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特開2017-219717加熱装置、定着システム及び画像形成装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-219717(P2017-219717A)
(43)【公開日】2017年12月14日
(54)【発明の名称】加熱装置、定着システム及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/20 20060101AFI20171117BHJP
【FI】
   G03G15/20 515
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2016-114462(P2016-114462)
(22)【出願日】2016年6月8日
(71)【出願人】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士ゼロックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137752
【弁理士】
【氏名又は名称】亀井 岳行
(74)【代理人】
【識別番号】100085040
【弁理士】
【氏名又は名称】小泉 雅裕
(74)【代理人】
【識別番号】100108925
【弁理士】
【氏名又は名称】青谷 一雄
(74)【代理人】
【識別番号】100087343
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 智廣
(72)【発明者】
【氏名】荒木 光太郎
(72)【発明者】
【氏名】大橋 孝
(72)【発明者】
【氏名】村瀬 尚志
(72)【発明者】
【氏名】森 恵太郎
(72)【発明者】
【氏名】越智 隆
(72)【発明者】
【氏名】横山 優樹
(72)【発明者】
【氏名】藤田 雅彦
(72)【発明者】
【氏名】林 良宏
【テーマコード(参考)】
2H033
【Fターム(参考)】
2H033AA02
2H033AA32
2H033AA46
2H033BA01
2H033BA11
2H033BA12
2H033BA25
2H033BA26
2H033BA27
2H033BB03
2H033BB05
2H033BB06
2H033BB13
2H033BB14
2H033BB15
2H033BB18
2H033BB21
2H033BB23
2H033BB29
2H033BB30
2H033BB33
2H033BB34
2H033BE03
2H033BE06
2H033CA30
(57)【要約】
【課題】電力の消費量を抑制しつつ、記録媒体の表裏両面を簡易な構成で加熱することができる加熱装置等を提供する。
【解決手段】加熱装置5は、記録媒体9の片面(9b)を加熱するよう電磁誘導で発熱する第1発熱部材51と、第1発熱部材51との間に記録媒体9を通過させる隙間54をあけるよう対向して配置され、記録媒体9の他面(9a)を加熱するよう電磁誘導で発熱する第2発熱部材52と、第1発熱部材51及び第2発熱部材52を共に発熱させる交番磁束Hを発生する1つの磁束生成手段53と、を備えている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体の片面を加熱するよう電磁誘導で発熱する第1発熱部材と、
前記第1発熱部材との間に記録媒体が通過する隙間をあけるよう対向して配置され、記録媒体の他面を加熱するよう電磁誘導で発熱する第2発熱部材と、
前記第1発熱部材及び第2発熱部材を共に発熱させる交番磁束を生成する1つの磁束生成手段と、
を備える加熱装置。
【請求項2】
前記磁束生成手段は、前記第1発熱部材を挟んで前記第2発熱部材と反対側の位置と前記第2発熱部材を挟んで前記第1発熱部材と反対側の位置のいずれか一方の位置に配置されている請求項1に記載の加熱装置。
【請求項3】
前記第1発熱部材と前記第2発熱部材の一方は、その互いに向き合う部分の表面粗さがその他方の表面粗さよりも小さくなるよう構成されている請求項1又は2に記載の加熱装置。
【請求項4】
前記第1発熱部材及び第2発熱部材は、その互いに向き合う部分が平面状の形状で構成されている請求項1乃至3のいずれかに記載の加熱装置。
【請求項5】
前記第1発熱部材と前記第2発熱部材の少なくとも一方は、記録媒体を載せて搬送する搬送ベルトを有する搬送装置における前記搬送ベルトの内側の空間内に配置されている請求項4に記載の加熱装置。
【請求項6】
前記第1発熱部材と前記第2発熱部材の少なくとも一方は、記録媒体を載せて搬送する搬送ベルトを有する搬送装置における前記搬送ベルトを構成する層として配置されている請求項4に記載の加熱装置。
【請求項7】
前記第1発熱部材及び第2発熱部材は、その互いに向き合う部分が曲面状の形状で構成されている請求項1乃至3のいずれかに記載の加熱装置。
【請求項8】
前記第1発熱部材と前記第2発熱部材の一方は記録媒体を巻き付けた状態で通過させる中空ロールで構成されており、その他方は前記中空ロールの外周面と前記隙間をあけて対向する曲面部を有する形態で構成されている請求項7に記載の加熱装置。
【請求項9】
前記記録媒体は未定着像が形成された記録媒体であり、
前記記録媒体の未定着像が形成されている表面と向き合う側に配置される前記第1発熱部材又は第2発熱部材が、前記表面と非接触の状態になるよう配置されている請求項1乃至8のいずれかに記載の加熱装置。
【請求項10】
未定着像が形成された記録媒体を挟んで搬送するとともに加圧及び加熱して未定着像の定着を行う定着処理部を有する定着装置と、
前記定着装置よりも記録媒体の搬送方向上流側の位置に配置され、記録媒体の両面を定着処理前に予め加熱する予備加熱装置と、
を備え、
前記予備加熱装置は、請求項1乃至9のいずれかに記載の加熱装置で構成されている定着システム。
【請求項11】
前記予備加熱装置は、前記第1発熱部材が記録媒体の未定着像が形成されていない裏面を接触した状態で加熱し、前記第2発熱部材が記録媒体の未定着像が形成されている表面を非接触の状態で加熱するよう構成されている請求項10に記載の定着システム。
【請求項12】
前記第1発熱部材の発熱温度が前記第2発熱部材の発熱温度よりも高くなるよう構成されている請求項11に記載の定着システム。
【請求項13】
裁断された記録媒体又は連続する記録媒体をその両面から加熱する請求項1乃至9のいずれかに記載の加熱装置を備える画像形成装置。
【請求項14】
裁断された記録媒体又は連続する記録媒体の片面に未定着像を形成する像形成装置と、
前記像形成装置から未定着像が形成されて送り出される記録媒体の両面を定着処理前に予め加熱した後に未定着像の定着を行う請求項10乃至12のいずれかに記載の定着システムと、
を備える画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、加熱装置、定着システム及び画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、トナー像等の未定着像が形成された記録媒体の表裏面を定着処理前に加熱する予備加熱装置としては、以下に例示するものが知られている。
特許文献1には、定着ローラと加圧ローラとからなるニップ部を通過して記録紙(記録媒体)上の未定着画像を定着させる定着装置よりも記録紙の搬送方向上流側に配置される、内部に発熱源を有する予備加熱板と予備加熱板上の補助加熱ランプとで構成される予備加熱装置が示されている。
【0003】
また従来、他の定着装置として、以下に例示するものも知られている。
例えば、特許文献2には、加熱ローラと加圧ローラからなる接触式の第2の定着手段よりも記録媒体の搬送方向上流側に配置されて、記録媒体のトナー像が転写された表面を非接触で加熱する加熱手段を備えた予備加熱装置としての第1の定着手段が示されている。特許文献2には、第1の定着手段の加熱手段として、加熱ローラを加熱する誘導加熱部材(IHヒートコイル)と、誘導加熱部材により加熱されて記録媒体の表面と向き合う状態で配置された予備加熱板とで構成されるものが例示されている。
また、特許文献3には、記録材(記録媒体)を挟持搬送するニップ部を有し、そのニップ部で記録材上の未定着像を定着させる定着装置よりも記録材の搬送方向上流側に設けられ、そのニップ部に向けて記録材を搬送しながら記録材を予備加熱する予備加熱搬送手段が示されている。特許文献3には、その予備加熱搬送手段として、記録材の搬送方向に複数並ぶ搬送手段の金属ローラと、その金属ローラを発熱させる交番磁場を形成する発熱手段の磁束形成手段とで構成されるものが例示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−307495号公報
【特許文献2】特開2000−352888号公報
【特許文献3】特開2008−90149号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明は、電力の消費量を抑制しつつ、記録媒体の表裏両面を簡易な構成で加熱することができる加熱装置とそれを用いた定着システム及び画像形成装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明(A1)の加熱装置は、
記録媒体の片面を加熱するよう電磁誘導で発熱する第1発熱部材と、
前記第1発熱部材との間に記録媒体を通過させる隙間をあけるよう対向して配置され、記録媒体の他面を加熱するよう電磁誘導で発熱する第2発熱部材と、
前記第1発熱部材及び第2発熱部材を共に発熱させる交番磁束を生成する1つの磁束生成手段と、
を備えるものである。
【0007】
この発明(A2)の加熱装置は、上記発明A1の加熱装置において、前記磁束生成手段が、前記第1発熱部材を挟んで前記第2発熱部材と反対側の位置と前記第2発熱部材を挟んで前記第1発熱部材と反対側の位置のいずれか一方の位置に配置されているものである。
