(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-219864(P2017-219864A)
(43)【公開日】2017年12月14日
(54)【発明の名称】走査露光装置及び走査露光方法
(51)【国際特許分類】
G02F 1/1337 20060101AFI20171117BHJP
G03F 7/20 20060101ALI20171117BHJP
【FI】
G02F1/1337
G03F7/20 501
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2017-167435(P2017-167435)
(22)【出願日】2017年8月31日
(62)【分割の表示】特願2013-45994(P2013-45994)の分割
【原出願日】2013年3月7日
(71)【出願人】
【識別番号】500171707
【氏名又は名称】株式会社ブイ・テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】特許業務法人 英知国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100118898
【弁理士】
【氏名又は名称】小橋 立昌
(72)【発明者】
【氏名】橋本 和重
(72)【発明者】
【氏名】新井 敏成
【テーマコード(参考)】
2H197
2H290
【Fターム(参考)】
2H197AA09
2H197CA04
2H197CD12
2H197CD33
2H197CD35
2H197DB02
2H197DB06
2H197DC02
2H197DC13
2H197HA05
2H290BF24
2H290BF92
(57)【要約】
【課題】基板表面における光照射エネルギーの確認をタクトタイムに影響なく行うこと。
【解決手段】走査露光装置1は、基板ステージ2と、光照射装置3と、基板Wの表面と同一高さに照度センサ4Sを支持する照度センサステージ4と、基板ステージ2と照度センサステージ4の走査方向に沿った移動を制御する走査制御手段6とを備える。走査制御手段6は、基板ステージ2を走査して基板Wを光照射装置3によって走査露光する間、照度センサステージ4を基板ステージ2の移動に干渉しない位置に待機させ、走査露光終了後に基板ステージ2を光照射装置3の光照射範囲外に待機させ、照度センサステージ4を走査して光照射装置3によって照度センサ4Sを走査露光する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を支持すると共に支持された基板の幅方向と交差する走査方向に沿って移動自在な基板ステージと、
前記基板ステージに支持された基板の幅方向全体に光を照射する光照射装置と、
前記基板ステージに支持された基板の表面と同一高さに照度センサを支持すると共に前記照度センサが前記光照射装置の光照射範囲を移動するように前記走査方向に沿って移動自在な照度センサステージと、
前記基板ステージと前記照度センサステージの前記走査方向に沿った移動を制御する走査制御手段とを備え、
前記走査制御手段は、前記基板ステージを走査して該基板ステージに支持された基板を前記光照射装置によって一定の走査速度で走査露光する間、前記照度センサステージを前記基板ステージとの距離が一定になるように移動させ、前記走査露光終了後に前記基板ステージを前記基板を排出するために前記走査速度より速い速度で移動させると共に、前記照度センサステージを前記走査速度で走査して前記光照射装置によって前記照度センサを走査露光することを特徴とする走査露光装置。
【請求項2】
基板ステージに支持された基板上に当該基板の幅方向全体に光を照射する光照射装置を配置して当該基板を一定の走査速度で走査露光する基板露光工程と、
前記基板露光工程終了後に前記基板ステージを前記走査速度より速い速度で移動させて前記基板ステージ上の露光済み基板を排出する基板排出工程と、
前記基板排出工程の期間中に、前記基板ステージに支持された基板の表面と同一高さに支持された照度センサ上に前記光照射装置を配置して当該照度センサを前記走査速度で走査露光する照度センサ露光工程とを有することを特徴とする走査露光方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光配向処理などに用いられる走査露光装置及び走査露光方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶素子の配向膜や紫外線硬化型液晶を用いた光学フィルムの配向層など、液晶分子を配向させる機能を有する膜や層(以下、総称して配向膜という)の形成に、近年、光配向処理が採用されている。光配向処理を行うには、配向膜となる感光性樹脂膜に選択された波長(例えば紫外光)の光を偏光軸が特定した偏光状態(例えば直線偏光状態)で照射する。
【0003】
