【課題】樹脂発泡体の成形体の内部に空気より熱伝導率の低い断熱性ガスが充填されており、この空気より熱伝導率の低いガスが周囲に散逸しないので、長期間に渡り、高い断熱性能を維持することが可能な樹脂発泡体の成形体を提供する。
【解決手段】樹脂発泡体の成形体からなる断熱材であって、前記成形体の内部は、当該成形体中の空隙の体積に対して70体積%以上の割合となるように断熱性ガスが充填され、前記成形体がガスバリア性を有するフィルムで覆われ、密閉されていることを特徴とする断熱材。
断熱性ガスは、ブタン、ペンタン、アルゴン、炭酸ガス、ハイドロフルオロカーボン (HFC)及びハイドロフルオロオレフィン(HFO)からなる群から選ばれる少なくとも1種からなる請求項1または2に記載の断熱材。
前記樹脂発泡体の成形体を構成する樹脂は、オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂及びウレタン系樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種からなる請求項1〜3のいずれか1に記載の断熱材。
前記断熱性ガス置換工程において、製造された前記成形体中の断熱性ガスの割合が、当該成形体中の空隙の体積に対して70体積%以上の割合となるように断熱性ガスを充填する請求項5に記載の断熱材の製造方法。
断熱性ガスは、ブタン、ペンタン、アルゴン、炭酸ガス、ハイドロフルオロカーボン (HFC)及びハイドロフルオロオレフィン(HFO)からなる群から選ばれる少なくとも1種からなる請求項5または6に記載の断熱材の製造方法。
前記樹脂発泡体の成形体を構成する樹脂は、オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂及びウレタン系樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種からなる請求項5〜7のいずれか1に記載の断熱材の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示された樹脂発泡体の成形体では、加熱成形の際、樹脂発泡体を被覆した樹脂に欠損等が発生し易く、これにより成形体内部の空気より熱伝導性の低いガスが散逸し易く、時間経過とともに、断熱性能が低下していってしまうという問題があった。
【0008】
また、特許文献2に開示された樹脂発泡体の成形体では、樹脂発泡体の成形体を作製した後、ガスバリア性を有する樹脂で被覆するまでの間に、成形体の内部のガスが散逸し易く、そのため、成形体の断熱性能が低下してしまうという問題があった。
【0009】
本発明は、上記のような問題点に鑑みてなされたものであり、樹脂発泡体の成形体の内部に空気より熱伝導率の低い断熱性ガスが充填されており、この空気より熱伝導率の低いガスが周囲に散逸しないので、長期間に渡り、高い断熱性能を維持することが可能な樹脂発泡体の成形体及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための本発明の断熱材は、樹脂発泡体の成形体からなる断熱材であって、上記成形体の内部は、成形体中の空隙の体積に対して70体積%以上の割合となるように断熱性ガスが充填され、上記成形体がガスバリア性を有するフィルムで覆われ、密閉されていることを特徴とする。
【0011】
上記断熱材において、樹脂発泡体の成形体の内部が、当該成形体中の空隙の体積に対して70体積%以上の割合となるように断熱性ガスが充填され、上記成形体がガスバリア性を有するフィルムで覆われ、密閉されているので、断熱性ガスが周囲に散逸することはなく、本発明の断熱材は、長期間に渡り、高い断熱性能を維持することが可能である。
【0012】
本発明の断熱材において、上記成形体上に接着層が形成され、該接着層上にガスバリア性を有するフィルムが形成されていることが望ましい。
上記断熱材において、上記成形体上に接着層が形成され、該接着層上にガスバリア性を有するフィルムが形成されていると、断熱性ガスが周囲に散逸することはなく、本発明の断熱材は、長期間に渡り、高い断熱性能を維持することが可能である。
