【解決手段】転がり軸受装置10は、金属製である、第一外輪22、第一内輪21、及び複数の玉23を有している第一軸受部20と、金属製である、第二外輪52、第二内輪51、及び複数の玉53を有している第二軸受部50とを備えている。第一内輪21と第二内輪51とは電気的に接続され、第一外輪22と第二外輪52とは電気的に絶縁されている。第一外輪22に電気信号の入力接点15が設けられ、第二外輪52に電気信号の出力接点16が設けられている。
前記入力接点と前記出力接点とを含んで構成される電気回路を流れる信号に基づいて前記第一ポンプ及び前記第二ポンプの動作を制御する制御器を、更に備えている請求項2に記載の転がり軸受装置。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、本発明の転がり軸受装置の実施の一形態を示す断面図である。この転がり軸受装置10(以下、軸受装置10ともいう。)は、工作機械が有する主軸装置の主軸(軸7)を回転可能に支持するものであり、主軸装置のハウジング8内に収容されている。
図1では、軸7及びハウジング8を2点鎖線で示している。この軸受装置10は、軸方向一方側(
図1では右側)に設けられている第一軸受11と、軸方向他方側(
図1では左側)に設けられている第二軸受12とを有している。以下の説明において、軸受装置10の中心線Cに平行な方向を軸方向と呼び、この軸方向に直交する方向を径方向と呼ぶ。
【0016】
〔第一軸受11について〕
第一軸受11は、第一軸受部20と第一給油ユニット40とを備えている。第一軸受部20は、内輪21、外輪22、複数の玉(転動体)23、及びこれら複数の玉23を保持する保持器24を有しており、玉軸受(転がり軸受)を構成している。
【0017】
本実施形態の内輪21は、軸方向に長く、玉23が転がり接触する軌道面(以下、内輪軌道25という。)が形成されている内輪本体部21aと、この内輪本体部21aから軸方向一方側に延びている内輪筒部21bとを有している。内輪本体部21aと内輪筒部21bとは一体となっているが、これらは別体であってもよく、この場合、内輪本体部21aが軸受部20の内輪として機能し、内輪筒部21bが内輪用間座として機能する。また、別体の場合、内輪本体部21aと内輪筒部21bとは隣接し金属接触しており、電気的に接続された状態にある。
【0018】
また、本実施形態の外輪22は、軸方向に長く、玉23が転がり接触する軌道面(以下、外輪軌道26という。)が形成されている外輪本体部22aと、この外輪本体部22aから軸方向一方側に延び給油ユニット40が取り付けられている外輪筒部22bとを有している。外輪本体部22aと外輪筒部22bとは一体となっているが、これらは別体であってもよく、この場合、外輪本体部22aが軸受部20の外輪として機能し、外輪筒部22bが外輪用間座として機能すると共に給油ユニット40が取り付けられる部材となる。また、別体の場合、外輪本体部22aと外輪筒部22bとは隣接し金属接触しており、電気的に接続された状態にある。
【0019】
内輪本体部21aと外輪本体部22aとの間に第一環状空間13が形成されており、この環状空間13に複数の玉23及び保持器24が設けられている。玉23は、内輪21と外輪22との間に介在しており、軸受が回転することで内輪軌道25及び外輪軌道26を転がり接触する。保持器24は、環状であり、周方向に沿ってポケット27が複数形成されている。各ポケット27に一つの玉23が収容された状態となる。
内輪21、外輪22、玉23は、例えば軸受鋼等の導電性を有する鋼製(金属製)であるが、保持器24は樹脂製である。
【0020】
第一給油ユニット40は、全体として円環状であり、外輪筒部22bの内周側に取り付けられ、第一環状空間13の軸方向隣りに設けられている。給油ユニット40は、第一軸受部20(軌道25,26、玉23及び保持器24)へ給油を行う機能を有している。給油ユニット40の詳細な構成及び機能については後に説明する。
【0021】
以上のように本実施形態では、給油ユニット40が設けられている外輪22が、ハウジング8に固定状態(静止状態)となって取り付けられており、内輪21が軸7と共に回転する。つまり外輪22が固定状態にある第一固定輪となり、内輪21が軸7と共に回転する第一回転輪となる。
