【解決手段】像保持体と、導電性部材に直流電圧のみを印加する接触帯電方式の帯電手段と、静電荷像形成手段と、現像手段と、転写手段と、定着手段と、像保持体のクリーニング手段とを備え、トナー粒子とトナー粒子に外添されたシリコーンオイル表面改質シリカ粒子とキャリアとを含み、キャリアの体積平均粒径が20μm以上35μm以下であり、キャリア表面に存在するシリコーンオイル由来のケイ素元素とシリカ由来のケイ素元素の量比(シリコーンオイル由来/シリカ由来)が0.05以上0.2以下である静電荷像現像剤を用いる画像形成装置。
前記キャリアの表面に存在するシリコーンオイル由来のケイ素元素とシリカ由来のケイ素元素の量比(シリコーンオイル由来/シリカ由来)が0.05以上0.18以下である、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の画像形成装置。
前記キャリアの表面に存在するシリコーンオイル由来のケイ素元素とシリカ由来のケイ素元素の量比(シリコーンオイル由来/シリカ由来)が0.05以上0.18以下である、請求項6〜請求項9のいずれか1項に記載の画像形成方法。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、発明の実施形態を説明する。これらの説明及び実施例は実施形態を例示するものであり、発明の範囲を制限するものではない。
【0022】
本明細書において組成物中の各成分の量について言及する場合、組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計量を意味する。
【0023】
本明細書において、「静電荷像現像剤」を単に「現像剤」ともいい、シリコーンオイルによって表面改質されたシリカ粒子を「シリコーンオイル表面改質シリカ粒子」という。
【0024】
<画像形成装置、画像形成方法>
本実施形態に係る画像形成装置は、像保持体と、像保持体の表面を帯電する帯電手段と、帯電した像保持体の表面に静電荷像を形成する静電荷像形成手段と、現像剤を収容し、現像剤により、像保持体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像手段と、像保持体の表面に形成されたトナー画像を記録媒体の表面に転写する転写手段と、記録媒体の表面に転写されたトナー画像を定着する定着手段と、像保持体の表面に接触するブレードを有し、該ブレードにより、トナー画像を転写した後の像保持体の表面をクリーニングするクリーニング手段と、を備える。
【0025】
本実施形態に係る画像形成装置では、像保持体の表面を帯電する帯電工程と、帯電した像保持体の表面に静電荷像を形成する静電荷像形成工程と、本実施形態に係る現像剤により、像保持体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像工程と、像保持体の表面に形成されたトナー画像を記録媒体の表面に転写する転写工程と、記録媒体の表面に転写されたトナー画像を定着する定着工程と、トナー画像を転写した後の像保持体の表面にブレードを接触させて、像保持体の表面をクリーニングするクリーニング工程と、を有する画像形成方法が実施される。
【0026】
本実施形態に係る画像形成装置が備える帯電手段は、像保持体の表面に接触する導電性部材を備え、該導電性部材に直流電圧のみを印加し、接触帯電方式により像保持体の表面を帯電させる帯電手段である。本実施形態に係る画像形成装置では、像保持体の表面に接触する導電性部材に直流電圧のみを印加し、接触帯電方式により像保持体の表面を帯電させる帯電工程が実施される。
【0027】
本実施形態に係る画像形成装置には、現像剤として、トナー粒子と、トナー粒子に外添されたシリコーンオイル表面改質シリカ粒子と、キャリアとを含み、キャリアの体積平均粒径が20μm以上35μm以下であり、キャリア表面に存在するシリコーンオイル由来のケイ素元素とシリカ由来のケイ素元素の量比(シリコーンオイル由来/シリカ由来)が0.05以上0.2以下である現像剤が適用される。該現像剤を、以下、本実施形態に係る現像剤ともいう。
【0028】
本実施形態に係る画像形成装置は、像保持体の表面に接触する導電性部材に直流電圧のみを印加する接触帯電方式の帯電手段を備えた画像形成装置であり、記録媒体の搬送方向に伸びる筋状の画像欠陥の発生を抑制する。その理由は定かではないが、以下のように推測される。
【0029】
接触方式の帯電手段は、非接触方式の帯電手段に比べ、像保持体表面を放電により改質しやすく、また放電生成物を付着させやすいために、記録媒体の搬送方向に伸びる筋状の画像欠陥が発生しやすい。さらに、直流電圧のみを導電性部材に印加する方式は、直流電圧に交流電圧を重畳した電圧を導電性部材に印加する方式に比べ、帯電電界が強いために像保持体へ与える負荷が大きく、記録媒体の搬送方向に伸びる筋状の画像欠陥が発生しやすい。また、直流電圧のみを導電性部材に印加する方式においては、像保持体とクリーニングブレードとの摩擦が少なく、そのため外添剤が必要以上にクリーニングブレードを通過してしまい接触方式の帯電手段を汚染しやすいし、接触方式の帯電手段自体のクリーニング性も劣り画質欠陥が顕在化しやすい。
一方で、トナーの外添剤は、像保持体上において少なくとも一部がトナー粒子から遊離し、クリーニングブレードが像保持体に接触する領域(「ブレードニップ」という。)の直前部に凝集して凝集層(「外添剤ダム」という。)を形成し、ブレードニップからトナー粒子がすり抜けることを抑制するとともに、放電生成物の堆積を抑制する。凝集性の高い外添剤ダムが形成されないと、ブレードニップからトナー粒子のすり抜けや放電生成物の堆積が生じて、記録媒体の搬送方向に伸びる筋状の画像欠陥が発生しやすい。
【0030】
これに対して、本実施形態に係る画像形成装置は、本実施形態に係る現像剤が下記の(a)、(b)及び(c)であることによって、導電性部材に直流電圧のみを印加する接触方式の帯電手段を備えていても、記録媒体の搬送方向に伸びる筋状の画像欠陥が抑制されると推測される。
【0031】
(a)シリコーンオイル表面改質シリカ粒子をトナー粒子に外添する。
トナーの外添剤としてシリカ粒子が広く用いられており、シリカ粒子は、疎水化を目的としてシリコーンオイルで表面改質されて用いられることがある。シリコーンオイル表面改質シリカ粒子は、表面にシリコーンオイルが付着しているが故に互いに凝集しやすく、凝集性の高い外添剤ダムを形成する。これにより、前述の機序で発生する筋状の画像欠陥を抑制すると推測される。
【0032】
(b)キャリアの体積平均粒径が35μm以下である。
キャリアとトナーとが攪拌混合される現像器内では、トナーの外添剤はキャリアから外力を受けてトナー粒子に埋没することがあり、キャリアの粒径が大きいほど外添剤はトナー粒子に埋没する傾向が強い。キャリアの体積平均粒径が35μm以下であると、キャリアの体積平均粒径が35μm超である場合に比べ、シリカ粒子が現像器内での攪拌によってトナー粒子に埋没することが抑制され、像保持体上においてシリカ粒子がトナー粒子から遊離しやすい。そして、トナー粒子から遊離したシリコーンオイル表面改質シリカ粒子が凝集性の高い外添剤ダムを形成し、これにより、前述の機序で発生する筋状の画像欠陥を抑制すると推測される。
なお、キャリアの体積平均粒径は、現像器内での攪拌性、帯電性能の安定性、トナー搬送性などの観点から、20μm以上である。
【0033】
(c)キャリア表面に存在するシリコーンオイル由来ケイ素元素とシリカ由来ケイ素元素の量比(シリコーンオイル由来/シリカ由来)が0.05以上0.2以下である。
