【解決手段】基材110Aと、基材110A上に配置され、水素原子が結合した水素結合シリル基を有する第1のポリシロキサン及びビニル基を有する第2のポリシロキサンの重合体を含み、前記重合体となる前における水素結合シリル基の含有量[s]とビニル基の含有量[v]との比[s:v(mol比)]が1:1.4乃至1:2.2の範囲である弾性層110Bと、弾性層110Bに接触し、水酸基を有する化合物を少なくとも弾性層110Bと接触する側の面に有する表面層110Cと、を備える定着部材110。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一例である実施形態について説明する。
なお、実質的に同一の機能を有する部材には、全図面を通して同じ符合を付与し、重複する説明は適宜省略する場合がある。
【0014】
[定着部材]
本実施形態に係る定着部材について説明する。
図1は、本実施形態に係る定着部材の一例を示す概略断面図である。
【0015】
本実施形態に係る定着部材110は、例えば、
図1に示すように、基材110Aと、基材110A上に設けられた弾性層110Bと、弾性層110Bに接触するよう設けられた表面層110Cと、を有している。
【0016】
そして、弾性層110Bは、水素原子が結合した水素結合シリル基(−SiH)を有する第1のポリシロキサン及びビニル基(−CH=CH
2)を有する第2のポリシロキサンの重合体を含み、前記重合体となる前における前記水素結合シリル基の含有量[s]と前記ビニル基の含有量[v]との比[s:v(mol比)]が1:1.4乃至1:2.2の範囲である。
また、表面層110Cは水酸基を有する化合物を少なくとも前記弾性層と接触する側の面に有する。
【0017】
本実施形態では、上記の構成を備える定着部材により、表面層と弾性層との界面での剥離が抑制される。
この効果が奏される理由は、以下のように推察される。
【0018】
従来から、画像形成装置用の定着装置として、ロール状やベルト状の形状を有する部材である第1回転体及び第2回転体を用い、この両回転体を接触させてニップを形成した状態で回転駆動させ、この第1回転体と第2回転体との接触部(ニップ)にトナー像が表面に形成された記録媒体を挿通してトナー像を定着する定着装置が知られている。そして、この第1回転体や第2回転体として、基材と、ポリシロキサンの重合体を含むシリコーン系の弾性部材(シリコーンゴム)で構成された弾性層と、表面層と、をこの順に有する定着部材であって、弾性層と表面層とが直接接して積層された定着部材が用いられている。
しかし、こうした定着装置では、第1回転体及び第2回転体が接触部(ニップ)において圧縮変形しその後回転駆動に伴って接触部(ニップ)を通過すると圧縮から解放されて元の形状に戻る、という状態が繰り返される。そのため、前記の表面層や弾性層も圧縮変形と圧縮からの解放とが繰り返され、表面層と弾性層との界面には繰り返して負荷が加えられる。そして、この負荷の繰り返しにより、表面層と弾性層とが剥離することがあった。
【0019】
これに対し、本実施形態では、弾性層110Bが、水素結合シリル基(−SiH)を有する第1のポリシロキサン及びビニル基(−CH=CH
2)を有する第2のポリシロキサンの重合体を含む。つまり、この第1のポリシロキサンにおける水素結合シリル基と第2のポリシロキサンにおけるビニル基とが結合することで形成される重合構造を有するシリコーン系の重合体(シリコーンゴム)を含む。そして、この重合体が形成される前の段階での水素結合シリル基の含有量[s]とビニル基の含有量[v]との比[s:v(mol比)]が前記の範囲であり、即ち水素結合シリル基との間で結合を形成するのに要する量を超える余剰のビニル基が、弾性層110B中に存在している。
一方、表面層110Cは、少なくとも前記弾性層と接触する側の面においてビニル基と反応し得る水酸基を有する化合物が存在しており、この水酸基が弾性層110Bとの界面において、該弾性層110B中に存在する余剰のビニル基と反応して結合を形成する。これにより、表面層110Cと弾性層110Bとの界面における接着性が向上され、この界面での剥離が抑制されるものと考えられる。
【0020】
・比[s:v]
弾性層110Bでの、重合体となる前における水素結合シリル基の含有量[s]とビニル基の含有量[v]との比[s:v(mol比)]は、1:1.4乃至1:2.2の範囲である。この比[s:v(mol比)]は、さらに1:1.45乃至1:2.1の範囲が好ましく、1:1.5乃至1:2.0の範囲がより好ましい。
水素結合シリル基1モルに対するビニル基の含有量が1.4モル以上であることで、表面層と弾性層との界面での剥離が抑制される。
一方、水素結合シリル基1モルに対するビニル基の含有量が2.2モル以下であることで、弾性層においてシリコーンゴムの架橋度低下によって生じる破断強度の低下が抑制される。
【0021】
水素結合シリル基とビニル基との量比の制御は、原料となる第1のポリシロキサンと第2のポリシロキサンとの量比、第1のポリシロキサン中における水素結合シリル基の量、及び第2のポリシロキサン中におけるビニル基の量の調整等によって行い得る。
【0022】
・水素結合シリル基及びビニル基の含有量の測定方法
重合体となる前における水素結合シリル基(−SiH)及びビニル基(−CH=CH
2)の含有量の測定は、重合前つまり弾性層110Bの形成前の段階での第1のポリシロキサン及び第2のポリシロキサンについて、NMR分光法を用いることで行われる。具体的には、第1のポリシロキサンを含む溶液及び第2のポリシロキサンを含む溶液を、それぞれn−ヘキサンで5倍に希釈し、遠心分離を行ってろ液を分取する。その後、溶媒を除去し、重水素化クロロホルム(CDCl
3)に溶解してNMR(バリアン社製、製品名:UNITY−300)により解析し、それぞれの含有量が得られる。