この発明(A3)の加熱装置は、上記発明A1又はA2の加熱装置において、前記第1発熱部材と前記第2発熱部材の一方は、その互いに向き合う部分の表面粗さがその他方の表面粗さよりも小さくなるよう構成されているものである。
【0008】
この発明(A4)の加熱装置は、上記発明A1からA3のいずれかの加熱装置において、前記第1発熱部材及び第2発熱部材は、その互いに向き合う部分が平面状の形状で構成されているものである。
この発明(A5)の加熱装置は、上記発明A4の加熱装置において、前記第1発熱部材と前記第2発熱部材の少なくとも一方が、記録媒体を載せて搬送する搬送ベルトを有する搬送装置における前記搬送ベルトの内側の空間内に配置されているものである。
この発明(A6)の加熱装置は、上記発明A4の加熱装置において、前記第1発熱部材と前記第2発熱部材の少なくとも一方が、記録媒体を載せて搬送する搬送ベルトを有する搬送装置における前記搬送ベルトを構成する層として配置されているものである。
【0009】
この発明(A7)の加熱装置は、上記発明A1からA3のいずれかの加熱装置において、前記第1発熱部材及び第2発熱部材は、その互いに向き合う部分が曲面状の形状で構成されているものである。
この発明(A8)の加熱装置は、上記発明A7の加熱装置において、前記第1発熱部材と前記第2発熱部材の一方は記録媒体を巻き付けた状態で通過させる中空ロールで構成されており、その他方は前記中空ロールの外周面と前記隙間をあけて対向する曲面部を有する形態で構成されているものである。
【0010】
この発明(A9)の加熱装置は、上記発明A1からA8のいずれかの加熱装置において、前記記録媒体は未定着像が形成された記録媒体であり、当該記録媒体の未定着像が形成されている表面と向き合う側に配置される前記第1発熱部材又は第2発熱部材が、前記表面と非接触の状態になるよう配置されているものである。
【0011】
また、この発明(B1)の定着システムは、未定着像が形成された記録媒体を挟んで搬送するとともに加圧及び加熱して未定着像の定着を行う定着処理部を有する定着装置と、前記定着装置よりも記録媒体の搬送方向上流側の位置に配置され、記録媒体の両面を定着処理前に予め加熱する予備加熱装置と、を備え、
前記予備加熱装置は、上記発明A1からA9のいずれかの加熱装置で構成されているものである。
【0012】
この発明(B2)の定着システムは、上記発明B1の定着システムにおいて、前記予備加熱装置は、前記第1発熱部材が記録媒体の未定着像が形成されていない裏面を接触した状態で加熱し、前記第2発熱部材が記録媒体の未定着像が形成されている表面を非接触の状態で加熱するよう構成されているものである。
この発明(B3)の定着システムは、上記発明B2の定着システムにおいて、前記第1発熱部材の発熱温度が前記第2発熱部材の発熱温度よりも高くなるよう構成されているものである。
【0013】
さらに、この発明(C1)の画像形成装置は、裁断された記録媒体又は連続する記録媒体を両面から加熱する上記発明A1からA9の加熱装置を備えるものである。
【0014】
また、この発明(D1)の画像形成装置は、裁断された記録媒体又は連続する記録媒体の片面に未定着像を形成する像形成装置と、前記像形成装置から未定着像が形成されて送り出される記録媒体の両面を定着処理前に予め加熱した後に未定着像の定着を行う上記発明B1からB3のいずれかの定着システムと、を備えるものである。
【発明の効果】
【0015】
上記発明A1の加熱装置によれば、1つの磁束生成手段により2つの発熱部材を共に電磁誘導で発熱させる構成になっていない場合に比べて、電力の消費量を抑制しつつ、記録媒体の表裏両面を簡易な構成で加熱することができる。
【0016】
上記発明A2の加熱装置では、記録媒体の両面を加熱するにもかかわらず磁束生成手段の配置場所が1箇所で済み、磁束生成手段を2箇所に配置する場合に比べて、その装置全体の設置スペースをより小さいスペースにすることができる。
上記発明A3の加熱装置では、向き合う部分の表面粗さが相対的に小さい方の第1発熱部材又は第2発熱部材により他方の第2発熱部材又は第1発熱部材から発せられる熱を反射させて加熱に利用することができる。
【0017】
上記発明A4の加熱装置では、第1発熱部材及び第2発熱部材の互いに向き合う部分が平面状の形状で構成されていない場合に比べて、記録媒体の搬送方向と直交する方向における設置スペースの増大を抑制しつつ装置全体をより簡易な構成にすることができる。
上記発明A5の加熱装置では、第1発熱部材及び第2発熱部材のいずれもが搬送装置における搬送ベルトの内側の空間内に配置されていない場合に比べて、記録媒体を安定して搬送しつつ記録媒体の表裏両面を加熱することができる。
上記発明A6の加熱装置では、第1発熱部材及び第2発熱部材のいずれもが搬送装置における搬送ベルトを構成する層として配置されていない場合に比べて、記録媒体を安定して搬送しつつ記録媒体の表裏両面を加熱することができる。
【0018】
上記発明A7の加熱装置では、第1発熱部材及び第2発熱部材の互いに向き合う部分が曲面状の形状で構成されていない場合に比べて、記録媒体を第1発熱部材又は第2発熱部材の曲面状の向き合う部分における凸側部分に接触させて搬送することにより安定して加熱することができる。
上記発明A8の加熱装置では、第1発熱部材及び第2発熱部材のいずれもが中空ロールで構成されていない場合に比べて、中空ロールの第1発熱部材又は第2発熱部材に巻き付けられて通過する側の記録媒体の面を安定して加熱することができる。
【0019】
上記発明A9の加熱装置では、未定着像が形成された記録媒体の両面を加熱する際に、その未定着像が第1発熱部材及び第2発熱部材と接触することにより乱されることなく、加熱することができる。
【0020】
上記発明B1の定着システムによれば、予備加熱装置において、電力の消費量を抑制しつつ、未定着像が形成された記録媒体の表裏両面を簡易な構成で加熱することができる。
【0021】
上記発明B2の定着システムでは、予備加熱装置において未定着像が形成された記録媒体の表裏両面を未定着像の乱れを誘発することなく予め加熱した後、定着装置においてその未定着像を確実に定着することができる。
上記発明B3の定着システムでは、予備加熱装置において第1発熱部材の発熱温度が第2発熱部材の発熱温度よりも高くなるよう構成されていない場合に比べて、定着装置において未定着像を記録媒体に確実に固定させて光沢むらが抑制された状態で定着することができる。
【0022】
上記発明C1の画像形成装置によれば、定着システムの予備加熱装置において、電力の消費量を抑制しつつ、記録媒体の表裏両面を簡易な構成で加熱することができる。
【0023】
上記発明D1の画像形成装置によれば、定着システムの予備加熱装置において、電力の消費量を抑制しつつ、未定着像が形成された記録媒体の表裏両面を簡易な構成で加熱することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】実施の形態1等に係る画像形成装置の構成を示す概略説明図である。
図2図1の画像形成装置における定着システムの構成を示す概略説明図である。
図3図2の定着システムにおける予備加熱装置の構成を示す概略説明図である。
図4図3の予備加熱装置の動作状態を示す概略説明図である。
図5】実施の形態2に係る定着システムの構成を示す概略説明図である。
図6図5の定着システムにおける予備加熱装置の構成を示す概略説明図である。
図7図6の予備加熱装置の動作状態を示す概略説明図である。
図8】実施の形態2に係る予備加熱装置の他の構成例を示す概略説明図である。
図9図8の予備加熱装置の動作状態を示す概略説明図である。
図10】実施の形態3に係る定着システムの構成を示す概略説明図である。
図11図10の定着システムにおける予備加熱装置の構成を示す概略説明図である。
図12図11の予備加熱装置の動作状態を示す概略説明図である。
図13】実施の形態4に係る画像形成装置の構成を示す概略説明図である。
図14図13の画像形成装置における定着システムの構成を示す概略説明図である。
図15図14の定着システムにおける予備加熱装置の構成を示す概略説明図である。
図16図15の予備加熱装置の動作状態を示す概略説明図である。
図17】実施の形態5に係る画像形成装置の構成を示す概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、この発明を実施するための形態(以下「実施の形態」という)について図面を参照しながら説明する。
【0026】
[実施の形態1]
図1から図3は、実施の形態1に係る画像形成装置等を示している。図1はその画像形成装置の全体の概要を示し、図2はその画像形成装置が備える定着システムを示し、図3はその画像形成装置又は定着システムが備える予備加熱装置(加熱装置)を示している。
【0027】
<画像形成装置の全体の構成>
画像形成装置1は、記録媒体の一例としての連続紙(ロールに巻かれた連続する記録媒体)9に現像剤としてのトナーで構成される画像を形成する装置である。
【0028】
この画像形成装置1は、図1に概略的に示されるように、連続紙9を供給する供給装置11と、供給装置11から供給される連続紙9に未定着像の一例としてのトナー像を形成する像形成装置2と、像形成装置2でトナー像が形成された連続紙9の表裏両面9a,9bを定着処理前に予め加熱した後にトナー像の定着を行う定着システム4と、定着システム4で定着処理されて得られる画像が形成された連続紙9を収容する収容装置16とを備えている。ここで、連続紙9の表面9aはトナー像が形成されている側の面とし、連続紙9の裏面9bはトナー像が形成されていない側の面とする。
【0029】
供給装置11は、ロール状に巻かれた連続紙9を繰り出すための繰出ロール12と、繰出ロール12の繰り出し動作を調整する調整機構13と、調整機構13を通して繰り出される連続紙9を像形成装置2に供給するよう搬送する導入用の搬送ロール対14とを有している。