シリカ粒子が外添されたトナーと、キャリアとを混合攪拌して現像剤を製造する過程において、シリカ粒子の一部はトナー粒子から遊離してキャリア表面に付着する。キャリア表面に付着したシリカ粒子が主として、キャリア表面に存在するケイ素元素の由来である。キャリア表面に存在するシリコーンオイル由来ケイ素元素とシリカ由来ケイ素元素の量比には、トナー粒子から遊離してキャリア表面に付着したシリコーンオイル表面改質シリカ粒子の量が反映されており、該量には、トナー粒子に外添されていたシリコーンオイル表面改質シリカ粒子の量とトナー粒子からのシリコーンオイル表面改質シリカ粒子の遊離しやすさの程度とが反映されている。よって、現像剤中のキャリア表面に存在するシリコーンオイル由来ケイ素元素とシリカ由来ケイ素元素の量比は、像保持体上においてトナー粒子から遊離して存在するシリコーンオイル表面改質シリカ粒子の量の指標となる。上記ケイ素元素の量比が0.05以上0.2以下の範囲であると、像保持体上においてトナー粒子から遊離して存在するシリコーンオイル表面改質シリカ粒子の均衡がとれ、この場合、シリコーンオイル表面改質シリカ粒子が凝集性の高い外添剤ダムを形成し、前述の機序で発生する筋状の画像欠陥を抑制すると推測される。
キャリア表面に存在するシリコーンオイル由来ケイ素元素とシリカ由来ケイ素元素の量比(シリコーンオイル由来/シリカ由来)は、より好ましくは0.05以上0.18以下である。
【0034】
キャリア表面に存在するシリコーンオイル由来のケイ素元素とシリカ由来のケイ素元素の量比は、例えば、シリコーンオイル表面改質シリカ粒子のトナーへの付着強度や、併用するシリカ粒子との外添量比によって制御される。ほかには、トナー粒子からのシリコーンオイル表面改質シリカ粒子及び併用するシリカ粒子の遊離しやすさを、両シリカ粒子それぞれの粒径、又はシリコーンオイル表面改質シリカ粒子に付着しているシリコーンオイル(つまり、シリカ粒子の表面改質に用いるシリコーンオイル)の粘度によって調節し、上記ケイ素元素の量比を制御する。
【0035】
キャリア表面に存在するシリコーンオイル由来のケイ素元素とシリカ由来のケイ素元素の量比(シリコーンオイル由来/シリカ由来)は、X線光電子分光法(X-ray Photoelectron Spectroscopy:XPS)によってキャリア表面に存在するケイ素元素を定量して求める。X線光電子分光法による、キャリア表面に存在するケイ素元素の定量法を説明する。
シリコーンオイルを構成するケイ素原子とシリカを構成するケイ素原子とでは化学結合状態が異なるので、ケイ素元素の2p軌道のXPSスペクトルにはピークが複数個現れる。各ピークの化学シフトの位置によって、各ピークの帰属(即ち、シリコーンオイルを構成するケイ素原子のピークであるか、シリカを構成するケイ素原子のピークであるか)を特定する。そして、各ピークの面積強度を求め、{シリコーンオイル由来ピークの面積強度÷シリカ由来ピークの面積強度}を求め、これを「キャリアの表面に存在するシリコーンオイル由来のケイ素元素とシリカ由来のケイ素元素の量比」とする。
【0036】
以下、本実施形態に係る画像形成装置の構成を、より具体的に説明する。
【0037】
本実施形態に係る画像形成装置は、像保持体の表面に形成されたトナー画像を直接記録媒体に転写する直接転写方式の装置;像保持体の表面に形成されたトナー画像を中間転写体の表面に一次転写し、中間転写体の表面に転写されたトナー画像を記録媒体の表面に二次転写する中間転写方式の装置;トナー画像の転写後、帯電前に像保持体の表面に除電光を照射して除電する除電手段を備える装置;等の公知の画像形成装置が適用される。
本実施形態に係る画像形成装置が中間転写方式の装置の場合、転写手段は、例えば、表面にトナー画像が転写される中間転写体と、像保持体の表面に形成されたトナー画像を中間転写体の表面に一次転写する一次転写手段と、中間転写体の表面に転写されたトナー画像を記録媒体の表面に二次転写する二次転写手段と、を有する構成が適用される。
【0038】
本実施形態に係る画像形成装置において、例えば、現像手段を含む部分が、画像形成装置に対して着脱されるカートリッジ構造(プロセスカートリッジ)であってもよい。プロセスカートリッジとしては、例えば、本実施形態に係る現像剤を収容し、現像手段を備えるプロセスカートリッジが好適に用いられる。
【0039】
以下、本実施形態に係る画像形成装置の一例を、図面を参照しながら説明するが、これに限定されるわけではない。以下の説明においては、図に示す主用部を説明し、その他はその説明を省略する。
【0040】
図1は、本実施形態に係る画像形成装置を示す概略構成図である。
図1に示す画像形成装置は、色分解された画像データに基づく、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色の画像を出力する電子写真方式の第1乃至第4の画像形成ユニット10Y、10M、10C、10K(画像形成手段)を備えている。これらの画像形成ユニット(以下、単に「ユニット」と称する場合がある)10Y、10M、10C、10Kは、水平方向に互いに予め定められた距離離間して並設されている。これらユニット10Y、10M、10C、10Kは、画像形成装置に対して着脱するプロセスカートリッジであってもよい。
【0041】
各ユニット10Y、10M、10C、10Kの上方には、各ユニットを通して中間転写ベルト(中間転写体の一例)20が延設されている。中間転写ベルト20は、駆動ロール22及び支持ロール24に巻きつけて設けられ、第1のユニット10Yから第4のユニット10Kに向う方向に走行するようになっている。支持ロール24は、図示しないバネ等により駆動ロール22から離れる方向に力が加えられており、両者に巻きつけられた中間転写ベルト20に張力が与えられている。中間転写ベルト20の像保持体側面には、駆動ロール22と対向して中間転写体クリーニング装置30が備えられている。
【0042】
各ユニット10Y、10M、10C、10Kの現像装置(現像手段の一例)4Y、4M、4C、4Kは、各々の色に対応したトナーカートリッジ8Y、8M、8C、8Kとトナー供給管(図示せず)で接続されている。現像装置4Y、4M、4C、4Kには、トナーカートリッジ8Y、8M、8C、8Kに収められたイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各トナーの供給がなされる。トナーカートリッジ8Y、8M、8C、8Kはそれぞれ、画像形成装置に着脱可能な構成であり、トナーカートリッジ内に収容されているトナーが少なくなった場合には、このトナーカートリッジが交換される。
【0043】
第1乃至第4のユニット10Y、10M、10C、10Kは、同等の構成及び動作を有しているため、ここでは中間転写ベルト走行方向の上流側に配設されたイエロー画像を形成する第1のユニット10Yについて代表して説明する。
【0044】
第1のユニット10Yは、像保持体として作用する感光体1Yを有している。感光体1Yの周囲には、感光体1Yの表面を予め定められた電位に帯電させる帯電ロール(帯電手段の一例)2Y、帯電された表面を色分解された画像信号に基づくレーザ光線3Yによって露光して静電荷像を形成する露光装置(静電荷像形成手段の一例)3、静電荷像に帯電したトナーを供給して静電荷像を現像する現像装置(現像手段の一例)4Y、現像したトナー画像を中間転写ベルト20上に転写する一次転写ロール5Y(一次転写手段の一例)、及び一次転写後に感光体1Yの表面に残存するトナーを除去する感光体クリーニング装置(クリーニング手段の一例)6Yが順に配置されている。
【0045】
帯電ロール2Yは、感光体1Yの外周面に接触して感光体1Yの外周面を帯電させる導電性ロールである。帯電ロール2Yには、電源から、直流電圧のみが印加される。画像形成装置は、帯電ロール2Yに代えて、帯電ブラシ、帯電フィルム、帯電ゴムブレード、帯電チューブ等の接触式帯電器を備えていてもよい。
【0046】
感光体クリーニング装置6Yは、感光体1Yの表面に接触するクリーニングブレードを備えている。クリーニングブレードは、例えば、弾性材料で構成され、弾性材料としては、熱硬化型ポリウレタンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、エチレン・プロピレン・ジエンゴム等が挙げられる。クリーニングブレードの接触圧は、例えば1.0gf/mm以上5.0gf/mm以下である。クリーニングブレードの接触幅(感光体の回転方向に沿った接触長)は、例えば0.5mm以上2.0mm以下である。クリーニングブレードの接触角は、例えば5°以上30°以下である。