【0023】
次いで、本実施形態に係る定着部材110の構成要素について詳細に説明する。なお、符号は省略して説明する。
【0024】
(定着部材の形状)
本実施形態に係る定着部材は、ロール状であってもよいし、ベルト状であってもよい。また、熱源をその内部又は外部に備えた加熱定着部材であってもよいし、熱源を備えない加圧定着部材であってもよい。
【0025】
(基材)
定着部材がロール状の場合、基材としては、例えば、金属(アルミ、SUS、鉄、銅等)、合金、セラミックス、FRM(繊維強化メタル)等で構成された円筒体が挙げられる。
定着部材がロール状の場合、基材の外径及び肉厚は、例えば、外径10mm以上50mm以下であることがよく、例えば、アルミニウム製の場合は厚さ0.5mm以上4mm以下、SUS(ステンレス鋼)製又は鉄製の場合は厚さ0.1mm以上2mm以下である。
【0026】
一方、定着部材がベルト状の場合、基材としては、例えば、金属ベルト(例えば、ニッケル、アルミニウム、ステンレス等の金属ベルト)、樹脂ベルト(例えば、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリベンゾイミダゾール等の樹脂ベルト)が挙げられる。
なお、樹脂ベルトには導電剤などを添加分散して、体積抵抗率が制御されていてもよい。具体的には、樹脂ベルトとしては、例えば、カーボンブラックを添加し分散して体積抵抗率を制御したポリイミドベルトが挙げられる。また、樹脂ベルトとしては、例えば、長尺のポリイミドシートの両端部をパズル上に組合せ、熱圧着部材を用いて熱圧着し、ベルト状に仕立てたものも挙げられる。
【0027】
定着部材がベルト状の場合、基材の厚みは、例えば、20μm以上200μm以下であることがよく、望ましくは30μm以上150μm以下、より望ましくは40μm以上130μm以下である。
【0028】
なお、基材の外周面には接着剤を塗布してもよい。つまり、基材と弾性層とが接着剤層を介して積層されていてもよい。
【0029】
(弾性層)
弾性層は、水素原子が結合した水素結合シリル基(−SiH)を有する第1のポリシロキサンと、ビニル基(−CH=CH
2)を有する第2のポリシロキサンと、の重合体を含む。また、重合体となる前における水素結合シリル基の含有量[s]とビニル基の含有量[v]との比[s:v(mol比)]が前述の範囲である。
【0030】
・第1のポリシロキサン
水素結合シリル基(−SiH)を有する第1のポリシロキサンとしては、特に限定されず、公知の材料が使用され得る。第1のポリシロキサンにおいて、水素結合シリル基(−SiH)は主鎖の末端に存在していても、主鎖の側鎖に存在していてもよい。
【0031】
第1のポリシロキサンとしては、例えば、主鎖の両末端又は片末端に−SiH(R
1)
2基を有するオルガノポリシロキサン(なお、R
1は水素原子又は有機基を表し、メチル基が好ましく、2つのR
1は同じであっても異なっていてもよい)、主鎖の側鎖に水素原子を有する(つまり主鎖中に−[O−Si(−H)(−R
2)]−の構造を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン(なお、R
2は水素原子又は有機基を表し、メチル基が好ましい)が挙げられる。
【0032】
より具体的には、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン/メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン/メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン/ジフェニルシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン/ジフェニルシロキサン/ジメチルシロキサン共重合体等のオルガノハイドロジェンポリシロキサンが挙げられる。
これらの第1のポリシロキサンは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0033】
・第2のポリシロキサン
ビニル基(−CH=CH
2)を有する第2のポリシロキサンとしては、特に限定されず、公知の材料が使用され得る。第2のポリシロキサンにおいて、ビニル基は主鎖の末端に存在していても、主鎖の側鎖に存在していてもよい。
【0034】
第2のポリシロキサンとしては、例えば、主鎖の両末端又は片末端においてケイ素原子(Si)にビニル基(−CH=CH
2)が結合したオルガノポリシロキサン、主鎖の側鎖となるようケイ素原子(Si)にビニル基(−CH=CH
2)が結合したにオルガノポリシロキサンが挙げられる。
【0035】
より具体的には、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルビニルポリシロキサン、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン/メチルビニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン/メチルビニルシロキサン/メチルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖メチルビニルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン/メチルビニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン/メチルビニルシロキサン/メチルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジビニルメチルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端ジビニルメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン/メチルビニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端トリビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン/メチルビニルシロキサン共重合体等のオルガノポリシロキサンが挙げられる。