【0013】
本発明の断熱材において、断熱性ガスは、空気の熱伝導率(0.026W/mK 測定温度20℃)より熱伝導率が低いことが望ましい。一般的に、空気より熱伝導率が低い断熱性ガスは空気より分子量が大きく、分子直径が大きいため樹脂に対するガス透過率が小さい。そのため、空気より熱伝導率が低い断熱性ガスは成形体の内部より散逸しにくく、長期間に渡り、高い断熱性能を維持することができる。
また、断熱性ガスは、ブタン、ペンタン、アルゴン、炭酸ガス、ハイドロフルオロカーボン(HFC)及びハイドロフルオロオレフィン(HFO)からなる群から選ばれる少なくとも1種からなることが望ましい。
また、断熱性ガスは、樹脂に対するガス透過率が小さく、かつ常温で安定的にガス化しており、さらに安価であることからブタン、ペンタン又はアルゴンがさらに望ましい。これらの断熱性ガスは、空気の熱伝導率(0.026W/mK 測定温度20℃)より熱伝導率が低く、かつ、樹脂に対するガス透過率が小さいので、ガス置換された断熱性ガスが散逸し難いので、長期間に渡り、高い断熱性能を維持させやすいのである。
【0014】
本発明の断熱材において、上記樹脂発泡体の成形体を構成する樹脂は、オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂及びウレタン系樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種からなることが望ましい。
上記断熱材において、上記樹脂発泡体の成形体を構成する樹脂がオレフィン系樹脂、スチレン系樹脂及びウレタン系樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種からなるものであると、樹脂発泡体としての機械的特性、断熱性能等に優れた断熱材を提供することができる。
【0015】
本発明の断熱材の製造方法は、樹脂発泡体の成形体からなる断熱材の製造方法であって、
樹脂発泡粒子の加熱発泡及び成形を行うことにより樹脂発泡体の成形体を作製する成形工程と、上記成形体の内部を断熱性ガスにより置換する断熱性ガス置換工程と、ガスバリア性を有するフィルムを上記成形体の周囲全体に貼り付け、上記成形体を密閉するフィルム貼付工程とを含むことを特徴とする。
【0016】
上記断熱材の製造方法によれば、上記成形工程により樹脂発泡体の成形体を作製した後、上記成形体の内部を空気の熱伝導率よりも低い断熱性ガスにより置換し、ガスバリア性を有するフィルムを上記成形体に貼り付け、上記成形体を密閉するので、得られた樹脂発泡体の成形体は、断熱性ガスが成形体の周囲に散逸することはなく、上記製造方法により製造された断熱材は、長期間に渡り、高い断熱性能を維持することが可能である。
【0017】
本発明の断熱材の製造方法において、上記断熱性ガス置換工程において製造された上記成形体中の断熱性ガスの割合が、当該成形体中の空隙の体積に対して70体積%以上の割合となるように断熱性ガスを充填することが望ましい。
【0018】
上記断熱材において、上記断熱性ガス置換工程において、製造された上記成形体中の断熱性ガスの割合が、当該成形体中の空隙の体積に対して70体積%以上の割合となるように断熱性ガスを充填すると、長期間に渡り、高い断熱性能を維持する樹脂発泡体の成形体を製造することができる。
【0019】
本発明の断熱材の製造方法において、断熱性ガスは、空気の熱伝導率(0.026W/mK 測定温度20℃)より熱伝導率が低いことが望ましい。一般的に、空気より熱伝導率が低い断熱性ガスは空気より分子量が大きく分子直径が大きいため樹脂に対するガス透過率が小さい。そのため、空気より熱伝導率が低い断熱性ガスは成形体の内部より散逸しにくく、長期間に渡り、高い断熱性能を維持することができる。
また、断熱性ガスは、ブタン、ペンタン、アルゴン、炭酸ガス、ハイドロフルオロカーボン (HFC)及びハイドロフルオロオレフィン(HFO)からなる群から選ばれる少なくとも1種からなることが望ましい。
