特開2017-218538(P2017-218538A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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  • 特開2017218538-潤滑油基油の製造方法 図000005
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-218538(P2017-218538A)
(43)【公開日】2017年12月14日
(54)【発明の名称】潤滑油基油の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C10G 65/12 20060101AFI20171117BHJP
   C10G 45/08 20060101ALI20171117BHJP
   C10G 47/16 20060101ALI20171117BHJP
【FI】
   C10G65/12
   C10G45/08
   C10G47/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-115488(P2016-115488)
(22)【出願日】2016年6月9日
(71)【出願人】
【識別番号】000004444
【氏名又は名称】JXTGエネルギー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【弁理士】
【氏名又は名称】平野 裕之
(72)【発明者】
【氏名】田中 藍
(72)【発明者】
【氏名】坂ノ上 宗広
【テーマコード(参考)】
4H129
【Fターム(参考)】
4H129AA02
4H129CA08
4H129CA26
4H129KA07
4H129KA11
4H129KB03
4H129KC03Y
4H129KC04Y
4H129KC05Y
4H129KC10Y
4H129KC12Y
4H129KC13Y
4H129KD15Y
4H129KD24Y
4H129KD37Y
4H129KD44Y
4H129NA02
4H129NA15
4H129NA32
4H129NA35
4H129NA45
(57)【要約】
【課題】水素化脱硫触媒の寿命を延ばし、且つ潤滑油基油の粘度指数及び収率を高める潤滑油基油の製造方法を提供すること。
【解決手段】潤滑油基油の製造方法は、原料油を、水素ガスの存在下で水素化脱硫触媒層(HDS)に接触させて、脱硫油を得る脱硫工程と、脱硫油を、水素ガスの存在下で水素化分解触媒層(HDC)に接触させて、生成油を得る分解工程と、水素化脱硫触媒層の平均温度T1AVEを、水素化分解触媒層の平均温度T2AVEよりも低く調整する温度調整工程と、を備え、温度調整工程では、(T2AVE−T1AVE)を8℃以上に調整する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料油を、水素ガスの存在下で水素化脱硫触媒層に接触させて、脱硫油を得る脱硫工程と、
前記脱硫油を、水素ガスの存在下で水素化分解触媒層に接触させて、生成油を得る分解工程と、
前記水素化脱硫触媒層の平均温度T1AVEを、前記水素化分解触媒層の平均温度T2AVEよりも低く調整する温度調整工程と、
を備え、
前記温度調整工程では、(T2AVE−T1AVE)を8℃以上に調整する、
潤滑油基油の製造方法。
【請求項2】
前記分解工程における前記脱硫油の分解率が、41体積%以上である、
請求項1に記載の潤滑油基油の製造方法。
【請求項3】
前記脱硫工程における前記原料油の分解率が、11体積%以下である、
請求項1又は2に記載の潤滑油基油の製造方法。
【請求項4】
前記温度調整工程では、前記水素化分解触媒層の出口の温度T2OUTLETを、前記水素化脱硫触媒層の出口の温度T1OUTLETよりも高く調整する、
請求項1〜3のいずれか一項に記載の潤滑油基油の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、潤滑油基油の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
石油の精製過程では、原油の常圧蒸留によって、常圧残油(Atmospheric Residue :AR)が得られる。この常圧残油(塔底油)の減圧蒸留によって、減圧軽油(Vacuum Gas Oil :VGO)及び減圧残油(Vacuum Residue :VR)が得られる。これらの原料油の水素化分解等の諸反応により、潤滑油基油(潤滑油用の基油)が得られる(下記特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014‐227498号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
原料油(例えば減圧軽油)を水素化分解触媒に接触させると、原料油に含まれる芳香族炭化水素の水素化により、ナフテンが生成し、ナフテンの異性化及び開環により、粘度指数(Viscosity Index: VI)が高いイソパラフィンが生成する。つまり、水素化分解の生成油は、イソパラフィンを含む。この生成油の分留によって得られる塔底油は、潤滑油基油の原料として利用される。塔底油には、潤滑油基油の原料として、粘度指数及び硫黄分の含有量等の規格(スペック)を満たすことが要求される。しかし、水素化分解のみでは原料油中の硫黄分を十分に低減することは困難である。塔底油中の硫黄分を十分に低減する方法の一つは、水素化分解前に原料油を水素化脱硫することである。例えば、反応器の上部に水素化脱硫触媒層を配置し、反応器の下部に水素化分解触媒層を配置し、反応器の頭頂部から原料油を反応器内へ供給する。原料油は、水素化脱硫触媒層において脱硫され、脱硫油が生成する。脱硫油は、水素化脱硫触媒層から水素化解触媒層へ流れ、水素化分解触媒層において水素化分解される。これらの一連の反応を経て、粘度指数が高く、硫黄分の含有量が少ない塔底油が得られる。
