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  • 特開2017022025-コンタクト 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-22025(P2017-22025A)
(43)【公開日】2017年1月26日
(54)【発明の名称】コンタクト
(51)【国際特許分類】
   H01R 4/20 20060101AFI20170105BHJP
【FI】
   H01R4/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2015-139791(P2015-139791)
(22)【出願日】2015年7月13日
(71)【出願人】
【識別番号】390033318
【氏名又は名称】日本圧着端子製造株式会社
(72)【発明者】
【氏名】澤田 高生
(72)【発明者】
【氏名】武田 英次
【テーマコード(参考)】
5E085
【Fターム(参考)】
5E085BB01
5E085BB12
5E085CC03
5E085DD16
5E085EE07
5E085HH29
5E085JJ38
(57)【要約】      (修正有)
【課題】焼鈍し処理によって硬度を下げなくても割れ、裂け対策が可能なコンタクト
【解決手段】軸状に延びる一端で相手側コンタクトに接続するコンタクト接続部10と、他端で電線に接続する筒状の電線接続部20とを備えるコンタクト1であって、電線接続部20は中心部にある導体を圧着する筒状の導体圧着部30と、これよりも前方にある延伸部40とを備え、延伸部40は軸方向と直交する方向に弧状に延びる中心角度が180度程度のスリット45が備わるところに特徴を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸状に延びる一端で相手側コンタクトに接続するコンタクト接続部と、他端で電線に接続する筒状の電線接続部とを備えるコンタクトであって、
前記電線接続部は電線の中心部にある導体を圧着する筒状の導体圧着部と、前記導体圧着部よりも前方にある筒状の延伸部とを備え、
前記延伸部は、軸方向と直交する方向に延びる欠肉部が備わるところに特徴を有するコンタクト。
【請求項2】
前記欠肉部が前記延伸部に所定の中心角度をもって弧状に広がる所定の幅を備えたスリットであるところに特徴を有する請求項1記載のコンタクト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スリット付きコンタクトに関する。
【背景技術】
【0002】
従来からある技術として、特許文献1記載の技術が知られている。圧着用のコンタクトの製造過程において、圧着時の割れ、裂け、あるいはバリ対策のために、材料硬度をH材相当からO材相当に軟化させることを目的に焼鈍し処理がおこなわれている。
このように、硬度を下げる目的のために焼鈍し処理をおこなうので、コンタクトの製造工程の中で電気炉等による熱処理工程が必要になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開H3−101085号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記した問題点に鑑みてなされたものであり、焼鈍し処理によって硬度を下げなくても、割れ、裂け、あるいはバリ対策が可能なコンタクトを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係るコンタクトは、(1)軸状に延びる一端で相手側コンタクトに接続するコンタクト接続部と、他端で電線に接続する筒状の電線接続部とを備えるコンタクトであって、前記電線接続部は電線の中心部にある導体を圧着する筒状の導体圧着部と、前記導体圧着部よりも前方にある筒状の延伸部とを備え、前記延伸部は、軸方向と直交する方向に延びる欠肉部が備わるところに特徴を有するものである。
【0006】
この発明によれば、電線圧着部の前方に備わる延伸部に軸方向と直交する方向に欠肉部が備わる。これにより、延伸部の一部が電線圧着部側に引張られ延伸部で引張り応力が発生するが、圧着部の前方にある欠肉部によって引張り応力が緩和されるので、焼鈍し処理がおこなわれなくても、圧着時に生じる応力による、割れ、裂け、あるいはバリ対策が可能なコンタクトが得られる。
【0007】
さらに好ましくは、本発明に係るコンタクトは、(2)前記欠肉部が前記延伸部に所定の中心角度をもって弧状に広がる所定の幅を備えたスリットであるところに特徴を有する(1)記載のものである。
【0008】
この発明によれば、スリットが延伸部に備わる。これにより、導体圧着部による引張り応力の発生する範囲に亘りスリットが備わるので、引張り応力が効果的に緩和され、圧着時に生じる応力による、割れ、裂け、あるいはバリ対策が可能なコンタクトが得られる
スリットが形成される中心角度θは、0度<θ≦270度が好ましく、さらに好ましくは、0度<θ≦180度、一層好ましくは、0度<θ≦120度である。スリットは一つの場合のほか、2つ以上備わる場合であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本発明の実施形態に係るコンタクトの外観斜視図である。
図2図2は、図1のII−II断面図である。
図3図3は、本発明の実施形態に係るコンタクトの電線に接続する状態の外観斜視図である。
図4図4は、図3の要部拡大図である。
図5図5は、図3のV−V断面図である。
図6図6は、本発明の実施形態に係る導体圧着部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施形態について図面にしたがって説明する。図1は、本発明の実施形態に係るコンタクトの外観斜視図である。図2は、図1のII−II断面図である。図3は、本発明の実施形態に係るコンタクトの電線に接続する状態の外観斜視図である。図4は、図3の要部拡大図である。図5は、図3のV−V断面図である。図6は、本発明の実施形態に係る導体圧着部の断面図である。なお説明中の指示方向は、図中の方向定義に従う。