【0022】
〔第二軸受12について〕
第二軸受12は、第二軸受部50と第二給油ユニット70とを備えている。第二軸受部50は、内輪51、外輪52、複数の玉(転動体)53、及びこれら複数の玉53を保持する保持器54を有しており、玉軸受(転がり軸受)を構成している。
【0023】
本実施形態の内輪51は、軸方向に長く、玉53が転がり接触する軌道面(以下、内輪軌道55という。)が形成されている内輪本体部51aと、この内輪本体部51aから軸方向一方側に延びている内輪筒部51bとを有している。内輪本体部51aと内輪筒部51bとは一体となっているが、これらは別体であってもよく、この場合、内輪本体部51aが軸受部50の内輪として機能し、内輪筒部51bが内輪用間座として機能する。
【0024】
また、本実施形態の外輪52は、軸方向に長く、玉53が転がり接触する軌道面(以下、外輪軌道56という。)が形成されている外輪本体部52aと、この外輪本体部52aから軸方向一方側に延び給油ユニット70が取り付けられている外輪筒部52bとを有している。外輪本体部52aと外輪筒部52bとは一体となっているが、これらは別体であってもよく、この場合、外輪本体部52aが軸受部50の外輪として機能し、外輪筒部52bが外輪用間座として機能すると共に給油ユニット70が取り付けられる部材となる。
【0025】
内輪本体部51aと外輪本体部52aとの間に第二環状空間14が形成されており、この環状空間14に複数の玉53及び保持器54が設けられている。玉53は、内輪51と外輪52との間に介在しており、軸受が回転することで内輪軌道55及び外輪軌道56を転がり接触する。保持器54は、環状であり、周方向に沿ってポケット57が複数形成されている。各ポケット57に一つの玉53が収容された状態となる。
内輪51、外輪52、玉53は、例えば軸受鋼等の導電性を有する鋼製(金属製)であるが、保持器54は樹脂製である。
【0026】
第二給油ユニット70は、全体として円環状であり、外輪筒部52bの内周側に取り付けられ、第二環状空間14の軸方向隣りに設けられている。給油ユニット70は、第二軸受部50(軌道55,56、玉53及び保持器54)へ給油を行う機能を有している。給油ユニット70の詳細な構成及び機能については後に説明する。
【0027】
以上のように本実施形態では、給油ユニット70が設けられている外輪52が、ハウジング8に固定状態(静止状態)となって取り付けられており、内輪51が軸7と共に回転する。つまり外輪52が、前記第一外輪22(第一固定輪)と共に固定状態にある第二固定輪となり、内輪51が、軸7及び前記第一内輪21(第一回転輪)と共に回転する第二回転輪となる。
【0028】
〔第一給油ユニット40について〕
図2は、第一給油ユニット40を軸方向から見た断面図である。第一給油ユニット40は、全体として円環形状を有している。給油ユニット40は、潤滑油(オイル)を溜めるタンク42及びこの潤滑油を吐出するポンプ43を備えている。これらタンク42及びポンプ43は、給油ユニット40が有している環状の本体部41に設けられている。また、給油ユニット40は、制御部44及び電源部45を備えている。
【0029】
本体部41は、外輪筒部22bの内周側に取り付けられており、ポンプ43等を保持するフレームとしての機能を有している。本体部41は円環状の部材であるが中空空間が形成されており、この中空空間にポンプ43、制御部44及び電源部45が設けられている。また、前記中空空間の一つがタンク42となっている。これにより、本体部41、タンク42、ポンプ43、制御部44及び電源部45等を含む給油ユニット40は、一体として構成される。なお、タンク42、制御部44及び電源部45のうちの一部又は全部は、軸受装置10(ハウジング8)の外に設けられていてもよく、この場合、配管や通信線を通じてポンプ43等と接続される。
【0030】
〔第二給油ユニット70について〕
第一給油ユニット40と第二給油ユニット70とは同じ構成である。