【0005】
しかしながら、本発明者らによる研究の結果、水素化脱硫と、これに続く水素化分解とを行った場合、水素化脱硫触媒層の活性が劣化し易いことが判明した。また本発明者らによる研究の結果、水素化脱硫と、これに続く水素化分解とを行った場合、粘度指数が高い生成油を高い収率で得ることは困難であることが判明した。
【0006】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、水素化脱硫触媒の寿命を延ばし、且つ潤滑油基油の粘度指数及び収率を高める潤滑油基油の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面に係る潤滑油基油の製造方法は、原料油を、水素ガスの存在下で水素化脱硫触媒層に接触させて、脱硫油を得る脱硫工程と、脱硫油を、水素ガスの存在下で水素化分解触媒層に接触させて、生成油を得る分解工程と、水素化脱硫触媒層の平均温度T1AVEを、水素化分解触媒層の平均温度T2AVEよりも低く調整する温度調整工程と、を備え、温度調整工程では、(T2AVE−T1AVE)を8℃以上に調整する。
【0008】
本発明の一側面に係る潤滑油基油の製造方法では、分解工程における脱硫油の分解率が、41体積%以上であってよい。
【0009】
本発明の一側面に係る潤滑油基油の製造方法では、脱硫工程における原料油の分解率が、11体積%以下であってよい。
【0010】
本発明の一側面に係る潤滑油基油の製造方法の温度調整工程では、水素化分解触媒層の出口の温度T2OUTLETを、水素化脱硫触媒層の出口の温度T1OUTLETよりも高く調整してよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、水素化脱硫触媒の寿命を延ばし、且つ潤滑油基油の粘度指数及び収率を高める潤滑油基油の製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る潤滑油基油の製造方法を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図1を参照しながら、本発明の好適な実施形態について説明する。本発明は下記実施形態に限定されるものではない。
【0014】
図1の横軸(X軸)は、原料油、脱硫油及び生成油の流れる方向を示し、また、これ等の油が流れる方向に沿った水素化脱硫触媒層(HDS)及び水素化分解触媒層(HDC)其々の相対的位置を示す。図1の縦軸(T軸)は、横軸に示す位置における水素化脱硫触媒層の温度、及び横軸に示す位置における水素化分解触媒層の温度を示す。
【0015】
本実施形態に係る潤滑油基油の製造方法は、脱硫工程と、脱硫工程に続く分解工程と、温度調整工程と、を備える。脱硫工程では、原料油を、水素ガスの存在下で水素化脱硫触媒層に接触させて、脱硫油を得る。脱硫工程では、水素化脱窒素によって原料油中の窒素分が低減されてもよい。水素化分解工程では、脱硫工程で得られた脱硫油を、水素ガスの存在下で水素化分解触媒層に接触させて、生成油を得る。生成油の分留により、粘度指数が高い塔底油が得られる。温度調整工程では、水素化脱硫触媒層の平均温度T1AVEを、水素化分解触媒層の平均温度T2AVEよりも低く調整し、且つ(T2AVE−T1AVE)を8℃以上に調整する。温度調整工程では、水素化分解触媒層の出口の温度T2OUTLETを、水素化脱硫触媒層の出口の温度T1OUTLETよりも高く調整してよい。脱硫工程及び分解工程其々における液空間速度が同一であり、且つ脱硫工程における分解率と分解工程における分解率との和が同一であるという前提のもとでは、T2OUTLETがT1OUTLETよりも高いほど、水素化脱硫触媒層の活性の劣化が抑制され易い。T2OUTLETは、水素化分解触媒層の発熱量により自動的に決まり、水素化分解触媒層の発熱量は、T2AVEによって決まる。T1OUTLETは、水素化脱硫触媒層の発熱量により自動的に決まり、水素化脱硫触媒層の発熱量は、T1AVEによって決まる。温度調整工程では、水素化脱硫触媒層の入口の温度T1INLETを、水素化分解触媒層の出口の温度T2OUTLETよりも低く調整してよい。T1AVEは、水素化脱硫の反応温度と言い換えてよい。T2AVEは、水素化分解の反応温度と言い換えてよい。
【0016】
脱硫工程及び分解工程を、連続的に継続してよい。例えば、原料油を水素化脱硫触媒層へ供給し続け、水素化脱硫触媒層から流出する脱硫油を回収することなくそのまま水素化分解触媒層へ供給し続け、水素化解触媒層から流出する生成油を得てよい。温度調整工程を、脱硫工程及び分解工程と同時に行ってよい。温度調整工程を、連続的に継続してよい。
【0017】
仮に水素化脱硫触媒層の平均温度T1AVEが水素化分解触媒層の平均温度T2AVEと同じである場合、原料油の水素化脱硫が必要以上に進行すると共に、コーク(coke)又はメタル成分(例えばNi又はV)等の析出によって水素化脱硫触媒層の活性が劣化し易い。つまり、潤滑油基油の製造の初期段階において、水素化脱硫触媒層の活性が使われ過ぎてしまう。その結果、潤滑油基油の製造の後期段階では、生成油中の硫黄分の含有量が、目的とするスペック(上限値)を上回ってしまう。同様の理由から、T1AVEがT2AVE以上である場合も、水素化脱硫触媒層の活性が劣化し易い。
【0018】
