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特開2017-218527イソシアネート硬化型塗料組成物及びそれを用いた塗装方法
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  • 特開2017218527-イソシアネート硬化型塗料組成物及びそれを用いた塗装方法 図000004
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-218527(P2017-218527A)
(43)【公開日】2017年12月14日
(54)【発明の名称】イソシアネート硬化型塗料組成物及びそれを用いた塗装方法
(51)【国際特許分類】
   C09D 175/04 20060101AFI20171117BHJP
   C09D 7/12 20060101ALI20171117BHJP
   C09D 5/00 20060101ALI20171117BHJP
   C09D 201/00 20060101ALI20171117BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20171117BHJP
   B05D 1/36 20060101ALI20171117BHJP
【FI】
   C09D175/04
   C09D7/12
   C09D5/00 D
   C09D201/00
   B05D7/24 302T
   B05D7/24 303E
   B05D1/36 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2016-115141(P2016-115141)
(22)【出願日】2016年6月9日
(71)【出願人】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001047
【氏名又は名称】特許業務法人セントクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】四方 周二
(72)【発明者】
【氏名】舘 和幸
(72)【発明者】
【氏名】長谷 真子
(72)【発明者】
【氏名】安保 啓司
(72)【発明者】
【氏名】成田 義則
【テーマコード(参考)】
4D075
4J038
【Fターム(参考)】
4D075AE03
4D075AE08
4D075AE12
4D075CA48
4D075DB02
4D075DB04
4D075DB05
4D075DB07
4D075DB12
4D075DB13
4D075DB18
4D075DB20
4D075DB34
4D075DB36
4D075DB38
4D075DB43
4D075DB47
4D075DB48
4D075DB50
4D075DB53
4D075DC12
4D075EB16
4D075EB22
4D075EB33
4D075EB35
4D075EB36
4D075EB38
4D075EB42
4D075EB56
4D075EC07
4D075EC33
4J038DG101
4J038DG191
4J038DG261
4J038DG301
4J038JA64
4J038JB22
4J038NA01
4J038NA24
4J038PA19
4J038PB07
(57)【要約】
【課題】2種類以上の塗料をウェットオンウェットで積層して同時に焼付けて各層を硬化させても、上層表面の凹凸の発生が十分に抑制された積層塗膜を得ることが可能なイソシアネート硬化型塗料組成物を提供すること。
【解決手段】熱硬化性樹脂、イソシアネート系硬化剤、及びイソシアネート基に着脱可能な状態で結合することが可能な流動停止遅延剤を含有することを特徴とするイソシアネート硬化型塗料組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱硬化性樹脂、イソシアネート系硬化剤、及びイソシアネート基に着脱可能な状態で結合することが可能な流動停止遅延剤を含有することを特徴とするイソシアネート硬化型塗料組成物。
【請求項2】
前記流動停止遅延剤が、フェノール性水酸基、ラクタム環、エーテル結合、チオール基、尿素結合、カルバメート基、イミノ基、亜硫酸基、ピラゾール環、イミダゾール環、オキシム基、アミノ基、及び活性メチレン基からなる群から選択される少なくとも1種の構造を有する化合物であることを特徴とする請求項1に記載のイソシアネート硬化型塗料組成物。
【請求項3】
前記流動停止遅延剤が、フェノール化合物、ラクタム化合物、エーテル化合物、メルカプタン化合物、尿素化合物、カルバミン酸エステル化合物、イミン化合物、亜硫酸塩、ピラゾール化合物、イミダゾール化合物、オキシム化合物、アミン化合物、及び活性メチレン化合物からなる群から選択される少なくとも1つの化合物であることを特徴とする請求項1又は2に記載のイソシアネート硬化型塗料組成物。
【請求項4】
前記流動停止遅延剤を含む場合の流動停止時間tが前記流動停止遅延剤を含まない場合の流動停止時間tc0に対して1.1倍以上であることを特徴とする請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載のイソシアネート硬化型塗料組成物。
【請求項5】
前記流動停止遅延剤を含む場合の流動停止時間tと前記流動停止遅延剤を含まない場合の流動停止時間tc0との差(t−tc0)が20秒以上であることを特徴とする請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載のイソシアネート硬化型塗料組成物。
【請求項6】
基材上に形成された少なくとも1層の下層と該下層上に形成された上層とを備える積層塗膜を形成する塗装方法であって、
前記下層を形成するための下層用塗料として熱硬化型塗料を準備し、かつ、前記上層を形成するための上層用塗料として請求項1〜5のうちのいずれか一項に記載のイソシアネート硬化型塗料組成物を準備する準備工程と、
前記基材上に前記下層用塗料及び前記上層用塗料をウェットオンウェットで積層して未硬化積層塗膜を形成する形成工程と、
前記未硬化積層塗膜に焼付け処理を施して前記下層用塗料及び前記上層用塗料を同時に硬化させる焼付工程と、
を含むことを特徴とする塗装方法。
【請求項7】
前記準備工程において、前記熱硬化性樹脂と前記流動停止遅延剤とを混合した後、得られた混合物に前記イソシアネート系硬化剤を混合して前記イソシアネート硬化型塗料組成物を準備することを特徴とする請求項6に記載の塗装方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2種類以上の塗料をウェットオンウェットで積層して同時に焼付ける塗装方法及びそれに用いるイソシアネート硬化型塗料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
2種類以上の塗料をウェットオンウェットで積層した後、焼き付ける塗装方法により積層塗膜を形成する場合において、従来から、すべての塗料を積層した後に積層塗膜を構成するすべての層が焼付けにより硬化するように各層を形成する熱硬化型塗料を選択し、積層塗膜全体を硬化させる方法が用いられていた。しかしながら、従来の塗装方法では、下層を焼き付けてから上層を形成する塗料を積層して焼付けた場合に比べて、積層塗膜の肌及び光沢が劣るという問題があった。このため、積層塗膜の肌及び光沢を向上させるために種々の方法が提案されている。
【0003】
例えば、特開2004−275966号公報(特許文献1)には、中塗り塗料、ベース塗料及びクリア塗料を順次ウェットオンウェットで塗装する工程と、低温加熱段階(硬化温度の25〜80%の温度で硬化時間の5〜30%の時間加熱)及び高温加熱段階(硬化温度の80%を超え、120%以下の温度で硬化時間の30〜130%の時間加熱)の2段階の加熱工程を含む塗膜形成方法が開示されており、これによって塗膜の鮮映性を確実に確保できることも開示されている。
【0004】
また、特開2005−177680号公報(特許文献2)には、少なくとも下塗り塗料、中塗り塗料及び上塗り塗料の3つの塗料を被塗物に塗布する塗装方法であって、前記下塗り塗料を前記被塗物に塗布して下塗り塗膜を形成した後に、前記下塗り塗膜に前記中塗り塗料を塗布して中塗り塗膜を形成し、未硬化の前記中塗り塗膜に前記上塗り塗料を塗布して上塗り塗膜を形成し、塗膜硬化手段により前記中塗り塗膜を前記上塗り塗膜より先に硬化する塗装方法が開示されており、これによって鮮映性が良好な塗膜が形成されることも開示されている。さらに、特許文献2には、水酸基とカルボキシル基とを有する基体樹脂と架橋剤としてブロックイソシアネートを含む塗料を中塗り塗料として用いる場合に、ブロックイソシアネートをブロックするアルコール系ブロック剤として、短いアルキル基を有するアルコール系ブロック剤を用いることによってブロック剤の解離温度が下降し、中塗り塗料の反応温度を低温化できることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−275966号公報