【0030】
繰出ロール12は、図示しない駆動装置の駆動力を受けて繰り出し方向に回転駆動するように構成されている。調整機構13は、連続紙9の搬送方向Aに間隔をあけて平行状態に配置される2つの搬送ロール13a,13bと、2つの搬送ロール13a,13bの間においてほぼ重力方向に沿って昇降動する昇降ロール13cと、昇降ロール13cの上下方向における規定位置に達することを検知する図示しない位置検知センサとで構成されている。連続紙9は、調整機構13において、2つの搬送ロール13a,13bに架け渡される状態で支持されるとともに、その搬送ロール13a,13bの間で昇降ロール13cによりほぼ重力方向に下方にむけて引き込まれた後に折り返すような状態で搬送される。
搬送ロール対14は、回転駆動ロールと従動ロールとが圧接する状態で配置されたものであり、その回転駆動ロールが図示しない駆動装置の駆動力を受けて搬送方向Aに適合する方向に回転駆動されることにより、その両ロールの圧接部に挟まれて通過する連続紙9を搬送するように構成されている。搬送ロール対14は、実際には像形成装置2側に存在するよう配置される。
【0031】
この供給装置11は、繰出ロール12が停止しているとともに調整機構13における昇降ロール13cが下方の規定位置に移動しているときに、連続紙9が搬送ロール対14により搬送される。
一方、連続紙9が搬送ロール対14により搬送されると、昇降ロール13cが上昇し始めて最終的に上方の規定位置に達するまで上昇すると、繰出ロール12が回転駆動して連続紙9を繰り出す。また、連続紙9が繰出ロール12から繰り出されると、昇降ロール13cが下降し始めて最終的に下方の規定位置に達するまで下降し、その段階で繰出ロール12が停止して連続紙9の繰り出しを中断する。なお、連続紙9の像形成装置2への供給量は、搬送ロール対14の回転駆動量に対応している。
【0032】
連続紙9としては、例えば、上質紙、グラシン紙等の紙類やポリプロピレン等の合成樹脂等の材料からなる帯状に連続した長尺な部材が使用される。また、連続紙9としては、この他にも、例えば、剥離紙上に接着層を介して表面基材(画像形成面)が設けられた構造のラベル紙も適用される。
【0033】
収容装置16は、画像が形成された連続紙9を巻き取るための巻取ロール17と、巻取ロール17の巻き取り動作を調整する調整機構18と、画像が形成された後の連続紙9を調整機構18に送るよう搬送する排出用の搬送ロール対19とを有している。
巻取ロール17は、図示しない駆動装置の駆動力を受けて巻き取り方向に回転駆動するように構成されている。調整機構18は、供給装置11における調整機構13とほぼ同様に、2つの搬送ロール18a,18bと昇降ロール18cと昇降ロール18cの上下の規定位置を検知する検知手段とで構成されている。搬送ロール対19は、供給装置11における搬送ロール対14とほぼ同様に構成されている。この搬送ロール対19についても、搬送ロール対14の場合と同様に実際には像形成装置2側に存在するよう配置される。
【0034】
像形成装置2は、外部から種々の手段を介して入力される画像情報に基づいて、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)及びブラック(K)の4色からなるトナーの一部又は全部を用いて構成されるトナー像を形成して連続紙9に転写する装置である。
実施の形態1における像形成装置2は、上記4色(Y,M,C,K)のいずれか1色のトナー像をそれぞれ専用に形成する4つの作像装置20Y,20M,20C,20Kと、各作像装置20(Y,M,C,K)で形成される各色のトナー像をそれぞれ保持して最終的に連続紙9に転写させる二次転写位置P2まで搬送する中間転写装置30等を備えている。
【0035】
このうち作像装置20(Y,M,C,K)はいずれも、所定の方向(矢印Bで示す方向)に回転駆動される感光ドラム21をそれぞれ備えている。また、作像装置20(Y,M,C,K)はいずれも、その各感光ドラム21の周囲に、感光ドラム21の周面を帯電させる帯電装置22と、感光ドラム21の帯電後の周面に画像情報に基づく光を露光して静電潜像を形成する露光装置23と、感光ドラム21の周面に形成された静電潜像を現像剤のトナーにより現像してトナー像を形成する現像装置24と、感光ドラム21の周面に在留するトナー等の不要物を除去して清掃する清掃装置26等を配置している。
現像装置24については、上記4色(Y,M,C,K)のいずれか1色のトナーを収容し、そのトナーにより対応する色の静電潜像を現像する4つの現像装置24Y,24M,24C,24Kとして構成されている。
【0036】
また、中間転写装置30は、4つの作像装置20(Y,M,C,K)の下方側になる位置に配置されている。
【0037】
実施の形態1における中間転写装置30は、各作像装置20(Y,M,C,K)における感光ドラム21の一次転写位置をそれぞれ通過しながら矢印Cで示す方向に回転する中間転写ベルト31と、中間転写ベルト31を回転自在に支持する複数の支持ロール32A〜32Eと、各作像装置20(Y,M,C,K)における感光ドラム21の一次転写位置に中間転写ベルト31の外表面を押し付けて各感光ドラム21上のトナー像を中間転写ベルト31の外表面に静電作用等によって一次転写させるロール形態等の一次転写装置33と、中間転写ベルト31上のトナー像を連続紙9に静電作用等によって二次転写させるロール形態等の二次転写装置35と、中間転写ベルト31の外表面に残留するトナー等の不要物を除去して清掃する清掃装置36等を備えている。
【0038】
支持ロール32Aは駆動ロール、支持ロール32Dは張力付与ロール、支持ロール32Eは二次転写バックアップロールとしてそれぞれ構成されている。二次転写装置35は、二次転写バックアップロール32Eに支持されている中間転写ベルト31に対して接触及び離間するよう変位可能に設けられている。これにより、二次転写装置35は、例えば、二次転写動作が行われる時期だけ中間転写ベルト31と接触する位置に移動し、それ以外の必要な時期に中間転写ベルト31から離間する位置に移動するようになっている。
一次転写位置は、各作像装置20の感光ドラム21と一次転写装置33とが対峙する位置(厳密には感光ドラム21と中間転写ベルト31が接触する位置)になる。また、二次転写位置P2は、中間転写装置30の中間転写ベルト31と二次転写装置35とが対峙して接触する位置になる。
【0039】
<定着システムの構成>
定着システム4は、図1図2等に示されるように、未定着像としてのトナー像が形成された連続紙9を通過させてトナー像の定着処理を行う定着装置40と、定着装置40よりも連続紙9の搬送方向A上流側の位置に配置されて連続紙9の表裏両面9a,9bを定着処理前に予め加熱する予備加熱装置7とを備えている。
この定着システム4は、像形成装置2(の二次転写位置P2)と収容装置16との間に配置される。また、定着システム4における定着装置40は、図1に示されるように、少なくとも加熱用回転体41と加圧用回転体42とを備えたものである。
【0040】
実施の形態1における定着装置40は、図2に示されるように、ベルト形態の加熱用回転体41と、ロール形態の加圧用回転体(加圧ロール)42を適用した構成になっている。ベルト形態の加熱用回転体41は、加熱部材としての無端状の加熱ベルト43と、加熱ベルト43の内周面に接触して支持するよう配置される、押圧部材としての定着ロール44、第1の支持ロール45、内部加熱ロール46、及び第2の支持ロール47と、加熱ベルト43のうち第1の支持ロール45と内部加熱ロール46の間における外周面を内周面側にむけて押し付けるように接触する外部加熱ロール48とで構成されている。
また、この定着装置40は、加熱用回転体41における加熱ベルト43が定着ロール44の外周面に巻き付けられた部位において加圧ロール42と圧接されている。これにより、その加熱ベルト43と加圧ロール42との圧接部が、連続紙9に形成された未定着のトナー像を加熱及び加圧して定着処理するための定着ニップ部FNとして構成されている。
【0041】
加熱ベルト43は、例えば、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂等からなるベルト基材と、そのベルト基材の外周面に積層されたシリコーンゴム等からなる弾性体層と、その弾性体層の表面に積載されたテトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)等からなる離型層とから構成されている。
【0042】
定着ロール44は、アルミニウム、ステンレス等の金属製の円筒状部材からなるものであり、図示しない回転駆動手段によって矢印で示す方向に回転駆動する。定着ロール44は、その内部にハロゲンランプ等の加熱源49Aが配置されており、その加熱源49Aにより定着ロール44の表面温度が所要の温度になるよう加熱される。
【0043】
内部加熱ロール46は、定着ロール44とほぼ同様に、アルミニウム、ステンレス等の金属製の円筒状部材からなるものである。内部加熱ロール46は、その内部にハロゲンランプ等の加熱源49Bが配置されており、その加熱源49Bにより内部加熱ロール46の表面温度が所要の温度になるよう加熱される。また、内部加熱ロール46は、加熱ベルト43の内側から外側に向けて弾性的に変位するよう図示しないスプリング等の弾性部材によって力が付加されており、加熱ベルト43に所要の張力を付与するようになっている。
【0044】
外部加熱ロール48は、定着ロール44とほぼ同様に、アルミニウム、ステンレス等の金属製の円筒状部材からなるものである。外部加熱ロール48は、その内部にハロゲンランプ等の加熱源49Cが配置されており、その加熱源49Cにより外部加熱ロール48の表面温度が所要の温度になるよう加熱される。この定着装置40では、加熱ベルト43をその内周面側から押し付けて外部加熱ロール48の外周面に確実に接触させる押付けロール482が配置されている。