一方、本実施形態の温度調整工程では、水素化脱硫触媒層の平均温度T1AVEを、水素化分解触媒層の平均温度T2AVEよりも低く調整し、且つ(T2AVE−T1AVE)を8℃以上に調整する。その結果、過度の脱硫反応が抑制され、水素化脱硫触媒層の活性の劣化が抑制される。つまり、温度調整工程では、T1AVEを硫黄分の含有量のスペックを達成するために必要な最低限度に近づける。その結果、潤滑油基油の製造の初期段階において水素化脱硫触媒層の活性が温存され、水素化脱硫触媒層の寿命が延びる。仮に(T2AVE−T1AVE)が8℃未満である場合、(T2AVE−T1AVE)を8℃以上である場合に比べて、水素化脱硫触媒層の活性が劣化し易く、水素化脱硫触媒層の寿命が短くなり易い。
【0019】
また本実施形態では、上記の温度調整工程の実施により、潤滑油基油の粘度指数及び収率を高めることができる。潤滑油基油の収率は、例えば、下記式1によって定義されてよい。
Y=(MLO/MRO)×100 (1)
式1中、Yは、潤滑油基油の収率(単位:質量%)である。MROは、原料油の質量である。MLOは生成油の分留によって得られる潤滑油基油(又は潤滑油基油の原料)の質量である。
【0020】
水素化脱硫触媒層(HDS)は、一つの層であってよく、複数の脱硫触媒層から構成されていてもよい。水素化脱硫触媒層が複数の脱硫触媒層から構成されている場合、T1AVEは、各脱硫触媒層の温度を各脱硫触媒層の質量で荷重して平均した値である。水素化脱硫触媒層がn個の脱硫触媒層から構成される場合、T1AVEは、例えば、下記式2で表されてよい。
T1AVE=(1/ΣM1i)×Σ(M1i×T1i) (2)
式2中、iは1〜nである。nは2以上の自然数である。M1iは、第i番目の脱硫触媒層の質量であり、T1iは第i番目の脱硫触媒層の温度である。
【0021】
水素化分解触媒層(HDC)は、一つの層であってよく、複数の分解触媒層から構成されていてもよい。水素化分解触媒層が複数の分解触媒層から構成されている場合、T2AVEは、各分解触媒層の温度を各分解触媒層の質量で荷重して平均した値である。水素化分解触媒層がn’個の触媒層から構成される場合、T2AVEは、例えば、下記式3で表されてよい。
T2AVE=(1/ΣM2i)×Σ(M2i×T2i) (3)
式3中、iは1〜n’である。n’は2以上の自然数である。M2iは、第i番目の分解触媒層の質量であり、T2iは第i番目の分解触媒層の温度である。水素化分解触媒層を構成する分解触媒層の数n’は、水素化脱硫触媒層を構成する脱硫触媒層の数nと異なってよい。n’はnと同じであってもよい。
【0022】
水素化脱硫触媒層又は水素化分解触媒層が配置される反応器は、固定床型反応器であればよい。反応器の形状は、特に限定されない。反応器は、例えば塔状(円筒状)であってよい。塔状の反応器は耐圧性に優れる。
【0023】
水素化脱硫触媒層及び水素化分解触媒層は、垂直方向に並んでいてよい。水素化脱硫触媒層及び水素化分解触媒層は、水平方向に並んでいてもよい。水素化脱硫触媒層及び水素化分解触媒層が、斜めに並んでいてもよい。
【0024】
水素化脱硫触媒層が配置される反応器は、水素化分解触媒層が配置される反応器と異なっていてよい。例えば、一つの水素化脱硫触媒層が配置された反応器と、一つの水素化分解触媒層が配置された別の反応器と、を用いてよい。例えば、複数の水素化脱硫触媒層が配置された反応器と、複数の水素化分解触媒層が配置された別の反応器と、を用いてもよい。例えば、複数の水素化脱硫触媒層が配置された反応器と、一つの水素化分解触媒層が配置された別の反応器と、を用いてもよい。例えば、一つの水素化脱硫触媒層が配置された反応器と、複数の水素化分解触媒層が配置された別の反応器と、を用いてもよい。
【0025】
水素化脱硫触媒層が配置された第一の反応器内において脱硫工程を実施した後、脱硫工程で得られた脱硫油を、輸送路(管)を経由して、水素化分解触媒層が配置された第二の反応器へ供給し、第二の反応器内において分解工程を実施してもよい。
【0026】
水素化脱硫触媒層及び水素化分解触媒層が、一つの反応器内に配置されていてよい。例えば、塔状の固定床型反応器の上部に水素化脱硫触媒層を配置し、同反応器の下部に水素化分解触媒層を配置し、同反応器の頭頂部から原料油を反応器内へ供給してよい。または、塔状の固定床型反応器の反応器の上部に水素化分解触媒層を配置し、同反応器の下部に水素化脱硫触媒層を配置し、同反応器の底部から頭頂部へ向けて原料油を供給してもよい。
【0027】
水素化脱硫触媒層(HDS)が、垂直方向に並ぶ複数の脱硫触媒層から構成されている場合、各脱硫触媒層における発熱(反応熱)によって垂直方向において生じる温度差ΔT1は、例えば、5〜50℃であってよい。水素化分解触媒層が、垂直方向に並ぶ複数の分解触媒層から構成されている場合、各分解触媒層における発熱(反応熱)によって垂直方向において生じる温度差ΔT2は、例えば、5〜50℃であってよい。
【0028】
水素化分解の生成油の粘度指数と、分解工程における脱硫油の分解率との間には、相関関係が成り立つ。したがって、粘度指数のスペックに応じて、必要な分解率が定まる。分解率は水素化分解触媒層の温度(つまり水素化分解の反応温度)に依る。したがって、水素化分解触媒層の平均温度T2AVEは、生成油の粘度指数のスペック(目標値)に基づいて決定される。また、原料油の組成及び水素化分解触媒層の組成によって、水素化分解に要する反応温度も異なる。これらの理由のため、T2AVEは特に限定されない。T2AVEは、例えば、375〜450℃程度であってよい。
【0029】
水素化脱硫触媒層の平均温度T1AVEは、粘度指数のスペックに基づいて決定されたT2AVEから逆算して決定される。つまり、T2AVEが決定された後、(T2AVE−T1AVE)が8℃以上となるようにT1AVEが決定される。またT1AVE(特にT1AVEの下限値)は、生成油中の硫黄分の含有量のスペック(目標値)に応じて決定される。T1AVEが決定されると、T1AVEの制御のための諸条件(例えばクエンチ量)が決定される。上記の通り、粘度指数のスペックに応じてT2AVEは変わるので、T2AVEから逆算されるT1AVEも変わる。また、原料油の硫黄分等をはじめとする諸成分の組成、及び水素化脱硫触媒層の組成によって、水素化脱硫に要する反応温度(つまりT1AVE)は異なる。これらの理由のため、T1AVEは特に限定さない。T1AVEは、例えば、350〜442℃程度であってよい。