これらの第2のポリシロキサンは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0036】
第1のポリシロキサン及び第2のポリシロキサンにおける水素結合シリル基の量、ビニル基の量の調整、並びに第1のポリシロキサンと第2のポリシロキサンとの量比の調整、等により水素結合シリル基の含有量[s]とビニル基の含有量[v]との比[s:v(mol比)]が前述の範囲に制御される。
【0037】
弾性層を構成する材料は、各種添加剤が配合されてもよい。添加剤としては、例えば、補強剤(カーボンブラック等)、充填剤(炭酸カルシウム等)、軟化剤(パラフィン系等)、加工助剤(ステアリン酸等)、老化防止剤(アミン系等)、加硫剤(硫黄、金属酸化物、過酸化物等)、機能性充填剤(アルミナ等)等が挙げられる。
【0038】
弾性層の膜厚は、例えば、30μm以上1mm以下であることがよく、望ましくは100μm以上500μm以下である。
【0039】
(表面層)
表面層は、水酸基を有する化合物を少なくとも弾性層と接触する側の面に有する。
【0040】
表面層の弾性層と接触する側の面に水酸基を有する化合物を存在させる方法としては、表面層の弾性層側の面に表面処理を施すことで水酸基を有する化合物を存在させる方法が挙げられる。
なお、表面層を構成する材料自体として水酸基を有する材料を用いる方法も考えられるが、表面層に求められる機能を保持しつつかつ弾性層側の面に水酸基を有する化合物を存在させる観点から、水酸基を有しない材料によって構成された表面層の弾性層側の面に、表面処理によって水酸基を有する化合物を存在させる方法がより好ましい。
【0041】
表面層には、例えば耐熱性や離型性が求められる。この観点から、表面層を構成する材料には耐熱性離型材料を用いることが好ましく、具体的にはフッ素ゴム、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、ポリイミド樹脂等が挙げられる。
これらの中でも、耐熱性離型材料としては、フッ素樹脂がよい。
このようなフッ素樹脂として、具体的には、テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、ポリエチレン/テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリクロロ三フッ化エチレン(PCTFE)、フッ化ビニル(PVF)等が挙げられる。
【0042】
・表面処理
弾性層側の面に水酸基を有する化合物を存在させるための表面処理としては、湿式処理であっても乾式処理であってもよい。例えば、液体アンモニア処理によって水酸基を表面に導入する方法、エキシマレーザ処理によって水酸基を表面に導入する方法、プラズマ処理でビニルアルコキシシランをグラフト重合させアルコキシシランの水酸基を表面に導入する方法が挙げられる。
【0043】
ここで、プラズマ処理により水酸基を有する化合物を存在させる方法について、一例を挙げて説明する。
例えば、ビニルアルコキシシランをプラズマ励起ガス中に導入して表面層の内面(弾性層側の面)をプラズマ処理する方法が挙げられる。
【0044】
プラズマ化されやすいプラズマ励起ガスとビニルアルコキシシランの混合ガスを、表面層と放電電極の間に供給し、電圧を放電電極に印加することでプラズマを発生させる。なお、より高い電圧をかけるほど、電気力線が電極表面から遠方まで到達するようになり、表面層と放電電極の間の空間における電気力線が増加しプラズマ密度は高くなる。
これにより、プラズマが表面層の内面と接触し、ラジカルが表面層を構成するフッ素樹脂に生成する。フッ素樹脂のラジカルと、ビニルアルコキシシランのビニル基とがラジカル反応し、ビニルアルコキシシランが当該フッ素樹脂にグラフト重合する。そして、ビニルアルコキシシランのグラフト重合に由来し、表面層の内面に凸部を形成する枝部分のアルコキシ基は空気中の水により加水分解され水酸基になる。
【0045】
また、表面層の内面には、グラフト重合したビニルアルコキシシランだけではなくグラフト重合されずに表面層内面に付着しているビニルアルコキシシランが存在する。当該ビニルアルコキシシランは空気中の水により加水分解され、更に時間の経過と共に縮合反応する。
【0046】
なお、このプラズマ処理において、プラズマ密度が高いほど表面層の内面との接触が増えてフッ素樹脂のラジカル生成量が多くなり、ラジカル反応の反応点が多くなる。さらにラジカル反応によるグラフト重合の反応は早く、ラジカル反応の初期段階において表面層の内面には小さな凸が、細かく分散して形成される。
【0047】
ここで、上記プラズマ励起ガスの具体例としては、水素;ヘリウム、アルゴン等の希ガス;窒素が挙げられ、1種又は2種以上の励起ガスが使用される。
【0048】
・表面処理による物性
表面層の内面(弾性層側の面)における粗さとしては、算術平均粗さRaは0.08μm未満であることが好ましく、さらにはRa0.07μm以下がより好ましい。
また、粗さ曲線要素の平均長さRSmは15μm未満であることが好ましく、さらにはRSm14μm以下がより好ましい。
【0049】
なお、前記Ra及びRSmは、JIS B 0601に準じて測定される。