【0020】
上記断熱材の製造方法において、断熱性ガスは、樹脂に対するガス透過率が小さく、かつ常温で安定的にガス化しており、さらに安価であることからブタン、ペンタン又はアルゴンがさらに望ましい。これらの断熱性ガスは、空気の熱伝導率(0.026W/mK 測定温度20℃)より熱伝導率が低く、かつ、ガスバリア性を有するフィルムに対するガス透過率が小さいので、成形体の内部にガス置換された断熱性ガスが散逸し難いので、長期間に渡り、高い断熱性能を維持させやすいのである。
【0021】
本発明の断熱材の製造方法において、上記樹脂発泡体の成形体を構成する樹脂は、オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂及びウレタン系樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種からなることが望ましい。
本発明の断熱材の製造方法において、樹脂発泡体の成形体を構成する樹脂は、オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂及びウレタン系樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種からなるものであると、樹脂発泡体の成形体としての機械的特性、断熱性能等に優れた断熱材を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
まず、本発明の断熱材について説明する。
本発明の断熱材は、樹脂発泡体の成形体からなる断熱材であって、上記成形体の内部は、成形体中の空隙の体積に対して70体積%以上の割合となるように断熱性ガスが充填され、上記成形体がガスバリア性を有するフィルムで覆われ、密閉されていることを特徴とする。
【0024】
上記断熱材において、樹脂発泡体の成形体の内部が、当該成形体中の空隙の体積に対して70体積%以上の割合となるように断熱性ガスが充填され、上記成形体がガスバリア性を有するフィルムで覆われ、密閉されていると、断熱性ガスが周囲に散逸することはなく、本発明の断熱材は、長期間に渡り、高い断熱性能を維持することが可能である。
【0025】
本発明の断熱材において、樹脂発泡体の成形体とは、樹脂発泡粒子を発泡させることにより形成された樹脂発泡体が所定の形状となるように融着、成形されたものをいう。
【0026】
樹脂発泡体の成形体を構成する樹脂としては、特に限定されるものではないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂、ポリスチレン等のスチレン系樹脂、ポリウレタン等のウレタン系樹脂等が挙げられる。本発明では、上記した樹脂の1種類または2種類以上を用いることができる。これらのなかでは、スチレン系樹脂を使用することが望ましい。上記スチレン系樹脂としては、スチレンホモポリマー、スチレン単量体とスチレンと共重合可能な単量体またはその誘導体から得られるランダム、ブロックまたはグラフト共重合体等が挙げられる。
【0027】
上記樹脂発泡体の成形体には、当該成形体中の空隙の体積に対して70体積%以上の割合となるように断熱性ガスが充填されている。
成形体中の空隙の体積に対して70体積%未満の割合で断熱性ガスが充填されていると、空気等が充填された断熱材と断熱性に大きな差がでず、断熱材の断熱性能が満足できるものとならない。本発明では、成形体中の空隙の体積に対して90体積%以上の割合となるように断熱性ガスが充填されていることが望ましい。
【0028】
上記断熱性ガスは、空気の熱伝導率(0.026W/mK 測定温度20℃)より熱伝導率が低いことが望ましい。一般的に、空気より熱伝導率が低い断熱性ガスは空気より分子量が大きく分子直径が大きいため樹脂に対するガス透過率が小さい。そのため、空気より熱伝導率が低い断熱性ガスは成形体の内部より散逸しにくく、長期間に渡り、高い断熱性能を維持することができる。
【0029】