【0030】
上記の通り、T2AVE及びT1AVEは限定されないので、(T2AVE−T1AVE)の上限値も特に限定されない。(T2AVE−T1AVE)は、例えば、8〜40℃程度であってよい。
【0031】
潤滑油基油の製造の開始時点から終了時点まで常にT1AVEがT2AVEよりも低くなければならないわけでない。また、潤滑油基油の製造の開始時点から終了時点まで常に(T2AVE−T1AVE)が8℃以上でなければならないわけではない。潤滑油基油の製造過程における所定の期間において、T1AVEがT2AVEよりも低く維持され、且つ(T2AVE−T1AVE)が8℃以上に維持されればよい。所定の期間、(T2AVE−T1AVE)を8℃以上の一定の値に維持してよい。(T2AVE−T1AVE)は経時的に変動してもよい。つまり、T1AVE及びT2AVEは、潤滑油基油の製造装置(脱硫・分解装置)の運転期間全体にわたる各触媒層の平均温度である必要はなく、運転期間中のある時点での各触媒層全体の平均値であってよい。
【0032】
潤滑油基油の製造において水素化脱硫触媒層(HDS)の劣化を完全に防止することは困難である。したがって、水素化脱硫触媒層の活性の劣化(時間の経過)に伴って、水素化脱硫触媒層の平均温度T1AVEを上昇させて、水素化脱硫触媒層の活性を補ってよい。換言すれば、水素化脱硫触媒層の活性の劣化(時間の経過)に伴って、(T2AVE−T1AVE)が減少してよい。換言すれば、生成油中の硫黄分の含有量の増加に伴い、T1AVEを上昇させてよい。水素化脱硫触媒層の寿命とは、脱硫工程の開始時点から、生成油中の硫黄分の含有量がスペック(所定の上限値)に達する時点までの時間といえる。潤滑油基油の製造において水素化分解触媒層(HDC)の活性も徐々に劣化する。水素化分解触媒層の活性の劣化(時間の経過)に伴って、水素化分解触媒層の平均温度T2AVEを上昇させて、水素化分解触媒層の活性も補ってよい。各触媒層の活性の劣化に伴って、T1AVE及びT2AVEの両方を上昇させながら、(T2AVE−T1AVE)を8℃以上に制御してもよい。水素化脱硫触媒層の活性は、水素化分解触媒層の活性に比べて、早く劣化し易い。したがって、T1AVEの上昇速度を、時間の経過に伴って徐々に、T2AVEの上昇速度よりも高い値に制御してよい。この場合、時間の経過に伴って(T2AVE−T1AVE)が減少してよい。
【0033】
水素化脱硫触媒層の活性の劣化(時間の経過)に伴って、図1に示す水素化脱硫触媒層(HDS)及び水素化分解触媒層(HDC)其々における温度勾配が緩やかになってよい。水素化脱硫触媒層(HDS)における温度勾配は、直線的でなくてもよい。例えば、水素化脱硫触媒層(HDS)が複数の脱硫触媒層から構成されている場合、クエンチにより、下流側の脱硫触媒層の温度T1が、上流側の脱硫触媒層の温度T1i−1よりも低下してよい。水素化分解触媒層(HDC)における温度勾配も、直線的でなくてもよい。例えば、水素化分解触媒層(HDC)が複数の分解触媒層から構成されている場合、クエンチにより、下流側の分解触媒層の温度T2が、上流側の分解触媒層の温度T2i−1よりも低下してよい。
【0034】
T1AVE及びT2AVE其々の制御方法は、特に限定されない。例えば、反応器自体を加熱してよい。水素化脱硫触媒層自体を加熱してもよい。水素化分解触媒層自体を加熱してもよい。水素化脱硫触媒層へ供給する原料油の温度の調整により、T1AVEを制御してよい。例えば、原料油を予め加熱炉で加熱することにより、T1AVEを上昇させてよい。原料油よりも温度が高い生成油と原料油との熱交換を行ってもよい。原料油を生成油で加熱することにより、脱硫工程及び分解工程において消費される熱エネルギーを抑制することができる。原料油よりも温度が高い脱硫油と原料油との熱交換を行ってもよい。原料油を脱硫油で加熱することにより、脱硫工程及び分解工程において消費される熱エネルギーを抑制することができる。水素化分解触媒層の入口の温度T2INLETの調整により、T2AVEを制御してもよい。例えば、T2AVEの制御のために、水素化分解触媒層の入口におけるクエンチによってT2INLETを低下させてもよい。クエンチにより、T2INLETが水素化分解触媒層の出口の温度T1OUTLETよりも低下してもよい。水素化脱硫触媒層(HDS)が複数の脱硫触媒層から構成されている場合、複数の脱硫触媒層間におけるクエンチにより、水素化脱硫触媒層を冷却して、T1AVEを低下させてもよい。水素化分解触媒層(HDC)が複数の分解触媒層から構成されている場合、複数の分解触媒層間におけるクエンチにより、水素化分解触媒層を冷却して、T2AVEを低下させてもよい。クエンチは、例えば、クエンチラインによる触媒層間への水素ガスの導入によって行えばよい。各クエンチラインにおける最小のクエンチ量による冷却温度は、例えば、3℃程度であってよい。
【0035】
生成油の粘度指数(VI)は、粘度指数のスペック(目標値)に応じて制御されるので、特に限定されない。生成油の粘度指数は、例えば、80〜150程度であってよい。生成油の粘度指数は、例えば、水素化分解触媒層の平均温度T2AVE、水素化分解の反応時間、分解工程における水素/油比及び液空間速度等によって制御される。
【0036】
生成油中の硫黄分の含有量は、特に限定されない。生成油中の硫黄分の含有量は、例えば、例えば、0〜300質量ppm、又は0〜50質量ppm程度であってよい。生成油中の硫黄分の含有量は、例えば、水素化脱硫触媒層の平均温度T1AVE、水素化脱硫の反応時間、脱硫工程における水素/油比及び液空間速度等によって制御される。