図2を参考にして第二給油ユニット70について説明する。第二給油ユニット70は、全体として円環形状を有している。給油ユニット70は、潤滑油(オイル)を溜めるタンク72及びこの潤滑油を吐出するポンプ73を備えている。これらタンク72及びポンプ73は、給油ユニット70が有している環状の本体部71に設けられている。また、給油ユニット70は、制御部74及び電源部75を備えている。
【0031】
本体部71は、外輪筒部52bの内周側に取り付けられており、ポンプ73等を保持するフレームとしての機能を有している。本体部71は円環状の部材であるが中空空間が形成されており、この中空空間にポンプ73、制御部74及び電源部75が設けられている。また、前記中空空間の一つがタンク72となっている。これにより、本体部71、タンク72、ポンプ73、制御部74及び電源部75等を含む給油ユニット70は、一体として構成される。なお、タンク72、制御部74及び電源部75のうちの一部又は全部は、軸受装置10(ハウジング8)の外に設けられていてもよく、この場合、配管や通信線を通じてポンプ43等と接続される。
【0032】
前記のとおり、第一給油ユニット40と第二給油ユニット70とは同じ構成であり、更に、同じ機能を有している。そこで、第一給油ユニット40を例としてその機能について、
図3により説明する。
ポンプ43は、内部に圧電素子43aを有しており、この圧電素子43aが動作することでポンプ43の油室(内部空間)43bの容積を変化させ、この油室43bの潤滑油を、ノズル43cを通じて前記環状空間13に供給することができる。油室43bは、ポンプ43において潤滑油を溜める空間である。
電源部45(
図2参照)は、ポンプ43の動作用の電力を供給する。
図3において、制御部44は、所定のタイミングで圧電素子43aに所定の波形の駆動電圧を印加し、これにより、ポンプ43から潤滑油が前記環状空間13に供給される。圧電素子43aの一回の動作により油室43bから吐出される潤滑油量は微量であることから、一回の給油動作のために圧電素子43aを複数回動作させる。なお、油室43bから潤滑油が吐出される毎にタンク42から油室43bへ潤滑油が自動的に補給される。
【0033】
〔第一軸受11及び第二軸受12に構成される電気回路ついて〕
図1に示す実施形態では、右側の第一軸受11と左側の第二軸受12とは軸方向に隣接して設けられており、第一軸受11の第一内輪21と第二軸受12の第二内輪51とは軸方向に接触した状態にある。つまり、第一内輪21の軸方向他方側の側面31と、第二内輪51の軸方向一方側の側面61とが面で接触(金属面接触)した状態となっている。このため、第一内輪21と第二内輪51とは電気的に接続された状態にある。特に第一内輪21と第二内輪51とには軸方向荷重が付与されており、相互が押圧しており、対向する側面31,61は密に接触している。
【0034】
これに対して、右側の第一軸受11の第一外輪22と左側の第二軸受12の第二外輪52とは電気的に絶縁された状態にある。
図1に示す形態では、第一外輪22と第二外輪52との間に環状の絶縁材17が設けられている。絶縁材17は、例えば導電性を有していない樹脂製やゴム製の部材からなる。
ハウジング8が金属製であることから、第一外輪22と第二外輪52とを電気的に絶縁するため、これら第一外輪22と第二外輪52とのうちの少なくとも一方の外周面側においても絶縁材18が設けられている。
図1に示す形態では、第一外輪22側にのみ絶縁材18が設けられている。この絶縁材18は円筒状であるが、環状の前記絶縁材17と連続していてもよい。絶縁材18は、第一外輪22とハウジング8との間に設けられていればよい。
【0035】
絶縁材17,18は、外輪22と別部材であってもよいが、外輪22(又はハウジング8)と一体となっていてもよい。一体とする場合、例えば、外輪22(又はハウジング8)に設けた非導電性のコーティング材を、絶縁材17,18とすればよい。
以上より、右側の第一軸受11の第一外輪22と左側の第二軸受12の第二外輪52とは電気的に絶縁された構成となる。
【0036】