【特許文献2】特開2005−177680号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の塗装技術においては、ウェットオンウェットで積層した塗膜の肌(平滑性)や光沢等の外観品質に大きく影響を及ぼす積層塗膜の層間の界面凹凸は着目されていなかったため、肌や光沢等の外観品質を自動車等の所望の外観品質に要求されるレベルまで向上させることが困難であった。特に、イソシアネート系硬化剤を含有する塗料は焼付け時の硬化反応が速く、このような塗料を上層用塗料として使用すると、下層用塗料が硬化する前に、上層が流動性を失うため、従来のイソシアネート系硬化剤を含有する塗料を用いたウェットオンウェットによる塗装においては、上層の硬化後に、下層と上層との界面に存在する凹凸が上層表面に転写されることによって、外観品質が損なわれ、肌及び光沢を所望の外観品質に要求されるレベルまで向上させることが困難であった。
【0007】
本発明は、このような状況下において、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、2種類以上の塗料をウェットオンウェットで積層して同時に焼付けて各層を硬化させても、上層表面の凹凸の発生が十分に抑制された積層塗膜を得ることができる塗装方法、及びそれに用いられるイソシアネート硬化型塗料組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、2種類以上の塗料をウェットオンウェットで積層して同時に焼付け塗装をする際に、下層(積層塗膜が2層の場合には最下層、3層以上の場合には最下層と少なくとも1層の中間層の2層以上。以下同様。)を形成するための下層用塗料(積層塗膜が2層の場合には最下層用塗料、3層以上の場合には最下層用塗料と少なくとも1種の中間層用塗料の2種以上の塗料。以下同様。)として熱硬化型塗料を使用し、上層を形成するための上層用塗料としてイソシアネート硬化型塗料組成物を使用する場合において、前記イソシアネート硬化型塗料組成物としてイソシアネート基に着脱可能な状態で結合することが可能な流動停止遅延剤を含有するものを用いることによって、上層用塗料の流動停止時間が長くなり、上層が硬化して流動性が著しく低下した後における、各層間の界面凹凸(特に、上層とそれに隣接する下層(以下、この下層を「第一隣接層」といい、積層塗膜が2層の場合には最下層であり、3層以上の場合には中間層である。)との間の界面凹凸)の上層への転写量を少なくすることができ、2種類以上の塗料をウェットオンウェットで積層した後に同時に焼付けを実施しても外観品質により高度に優れた積層塗膜が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明のイソシアネート硬化型塗料組成物は、熱硬化性樹脂、イソシアネート系硬化剤、及びイソシアネート基に着脱可能な状態で結合することが可能な流動停止遅延剤を含有することを特徴とするものである。
【0010】
本発明のイソシアネート硬化型塗料組成物において、前記流動停止遅延剤としては、フェノール性水酸基、ラクタム環、エーテル結合、チオール基、尿素結合、カルバメート基、イミノ基、亜硫酸基、ピラゾール環、イミダゾール環、オキシム基、アミノ基、及び活性メチレン基からなる群から選択される少なくとも1種の構造を有する化合物が好ましく、フェノール化合物、ラクタム化合物、エーテル化合物、メルカプタン化合物、尿素化合物、カルバミン酸エステル化合物、イミン化合物、亜硫酸塩、ピラゾール化合物、イミダゾール化合物、オキシム化合物、アミン化合物、及び活性メチレン化合物からなる群から選択される少なくとも1つの化合物がより好ましい。
【0011】
また、本発明のイソシアネート硬化型塗料組成物においては、前記流動停止遅延剤を含む場合の流動停止時間tが前記流動停止遅延剤を含まない場合の流動停止時間tc0に対して1.1倍以上であることが好ましく、また、前記流動停止遅延剤を含む場合の流動停止時間tと前記流動停止遅延剤を含まない場合の流動停止時間tc0との差(t−tc0)が20秒以上であることが好ましい。
【0012】
本発明の塗装方法は、基材上に形成された少なくとも1層の下層と該下層上に形成された上層とを備える積層塗膜を形成する塗装方法であって、
前記下層を形成するための下層用塗料として熱硬化型塗料を準備し、かつ、前記上層を形成するための上層用塗料として前記本発明のイソシアネート硬化型塗料組成物を準備する準備工程と、
前記基材上に前記下層用塗料及び前記上層用塗料をウェットオンウェットで積層して未硬化積層塗膜を形成する形成工程と、
前記未硬化積層塗膜に焼付け処理を施して前記下層用塗料及び前記上層用塗料を同時に硬化させる焼付工程と、
を含むことを特徴とするものである。
【0013】
前記準備工程においては、前記熱硬化性樹脂と前記流動停止遅延剤とを混合した後、得られた混合物に前記イソシアネート系硬化剤を混合して前記イソシアネート硬化型塗料組成物を準備することが好ましい。
【0014】
なお、本発明において「上層用塗料の流動停止時間」とは、上層用塗料により形成された塗膜を標準昇温速度で加熱した場合に、塗膜が変形しなくなるまでの時間であり、以下の方法により測定されるものである。すなわち、ステンレス鋼板(40mm×50mm×0.5mm)上に焼付け後の膜厚が100μmとなるように上層用塗料を塗布し、室温で10分間放置した後、試料を電場ピックアップ粘度計にセットする。なお、電場ピックアップ粘度計は、電極となる針を試料表面の近傍に保持し、一定時間毎にオン/オフを繰返して直流電圧を印加してマックスウェル応力による試料表面の変形を非接触で測定できる装置である。針−試料表面間距離:100μm、電圧:5V、電圧オン時間:1.0秒間、電圧オフ時間:1.0秒間の測定条件で直流電圧のオンとオフを切替えながら、試料を室温から上層用塗料の標準焼付け温度まで上層用塗料の標準昇温速度で加熱する。この間の試料表面の変形を、レーザー光を照射して試料表面で反射されるレーザー光の強度を検出電圧として0.01秒間の測定ピッチで測定する。図1は、このとき得られる時間−電圧波形の一例である。
【0015】
図1に示すように、得られた時間−電圧波形においては、m+1秒間にm個の検出電圧の振れが観察される。検出電圧の振れ幅が大きいほど電場による試料表面の変化が大きいことを示している。これらm個の検出電圧の振れの中で、振れ幅が最大(amax)となる時間をtmaxとし、tmax以降の時間範囲において、振れ幅がamaxの5%まで小さくなった時間を上層用塗料の流動停止時間tcU(tcU>tmax)とする。
【0016】
また、本発明において「塗料の収縮率」とは、硬化反応の揮発性生成物と高沸点溶媒等の残存溶媒の揮発に起因するものであり、以下の方法により測定されるものである。すなわち、秤量したステンレス箔(150mm×30mm×0.5mm)に、塗料を熱処理後の膜厚が積層塗膜での目標膜厚となるようにエアスプレー塗装し、塗料の標準焼付け温度で塗膜の焼付けを開始する。その後、前記上層用塗料の流動停止時間tcUまで塗膜を焼付け(焼付け時間:tcU)、試料(ステンレス箔+塗膜)を秤量する。さらに、焼付け開始からの総焼付け時間が塗料の標準焼付け時間tとなるように、塗料の標準焼付け温度で塗膜を焼付け(後段の焼付け時間:t−tcU)、試料(ステンレス箔+塗膜)を秤量する。
【0017】
上層用塗料の収縮率ω、最下層用塗料の収縮率ω、及び中間層用塗料の収縮率ω(積層塗膜が3層以上の場合)は、下記式(1):
ω=100(Y−Z)/(Z−X) (1)
(式中、ωは硬化反応の揮発性生成物と高沸点溶媒等の残存溶媒の揮発に起因する塗料の収縮率、Xはステンレス箔の質量(g)を表し、Yは塗料の標準焼付け温度で前記流動停止時間tcUまで焼付けた後の試料(ステンレス箔+塗膜)の質量(g)を表し、Zは塗料の標準焼付け温度で塗料の標準焼付け時間まで焼付けた後の試料(ステンレス箔+塗膜)の質量(g)を表し、iはU(上層用塗料)、L(最下層用塗料)又はI(中間層用塗料)である。)
により算出される。
【0018】
また、第一隣接層に用いられる塗料(以下、「第一隣接層用塗料」といい、積層塗膜が2層の場合には最下層用塗料であり、3層以上の場合には中間層用塗料である。)の収縮率ωA1と前記上層用塗料の収縮率ωとの差の絶対値(|Δω|)、並びに、第k−1番目の隣接層に隣接する第k番目の隣接層用塗料の収縮率ωA(k)と前記第k−1番目の隣接層用塗料の収縮率ωA(k−1)との差の絶対値(|Δω|)は、下記式(2−1)及び(2−2):
|Δω|=|ωA1−ω| (2−1)
|Δω|=|ωA(k)−ωA(k−1)| (2−2)
(式中、kは1以上の整数である。)
により算出される。
【0019】
また、本発明の塗装方法によって、2種類以上の塗料をウェットオンウェットで積層して同時に焼付けて各層を硬化させても、上層表面の凹凸の発生が十分に抑制される理由は必ずしも定かではないが、本発明者らは以下のように推察する。すなわち、従来のウェットオンウェットにより形成した積層塗膜では、上層を含めすべての層で熱硬化型塗料が用いられ、各層を同じ加熱温度で同時に硬化させたり、下層から順に硬化を開始するように設計されているため、上層を形成する熱硬化型塗料を加熱処理(焼付け処理)により硬化させる際には、その下層においては熱硬化型塗料の硬化が進行して既に流動性を失った状態となっている。このような積層塗膜の各層では縮合反応や硬化剤の脱ブロック反応の後の付加反応により熱硬化型塗料を硬化させるため、この縮合反応や脱ブロック反応により生成した揮発性生成物が、残存する溶媒とともに揮発し、積層塗膜が収縮して塗膜表面に凹凸が形成される。この塗膜表面の凹凸は上層が十分に流動性を有している間はその流動等により緩和されるが、上層の流動性が硬化により著しく低下した場合には、基材表面や各層間の界面凹凸が上層表面に転写され、積層塗膜の肌や光沢が悪化するものと推察される。