【0037】
脱硫工程における原料油の分解率は、例えば、4〜11体積%であってよい。原料油の分解率が11体積%以下である場合、分解工程において得られる生成油の収率が高くなり易い。原料油の分解率は、例えば、T1AVEの調整によって制御されてよい。例えば、T1AVEの低下によって、脱硫工程における原料油の分解率を低下させることができる。脱硫工程における原料油の分解率は、例えば、下記式4によって定義されてよい。
R1c={(m1−m2)/m1}×100 (4)
式4中、R1cは、脱硫工程における原料油の分解率(単位:質量%)である。m1は、原料油に含まれる、沸点が360℃以上である留分の質量である。m2は、脱硫油に含まれる、沸点が360℃以上である留分の質量である。分解率1Rcは、脱硫工程における重質な成分(沸点が360℃以上である留分)の減少の程度を示す。
【0038】
分解工程における脱硫油の分解率は、例えば、41〜70体積%であってよい。脱硫油の分解率が41体積%以上である場合、得られる生成油の粘度指数が高くなり易い。脱硫油の分解率は、例えば、T2AVEの調整によって制御されてよい。例えば、T2AVEの上昇によって、分解工程における脱硫油の分解率を高めることができる。分解工程における脱硫油の分解率は、例えば、下記式5によって定義されてよい。
R2c={(m2−m2’)/m1}×100 (5)
式5中、R2cは、分解工程における脱硫油の分解率(単位:質量%)である。m2は、脱硫油に含まれる、沸点が360℃以上である留分の質量である。m2’は、生成油に含まれる、沸点が360℃以上である留分の質量である。m1は、原料油に含まれる、沸点が360℃以上である留分の質量である。分解率R2cは、分解工程における重質な成分(沸点が360℃以上である留分)の減少の程度を示す。
【0039】
水素化脱硫触媒層(HDS)へ供給される原料油は、芳香族炭化水素を含有する。原料油は、例えば、原油の蒸留過程で得られる留分であってよい。原油は、例えば、石油、コンデンセート、オイルサンド由来の合成原油、及びビチューメン改質油からなる群より選ばれる少なくとも一種であってよい。原料油は、例えば、重油(常圧残油)、減圧軽油、減圧残油、及び溶剤脱れき油からなる群より選ばれる少なくとも一種であってよい。重油(常圧残油)は、原油の常圧蒸留によって得られる。減圧軽油及び減圧残油は、常圧残油の減圧蒸留により得られる。溶剤脱れき油は、減圧残油の溶剤脱れきにより得られる。原料油中の硫黄分の含有量は、特に限定されないが、例えば、2.5〜3.5質量%程度であってよい。
【0040】
水素化脱硫触媒層(HDS)へ供給される原料油の温度は、例えば、300〜380℃であってよい。水素化脱硫触媒層が配置された反応器内の水素ガスの分圧は、例えば、5〜20MPaであってよい。脱硫工程における液空間速度(LHSV)は、例えば、0.1〜4h−1であってよい。LHSVは、1時間当たりに水素化脱硫触媒層へ供給される原料油の体積V・h−1を、水素化脱硫触媒層の総体積VHDSで除した値(V/VHDS)・h−1である。脱硫工程における水素/油比(水素ガスの流量/原料油の流量)は、例えば、300〜2500Nm/mであってよい。脱硫工程における通油量は、例えば、9〜15kBD(Barrel per Day)であってよい。
【0041】
水素化脱硫触媒層(HDS)から水素化分解触媒層(HDC)へ供給される脱硫油の温度は、例えば、300〜410℃であってよい。水素化分解触媒層が配置された反応器内の水素ガスの分圧は、例えば、5〜20MPaであってよい。分解工程における液空間速度(LHSV)は、例えば、0.1〜1.5h−1であってよい。LHSVは、1時間当たりに水素化分解触媒層へ供給される脱硫油の体積VDSO・h−1を、水素化分解触媒層の総体積VHDCで除した値(VDSO/VHDC)・h−1である。分解工程における水素/油比(水素ガスの流量/脱硫油の流量)は、例えば、300〜2500Nm/mであってよい。分解工程における通油量は、例えば、9〜15kBD(Barrel per Day)であってよい。
【0042】
水素化脱硫触媒層(HDS)の総体積VHDSと水素化分解触媒層(HDC)の総体積VHDCとの比VHDS/VHDCは、特に限定されない。VHDS/VHDCは、例えば、0.1〜1であってよい。
【0043】
水素化脱硫触媒層の組成は、特に限定されない。水素化脱硫触媒層は、例えば、担体と、担体に担持された活性金属と、を含有する、多数の脱硫触媒粒子を備えてよい。水素化脱硫触媒層用の担体は、例えば、アルミナ、シリカ、チタニア、シリカ‐アルミナ、シリカ‐チタニア、アルミナ‐チタニア及びシリカ‐アルミナ‐チタニアからなる群より選ばれる少なくとも一種であってよい。水素化脱硫触媒層の活性金属は、第5族元素、第6族元素、第8族元素、第9族元素、第10族元素及び第15族元素からなる群より選ばれる少なくとも一種であってよい。これらの元素は、IUPAC(国際純正応用化学連合)の規定に基づく長周期型の元素の周期表に属する。水素化脱硫触媒層の活性金属は、例えば、ニッケル、コバルト又はリンのうち少なくとも一種と、モリブデン又はタングステンのうち少なくとも一種と、であってよい。活性金属の組合せは、例えば、ニッケル‐モリブデン、コバルト‐モリブデン、ニッケル‐コバルト‐モリブデン、ニッケル‐モリブデン‐リン、コバルト‐モリブデン‐リン又はニッケル‐コバルト‐モリブデン‐リンであってよい。各脱硫触媒粒子の平均細孔径は、8〜12nm程度であればよい。各脱硫触媒粒子の細孔容積は、0.4〜1.0cm/g程度であればよい。各脱硫触媒粒子のBET比表面積は、180〜250m/g程度であればよい。
【0044】