具体的には、ブタン、ペンタン、アルゴン、炭酸ガス、ハイドロフルオロカーボン (HFC)及びハイドロフルオロオレフィン(HFO)からなる群から選ばれる少なくとも1種からなるガスが挙げられる。ハイドロフルオロカーボン (HFC)としては、例えば、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン、1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン、1,1−ジクロロ−1−フルオロエタン、1−クロロ−1,1−ジフルオロエタン等が挙げられる。ハイドロフルオロオレフィンとしては、例えば、CF
3CH=CHF、CH
2 =CHCF
3、CH
2=CFCHF
2等が挙げられる。
【0030】
これらの断熱性のガスの中では、樹脂に対するガス透過率が小さく、かつ常温で安定的にガス化しており、さらに安価であることからブタン、ペンタン又はアルゴンが望ましい。これらのガスは、空気の熱伝導率(0.026W/mK 測定温度20℃)より熱伝導率が低く、かつ、ガスバリア性を有するフィルムに対するガス透過率が小さいので、成形体の内部にガス置換された断熱性ガスが散逸し難いので、長期間に渡り、高い断熱性能を維持させやすいのである。
また、ブタンは、20℃における熱伝導率が0.016W/mKと低く、断熱性に優れる。
【0031】
ガスバリア性を有するフィルムを構成するガスバリア性を有する樹脂としては、ポリ塩化ビニリデン樹脂、エチレン・ビニルアルコール共重合体、ポリアミド合成樹脂、ポリイミド樹脂、ポリビニルアルコール、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリアクリロニトリル等が挙げられる。ポリアミド合成樹脂としては、メタキシレンジアミン(MXDA)を用いたポリアミド合成樹脂が挙げられる。これらのガスバリア性を有する樹脂のなかでは、酸素透過率が500ml・μm/m
2・day・MPa以下を満足するものが望ましく、具体的にはポリ塩化ビニリデン(酸素透過率:200ml・μm/m
2・day・MPa)が望ましい。本発明では、これらのガスバリア性を有する樹脂の1種類または2種類以上を用いてフィルム化又はテープ化を行ったものを使用することができる。
【0032】
上記ガスバリア性を有するフィルムの厚みは、特に限定されるものではないが、フィルムの取扱い性やコストを考慮すると、5〜300μmが望ましい。
上記フィルムの厚みが5μm未満であると、断熱性ガスがフィルムを通過して散逸し易く、断熱材の断熱性能が劣化してしまい。一方、上記フィルムの厚みが300μmを超えても、フィルムの断熱性ガスのバリア特性は変わらないので、高い断熱性は維持されるが、フィルムの使用量が多くなるため、断熱材が高価になってしまう。
【0033】
上記フィルムは、直接、樹脂発泡体の成形体に貼り付けられていてもよいが、接着剤の塗布や粘着材を有するテープもしくはフィルム等の接着層が成形体上に形成され、上記接着層にフィルムが貼り付けられていてもよい。
上記接着剤としては、アクリル系樹脂、酢酸ビニル樹脂、エチレン・酢酸ビニル共重合体樹脂、スチレンブタジエン系樹脂、ウレタン樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂等が用いられる。粘着材としては、基材としてのフィルム、紙、不織布等に、アクリル系、ウレタン系、シリコーン系の粘着剤が付着したものを用いることができる。これらの中では、アクリル系接着剤と不織布からなる粘着テープを用いることが望ましい。樹脂発泡体の成形体の表面とフィルムとの密着性を向上させることができるからである。
【0034】
本発明の断熱材の形状は特に限定されず、断熱材としての用途に便利なような形状にすればよいが、例えば、直方体形状が挙げられる。本発明の断熱材の用途は限定されるものではなく、断熱材としての用途であれば、如何なる用途にも用いることができるが、特に建築物用の断熱材として好適に使用することができる。
