(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-218815(P2017-218815A)
(43)【公開日】2017年12月14日
(54)【発明の名称】チュービング装置のチャック部材固定具及びチャック部材の固定方法
(51)【国際特許分類】
E02D 11/00 20060101AFI20171117BHJP
E02D 7/20 20060101ALI20171117BHJP
E02D 13/00 20060101ALI20171117BHJP
【FI】
E02D11/00
E02D7/20
E02D13/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-114589(P2016-114589)
(22)【出願日】2016年6月8日
(71)【出願人】
【識別番号】000004617
【氏名又は名称】日本車輌製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128358
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 良彦
(74)【代理人】
【識別番号】100086210
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 一彦
(72)【発明者】
【氏名】栗本 真司
(72)【発明者】
【氏名】高山 浩司
【テーマコード(参考)】
2D050
【Fターム(参考)】
2D050AA07
2D050CB22
2D050CB23
2D050DA03
2D050DB03
2D050EE04
2D050EE25
2D050EE26
(57)【要約】
【課題】チャック部材の先端側を内周方向に移動させた状態で容易に固定することができるチュービング装置のチャック部材固定具及びチャック部材の固定方法を提供する。
【解決手段】チャック部材固定具11は、チャック部材の内周面に取り付けられる基板部15と、基板部の周方向両端部からそれぞれ内周方向に突出した締結板部16a,16bと、締結板部にそれぞれ設けられた締結ボルト挿通孔17a,17bとを備えるとともに、基板部両端の締結板部同士の間隔を、隣接するチャック部材の配置間隔より狭く設定している。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
チュービング装置のチャックフレームにリンクを介して径方向に揺動可能に設けられているチャック部材を固定するためのチャック部材固定具において、該チャック部材固定具は、前記チャック部材の内周面に取り付けられる基板部と、該基板部の周方向両端部からそれぞれ内周方向に突出した一対の締結板部と、各締結板部にそれぞれ設けられた締結ボルト挿通孔とを備えるとともに、前記基板部両端の前記締結板部同士の間隔が、隣接する前記チャック部材の配置間隔より狭く設定されていることを特徴とするチュービング装置のチャック部材固定具。
【請求項2】
チュービング装置のチャックフレームにリンクを介して径方向に揺動可能に設けられているチャック部材を固定するためのチャック部材の固定方法において、前記チャック部材の内周面に取り付けられる基板部と、該基板部の周方向両端部からそれぞれ内周方向に突出した一対の締結板部と、各締結板部にそれぞれ設けられた締結ボルト挿通孔とを備えるとともに、前記基板部両端の前記締結板部同士の間隔が、隣接する前記チャック部材の配置間隔より狭く設定されたチャック部材固定具を前記チャック部材の内周面に取り付けた後、周方向に隣接する一方のチャック部材固定具の締結ボルト挿通孔から、該締結ボルト挿通孔に対向する他方のチャック部材固定具の締結ボルト挿通孔に締結ボルトを挿通し、該締結ボルトに螺合した締結ナットを締め付けることによって隣接するチャック部材固定具を接近させることにより、チャック部材の先端側を内周方向に移動させて固定することを特徴とするチュービング装置のチャック部材の固定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チュービング装置のチャック部材固定具及びチャック部材の固定方法に関し、詳しくは、建築、土木の基礎工事で地中へのケーシングチューブの圧入・引抜を行うチュービング装置を輸送する際に、チャックフレームに設けられているチャック部材を固定するためのチュービング装置のチャック部材固定具及びチャック部材の固定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