水素化分解触媒層の組成は、特に限定されない。水素化分解触媒層は、担体と、担体に担持されている活性金属と、を含有する、多数の分解触媒粒子を備えてよい。水素化分解触媒層用の担体は、例えば、ゼオライトを含有してもよい。ゼオライトは、例えば、HY型ゼオライト、超安定化Y型(USY型)ゼオライト、モルデナイト、及びβゼオライトからなる群より選ばれる少なくとも一種であってよい。これらのうち、USY型ゼオライトが好ましい。
【0045】
USY型ゼオライトは、Y型ゼオライトを水熱処理又は酸処理の少なくともいずれの処理により、超安定化することにより得られる。USY型ゼオライトは、Y型ゼオライトが本来有する微細細孔構造を備える。この微細細孔構造とは、細孔径が2nm以下であるミクロ細孔から構成される構造である。また、上記微細細孔構造に加えて、さらに細孔径が2〜10nmである新たな細孔がUSY型ゼオライトに形成されている。
【0046】
USY型ゼオライトの平均粒径は、例えば、1.0μm以下、又は0.5μm以下であってよい。また、USY型ゼオライトにおけるシリカ/アルミナのモル比(アルミナに対するシリカのモル比)は10〜200、15〜100、又は20〜60であってよい。
【0047】
水素化分解触媒層用の担体は、ゼオライトに加えて無定形金属酸化物を更に含有してよい。無定形金属酸化物は、アルミナ、シリカ、ボリア、ジルコニア、チタニア、マグネシア、アルミナ‐シリカ、アルミナ‐ボリア、アルミナ‐チタニア、アルミナ‐ジルコニア、アルミナ‐マグネシア、アルミナ‐シリカ‐ボリア、アルミナ‐シリカ‐ジルコニア、アルミナ‐シリカ‐チタニア、及びアルミナ‐チタニア‐ジルコニアからなる群より選ばれる少なくとも一種を含有してよい。水素化分解触媒層用の担体は、さらにリン又は塩素等の添加元素を含んでもよい。
【0048】
水素化分解触媒層用の担体は、USY型ゼオライト及び無定形金属酸化物を含有してよい。水素化分解触媒層用の担体におけるUSY型ゼオライトの含有量は、担体全量を基準として、0.1〜80質量%、10〜80質量%、又は30〜70質量%であってよい。水素化分解触媒層用の担体における無定形金属酸化物の含有量は、担体全量を基準として、0.1〜60質量%であってよい。
【0049】
水素化分解触媒層用の担体は、例えば、USY型ゼオライト及びバインダーを含む組成物を成形した後、組成物を焼成することにより製造される。無定形複合金属酸化物を含む担体を製造する場合、例えば、無定形複合金属酸化物になる原料を含む組成物を、焼成すればよい。組成物の焼成温度は、例えば、400〜550℃、470〜530℃、又は490〜530℃であってよい。このような焼成温度で焼成することにより、担体に十分な固体酸性及び機械的強度が付与される。
【0050】
水素化分解触媒層用の担体は、非結晶質の固体酸を含有してもよい。非結晶質の固体酸は、例えば、シリカ‐アルミナ、シリカ‐ジルコニア、アルミナ‐ボリア、シリカ‐チタニア、シリカ‐マグネシア、カオリナイト、アルミノフォスフェイト、シリカアルミノフォスフェイト、アルミナ‐シリカ‐ボリア及びアルミナ‐シリカ‐ジルコニアからなる群より選ばれる少なくとも一種であってよい。
【0051】
非結晶質の固体酸を含有する担体は、例えば、非結晶質の固体酸とバインダーとを含む混合物を成形した後、混合物を焼成することにより製造される。担体における固体酸の含有量は、例えば、担体全量を基準として、5〜90質量%、又は8〜70質量%であってよい。バインダーは、例えば、アルミナ(ベーマイトなど)、シリカ、シリカアルミナ、チタニア、及びマグネシアからなる群より選ばれる少なくとも一種であってよい。バインダーは、アルミナであることが好ましい。担体におけるバインダーの含有量は、例えば、担体全量を基準として、10〜90質量%、又は20〜80質量%であってよい。非結晶質の固体酸とバインダーとを含む混合物の焼成温度は、例えば、300〜600℃、400〜550℃、又は430〜500℃であってよい。
【0052】
水素化分解触媒層の活性金属は、例えば、第6族元素、第8族元素、第9族元素、10族元素及び第15族元素からなる群より選択される少なくとも一種の金属であってよい。これらの元素は、IUPACの規定に基づく長周期型の元素の周期表に属する。水素化分解触媒層の活性金属は、例えば、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、イリジウム、オスミウム、コバルト、ニッケル、モリブデン、タングステン、鉄及びリンからなる群より選ばれる少なくとも一種であってよい。水素化分解触媒層の活性金属は、例えば、白金、パラジウム、ニッケル、コバルト、モリブデン、タングステン及びリンからなる群より選択される少なくとも一種であってもよい。水素化分解触媒層の活性金属は、コバルト、ニッケル、モリブデン、タングステン及びリンからなる群より選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。水素化分解触媒層は、複数種の活性金属を含有してもよい。複数種の活性金属の組合せは、例えば、白金‐パラジウム、コバルト‐モリブデン、ニッケル‐モリブデン、ニッケル‐コバルト‐モリブデン、ニッケル‐タングステン又はニッケル‐モリブデン‐リンであってよい。活性金属は、例えば、含浸法又はイオン交換法によって上述の担体に担持されてよい。水素化分解触媒層における活性金属の含有量は、例えば、100質量部の担体に対して、1.0〜40質量部、又は10〜30質量部であってよい。
【0053】
水素脱硫触媒層用の担体は、例えば、成形されてよい。成形された担体の形状は、例えば、球状、円筒状、円柱状、又はディスク状であってよい。担体の形状は、三つ葉型又は四つ葉型の断面を有する筒状又は柱状であってもよい。担体の成形方法は、例えば、押出成型、又は打錠成型であってよい。水素化分解触媒層用の担体も、水素脱硫触媒層用の担体と同様に成形されていてよい。水素分解触媒層用の担体の形状及び成形方法は、水素脱硫触媒層用の担体の場合と同様であってよい。