【0035】
次に、本発明の断熱材の製造方法について説明する。
本発明の断熱材の製造方法は、樹脂発泡体の成形体からなる断熱材の製造方法であって、
樹脂発泡粒子の加熱発泡及び成形を行うことにより樹脂発泡体の成形体を作製する成形工程と、上記成形体の内部を断熱性ガスにより置換する断熱性ガス置換工程と、ガスバリア性を有するフィルムを上記成形体の周囲全体に貼り付け、上記成形体を密閉するフィルム貼付工程とを含むことを特徴とする。
【0036】
(1)成形工程
本発明の断熱材の製造方法では、まず、最初に、樹脂発泡粒子の加熱発泡及び成形を行うことにより樹脂発泡体の成形体を作製する成形工程を行う。
樹脂発泡粒子として樹脂は、上記したオレフィン系樹脂、スチレン系樹脂及びウレタン系樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種からなるものが好ましく、上記の樹脂からなり、従来から用いられている樹脂発泡粒子を用いることができる。樹脂発泡粒子を構成する樹脂は、樹脂発泡体の成形体を構成する樹脂と同様であり、本発明の断熱材で詳しく説明したので、ここでは、詳しい説明を省略する。
【0037】
本発明で用いられる樹脂発泡粒子は、通常、発泡剤を含有している。上記発泡剤は、特に限定されるものではないが、例えば、プロパン、ブタン、ペンタン等の炭化水素類が挙げられる。
【0038】
また上記樹脂発泡粒子には、必要に応じて、ハロゲン系難燃剤、リン系難燃剤、窒素系難燃剤等の難燃剤;リン系化合物、窒素系化合物、ホウ素系化合物、金属酸化物、鉄含有化合物等の難燃助剤;ラジカル開始剤;シリカ、タルク、ケイ酸カルシウム等の無機化合物;ステアリン酸塩、流動パラフィン、オレフィン系ワックス、ステアリルアミド系化合物、エポキシ化合物等の加工助剤;抗酸化剤;耐光性安定剤;帯電防止剤;着色剤等の添加剤を含有させてもよい。
【0039】
上記樹脂発泡粒子の平均粒子径は、300μm〜2400μmが好ましく、800μm〜2000μmがさらに好ましい。上記樹脂発泡粒子の平均粒子径が300μm以上であれば、発泡剤の保持性が低下せずビーズライフが十分保持される。また、樹脂発泡粒子を得る際に収率が充分であり、その結果コストアップを回避することができる。一方、上記樹脂発泡粒子の平均粒子径が2400μm以下であれば、複雑な形状をした発泡成形体を成形する際でも、金型への充填性が悪化するのを回避することができる。
【0040】
本発明の断熱材の製造方法における上記成形工程では、最初に樹脂発泡粒子の予備発泡を行う。
予備発泡の際には、樹脂発泡粒子の蒸気加熱を行い、樹脂粒子を発泡させる。加熱方法は、蒸気加熱に限定されるものではなく、樹脂発泡粒子を加熱できる方法であれば、他の加熱方法を採用してもよい。
【0041】
加熱条件としては、発泡樹脂の種類によるが、例えば、加熱温度を80〜150℃、加熱時間を1分〜10分に設定して行うことができる。予備発泡に用いる装置としては、公知の装置を使用することができる。上記予備発泡においては、樹脂発泡粒子が充分に発泡するように、充分な量の発泡剤を含有していることが望ましい。
【0042】
予備発泡の後、作製された樹脂発泡体は、しばらくの時間放置し、樹脂発泡体を充分に膨張させる、いわゆる熟成をおこなってもよい。
【0043】
次に、予備発泡により発泡した樹脂発泡体を金型に充填し、所定の形状に成形し、樹脂発布体の成形体を作製する。
この際、一旦発泡した樹脂発泡体は、さらに膨張するとともに、樹脂発泡体同士がしっかりと融着し、所定形状の樹脂発泡体の成形体となる。
次に、作製された樹脂発泡体の成形体に対し、乾燥を行う。乾燥条件としては、乾燥温度:40℃〜100℃、乾燥時間:1時間〜24時間が望ましい。
【0044】
樹脂発泡体の成形体の樹脂発泡粒子に対する発泡倍率は、例えば、1〜100倍が望ましく、10〜80倍がより望ましい。また、樹脂発泡体の成形体の密度としては、例えば10〜1000kg/m
3が望ましく、12〜100kg/m
3がより望ましい。
【0045】
