒などを用いる洗浄によって除去することができる。一方、光が照射された領域では、光硬化が進行して硬化物が得られる。この方法は、機能部品を含む基材上の所定の位置のみに硬化物を形成する場合などに特に有効である。
【0056】
(3) 硬化物をアニールする工程
本実施態様の硬化物はアニールしてもよい。本発明における「アニール」は、対象物を適当な温度に加熱し、所定の時間にわたって対象物を当該温度を保持し、その後に対象物を徐冷する処理を意味する。加熱温度は、たとえば100℃〜200℃の範囲内であってもよい。また、対象物を前述の加熱温度に保持する時間は、たとえば5分間〜120分間の範囲内であってもよい。
【0057】
アニール処理は、硬化物の硬度の増大、耐水性の向上、および耐溶媒性の向上において有用である。
【0058】
上記で説明した方法で得られる硬化物は、汎用アクリレート樹脂で調整可能な範囲(約1.4〜1.6)よりも高い範囲の屈折率を有することができる。また、屈折率は、ヘテロポリ酸化合物(a)の含有量を変更することによって調製できる。より具体的には、本実施態様の硬化物は、約1.55〜約1.80の範囲内の屈折率を有することができる。
【0059】
よって、本実施態様の硬化物は、高い屈折率および/または高い成形性が要求される用途において有用である。たとえば、本実施態様の硬化物は、CCD、C−MOSセンサーなどに用いられるマイクロレンズアレイ;照明およびディスプレイに用いられる光散乱層;発光素子(有機EL素子、発光ダイオード(LED)、半導体レーザーなどを含む)、ディスプレイ、光電池、光学フィルターなどに用いられる反射防止層(膜);光導波路レジスト;フォトニック構造を利用した表示素子、分布反射(DBR)型もしくは分布帰還(DFB)型レーザー素子に用いられる光閉込め素材;ランダム型レーザー発振素子の散乱体;分光フィルター、バンドパスフィルターなどに用いられる多層反射膜に適用できると信じられる。
【実施例】
【0060】
(実施例1)
以下の材料を混合して光硬化性組成物を調製した。
(a) ヘテロポリ酸化合物
ケイタングステン酸26水和物(SiW12、和光純薬(株)製) 69.9質量部
(b) 重合性化合物;
ヒドロキシエチルアクリルアミド(HEAA、KJケミカルズ(株)製) 38.0質量部;および
(c) 光重合開始剤
2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−ホスフィンオキシド(Lucirin TPO、BASF社製) 2.0質量部。
【0061】
ヒドロキシエチルアクリルアミドは、R1およびR3が水素であり、R2がヒドロキシエチル基である、式(1)の構造を有する。材料が溶解しにくい場合には、50℃〜60℃に加熱して完全に溶解させた。なお、水和水を除外すると、上記の組成におけるヘテロポリ酸化合物(a)の含有量は60質量%であった。
【0062】
得られた光硬化性組成物を、ワイヤーバーコーターを用いてガラス基材上に塗布した。組成物の塗布量は、硬化後の膜の膜厚が7μmとなるように調製した。続いて、コンベア式紫外線硬化装置を援用して、光硬化性組成物の膜に高圧水銀ランプの光を照射して、硬化膜を得た。光の照射量を300mJ/cm2とした。
【0063】
(実施例2、5〜7および9、比較例1〜4)
光硬化性組成物の組成を、第1表に示す組成に変更したことを除いて、実施例1の手順を繰り返した、硬化膜を得た。
【0064】
実施例2で用いたN,N−ジエチルアクリルアミドは、式(1)において、R1が水素であり、R2およびR3がエチル基である化合物である。実施例9においては、ヘテロポリ酸化合物として、ケイタングステン酸26水和物に代えてリンタングステン酸30水和物を用いた。
【0065】
比較例1、2,3においては、重合性化合物をそれぞれ、2−ヒドロキシエチルアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレートに変更した。これらの化合物は、式(1)にも式(2)にも該当しない構造を有する化合物である。比較例4においては、重合性化合物をトリメチロールプロパントリアクリレートに、ヘテロポリ酸化合物をリンタングステン酸30水和物にそれぞれ変更した。
【0066】
(実施例3、4および8)
光硬化性組成物の組成を、第1表に示す溶媒を含む組成に変更したこと、およびワイヤーバーコーターを用いた塗布に続いて、50℃のオーブン中で1分間にわたる乾燥を行ったことを除いて、実施例1の手順を繰り返し、硬化膜を得た。
【0067】
実施例3、4および8は、溶媒としてイソプロピルアルコールを用いた光硬化性組成物に係る。また、実施例3で用いたアクリロイルモルホリンは、式(1)において、R1が水素であり、R2およびR3がエチル基であり、かつ、2つのエチル基の2位がエーテル酸素を介して結合された化合物である。実施例4で用いた2−イソシアナトエチルメタクリレートは、式(2)において、R1がメチル基であり、R4がエチレン基である化合物である。
【0068】
(評価1:耐熱性)
実施例1〜11および比較例1〜3で得られた硬化膜を、60分間にわたって200℃に加熱した。加熱処理後の硬化膜の目視評価を行い、硬化物の着色の有無を評価した。結果を第1表に示す。
【0069】
【表1】
【0070】
実施例1〜3の結果から、式(1)の構造を有する重合性化合物を用いることで、加熱処理を行っても着色しない十分な耐熱性を持つ硬化物を形成できることが分かった。また、実施例4の結果から、式(2)の構造を有する重合性化合物を用いることで、加熱処理を行っても着色しない十分な耐熱性を持つ硬化物を形成できることが分かった。
【0071】
また、実施例5〜8の結果から、ヘテロポリ酸化合物、重合性化合物および光重合開始剤の使用量を変化させても、式(1)の構造を有する重合性化合物を用いることで光硬化性組成物から得られた硬化物が十分な耐熱性を有することが分かった。さらに、実施例9の結果から、異なる種類のヘテロポリ酸化合物を用いた場合であっても、十分な耐熱性を有することが分かった。
【0072】
これに対して、比較例1〜4の結果から、式(1)または式(2)の構造を有する化合物を含まない重合性化合物を用いた光硬化性組成物から得られた硬化物は、200℃、60分の加熱処理によって着色が生じており、耐熱性に乏しいことが分かった。
【0073】
(評価2:屈折率)
実施例1および5〜8で得られた硬化物について、反射分光膜厚計FE−3000(大塚電子(株)製)を用いて633nmの波長における屈折率を測定した。結果を第2表および図1に示す。なお、第2表および図1に示した「ヘテロポリ酸化合物の含有量」は、前述のように、溶媒(d)を除いた光硬化性組成物の質量を基準とし、ヘテロポリ酸化合物の水和水を溶媒とみなした質量パーセントである。
【0074】
【表2】
【0075】
第2表および図1から、ヘテロポリ酸化合物の含有量の増大に伴って、硬化物の屈折率が増大していることが分かる。また、図1から、ヘテロポリ酸化合物の含有量と硬化物の屈折率との間に線形性が認められる。さらに、得られた硬化物の屈折率の範囲は1.573〜1.760に及び、汎用アクリレート樹脂で調整可能な範囲(約1.4〜1.6)よりも高い範囲であった。これらのことから、本発明の硬化物が大きな屈折率を有すること、ならびに、本発明の硬化物の屈折率は、光硬化性組成物の組成によって調整可能であることが分かる。
図1