【0047】
一次転写ロール5Yは、中間転写ベルト20の内側に配置され、感光体1Yに対向した位置に設けられている。各ユニットの一次転写ロール5Y、5M、5C、5Kには、一次転写バイアスを印加するバイアス電源(図示せず)がそれぞれ接続されている。各バイアス電源は、図示しない制御部による制御によって、各一次転写ロールに印加する転写バイアスの値を変える。
【0048】
以下、第1のユニット10Yにおいてイエロー画像を形成する動作について説明する。
まず、動作に先立って、帯電ロール2Yによって感光体1Yの表面が−600V乃至−800Vの電位に帯電される。
感光体1Yは、導電性(例えば20℃における体積抵抗率1×10
−6Ωcm以下)の基体上に感光層を積層して形成されている。この感光層は、通常は高抵抗(一般の樹脂の抵抗)であるが、レーザ光線が照射されると、レーザ光線が照射された部分の比抵抗が変化する性質を持っている。そこで、帯電した感光体1Yの表面に、図示しない制御部から送られてくるイエロー用の画像データに従って、露光装置3からレーザ光線3Yを照射する。それにより、イエローの画像パターンの静電荷像が感光体1Yの表面に形成される。
【0049】
静電荷像とは、帯電によって感光体1Yの表面に形成される像であり、レーザ光線3Yによって、感光層の被照射部分の比抵抗が低下し、感光体1Yの表面の帯電した電荷が流れ、一方、レーザ光線3Yが照射されなかった部分の電荷が残留することによって形成される、いわゆるネガ潜像である。
感光体1Y上に形成された静電荷像は、感光体1Yの走行に従って予め定められた現像位置まで回転する。そして、この現像位置で、感光体1Y上の静電荷像が、現像装置4Yによってトナー画像として現像され可視化される。
【0050】
現像装置4Y内には、例えば、少なくともイエロートナーとキャリアとを含む現像剤が収容されている。イエロートナーは、現像装置4Yの内部で攪拌されることで摩擦帯電し、感光体1Y上に帯電した帯電荷と同極性(負極性)の電荷を有して現像剤ロール(現像剤保持体の一例)上に保持されている。そして、感光体1Yの表面が現像装置4Yを通過していくことにより、感光体1Y表面上の除電された潜像部にイエロートナーが静電的に付着し、潜像がイエロートナーによって現像される。イエローのトナー画像が形成された感光体1Yは、引続き予め定められた速度で走行され、感光体1Y上に現像されたトナー画像が予め定められた一次転写位置へ搬送される。
【0051】
感光体1Y上のイエローのトナー画像が一次転写位置へ搬送されると、一次転写ロール5Yに一次転写バイアスが印加され、感光体1Yから一次転写ロール5Yに向う静電気力がトナー画像に作用し、感光体1Y上のトナー画像が中間転写ベルト20上に転写される。このとき印加される転写バイアスは、トナーの極性(−)と逆極性の(+)極性であり、第1のユニット10Yでは制御部(図示せず)によって例えば+10μAに制御されている。
【0052】
トナー画像を転写した後の感光体1Yは、回転を続け、感光体クリーニング装置6Yが備えるクリーニングブレードと接触する。感光体1Y上に残留したトナーは、感光体クリーニング装置6Yで除去されて回収される。
【0053】
第2のユニット10M以降の一次転写ロール5M、5C、5Kに印加される一次転写バイアスも、第1のユニットに準じて制御されている。
こうして、第1のユニット10Yにてイエローのトナー画像が転写された中間転写ベルト20は、第2乃至第4のユニット10M、10C、10Kを通して順次搬送され、各色のトナー画像が重ねられて多重転写される。
【0054】
第1乃至第4のユニットを通して4色のトナー画像が多重転写された中間転写ベルト20は、中間転写ベルト20と、中間転写ベルトの内面に接する支持ロール24と、中間転写ベルト20の像保持面側に配置された二次転写ロール(二次転写手段の一例)26とから構成された二次転写部へと至る。一方、記録紙(記録媒体の一例)Pが供給機構を介して二次転写ロール26と中間転写ベルト20とが接触した隙間に予め定められたタイミングで給紙され、二次転写バイアスが支持ロール24に印加される。このとき印加される転写バイアスは、トナーの極性(−)と同極性の(−)極性であり、中間転写ベルト20から記録紙Pに向う静電気力がトナー画像に作用し、中間転写ベルト20上のトナー画像が記録紙P上に転写される。この際の二次転写バイアスは二次転写部の抵抗を検出する抵抗検出手段(図示せず)により検出された抵抗に応じて決定されるものであり、電圧制御されている。
【0055】
この後、記録紙Pは定着装置(定着手段の一例)28における一対の定着ロールの圧接部(ニップ部)へと送り込まれ、トナー画像が記録紙P上へ定着され、定着画像が形成される。
【0056】
トナー画像を転写する記録紙Pとしては、例えば、電子写真方式の複写機、プリンター等に使用される普通紙が挙げられる。記録媒体としては、記録紙P以外にも、OHPシート等も挙げられる。
定着後における画像表面の平滑性をさらに向上させるには、記録紙Pの表面も平滑であることが好ましく、例えば、普通紙の表面を樹脂等でコーティングしたコート紙、印刷用のアート紙等が好適に使用される。
【0057】
カラー画像の定着が完了した記録紙Pは、排出部へ向けて搬出され、一連のカラー画像形成動作が終了される。
【0058】
次に、本実施形態に係る画像形成装置に適用される現像剤について詳細に説明する。
【0059】
<静電荷像現像剤>
本実施形態に係る画像形成装置が用いる現像剤は、トナー粒子と、トナー粒子に外添されたシリコーンオイル表面改質シリカ粒子と、キャリアとを含み、キャリアの体積平均粒径が20μm以上35μm以下であり、キャリア表面に存在するシリコーンオイル由来のケイ素元素とシリカ由来のケイ素元素の量比(シリコーンオイル由来/シリカ由来)が0.05以上0.2以下である。
【0060】
以下、現像剤を構成する構成要素、及び構成要素に含まれる成分について説明する。
【0061】
[トナー粒子]
トナー粒子は、例えば、結着樹脂と、必要に応じて、着色剤と、離型剤と、その他の添加剤とを含む。
【0062】
−結着樹脂−
結着樹脂としては、例えば、スチレン類(例えばスチレン、パラクロロスチレン、α−メチルスチレン等)、(メタ)アクリル酸エステル類(例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸2−エチルヘキシル等)、エチレン性不飽和ニトリル類(例えばアクリロニトリル、メタクリロニトリル等)、ビニルエーテル類(例えばビニルメチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等)、ビニルケトン類(ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルイソプロペニルケトン等)、オレフィン類(例えばエチレン、プロピレン、ブタジエン等)等の単量体の単独重合体、又はこれら単量体を2種以上組み合せた共重合体からなるビニル系樹脂が挙げられる。
結着樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ポリエーテル樹脂、変性ロジン等の非ビニル系樹脂、これらと前記ビニル系樹脂との混合物、又は、これらの共存下でビニル系単量体を重合して得られるグラフト重合体等も挙げられる。
これらの結着樹脂は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0063】
結着樹脂としては、ポリエステル樹脂が好適である。ポリエステル樹脂としては、例えば、多価カルボン酸と多価アルコールとの縮重合体が挙げられる。
【0064】