(2)断熱性ガス置換工程
次に、樹脂発泡体の成形体に対し、上記成形体の内部を断熱性ガスにより置換する断熱性ガス置換工程を行う。
この際、樹脂発泡体の成形体を密閉可能な部屋又は容器に入れ、その部屋又は容器のなかに断熱性ガスを導入し、その後、適宜、新しい断熱性ガスを導入して部屋又は容器の中の断熱性ガスを所定の濃度に保ちながら、樹脂発泡体の成形体の中のガスを断熱性ガスで置換する。
【0046】
上記断熱性ガスとしては、ブタン、ペンタン、アルゴン、炭酸ガス、ハイドロフルオロカーボン(HFC)及びハイドロフルオロオレフィン(HFO)からなる群から選ばれる少なくとも1種からなるガスが挙げられる。これらの断熱性ガスについては、本発明の断熱材の項で詳しく説明したので、ここでは、その詳しい説明を省略する。
【0047】
断熱性ガスの置換条件は、ガスの種類によるが、温度は20〜80℃、時間は1時間〜14日が好ましい。置換の際の断熱性ガスの濃度を70〜100体積%とすることにより、樹脂発泡体の成形体中の空気を含むガスが断熱性ガスに置換される。発泡剤として、断熱性ガスと同じガスを使用することにより、断熱性ガスへの置換時間を短縮することができる。
【0048】
樹脂発泡体中の断熱性ガスの置換割合は、本発明の断熱材の項でも説明したが、樹脂発泡体の成形体中の空隙の体積に対して70体積%以上が望ましく、90体積%以上がより望ましい。
【0049】
(3)フィルム貼付工程
次に、断熱性ガス置換工程を終了した後、できるだけ短時間で、ガスバリア性を有するフィルムを上記成形体の周囲全体に貼り付け、上記成形体を密閉するフィルム貼付工程を行う。
この際、ガスバリア性を有するフィルムを、直接、樹脂発泡体の成形体の全体に貼り付け、その周囲を覆い、ガスバリア性を有するフィルムを樹脂発泡体の成形体に融着処理することにより樹脂発泡体の成形体を密閉してもよい。また、ガスバリア性を有するフィルムに接着剤等を塗布して接着層を形成し、このフィルムを樹脂発泡体の成形体の全体に貼り付け、樹脂発泡体の成形体を密閉してもよい。また、接着剤を塗布する代わりに、粘着テープからなる接着層を樹脂発泡体の成形体の全体に貼り付け、上記粘着テープにガスバリア性を有するフィルムを貼り付け、必要により融着処理してもよい。
ガスバリア性を有するフィルム等については、本発明の断熱材の項で詳しく説明したので、ここでは、その詳しい説明を省略する。
【0050】
本発明の断熱材の効果について説明する。
(1)本発明の断熱材は、樹脂発泡体の成形体の内部が、当該成形体中の空隙の体積に対して70体積%以上の割合となるように断熱性ガスが充填され、上記成形体がガスバリア性を有するフィルムで覆われ、密閉されているので、断熱性ガスが周囲に散逸することはなく、本発明の断熱材は、長期間に渡り、高い断熱性能を維持することが可能である。
【0051】
(2)本発明の断熱材の製造方法によれば、上記成形工程により樹脂発泡体の成形体を作製した後、上記成形体の内部を断熱性ガスにより置換し、直ちにガスバリア性を有するフィルムを上記成形体の周囲全体に貼り付け、上記成形体を密閉するので、得られた樹脂発泡体の成形体は、断熱性ガスが成形体の周囲に散逸することはなく、上記製造方法により製造された断熱材は、長期間に渡り、高い断熱性能を維持することが可能である。
【0052】
(実施例)
以下、本発明の実施形態をより具体的に開示した実施例を示す。なお、本発明は、これらの実施例のみに限定されるものではない。
【0053】
(実施例1)
成形工程
樹脂発泡粒子(素材:ポリスチレン、平均粒径:1mm、発泡剤:ペンタン)を、105℃の加熱蒸気で予備発泡し、予備発泡粒子(樹脂発泡体)を得た。
予備発泡粒子を熟成後、金型に充填して加熱蒸気で成形し、温度:60℃、時間:1時間の条件で乾燥することにより、縦:200mm、横:200mm、厚さ:25mmの樹脂発泡体の成形体を作製した。樹脂発泡体の成形体の発泡倍率は60倍、密度は17kg/m
3であった。
【0054】
断熱性ガス置換工程