【0020】
また、硬化剤としてイソシアネート化合物やイソシアネート樹脂を含有する熱硬化型塗料を上層用塗料として用いた場合等においては、基体樹脂中の架橋性官能基と硬化剤中のイソシアネート基との反応性が非常に高く、上層用塗料の硬化速度が速いため、下層が硬化する前に上層が流動性を失うことが多い。この場合、上層が硬化した後に下層の硬化が進行するが、従来のウェットオンウェット塗装に用いられていた下層用塗料は、流動性に乏しく、下層の硬化の進行に伴う収縮により形成された凹凸が十分に緩和されず、基材表面や各層間の界面凹凸が上層表面に転写され、積層塗膜の肌や光沢が悪化するものと推察される。
【0021】
そこで、本発明者らは、先ず、上記目的を達成するために、積層塗膜の肌(平滑性)や光沢等の外観品質は上層表面の凹凸が少ないほどよいことに着目した。そして、肌となる凹凸は、スプレー時に基材面上に塗着する塗料量及び乾燥工程(焼付工程も含む)における塗膜の収縮量が面方向に不均一なことに起因し、光沢を左右する凹凸(肌の場合よりも短波長)は乾燥工程における塗膜の収縮量が面方向に不均一なことに起因することを見出した。また、上記二つの原因で形成される凹凸のうち、スプレー時に基材面上に塗着する塗料量が面方向に不均一なことに起因する凹凸は、塗料の微粒化を向上させることによって抑制できるが、塗料の有効利用率である塗着効率の低下を招くので、塗料の微粒化を必要以上に向上させることはコスト等の点で得策でない。このため、肌(平滑性)や光沢等の外観品質を向上させるには、乾燥工程での塗膜の収縮量が面方向に不均一なことに起因する凹凸を減少させることが有利であることを見出した。さらに、本発明者らは、基材上に少なくとも1層の下層を形成する少なくとも1種の塗料及び上層を形成する塗料をウェットオンウェットで積層した後に、同時に焼付けして積層塗膜を形成する場合、上記の凹凸は主として、下層用塗料と上層用塗料をウェットオンウェットで積層したときに形成される各層間の界面凹凸(特に、上層と第一隣接層との間の界面凹凸)が、乾燥工程で上層の流動性が著しく低下した後、各層の収縮によって上層表面に転写されることによって形成され、上層用塗料の流動停止時間後から各塗料の標準焼付け時間終了時までの間における各層間(特に、上層と第一隣接層との間)の収縮率差の絶対値が小さければ、界面凹凸の上層表面への転写量は小さくなることを見出した。
【0022】
そして、本発明者らは、2種類以上の熱硬化型塗料をウェットオンウェットで積層して同時に焼付け塗装をする際に、下層を形成するための下層用塗料として熱硬化型塗料を使用し、上層を形成するための上層用塗料としてイソシアネート硬化型塗料組成物を使用する場合において、このイソシアネート硬化型塗料組成物としてイソシアネート基に着脱可能な状態で結合することが可能な流動停止遅延剤を含有するものを用いることによって、上層用塗料の流動停止時間が長くなり、上層の流動が停止した後における各層間(特に、上層と第一隣接層との間)の収縮率差の絶対値が小さくなり、これにより、上層が硬化して流動性が著しく低下した後における各層間の界面凹凸(特に、上層と第一隣接層との間の界面凹凸)の上層への転写量を少なくすることができ、2種類以上の塗料をウェットオンウェットで積層した後に同時に焼付けを実施しても外観品質により高度に優れた積層塗膜が得られるものと推察している。
【0023】
さらに、イソシアネート硬化型塗料組成物として、イソシアネート基に着脱可能な状態で結合することが可能な流動停止遅延剤を含有するものを用いることによって、上層用塗料(イソシアネート硬化型塗料組成物)の流動停止時間が長くなる理由は必ずしも定かではないが、本発明者らは以下のように推察する。すなわち、従来のイソシアネート硬化型塗料組成物は、基体樹脂中の水酸基等の架橋性官能基と硬化剤中のイソシアネート基との反応性が非常に高いため、従来のイソシアネート硬化型塗料組成物により形成された塗膜においては、加熱処理等により架橋反応が進行し、流動性が徐々に失われ、ある時間で停止する。一方、本発明に用いられるイソシアネート硬化型塗料組成物には、イソシアネート基に着脱可能な状態で結合することが可能な流動停止遅延剤が配合されており、この流動停止遅延剤が硬化剤中のイソシアネート基と結合して基体樹脂中の水酸基等の架橋性官能基と硬化剤中のイソシアネート基との反応をブロックするため、架橋反応が進行せず、塗膜の流動性が維持されると推察される。そして、このような流動停止遅延剤とイソシアネート基との結合は、塗膜の乾燥工程や焼付工程における加熱処理等によって切断されるため、前記結合が切断された後の塗膜においては、架橋反応が進行し、流動性が徐々に失われ、ある時間で停止すると推察される。すなわち、本発明に用いられるイソシアネート硬化型塗料組成物においては、乾燥工程や焼付工程における加熱処理等によって、基体樹脂中の架橋性官能基と硬化剤中のイソシアネート基との反応とともに、流動停止遅延剤と硬化剤中のイソシアネート基との着脱反応も同時に進行するため、架橋反応が遅延し、流動性が停止するまでの時間(流動停止時間)が長くなると推察される。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、2種類以上の塗料をウェットオンウェットで積層して同時に焼付けて各層を硬化させても、上層表面の凹凸の発生が十分に抑制された積層塗膜を得ることが可能となり、肌(表面平滑性)や光沢等の外観品質が高度に優れた塗装体を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】上層用塗料の流動停止時間tcUを算出する際に塗膜表面の変形を表す時間−電圧波形である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
【0027】
<イソシアネート硬化型塗料組成物>
先ず、本発明のイソシアネート硬化型塗料組成物について説明する。本発明のイソシアネート硬化型塗料組成物は、熱硬化性樹脂、イソシアネート系硬化剤、及びイソシアネート基に着脱可能な状態で結合することが可能な流動停止遅延剤を含有するものである。このような流動停止遅延剤を含有するイソシアネート硬化型塗料組成物は、流動停止時間が長くなり、例えば、上層用塗料として使用した場合に、上層の流動が停止した後における各層間(特に、上層と第一隣接層との間)の収縮率差の絶対値が小さくなり、2種類以上の塗料をウェットオンウェットで積層して同時に焼付けて各層を硬化させても、上層表面の凹凸の発生が十分に抑制された積層塗膜を得ることが可能となり、肌(表面平滑性)や光沢等の外観品質が高度に優れた塗装体を得ることができる。
【0028】
前記熱硬化性樹脂としては、イソシアネート系硬化剤の作用によって硬化して塗膜を形成することが可能なものであれば特に制限はなく、例えば、水酸基、グリシジル基、カルボキシル基、シラノール基のうちの少なくとも1種の架橋性官能基を含有する、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、フッ素樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、シリコン含有樹脂等が挙げられる。これらの熱硬化性樹脂は1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。これらの熱硬化性樹脂のうち、塗膜性能を十分に確保するという観点から、前記架橋性官能基を含有する、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂が好ましい。また、このような熱硬化性樹脂の含有量としては、塗膜性能を十分に確保するという観点から、塗料組成物全体に対して、10〜80質量%が好ましく、20〜70質量%がより好ましい。
【0029】
前記イソシアネート系硬化剤としては、前記熱硬化性樹脂の架橋性官能基と反応し得るものであれば特に制限はなく、例えば、イソシアネート化合物、ブロックイソシアネート化合物、イソシアネート樹脂、ブロックイソシアネート樹脂等が挙げられる。これらのイソシアネート系硬化剤は1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。これらのイソシアネート系硬化剤のうち、塗膜性能を十分に確保するという観点から、イソシアネート化合物が好ましい。また、このようなイソシアネート系硬化剤の含有量としては、塗膜性能を十分に確保するという観点から、塗料組成物全体に対して、1〜40質量%が好ましく、5〜30質量%がより好ましい。
【0030】