多価カルボン酸としては、例えば、脂肪族ジカルボン酸(例えばシュウ酸、マロン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、コハク酸、アルケニルコハク酸、アジピン酸、セバシン酸等)、脂環式ジカルボン酸(例えばシクロヘキサンジカルボン酸等)、芳香族ジカルボン酸(例えばテレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸等)、これらの無水物、又はこれらの低級(例えば炭素数1以上5以下)アルキルエステルが挙げられる。これらの中でも、多価カルボン酸としては、例えば、芳香族ジカルボン酸が好ましい。
多価カルボン酸としては、ジカルボン酸と共に、架橋構造又は分岐構造をとる3価以上のカルボン酸を併用してもよい。3価以上のカルボン酸としては、例えば、トリメリット酸、ピロメリット酸、これらの無水物、又はこれらの低級(例えば炭素数1以上5以下)アルキルエステル等が挙げられる。
多価カルボン酸は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0065】
多価アルコールとしては、例えば、脂肪族ジオール(例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール等)、脂環式ジオール(例えばシクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールA等)、芳香族ジオール(例えばビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物等)が挙げられる。これらの中でも、多価アルコールとしては、例えば、芳香族ジオール、脂環式ジオールが好ましく、より好ましくは芳香族ジオールである。
多価アルコールとしては、ジオールと共に、架橋構造又は分岐構造をとる3価以上の多価アルコールを併用してもよい。3価以上の多価アルコールとしては、例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールが挙げられる。
多価アルコールは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0066】
ポリエステル樹脂のガラス転移温度(Tg)は、50℃以上80℃以下が好ましく、50℃以上65℃以下がより好ましい。
ガラス転移温度は、示差走査熱量測定(DSC)により得られたDSC曲線より求め、より具体的にはJIS K7121−1987「プラスチックの転移温度測定方法」のガラス転移温度の求め方に記載の「補外ガラス転移開始温度」により求められる。
【0067】
ポリエステル樹脂の重量平均分子量(Mw)は、5000以上1000000以下が好ましく、7000以上500000以下がより好ましい。ポリエステル樹脂の数平均分子量(Mn)は、2000以上100000以下が好ましい。ポリエステル樹脂の分子量分布Mw/Mnは、1.5以上100以下が好ましく、2以上60以下がより好ましい。
重量平均分子量及び数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定する。GPCによる分子量測定は、測定装置として東ソー製GPC・HLC−8120GPCを用い、東ソー製カラム・TSKgel SuperHM−M(15cm)を使用し、THF溶媒で行う。重量平均分子量及び数平均分子量は、この測定結果から単分散ポリスチレン標準試料により作成した分子量校正曲線を使用して算出する。
【0068】
ポリエステル樹脂は、公知の製造方法により得られる。具体的には、例えば、重合温度を180℃以上230℃以下とし、必要に応じて反応系内を減圧し、縮合の際に発生する水やアルコールを除去しながら反応させる方法により得られる。
原料の単量体が、反応温度下で溶解又は相溶しない場合は、高沸点の溶剤を溶解補助剤として加え溶解させてもよい。この場合、重縮合反応は溶解補助剤を留去しながら行う。相溶性の悪い単量体が存在する場合は、あらかじめ相溶性の悪い単量体とその単量体と重縮合予定の酸又はアルコールとを縮合させておいてから主成分と重縮合させるとよい。
【0069】
結着樹脂の含有量は、トナー粒子全体に対して、40質量%以上95質量%以下が好ましく、50質量%以上90質量%以下がより好ましく、60質量%以上85質量%以下が更に好ましい。
【0070】
−着色剤−
着色剤としては、例えば、カーボンブラック、クロムイエロー、ハンザイエロー、ベンジジンイエロー、スレンイエロー、キノリンイエロー、ピグメントイエロー、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、ウオッチヤングレッド、パーマネントレッド、ブリリアントカーミン3B、ブリリアントカーミン6B、デュポンオイルレッド、ピラゾロンレッド、リソールレッド、ローダミンBレーキ、レーキレッドC、ピグメントレッド、ローズベンガル、アニリンブルー、ウルトラマリンブルー、カルコオイルブルー、メチレンブルークロライド、フタロシアニンブルー、ピグメントブルー、フタロシアニングリーン、マラカイトグリーンオキサレート等の顔料;アクリジン系、キサンテン系、アゾ系、ベンゾキノン系、アジン系、アントラキノン系、チオインジコ系、ジオキサジン系、チアジン系、アゾメチン系、インジコ系、フタロシアニン系、アニリンブラック系、ポリメチン系、トリフェニルメタン系、ジフェニルメタン系、チアゾール系等の染料;が挙げられる。
着色剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0071】
着色剤は、必要に応じて表面処理された着色剤を用いてもよく、分散剤と併用してもよい。また、着色剤は、複数種を併用してもよい。
【0072】
着色剤の含有量は、トナー粒子全体に対して、1質量%以上30質量%以下が好ましく、3質量%以上15質量%以下がより好ましい。
【0073】
−離型剤−
離型剤としては、例えば、炭化水素系ワックス;カルナウバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス等の天然ワックス;モンタンワックス等の合成又は鉱物・石油系ワックス;脂肪酸エステル、モンタン酸エステル等のエステル系ワックス;などが挙げられる。離型剤は、これに限定されるものではない。
【0074】
離型剤の融解温度は、50℃以上110℃以下が好ましく、60℃以上100℃以下がより好ましい。
融解温度は、示差走査熱量測定(DSC)により得られたDSC曲線から、JIS K7121−1987「プラスチックの転移温度測定方法」の融解温度の求め方に記載の「融解ピーク温度」により求める。
【0075】
離型剤の含有量は、トナー粒子全体に対して、1質量%以上20質量%以下が好ましく、5質量%以上15質量%以下がより好ましい。
【0076】
−その他の添加剤−
その他の添加剤としては、例えば、磁性体、帯電制御剤、無機粉体等の公知の添加剤が挙げられる。これらの添加剤は、内添剤としてトナー粒子に含まれる。
【0077】
[トナー粒子の特性]
トナー粒子は、単層構造のトナー粒子であってもよいし、芯部(コア粒子)と芯部を被覆する被覆層(シェル層)とで構成された所謂コア・シェル構造のトナー粒子であってもよい。コア・シェル構造のトナー粒子は、例えば、結着樹脂と必要に応じて着色剤及び離型剤等のその他添加剤とを含む芯部と、結着樹脂を含む被覆層と、で構成されている。
【0078】
トナー粒子の体積平均粒径(D50v)は、2μm以上10μm以下が好ましく、2.5μm以上8.0μm以下がより好ましく、3.0μm以上6.0μm以下が更に好ましく、3.8μm以上5.0μm以下が更に好ましい。
【0079】
トナー粒子の各種平均粒径、及び各種粒度分布指標は、コールターマルチサイザーII(ベックマン・コールター社製)を用い、電解液はISOTON−II(ベックマン・コールター社製)を使用して測定される。