【実施例】
【0054】
以下、本発明の内容を実施例及び比較例を用いてより詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0055】
(実施例1)
塔状の固定床型反応器に、水素化脱硫触媒層及び水素化分解触媒層を固定した。水素化脱硫触媒層及び水素化分解触媒層を、反応器内で鉛直方向に並べた。水素化脱硫触媒層を、水素化分解触媒層の上方に配置した。水素化脱硫触媒層の全体は、複数の脱硫触媒層から構成されていた。水素化脱硫触媒層に用いた担体は、シリカ‐アルミナ‐チタニアであり、水素化脱硫触媒層の活性金属は、ニッケル‐モリブデン‐リンであった。水素化分解触媒層の全体は、複数の分解触媒層から構成されていた。複数の分解触媒層のうち一部の層は、ゼオライトから構成される層であり、他の層は、非晶質の固体酸から構成される層であった。
【0056】
固定床型反応器は、水素化脱硫触媒層及び水素化分解触媒層を個別に加熱するヒーターを備えていた。これらのヒーターを用いて、水素化脱硫触媒層の平均温度T1AVE及び水素化分解触媒層の平均温度T2AVEを個別に制御するための制御機構が、固定床型反応器に備わっていた。
【0057】
原料油として、減圧軽油を用いた。減圧軽油を、反応器の上部から反応器の内部へ流し続けて、水素化脱硫触媒層及び水素化分解触媒層を通過させ続けた。液空間速度(LHSV)は、下記表1に示す値に維持した。また水素ガスを反応器内へ供給し続けた。これらの操作により、脱硫工程及び分解工程を所定の時間継続した。また脱硫工程及び分解工程と同時並行で、温度調整工程も継続した。温度調整工程では、上記の制御機構を用いて、T1AVE、T2AVE、(T2AVE−T1AVE)、T1OUTLET、T2OUTLET及び(T2OUTLET−T1OUTLET)を下記表1に示す値に維持した。なお、反応器内において水素化脱硫触媒層から水素化分解触媒層へ流入する油は、脱硫工程で生成した脱硫油に相当する。水素化分解触媒層から反応器の下部へ流れる生成油は、分解工程の生成油に相当する。
【0058】
脱硫工程、分解工程及び温度調整工程の開始から所定の時間が経過した時点で、反応器から脱硫油及び生成油を採取した。脱硫油中の各留分の質量の測定結果に基づき、脱硫工程における分解率R1cを算出した。R1cは、上記式4で定義される。また生成油中の各留分の質量の測定結果に基づき、分解工程における分解率R2cを算出した。R2cは、上記式5で定義される。実施例1のR1c及びR2cを下記表1に示す。下記表中の「vоl%」は「体積%」を意味する。
【0059】
生成油の分留により、沸点が360℃未満である軽質な留分と、沸点が360℃以上である重質な留分と、を得た。この重質な留分(塔底油)の収率Yを算出した。Yは、上記式1で定義される。実施例1のYを、下記表1に示す。また塔底油の粘度指数VIを測定した。実施例1のVIを、下記表1に示す。
【0060】
以下の手順で、水素化脱硫触媒層の触媒寿命を見積もった。ここで、水素化脱硫触媒層の触媒寿命とは、通油を開始した時点から、生成油中の硫黄分の含有量が50質量ppm(上限値)に到達する時点までの時間である。
【0061】
まず、上記と同様の方法で、脱硫工程、分解工程及び温度調整工程を開始した。これらの工程の初期段階では、T1AVE、T2AVE、(T2AVE−T1AVE)、T1OUTLET、T2OUTLET及び(T2OUTLET−T1OUTLET)を下記表1に示す値に調整し続けた。更に各工程を継続し、時間の経過に伴ってT1AVEを徐々に上昇させて水素化脱硫触媒層の活性を補うとともに、T2AVEも徐々に上昇させて水素化分解触媒層の活性も補った。そして、T1AVEと生成油中の硫黄分の含有量とを経時的に測定した。これらの実測値の経時的な推移から、水素化脱硫触媒層の劣化速度を算出した。この劣化速度に基づくシミュレーションによって、水素化脱硫触媒層の触媒寿命を見積もった。実施例1の水素化脱硫触媒層の触媒寿命を、下記表1に示す。なお、脱硫工程、分解工程及び温度調整工程の後期段階では、T1AVEの昇温速度をT2AVEの昇温速度よりも高い値に調整したため、時間の経過に伴って(T2AVE−T1AVE)は徐々に減少した。
【0062】
(実施例2)
実施例2では、液空間速度、T1AVE、T2AVE、(T2AVE−T1AVE)、T1OUTLET、T2OUTLET及び(T2OUTLET−T1OUTLET)を、下記表1に示す値に維持した。これらの事項を除いて、実施例1と同様の方法で、実施例2の脱硫工程、分解工程及び温度調整工程を行った。実施例1と同様の方法で、実施例2の分解率R1c及びR2cをそれぞれ算出した。実施例2のR1c及びR2cを下記表1に示す。実施例1と同様の方法で、実施例2の収率Yを算出した。実施例2のYを、を下記表1に示す。実施例1と同様の方法で、実施例2の塔底油の粘度指数VIを測定した。実施例2のVIを下記表1に示す。実施例1と同様の方法で、実施例2の水素化脱硫触媒層の触媒寿命を見積もった。実施例2の水素化脱硫触媒層の触媒寿命を、下記表1に示す。
【0063】
(実施例3)
実施例3では、液空間速度、T1AVE、T2AVE、(T2AVE−T1AVE)、T1OUTLET、T2OUTLET及び(T2OUTLET−T1OUTLET)を、下記表1に示す値に維持した。これらの事項を除いて、実施例1と同様の方法で、実施例3の脱硫工程、分解工程及び温度調整工程を行った。実施例1と同様の方法で、実施例3の分解率R1c及びR2cをそれぞれ算出した。実施例3のR1c及びR2cを下記表1に示す。実施例1と同様の方法で、実施例3の収率Yを算出した。実施例3のYを、を下記表1に示す。実施例1と同様の方法で、実施例3の塔底油の粘度指数VIを測定した。実施例3のVIを下記表1に示す。実施例1と同様の方法で、実施例3の水素化脱硫触媒層の触媒寿命を見積もった。実施例3の水素化脱硫触媒層の触媒寿命を、下記表1に示す。
