【実施例】
【0019】
図1は、本発明の一実施例としての終端領域3の編成方法を概略的に示す。終端領域3は、前後で対向する少なくとも一対の前針床FB(以降はFBと示す)と後針床BB(以降はBBと示す)を備える2枚ベッドの横編機で、筒状の編地1の主要部となるベース編地2のウエール方向の終端側に形成する。FBとBBとに形成する編目列は直線で示す。対向するFB,BB間では目移しが可能で、FB,BB間の相対位置をずらせるラッキングも可能である。編針は、たとえば特許第2946325号公報に記載されているような複合針を使用し、編目を他の編目を係止する編針に一時的に預け置くホールディングが可能なものを使用する。ただし、以下の編成方法の説明では、リブ編みのようなFB,BBの両針床を使用して編成する編地でも、表目を編成する方の針床に編目列を形成するものとして示す。編目列の形成については、簡略化して結果のみ示す。ホールディングを利用しない、または利用可能でない場合は、編目を1本置きに編針に係止して空き針を準備しておく針抜き編成を行えば良い。4枚ベッドの横編機を用いれば、空き針を準備する必要なく編成が可能となる。
【0020】
ベース編地2は、同一の給糸口4から編糸を供給しながら、FB,BBで交互に編成することで筒状の編地を編成する。なお、図の区分線(SL)の左側および右側をそれぞれ一方側および他方側とする。本実施例の編成方法には、以下に示すA,B,C,Dの工程を含む。
【0021】
終端領域3は、ベース編地2を周回編成した後、工程Aと工程Bを交互に編成すると共に、その工程間で、BBに係止する編地を編成することを繰返す、いわゆるC字状編成で形成する。具体的には、FBの一方側の編目列3Rcを他方向(図面右向き)に向けて編成開始して折返す往復編成した後、BBの編目列3Bcを他方向に向けて編成する。続いてFBの他方側の編目列3Lcを一方向(図面左向き)に向けて編成開始して折返す往復編成した後、BBの編目列3Bcを一方向に向けて編成することを繰返す。以下、各工程について説明する。
【0022】
工程Aでは、編地1のウエール方向最終編目列の解れ止めを行う終端領域3を区分線SLで編幅方向の一方側と他方側とに区分し、一方側の編目列3Rcを区分線SLから離れる方向に移動させて空き針を設ける。一方側のFBで係止する編目列3Rcは、一旦BBに目移しし、BBをラッキングして、一方向に1ピッチ(1P)分だけ相対移動した状態で編目列3RcをFBに戻して、区分線SL側に空き針を設ける。以下同様に、空き針に新たな増し目a,b,c,dを順次形成すると共に、一方向に移動した編目列に対して編成を行い、ウエール方向に続く新たな編目列3Rcを形成する。
【0023】
本実施例では、FBでベース編地2に続く終端領域3の1コース目の編目列3Rcを、一方側の編端から区分線SLに向うように給糸口4から編糸を供給して形成する。一方側の編針で係止される編目列3Rcを1ピッチ分一方向に移動させて、空き針を設ける。該空き針に隣接する編目に対する割り増やしを行い、空き針に新たな増し目aを形成する。次に給糸口4を折返して区分線SLから一方向に移動させて、1コース目の編目列3Rcに続く2コース目の編目列3Rcを形成した後、さらに編目列3Rcを1コース目と同様に一方向に移動させて、増し目aとの間に空き針を設ける。該空き針には、移動した2コース目の編目列3Rcの空き針に隣接する編目に対する割り増やしを行い、空き針に新たな増し目bを形成する。なお、新たな増し目a,bは、割り増やしではなく、掛け目で形成することもできる。
【0024】
FBで編目列3Rcを往復編成すると、BBに係止するベース編地2の編目に対し、給糸口4を他方向に移動して新たな編目を編成する。なお、FBの編目列3Rcを一方向にずらすためにFBとBBとの間で編目のずれが発生するが、FBの左端部の編目をBBに目移しする回し込み編成を行えば良い。この編成は、FBの編目列3LcとBBとのずれにも適用する。