【0045】
加熱ベルト43は、複数のロールの間に掛け渡されて循環するように移動して回転する間に、定着ロール44、外部加熱ロール48及び内部加熱ロール46によって内周面側及び外周面側からそれぞれ加熱されることにより、そのベルト外周面が所要の温度になるよう加熱される。
【0046】
加圧ロール42は、アルミニウム、ステンレス等の金属製の円筒状ロール基材42aと、そのロール基材42aの外表面に積層されたシリコーンゴム等からなる弾性体層42bと、その弾性体層42bの表面に積層されたPFA等からなる離型層42cとから構成されている。
【0047】
<予備加熱装置の構成>
予備加熱装置7は、図2図3に示される加熱装置5Aで構成されている。
この予備加熱装置7を構成する加熱装置5Aは、図3等に示されるように、連続紙9の片面(実施の形態1では裏面9b)を加熱するよう電磁誘導で発熱する平板状の第1発熱部材51Aと、第1発熱部材51Aとの間に連続紙9を通過させる隙間54をあけるよう対向して配置され、連続紙9の他面(実施の形態1では表面9a)を加熱するよう電磁誘導で発熱する平板状の第2発熱部材52Aと、第1発熱部材51A及び第2発熱部材52Aを共に発熱させる交番磁束を生成する平板状の1つの磁束生成手段53Aと、を備えている。
図3等における符号55は交番磁束の漏れを遮蔽して防止するシールド覆い部材である。実施の形態1におけるシールド覆い部材55は、連続紙9が導入される導入口55aと連続紙9が搬出される搬出口55bとを存在させように設置されている。
【0048】
第1発熱部材51Aは、全体が平板状の形状からなる部材であり、そのうち第2発熱部材52Aと向き合う部分51Aaが平面状の形状で構成されている。第1発熱部材51Aとしては、少なくとも電磁誘導により発熱する導電層を有する構造のものであればよい。実施の形態1における第1発熱部材51Aは、金、銀、銅、アルミニウム、亜鉛、錫、鉛、ビスマス、ベリリウム、アンチモン等の金属又はこれらの合金等の導電性材料からなる板状の部材が適用されている。この第1発熱部材51Aは、連続紙9のトナー像が形成されていない裏面9bを接触させた状態で通過させることにより、その裏面9bを加熱するように機能する。
【0049】
第2発熱部材52Aは、全体が平板状の形状からなる部材であり、そのうち第1発熱部材51Aと向き合う部分52Aaが平面状の形状で構成されている。第2発熱部材52Aは、その第1発熱部材51Aと向き合う部分52Aaが、搬送される連続紙9の表面9aに形成されている未定着のトナー像と接触しない程度の所要の間隔E(例えば1〜50mm)を第1発熱部材51Aにおける向き合う部分51Aaに対してあけた状態で配置される。この配置により、第1発熱部材51Aと第2発熱部材52Aとの間に上記隙間54が形成される。第2発熱部材52Aとしては、少なくとも電磁誘導により発熱する導電層を有する構造のものであればよい。実施の形態1における第2発熱部材52Aは、金、銀、銅、アルミニウム、亜鉛、錫、鉛、ビスマス、ベリリウム、アンチモン等の金属又はこれらの合金等の導電性材料からなる板状の部材が適用されている。この第2発熱部材52Aは、連続紙9のトナー像が形成されている表面9aを接触させない状態(非接触の状態)で通過させることにより、その表面9aを加熱するように機能する。
【0050】
第1発熱部材51Aと第2発熱部材52Aはいずれも、その連続紙9の搬送方向Aと直交する方向(幅方向)における幅寸法が、連続紙9の搬送時における最大の幅寸法よりも長い寸法に設定されている。また、第1発熱部材51Aと第2発熱部材52Aはいずれも、その連続紙9の搬送方向Aにおける長さ寸法が所要の寸法に設定されている。実施の形態1では、この長さ寸法について、第2発熱部材52Aの長さ寸法L2を第1発熱部材51Aの長さ寸法より大きい値に設定している。これは、第1発熱部材51Aから電磁誘導で発生する熱を第1発熱部材51Aよりも長さ方向において広い第2発熱部材52Aによって反射しやすくし、連続紙9をより効率的に加熱するためである。長さ寸法L2は、例えば、100〜1000mmの範囲内に設定される。さらに、第1発熱部材51Aと第2発熱部材52Aの各厚さについては、例えば交番磁束が通過できるようにする観点からすると、例えば1〜50μmの範囲内で設定することが望ましい。
【0051】
磁束生成手段53Aは、第1発熱部材51Aを挟んで第2発熱部材52Aと反対側の位置に配置されている。この磁束生成手段53Aは、第1発熱部材51Aと向き合う状態で設けられる支持体531Aと、支持体531Aに支持されるとともに支持体531Aを挟んで第1発熱部材51A及び第2発熱部材52Aと向き合う状態で設けられて交番磁束を生成する励磁コイル532と、励磁コイル532で生成された交番磁束の磁路を形成する磁心533Aとを備えている。
【0052】
支持体531Aは、第1発熱部材51A(第2発熱部材52Aを含む)全体と向き合うようその平面寸法とほぼ同じ平面寸法からなる板状の部材である。また、支持体531Aは、第1発熱部材51Aと向き合う側の表面がほぼ平面で形成されており、その反対側の面に励磁コイル532を取り付ける凹部が形成されている。この支持体531Aは、例えば、耐熱性樹脂、耐熱性樹脂にガラス繊維を混合した樹脂、耐熱性ガラス等の非磁性材料等を用いて作製される。
【0053】
励磁コイル532は、複数本の銅線材を束ねた結束線を、連続紙9の幅方向が長手方向になるような長円形状、楕円形状、長方形状等の全体形状をなすとともに中央部に空間が存在する形状をなすよう閉ループ状に巻いたものである。この励磁コイル532は、その巻いた形状で支持体531Aの凹部に固定して支持される。また、励磁コイル532は、交番磁束を生成させるための所要の周波数からなる交流電流が供給される励磁回路534と接続されている。
【0054】
磁心533Aは、第1発熱部材51A(第2発熱部材52Aを含む)全体の平面寸法とほぼ同じ平面寸法からなる部材であり、第1発熱部材51A(第2発熱部材52Aを含む)と平行した状態で配置される。ただし、磁心533Aは、連続紙9の幅方向に隙間なく連続して存在する部材(例えば全域が1枚の板部材で構成されるもの)よりも、例えば長方形の小片部材を連続紙9の幅方向に複数個、間隔をあけて配置した構成のものが好ましい。後者の場合は、第1発熱部材51A(第2発熱部材52Aを含む)を電磁誘導させた際に、前者の場合に比べて温度むらの少ない状態で発熱させることができ、より均一な加熱が可能になる。この磁心533Aは、例えば、ソフトフェライト、パーロマイ等で構成される強磁性体等を用いて製作される。
【0055】
この磁束生成手段53Aは、第1発熱部材51Aと第2発熱部材52Aを共に発熱させる交番磁束を生成させることができるよう構成されている。
具体的には、磁束生成手段53Aは、図4に例示するように、励磁回路から供給される交流電流により励磁コイル532から発生する磁力線からなる交番磁束(点線)Hが、磁心533Aの内部に誘導された後、その磁心533Aを通過して第1発熱部材51Aと第2発熱部材52Aの双方にむかって通過し、その第1発熱部材51Aと第2発熱部材52Aの双方から再び磁心533Aの内部に戻るような閉じた磁路(通路)を形成するよう構成されている。
予備加熱装置7(5A)では、特に磁束生成手段53Aにおける励磁コイル532から生成される交番磁束Hが第1発熱部材51Aと第2発熱部材52Aの双方に向かうようにするため、例えば、以下の構成を採用している。1つは、第1発熱部材51Aと第2発熱部材52Aの厚さを交番磁束が貫通しやすくなる1〜50μmの範囲内で設定している。また、第1発熱部材51Aと第2発熱部材52Aは、励磁コイル532からの離間距離が例えば100mm以内におさまる位置にそれぞれ配置している。
【0056】
そして、この予備加熱装置7(5A)では、磁束生成手段53Aで生成した交番磁束Hが第1発熱部材51Aと第2発熱部材52Aの双方を通過することにより第1発熱部材51A及び第2発熱部材52Aが電磁誘導によりそれぞれ発熱する。
この際、連続紙9のトナー像が形成されてない裏面9bを加熱する第1発熱部材51Aの発熱温度が、連続紙9のトナー像が形成されている表面9aを加熱する第2発熱部材52Aの発熱温度よりも高く(例えば10〜50℃の温度だけ高く)なるよう設定されている。実施の形態1では、第1発熱部材51Aの発熱温度が130〜200℃になり、第2発熱部材52Aの発熱温度が120〜190℃になるよう設定されている。この発熱温度の大小は、例えば、第1発熱部材51Aと第2発熱部材52Aの材料(固有抵抗、被透磁率等が異なる材料)、厚さ、励磁コイル532との離間距離等の条件を適宜選択することで調整することができる。
ちなみに、この予備加熱装置7(5A)における加熱時に励磁回路534から励磁コイル532に供給する交流電流は、3〜8kW程度の電力で足りる。例えば、この予備加熱装置7(5A)による連続紙9の表裏面9a,9bの予備加熱を電気式ヒータ等の公知の加熱装置を用いて同レベルで実施する場合、その加熱装置に供給する交流電流は8kWを超える電力が必要になる。
また、この予備加熱装置7(5A)では、磁束生成手段53Aにおいて交番磁束Hの生成を停止させると、第1発熱部材51A及び第2発熱部材52Aが電磁誘導による発熱が終了して急速に自然冷却される。
【0057】
なお、実施の形態1に係る定着システム4においては、図2等に示されるように、像形成装置2の二次転写位置P2から送り出される連続紙9を、その裏面9bが予備加熱装置7における第1発熱部材51Aに接触する状態で通過させた後、その表面9aが予備加熱装置7の下流側に配置された定着装置40における加圧ロール42側に接触する状態で定着ニップFNに導入して通過させるようになっている。
【0058】
<画像形成の動作(予備加熱及び定着の動作を含む)>