前記流動停止遅延剤としては、イソシアネート基に着脱可能な状態で結合することが可能なもの、すなわち、イソシアネート硬化型塗料組成物の調製時に前記イソシアネート系硬化剤のイソシアネート基と結合し、塗膜の乾燥時や焼付時に加熱処理等によって前記結合が切断されるものであれば特に制限はなく、例えば、フェノール性水酸基、ラクタム環、エーテル結合、チオール基、尿素結合、カルバメート基、イミノ基、亜硫酸基、ピラゾール環、イミダゾール環、オキシム基、アミノ基、及び活性メチレン基からなる群から選択される少なくとも1種のイソシアネート基に着脱可能な構造を有する化合物が挙げられる。このような化合物として、具体的には、フェノール化合物、ラクタム化合物、エーテル化合物、メルカプタン化合物、尿素化合物、カルバミン酸エステル化合物、イミン化合物、亜硫酸塩、ピラゾール化合物、イミダゾール化合物、オキシム化合物、アミン化合物、活性メチレン化合物が挙げられる。これらの化合物は1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。このような化合物のうち、塗膜性能を十分に確保するという観点から、ラクタム化合物、ピラゾール化合物、イミダゾール化合物、オキシム化合物、活性メチレン化合物が好ましく、ピラゾール化合物、オキシム化合物がより好ましい。また、このような流動停止遅延剤の含有量としては、塗膜性能を十分に確保するという観点から、塗料組成物全体に対して、1〜20質量%が好ましく、2〜10質量%がより好ましい。
【0031】
また、本発明のイソシアネート硬化型塗料組成物においては、必要に応じて、従来公知の着色顔料や光輝性顔料等が従来公知の範囲で含まれていてもよい。また、各種物性を調整するために粘性制御剤、表面調整剤、増粘剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、消泡剤等の各種添加剤を従来公知の範囲で配合してもよい。
【0032】
このような本発明のイソシアネート硬化型塗料組成物においては、前記流動停止遅延剤を含む場合の流動停止時間tが前記流動停止遅延剤を含まない場合の流動停止時間tc0に対して1.1倍以上であることが好ましく、1.15倍以上であることがより好ましく、1.18倍以上であることが特に好ましい。前記流動停止遅延剤を含まない場合の流動停止時間tc0に対する前記流動停止遅延剤を含む場合の流動停止時間tの割合(t/tc0)が前記下限未満になると、例えば、上層用塗料として使用した場合に、上層の流動が停止した後における各層間(特に、上層と第一隣接層との間)の収縮率差の絶対値が大きくなり、2種類以上の塗料をウェットオンウェットで積層して同時に焼付けて各層を硬化させた場合に、上層表面の凹凸の発生を十分に抑制することができず、得られる積層塗膜の外観品質が低下する傾向にある。なお、前記流動停止遅延剤を含まない場合の流動停止時間tに対する前記流動停止遅延剤を含む場合の流動停止時間tの割合(t/tc0)の上限としては2倍以下が好ましく、1.5倍以下がより好ましい。
【0033】
また、本発明のイソシアネート硬化型塗料組成物においては、前記流動停止遅延剤を含む場合の流動停止時間tと前記流動停止遅延剤を含まない場合の流動停止時間tc0との差(t−tc0)が20秒以上であることが好ましく、30秒以上であることがより好ましく、40秒以上であることが特に好ましい。t−tc0が前記下限未満になると、例えば、上層用塗料として使用した場合に、上層の流動が停止した後における各層間(特に、上層と第一隣接層との間)の収縮率差の絶対値が大きくなり、2種類以上の塗料をウェットオンウェットで積層して同時に焼付けて各層を硬化させた場合に、上層表面の凹凸の発生を十分に抑制することができず、得られる積層塗膜の外観品質が低下する傾向にある。なお、t−tc0の上限としては200秒以下が好ましく、150秒以下がより好ましい。
【0034】
さらに、本発明のイソシアネート硬化型塗料組成物においては、流動停止時間t後から標準焼付け時間t終了時までの間の収縮率ωが、0〜40%であることが好ましく、0〜30%であることがより好ましく、0〜20%であることが更に好ましく、0〜10%であることが特に好ましい。これにより、表面に凹凸が少ない塗膜を形成することが可能となり、肌(表面平滑性)や光沢等の外観品質が高度に優れた塗装体を得ることができる。
【0035】
本発明のイソシアネート硬化型塗料組成物において、前記熱硬化性樹脂と前記イソシアネート系硬化剤との組み合わせとしては特に制限はないが、加熱処理による硬化反応において揮発性生成物が生成せず、加熱処理による塗膜の収縮を最小限にすることが可能となるという観点、また、上層用塗料として使用した場合に、上層の流動が停止した後における各層間(特に、上層と第一隣接層との間)の収縮率差の絶対値が小さくなるという観点から、水酸基含有アクリル樹脂とイソシアネート化合物との組み合わせ、水酸基含有アクリル樹脂とイソシアネート樹脂との組み合わせが好ましい。
【0036】
また、本発明のイソシアネート硬化型塗料組成物の形態としては、溶剤型、水性、紛体のいずれでもよい。さらに、本発明のイソシアネート硬化型塗料組成物の標準焼付け温度としては特に制限はなく、通常40〜200℃であり、80〜160℃であることが好ましい。また、本発明のイソシアネート硬化型塗料組成物においては、加熱処理による塗膜の収縮を最小限にすることが可能となるという観点から、前記標準焼付け温度における重量減少率が0〜20質量%であることが好ましく、0〜10質量%であることがより好ましい。
【0037】
なお、本発明において、塗料の標準焼付け温度とは、対象とする塗料を基材上に塗装して加熱処理を施して塗膜を硬化せしめ、基材上に定着させるために焼付け時間等の硬化条件との関係で最も効率よく焼付けできる温度をいい、一般的には塗料毎に設定(設計)されているものである。本発明では、この標準焼付け温度としてカタログ値を採用することができる。また、本発明において、塗料の標準焼付け時間とは、対象とする塗料を基材上に塗装して加熱処理を施して塗膜を硬化せしめ、基材上に定着させるために標準焼付け温度等の硬化条件との関係で最も効率よく焼付けできる時間をいい、一般的には塗料毎に設定(設計)されているものである。本発明では、この標準焼付け時間としてカタログ値を採用することができる。さらに、本発明において、塗料の標準昇温速度とは、対象とする塗料を基材上に塗装して加熱処理を施して塗膜を硬化せしめ、基材上に定着させるために標準焼付け温度及び標準焼付け時間等の硬化条件との関係で最も効率よく焼付けできる塗膜の昇温速度をいい、一般的には塗料毎に設定(設計)されているものである。本発明では、この標準昇温速度としてカタログ値を採用することができる。
【0038】
本発明のイソシアネート硬化型塗料組成物の製造方法としては特に制限はないが、前記熱硬化性樹脂と前記流動停止遅延剤とを混合した後、得られた混合物に前記イソシアネート系硬化剤を混合することが好ましい。このような順序で、前記熱硬化性樹脂、前記流動停止遅延剤、及び前記イソシアネート系硬化剤を混合することによって、流動停止時間が長くなる傾向にある。他方、前記熱硬化性樹脂、前記流動停止遅延剤、及び前記イソシアネート系硬化剤を一度に混合すると、流動停止時間が短くなる傾向にある。
【0039】
<塗装方法>
次に、本発明の塗装方法について説明する。本発明の塗装方法は、基材上に形成された少なくとも1層の下層と該下層上に形成された上層とを備える積層塗膜を形成する塗装方法であって、
前記下層を形成するための下層用塗料として熱硬化型塗料を準備し、かつ、前記上層を形成するための上層用塗料として前記本発明のイソシアネート硬化型塗料組成物を準備する準備工程(原料塗料準備工程)と、
前記基材上に前記下層用塗料及び前記上層用塗料をウェットオンウェットで積層して未硬化積層塗膜を形成する形成工程(塗装工程)と、
前記未硬化積層塗膜に焼付け処理を施して前記下層用塗料及び前記上層用塗料を同時に硬化させる焼付工程(焼付工程)と、
を含んでいる。
【0040】
(原料塗料準備工程)
本発明の塗装方法においては、先ず、下層を形成するための下層用塗料として熱硬化型塗料、及び、上層を形成するための上層用塗料として前記本発明のイソシアネート硬化型塗料組成物を準備する。なお、積層塗膜が2層の場合には、前記下層は最下層の1層のみであり、下層用塗料としては1種類の最下層用塗料を準備する。一方、積層塗膜が3層以上の場合には、前記下層は最下層と少なくとも1層の中間層の2層以上からなり、下層用塗料としては1種類の最下層用塗料と少なくとも1種類の中間層用塗料の2種以上の塗料を準備する。
【0041】
本発明にかかる上層用塗料としては、前記本発明のイソシアネート硬化型塗料組成物を使用する。本発明においては、このイソシアネート硬化型塗料組成物に前記流動停止遅延剤が含まれているため、上層用塗料の流動停止時間が長くなり、上層用塗料の流動停止時間tcU後から各塗料の標準焼付け時間t終了時までの間における、前記第一隣接層用塗料の収縮率と前記上層用塗料の収縮率との差の絶対値が小さくなり(好ましくは6.0%以下、より好ましくは5.0%以下)、また、最下層用塗料の収縮率も小さくなるため、2種類以上の塗料をウェットオンウェットで積層して同時に焼付けて各層を硬化させても、上層表面の凹凸の発生が十分に抑制された積層塗膜を得ることが可能となり、肌(表面平滑性)や光沢等の外観品質が高度に優れた塗装体を得ることができる。