【0025】
次の工程Bでは、FBの他方側で編目列3Lcを、一方側の工程Aと同様に形成する。区分線SLの他方側に形成した編目列3Lcを区分線SLから離れる他方向に移動させて区分線SL側に空き針を設ける。空き針に隣接する編目に対する割り増やしを行い、空き針に新たな増し目α,β,γ,δを形成すると共に他方向に移動した編目列のウエール方向に続く新たな編目列3Lcを形成する。
【0026】
本実施例では、終端領域3を形成するウエール方向のコース分が得られるまで、工程Aと工程Bとを区分線SLの両側の近傍でそれぞれ折返すC字編成で交互に繰返す。編目列3Rc,3LcをBBで編成する編目列3Bcで繋ぐように形成することを繰返すと、区分線SLの両側に増し目a,b,c,d;α,β,γ,δが形成されるとともに、編地3R,3Lも形成される。
【0027】
工程Cでは、編地1に対し、ウエール最終編目列の伏目処理を行い、コース伏目部3Cを形成する。FB,BBの編針に係止されている編目列3Rc,3Bc,3Lcは、編地1のウエール方向最終編目列となる。なお、FBで係止する編目列3Rc,3Lcは、区分線SLから離れる移動距離が大きくなると、編幅の端部でBBに係止する編目列3Bcとに繋がる編糸が延びてしまうので、前述のように回し込み編成を行うことが好ましい。
【0028】
本実施例では、一方側の編目列3Rcの区分線SL側の端部をコース伏目部3Cの最初の編目3Csとして、伏目処理を一方向に進める。FBの編目列3Rcの伏目処理が完了すれば、BBの編目列3Bcに対して他方向に伏目処理を行い、続いてFBの編目列3Lcに対しても一方向に伏目処理を行う。編目列3Lcで増し目δに隣接する編目がコース伏目部3Cの最後の編目3Ceとなる。編目3Ceを除き、編目列3Rc,3Bc,3Lcにウエール方向で続く編目は、伏目処理で編針から外れるので、増し目a,b,c,d;α,β,γ,δの後述する移動が容易になる。
【0029】
工程Dでは、区分線SLを境界とした一方側と他方側とに形成されたそれぞれの増し目a,b,c,d;α,β,γ,δを、形成順となる編目同士が重なるようにFB,BB間で移動させ、形成順とは逆順となる伏目処理を行う。この伏目処理で、一方側の編目列3Rcで形成される編地3Rと他方側の編目列3Lcで形成される編地3Lとが接合し、接合部に、ウエール伏目部3Wが形成される。工程Dは、以下に説明するように行う。
【0030】
図2は、
図1の工程Dの前半部分についての概略的な手順を、D0からD4で示す。工程D0は、
図1の工程Cの終了状態を示し、FBでは区分線SLの両側に増し目a,b,c,d;α,β,γ,δが形成され、増し目δの他方向に隣接する編針にコース伏目部3Cの最後の編目3Ceが係止されている。給糸口4からは、コース伏目部3Cの最後の編目3Ceに続く編糸が供給されている。次の工程D1では、一方側の増し目a,b,c,dをBBに目移しする。次の工程D2では、FBに対しBBを他方向に1ピッチ(1P)分移動させ、増し目aをFBに目移しし、FBで係止されている増し目αに重ねて重ね目を形成する。次の工程D3では、FBに対してBBをさらに2ピッチ(2P)分他方向に移動させ、増し目bをFBに目移しし、FBで係止されている増し目βに重ねて重ね目を形成する。以下同様にして、工程D4までに、FBで係止する増し目γ,δにも、増し目c,dをそれぞれ重ねて重ね目を形成する。
【0031】
なお、以上の説明では、工程D1で増し目a,b,c,dの全部をBBに一旦目移してから、以下の工程で一目ずつFBに目移しして重ねている。また、形成した順番同士となる重ね目を設けるように、増し目d,c,b,aの順に一目ずつBBに移動させ、FBの増し目α,β,γ,δとそれぞれ対向するように配置してから一度に重ねるようにしてもよい。