具体的には、レーザーテック株式会社製コンフォーカル顕微鏡(OPTELICS H1200)を使用し、高さ方向の分解能0.01μmにて表面層内面の表面形状を測定する。得られた表面形状の任意の位置から表面層の長手方向に150μmの評価長さをとり、二次関数で曲率補正を行った上で、JIS B 0601に基づいて表面粗さを計測する。表面粗さの計測は、実表面の断面曲線から断面曲線を作成するときのカットオフ値を0.0025mm、断面曲線から粗さ曲線を作成するときのカットオフ値を0.08mmとして行われる。
【0050】
表面層の内面(弾性層側の面)における原子組成比としては、「炭素(C):酸素(O)」の比(モル比)が1:0.2乃至1:1.5の範囲であることが好ましく、1:0.3乃至1:1.2の範囲であることがより好ましい。炭素に対する酸素の量が上記範囲であることで、弾性層との接着性がより向上する。
【0051】
なお、表面層の内面(弾性層側の面)における原子組成(炭素(C)、酸素(O))は、蛍光X線測定(XPS分析)により測定される。
測定対象となる表面層の一部を切り出し測定用試料を準備する。測定用試料を、蛍光X線解析装置(島津製作所社製、XRF−1500)を用いて、X線出力40V−70mA、測定面積10mmφ、測定時間15分の条件で、定性定量全元素分析法にて測定し、得られたCに由来するピークの強度、Oに由来するピークの強度、及びFに由来するピークの強度から算出する。
なお、得られたピークが他の元素に由来するピークと重なる場合には、ICP発光分光法や原子吸光法にて解析したうえで、求めるべき原子に由来するピークの強度をそれぞれ算出する。
【0052】
表面層の厚みは、100μm以下であることが好ましく、5μm以上50μm以下であることがより好ましく、さらに望ましくは10μm以上40μm以下である。
【0053】
(定着部材の製造方法)
次に、定着部材の製造方法について説明する。
定着部材の製造方法としては、例えば、基材上に、前述の第1のポリシロキサン及び第2のポリシロキサンを水素結合シリル基の含有量[s]とビニル基の含有量[v]との比[s:v(mol比)]が前述の範囲となるよう調整した弾性層形成用の塗布液を基材上に塗布し、重合体を合成させ硬化して弾性層を形成する。なお、基材と弾性層との間に接着剤層を介してもよい。ついで、前述の耐熱性離型材料を用いて製造した管状体(チューブ)を準備し、管状体内面に前述の表面処理を施して水酸基を有する化合物を導入し、その後弾性層上に管状体を被覆して表面層を形成することで、定着部材を形成し得る。なお、管状体の被覆後に焼成を行うことで、弾性層形成用の塗布液の硬化反応を進めてもよい。
【0054】
(定着部材の用途)
本実施形態に係る定着部材は、例えば、加熱ロール、加圧ロール、加熱ベルト、及び加圧ベルト等に適用される。なお、加熱ロール及び加熱ベルトにおける熱源としては、外部の熱源から加熱する方式や、電磁誘導方式による方式等が挙げられる。
【0055】
[定着装置]
本実施形態に係る定着装置としては、種々の構成があり、例えば、第1回転体と、第1回転体の外面に接して配置される第2回転体と、を備える。そして、第1回転体及び第2回転体の少なくとも一方として、本実施形態に係る定着部材が適用される。
【0056】
以下に、第1及び2実施形態として、加熱ベルトと加圧ロールとを備えた定着装置を説明する。そして、第1及び2実施形態において、本実施形態に係る定着部材は、加熱ベルト、及び加圧ロールのいずれにも適用され得る。
なお、本実施形態に係る定着装置は、第1及び第2実施形態に限られず、加熱ロール又は加熱ベルトと加圧ベルトとを備えた定着装置であってよい。そして、本実施形態に係る定着部材は、加熱ロール、加熱ベルト及び加圧ベルトのいずれにも適用され得る。
また、本実施形態に係る定着装置は、第1及び第2実施形態に限られず、電磁誘導加熱方式の定着装置であってもよい。
【0057】
(定着装置の第1実施形態)
第1実施形態に係る定着装置について説明する。
図2は、第1実施形態に係る定着装置の一例を示す概略図である。
【0058】
第1実施形態に係る定着装置60は、
図2に示すように、例えば、回転駆動する加熱ロール61(第1回転体の一例)と、加圧ベルト62(第2回転体の一例)と、加圧ベルト62を介して加熱ロール61を押圧する押圧パッド64(押圧部材の一例)とを備えて構成されている。
なお、押圧パッド64は、例えば、加圧ベルト62と加熱ロール61とが相対的に加圧されていればよい。従って、加圧ベルト62側が加熱ロール61に加圧されてもよく、加熱ロール61側が加熱ロール61に加圧されてもよい。
【0059】
加熱ロール61の内部には、ハロゲンランプ66(加熱手段の一例)が配設されている。加熱手段としては、ハロゲンランプに限られず、発熱する他の発熱部材を用いてもよい。
【0060】
一方、加熱ロール61の表面には、例えば、感温素子69が接触して配置されている。この感温素子69による温度計測値に基づいて、ハロゲンランプ66の点灯が制御され、加熱ロール61の表面温度が目的とする設定温度(例えば、150℃)を維持される。
【0061】
加圧ベルト62は、例えば、内部に配置された押圧パッド64とベルト走行ガイド63とによって回転自在に支持されている。そして、挟込領域N(ニップ部)において押圧パッド64により加熱ロール61に対して押圧されて配置されている。
【0062】
押圧パッド64は、例えば、加圧ベルト62の内側において、加圧ベルト62を介して加熱ロール61に加圧される状態で配置され、加熱ロール61との間で挟込領域Nを形成している。
押圧パッド64は、例えば、幅の広い挟込領域Nを確保するための前挟込部材64aを挟込領域Nの入口側に配置し、加熱ロール61に歪みを与えるための剥離挟込部材64bを挟込領域Nの出口側に配置している。