【0042】
なお、本発明においては、上層用塗料の流動停止時間tcU後から各塗料の標準焼付け時間t終了時までの間における前記第一隣接層用塗料の収縮率と前記上層用塗料の収縮率との差の絶対値が小さくなるように(好ましくは6.0%以下、より好ましくは5.0%以下)、前記熱硬化性樹脂と前記イソシアネート系硬化剤との組み合わせを適宜選択して前記上層用塗料(前記イソシアネート硬化型塗料組成物)を調製する。このような熱硬化性樹脂とイソシアネート系硬化剤との組合せとしては、水酸基を含有するアクリル樹脂とイソシアネート化合物との組み合わせ、水酸基を含有するアクリル樹脂とイソシアネート樹脂との組み合わせが好ましい。
【0043】
さらに、このような上層用塗料(イソシアネート硬化型塗料組成物)としては、自動車用塗料及び塗装で用いられるクリア塗膜(クリア層)を形成するいわゆる「クリア塗料」であることが好ましい。例えば、透明な塗膜を形成可能な、熱硬化性樹脂とイソシアネート系硬化剤と前記流動停止遅延剤と有機溶剤と、必要に応じて紫外線吸収剤等が含有されているものが挙げられる。前記熱硬化性樹脂としては、例えば、水酸基、カルボキシル基、シラノール基、グリシジル基等の架橋性官能基を有する、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、フッ素樹脂、ウレタン樹脂、シリコン含有樹脂等が挙げられ、前記イソシアネート系硬化剤としては、例えば、ポリイソシアネート、ブロックポリイソシアネート等が挙げられる。
【0044】
本発明にかかる下層用塗料としては、熱硬化型塗料を使用する。このような下層用塗料に用いられる熱硬化型塗料としては、塗膜形成可能な熱硬化性樹脂及び硬化剤を含むものであればよく、通常の焼付塗装の下層用塗料として使用される熱硬化型塗料が挙げられる。このような下層用熱硬化型塗料の形態は、溶剤型、水性、粉体のいずれでもよい。下層用熱硬化型塗料の標準焼付け温度は、特に限定されるものではなく、通常40〜200℃、好ましくは80〜160℃である。
【0045】
このような下層用塗料に含まれる塗膜形成可能な熱硬化性樹脂としては、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。硬化剤としては、アミノ化合物、アミノ樹脂、イソシアネート化合物、ブロックイソシアネート化合物、イソシアネート樹脂等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、このような熱硬化性樹脂及び硬化剤は、それぞれ1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
【0046】
なお、本発明においては、上層用塗料の流動停止時間tcU後から各塗料の標準焼付け時間t終了時までの間における、前記第一隣接層用塗料の収縮率と前記上層用塗料の収縮率との差の絶対値、並びに、互いに隣接する下層用塗料同士の収縮率の差(中間層用塗料同士の収縮率の差及び最下層用塗料と中間層用塗料との収縮率の差。以下同様。)の絶対値が小さくなるように(好ましくは6.0%以下、より好ましくは5.0%以下)、熱硬化性樹脂と硬化剤との組み合わせを適宜選択して前記下層用塗料を調製する。さらに、本発明においては、上層用塗料の流動停止時間tcU後から最下層用塗料の標準焼付け時間t終了時までの間における、最下層用塗料の収縮率が小さくなるように、最下層用塗料を調製することが好ましい。このような熱硬化性樹脂と硬化剤との組み合わせとしては、アクリル樹脂とメラミン樹脂の組み合わせ、ポリエステル樹脂とメラミン樹脂の組み合わせ、アクリル樹脂と(ブロック)イソシアネート化合物の組み合わせ、ポリエステル樹脂と(ブロック)イソシアネート化合物の組み合わせが好ましい。
【0047】
さらに、このような下層用塗料としては、自動車用塗料及び塗装で用いられるベース塗膜(ベース層)を形成するいわゆる「ベース用塗料」や中塗り塗膜(中塗り層)を形成するいわゆる「中塗り塗料」であることが好ましい。例えば、ベース用塗料としては、既知の溶剤系着色ベース塗料や水性着色ベース塗料が好適に用いられる。また、中塗り塗料としては、基体樹脂と架橋剤とからなる熱硬化性樹脂組成物が好適に用いられる。
【0048】
前記水性着色ベース塗料としては、例えば、顔料と、水に溶解又は分散可能な樹脂と、必要に応じて架橋剤と、溶媒である水とを含有するものが挙げられる。水に溶解又は分散可能な樹脂としては、例えば、1分子中にカルボキシル基等の親水基と水酸基等の架橋性官能基とを含有する樹脂であって、具体的には、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂等が挙げられる。また、架橋剤としては、例えば、疎水性又は親水性のアルキルエーテルメラミン樹脂、ブロックイソシアネート化合物等が挙げられる。一方、溶剤系着色ベース塗料としては、例えば、顔料と、上記同様の樹脂と、必要に応じて架橋剤と、溶剤とを含有するものが挙げられる。
【0049】
また、前記中塗り塗料に用いられる基体樹脂としては、例えば、水酸基、グリシジル基、イソシアネート基、カルボキシル基等の架橋性官能基を1分子中に2個以上有する、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂等が挙げられ、また、架橋剤としては、例えば、メラミン樹脂、尿素樹脂等のようなアミノ樹脂、ブロックされていてもよいポリイソシアネート化合物、カルボキシル基含有化合物等が挙げられる。
【0050】
さらに、本発明にかかる下層用塗料においては、必要に応じて従来公知の着色顔料や光輝性顔料等が従来公知の範囲で含まれていてもよい。また、各種物性を調整するために粘性制御剤、表面調整剤、増粘剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、消泡剤等の各種添加剤を従来公知の範囲で配合してもよい。
【0051】
なお、本発明の原料塗料準備工程においては、前記上層用塗料の流動停止時間tcU後から各塗料の標準焼付け時間t終了時までの間における前記第一隣接層用塗料(上層に隣接する最下層用塗料(積層塗膜が2層の場合)又は上層に隣接する中間層用塗料(積層塗膜が3層以上の場合))の収縮率と前記上層用塗料の収縮率との差の絶対値が6.0%以下(より好ましくは5.0%以下)となるように、前記上層用塗料及び前記第一隣接層用塗料を選択することが好ましい。これにより、2種類以上の塗料をウェットオンウェットで積層して焼付けて各層を硬化させても上層表面の凹凸の発生が十分に抑制された積層塗膜を得ることが可能となり、肌(表面平滑性)や光沢等の外観品質により高度に優れた塗装体を得ることができる。
【0052】
また、積層塗膜が3層以上の場合には、前記上層用塗料の流動停止時間tcU後から各下層用塗料の標準焼付け時間t終了時までの間における互いに隣接する下層用塗料同士の収縮率の差の絶対値が6.0%以下(より好ましくは5.0%以下)となるように、下層用塗料を選択することが好ましい。これにより、3種類以上の塗料をウェットオンウェットで積層して焼付けて各層を硬化させても上層表面の凹凸の発生が十分に抑制された積層塗膜を得ることが可能となり、肌(表面平滑性)や光沢等の外観品質により高度に優れた塗装体を得ることができる。
【0053】
また、このような下層用塗料においては、前記上層用塗料の流動停止時間tcU後から標準焼付け時間t終了時までの間の収縮率ωが、0〜40%であることが好ましく、0〜30%であることがより好ましく、0〜20%であることが更に好ましく、0〜10%であることが特に好ましい。これにより、上層表面の凹凸が少ない積層塗膜を得ることが可能となり、肌(表面平滑性)や光沢等の外観品質が高度に優れた塗装体を得ることができる。このような下層用塗料としては、メラミン硬化型塗料、イソシアネート硬化型塗料が好ましい。
【0054】
(塗装工程)
次に、本発明の塗装方法においては、前記原料塗料準備工程で準備した少なくとも1種の下層用塗料及び上層用塗料を、基材上にウェットオンウェットで積層して未硬化積層塗膜を形成する。
【0055】
本発明にかかる基材としては、特に限定されるものではなく、例えば、鉄、アルミニウム、真鍮、銅、錫、亜鉛、ステンレス鋼、ブリキ、亜鉛メッキ鋼、合金化亜鉛(Zn−Al、Zn−Ni、Zn−Fe等)メッキ鋼等の金属材料、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂等の樹脂や各種のFRP等のプラスチック材料、ガラス、セメント、コンクリート等の無機材料、木材、繊維材料(紙、布等)、発泡体等を挙げることができる。なかでも、金属材料及びプラスチック材料が好ましく、金属材料が特に好ましい。特に、外観品質に対する要求特性が高い自動車用鋼板に本発明は好適に適用される。これら基材表面には、予め電着塗装、又は電着塗装と中塗り塗装等の処理が施されていてもよい。
【0056】