測定に際しては、分散剤として、界面活性剤(アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムが好ましい)の5質量%水溶液2ml中に測定試料を0.5mg以上50mg以下加える。これを電解液100ml以上150ml以下中に添加する。
試料を懸濁した電解液は超音波分散機で1分間分散処理を行い、コールターマルチサイザーIIにより、アパーチャー径100μmのアパーチャーを用いて2μm以上60μm以下の範囲の粒径の粒子の粒度分布を測定する。サンプリングする粒子数は50000個である。
測定される粒度分布を基にして分割された粒度範囲(チャネル)に対して体積、数をそれぞれ小径側から累積分布を描いて、累積16%となる粒径を体積粒径D16v、数粒径D16p、累積50%となる粒径を体積平均粒径D50v、累積数平均粒径D50p、累積84%となる粒径を体積粒径D84v、数粒径D84pと定義する。
これらを用いて、体積粒度分布指標(GSDv)は(D84v/D16v)
1/2、数粒度分布指標(GSDp)は(D84p/D16p)
1/2として算出される。
【0080】
トナー粒子の形状係数SF1は、110以上150以下が好ましく、120以上140以下がより好ましい。
【0081】
形状係数SF1は、下記式により求められる。
式:SF1=(ML
2/A)×(π/4)×100
上記式中、MLはトナーの絶対最大長、Aはトナーの投影面積を各々示す。
具体的には、形状係数SF1は、主に顕微鏡画像又は走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope:SEM)の画像を、画像解析装置を用いて解析することによって数値化され、以下のようにして算出される。すなわち、スライドガラス表面に散布した粒子の光学顕微鏡像をビデオカメラによりルーゼックス画像解析装置に取り込み、100個の粒子の最大長と投影面積を求め、上記式によって計算し、その平均値を求めることにより得られる。
【0082】
[トナー粒子の製造方法]
トナー粒子は、乾式製法(例えば、混練粉砕法等)、湿式製法(例えば、凝集合一法、懸濁重合法、溶解懸濁法等)のいずれにより製造してもよい。これらの製法に特に制限はなく、公知の製法が採用される。これらの中でも、凝集合一法により、トナー粒子を得ることがよい。
【0083】
具体的には、例えば、トナー粒子を凝集合一法により製造する場合、
結着樹脂となる樹脂粒子が分散された樹脂粒子分散液を準備する工程(樹脂粒子分散液準備工程)と、樹脂粒子分散液中で(必要に応じて他の粒子分散液を混合した後の分散液中で)、樹脂粒子(必要に応じて他の粒子)を凝集させ、凝集粒子を形成する工程(凝集粒子形成工程)と、凝集粒子が分散された凝集粒子分散液を加熱し、凝集粒子を融合・合一して、トナー粒子を形成する工程(融合・合一工程)と、を経て、トナー粒子を製造する。
【0084】
以下、各工程の詳細について説明する。
以下の説明では、着色剤、及び離型剤を含むトナー粒子を得る方法について説明するが、着色剤、離型剤は、必要に応じて用いられるものである。無論、着色剤、離型剤以外のその他添加剤を用いてもよい。
【0085】
−樹脂粒子分散液準備工程−
結着樹脂となる樹脂粒子が分散された樹脂粒子分散液と共に、例えば、着色剤粒子が分散された着色剤粒子分散液、離型剤粒子が分散された離型剤粒子分散液を準備する。
【0086】
樹脂粒子分散液は、例えば、樹脂粒子を界面活性剤により分散媒中に分散させることにより調製する。
【0087】
樹脂粒子分散液に用いる分散媒としては、例えば水系媒体が挙げられる。
水系媒体としては、例えば、蒸留水、イオン交換水等の水、アルコール類等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0088】
界面活性剤としては、例えば、硫酸エステル塩系、スルホン酸塩系、リン酸エステル系、せっけん系等のアニオン界面活性剤;アミン塩型、4級アンモニウム塩型等のカチオン界面活性剤;ポリエチレングリコール系、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加物系、多価アルコール系等の非イオン系界面活性剤等が挙げられる。これらの中でも特に、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤が挙げられる。非イオン系界面活性剤は、アニオン界面活性剤又はカチオン界面活性剤と併用してもよい。
界面活性剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0089】
樹脂粒子分散液において、樹脂粒子を分散媒に分散する方法としては、例えば回転せん断型ホモジナイザーや、メディアを有するボールミル、サンドミル、ダイノミル等の一般的な分散方法が挙げられる。また、樹脂粒子の種類によっては、転相乳化法によって分散媒に樹脂粒子を分散させてもよい。転相乳化法とは、分散すべき樹脂を、その樹脂が可溶な疎水性有機溶剤中に溶解せしめ、有機連続相(O相)に塩基を加えて中和したのち、水系媒体(W相)を投入することによって、W/OからO/Wへの転相を行い、樹脂を水系媒体中に粒子状に分散する方法である。
【0090】
樹脂粒子分散液中に分散する樹脂粒子の体積平均粒径としては、例えば0.01μm以上1μm以下が好ましく、0.08μm以上0.8μm以下がより好ましく、0.1μm以上0.6μm以下が更に好ましい。
樹脂粒子の体積平均粒径は、レーザ回折式粒度分布測定装置(例えば、堀場製作所製LA−700)の測定によって得られた粒度分布を用い、分割された粒度範囲(チャンネル)に対し、体積について小粒径側から累積分布を引き、全粒子に対して累積50%となる粒径を体積平均粒径D50vとして測定される。他の分散液中の粒子の体積平均粒径も同様に測定される。
【0091】
樹脂粒子分散液に含まれる樹脂粒子の含有量は、5質量%以上50質量%以下が好ましく、10質量%以上40質量%以下がより好ましい。
【0092】
樹脂粒子分散液と同様にして、例えば、着色剤粒子分散液、離型剤粒子分散液も調製される。つまり、樹脂粒子分散液における粒子の体積平均粒径、分散媒、分散方法、及び粒子の含有量に関しては、着色剤粒子分散液中に分散する着色剤粒子、及び離型剤粒子分散液中に分散する離型剤粒子についても同様である。
【0093】
−凝集粒子形成工程−
次に、樹脂粒子分散液と、着色剤粒子分散液と、離型剤粒子分散液と、を混合する。
そして、混合分散液中で、樹脂粒子と着色剤粒子と離型剤粒子とをヘテロ凝集させ目的とするトナー粒子の径に近い径を持つ、樹脂粒子と着色剤粒子と離型剤粒子とを含む凝集粒子を形成する。
【0094】
具体的には、例えば、混合分散液に凝集剤を添加すると共に、混合分散液のpHを酸性(例えばpH2以上5以下)に調整し、必要に応じて分散安定剤を添加した後、樹脂粒子のガラス転移温度に近い温度(具体的には、例えば、樹脂粒子のガラス転移温度−30℃以上ガラス転移温度−10℃以下)に加熱し、混合分散液に分散された粒子を凝集させて、凝集粒子を形成する。
凝集粒子形成工程においては、例えば、混合分散液を回転せん断型ホモジナイザーで攪拌下、室温(例えば25℃)で凝集剤を添加し、混合分散液のpHを酸性(例えばpH2以上5以下)に調整し、必要に応じて分散安定剤を添加した後に、加熱を行ってもよい。
【0095】
凝集剤としては、例えば、混合分散液に含まれる界面活性剤と逆極性の界面活性剤、無機金属塩、2価以上の金属錯体が挙げられる。凝集剤として金属錯体を用いた場合には、界面活性剤の使用量が低減され、帯電特性が向上する。
凝集剤と共に、該凝集剤の金属イオンと錯体もしくは類似の結合を形成する添加剤を必要に応じて用いてもよい。この添加剤としては、キレート剤が好適に用いられる。
【0096】
無機金属塩としては、例えば、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、塩化バリウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム等の金属塩;ポリ塩化アルミニウム、ポリ水酸化アルミニウム、多硫化カルシウム等の無機金属塩重合体;などが挙げられる。