【0064】
(実施例4)
実施例4では、液空間速度、T1AVE、T2AVE、(T2AVE−T1AVE)、T1OUTLET、T2OUTLET及び(T2OUTLET−T1OUTLET)を、下記表1に示す値に維持した。これらの事項を除いて、実施例1と同様の方法で、実施例4の脱硫工程、分解工程及び温度調整工程を行った。実施例1と同様の方法で、実施例4の分解率R1c及びR2cをそれぞれ算出した。実施例4のR1c及びR2cを下記表1に示す。実施例1と同様の方法で、実施例4の収率Yを算出した。実施例4のYを、を下記表1に示す。実施例1と同様の方法で、実施例4の塔底油の粘度指数VIを測定した。実施例4のVIを下記表1に示す。実施例1と同様の方法で、実施例4の水素化脱硫触媒層の触媒寿命を見積もった。実施例4の水素化脱硫触媒層の触媒寿命を、下記表1に示す。
【0065】
(実施例5)
実施例5では、液空間速度、T1AVE、T2AVE、(T2AVE−T1AVE)、T1OUTLET、T2OUTLET及び(T2OUTLET−T1OUTLET)を、下記表1に示す値に維持した。これらの事項を除いて、実施例1と同様の方法で、実施例5の脱硫工程、分解工程及び温度調整工程を行った。実施例1と同様の方法で、実施例5の分解率R1c及びR2cをそれぞれ算出した。実施例5のR1c及びR2cを下記表1に示す。実施例1と同様の方法で、実施例5の収率Yを算出した。実施例5のYを、を下記表1に示す。実施例1と同様の方法で、実施例5の塔底油の粘度指数VIを測定した。実施例5のVIを下記表1に示す。実施例1と同様の方法で、実施例5の水素化脱硫触媒層の触媒寿命を見積もった。実施例5の水素化脱硫触媒層の触媒寿命を、下記表1に示す。
【0066】
(比較例1)
比較例1では、液空間速度、T1AVE、T2AVE、(T2AVE−T1AVE)、T1OUTLET、T2OUTLET及び(T2OUTLET−T1OUTLET)を、下記表2に示す値に維持した。これらの事項を除いて、実施例1と同様の方法で、比較例1の脱硫工程、分解工程及び温度調整工程を行った。実施例1と同様の方法で、比較例1の分解率R1c及びR2cをそれぞれ算出した。比較例1のR1c及びR2cを下記表2に示す。実施例1と同様の方法で、比較例1の収率Yを算出した。比較例1のYを、を下記表2に示す。実施例1と同様の方法で、比較例1の塔底油の粘度指数VIを測定した。比較例1のVIを下記表2に示す。実施例1と同様の方法で、比較例1の水素化脱硫触媒層の触媒寿命を見積もった。比較例1の水素化脱硫触媒層の触媒寿命を、下記表2に示す。
【0067】
(比較例2)
比較例2では、液空間速度、T1AVE、T2AVE、(T2AVE−T1AVE)、T1OUTLET、T2OUTLET及び(T2OUTLET−T1OUTLET)を、下記表2に示す値に維持した。これらの事項を除いて、実施例1と同様の方法で、比較例2の脱硫工程、分解工程及び温度調整工程を行った。実施例1と同様の方法で、比較例2の分解率R1c及びR2cをそれぞれ算出した。比較例2のR1c及びR2cを下記表2に示す。実施例1と同様の方法で、比較例2の収率Yを算出した。比較例2のYを、を下記表2に示す。実施例1と同様の方法で、比較例2の塔底油の粘度指数(VI)を測定した。比較例2のVIを下記表2に示す。実施例1と同様の方法で、比較例2の水素化脱硫触媒層の触媒寿命を見積もった。比較例2の水素化脱硫触媒層の触媒寿命を、下記表2に示す。
【0068】
(比較例3)
比較例3では、液空間速度、T1AVE、T2AVE、(T2AVE−T1AVE)、T1OUTLET、T2OUTLET及び(T2OUTLET−T1OUTLET)を、下記表2に示す値に維持した。これらの事項を除いて、実施例1と同様の方法で、比較例3の脱硫工程、分解工程及び温度調整工程を行った。実施例1と同様の方法で、比較例3の分解率R1c及びR2cをそれぞれ算出した。比較例3のR1c及びR2cを下記表2に示す。実施例1と同様の方法で、比較例3の収率Yを算出した。比較例3のYを、を下記表2に示す。実施例1と同様の方法で、比較例3の塔底油の粘度指数VIを測定した。比較例3のVIを下記表2に示す。実施例1と同様の方法で、比較例3の水素化脱硫触媒層の触媒寿命を見積もった。比較例3の水素化脱硫触媒層の触媒寿命を、下記表2に示す。
【0069】
(比較例4)
比較例4では、液空間速度、T1AVE、T2AVE、(T2AVE−T1AVE)、T1OUTLET、T2OUTLET及び(T2OUTLET−T1OUTLET)を、下記表2に示す値に維持した。これらの事項を除いて、実施例1と同様の方法で、比較例4の脱硫工程、分解工程及び温度調整工程を行った。実施例1と同様の方法で、比較例4の分解率R1c及びR2cをそれぞれ算出した。比較例4のR1c及びR2cを下記表2に示す。実施例1と同様の方法で、比較例4の収率Yを算出した。比較例4のYを、を下記表2に示す。実施例1と同様の方法で、比較例4の塔底油の粘度指数VIを測定した。比較例4のVIを下記表2に示す。実施例1と同様の方法で、比較例4の水素化脱硫触媒層の触媒寿命を見積もった。比較例4の水素化脱硫触媒層の触媒寿命を、下記表2に示す。
【0070】
【表1】
【0071】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明によれば、潤滑油基油の製造に用いる水素化脱硫触媒の寿命を延ばし、且つ潤滑油基油の粘度指数及び収率を高めることが可能となる。
【符号の説明】
【0073】
HDS…水素化脱硫触媒層、HDC…水素化分解触媒層。
図1