【0063】
加圧ベルト62の内周面と押圧パッド64との摺動抵抗を小さくするために、例えば、前挟込部材64a及び剥離挟込部材64bの加圧ベルト62と接する面にシート状の摺動部材68が設けられている。そして、押圧パッド64と摺動部材68とは、金属製の保持部材65に保持されている。
なお、摺動部材68は、例えば、その摺動面が加圧ベルト62の内周面と接するように設けられており、加圧ベルト62との間に存在するオイルの保持・供給に関与する。
【0064】
保持部材65には、例えば、ベルト走行ガイド63が取り付けられ、加圧ベルト62が回転する構成となっている。
【0065】
加熱ロール61は、例えば、図示しない駆動モータにより矢印S方向に回転し、この回転に従動して加圧ベルト62は、加熱ロール61の回転方向と反対の矢印R方向へ回転する。すなわち、例えば、加熱ロール61が
図2における時計方向へ回転するのに対して、加圧ベルト62は反時計方向へ回転する。
【0066】
そして、未定着トナー像を有する用紙K(記録媒体の一例)は、例えば、定着入口ガイド56によって導かれて、挟込領域Nに搬送される。そして、用紙Kが挟込領域Nを通過する際に、用紙K上のトナー像は挟込領域Nに作用する圧力と熱とによって定着される。
【0067】
第1実施形態に係る定着装置60では、例えば、加熱ロール61の外周面に倣う凹形状の前挟込部材64aにより、前挟込部材64aがない構成に比して、広い挟込領域Nを確保される。
【0068】
また、第1実施形態に係る定着装置60では、例えば、加熱ロール61の外周面に対し突出させて剥離挟込部材64bを配置することにより、挟込領域Nの出口領域において加熱ロール61の歪みが局所的に大きくなるように構成されている。
【0069】
このように剥離挟込部材64bを配置すれば、例えば、定着後の用紙Kは、剥離挟込領域を通過する際に、局所的に大きく形成された歪みを通過することになるので、用紙Kが加熱ロール61から剥離しやすい。
【0070】
剥離の補助手段として、例えば、加熱ロール61の挟込領域Nの下流側に、剥離部材70を配設されている。剥離部材70は、例えば、剥離爪71が加熱ロール61の回転方向と対向する向き(カウンタ方向)に加熱ロール61と近接する状態で保持部材72によって保持されている。
【0071】
(定着装置の第2実施形態)
第2実施形態に係る定着装置について説明する。
図3は、第2実施形態に係る定着装置の一例を示す概略図である。
【0072】
第2実施形態に係る定着装置80は、
図3に示すように、例えば、加熱ベルト84(第1回転体の一例)を備える定着ベルトモジュール86と、加熱ベルト84(定着ベルトモジュール86)に押圧して配置された加圧ロール88(第2回転体の一例)とを含んで構成されている。そして、例えば、加熱ベルト84(定着ベルトモジュール86)と加圧ロール88とが接触する挟込領域N(ニップ部)が形成されている。挟込領域Nでは、用紙K(記録媒体の一例)が加圧及び加熱されトナー像が定着される。
【0073】
定着ベルトモジュール86は、例えば、無端状の加熱ベルト84と、加圧ロール88側で加熱ベルト84が巻き掛けられ、モータ(不図示)の回転力で回転駆動すると共に加熱ベルト84をその内周面から加圧ロール88側へ押し付ける加熱押圧ロール89と、加熱押圧ロール89と異なる位置で内側から加熱ベルト84を支持する支持ロール90とを備えている。
定着ベルトモジュール86は、例えば、加熱ベルト84の外側に配置されてその周回経路を規定する支持ロール92と、加熱押圧ロール89から支持ロール90までの加熱ベルト84の姿勢を矯正する姿勢矯正ロール94と、加熱ベルト84(定着ベルトモジュール86)と加圧ロール88とが接触する領域である挟込領域Nの下流側において加熱ベルト84を内周面から張力を付与する支持ロール98とが設けられている。
【0074】
そして、定着ベルトモジュール86は、例えば、加熱ベルト84と加熱押圧ロール89との間に、シート状の摺動部材82が介在するように設けられている。
摺動部材82は、例えば、その摺動面が加熱ベルト84の内周面と接するように設けられており、加熱ベルト84との間に存在するオイルの保持・供給に関与する。
ここで、摺動部材82は、例えば、その両端が支持部材96により支持された状態で設けられている。
【0075】
加熱押圧ロール89の内部には、例えば、ハロゲンヒータ89A(加熱手段の一例)が設けられている。
【0076】
支持ロール90は、例えば、アルミニウムで形成された円筒状ロールであり、内部にはハロゲンヒータ90A(加熱手段の一例)が配設されており、加熱ベルト84を内周面側から加熱するようになっている。
支持ロール90の両端部には、例えば、加熱ベルト84を外側に押圧するバネ部材(不図示)が配設されている。
【0077】
支持ロール92は、例えば、アルミニウムで形成された円筒状ロールであり、支持ロール92の表面には厚み20μmのフッ素樹脂からなる離型層が形成されている。
支持ロール92の離型層は、例えば、加熱ベルト84の外周面からのトナーや紙粉が支持ロール92に堆積するのを防止するために形成されるものである。
支持ロール92の内部には、例えば、ハロゲンヒータ92A(加熱源の一例)が配設されており、加熱ベルト84を外周面側から加熱するようになっている。
【0078】
つまり、例えば、加熱押圧ロール89と支持ロール90及び支持ロール92とによって、加熱ベルト84が加熱される構成となっている。
【0079】
姿勢矯正ロール94は、例えば、アルミニウムで形成された円柱状ロールであり、姿勢矯正ロール94の近傍には、加熱ベルト84の端部位置を測定する端部位置測定機構(不図示)が配置されている。