本発明にかかる塗装工程においては、先ず、基材上に最下層用塗料を塗布し、必要に応じて乾燥等により溶媒等を蒸発させて未硬化の最下層を形成する。次いで、この未硬化の最下層の上に、積層塗膜が2層の場合には上層用塗料(本発明のイソシアネート硬化型塗料組成物)を塗布し、積層塗膜が3層以上の場合には中間層用塗料を塗布し、必要に応じて乾燥等により溶媒等を蒸発させて未硬化の上層又は中間層を形成する。この中間層は1層のみ形成しても2層以上形成してもよい。次に、積層塗膜が3層以上の場合には、この未硬化の中間層上に上層用塗料(本発明のイソシアネート硬化型塗料組成物)を塗布し、必要に応じて乾燥等により溶媒等を蒸発させて未硬化の上層を形成する。各塗料の塗布方法としては、エアスプレー塗装、エアー静電スプレー塗装、回転霧化式静電塗装等の従来公知の方法が挙げられる。
【0057】
なお、最下層の膜厚は所望の用途により適宜設定することができるが、例えば、加熱処理後の膜厚で5〜50μmであることが好ましく、10〜40μmであることがより好ましい。最下層の膜厚が前記下限未満になると、均一な最下層の塗膜が得にくくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、積層された塗膜に含まれる溶媒等を多く吸収する傾向にあるとともに、最下層自身に含まれる溶媒の揮発も抑制され積層塗膜の外観品質を悪化させる傾向にある。
【0058】
また、中間層の膜厚は所望の用途により適宜設定することができるが、例えば、加熱処理後の膜厚で5〜50μmであることが好ましく、10〜40μmであることがより好ましい。中間層の膜厚が前記下限未満になると、均一な中間層の塗膜が得にくくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、積層された塗膜に含まれる溶媒等を多く吸収する傾向にあるとともに、中間層自身に含まれる溶媒の揮発も抑制され積層塗膜の外観品質を悪化させる傾向にある。
【0059】
さらに、上層の膜厚は所望の用途により適宜設定することができるが、例えば、加熱処理後の膜厚で15〜60μmであることが好ましく、20〜50μmであることがより好ましい。上層の膜厚が前記下限未満になると、流動性が不十分であり、積層塗膜の外観品質が悪化する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、流動性が過度に大きくなり、鉛直方向に塗装する場合にはタレ等の欠陥が発生する傾向にある。
【0060】
(焼付工程)
次に、本発明の塗装方法においては、前記塗装工程において得られた未硬化積層塗膜に焼付け処理(加熱処理)を施して前記下層用塗料及び前記上層用塗料を同時に硬化させる。本発明の塗装方法において、前記加熱処理は、少なくとも上層が硬化する温度以上、例えば、[前記上層用塗料の標準焼付け温度−20℃]以上の温度での加熱処理を含んでいることが好ましい。また、加熱時間は、前記上層用塗料の標準焼付け時間tbUの50%以上150%以下であることが好ましい。
【0061】
また、本発明の塗装方法では、ウェットオンウェットにより積層された未硬化状態の塗膜を安定させるために、前記焼付け処理(加熱処理)前に室温で静置(セッティング)させることが好ましい。セッティング時間は通常1〜20分に設定される。
【0062】
さらに、本発明において、より高級な外観を有する塗装体を得るためには、前記塗装方法により得られた塗装体の前記上層の上に更に1種以上の塗料を塗布して加熱処理を施し、表面層を形成することが好ましい。このような表面層用塗料としては、水酸基、グリシジル基、カルボキシル基等の架橋性官能基を有する、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、フッ素樹脂、ウレタン樹脂、シリコン含有樹脂等の熱硬化性樹脂と、イソシアネート化合物、ブロックイソシアネート化合物、イソシアネート樹脂、ブロックイソシアネート樹脂、アミノ化合物、メラミン樹脂等の硬化剤とを含有する熱硬化型塗料が挙げられる。また、このような表面層用塗料は、加熱処理による硬化反応において、実質的に揮発性生成物を生成しない塗料であることが好ましい。このような表面層用塗料の塗布方法としては、エアスプレー塗装やエアー静電スプレー塗装、回転霧化式静電塗装等の従来公知の方法が挙げられる。
【0063】
このように本発明の塗装方法により製造された塗装体は、積層塗膜表面の凹凸が従来のウェットオンウェットで製造した積層塗膜よりも十分に少なく、外観品質が高度に優れている。また、基材上に下層を形成する塗料及び上層を形成する塗料をウェットオンウェットで積層した後に、同時に焼付けして積層塗膜を形成することにより、大幅なエネルギー削減、コスト低減及び工程短縮を実現することができる。さらに、主溶媒として水を用いた水性塗料を採用することにより、揮発性有機化合物(VOC)の排出を削減することができる。このような塗装体は、特に乗用車、トラック、バス、オートバイ等の自動車用車体やその部品として有用である。
【実施例】
【0064】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、上層用塗料の流動停止時間tcU、上層用塗料の流動停止時間tcU後から各塗料の標準焼付け時間t終了時までの間の各塗料の収縮率、及び各塗料の収縮率差の絶対値の算出は以下の方法により行なった。
【0065】
<上層用塗料の流動停止時間tcUの算出>
ステンレス鋼板(40mm×50mm×0.5mm)上に焼付け後の膜厚が100μmとなるように上層用塗料をバーコータを用いて塗布し、室温で10分間放置した後、試料を電場ピックアップ粘度計(京都電子工業(株)製、型番RM−01T)にセットした。針−試料表面間距離:100μm、電圧:5V、電圧オン時間:1.0秒間、電圧オフ時間:1.0秒間の測定条件で直流電圧のオンとオフを切替えながら、試料を室温から上層用塗料の標準焼付け温度(140℃)まで上層用塗料の標準昇温速度(20℃/min)で加熱した。この間の試料表面の変形を、レーザー光を照射して試料表面で反射されるレーザー光の強度を検出電圧として0.01秒間の測定ピッチで測定した。図1は、このとき得られる時間−電圧波形の一例である。
【0066】
図1に示すように、得られた時間−電圧波形においては、m+1秒間にm個の検出電圧の振れが観察される。これらm個の検出電圧の振れの中で、振れ幅が最大(amax)となる時間をtmaxとし、tmax以降の時間範囲において、振れ幅がamaxの5%まで小さくなった時間を上層用塗料の流動停止時間tcU(tcU>tmax)とした。
【0067】
<各塗料の収縮率、収縮率差及びその和の算出>
秤量したステンレス箔(150mm×30mm×0.5mm)に、上層用塗料及び下層用塗料(積層塗膜が2層の場合には最下層用塗料、3層以上の場合には最下層用塗料と各中間層用塗料の2種以上の塗料)をそれぞれ熱処理後の膜厚が積層塗膜での目標膜厚となるようにエアスプレー塗装し、標準焼付け温度(140℃)で塗膜の焼付けを開始した。その後、前記上層用塗料の流動停止時間tcUまで塗膜を焼付け(焼付け時間:tcU)、試料(ステンレス箔+塗膜)を秤量した。さらに、焼付け開始からの総焼付け時間が塗料の標準焼付け時間t(30分)となるように、塗料の標準焼付け温度(140℃)で塗膜を焼付け(後段の焼付け時間:t−tcU)、試料(ステンレス箔+塗膜)を秤量した。
【0068】
上層用塗料、中間層用塗料及び最下層用塗料の収縮率ω、ω及びωは、下記式(1):
ω=100(Y−Z)/(Z−X) (1)
(式中、ωは硬化反応の揮発性生成物と高沸点溶媒等の残存溶媒の揮発に起因する塗料の収縮率、Xはステンレス箔の質量(g)を表し、Yは塗料の標準焼付け温度で前記流動停止時間tcUまで焼付けた後の試料(ステンレス箔+塗膜)の質量(g)を表し、Zは塗料の標準焼付け温度で塗料の標準焼付け時間tまで焼付けた後の試料(ステンレス箔+塗膜)の質量(g)を表し、iはU(上層用塗料)、I(中間層用塗料)又はL(最下層用塗料)である。)
により算出した。
【0069】
また、上層に隣接する第一隣接層用塗料の収縮率ωA1と上層用塗料の収縮率ωとの差の絶対値(|Δω|)、及び前記第一隣接層に隣接する第二隣接層用塗料の収縮率ωA2と前記第一隣接層用塗料の収縮率ωA1との差の絶対値(|Δω|)は、下記式(2−1)及び(2−2):
|Δω|=|ωA1−ω| (2−1)
|Δω|=|ωA2−ωA2| (2−2)
により算出した(3層の場合には|Δω|及び|Δω|を算出。2層の場合には|Δω|のみを算出。)。
【0070】
(合成例1)溶剤型クリア用アクリル樹脂R−1の調製
まず、攪拌機、温度計、滴下ロート、還流冷却器及び窒素導入管等を備えた通常のアクリル系樹脂製造用反応容器に、ソルベッソ100を260質量部仕込み、撹拌しながら130℃に昇温した。
【0071】
次に、この反応容器に、メタクリル酸ブチル162.5質量部、アクリル酸4−ヒドロキシブチル149.5質量部、スチレン78質量部、アクリル酸イソボルニル260質量部、重合開始剤(日油社製、「パーキュアO」)52質量部の混合物を3時間かけて撹拌しながら滴下した。滴下終了後、130℃で1時間撹拌を継続して反応させた。その後、パーキュアOを13質量部添加し、さらに、130℃で2時間撹拌を継続して反応させた後、酢酸ブチル75質量部を添加し、室温まで冷却し、水酸基価90、不揮発分65質量%のアクリル樹脂R−1を得た。
【0072】
(合成例2)水性中塗り用アクリルエマルションR−2の調製