次に、定着システム4を備えた画像形成装置1による画像形成の動作について説明する。ここでは、上記4色(Y,M,C,K)のトナーを組み合わせて構成される多色(フルカラー)の画像を形成する場合について説明する。
【0059】
まず、像形成装置2において未定着像としてのトナー像の形成とそのトナー像の連続紙9への転写が行われる。
【0060】
各作像装置20(Y,M,C,K)では、図1に示されるように、回転する各感光ドラム21の周面が帯電装置22により所要の極性及び電位になるよう帯電された後、その帯電された各感光ドラム21の周面に対して露光装置23により(多色の)画像情報から得た各色成分情報に基づく露光が行われて各色成分の静電潜像がそれぞれ形成され、しかる後、その各静電潜像が各現像装置24(Y,M,C,K)により対応する色の帯電されたトナーで現像されて4色(Y,M,C,K)のトナー像としてそれぞれ顕像化される。
続いて、各作像装置20(Y,M,C,K)の感光ドラム21上に形成された各色のトナー像が、中間転写装置30の回転する中間転写ベルト31上に一次転写装置33の転写作用を受けて順次一次転写された後、二次転写位置P2まで搬送される。
最後に、中間転写ベルト31上に一次転写されたトナー像が、供給装置11から二次転写位置P2に搬送される連続紙9の片面における所要の領域に、二次転写装置35の転写作用を受けて一括して二次転写される。
【0061】
供給装置11では、像形成装置2におけるトナー像形成動作と連動して、連続紙9を繰り出して搬送ロール対14により二次転写位置P2にむけて搬送する。この際、供給装置11では、前述したように、連続紙9が搬送ロール対14により搬送されると、調整機構13における昇降ロール13cが下方の規定位置から上昇し始め、最終的に上方の規定位置に達するまで上昇し、しかる後、繰出ロール12が回転駆動して連続紙9を繰り出す。
【0062】
続いて、片面(表面9a)にトナー像が形成された連続紙9は、二次転写位置P2から送り出されて定着システム4にむけて搬送され、定着システム4において予備加熱とトナー像の定着が行われる。
【0063】
定着システム4では、図1図2に示されるように、連続紙9が予備加熱装置7及び定着装置40をこの順で通過するよう搬送される。
【0064】
はじめに、連続紙9は、図3図4に示されるように、そのトナー像が形成されている表面9aを上方にむけた状態で予備加熱装置7(5A)に送り込まれて、その表裏面が加熱された後、その表面9aを上方にむけた状態で予備加熱装置7から送り出される。
【0065】
この際、予備加熱装置7(5A)は、前述したように、磁束生成手段53Aで生成させる交番磁束Hを第1発熱部材51Aと第2発熱部材52Aの双方に通過させて、その第1発熱部材51Aと第2発熱部材52Aを電磁誘導によりそれぞれ発熱させる。
そして、予備加熱装置7(5A)では、連続紙9が、シールド覆い部材55の導入口55aから第1発熱部材51Aと第2発熱部材52Aの間の隙間54にむけて導入されると、その裏面9bが第1発熱部材51Aに接触した状態で通過する一方で、その表面9aが第2発熱部材52Aと非接触の状態で通過する。これにより、連続紙9は、その裏面9bが第1発熱部材51Aにより接触した状態で加熱され、その表面9aが第2発熱部材52Aにより非接触の状態で加熱されて、その表裏面が同時に加熱される。ただし、この予備加熱装置7(5A)では、連続紙9の裏面9bが表面9aよりも高温で加熱される。
予備加熱装置7(5A)は、この加熱後の連続紙9を、シールド覆い部材55の排出口55bを通過させて送り出す。
【0066】
続いて、予備加熱装置7で表裏両面が予備加熱された連続紙9は、図2に示されるように、そのトナー像が形成されている表面9aを上方にむけた状態で定着装置40(の定着ニップ部FN)に送り込まれてトナー像の定着処理がなされた後、定着装置40から送り出される。
【0067】
この際、定着装置40では、連続紙9が、その表面9aを加熱用回転体41の加熱ベルト43に接触させる状態で定着ニップ部FNに導入されて通過させられる。これにより、連続紙9上の未定着のトナー像が定着ニップ部FNにおいて加熱及び加圧による定着処理を受けて定着される。このときの定着ニップ部FNでのトナー像の定着処理は、連続紙9がその表裏両面から予備加熱装置7において事前に加熱されているため、トナー像も加熱されて溶融し始めている状態で定着ニップ部FNにおける正式な定着処理を受けることになり、予備加熱されていない場合に比べてより迅速で確実に行われる。
【0068】
最後に、定着システム4で未定着のトナー像が定着された後の連続紙9は、搬送ロール対19により収容装置16にむけて搬送される。
この際、収容装置16では、連続紙9が搬送ロール対19により搬送されると、調整機構18における昇降ロール18cが上方の規定位置から下降し始め、最終的に下方の規定位置に達するまで下降する。しかる後、巻取ロール17が回転駆動して連続紙9を巻き取る。これにより、連続紙9が収容される。
【0069】
以上の動作を繰り返すことにより、連続紙9の片面(表面9a)に、4色のトナーを組み合わせて構成されたフルカラー画像が連続して形成される。
【0070】
この画像形成装置1は、定着システム4が連続紙9の表裏両面を定着処理前に予め加熱する予備加熱装置7(5A)を備えているものであるが、その予備加熱装置7が2つの発熱部材51A,52Aを1つの磁束生成手段53Aで電磁誘導により発熱させる構成を採用していることから(図4等を参照)、励磁回路534から励磁コイル532に供給する交流電流も前述したように3〜8kW程度の電力で足り、電力の消費量を抑制しつつ、連続紙9の表裏両面を簡易な構成で加熱することができる。
【0071】
また、定着システム4では、トナー像が形成された連続紙9が定着装置40における定着ニップ部FNで加熱及び加圧による定着処理を行う前に予備加熱装置7(5A)で表裏両面が予備加熱されるので、連続紙9として通気度が相対的に低い合成樹脂を主とした材料で構成される連続紙9を適用した場合であっても、光沢むらのない良好な定着を行うことができる。
【0072】
ちなみに、上記通気度が相対的に低い材料で構成される連続紙9について予備加熱せずに定着装置40による定着処理のみを行った場合は、以下の不具合が発生することが知られている。
つまり、かかる連続紙9が定着装置40の定着ニップ部FNに導入されて通過する際、その連続紙9上の未定着のトナー像における隙間に存在する空気がトナー像の後端領域側に押しやられて集積し、その定着ニップ部FNから排出されたときに集積された空気が開放されて噴出し、この結果、定着後のトナー像の後端領域における表層部分が空気の噴出に起因した微細な凹凸状態になるという画質不良、所謂後端ブリスタが発生する。
しかし、この画質不良を解決するために、その定着装置40による定着処理前に連続紙9のトナー像が形成されていない裏面9bのみを加圧しない状態で予備加熱した場合には、その後端ブリスタの発生を抑制することが期待できるが、その裏面のみの予備加熱において連続紙の表面9aにあるトナー像の表層部分まで均一に加熱溶融されることがなく、その後で定着装置40による定着処理を行っても微細な凹凸状態が残ることがあって光沢むらになることがある。
この点、実施の形態1に係る定着システム4では、後端ブリスタの発生を抑制したうえで、光沢むらのない良好な定着を行うことができる。
【0073】
さらに、定着システム4における予備加熱装置7(5A)は、磁束生成手段53Aの配置場所が1箇所で済み、磁束生成手段53Aを2箇所に配置する場合に比べて、その装置全体の設置スペースをより小さいスペースにすることができる。
また、予備加熱装置7(5A)では、その予備加熱の工程において連続紙9の片面(表面9a)に形成された未定着トナー像が発熱部材51A,52Aに接触して乱されるというおそれがない。しかも、予備加熱装置7では、連続紙9の裏面9bが表面9aよりも高温で予備加熱されるので、その予備加熱後の定着装置40においてトナー像を連続紙9と接する下層側から溶融させて連続紙9に固定させて光沢むらが抑制された状態で定着することができる。
【0074】
また、予備加熱装置7(5A)では、連続紙9の搬送が停止したときには、磁束生成手段53Aの動作も停止されて第1発熱部材51A及び第2発熱部材52Aが電磁誘導による発熱の終了により急速に冷却されるので、その停止した連続紙9が第1発熱部材51Aと第2発熱部材52Aの間で過剰に加熱されるおそれがない。
【0075】
[実施の形態2]
図5及び図6は、実施の形態2に係る定着システム等を示している。図5はその定着システムを示し、図6はその定着システムが備える予備加熱装置を示している。
【0076】
実施の形態2に係る定着システム4は、図5に示されるように、予備加熱装置7として、実施の形態1に係る定着システム4における加熱装置5Aで構成される予備加熱装置7に代えて、その加熱装置5Aに対して一部異なる加熱装置5Bで構成される予備加熱装置7を適用したものである。なお、定着装置40は、実施の形態1に係る定着システム4における定着装置40と同じものである。
また、予備加熱装置7を構成する加熱装置5Bは、搬送装置56を追加して変更した以外は実施の形態1に係る加熱装置5Aと同じ構成からなるものである。
【0077】
加熱装置5Bは、図6等に示されるように、第1発熱部材51Aが、連続紙9を載せて搬送する搬送ベルト561を有する搬送装置56における搬送ベルト561の内側の空間内に配置されている。搬送装置56は、連続紙9をシールド覆い部材55の導入口55aから載せてその排出口55bまで搬送する搬送ベルト561と、搬送ベルト561を第2発熱部材52Aと磁束生成手段53Aに向き合うように通過して回転するよう支持する2つの支持ロール562,563とで構成されている。第1発熱部材51Aは、その第2発熱部材52Aと向き合う部分51Aaが、搬送ベルト561の第2発熱部材52Aと向き合う領域の内周面に接近または接触した状態になるよう配置される。
【0078】