基礎工事におけるオールケーシング工法において、金属製の筒体からなるケーシングチューブを地中に圧入したり、地中から引き抜いたりするために使用されるチュービング装置は、地上に据え付けられるベースフレームと、該ベースフレームの上方に昇降シリンダを介して昇降可能に設けられたドライブフレームと、該ドライブフレームの上方にチャックシリンダを介して昇降可能に設けられたチャックフレームと、前記ベースフレーム、ドライブフレーム及びチャックフレームの中央部を鉛直方向に貫通して同軸上にそれぞれ設けられたケーシングチューブ挿通孔と、前記ドライブフレームのケーシングチューブ挿通孔の外周に設けられた下部回転体と、該下部回転体の内周面に設けられたテーパ面(下部チャック)と、前記ドライブフレームに設けられた下部回転体駆動用の油圧モータと、前記チャックフレームのケーシングチューブ挿通孔の外周に設けられた上部回転体と、該上部回転体の内周にリンクを介して径方向に揺動可能に設けられたチャック部材(上部チャック)とを備えている。
【0003】
大型のチュービング装置は、ベースフレーム、ドライブフレーム及びチャックフレームを別々にして輸送することが行われており、幅寸法が大きなフレームは、支持具を介して荷台上に斜めに立てかけた状態で輸送するようにしている。そして、チャックフレームでは、輸送中などに上部チャックが揺動することを防止するため、隣接する上部チャック同士を連結板で連結して固定することが行われており、支持具にチャックフレームを斜めに立てかけたときに、下方に位置する上部チャックや上方に位置する上部チャックは、これらの上部チャックの先端側を内周側に押しながら連結板を取り付けることにより、上部チャックの下部が支持具に当たらないようにしたり、側方に突出したりしないようにしている(例えば、特許文献1,2参照。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−117250号公報
【特許文献2】特開平11−269879号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、重量物である上部チャックを人力で内周側に押して支えながら、連結板を位置合わせしてボルトを締め付ける作業を人力だけで行うことは重労働であり、多大な手間が掛かっていた。
【0006】
そこで本発明は、簡単な作業でチャック部材の先端側を内周方向に移動させた状態で固定することができるチュービング装置のチャック部材固定具及びチャック部材の固定方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明のチュービング装置のチャック部材固定具は、チュービング装置のチャックフレームにリンクを介して径方向に揺動可能に設けられているチャック部材を固定するためのチャック部材固定具において、該チャック部材固定具は、前記チャック部材の内周面に取り付けられる基板部と、該基板部の周方向両端部からそれぞれ内周方向に突出した一対の締結板部と、各締結板部にそれぞれ設けられた締結ボルト挿通孔とを備えるとともに、前記基板部両端の前記締結板部同士の間隔が、隣接する前記チャック部材の配置間隔より狭く設定されていることを特徴としている。
【0008】
また、本発明のチュービング装置のチャック部材の固定方法は、チュービング装置のチャックフレームにリンクを介して径方向に揺動可能に設けられているチャック部材を固定するためのチャック部材の固定方法において、前記チャック部材の内周面に取り付けられる基板部と、該基板部の周方向両端部からそれぞれ内周方向に突出した一対の締結板部と、各締結板部にそれぞれ設けられた締結ボルト挿通孔とを備えるとともに、前記基板部両端の前記締結板部同士の間隔が、隣接する前記チャック部材の配置間隔より狭く設定されたチャック部材固定具を前記チャック部材の内周面に取り付けた後、周方向に隣接する一方のチャック部材固定具の締結ボルト挿通孔から、該締結ボルト挿通孔に対向する他方のチャック部材固定具の締結ボルト挿通孔に締結ボルトを挿通し、該締結ボルトに螺合した締結ナットを締め付けることによって隣接するチャック部材固定具を接近させることにより、チャック部材の先端側を内周方向に移動させて固定することを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、締結ボルト挿通孔に挿通した締結ボルトを締結ナットで締め付けるだけで、チャック部材の先端側を内周方向に移動させた状態で固定できるので、チャック部材の固定を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明のチュービング装置のチャック部材固定具の一形態例を示す斜視図である。
【
図2】同じくチャック部材固定具をチャック部材の内周面に取り付けた状態を示す要部の平面図である。
【
図3】同じくチャック部材固定具を締め付けた状態を示す要部の平面図である。
【
図5】内周側に寄せる必要がないチャック部材を固定する連結具の一例を示す斜視図である。
【
図6】同じく連結具をチャック部材の内周面に取り付けた状態を示す要部の平面図である。
【
図8】各チャック部材を固定した状態を示すチャックフレームの平面図である。
【
図9】支持具にチャックフレームを斜めに立てかけた状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1乃至