姿勢矯正ロール94には、例えば、端部位置測定機構の測定結果に応じて加熱ベルト84の軸方向における当り位置を変位させる軸変位機構(不図示)が配設され、加熱ベルト84の蛇行を制御するように構成されている。
【0080】
一方、加圧ロール88は、例えば、回転自在に支持されると共に、図示しないスプリング等の付勢手段によって加熱ベルト84が加熱押圧ロール89に巻き回された部位に押圧されて設けられている。これにより、定着ベルトモジュール86の加熱ベルト84(加熱押圧ロール89)が矢印S方向へ回転移動するのに伴って、加熱ベルト84(加熱押圧ロール89)に従動して加圧ロール88が矢印R方向に回転移動するようになっている。
【0081】
そして、未定着トナー像(不図示)を有する用紙Kは、矢印P方向に搬送され、定着装置80の挟込領域Nに導かれると、挟込領域Nに作用する圧力と熱とによって定着される。
【0082】
なお、第2実施形態に係る定着装置80では、加熱源の一例としてハロゲンヒータ(ハロゲンランプ)を適用した形態を説明したが、これに限られず、ハロゲンヒータ以外の輻射ランプ発熱体(放射線(赤外線等)を発する発熱体)、抵抗発熱体(抵抗に電流を流すことによりジュール熱を発生させる発熱体:例えばセラミック基板に厚膜抵抗を有する膜を形成して焼成させたもの等)を適用してもよい。
【0083】
[画像形成装置]
次に、本実施形態に係る画像形成装置について説明する。
本実施形態の画像形成装置は、像保持体と、像保持体の表面を帯電させる帯電手段と、帯電された像保持体の表面に潜像を形成する潜像形成手段と、潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像手段と、トナー像を記録媒体に転写する転写手段と、トナー像を記録媒体に定着する定着手段と、を備える。そして、定着手段として、本実施形態に係る定着装置が適用される。
【0084】
以下、本実施形態に係る画像形成装置について図面を参照しつつ説明する。
図4は、本実施形態に係る画像形成装置の構成を示した概略構成図である。
【0085】
本実施形態に係る画像形成装置100は、
図4に示すように、例えば、一般にタンデム型と呼ばれる中間転写方式の画像形成装置であって、電子写真方式により各色成分のトナー像が形成される複数の画像形成ユニット1Y、1M、1C、1Kと、各画像形成ユニット1Y、1M、1C、1Kにより形成された各色成分トナー像を中間転写ベルト15に順次転写(一次転写)させる一次転写部10と、中間転写ベルト15上に転写された重畳トナー像を記録媒体である用紙Kに一括転写(二次転写)させる二次転写部20と、二次転写された画像を用紙K上に定着させる定着装置60と、を備えている。また、画像形成装置100は、各装置(各部)の動作を制御する制御部40を有している。
【0086】
この定着装置60が既述の第1実施形態に係る定着装置60である。なお、画像形成装置100は、既述の第2実施形態に係る定着装置80を備える構成であってもよい。
【0087】
画像形成装置100の各画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kは、表面に形成されるトナー像を保持する像保持体の一例として、矢印A方向に回転する感光体11を備えている。
【0088】
感光体11の周囲には、帯電手段の一例として、感光体11を帯電させる帯電器12が設けられ、潜像形成手段の一例として、感光体11上に静電潜像を書込むレーザ露光器13(図中露光ビームを符号Bmで示す)が設けられている。
【0089】
また、感光体11の周囲には、現像手段の一例として、各色成分トナーが収容されて感光体11上の静電潜像をトナーにより可視像化する現像器14が設けられ、感光体11上に形成された各色成分トナー像を一次転写部10にて中間転写ベルト15に転写する一次転写ロール16が設けられている。
【0090】
更に、感光体11の周囲には、感光体11上の残留トナーが除去される感光体クリーナ17が設けられ、帯電器12、レーザ露光器13、現像器14、一次転写ロール16及び感光体クリーナ17の電子写真用デバイスが感光体11の回転方向に沿って順次配設されている。これらの画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kは、中間転写ベルト15の上流側から、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の順に、略直線状に配置されている。
【0091】
中間転写体である中間転写ベルト15は、ポリイミド又はポリアミド等の樹脂をベース層としてカーボンブラック等の帯電防止剤を適当量含有させたフィルム状の加圧ベルトで構成されている。そして、その体積抵抗率は10
6Ωcm以上10
14Ωcm以下となるように形成されており、その厚みは、例えば、0.1mm程度に構成されている。
【0092】
中間転写ベルト15は、各種ロールによって
図4に示すB方向に目的に合わせた速度で循環駆動(回転)されている。この各種ロールとして、定速性に優れたモータ(不図示)により駆動されて中間転写ベルト15を回転させる駆動ロール31、各感光体11の配列方向に沿って略直線状に延びる中間転写ベルト15を支持する支持ロール32、中間転写ベルト15に対して張力を与えると共に中間転写ベルト15の蛇行を防止する補正ロールとして機能する張力付与ロール33、二次転写部20に設けられる背面ロール25、中間転写ベルト15上の残留トナーを掻き取るクリーニング部に設けられるクリーニング背面ロール34を有している。
【0093】
一次転写部10は、中間転写ベルト15を挟んで感光体11に対向して配置される一次転写ロール16で構成されている。一次転写ロール16は、芯体と、芯体の周囲に固着された弾性層としてのスポンジ層とで構成されている。芯体は、鉄、SUS等の金属で構成された円柱棒である。スポンジ層はカーボンブラック等の導電剤を配合したNBRとSBRとEPDMとのブレンドゴムで形成され、体積抵抗率が10