【0032】
図3は、
図1の工程Dの後半部分について概略的な手順を、D5からD9にて示す。工程D5では、
図2の工程D4で形成する重ね目δ,dに、コース伏目部3Cの最後の編目3Ceをさらに重ね、三目の重ね目を形成する。工程D6では、三目の重ね目に新たな編目を形成する。この編目がウエール伏目部3Wの最初の編目3Wsとなる。工程D7では、新たな編目を、重ね目γ,cにさらに重ねて、三目の重ね目を形成する。工程D8では、三目の重ね目に新たな編目を形成する。以下、同様にして、工程D9までに、最後の三目の重ね目を形成し、工程D9で三目の重ね目に対して新たな編目を形成する。この新たな編目は、ウエール伏目部3Wの最後の編目3Weとして、ウエール方向最終編目列よりも複数コース分を先行する編目列の位置に形成される。最後の編目3Weに、ランバック防止に紐状の編地が追加されていても、編地1のウエール方向最終編目列のフラットな仕上りに支障が生じることはなく、後工程の手間の軽減を可能にすることができる。
【0033】
なお、増し目a,b,c,d;α,β,γ,δは、区分線SLの両側に4目ずつ形成しているけれども、他の数でもよい。増し目の数が多くなれば、ウエール伏目部3Wの最後の編目3Weを形成する位置を、ウエール最終端から離すことができる。終端領域3のコース数を衿丈と合わせれば、最後の編目3Weの位置が身頃との境界となるため、目立ち難い。
【0034】
図4および
図5は、
図1の編成方法で編成した終端領域3を備える筒状の編地1の内側および外側の例をそれぞれ拡大写真で示す。編地1は、ニットウエアであり、終端領域3はリブ編成で形成する衿部であって、ウエール方向最終編目列が伏目処理される。終端領域3は、ウエール方向最終編目列に先行して形成する複数コースを有し、コース方向の中間の区分線SLで区分される両側の編地3R,3Lを備える。伏目処理は、ウエール伏目部3Wとコース伏目部3Cとで行われる。ウエール伏目部3Wは、ウエール方向最終編目列から終端領域3の始端側に向う伏目処理で両側の編地3R,3Lを接合する。コース伏目部3Cは、ウエール方向最終編目列に対して施され、コース方向3Cdの伏目処理がウエール伏目部3Wに続くように施されるけれども、編成工程について説明したように、コース伏目部3Cの方がウエール伏目部3Wよりも先に形成される。ウエール方向最終編目列には伏目処理の最後の編目3Weが残らないので、フラットになり仕上りを良くすることができる。伏目処理の最後の編目は、ウエール方向最終編目列よりも複数コース終端領域3の始端側となる編目列の位置に、しかも筒状編地の内側に形成されるので、ランバック防止に紐状の編地5が追加されていても、コース伏目部3Cの仕上りに支障が生じることはなく、後工程の手間の軽減を可能にすることができる。なお、本実施例では、紐状の編地5の終端に、伸縮性の大きい糸で解れ止め6を追加している。また、目立たない箇所で伏目処理が完了するため、簡単な解れ止め処理も可能で、後工程の手間の軽減を可能としている。
【0035】
本実施例の編地1は、筒状編地であるけれども、開口部があるC字状の編地でも良い。たとえば、衿部や裾部などに本実施例を適用してもよい。本実施例で形成するウエール伏目部3Wは、リブ編みの組織に近似するので、終端領域3をリブ編みで形成することで、区分線SLの両側の接合部を目立たなくすることができる。しかしながら、他の組織の終端領域3でも、ウエール伏目部3Wの最後の編目を、ウエール方向最終編目列から離して形成することができるので、仕上りとランバック防止については本実施例と同様の効果が得られる。