図4は、本発明のチャック部材固定具を使用してチャックフレームに設けられているチャック部材の一部を固定した一形態例を示している。本形態例に示すチャック部材固定具11は、チャックフレーム12に形成されているケーシングチューブ挿通孔13の内周に等間隔で12個が設けられたチャック部材14を固定するためのもので、チャック部材14の内周面に取り付けられる円弧状の基板部15と、該基板部15の周方向両端部からそれぞれ内周方向に突出した一対の締結板部16a,16bと、各締結板部16a,16bにそれぞれ設けられた締結ボルト挿通孔17a,17bとを備えている。
【0012】
また、基板部15の上部から締結板部16a,16bの上部にわたって上部補強板18が設けられ、基板部15の下部から締結板部16a,16bの下部にわたって下部補強板19が設けられている。さらに、基板部15の中央部には、チャック部材14に設けられているボルト挿通孔14aに対応した位置に取付ボルト挿通孔20が2箇所に設けられており、上部補強板18の上面中央には、チャック部材固定具11をクレーンで吊り上げる際に使用する吊り金具21が設けられている。
【0013】
基板部両端の締結板部16a,16b同士の間隔Aは、隣接する前記チャック部材14,14の配置間隔Bより狭く設定されており、
図2に示すように、チャック部材14,14が重力で垂下した状態で、チャック部材14の外周側からボルト挿通孔14a及び取付ボルト挿通孔20に取付ボルト22を挿通し、取付ナット23を締め付けてチャック部材14の内周面にチャック部材固定具11を取り付けると、隣接する一方のチャック部材固定具11の締結板部16aと他方のチャック部材固定具11の締結板部16bとの間に隙間Cが発生した状態になる。
【0014】
そして、隣接するチャック部材固定具11の一方の締結ボルト挿通孔17aから、該締結ボルト挿通孔17aに対向する他方の締結ボルト挿通孔17bに締結ボルト24を挿通し、該締結ボルト24に螺合させた締結ナット25を締め付けることにより、隣接するチャック部材固定具11,11が互いに接近する方向に移動し、これに伴い、チャック部材14の先端側が内周方向に移動する。最終的に、締結ボルト24と締結ナット25との締結によって対向する締結板部16a,16bの外面同士が密着することにより、先端側が内周方向に移動した状態のチャック部材14をチャック部材固定具11で固定することができる。
【0015】
前記チャック部材固定具11を使用して固定するチャック部材14は、輸送時に上方及び下方に位置するチャックフレーム12の長辺側12aに位置する各3個のチャック部材14だけでよく、短辺側12bに位置する各3個のチャック部材14は、従来と同様に形成された連結具31を用いて固定すればよい。すなわち、
図5乃至
図7に示すように、円弧状の連結板部32の両端に、隣接するチャック部材14のボルト挿通孔14aにそれぞれ対応した連結ボルト挿通孔33を有し、上部に設けた上部補強部材34にクレーン吊り金具35を備えた連結具31を使用する。この連結具31は、該連結具31の両端の連結ボルト挿通孔33に、重力で垂下した状態で隣接するチャック部材14の各ボルト挿通孔14aから挿通した連結ボルト36を連結ナット37で締め付けることにより、チャック部材14を重力で垂下した状態のままで固定することができる。
【0016】
図8に示すように、長辺側12aの各3個のチャック部材14をチャック部材固定具11でそれぞれ固定し、短辺側12bの各3個のチャック部材14を連結具31でそれぞれ固定した後、
図9に示すように、一方の長辺側12aを下にして支持具41にチャックフレーム12を斜めに立てかけた状態にする。この状態で、チャック部材固定具11で固定した長辺側12aの各3個のチャック部材14は、先端側を内周方向に移動させた状態で固定されているので、下方に位置するチャック部材14の先端が下方に突出して支持具41に当たったり、上方に位置するチャック部材14の先端が側方に突出して車両制限令における幅寸法を超えたりすることがなくなる。また、短辺側12bに位置する各3個のチャック部材14も、連結具31によってそれぞれ連結して固定しているので、輸送中の振動などによって全てのチャック部材14の揺動を防止できる。これにより、大口径のケーシングチューブを対象とした大型のチュービング装置の輸送を安全かつ容易に行うことができる。
【0017】
なお、チュービング装置の構造は周知であるから、チュービング装置の詳細な説明は省略する。また、全てのチャック部材をチャック部材固定具で固定するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0018】
11…チャック部材固定具、12…チャックフレーム、12a…長辺側、12b…短辺側、13…ケーシングチューブ挿通孔、14…チャック部材、14a…ボルト挿通孔、15…基板部、16a,16b…締結板部、17a,17b…締結ボルト挿通孔、18…上部補強板、19…下部補強板、20…取付ボルト挿通孔、21…吊り金具、22…取付ボルト、23…取付ナット、24…締結ボルト、25…締結ナット、31…連結具、32…連結板部、33…連結ボルト挿通孔、34…上部補強部材、35…クレーン吊り金具、36…連結ボルト、37…連結ナット、41…支持具