7.5Ωcm以上10
8.5Ωcm以下のスポンジ状の円筒ロールである。
【0094】
そして、一次転写ロール16は中間転写ベルト15を挟んで感光体11に圧接配置され、更に一次転写ロール16にはトナーの帯電極性(マイナス極性とする。以下同様。)と逆極性の電圧(一次転写バイアス)が印加されるようになっている。これにより、各々の感光体11上のトナー像が中間転写ベルト15に順次、静電吸引され、中間転写ベルト15上において重畳されたトナー像が形成されるようになっている。
【0095】
二次転写部20は、背面ロール25と、中間転写ベルト15のトナー像保持面側に配置される二次転写ロール22と、を備えて構成されている。
【0096】
背面ロール25は、表面がカーボンを分散したEPDMとNBRのブレンドゴムのチューブ、内部はEPDMゴムで構成されている。そして、その表面抵抗率が10
7Ω/□以上10
10Ω/□以下となるように形成され、硬度は、例えば、70°(アスカーC:高分子計器社製、以下同様。)に設定される。この背面ロール25は、中間転写ベルト15の裏面側に配置されて二次転写ロール22の対向電極を構成し、二次転写バイアスが安定的に印加される金属製の給電ロール26が接触配置されている。
【0097】
一方、二次転写ロール22は、芯体と、芯体の周囲に固着された弾性層としてのスポンジ層とで構成されている。芯体は鉄、SUS等の金属で構成された円柱棒である。スポンジ層はカーボンブラック等の導電剤を配合したNBRとSBRとEPDMとのブレンドゴムで形成され、体積抵抗率が10
7.5Ωcm以上10
8.5Ωcm以下のスポンジ状の円筒ロールである。
【0098】
そして、二次転写ロール22は中間転写ベルト15を挟んで背面ロール25に圧接配置され、更に二次転写ロール22は接地されて背面ロール25との間に二次転写バイアスが形成され、二次転写部20に搬送される用紙K上にトナー像を二次転写する。
【0099】
また、中間転写ベルト15の二次転写部20の下流側には、二次転写後の中間転写ベルト15上の残留トナーや紙粉を除去し、中間転写ベルト15の表面をクリーニングする中間転写ベルトクリーナ35が接離自在に設けられている。
【0100】
なお、中間転写ベルト15、一次転写部10(一次転写ロール16)、及び二次転写部20(二次転写ロール22)が、転写手段の一例に該当する。
【0101】
一方、イエローの画像形成ユニット1Yの上流側には、各画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kにおける画像形成タイミングをとるための基準となる基準信号を発生する基準センサ(ホームポジションセンサ)42が配設されている。また、黒の画像形成ユニット1Kの下流側には、画質調整を行うための画像濃度センサ43が配設されている。この基準センサ42は、中間転写ベルト15の裏側に設けられたマークを認識して基準信号を発生しており、この基準信号の認識に基づく制御部40からの指示により、各画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kは画像形成を開始するように構成されている。
【0102】
更に、本実施形態に係る画像形成装置では、用紙Kを搬送する搬送手段として、用紙Kを収容する用紙収容部50、この用紙収容部50に集積された用紙Kを予め定められたタイミングで取り出して搬送する給紙ロール51、給紙ロール51により繰り出された用紙Kを搬送する搬送ロール52、搬送ロール52により搬送された用紙Kを二次転写部20へと送り込む搬送ガイド53、二次転写ロール22により二次転写された後に搬送される用紙Kを定着装置60へと搬送する搬送ベルト55、用紙Kを定着装置60に導く定着入口ガイド56を備えている。
【0103】
次に、本実施形態に係る画像形成装置の基本的な作像プロセスについて説明する。
本実施形態に係る画像形成装置では、図示しない画像読取装置や図示しないパーソナルコンピュータ(PC)等から出力される画像データは、図示しない画像処理装置により画像処理が施された後、画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kによって作像作業が実行される。
【0104】
画像処理装置では、入力された反射率データに対して、シェーディング補正、位置ズレ補正、明度/色空間変換、ガンマ補正、枠消しや色編集、移動編集等の各種画像編集等の画像処理が施される。画像処理が施された画像データは、Y、M、C、Kの4色の色材階調データに変換され、レーザ露光器13に出力される。
【0105】
レーザ露光器13では、入力された色材階調データに応じて、例えば半導体レーザから出射された露光ビームBmを画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kの各々の感光体11に照射している。画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kの各感光体11では、帯電器12によって表面が帯電された後、このレーザ露光器13によって表面が走査露光され、静電潜像が形成される。形成された静電潜像は、各々の画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kによって、Y、M、C、Kの各色のトナー像として現像される。
【0106】
画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kの感光体11上に形成されたトナー像は、各感光体11と中間転写ベルト15とが接触する一次転写部10において、中間転写ベルト15上に転写される。より具体的には、一次転写部10において、一次転写ロール16により中間転写ベルト15の基材に対しトナーの帯電極性(マイナス極性)と逆極性の電圧(一次転写バイアス)が付加され、トナー像を中間転写ベルト15の表面に順次重ね合わせて一次転写が行われる。