キレート剤としては、水溶性のキレート剤を用いてもよい。キレート剤としては、例えば、酒石酸、クエン酸、グルコン酸等のオキシカルボン酸;イミノ二酢酸(IDA)、ニトリロ三酢酸(NTA)、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)等のアミノカルボン酸;などが挙げられる。
キレート剤の添加量は、樹脂粒子100質量部に対して0.01質量部以上5.0質量部以下が好ましく、0.1質量部以上3.0質量部未満がより好ましい。
【0097】
−融合・合一工程−
次に、凝集粒子が分散された凝集粒子分散液を、例えば、樹脂粒子のガラス転移温度以上(例えば樹脂粒子のガラス転移温度より10℃から30℃高い温度以上)に加熱して、凝集粒子を融合・合一し、トナー粒子を形成する。
【0098】
以上の工程を経て、トナー粒子が得られる。
凝集粒子が分散された凝集粒子分散液を得た後、当該凝集粒子分散液と、樹脂粒子が分散された樹脂粒子分散液と、をさらに混合し、凝集粒子の表面にさらに樹脂粒子を付着するように凝集して、第2凝集粒子を形成する工程と、第2凝集粒子が分散された第2凝集粒子分散液に対して加熱をし、第2凝集粒子を融合・合一して、コア・シェル構造のトナー粒子を形成する工程と、を経て、トナー粒子を製造してもよい。
【0099】
融合・合一工程終了後、溶液中に形成されたトナー粒子に、公知の洗浄工程、固液分離工程、及び乾燥工程を施して乾燥した状態のトナー粒子を得る。洗浄工程は、帯電性の観点から、イオン交換水による置換洗浄を充分に施すことがよい。固液分離工程は、生産性の観点から、吸引濾過、加圧濾過等を施すことがよい。乾燥工程は、生産性の観点から、凍結乾燥、気流乾燥、流動乾燥、振動型流動乾燥等を施すことがよい。
【0100】
[シリコーンオイル表面改質シリカ粒子]
シリコーンオイル表面改質シリカ粒子は、ヒュームドシリカ、コロイダルシリカ等のシリカ粒子をシリコーンオイルで表面改質した粒子である。シリコーンオイル表面改質シリカ粒子の表面にはシリコーンオイルが付着している。
【0101】
シリカ粒子を表面改質するシリコーンオイルとしては、ジメチルポリシロキサン、ジエチルポリシロキサン、ジプロピルポリシロキサン等のジアルキルポリシロキサン;ジアルキルポリシロキサンの側鎖の一部をフェニル基で置換したフェニル変性ポリシロキサン;ジアルキルポリシロキサンの側鎖の一部をフルオロアルキル基で置換したフルオロアルキル変性ポリシロキサン;などが挙げられる。シリコーンオイルは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。シリコーンオイルの動粘度(25℃)は、10mm
2/s以上70mm
2/s以下が好ましく、25mm
2/s以上60mm
2/s以下がより好ましい。
【0102】
シリカ粒子をシリコーンオイルで表面改質するための処理方法としては、気相中のシリカ粒子にシリコーンオイル又はシリコーンオイルを含む溶液を噴霧する噴霧法;シリコーンオイル中又はシリコーンオイルを含む溶液中にシリカ粒子を浸漬する浸漬法;シリコーンオイル又はシリコーンオイルを含む溶液とシリカ粒子とを混合機により混合する混合法;などが挙げられる。
【0103】
シリコーンオイル表面改質シリカ粒子の個数平均粒径は、トナー粒子からの遊離しやすさの観点及び外添剤ダムの凝集性の観点から、10nm以上50nm以下が好ましく、20nm以上45nm以下がより好ましく、30nm以上40nm以下が更に好ましい。
【0104】
シリコーンオイル表面改質シリカ粒子の外添量は、トナー粒子100質量部に対して、0.1質量部以上3.0質量部以下が好ましく、0.3質量部以上2.5質量部以下がより好ましく、0.5質量部以上2.0質量部以下が更に好ましい。
【0105】
[併用可能なシリカ粒子]
併用可能なシリカ粒子は、シリコーンオイル以外のその他のオイル(例えが、パラフィンオイル、フッ素系オイル等)で表面改質されたシリカ粒子でもよいが、いずれのオイルによっても表面改質されていないシリカ粒子が好ましい。換言すれば、併用可能なシリカ粒子は、表面にオイルが付着していないシリカ粒子であることが好ましい。
【0106】
表面にオイルが付着していないシリカ粒子は、シリコーンオイル表面改質シリカ粒子に比べ凝集性が低い故に外添剤ダムに組み込まれないか又は外添剤ダムから離脱しやすく、ブレードニップを少量ずつすり抜けて、クリーニングブレードと像保持体との間の摩擦を軽減すると推測される。これにより、クリーニングブレードの損傷が抑制され、ブレードニップからトナー粒子又は凝集した状態の外添剤ダムの一部がすり抜けることが抑制され、記録媒体の搬送方向に伸びる色筋又は白筋の発生が抑制されると推測される。
【0107】
併用可能なシリカ粒子は、表面が疎水化されたシリカ粒子でもよい。シリカ粒子の疎水化剤としては、例えば、ヘキサメチルジシラザン、ジエトキシジメチルシラン、ジメトキシジフェニルシラン、ジメチルジクロロシラン等のシラン化合物が挙げられる。
【0108】
併用可能なシリカ粒子の個数平均粒径は、50nm以上200nm以下が好ましい。個数平均粒径が50nm以上であると、クリーニングブレードと像保持体との間の摩擦を軽減する滑剤としての作用が発揮されやすく、個数平均粒径が200nm以下であると、像保持体表面に傷をつけにくい。
上記観点から、併用可能なシリカ粒子の個数平均粒径は、80nm以上200nm以下がより好ましく、90nm以上150nm以下が更に好ましい。
【0109】
併用可能なシリカ粒子の形状係数SF2は、100以上125以下が好ましく、100以上120以下がより好ましく、100以上110以下が更に好ましい。形状係数SF2を該範囲とすると、クリーニングブレードと像保持体との間の摩擦を軽減する滑剤としての作用が発揮されやすい。
【0110】
併用可能なシリカ粒子の外添量は、トナー粒子100質量部に対して、1.0質量部以上3.5質量部以下が好ましく、1.5質量部以上3.0質量部以下がより好ましく、2.0質量部以上2.5質量部以下が更に好ましい。
【0111】
キャリア表面に存在するシリコーンオイル由来ケイ素元素とシリカ由来ケイ素元素の量比を0.05以上0.2以下の範囲に制御する観点から、シリコーンオイル表面改質シリカ粒子と併用可能なシリカ粒子の外添量比(質量比、改質:併用)は、80:20乃至20:80が好ましく、70:30乃至30:70がより好ましく、60:40乃至40:60が更に好ましい。
【0112】
シリカ粒子の個数平均粒径とは、トナー粒子にシリカ粒子を外添させた状態においてシリカ粒子の一次粒子100個を走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope:SEM)により観察し、一次粒子の画像解析によって得られた球相当径の累積頻度における50%径(D50p)である。
【0113】
シリカ粒子の形状係数SF2とは、トナー粒子にシリカ粒子を外添させた状態においてシリカ粒子の一次粒子100個をSEMにより観察し、一次粒子の画像解析によって得られた周囲長及び投影面積から下記式により算出した値の平均値である。
式:SF2={PM
2/(4πA)}×100
式中、PMは、シリカ粒子の周囲長であり、Aは、シリカ粒子の投影面積である。
【0114】
[その他の外添剤]
本実施形態において、トナー粒子には、シリコーンオイル表面改質シリカ粒子及び併用可能なシリカ粒子以外の外添剤が外添されていてもよい。ただし、本実施形態において、トナー粒子には、実質的にシリコーンオイル表面改質シリカ粒子及び併用可能なシリカ粒子のみが外添されていることが好ましい。
【0115】
その他の外添剤としては、例えば、TiO
2、Al
2O
3、CuO、ZnO、SnO
2、CeO
2、Fe
2O
3、MgO、BaO、CaO、K
2O、Na
2O、ZrO
2、K
2O・(TiO
2)n、CaCO
3、MgCO