図1では、第一軸受11と第二軸受12とが軸方向に隣接しているが、これらは(図示しないが)軸方向に離れて設けられていてもよい。この場合であっても、軸7は金属製(例えば、炭素鋼等の鋼製)であるため、第一内輪21と第二内輪51とはこの軸7を介して電気的に接続された状態にある。また、この場合、第一外輪22と第二外輪52とは軸方向に離れており、両者間に空間が形成されることから、前記環状の絶縁材17を不要とすることができる。なお、第一内輪21と第二内輪51とを電気的に接続するために、図示しないが、これらの間に金属製の間座を介在させてもよい。
【0037】
第一及び第二軸受11,12は、第一及び第二給油ユニット40,70から供給された潤滑油によって潤滑性が確保される。
第一軸受11において、内輪軌道25と玉23との間に潤滑油による油膜が形成されており、また、外輪軌道26と玉23との間に潤滑油による油膜が形成されている場合、これら油膜が絶縁体として機能することで、外輪22から玉23を介して内輪21までの通電経路は成立しない(つまり、電気が流れない)。しかし、例えば軸受装置10の回転初期において油膜が形成されていない状態や、潤滑油が経時的に消費されることで一旦形成された油膜が途切れた状態になると、外輪22及び内輪21と玉23とが金属接触することで、外輪22から玉23を介して内輪21までの通電経路が成立する(つまり、電気が流れる)。
また、第二軸受12においても同様に、内輪軌道55及び外輪軌道56と玉23との間に油膜が形成されていると、内輪51から玉53を介して外輪52までの通電経路は成立しない(つまり、電気が流れない)。しかし、油膜が形成されていない状態や、形成された油膜が途切れた状態になると、外輪52及び内輪51と玉53とが金属接触することで、内輪51から玉53を介して外輪52までの通電経路が成立する(つまり、電気が流れる)。
以上のように、第一軸受11及び第二軸受12において、
図4に示すように、外輪22から、玉23、内輪21、内輪51及び玉53を経て、外輪52までの電気回路部(以下、これを軸受回路部86という。)が構成される。
【0038】
そして、右側の第一外輪22に入力接点(電極)15が設けられており、左側の第二外輪52に出力接点(電極)16が設けられており、入力接点15に電気信号(直流電流)が入力され、出力接点16から電気信号(直流電流)が出力されるように、軸受装置10は構成されている。具体的に説明すると、入力接点15と出力接点16との間に直流電源80が接続されている。入力接点15、出力接点16及び直流電源80を含む制御回路部85は、更に、抵抗器81、及び、この回路を流れる電圧を測定する電圧計82を有している。そして、軸受装置10は、更に、制御器83を備えており、この制御器83は、電圧計82の計測結果を刻々と取得可能である。
【0039】
制御器83は、第一給油ユニット40の制御部44(
図3参照)又は第二給油ユニット70の制御部74によって構成することができる。制御器83(制御部44,74)はマイコンにより構成されている。また、直流電源80は、第一給油ユニット40の電源部45(
図2参照)又は第二給油ユニット70の電源部75によって構成することができる。この場合、制御器83や電源部75を含む制御回路部85は(
図4では、ハウジング8の外部に設けられているように記載されているが)給油ユニット40,70(本体部41,71)に設けられる構成となる。
【0040】
〔油膜の状態の検知及び給油動作について〕
以上の構成により、制御器83は、軸受装置10における油膜の状態の検知が可能となる。以下、その検知方法について説明する。
図5は、前記制御回路部85(
図4参照)を流れる電気信号の説明図である。この電気信号は、制御器83が電圧計82から取得した信号である。
図5に示すグラフの横軸は時間であり、縦軸は電気信号の出力(電圧値)である。
【0041】
図5において、時刻t1までは、第一軸受11及び第二軸受12において安定した油膜が形成されており、前記軸受回路部86において通電経路が成立しない状態にあり、制御器83によって取得される電気信号は一定値(ゼロ)を示す。
時刻t1を越えると、第一軸受11及び第二軸受12において潤滑油が消費され、形成されていた油膜に途切れが発生する。すると、前記軸受回路部86において通電経路が成立する時間(回数)が増える。このため、
図5に示すように、制御回路部85を流れる電気信号がランダムに検出される。
【0042】