【0107】
トナー像が中間転写ベルト15の表面に順次一次転写された後、中間転写ベルト15は移動してトナー像が二次転写部20に搬送される。トナー像が二次転写部20に搬送されると、搬送手段では、トナー像が二次転写部20に搬送されるタイミングに合わせて給紙ロール51が回転し、用紙収容部50から目的とするサイズの用紙Kが供給される。給紙ロール51により供給された用紙Kは、搬送ロール52により搬送され、搬送ガイド53を経て二次転写部20に到達する。この二次転写部20に到達する前に、用紙Kは一旦停止され、トナー像が保持された中間転写ベルト15の移動タイミングに合わせて位置合わせロール(不図示)が回転することで、用紙Kの位置とトナー像の位置との位置合わせがなされる。
【0108】
二次転写部20では、中間転写ベルト15を介して、二次転写ロール22が背面ロール25に加圧される。このとき、タイミングを合わせて搬送された用紙Kは、中間転写ベルト15と二次転写ロール22との間に挟み込まれる。その際に、給電ロール26からトナーの帯電極性(マイナス極性)と同極性の電圧(二次転写バイアス)が印加されると、二次転写ロール22と背面ロール25との間に転写電界が形成される。そして、中間転写ベルト15上に保持された未定着トナー像は、二次転写ロール22と背面ロール25とによって加圧される二次転写部20において、用紙K上に一括して静電転写される。
【0109】
その後、トナー像が静電転写された用紙Kは、二次転写ロール22によって中間転写ベルト15から剥離された状態でそのまま搬送され、二次転写ロール22の用紙搬送方向下流側に設けられた搬送ベルト55へと搬送される。搬送ベルト55では、定着装置60における最適な搬送速度に合わせて、用紙Kを定着装置60まで搬送する。定着装置60に搬送された用紙K上の未定着トナー像は、定着装置60によって熱及び圧力で定着処理を受けることで用紙K上に定着される。そして定着画像が形成された用紙Kは、画像形成装置の排出部に設けられた排紙収容部(不図示)に搬送される。
【0110】
一方、用紙Kへの転写が終了した後、中間転写ベルト15上に残った残留トナーは、中間転写ベルト15の回転に伴ってクリーニング部まで搬送され、クリーニング背面ロール34及び中間転写ベルトクリーナ35によって中間転写ベルト15上から除去される。
【0111】
以上、本実施形態について説明したが、上記実施の形態に限定的に解釈されるものではなく、種々の変形、変更、改良が可能である。
【実施例】
【0112】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0113】
[実施例1]
・基材の準備
接着剤として信越化学工業社製の製品名:PRIMER−No32を準備し、芯金(材質:アルミニウム)の外周面に厚さ1.0μmとなるよう塗布して、接着剤層を備えた芯金(基材)を準備した。
【0114】
・弾性層
シリコーンゴム組成物として信越化学工業社製の製品名:X34−1053のA液及びB液(A液:ビニル基(−CH=CH
2)を有する第2のポリシロキサン、及び触媒(白金)を含む、B液:水素結合シリル基(−SiH)を有する第1のポリシロキサン、及びビニル基(−CH=CH
2)を有する第2のポリシロキサンを含む)を準備した。
このA液及びB液を比率(A液:B液(質量比))で90:110で混合し、弾性層形成用の塗布液を得た。ビニル基と水素結合シリル基(SiH基)の比を下記表1に示す。
この塗布液を基材(接着剤層)表面に塗布し、120℃15分で加熱して弾性層を形成した。
【0115】
・表面層
PFA(三井デュポンフロロケミカル(株)製、451HP−J)を原料とするフッ素樹脂チューブを、射出成形により成形した。
次いでフッ素樹脂チューブの内面にプラズマ処理を施した。具体的には、放電電極から印加電圧10kV、周波数18kHz、励起ガス(Ar)とシラン(ビニルメトキシシラン)の混合ガスを用い、その流量1L/minとし、シランはバブリングにより気化されて励起ガスに混合した。プラズマ処理時間10秒に設定し、外径24.5mm、肉厚30μmのフッ素樹脂チューブを得た。
なお、フッ素樹脂チューブ内面では、Ra0.031μm、RSm6.522μm、炭素(C):酸素(O)の比(モル比)1:0.6であった。
【0116】
このフッ素樹脂チューブを弾性層上に被覆し、200℃2時間で加熱して弾性層をさらに硬化させ、定着ロールを得た。
【0117】
[実施例2〜4、比較例1]
実施例1において、弾性層形成の際のA液及びB液の比率(A液:B液(質量比))を、下記表1に記載のものに変更したこと以外は、実施例1と同様にして定着ロールを得た。
【0118】
[評価]
(剥離試験)
実施例、比較例で得た各々の定着ロールについて、以下の方法により剥離試験を実施した。定着ロールの表面層に20mm幅で周方向に向かう切込みを入れ、表面層及び弾性層部を保持し、定着ロールの外側(芯金側から離れる方向)に向かって表面90°方向に引張ることで、剥離試験を実施した。
弾性層と表面層との界面における剥離の発生具合(総面積に対する剥離が発生した領域の面積の比(%))を評価した。また、その結果から以下の基準により評価した。なお、評価A(○)及びB(△)である場合には実用上問題なしと判断した。
A(○):剥離発生領域0.1%未満
B(△):剥離発生領域0.1%以上10%未満
C(×):剥離発生領域10%以上
【0119】
【表1】
【0120】
上記結果から、本実施例は、比較例に比べ、表面層と弾性層との界面での剥離が抑制されていることがわかる。