3、BaSO
4、MgSO
4等からなる無機粒子が挙げられる。これら無機粒子の表面は、疎水化処理が施されていてもよい。
【0116】
[キャリア]
キャリアとしては、特に制限はなく、公知のキャリアが挙げられる。キャリアとしては、例えば、磁性粉からなる芯材の表面に樹脂を被覆した樹脂被覆キャリア;マトリックス樹脂中に磁性粉が分散して配合された磁性粉分散型キャリア;多孔質の磁性粉に樹脂を含浸させた樹脂含浸型キャリア;磁性粉分散型キャリア又は樹脂含浸型キャリアを芯材とし、この芯材の表面を樹脂で被覆したキャリア;などが挙げられる。
【0117】
磁性粉としては、例えば、鉄、ニッケル、コバルト等の磁性金属;フェライト、マグネタイト等の磁性酸化物;などが挙げられる。特に小径キャリアでも磁力のばらつきの少ないMn及びMgを含有するフェライトが望ましく、Mn−Mg−Srフェライト、Mn−Mg−Caフェライトが好ましく用いられる。
【0118】
被覆用の樹脂及びマトリックス樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリ塩化ビニル、ポリビニルエーテル、ポリビニルケトン、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、アクリル樹脂、オルガノシロキサン結合を含んで構成されるストレートシリコーン樹脂又はその変性品、フッ素樹脂、ポリエステル、ポリカーボネート、フェノール樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。被覆用の樹脂及びマトリックス樹脂には、導電性粒子等の添加剤を含ませてもよい。導電性粒子としては、金、銀、銅等の金属、カーボンブラック、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、硫酸バリウム、ホウ酸アルミニウム、チタン酸カリウム等の粒子が挙げられる。
【0119】
芯材の表面を樹脂で被覆するには、被覆用の樹脂及び各種添加剤(必要に応じて使用する)を適当な溶媒に溶解した被覆層形成用溶液により被覆する方法等が挙げられる。溶媒としては、特に限定されるものではなく、使用する樹脂の種類や、塗布適性等を勘案して選択すればよい。具体的な樹脂被覆方法としては、芯材を被覆層形成用溶液中に浸漬する浸漬法;被覆層形成用溶液を芯材表面に噴霧するスプレー法;芯材を流動エアーにより浮遊させた状態で被覆層形成用溶液を噴霧する流動床法;ニーダーコーター中でキャリアの芯材と被覆層形成用溶液とを混合し、その後に溶剤を除去するニーダーコーター法;等が挙げられる。本実施形態においては、特に、フェライトからなる芯材を樹脂被覆したキャリアが好ましく用いられる。
【0120】
キャリアの体積平均粒径は、記録媒体の搬送方向に伸びる筋状の画像欠陥の発生を抑制する観点から、35μm以下であり、より好ましくは30μm以下であり、更に好ましくは30μm未満である。一方で、現像器内での攪拌性、帯電性能の安定性、トナー搬送性などの観点から、キャリアの体積平均粒径は、20μm以上であり、23μm以上がより好ましく、25μm以上が更に好ましい。
キャリアの体積平均粒径は、レーザ回折散乱式粒度分布測定装置(例えば、ベックマン・コールター社製LS 13 320)を使用して測定される。現像剤に含まれるキャリアの体積平均粒径は、現像剤からトナーをブローオフしてキャリアを単離して測定する。
【0121】
本実施形態に係る現像剤は、例えば、乾燥状態のトナー粒子にシリコーンオイル表面改質シリカ粒子及び併用可能なシリカ粒子を外添して外添トナーを調製し、この外添トナーとキャリアとを混合することにより製造される。外添トナーとキャリアとの混合比(質量比)は、外添トナー:キャリア=1:100乃至30:100が好ましく、3:100乃至20:100がより好ましい。
【実施例】
【0122】
以下、実施例により発明の実施形態を詳細に説明するが、発明の実施形態は、これら実施例に限定されない。以下の説明において、特に断りのない限り、「部」は質量基準である。
【0123】
<トナー粒子の作製>
[非晶性樹脂粒子分散液の調製]
・テレフタル酸 :30モル部
・フマル酸 :70モル部
・ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物 :20モル部
・ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物:80モル部
攪拌装置、窒素導入管、温度センサ及び精留塔を備えた反応容器に上記の材料を仕込み、1時間かけて温度を190℃まで上げ、上記材料100部に対してジブチル錫オキサイド1.2部を投入した。生成する水を留去しながら6時間かけて温度を240℃まで上げ、240℃を維持して3時間脱水縮合反応を継続した後、反応物を冷却した。
【0124】
反応物を溶融状態のまま、キャビトロンCD1010(ユーロテック社製)に毎分100gの速度で移送した。同時に、別途用意した濃度0.37質量%のアンモニア水を、熱交換器で120℃に加熱しながら、毎分0.1リットルの速度でキャビトロンCD1010に移送した。回転子の回転速度60Hz、圧力5kg/cm
2の条件でキャビトロンCD1010を運転し、体積平均粒径160nmの樹脂粒子が分散した樹脂粒子分散液を得た。該樹脂粒子分散液にイオン交換水を加え、固形分量を20質量%に調整して、非晶性樹脂粒子分散液とした。
【0125】
[結晶性樹脂粒子分散液の調製]
・ドデカン二酸 :100モル部
・1,12−ドデカンジオール:100モル部
攪拌装置、窒素導入管、温度センサ及び精留塔を備えた反応容器に上記の材料を仕込み、1時間かけて温度を160℃まで上げ、上記材料100部に対してジブチル錫オキサイド0.02部を投入した。生成する水を留去しながら6時間かけて温度を200℃まで上げ、200℃を維持して4時間脱水縮合反応を継続した後、反応物を冷却した。冷却後、固液分離を行い、固形物を乾燥させ、結晶性ポリエステル樹脂を得た。
【0126】
・結晶性ポリエステル樹脂 : 50部
・アニオン性界面活性剤(第一工業製薬製ネオゲンSC): 2部
・イオン交換水 :200部
上記の材料を混合し120℃に加熱してホモジナイザー(IKA社製ウルトラタラックスT50)で分散した後、圧力吐出型ホモジナイザーで分散処理した。体積平均粒径が160nmになったところで回収し、固形分量20質量%の結晶性樹脂粒子分散液を得た。
【0127】
[着色剤分散液の調製]
・C.I.Pigment Blue 15:3(大日精化工業): 70部
・アニオン性界面活性剤(第一工業製薬社製ネオゲンRK) : 5部
・イオン交換水 :200部
上記の材料を混合し、ホモジナイザー(IKA社製ウルトラタラックスT50)を用いて10分間分散した。分散液中の固形分量が20質量%となるようイオン交換水を加え、体積平均粒径170nmの着色剤粒子が分散された着色剤分散液を得た。
【0128】
[離型剤分散液の調製]
・パラフィンワックス(日本精蝋社製HNP−9) : 50部
・アニオン性界面活性剤(第一工業製薬社製ネオゲンRK): 1部
・イオン交換水 :200部
上記の材料を混合して95℃に加熱し、ホモジナイザー(IKA社製ウルトラタラックスT50)を用いて分散した後、マントンゴーリン高圧ホモジナイザー(ゴーリン社製)で分散処理し、離型剤粒子が分散された離型剤分散液(固形分量20質量%)を得た。離型剤粒子の体積平均粒径は180nmであった。
【0129】
[トナー粒子の調製]
・非晶性樹脂粒子分散液(固形分量20質量%) :150部
・結晶性樹脂粒子分散液(固形分量20質量%) : 50部
・着色剤分散液(固形分量20質量%) : 25部
・離型剤分散液(固形分量20質量%) : 40部
・アニオン性界面活性剤(第一工業製薬社製ネオゲンRK): 1部
・イオン交換水 :100部