搬送ベルト561は、連続紙9の幅寸法以上の幅寸法からなる無端状のベルト部材である。この搬送ベルト561は、磁束生成手段53Aで生成される交番磁束Hを通過させつつ、第1発熱部材51Aの発熱時の熱が連続紙9に伝わるよう熱伝導に優れたものが好ましく、例えば、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂等からなる樹脂製ベルトや、非磁性ステンレススチール、鉄(Fe),ニッケル(Ni),コバルト(Co)等の金属又はこれらの合金等からなる金属製ベルトが適用される。また、2つの支持ロール562,563は、導入口55aと排出口55bにおいて軸方向が連続紙9の搬送方向Aと直交する方向と平行する方向になるよう回転自在に配置されている。また、その一方の支持ロール563は、図示しない回転駆動装置から回転動力を受けて搬送ベルト561をその第2発熱部材52Aと向き合う領域で連続紙9の搬送方向Aに沿って移動するよう回転させる駆動ロールとして構成されている。
【0079】
また、加熱装置5Bでは、第2発熱部材52Aについて、その第1発熱部材51Aと向き合う部分52Aaが第1発熱部材51Aにおける向き合う部分51Aaに対して所要の間隔Eをあけた状態になるよう配置している。実際には、第1発熱部材51Aにおける向き合う部分51Aaの上に搬送ベルト561が存在することになる。この配置により、加熱装置5Bにおいても、第1発熱部材51A(搬送ベルト561)と第2発熱部材52Aとの間に隙間54が形成される。
【0080】
さらに、加熱装置5Bでは、搬送装置56が追加されて配置されるため、磁束生成手段53Aと第1発熱部材51Aとの距離が実施の形態1に係る加熱装置5Aの場合よりも広くなる。磁束生成手段53Aは、生成する交番磁束Hを第1発熱部材51Aと第2発熱部材52Aの双方に確実に到達させる観点から、磁束生成手段53Aにおける励磁回路534から励磁コイル532に供給する交流電流の電力を例えば1〜2kW程度増加させたり、第1発熱部材51Aの材質、厚さ等の条件を適宜変更している。
【0081】
そして、この加熱装置5Bで構成される予備加熱装置7では、図7に例示するように、磁束生成手段53Aで生成した交番磁束Hが第1発熱部材51Aと第2発熱部材52Aの双方を通過することにより、その第1発熱部材51A及び第2発熱部材52Aが電磁誘導によりそれぞれ発熱する。この際、交番磁束Hは搬送装置56の搬送ベルト561を通過する。
【0082】
<定着システムの動作>
この定着システム4では、図5に示されるように、像形成装置2の二次転写位置P2から送り出された連続紙9が、予備加熱装置7及び定着装置40をこの順で通過するよう搬送される。
【0083】
はじめに、連続紙9は、図6に示されるように、そのトナー像が形成されている表面9aを上方にむけた状態で予備加熱装置7(5B)に送り込まれて、その表裏面が加熱された後、その表面9aを上方にむけた状態で予備加熱装置7から送り出される。
この際、予備加熱装置7(5B)は、前述したように、磁束生成手段53Aで生成させる交番磁束Hを第1発熱部材51Aと第2発熱部材52Aの双方を通過させて、その双方を電磁誘導によりそれぞれ発熱させる。
【0084】
そして、この予備加熱装置7(5B)では、連続紙9が、シールド覆い部材55の導入口55aから搬送装置56の搬送ベルト561に載せられて搬送された状態で、第1発熱部材51Aと第2発熱部材52Aの間の隙間54に導入される。このとき、その裏面9bが搬送ベルト561を介して第1発熱部材51Aに接触(接近)した状態で通過する一方で、その表面9aが第2発熱部材52Aと非接触の状態で通過する。これにより、連続紙9は、その裏面9bが搬送ベルト561を介して第1発熱部材51Aにより接触した状態で加熱され、その表面9aが第2発熱部材52Aにより非接触の状態で加熱されて、その表裏面が同時に加熱される。この予備加熱装置7(5B)においても、連続紙9の裏面9bが表面9aよりも高温で加熱される。
この予備加熱された後の連続紙9は、搬送装置56の搬送ベルト561に載せられて搬送された状態で、シールド覆い部材55の排出口55bから送り出される。
【0085】
続いて、予備加熱装置7で表裏両面が予備加熱された連続紙9は、図5に示されるように、そのトナー像が形成されている表面9aを上方にむけた状態で定着装置40(の定着ニップ部FN)に送り込まれてトナー像の定着処理がなされた後、定着装置40から送り出される。このときの定着装置40による定着の動作は、実施の形態1における定着装置40による定着動作と同様に行われる。
【0086】
この定着システム4においても、その予備加熱装置7(5B)により、実施の形態1に係る定着システム4の場合とほぼ同様に、電力の消費量を抑制しつつ、連続紙9の表裏両面を簡易な構成で加熱することができる。
【0087】
また、この定着システム4では、予備加熱装置7(5B)に搬送装置56が配置されているので、第1発熱部材51Aを搬送装置56における搬送ベルト561の内側の空間内に配置していない場合に比べて、予備加熱装置7(5B)において連続紙9を安定して搬送しつつ連続紙9の表裏両面を加熱することができる。
【0088】
<実施の形態2の変形例>
図8は、実施の形態2に係る予備加熱装置7の他の構成例を示すものである。
この予備加熱装置7は、図8(a)に示されるように、実施の形態2に係る定着システム4における加熱装置5Bで構成される予備加熱装置7に代えて、その加熱装置5Bに対して一部異なる加熱装置5B´で構成される予備加熱装置7を適用したものである。
【0089】
加熱装置5B´は、実施の形態2における搬送装置56における搬送ベルト561に代えて、第1発熱部材51Aを1つの層として配置した搬送ベルト564(又は第1発熱部材51Aとして構成した搬送ベルト564)を適用して変更した以外は実施の形態2に係る加熱装置5Bと同じ構成からなるものである。
【0090】
搬送ベルト564は、図8(b)に示されるように、例えば、基材層565の上に発熱層566、弾性層567及び表面離型層568をこの順に積層した構造のベルト部材が適用される。このうち基材層565は、合成樹脂等の材料で製作されるベルト状の部材であり、厚さが60〜200μm程度の層である。また、発熱層566は、第1発熱部材51Aに相当する層であり、例えば金、銀、アルミニウム、銅、亜鉛、錫、鉛、ビスマス、ベリリウム、アンチモン等の金属やこれらの合金等を用いた厚さが2〜20μm程度の層である。さらに、弾性層567は、シリコーンゴム等の材料からなる厚さが100〜600μm程度の層であり、また表面離型層568は、PFA等の材料からなる厚さが1〜50μm程度の層である。この搬送ベルト564は、基材層565が内周面となり、表面離型層568が外周面となるよう構成されている。
【0091】
この加熱装置5B´で構成される予備加熱装置7は、図9に示されるように、磁束生成手段53Aで生成させる交番磁束Hを搬送ベルト564内の第1発熱部材51Aと第2発熱部材52Aの双方を通過させて、その双方を電磁誘導によりそれぞれ発熱させる。
【0092】
そして、この予備加熱装置7(5B´)では、連続紙9が、シールド覆い部材55の導入口55aから搬送装置56の搬送ベルト564に載せられて搬送された状態で、搬送ベルト564(における発熱層566の第1発熱部材51A)と第2発熱部材52Aとの間の隙間54に導入される。このとき、その裏面9bが発熱層566として配置される第1発熱部材51Aを有する搬送ベルト564に接触(接近)した状態で通過する一方で、その表面9aが第2発熱部材52Aと非接触の状態で通過する。これにより、連続紙9は、その裏面9bが発熱層566の第1発熱部材51Aで発熱する搬送ベルト564に接触した状態で加熱され、その表面9aが第2発熱部材52Aにより非接触の状態で加熱されて、その表裏面が同時に加熱される。この予備加熱装置7(5B´)においても、連続紙9の裏面9bがその表面9aよりも高温で加熱される。
この予備加熱された後の連続紙9は、搬送装置56の搬送ベルト564に載せられて搬送された状態で、シールド覆い部材55の排出口55bから送り出される。
【0093】
この定着システム4においても、その予備加熱装置7(5B´)により、実施の形態1に係る定着システム4の場合とほぼ同様に、電力の消費量を抑制しつつ、連続紙9の表裏両面を簡易な構成で加熱することができる。
また、この定着システム4では、予備加熱装置7(5B´)における搬送装置56の搬送ベルト564に第1発熱部材51Aが層として配置されているので、第1発熱部材51Aを搬送装置56における搬送ベルト564を構成する層として配置していない場合に比べて、予備加熱装置7(5B´)において連続紙9を安定して搬送しつつ連続紙9の表裏両面を効率よく加熱することができる。
【0094】
[実施の形態3]
図10及び図11は、実施の形態3に係る定着システム等を示している。図10はその定着システムを示し、図11はその定着システムが備える予備加熱装置を示している。
【0095】
実施の形態3に係る定着システム4は、図10に示されるように、予備加熱装置7として、実施の形態1に係る定着システム4における加熱装置5Aで構成される予備加熱装置7に代えて、その加熱装置5Aに対して一部異なる加熱装置5Cで構成される予備加熱装置7を適用したものである。なお、定着装置40は、実施の形態1に係る定着システム4における定着装置40と同じものである。
また、予備加熱装置7を構成する加熱装置5Cは、形状が一部異なる第1発熱部材51B、第2発熱部材51B及び磁束生成手段53B等を適用して変更した以外は実施の形態1に係る加熱装置5Aと同じ構成からなるものである。
【0096】