樹脂発泡体の成形体を密閉が可能な容器に入れ、容器のなかを断熱性ガスであるブタンガスの雰囲気に置換して静置し、温度:40℃、時間:7日の条件でガス置換を行った。
【0055】
フィルム貼付工程
断熱性ガス置換した樹脂発泡体の成形体を、ガスバリア性を有する樹脂のフィルムであるポリ塩化ビニリデンフィルム(PE(25μm)−PVDC(15μm)−PE(25μm)の三層構造、旭化成ケミカルズ社製)で被覆し、熱融着により樹脂発泡体の成形体を密閉し、本発明の実施例1に係る樹脂発泡体の成形体からなる断熱材を得た。
【0056】
(実施例2)
フィルム貼付工程で、接着層としてアクリル系接着剤の層を有する両面テープである粘着テープ(ニトムズ社製 No.5015POS)を用い、該粘着テープを樹脂発泡体の成形体の全体に貼り付けた後、上記ポリ塩化ビニリデンフィルムを粘着テープに貼り付け、熱融着により樹脂発泡体の成形体を密閉した外は、実施例1と同様に成形工程、断熱性ガス置換工程を行い、本発明の実施例2に係る樹脂発泡体の成形体からなる断熱材を得た。
【0057】
(比較例1)
予備発泡工程
発泡ビーズ(素材:ポリスチレン、平均粒径:1mm、発泡剤:ペンタン)を105℃の加熱蒸気で予備発泡し、予備発泡粒子(樹脂発泡体)を得た。
【0058】
断熱性ガス置換工程
予備発泡を終えた予備発泡粒子を密閉が可能な容器に入れ、容器のなかを断熱性ガスであるブタンガスの雰囲気にして静置し、温度:40℃、時間:2日の条件で予備発泡粒子のガス置換を行った。
【0059】
樹脂発泡体のコーティング工程
断熱性ガス置換工程を終了した予備発泡粒子とガスバリア性樹脂となるポリ塩化ビニリデンラテックス(サランラテックスL509 旭化成ケミカルズ社製、予備発泡粒子の重量の80%)とをミキサーを用いて5分間混合し、乾燥させることにより、予備発泡粒子にガスバリア性樹脂であるポリ塩化ビニリデンをコーティングした。
【0060】
成形工程
ガスバリア性樹脂をコーティングした予備発泡粒子を用い、該予備発泡粒子を金型に充填、加熱成形し、その後、温度:60℃、時間:1時間の条件で乾燥させ、縦:200mm、横:200mm、厚さ:25mmの比較例1に係る樹脂発泡体の成形体からなる断熱材を得た。なお、比較例1に係る樹脂発泡体の成形体の発泡倍率は60倍、密度は24kg/m
3であった。
【0061】
(比較例2)
成形工程
樹脂発泡粒子(素材:ポリスチレン、平均粒径:1mm、発泡剤:ペンタン)を、105℃の加熱蒸気で予備発泡し、予備発泡粒子(樹脂発泡体)を得た。
予備発泡粒子を熟成後、金型に充填して加熱蒸気で成形し、温度:60℃、時間:1時間の条件で乾燥することにより、縦:200mm、横:200mm、厚さ:25mmの樹脂発泡体の成形体を作製した。樹脂発泡体の成形体の発泡倍率は60倍、密度は17kg/m
3であった。なお、樹脂発泡体は、成形工程後のガス置換を実施しなかった。
【0062】
フィルム貼付工程
樹脂発泡体の成形体を、ガスバリア性を有する樹脂のフィルムであるポリ塩化ビニリデンフィルム(PE(25μm)−PVDC(15μm)−PE(25μm)の三層構造、旭化成ケミカルズ社製)で被覆し、熱融着により樹脂発泡体の成形体を密閉し、比較例2に係る樹脂発泡体の成形体からなる断熱材を得た。
【0063】
(比較例3)
成形工程
樹脂発泡粒子(素材:ポリスチレン、平均粒径:1mm、発泡剤:ペンタン)を、105℃の加熱蒸気で予備発泡し、予備発泡粒子(樹脂発泡体)を得た。
予備発泡粒子を熟成後、金型に充填して加熱蒸気で成形し、温度:60℃、時間:1時間の条件で乾燥することにより、縦:200mm、横:200mm、厚さ:25mmの樹脂発泡体の成形体を作製し、比較例3に係る樹脂発泡体の成形体からなる断熱材を得た。樹脂発泡体の成形体の発泡倍率は60倍、密度は17kg/m
3であった。なお、樹脂発泡体は、成形工程後の断熱性ガス置換およびガスバリア性を有する樹脂のコーティングを実施しなかった。
【0064】
(樹脂発泡体の成形体のガス含有率の計算)