光配向処理用の走査露光装置は、所定の幅を有する配向膜を連続的に形成するために、配向膜の幅方向に沿って棒状の光源(ロングアークランプ)を配置し、この光源と偏光子を組み合わせて、選択波長の偏光光を配向膜の幅方向に沿って照射し、これを配向膜の幅方向と交差する方向に走査するものが知られている(下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−133498号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述した光配向処理に限らず、基板上に形成された膜や層を走査露光する場合には、基板表面において所望の光照射エネルギーが照射されていることの確認が求められる。このような光照射エネルギーの確認は、被露光面となる基板表面と同じ高さに照度センサを設置し、実際に行われる走査露光と同じ条件(発光量及び走査速度)で照度センサを露光することが必要になる。
【0006】
この際、基板が支持されるステージ上に照度センサを設置すると、走査露光の範囲内に照度センサを設ける必要があるので、基板の設置位置に対して走査方向前方又は後方のいずれかに照度センサを設置せざるを得なくなる。これによると、照度センサを露光するために走査露光の範囲が実質的に拡大されることになり、走査露光のタクトタイムが延長される問題が生じる。特に、高い光照射エネルギーが求められる場合には走査速度を遅くして積算露光量を高めることがなされるので、走査範囲の拡大によるタクトタイムの影響が更に大きくなる問題があった。
【0007】
本発明は、このような問題に対処することを課題の一例とするものである。すなわち、走査露光装置において、基板表面における光照射エネルギーの確認をタクトタイムに影響なく行うこと、等が本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような目的を達成するために、本発明による走査露光装置は、以下の構成を少なくとも具備するものである。
【0009】
基板を支持すると共に支持された基板の幅方向と交差する走査方向に沿って移動自在な基板ステージと、前記基板ステージに支持された基板の幅方向全体に光を照射する光照射装置と、前記基板ステージに支持された基板の表面と同一高さに照度センサを支持すると共に前記照度センサが前記光照射装置の光照射範囲を移動するように前記走査方向に沿って移動自在な照度センサステージと、前記基板ステージと前記照度センサステージの前記走査方向に沿った移動を制御する走査制御手段とを備え、前記走査制御手段は、前記基板ステージを走査して該基板ステージに支持された基板を前記光照射装置によって一定の走査速度で走査露光する間、前記照度センサステージを前記基板ステージとの距離が一定になるように移動させ、前記走査露光終了後に前記基板ステージを前記基板を排出するために前記走査速度より速い速度で移動させると共に、前記照度センサステージを前記走査速度で走査して前記光照射装置によって前記照度センサを走査露光することを特徴とする走査露光装置。
【発明の効果】
【0010】
このような特徴を有する走査露光装置によると、基板の走査露光と照度センサの走査露光を独立して行うことができるので、基板の走査露光終了後における基板排出時間を利用して、照度センサの走査露光を行うことができる。これによって、基板表面における光照射エネルギーの確認を走査露光のタクトタイムに影響なく行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態に係る走査露光装置の全体構成を示した説明図である。
【
図2】本発明の一実施形態における走査制御手段による制御の一例を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。
図1は本発明の一実施形態に係る走査露光装置の全体構成を示した説明図である。走査露光装置1は、基板ステージ2、光照射装置3、照度センサステージ4、照度センサ4S、走査手段5、走査制御手段6を備えている。
図1に示した例では、走査手段5によって基板ステージ2及び照度センサステージ4を図示Y方向に走査する例を示しているが、基板ステージ2及び照度センサステージ4の位置を固定して光照射装置3を同様の走査手段によって図示Y軸方向に沿って走査するものであってもよい。
【0013】
基板ステージ2は、走査露光の対象となる基板Wを支持すると共に、支持された基板Wの幅方向(図示X方向)と交差する走査方向(図示Y方向)に沿って、走査手段5による移動が自在な構成になっている。これに対して、光照射装置3は、光源3Aなどを備えており、基板ステージ2に支持された基板Wの幅方向(X方向)全体に光を照射するものである。
【0014】
照度センサステージ4は、基板ステージ2に支持された基板Wの表面と同一高さに照度センサ4Sを支持すると共に、照度センサ4Sが光照射装置3の光照射範囲を移動するように、走査手段5による走査方向(Y方向)に沿って移動自在な構成になっている。