図6は、時間経過に伴う、軸7(軸受装置10)の回転数を示すグラフ(上段のグラフ)と、単位時間あたりの軸受回路部86において通電経路が成立する「時間」を示すグラフ(下段のグラフ)である。なお「時間」に代えて、単位時間あたりの軸受回路部86において通電経路が成立する「回数」であってもよい。つまり、下段のグラフの縦軸は、通電割合を示している。なお、軸受回路部86において通電経路が成立する時間(回数)は、制御回路部85を電気信号が流れる時間(回数)と同じになる。
【0043】
図6の上段のグラフに示すように、運転開始の時刻t0から軸7(軸受装置10)の回転数が増加し、やがて、回転数は一定となる。運転開始直後は、第一及び第二軸受11,12において油膜は形成されず、
図6の下段のグラフに示すように、通電経路が成立する時間(回数)は長い(多い)。
【0044】
回転が開始されてしばらくすると、油膜が形成され始め、
図6の下段のグラフの縦軸に示す「時間(回数)」が減少する。油膜が安定して形成されると、前記のとおり(
図5の時刻t1まで参照)制御器83によって取得される電気信号は一定値(ほぼゼロ)を示す。時刻t1を越えると、前記のとおり、形成されていた油膜に途切れが発生し、
図6の下段のグラフの縦軸に示す「時間(回数)」が増加傾向となる。つまり、通電割合が上昇傾向となる。
【0045】
制御器83は、制御回路部85を流れる電気信号に基づいて、前記「時間(回数)」を取得することができる。更に、制御器83は、取得した前記「時間(回数)」の情報と、予め設定されている閾値Qとを比較する処理を行う。この比較する処理は、油膜が途切れているか否かを推定する処理となる。
つまり、取得した前記「時間(回数)」が閾値Qを超えている場合、軸受回路部86において通電経路が成立する時間(回数)が増えており、油膜が途切れていると推定することができる。この場合、制御器83はポンプ43,73を動作させる制御を行う。ポンプ43,73により給油が行われることで(
図6の下段のグラフの時刻t2)、再び油膜が安定して形成され、時刻t2の後に、軸受回路部86において通電経路が成立する時間(回数)が減少する。つまり、通電割合が減少し、閾値Qを下回る。
【0046】
以上のように、油膜の形成が充分である場合、この油膜で外輪22(52)及び内輪21(51)それぞれと玉23(53)との間が絶縁され、通電割合は低い。これに対して、油膜形成が不充分である場合、外輪22(52)及び内輪21(51)それぞれと玉23(53)とが金属接触し(金属接触する機会が多くなり)通電割合が高くなる。
このように、制御器83は、刻々と制御回路部85を流れる電気信号を取得し、入力接点15と出力接点16とを含んで構成される電気回路(制御回路部85及び軸受回路部86)を流れる信号に基づいて、通電割合を求め、この通電割合に応じてポンプ43,73を動作させる制御を実行する。これにより、軸受装置10における油膜の状態を監視して、給油を行うことができ、潤滑状態を確保することが可能となる。
なお、本実施形態では、油膜の状態の検知の指標として通電割合を用いる場合を説明したが、その指標は他であってもよく、例えば制御回路部85の抵抗値であってもよい。
【0047】
また、本実施形態の軸受装置10は、第一軸受11と第二軸受12とを有していることから、油膜が途切れていると推定された場合に、制御器83は、第一給油ユニット40のポンプ43と、第二給油ユニット70のポンプ73との双方を動作させてもよいが、潤滑油を効率よく利用する観点から、次のようにしてポンプ43,73を動作させてもよい。
すなわち、油膜が途切れていると推定された場合、制御器83は、ポンプ43,73のうちの一方のポンプ(43)のみ動作させて給油を行う。その後、このポンプ(43)を停止させ、所定時間経過後に、制御器83は、前記のように油膜が途切れているか否かを推定する処理を行い、やはり、途切れていると推定された場合、前記一方のポンプ(43)を動作させずに、ポンプ43,73のうちの他方のポンプ(73)のみ動作させて給油を行う。これに対して、前記の所定時間経過後に、制御器83が、油膜が途切れているか否かを推定する処理を行い、途切れていない(油膜が充分に形成されている)と推定された場合、ポンプ43,73の双方を動作させない(給油しない)。