まず、アクリル酸2−エチルヘキシル31.5質量部、メタクリル酸ブチル78.8質量部、スチレン52.9質量部、アクリル酸4−ヒドロキシブチル72.5質量部、アクリル酸16.4質量部、メタクリル酸メチル63.0質量部、n−ドデシルメルカプタン3.2質量部、イオン交換水119質量部及びラテムル(PD−104)17.5質量部を混合し、ミキサーを用いて攪拌して乳化させ、モノマープレエマルションを調製した。
【0073】
次に、攪拌機、温度計、滴下ロート、還流冷却器及び窒素導入管等を備えた通常のアクリル系樹脂エマルション製造用反応容器に、イオン交換水280質量部、ラテムルPD−104(花王ケミカル製)3.5質量部及びAPS水溶液(重合開始剤:過硫酸アンモニウム、APS(Aldrich製)0.7質量部と水7質量部を撹拌混合したもの)を仕込み、撹拌しながら80℃に昇温した。次いで、この反応容器に、前記モノマープレエマルションのうちの5質量%を添加し、80℃で10分保持した。その後、残りのモノマープレエマルションを上記反応容器中に3時間かけて撹拌しながら滴下した。滴下終了後、さらに、80℃で1時間撹拌を継続して反応させた。その後、イオン交換水322質量部を添加し、室温まで冷却した。冷却後、50質量%ジメチルエタノールアミン水溶液40.5質量部を添加し、10分撹拌して、水酸基価86、不揮発分29質量%のアクリルエマルションR−2を得た。
【0074】
(合成例3)水性ベース用アクリルエマルションR−3の調製
まず、アクリル酸2−エチルヘキシル31.5質量部、メタクリル酸ブチル78.8質量部、アクリル酸ブチル37.8質量部、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル63.0質量部、アクリル酸16.4質量部、スチレン87.6質量部、n−ドデシルメルカプタン3.2質量部、イオン交換水119質量部及びラテムル(PD−104)17.5質量部を混合し、ミキサーを用いて攪拌して乳化させ、モノマープレエマルションを調製した。
【0075】
次に、攪拌機、温度計、滴下ロート、還流冷却器及び窒素導入管等を備えた通常のアクリル系樹脂エマルション製造用反応容器に、イオン交換水280質量部、ラテムルPD−104(花王ケミカル製)3.5質量部及びAPS水溶液(重合開始剤:過硫酸アンモニウム、APS(Aldrich製)0.7質量部と水7質量部を撹拌混合したもの)を仕込み、撹拌しながら80℃に昇温した。次いで、この反応容器に、前記モノマープレエマルションのうちの5質量%を添加し、80℃で10分保持した。その後、残りのモノマープレエマルションを上記反応容器中に3時間かけて撹拌しながら滴下した。滴下終了後、さらに、80℃で1時間撹拌を継続して反応させた。その後、イオン交換水322質量部を添加し、室温まで冷却した。冷却後、50質量%ジメチルエタノールアミン水溶液40.5質量部を添加し、10分撹拌して、水酸基価86、不揮発分29質量%のアクリルエマルションR−3を得た。
【0076】
(調製例1)溶剤型クリア塗料C−1の調製
容器に、熱硬化性樹脂として合成例1で得た溶剤型クリア用アクリル樹脂R−1を759.3質量部、流動停止遅延剤として3,5−ジメチルピラゾールを46質量部、酢酸ブチル197.4質量部、チヌビン123(BASF社製)9.9質量部、チヌビン384−2(BASF社製)9.9質量部を仕込んで撹拌した後、得られた混合物に撹拌しながらBYK−370(BYK−Chmie製)2.8質量部、BYK−306(BYK−Chmie製)5.1質量部、BYK−392(BYK−Chmie製)9.5質量部、ディスパロンNSH8430(楠本化成)4.9質量部、ディスパロンOX883(楠本化成製)1.2質量部、イソシアネート系硬化剤としてポリイソシアネート(旭化成ケミカル社製、「デュラネートTPA−100」)175質量部を添加して撹拌し、イソシアネート硬化型の溶剤型クリア塗料C−1を得た。この溶剤型クリア塗料C−1の流動停止時間tcUは370秒であり、流動停止時間tcU後から標準焼付け時間tbU終了時までの間の収縮率ωは4.0%であった。
【0077】
(調製例2)溶剤型クリア塗料C−2の調製
流動停止遅延剤として2−ブタノンオキシム41質量部を用いた以外は調製例1と同様にして、イソシアネート硬化型の溶剤型クリア塗料C−2を得た。この溶剤型クリア塗料C−2の流動停止時間tcUは420秒であり、流動停止時間tcU後から標準焼付け時間tbU終了時までの間の収縮率ωは3.5%であった。
【0078】
(調製例3)溶剤型クリア塗料C−3の調製
流動停止遅延剤を用いなかった以外は調製例1と同様にして、イソシアネート硬化型の溶剤型クリア塗料C−3を得た。この溶剤型クリア塗料C−3の流動停止時間tcUは310秒であり、流動停止時間tcU後から標準焼付け時間tbU終了時までの間の収縮率ωは0.9%であった。
【0079】
(調製例4)着色顔料ペーストの調製
容器に、イオン交換水450質量部、湿潤分散剤(Byk−Chemie社製、「Disperbyk−180」)50質量部、ルチル型酸化チタン(石原産業社製、「CR−90」)495質量部、カーボンブラック(三菱化学社製、「MA−100」)5質量部を仕込み、10分間予備混合した後、仕込み体積量と同じ体積量のガラスビーズ(粒径1.6mm)を投入し、卓上サンドミルで1時間分散した。グラインドゲージによる分散終了時の粒度は5μm以下であった。
【0080】
(調製例5)水性中塗り塗料P−1の調製
容器に、合成例2で得た水性中塗り用アクリルエマルションR−2を185.7質量部仕込み、これに、撹拌しながらメチル化メラミン樹脂(オルネクスジャパン社製、「サイメル325」)30.0質量部、イオン交換水32質量部を加えて5分間攪拌した。さらに、アルカリ増粘剤(BASF社製、「Viscalex HV30」)3.2質量部、ジメチルエタノールアミン0.8質量部、BYK−346(BYK−Chmie製)2.5質量部、調製例4で得た着色顔料ペースト123.1質量部を加えて、不揮発分39.3質量%の水性中塗り塗料P−1を得た。この水性中塗り塗料P−1の収縮率ωは、流動停止時間tcUが310秒の場合には6.0%であり、tcUが370秒の場合には5.4%であり、tcUが420秒の場合には4.8%であった。
【0081】
(調製例6)水性ベース塗料B−1の調製
容器に、合成例3で得たアクリルエマルションR−3を69.6質量部仕込み、これに、撹拌しながらメチル化メラミン樹脂(オルネクスジャパン社製、「サイメル325」)11.3質量部、イオン交換水54質量部を加えて5分間攪拌した。さらに、Viscalex HV30を4.0質量部、ジメチルエタノールアミン1.2質量部を加えて、水性樹脂液を得た。
【0082】
別の容器に、ブチルグリコール9.9質量部及びアルミペースト(Eckart社製、「Hydrolan2156」)9.9質量部を仕込み、さらに、1時間攪拌してアルミペースト溶液を得た。
【0083】
次に、前記水性樹脂溶液148.3質量部に、このアルミペースト溶液19.8質量部を撹拌しながら添加し、さらに、1時間攪拌して、水性ベース塗料B−1を得た。この水性ベース塗料B−1の収縮率ωは、流動停止時間tcUが310秒の場合には9.1%であり、tcUが370秒の場合には8.2%であり、tcUが420秒の場合には7.2%であった。
【0084】
(実施例1)
電着塗装を施した鋼板(日本ルートサービス(株)製)の表面に、調製例5で得た水性中塗り塗料P−1(tcU=370秒の場合、ω=5.4%)を、焼付け後の膜厚が20μmになるように塗装し、80℃で3分間加熱して水及び有機溶剤などを揮発させた。次に、調製例6で得た水性ベース塗料B−1(tcU=370秒の場合、ω=8.2%)を、焼付け後の膜厚が15μmになるように塗装し、80℃で3分間加熱して水及び有機溶剤などを揮発させた。次いで、この水性ベース塗料B−1の層の上に、調製例1で得た溶剤型クリア塗料C−1(tcU=370秒、ω=4.0%)を焼付け後の膜厚が35μmになるように塗装し、水性中塗り塗料P−1と水性ベース塗料B−1と溶剤型クリア塗料C−1とをウェットオンウェットで積層した未硬化積層塗膜を得た。
【0085】
この未硬化積層塗膜を室温で10分間静置(セッティング)した後、硬化反応をさせるために140℃で30分間の加熱処理(焼付け処理)を施して各層を硬化させ、積層塗膜を得た。
【0086】
得られた積層塗膜について、ウェーブスキャン(BYK−Gardner社製「Wave−Scan Dual」)を用いてウェーブスキャン値〔Wa(波長0.1〜0.3mm)、Wb(波長0.3〜1mm)、Wc(波長1〜3mm)、Wd(波長3〜10mm)、We(波長10〜30mm)〕を測定した。その結果を表1に示す。これらのウェーブスキャン値は、値が小さいほど上層表面における当該波長の凹凸が少ないことを示し、外観品質が優れることを意味する。ちなみに、Waが小さいほど光沢が優れ、WdやWeが小さいほど肌がよいことを意味する。
【0087】