加熱装置5Cは、図11等に示されるように、第1発熱部材51B及び第2発熱部材52Bとして、その連続紙9の搬送方向Aにおける中央部51Bd,52Bdを導入側端部51Bb,52Bbと排出側端部51Bc,52Bcよりも上方側に突出させるように湾曲させた形状からなる部材を適用している。これにより、第1発熱部材51Bの第2発熱部材52Bと向き合う部分51Baと、第2発熱部材52Bの第1発熱部材51Bと向き合う部分52Baとはいずれも、曲面状の形状になっている。なお、第1発熱部材51B及び第2発熱部材52Bは、少なくとも電磁誘導で発熱する部分が湾曲した形状になっていればよい。
【0097】
また、加熱装置5Cは、第1発熱部材51B及び第2発熱部材52Bの湾曲した形状に対応させて、磁束生成手段53Bも同じ方向に同じ割合で湾曲した形態になっている。つまり、その支持体531Bと磁心533Bが連続紙9の搬送方向Aにおける中央部が上方側に突出して湾曲した形状で形成されている。この他、シールド覆い部材55のうち上部のシールド覆い部材55Bも、その連続紙9の搬送方向Aにおける中央部が上方側に突出して湾曲した形状で形成されている。
【0098】
そして、加熱装置5Cで構成される予備加熱装置7では、図12に例示するように、磁束生成手段53Bで生成した交番磁束Hが第1発熱部材51Bと第2発熱部材52Bの双方を通過することにより、湾曲状の第1発熱部材51B及び第2発熱部材52Bが電磁誘導によりそれぞれ発熱する。
また、予備加熱装置7では、図10に示されるように、加熱装置5Cを、その第1発熱部材51Bの中央部51Bdが像形成装置2の二次転写位置P2と定着装置40の定着ニップ部FNとを結ぶ直線よりも上方側にずれた位置に存在するように配置し、連続紙9の裏面9bを湾曲した形状の第1発熱部材51Bの向き合う部分51Baに押し当てるような状態で通過させて搬送するように構成している。
【0099】
<定着システムの動作>
この定着システム4では、図10に示されるように、像形成装置2の二次転写位置P2から送り出された連続紙9が、予備加熱装置7及び定着装置40をこの順で通過するよう搬送される。
【0100】
はじめに、連続紙9は、図11に示されるように、そのトナー像が形成されている表面9aを上方にむけた状態で予備加熱装置7(5C)に送り込まれて、その表裏面が加熱された後、その表面9aを上方にむけた状態で予備加熱装置7から送り出される。
この際、予備加熱装置7(5C)は、前述したように、磁束生成手段53Bで生成させる交番磁束Hを湾曲状の第1発熱部材51Bと第2発熱部材52Bの双方を通過させて、その双方を電磁誘導によりそれぞれ発熱させる。
【0101】
この予備加熱装置7(5C)では、連続紙9が、シールド覆い部材55の導入口55aを通して、湾曲状の第1発熱部材51Bと第2発熱部材52Bの間の湾曲するように曲がった隙間54に導入される。このとき、その裏面9bが第1発熱部材51Bの向き合う部分51Baに接触した状態で通過する一方で、その表面9aが第2発熱部材52Bと非接触の状態で通過する。これにより、連続紙9は、その裏面9bが第1発熱部材51Bにより接触した状態で加熱され、その表面9aが第2発熱部材52Bにより非接触の状態で加熱されて、その表裏面が同時に加熱される。この予備加熱装置7(5C)においても、連続紙9の裏面9bがその表面9aよりも高温で加熱される。
この加熱された後の連続紙9は、シールド覆い部材55の排出口55bを通して送り出される。
【0102】
続いて、予備加熱装置7で表裏両面が予備加熱された連続紙9は、図10に示されるように、そのトナー像が形成されている表面9aを上方にむけた状態で定着装置40(の定着ニップ部FN)に送り込まれてトナー像の定着処理がなされた後、定着装置40から送り出される。このときの定着装置40による定着の動作は、実施の形態1における定着装置40による定着動作と同様に行われる。
【0103】
この定着システム4においても、その予備加熱装置7(5C)により、実施の形態1に係る定着システム4の場合とほぼ同様に、電力の消費量を抑制しつつ、連続紙9の表裏両面を簡易な構成で加熱することができる。
【0104】
また、この定着システム4では、特に予備加熱装置7(5C)における第1発熱部材51B、第2発熱部材52B等が湾曲した形状で構成されているので、連続紙9の裏面9bを湾曲状の第1発熱部材51Bの向き合う部分51Baに押し当てて密着させた状態で搬送することができ、これにより、予備加熱装置7(5C)において特に連続紙9の裏面9bを均一に加熱することができる。
【0105】
[実施の形態4]
図13から図15は、実施の形態4に係る画像形成装置等を示している。図13はその画像形成装置の全体の概要を示し、図14はその画像形成装置が備える定着システムを示し、図15はその画像形成装置又は定着システムが備える予備加熱装置を示している。
【0106】
実施の形態4に係る画像形成装置1Bは、図13に概略的に示されるように、供給装置11と像形成装置2と定着システム4Bと収容装置16を備えたものであり、実施の形態1に係る画像形成装置1と比べた場合、定着システム4Bが実施の形態1に係る定着システム4と一部異なる構成になっているものの、それ以外の供給装置11、像形成装置2及び収容装置16については同じ構成になっている。
【0107】
定着システム4Bは、図13図14等に示されるように、定着装置40と、予備加熱装置7Bとを備えている。このうち定着装置40は、実施の形態1に係る定着システム4における定着装置40(図2)と同じ構成からなるものである。
【0108】
<予備加熱装置の構成>
予備加熱装置7Bは、図14図15等に示されるように、加熱装置5Dで構成されている。
この予備加熱装置7Bを構成する加熱装置5Dは、図14等に示されるように、連続紙9の片面(実施の形態4では裏面9b)を加熱するよう電磁誘導で発熱する中空ロール状の第1発熱部材51Cと、第1発熱部材51Cとの間に連続紙9を通過させる隙間54をあけるよう対向して配置され、連続紙9の他面(実施の形態4では表面9a)を加熱するよう電磁誘導で発熱する曲板状の第2発熱部材52Cと、第1発熱部材51C及び第2発熱部材52Cを共に発熱させる交番磁束を生成する曲板状の1つの磁束生成手段53Cとを備えている。
また、予備加熱装置7Bは、この加熱装置5Dを適用することに加えて、加熱装置5Dから送り出される連続紙9を定着装置40(の定着ニップ部FN)に向けて搬送するよう搬送先を変更して案内する案内ロール57を設けている。
【0109】
中空ロール状の第1発熱部材51Cは、図15等に示されるように、中空のロール基材512の外周面に、金、銀、銅、アルミニウム、亜鉛、錫、鉛、ビスマス、ベリリウム、アンチモン等の金属又はこれらの合金等の導電性材料からなる導電層513を形成したものである。この中空ロール状の第1発熱部材51Cは、その直径(外径)が50〜300mm程度に設定されるものであり、搬送される連続紙9を巻き付けることにより自在に従動回転するよう設けられている。
【0110】
曲板状の第2発熱部材52Cは、中空ロール状の第1発熱部材51Cの外周面に対応させた半円弧状の部材である。この第2発熱部材52Cは、実施の形態1における第2発熱部材52Aと同様の導電性材料からなる半円弧状の基材522と、その基材522の内側曲面に形成した反射層523とで構成されている。反射層523は、耐熱性を有し、交番磁束が貫通するがその交番磁束で電磁誘導による発熱が発生しないかその発熱がしにくい材料を用いて形成されるものであり、例えば、非磁性ステンレススチールや、鉄、ニッケル、コバルト等の金属又はこれらの合金等の材料で形成される。また、第2発熱部材52Cについて、中空ロール状の第1発熱部材51Cの外周面と向き合う部分52Ca(反射層523)が第1発熱部材51Cの向き合う部分でもある外周面に対して所要の間隔Eをあけた状態で配置している。この配置により、加熱装置5Cにおいても、第1発熱部材51Cと第2発熱部材52Cとの間に円弧状に曲がったかたちの隙間54が形成される。
【0111】
曲板状の磁束生成手段53Cは、第1発熱部材51C及び第2発熱部材52Cの円弧状の形態に対応させて、同じ方向に同じ割合の円弧をなすよう曲がった形態になっている。つまり、その支持体531Cと磁心533Cが連続紙9の搬送方向Aにおける中央部が外側に突出して湾曲した形状で形成されている。この他、シールド覆い部材55は、磁束生成手段53Cと第2発熱部材52Cを少なくとも外側から覆うように多段に折り曲げた形状で形成されている。
【0112】
案内ロール57は、中空のロール基材の内部にハロゲンヒータ等からなる加熱源572を備えた加熱ロールとして構成されている。また、この案内ロール57は、加熱装置5Dにおける中空ロール状の第1発熱部材51Cの下方側に所定の間隔をあけて配置され、回転自在に設けられている。案内ロール57は、加熱装置5Dから送り出される予備加熱後の連続紙9が冷却しないような温度(例えば、第2発熱部材52Cの発熱温度と同じ加熱温度)で加熱する。
【0113】
そして、この加熱装置5Dで構成される予備加熱装置7Bでは、図16に例示するように、磁束生成手段53Cで生成した交番磁束Hが第1発熱部材51Cと第2発熱部材52Cの双方を通過することにより、中空ロール状の第1発熱部材51Cと半円弧状の第2発熱部材52Cとが電磁誘導によりそれぞれ発熱する。この際、交番磁束Hは、中空ロール状の第1発熱部材51Cのうち第2発熱部材52Cと向き合う領域側を通過する。
また、この予備加熱装置7Bでは、図14に示されるように、像形成装置2の二次転写位置P2から送り出される連続紙9の裏面9bを加熱装置5Dにおける中空ロール状の第1発熱部材51Cに巻き付けた後に、その表面9aを加熱兼案内ロール57に巻き付けてから定着装置40の定着ニップ部FNにむけて搬送するように構成している。
【0114】
<定着システムの動作>
この定着システム4Bでは、図14に示されるように、像形成装置2の二次転写位置P2から送り出された連続紙9が、予備加熱装置7B及び定着装置40をこの順で通過するよう搬送される。
【0115】