【0048】
以上のように、本実施形態の軸受装置10によれば、入力接点15が設けられている第一外輪22から、玉23、第一内輪21、第二内輪51、及び玉53を経て、出力接点16が設けられている第二外輪52に通電可能となる電気回路(86)が得られる。入力接点15及び出力接点16が、固定側となる第一及び第二外輪22,52に設けられていることから、つまり、回転する内輪21,51や軸7に接点を設ける必要がないため、スリップリングやカーボンブラシは不要である。これらが不要となるため、軸受装置10を安価に構成することが可能となる。
【0049】
そして、前記のとおり、第一軸受部20及び第二軸受部50において、玉23,53の転がり接触領域に潤滑油による油膜が途切れていると、軸受回路部86が通電可能となる。これに対して、油膜が安定して形成されている状態では、この油膜が絶縁体として機能し、入力接点15と出力接点16との間の通電が損なわれる。したがって、入力接点15と出力接点16との間の通電状態を制御器83によって監視することで、第一軸受部20及び第二軸受部50における油膜の状態を検出することが可能となる。
【0050】
また、本実施形態の軸受装置10は、第一給油ユニット40と第二給油ユニット70とを更に備えており、第一給油ユニット40が有する第一ポンプ43は、第一環状空間13の軸方向隣りに設けられており、第一軸受部20に潤滑油を供給することが可能であり、第二給油ユニット70が有する第二ポンプ73は、第二環状空間14の軸方向隣りに設けられており、第二軸受部50に潤滑油を供給することが可能である。このため、制御器83によって、油膜が途切れていると推定された場合に、つまり、給油が必要となるタイミングで、迅速に第一ポンプ43によって第一軸受部20に給油を行い、第二ポンプ73によって第二軸受部50に給油を行うことが可能となる。
【0051】
以上より、油膜が途切れていることが検出された場合、第一軸受部20及び第二軸受部50の一方又は双方に給油を行って、焼き付き等の不具合の発生を防ぐことが可能となる。
【0052】
なお、前記実施形態では、制御器83によって、油膜が途切れているか否かを推定する処理が行われると共に、ポンプ43,73による吐出動作が制御される場合について説明したが、前記処理と前記制御とが別の手段によって行われるように構成してもよい。例えば、油膜が途切れているか否かを推定する処理は、軸受装置10の外側に設けられている制御器によって行われ、ポンプ43,73の吐出動作の制御は、軸受装置10の内側に設けられている前記制御部44,74によって行われてもよい。この場合、前記制御器と前記制御部44,74との間で通信が行われ、前記制御器によって油膜が途切れているか否かを推定する処理が行われると、前記制御部44,74によってポンプ43,73による吐出動作が制御される。
【0053】
また、前記のとおり開示した実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。つまり、本発明の転がり軸受装置は、図示する形態に限らず本発明の範囲内において他の形態のものであってもよい。
例えば、軸受装置10が給油ユニット40,70を備えている場合について説明したが、これら給油ユニット40,70が省略されていてもよい。この場合、別の給油手段が設けられていてもよく、又は、油膜が途切れたと推定されると軸7の回転を停止させる。これにより、第一軸受11及び第二軸受12の焼き付きを防ぐことができる。
【0054】
前記実施形態では、外輪22,52が固定輪であり、内輪21,51が回転輪である場合について説明したが、反対であってもよい。つまり、内輪21,51が固定輪であり、外輪22,52が回転輪であってもよい。この場合、入力接点及び出力接点は、固定側の軌道輪となる内輪21,51に設けられる。
【0055】
また、前記実施形態では、軸受部20,50がアンギュラ玉軸受である場合について説明したが、軸受の形式はこれに限らず、深溝玉軸受であってもよく、また、円すい転がり軸受や、円筒ころ軸受であってよい。また、この転がり軸受装置10を、工作機械の主軸用以外の用途に用いることができる。