【0015】
基板ステージ2と照度センサステージ4の走査手段5による走査方向に沿った移動は、走査制御手段6によって制御される。本発明の実施形態においては、走査制御手段6によって基板ステージ2の走査と照度センサステージ4の走査を独立して制御することができる。
【0016】
照度センサステージ4の走査は、光照射装置3によって基板Wが設定された単位面積当たりの光照射エネルギーを受けているか否かを照度センサ4Sの走査露光で確認するためになされるものであるから、照度センサステージ4の走査速度は基板ステージ2の走査速度と同一の速度に設定される。しかしながら、照度センサ4Sによる計測時間を短縮する必要がある場合には、照度センサステージ4の走査速度を基板ステージ2の走査速度の2倍〜数倍にして、照度センサ4Sの計測結果を2倍〜数倍にすることで基板Wに照射される光照射エネルギーの値を確認することも可能である。
【0017】
図2は、走査制御手段6による制御の一例を示した説明図である。走査制御手段6は、先ず、
図2(a),(b)に示すように、基板露光工程を実行する。基板露光工程では、基板ステージ2に支持された基板W上に基板Wの幅方向全体に光を照射する光照射装置3を配置して基板Wを走査露光する。
【0018】
このように基板Wに対する走査露光を行う基板露光工程では、走査制御手段6は、基板Wを走査露光する間、照度センサステージ4を基板ステージ2の移動に干渉しない位置に待機させる。
図2(a),(b)に示した例では、基板露光工程の間、照度センサステージ4を基板ステージ2からの距離が一定になるように移動させているが、これに限らず、その間照度センサステージ4を基板ステージ2から離れた定位置に静止させていてもよい。照度センサステージ4を基板ステージ2からの距離が一定になるように移動させることで、次工程での照度センサステージ4の移動距離を短縮することができる。
【0019】
基板露光工程終了後に、
図2(c),(d)に示すように、走査制御手段6は基板ステージ2上の露光済み基板Wを排出する基板排出工程を実行する。基板排出工程では、
図2(c)に示すように、走査露光終了後に基板ステージ2を光照射装置3の光照射範囲外に待機させる。その際の移動は走査露光時の走査速度に対して十分に速い移動速度が設定される。
【0020】
基板ステージ2が光照射装置3の光照射範囲外に待機すると、
図2(d)に示すように、露光済み基板Wの排出が行われるが、この排出に要する時間を利用して、照度センサステージ4を走査して光照射装置3によって照度センサ4Sを走査露光する。すなわち、基板排出工程の期間中に、照度センサ4S上に光照射装置3を配置して照度センサ4Sを走査露光する照度センサ露光工程を実行する。
【0021】
ここまでの説明では、光照射装置3を固定して、走査手段5で基板ステージ2と照度センサステージ4を走査する例を説明したが、前述したように、基板ステージ2と照度センサステージ4を固定して、光照射装置3を走査することでも同様の工程を実行することができる。
【0022】
この場合は、光照射装置3が、基板ステージ2に支持された基板Wの幅方向全体に光を照射すると共に基板Wの幅方向と交差する走査方向に沿って移動自在になっている。そして、走査制御手段6は、光照射装置3を走査して基板ステージ2に支持された基板Wを走査露光する基板露光工程を実行した後に、光照射装置3を走査して照度センサ4Sを走査露光する照度センサ露光工程を実行する。この際、前述した説明と同様に、基板露光工程を実行した後に基板ステージ2上の露光済み基板Wを排出する基板排出工程を実行し、この基板排出工程の期間中に光照射装置3を走査して照度センサ4Sを走査露光する照度センサ露光工程を実行する。
【0023】
このような本発明の実施形態によると、基板露光工程では、基板ステージ2上の基板Wに対して基板Wの先端上に光照射装置3を配置して、基板WのY方向長さだけ走査露光を行うことができるので、走査露光のタクトタイムが延長されることはない。そして、基板露光工程終了後は次の基板Wを処理するための基板排出工程が実行されることになるが、その基板排出工程の期間を利用して照度センサ露光工程を実行することができるので、次の基板Wに対して基板露光工程を行う際には既に照度センサ露光工程は終了している。このように、本発明の実施形態によると、基板Wを走査露光するタクトタイムに影響を与えること無く、光照射装置3の光照射エネルギーを確認することができる。
【0024】
なお、図示においては、照度センサ4Sを照度センサステージ4に一つ設けた例を示しているが、照度センサ4Sは走査方向と交差する方向に沿って複数設けてもよい。また、照度センサステージ4には、照度と共に偏光方向を測定するセンサを設けてもよい。
【符号の説明】
【0025】
1:走査露光装置,2:基板ステージ,3:光照射装置,
4:照度センサステージ,4S:照度センサ,5:走査手段,
6:走査制御手段,W:基板