空気より比重が大きい断熱性ガスに置換されることで樹脂発泡体の重量が増加するが、その増加量と樹脂発泡体の成形体中の空隙の体積から断熱性ガスの置換量を計算した。含有するガスとは、実施例1〜2及び比較例1の断熱性ガス置換品はブタンガス、比較例2〜3の断熱性ガス未置換品はペンタンガスである。結果を下記の表1に示す。
【0065】
(樹脂発泡体の熱伝導率評価)
熱伝導率測定装置(英弘精機製 HC074/200)を用い、熱流計法により20℃で熱伝導率を測定した。
【0066】
<測定条件>
JIS A 1412−2に準拠して行った。
測定サンプルサイズ 200mm×200mm
測定サンプル厚み:25mm
高温熱板の温度:θ
1=30℃、低温熱板の温度:θ
2=10℃、温度差20℃で実施した。
【0067】
図1は、熱流計法による熱伝導率測定の方法を模式的に示した概略図である。
この熱伝導率測定においては、試験体(樹脂発泡体の成形体)11を高温熱板12と低温熱板13との間に挟み、高温熱板12と試験体11との間、及び、低温熱板13と試験体11との間に、高温熱板12の温度(θ
1)及び低温熱板13の温度(θ
2)を測る温度・熱量測定器15及び試験体の移動熱量を図る熱量計(100mm角)17を載置し、熱板温度制御器19により高温熱板12と低温熱板13との温度を上記した所定の温度に制御しながら、熱伝導率を測定した。熱流計には、温度センサーとして、E型熱伝対が取り付けられ、熱板の温度測定し、それぞれ熱板の温度は、サーモモジュール(ペルチェ素子)により調節した。
【0068】
上述した方法により、上記実施例および上記比較例で作製した樹脂発泡体の成形体のガス含有率、熱伝導率の測定を行った。測定は、2回行った、1回目は、樹脂発泡体の成形体の作製後、24時間以内に行い(表1中「初期」と記載)、2回目は、樹脂発泡体の成形体を作製後、屋内 室温下で3ヶ月経過した後(表1中、3か月後と記載)に行った。その測定結果を、表1に示した。
【0069】
(断熱性の評価)
断熱性の評価は、熱伝導率が0.030(W/mK 20℃)以下の場合には、熱伝導率が低く、断熱性は良好と判断し、逆に熱伝導率が0.030(W/mK 20℃)を超える場合には、熱伝導率が高く、断熱性を有するものの、充分とは言えないので、可(不充分)と判断した。なお、断熱性の評価で良好と判断された断熱材は、高断熱性能を有することを示すのである。
各評価の結果を下記の表1に示す。
【0071】
上記表1に示すように、実施例1及び実施例2に係る断熱材は、成形体の内部が断熱性ガスであるブタンガスで置換され、周囲全体がガスバリア性を有するフィルムにより被覆され、密閉されているので、断熱材の作製後の初期の断熱性ガスのガス含有率が高く、熱伝導率が低く、断熱性も良好であった。また、3か月後も断熱性ガスのガス含有率が高く、熱伝導率が低く、断熱性も良好であった。これは時間経過をしても、断熱材中の断熱ガスが散逸されにくく、長期間での断熱性が維持されていることを示しているのである。
【0072】
一方、比較例1に係る断熱材は、断熱材の作製後の初期の断熱性ガスのガス含有率が高く、熱伝導率は低く、断熱性も良好であったものの、3か月後、断熱性ガスのガス含有率は、初期と比較すると低下し、熱伝導率も初期と比較しても高くなり、断熱性も可となった。このように比較例1の断熱材は、時間経過とともに断熱材の内部の断熱性ガスが散逸してしまい、その結果、熱伝導率が悪化し、断熱性も劣化してしまったと思われる。
【0073】
また、比較例2および比較例3に係る断熱材は、断熱材の作製後である初期の断熱性ガスのガス含有率が低く、熱伝導率も高く、断熱性も可であった。これは、断熱性ガスが置換されていないため、断熱材の熱伝導率が高くなったのである。
【0074】
実施例1〜2と比較例2〜3の評価結果より、樹脂発泡体の成形体に対して、断熱性ガスを置換させることにより熱伝導率を低くすることができることが示され、実施例1〜2と比較例1の評価結果より、樹脂発泡体の成形体に対して、断熱性ガスで置換し、ガスバリア性のフィルムで覆うことにより長期間の断熱性を維持することができることが判明した。