上記の材料を、温度計、pH計及び攪拌機を備えた反応容器に入れ、マントルヒーターで外部から温度30℃に加温し、回転数150rpmで攪拌しながら30分間保持した。次いで、0.3N硝酸水溶液を添加しpHを3.0に調整した後、ホモジナイザー(IKA社製ウルトラタラックスT50)で分散しながら3質量%ポリ塩化アルミニウム水溶液を添加した。次いで、攪拌しながら50℃まで昇温し30分間保持した。次いで、非晶性樹脂粒子分散液70部を追加し1時間保持し、0.1N水酸化ナトリウム水溶液を添加してpHを8.5に調整した後、攪拌を継続しながら85℃まで加熱し、5時間保持した。次いで、冷却、固液分離、固形物の洗浄及び乾燥を順次行い、体積平均粒径4.8μmのトナー粒子を得た。
【0130】
<シリコーンオイル表面改質シリカ粒子の作製>
SiCl
4と水素ガスと酸素ガスを燃焼バーナーの混合室内で混合した後、1000℃以上3000℃以下の温度で燃焼させ、燃焼後のガスからシリカ粉末を取り出すことでシリカ粒子を得た。この際、水素ガスと酸素ガスのモル比を2:1にした。得られたシリカ粒子10部にトルエン300部とジメチルシリコーンオイル(信越化学工業社製KF96、50mm
2/s)1部を加え、超音波を印加し30分間室温で攪拌した後に濃縮乾固し、200℃で3時間加熱乾燥し、シリコーンオイル表面改質シリカ粒子を得た。トナー粒子に外添した状態において個数平均粒径を測定したところ、シリコーンオイル表面改質シリカ粒子の個数平均粒径は40nmであった。
【0131】
<疎水性シリカ粒子(シリコーンオイル未改質シリカ粒子)の作製>
[疎水性シリカ粒子(1)の作製]
金属製攪拌棒、滴下ノズル(テフロン(登録商標)製マイクロチューブポンプ)、及び温度計を備えた容積3Lのガラス製反応容器にメタノール300部、10%アンモニア水49.4部を入れ、攪拌混合して、アルカリ触媒溶液を得た。次いで、アルカリ触媒溶液の温度を25℃に調整し、アルカリ触媒溶液を窒素置換した。次いで、アルカリ触媒溶液を攪拌しながら、テトラメトキシシラン(TMOS)450部と、触媒(NH
3)濃度が4.44%のアンモニア水270部とを、下記の供給速度で同時に滴下を行い、シリカ粒子懸濁液を得た。ここで、TMOSの供給速度は、3.3部/min、4.44%アンモニア水の供給速度は、1.98部/minとした。
【0132】
次いで、得られたシリカ粒子懸濁液を、スプレードライにより乾燥して溶媒を除去し、親水性シリカ粒子の粉末を得た。得られた親水性シリカ粒子の粉末100部をミキサーに入れ、窒素雰囲気下で200℃に加熱しながら200rpmで攪拌し、ヘキサメチルジシラザンを親水性シリカ粒子の粉末に対し30部滴下し2時間反応させた。次いで、冷却し、疎水性シリカ粒子(1)を得た。トナー粒子に外添した状態において個数平均粒径と形状係数SF2を測定したところ、疎水性シリカ粒子(1)の個数平均粒径は140nm、形状係数SF2は110であった。
【0133】
[疎水性シリカ粒子(2)の作製]
疎水性シリカ粒子(1)の作製において、10%アンモニア水の量を48.2部に変更し、TMOSの供給速度を4.25部/minに変更し、4.44%アンモニア水の供給速度を2.55部/minに変更した以外は同様にして、疎水性シリカ粒子(2)を得た。トナー粒子に外添した状態において個数平均粒径と形状係数SF2を測定したところ、疎水性シリカ粒子(2)の個数平均粒径は90nm、形状係数SF2は115であった。
【0134】
[疎水性シリカ粒子(3)の作製]
疎水性シリカ粒子(1)の作製において、10%アンモニア水の量を50.5部に変更し、TMOSの供給速度を4.25部/minに変更し、4.44%アンモニア水の供給速度を2.55部/minに変更した以外は同様にして、疎水性シリカ粒子(3)を得た。トナー粒子に外添した状態において個数平均粒径と形状係数SF2を測定したところ、疎水性シリカ粒子(3)の個数平均粒径は190nm、形状係数SF2は115であった。
【0135】
<キャリアの作製>
・フェライト粒子(Mn−Mg−Srフェライト、体積平均粒径20μm):100部
・トルエン : 14部
・パーフルオロオクチルメチルアクリレート−メチルメタクリレート共重合体(共重合比(質量比)20:80) : 2部
・カーボンブラック(キャボット社製R330) :0.2部
フェライト粒子以外の上記材料をサンドミルにて分散処理して分散液を調製した。この分散液をフェライト粒子とともに真空脱気型ニーダに入れ、攪拌しながら減圧しトルエンを留去して樹脂被覆キャリアを作製した。この樹脂被覆キャリアを風力式分級機で分級して、体積平均粒径20μmの樹脂被覆キャリアを得た。
【0136】
樹脂被覆キャリアの作製に用いるフェライト粒子の体積平均粒径を変更し、また、必要に応じて風力式分級機で分級して、体積平均粒径27μm、30μm、35μm、40μmの樹脂被覆キャリアも作製した。
【0137】
<現像剤の作製>
[実施例1〜24、比較例1〜20]
トナー粒子100部に対して、シリコーンオイル表面改質シリカ粒子と、疎水性シリカ粒子(1)〜(3)のいずれかとを、表1に記載の量で添加し、サンプルミルを用いて回転数1万rpmで30秒間混合した。次いで、目開き45μmの振動篩いで篩分して外添トナーを得た。次いで、外添トナーと、表1に記載のキャリアとを質量比8:92でVブレンダーに入れ、20分間攪拌し混合した。次いで、目開き212μmの篩で篩分して現像剤を得た。
【0138】
[キャリア表面のケイ素元素の定量]
現像剤からトナーをブローオフしてキャリアを単離した。単離したキャリアを試料として、X線光電子分光装置(ULVAC−PHI社製PHI5000VersaProbeII、X線種:ALモノクロメータ線、X線出力:25W,15kV)を用いてケイ素の電子状態を測定し、Si2pスペクトルを得た。Si2pスペクトルに現れた各ピークの面積強度を求め、{シリコーンオイル由来ピークの面積強度÷シリカ由来ピークの面積強度}を求めた。
【0139】
<画像評価>
画像形成装置に各実施例又は各比較例の現像剤を装填し、画像形成を行って、記録媒体の搬送方向に伸びる筋(色筋及び白筋)の発生の有無を評価した。結果を表1に示す。
【0140】
以下の画像形成においては、筋状の画像欠陥をより発生しやすくする目的で画像密度を低く抑えた。画像密度が低いと現像器内のトナーの入れ替わりが少ないので、外添剤はキャリアから頻繁に外力を受けトナー粒子に埋没する傾向が強まる。
【0141】
[筋状の画像欠陥(1)]
画像形成装置として富士ゼロックス社製AP−V C7775を用意した。該画像形成装置は、接触式帯電装置である帯電ロールと、熱硬化型ポリウレタンゴム製の感光体クリーニングブレードを備えている。この画像形成装置を用いて、直流電圧のみを帯電ロールに印加しつつ、温度23℃、相対湿度50%の環境下で、A3サイズの紙に画像密度1.5%の画像を連続出力した。出力画像を目視で観察して、筋の発生を下記のとおり分類した。
【0142】
A:15000枚までに筋の発生がない。
B:12501〜15000枚の間に筋が発生した。
C:10001〜12500枚の間に筋が発生した。
D:5001〜10000枚の間に筋が発生した。
E:5000枚までに筋が発生した。
【0143】
[筋状の画像欠陥(2)]
画像形成装置として富士ゼロックス社製DocuPrint CP400dを用意した。該画像形成装置は、直流電圧のみが印加される接触式帯電装置である帯電ロールと、熱硬化型ポリウレタンゴム製の感光体クリーニングブレードを備えている。この画像形成装置を用いて、温度23℃、相対湿度50%の環境下で、A3サイズの紙に画像密度1.5%の画像を連続出力した。出力画像を目視で観察して、筋の発生を下記のとおり分類した。
【0144】
A:1500枚までに筋の発生がない。
B:1251〜1500枚の間に筋が発生した。
C:1001〜1250枚の間に筋が発生した。
D:501〜1000枚の間に筋が発生した。
E:500枚までに筋が発生した。
【0145】
【表1】
【0146】
実施例は、比較例に比べ、画像形成の初期においても画像形成を繰り返した場合においても、筋状の画像欠陥の発生を抑制した。