はじめに、連続紙9は、図15に示されるように、そのトナー像が形成されている表面9aを上方にむけた状態で予備加熱装置7B(5D)に送り込まれて、その表裏面が加熱された後、その表面9aを上方にむけた状態で予備加熱装置7Bから送り出される。
この際、予備加熱装置7B(5D)は、前述したように、磁束生成手段53Cで生成させる交番磁束Hを中空ロール状の第1発熱部材51Cと半円弧状の第2発熱部材52Cの双方を通過させて、その双方を電磁誘導によりそれぞれ発熱させる。
【0116】
この予備加熱装置7B(5D)では、連続紙9が中空ロール状の第1発熱部材51Cに巻き付けられた状態で搬送されることにより、第1発熱部材51Cと半円弧状の第2発熱部材52Cとの間の湾曲するように曲がった隙間54に導入される。このとき、その裏面9bが第1発熱部材51Cの外周面に接触した状態で通過する一方で、その表面9aが第2発熱部材52Cと非接触の状態で通過する。これにより、連続紙9は、その裏面9bが第1発熱部材51Cにより接触した状態で加熱され、その表面9aが第2発熱部材52Cにより非接触の状態で加熱されて、その表裏面が同時に加熱される。この予備加熱装置7B(5D)においても、連続紙9の裏面9bがその表面9aよりも高温で加熱される。
この加熱された後の連続紙9は、中空ロール状の第1発熱部材51Cから剥離されて送り出される。
【0117】
続いて、予備加熱装置7Bで表裏両面が予備加熱された連続紙9は、図14に示されるように、その表面9aが案内ロール57に巻き付いて加熱されながら通過した後、そのトナー像が形成されている表面9aを上方にむけた状態で定着装置40(の定着ニップ部FN)に送り込まれてトナー像の定着処理がなされ、最後に、定着装置40から送り出される。このときの定着装置40による定着の動作は、実施の形態1における定着装置40による定着動作と同様に行われる。
【0118】
この定着システム4Bにおいても、その予備加熱装置7B(5D)により、実施の形態1に係る定着システム4の場合とほぼ同様に、電力の消費量を抑制しつつ、連続紙9の表裏両面を簡易な構成で加熱することができる。
【0119】
また、この定着システム4Bでは、予備加熱装置7B(5D)における第1発熱部材51Cが中空ロール形状で構成されているので、その第1発熱部材51Cに巻き付けられて通過する側の連続紙9の裏面9bを安定して加熱することができる。また、この予備加熱装置7Bでは、第2発熱部材52Cに反射層523が設けられているので、中空ロール状の第1発熱部材51Cから発せられる熱の反射と第2発熱部材52C自体の発熱により、連続紙9の表面9a(厳密にはトナー像)を効率よく加熱することができる。
【0120】
さらに、この定着システム4Bでは、予備加熱装置7B(5D)と定着装置40との間に加熱兼案内ロール57を配置しているので、予備加熱装置7Bで予備加熱された後の連続紙9が加熱兼案内ロール57において加熱された状態が保たれ、その予備加熱された温度が低下した状態で定着装置40に導入されることがなくなり、予備加熱後の温度低下に起因した定着不良を誘発するおそれがない。またこの際、連続紙9の表面9aにおけるトナー像は、定着装置40による定着処理をされる前であって加熱兼案内ロール57を通過する時点で、加熱溶融が進んで定着されやすい状態になる。
【0121】
[実施の形態5]
図17は、実施の形態5に係る画像形成装置を示している。
【0122】
実施の形態5に係る画像形成装置1Cは、供給装置11と像形成装置2と収容装置16を備えたものであり、実施の形態1に係る画像形成装置1と比べた場合、定着システム4に代えて加熱装置5(5A,5B,5B´,5C,5D)を適用した点が異なるものの、それ以外の供給装置11、像形成装置2及び収容装置16については同じ構成になっている。図17において加熱装置5Bはその変形例の加熱装置5B´を含むものである。
【0123】
この画像形成装置1Cは、像形成装置2で連続紙9に転写した未定着のトナー像を(定着装置40を用いることなく)加熱装置5のみで定着するものである。加熱装置5A,5B,5B´,5C,5Dは、実施の形態1〜4において予備加熱装置7,7Bとして使用した各加熱装置(図3図6図9図11図15を参照)である。これらの加熱装置5A,5B,5B´,5C,5Dはいずれも、前述したように未定着のトナー像が形成された連続紙9を表裏表面から加熱するものであり、この加熱のみでトナー像の定着を行う。
ただし、加熱装置5Dを用いる場合は、実施の形態4において説明したように加熱兼案内ロール57を併設する必要がある。この場合は、トナー像は加熱兼案内ロール57との巻き付きの際に少し加圧された状態になるので、トナー像をより確実に定着することできる。
【0124】
この加熱装置5A,5B,5B´,5C,5Dのみを用いた定着を行う場合は、連続紙9として、例えば熱が伝わりやすい厚さが比較的薄いものを適用することが望ましい。
【0125】
この画像形成装置1Cによれば、像形成装置2の二次転写位置P2から送り出された連続紙9が加熱装置5(5A,5B,5B´,5C,5D)に導入されて実施の形態1〜4等で説明したようにその表裏両面から加熱される。これにより、その未定着のトナー像が加熱溶融されて連続紙9の片面(表面9a)に熱定着される。また、加熱装置5Dを適用した場合は、表裏両面が加熱された後の連続紙9上のトナー像が加熱兼案内ロール57で少し加圧された状態で再度加熱されて定着される。
このように加熱装置5A,5B,5B´,5C,5Dは、消費電力が抑制される簡易な構成の定着装置として適用することも可能である。
【0126】
[他の実施の形態]
平板状の第1発熱部材51A及び第2発熱部材52Aを適用する加熱装置5Aにおいては、連続紙9の裏面9bを第1発熱部材51Aに接触させず、非接触の状態(接近した状態)で通過させることによりその裏面9bを加熱するように構成することもできる。
【0127】
加熱装置5A,5B,5B´,5Cにおいては、磁束生成手段53A,53Bを第2発熱部材52A,52Bを挟んで第1発熱部材51A,51Bと反対側の位置に配置することも可能である。しかし、磁束生成手段53A,53Bは、第1発熱部材51と第2発熱部材52の双方が板状のものである場合、より高温で発熱させた発熱部材に接近させることができる位置に配置することが好ましい。
【0128】
加熱装置5A,5B,5B´,5C,5Dにおいては、第1発熱部材51又は第2発熱部材52の一方について、その互いに向き合う部分51a,52aの表面粗さ(例えば、十点平均粗さ:Rz等)が、その他方の向き合う部分52a,51aの表面粗さよりも小さくなるように構成することができる。この場合は、向き合う部分の表面粗さが相対的に小さい方の発熱部材では、その向き合う部分がより平滑な面になるため、その発熱部材の電磁誘導の発熱で得られる熱に加えて他方の発熱部材からの熱を反射させて連続紙9の片面を効率よく加熱することができる。この場合は、実施の形態4で例示したような反射層523を設ける必要がない。
【0129】
加熱装置5A,5B,5B´,5C,5Dにおいては、連続紙9の裏面9bを第1発熱部材51A,51B,51Cや第1発熱部材51Aを含む搬送ベルト564に接触させた状態で加熱する場合、その第1発熱部材51A,51B,51Cとして感温磁性合金からなる導電層を有するものを適用するとよい。感温磁性合金としては、例えば、Fe−Ni合金(パーマロイ)等の二元系整磁鋼や、Fe−Ni−Cr合金等の三元系整磁鋼等が用いられる。これらの感温磁性合金については、その透磁率変改開始温度を、例えば140℃〜240℃の範囲の温度に設定しておけばよい。
この感温磁性合金からなる導電層を有する第1発熱部材51A,51B,51C,搬送ベルト564を備えた加熱装置5A,5B,5B´,5C,5Dでは、キュリー温度以上に発熱することがないので連続紙9の裏面9bを過剰に加熱するおそれがない。
【0130】
実施の形態2に係る定着システム4(加熱装置5B´で構成した予備加熱装置7を適用した変形例を含む)を適用する画像形成装置1の場合は、連続紙9に代えて、記録媒体として所要の寸法及び形状に裁断された記録紙を使用することができる。
【0131】
加熱装置5A,5B,5B´,5C,5Dは、定着システム4の予備加熱装置7,7Bや定着装置として適用する場合に限らず、この他にも、例えば、連続紙9や裁断した記録紙等の記録媒体を加熱して乾燥させる装置として適用してもよい。この場合は、消費電力を抑制しつつ、記録媒体の表裏表面を簡易な構成で加熱して乾燥させることができる。
【0132】
実施の形態1〜4では、定着システム4における定着装置40としてベルト形態の加熱用回転体41とロール形態の加圧用回転体42を備えたものを例示したが、定着装置40としては、ベルト形態やロール形態の加熱用回転体41とロール形態やベルト形態の加圧用回転体42とを任意に組み合わせたものを適用することができる。
【0133】
この他、画像形成装置1,1B,1Cについては、像形成装置2として、他の多色の画像を形成する装置(作像装置20の種類や数などを変更したもの)や、単色の画像(例えば白黒画像)を形成する装置(作像装置20K単独で構成するもの)や、中間転写装置30を適用しない装置などを採用した画像形成装置であってもよい。また、画像形成装置としては、トナー以外の材料から構成される未定着像を形成する装置であっても構わない。
【符号の説明】
【0134】
1,1B,1C…画像形成装置
2 …像形成装置
4,4B…定着システム
5A,5B,5B´,5C,5D…加熱装置
7,7B…予備加熱装置
9 …連続紙(連続する記録媒体の一例)
9a…表面
9b…裏面
40…定着装置
51A,51B,51C…第1発熱部材
52A,52B,52C…第2発熱部材
53A,53B,53C…磁束生成手段
54…隙間
56…搬送装置
561…搬送ベルト
564…搬送ベルト(第1発熱部材の一例)
H …交番磁束
A …搬送方向
FN…定着ニップ部(定着処理部)
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