また、得られた積層塗膜において、上層に隣接する第一隣接層は前記水性ベース塗料B−1により形成された中間層であり、前記第一隣接層に隣接する第二隣接層は前記水性中塗り塗料P−1により形成された最下層である。したがって、上層用塗料の流動停止時間tcU後から各塗料の標準焼付け時間t終了時までの間の溶剤型クリア塗料C−1(上層用塗料)の収縮率ωと水性ベース塗料B−1(第一隣接層用塗料)の収縮率ωA1との差の絶対値|Δω|は4.2%であり、水性ベース塗料B−1(第一隣接層用塗料)の収縮率ωA1と水性中塗り塗料P−1(第二隣接層用塗料)の収縮率ωA2との差の絶対値|Δω|は2.8%であった。また、前記上層用塗料の収縮率ωと前記第一隣接層用塗料の収縮率ωA1との差の絶対値|Δω|と、前記第一隣接層用塗料の収縮率ωA1と前記第二隣接層用塗料の収縮率ωA2との差の絶対値|Δω|との和(Δω+Δω)は7.0%であった。
【0088】
(実施例2)
中塗り塗料として、調製例5で得た水性中塗り塗料P−1(tcU=420秒の場合、ω=4.8%)を用い、ベース塗料として、調製例6で得た水性ベース塗料B−1(tcU=420秒の場合、ω=7.2%)を用い、クリア塗料として、調製例2で得た溶剤型クリア塗料C−2(tcU=420秒、ω=3.5%)を用いた以外は実施例1と同様にして、積層塗膜を得た。得られた積層塗膜について、実施例1と同様にしてWa〜Weを測定した。その結果を表1に示す。
【0089】
また、得られた積層塗膜において、上層に隣接する第一隣接層は前記水性ベース塗料B−1により形成された中間層であり、前記第一隣接層に隣接する第二隣接層は前記水性中塗り塗料P−1により形成された最下層である。したがって、上層用塗料の流動停止時間tcU後から各塗料の標準焼付け時間t終了時までの間の溶剤型クリア塗料C−2(上層用塗料)の収縮率ωと水性ベース塗料B−1(第一隣接層用塗料)の収縮率ωA1との差の絶対値|Δω|は3.7%であり、水性ベース塗料B−1(第一隣接層用塗料)の収縮率ωA1と水性中塗り塗料P−1(第二隣接層用塗料)の収縮率ωA2との差の絶対値|Δω|は2.4%であった。また、前記上層用塗料の収縮率ωと前記第一隣接層用塗料の収縮率ωA1との差の絶対値|Δω|と、前記第一隣接層用塗料の収縮率ωA1と前記第二隣接層用塗料の収縮率ωA2との差の絶対値|Δω|との和(Δω+Δω)は6.1%であった。
【0090】
(比較例1)
中塗り塗料として、調製例5で得た水性中塗り塗料P−1(tcU=310秒の場合、ω=6.0%)を用い、ベース塗料として、調製例6で得た水性ベース塗料B−1(tcU=310秒の場合、ω=9.1%)を用い、クリア塗料として、調製例3で得た溶剤型クリア塗料C−3(tcU=310秒、ω=0.9%)を用いた以外は実施例1と同様にして、積層塗膜を得た。得られた積層塗膜について、実施例1と同様にしてWa〜Weを測定した。その結果を表1に示す。
【0091】
また、得られた積層塗膜において、上層に隣接する第一隣接層は前記水性ベース塗料B−1により形成された中間層であり、前記第一隣接層に隣接する第二隣接層は前記水性中塗り塗料P−1により形成された最下層である。したがって、上層用塗料の流動停止時間tcU後から各塗料の標準焼付け時間t終了時までの間の溶剤型クリア塗料C−3(上層用塗料)の収縮率ωと水性ベース塗料B−1(第一隣接層用塗料)の収縮率ωA1との差の絶対値|Δω|は8.2%であり、水性ベース塗料B−1(第一隣接層用塗料)の収縮率ωA1と水性中塗り塗料P−1(第二隣接層用塗料)の収縮率ωA2との差の絶対値|Δω|は3.1%であった。また、前記上層用塗料の収縮率ωと前記第一隣接層用塗料の収縮率ωA1との差の絶対値|Δω|と、前記第一隣接層用塗料の収縮率ωA1と前記第二隣接層用塗料の収縮率ωA2との差の絶対値|Δω|との和(Δω+Δω)は11.3%であった。
【0092】
【表1】
【0093】
表1に示した結果から明らかなように、本発明のように、2つの下層(中間層及び最下層)の各層に熱硬化型塗料を使用し、上層にイソシアネート硬化型塗料を使用し、ウェットオンウェットにより積層して未硬化積層塗膜を得た後、焼付け処理を施す塗装方法において、熱硬化性樹脂とイソシアネート基に着脱可能な状態で結合することが可能な流動停止遅延剤とを混合した後、イソシアネート系硬化剤を混合して調製したイソシアネート硬化型塗料を上層用塗料として使用することによって、上層用塗料の流動停止時間tcUが長くなり、上層の流動が停止した後における上層とそれに隣接する中間層との間の収縮率差の絶対値、上層の流動が停止した後における中間層とそれに隣接する最下層との間の収縮率差の絶対値、並びに、上層の流動が停止した後における基材に隣接する最下層の収縮率をいずれも小さくすることができ、その結果、前記流動停止遅延剤を含有していないイソシアネート硬化型塗料を上層用塗料として使用して形成した従来の積層塗膜(比較例1)に比べて、Wa〜Weが小さい積層塗膜(実施例1〜2)が得られることがわかった。
【0094】
(実施例3)
電着塗装を施した鋼板(日本ルートサービス(株)製)の表面に、調製例6で得た水性ベース塗料B−1(tcU=370秒の場合、ω=8.2%)を、焼付け後の膜厚が15μmになるように塗装し、80℃で3分間加熱して水及び有機溶剤などを揮発させた。次いで、この水性ベース塗料B−1の層の上に、調製例1で得た溶剤型クリア塗料C−1(tcU=370秒、ω=4.0%)を焼付け後の膜厚が35μmになるように塗装し、水性ベース塗料B−1と溶剤型クリア塗料C−1とをウェットオンウェットで積層した未硬化積層塗膜を得た。
【0095】
この未硬化積層塗膜に、実施例1と同様にして、セッティング及び加熱処理(焼付け処理)を施し、積層塗膜を得た。得られた積層塗膜について、実施例1と同様にしてWa〜Weを測定した。その結果を表2に示す。
【0096】
また、得られた積層塗膜において、上層に隣接する第一隣接層は前記水性ベース塗料B−1により形成された最下層である。したがって、上層用塗料の流動停止時間tcU後から各塗料の標準焼付け時間t終了時までの間の溶剤型クリア塗料C−1(上層用塗料)の収縮率ωと水性ベース塗料B−1(第一隣接層用塗料)の収縮率ωA1との差の絶対値|Δω|は4.2%であった。
【0097】
(比較例2)
ベース塗料として、調製例6で得た水性ベース塗料B−1(tcU=310秒の場合、ω=9.1%)を用い、クリア塗料として、調製例3で得た溶剤型クリア塗料C−3(tcU=310秒、ω=0.9%)を用いた以外は実施例3と同様にして、積層塗膜を得た。得られた積層塗膜について、実施例1と同様にしてWa〜Weを測定した。その結果を表2に示す。
【0098】
また、得られた積層塗膜において、上層に隣接する第一隣接層は前記水性ベース塗料B−1により形成された最下層である。したがって、上層用塗料の流動停止時間tcU後から各塗料の標準焼付け時間t終了時までの間の溶剤型クリア塗料C−3(上層用塗料)の収縮率ωと水性ベース塗料B−1(第一隣接層用塗料)の収縮率ωA1との差の絶対値|Δω|は8.2%であった。
【0099】
【表2】
【0100】
表2に示した結果から明らかなように、本発明のように、最下層に熱硬化型塗料を使用し、上層にイソシアネート硬化型塗料を使用し、ウェットオンウェットにより積層して未硬化積層塗膜を得た後、焼付け処理を施す塗装方法において、熱硬化性樹脂とイソシアネート基に着脱可能な状態で結合することが可能な流動停止遅延剤とを混合した後、イソシアネート系硬化剤を混合して調製したイソシアネート硬化型塗料を上層用塗料として使用することによって、上層用塗料の流動停止時間tcUが長くなり、上層の流動が停止した後における上層とそれに隣接する最下層との間の収縮率差の絶対値、並びに、上層の流動が停止した後における基材に隣接する最下層の収縮率をいずれも小さくすることができ、その結果、前記流動停止遅延剤を含有していないイソシアネート硬化型塗料を上層用塗料として使用して形成した従来の積層塗膜(比較例2)に比べて、Wa〜Weが小さい積層塗膜(実施例3)が得られることがわかった。
【0101】
以上の結果から、少なくとも1層の下層(積層塗膜が2層の場合には最下層、3層以上の場合には最下層と少なくとも1層の中間層の2層以上)に熱硬化型塗料を使用し、上層にイソシアネート硬化型塗料を使用し、ウェットオンウェットにより積層して未硬化積層塗膜を得た後、焼付け処理を施す塗装方法において、熱硬化性樹脂と前記流動停止遅延剤とを混合した後、イソシアネート系硬化剤を混合して調製したイソシアネート硬化型塗料を上層用塗料として使用することによって、外観品質が高度に優れた積層塗膜が得られることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0102】
以上説明したように、本発明のイソシアネート硬化型塗料組成物を用いることによって、2種類以上の塗料をウェットオンウェットで積層して同時に焼付けて各層を硬化させても、上層表面の凹凸の発生が十分に抑制された積層塗膜を得ることができる。これにより、肌(表面平滑性)や光沢等の外観品質が高度に優れた塗装体を得ることができる。
【0103】
また、本発明の塗装方法は、このようなイソシアネート硬化型塗料組成物を用いているため、2種類以上の塗料をウェットオンウェットで積層して同時に焼付ける場合においても外観品質が高度に優れた塗装体を得ることができる塗装方法として有用であり、特に、乗用車、トラック、バス、オートバイ等の自動車用車体やその部品の塗装方法として有用である。
図1