【0011】
本発明の実施形態に係るコンタクト1は、図1に示されるように、前方に円形筒状のコンタクト接続部10、後方に同じく円形筒状の電線接続部20を備えている。電線接続部20はコンタクト接続部10に比べてやや大きめの円形状である。コンタクト1は、銅合金の延伸材から切削加工により必要な中空円筒構造が得られ、表面は接触信頼性を確保するために一般にスズめっき、金メッキ、或いは銀メッキが施される。
【0012】
<コンタクト> 本発明に係るコンタクト1は、切削加工によって加工硬化した状態(H材相当)の材料を焼鈍し処理による軟化した状態(O材相当)にすることなく、切削加工したままの状態(H材相当)で使用できるところに特徴を有するものである。一般に、H材は硬く変形能が低いため、H材のまま圧着加工をすると、その引張り応力により圧着近傍に割れ、裂け、バリ等の発生を伴うので、圧着加工の前に焼鈍し処理をおこなうのが一般的な工程である。
【0013】
コンタクト接続部10の長さ、あるいは直径、および電線接続部20の長さ、あるいは直径は、電気的機械的条件によって相手方の仕様を考慮して決定される設計事項であり、本実施形態のコンタクトの形状、大きさ、構造および材料等は限定的に解釈される根拠となるものではない。
【0014】
電線接続前の電線接続部20は、図1図2に示されるように、電線50の導体55に接続する円形筒状の導体圧着部30と、その前方に同じく円形筒状の延伸部40とを備えている。導体圧着部30と延伸部40とは同一半径の連続した円形筒状を構成する各部分であり、同じ肉厚の周壁でもって連なる一体的なものである。
【0015】
導体圧着部30は、図1図2に示されるように、接続される導体に対応する直径と、必要な長さとを備えている。導体圧着部30は、圧着加工により上面が凹状に変形しこの変形に応じた導体の変形を伴って電線50と、コンタクト1とを電気的機械的に接続する。
【0016】
延伸部40には、図1図2に示されるように、軸方向と直交する方向に沿ってその周壁に所定の幅でスリット45が形成されている。スリット45は、延伸部40の周壁の一部を切り欠いたものであり、内外に貫通した孔である。スリット45は、延伸部40の周壁に弧状に備わり、その中心角度は本実施形態の場合凡そ120度である。スリット45が小さすぎる場合は、目的が十分達成できないおそれがあり、大きすぎる場合は、コンタクト1がこの部分で変形するおそれがある。
【0017】
延伸部40に形成されたスリット45によって、導体圧着部30の圧着による引張り応力が緩和されるので、コンタクト1はH材のままで使用しても、割れ、裂け等の発生が抑
制される。スリット45は、目的を達成するために、割れ、裂け等の発生箇所を考慮して応力発生箇所の近傍に形成するのが好ましい。
【0018】
<電線接続> 導体圧着部30の一部は、図3に示されるように、所定の長さに亘り導体55を凹状に押圧することによって、電線50とコンタクト1との電気的機械的接続が得られる。導体55は、導体圧着部30の周壁の上面が凹状に変形し、外周面が周壁に巻き込まれるような状態で圧着される。
【0019】
導体圧着部30の中央部は、図4に示されるように、圧着により凹状に変形し、これに応じて導体55も、図6に示されるように、上面が凹状に変形する。このように導体圧着部30の内側で導体55を大きく変形させ、所定の形状に近づけることによって、安定した圧着効果が得られるものである。このように圧着加工の特性上、導体55の変形と導体圧着部30の変形が同時に進行する。
【0020】
導体圧着部30の変形は、引張り応力をその近傍に発生させる。特に導体圧着部30の前方に連なる延伸部40には、大きな内部応力(引張り応力)が生じている。内部応力(引張り応力)は角部、端部などの形状が変化するところに集中し、ここに割れ、裂け等を生じさせやすい。本実施形態のコンタクト1は、図3に示されるように、導体圧着部30と、その前方に連なる延伸部40との境界部分に形状が変化する部分があり、そのすぐ前方にスリット45が形成されている。これにより、内部応力(引張り応力)は、境界部分に集積することなく、スリット45によって緩和されることとなる。
【0021】
延伸部40に形成されたスリット45は、図5図6に示されるように、導体圧着部30の変形によって、その近傍に生じる引張り応力を緩和させる効果を有する。スリット45は、導体圧着部30の近傍に備わり、導体圧着部30の幅方向の変形域に対応するように形成されている。これにより、焼鈍し処理がおこなわれなくても、圧着による割れ、裂けあるいはバリ対策が可能なコンタクトが得られる。
【0022】
<原理> スリット45は、図4図5に示されるように、圧着により延伸部40に生じる引張り応力を緩和させる。スリット45の形成により、スリット45と導体圧着部30との間に肉厚の薄い緩衝壁46が形成される。
【0023】
緩衝壁46は、図4図5に示されるように、延伸部40の後端の縦壁を形成し、略下半分が導体圧着部30の前端に連なり、圧着による引張り応力が伝播する近傍に位置する。緩衝壁46は、肉厚が薄く前後方向の変形能を有し、圧着によって生じた変形は内部応力として材料を伝わり緩衝壁46を後方へ変形させることとなる。この変形により圧着によって生じた引張り応力が開放されるので、ここで応力が緩和され、割れ、裂け等の材料損傷が抑制されることとなる。
【0024】
<効果> 本実施形態に係るコンタクト1は、導体圧着部30の前方にスリット45を備えているので、圧着によって生じた引張り応力はスリット45で緩和される。これにより、焼鈍し処理を省いたH材のままでも圧着による割れ、裂け、およびバリ発生が抑制可能なコンタクト1が得られる。
【0025】
本実施形態に係るコンタクト1は、円形筒状の延伸部40の周面に中心角度120度のスリット45が形成されているので、導体55の圧着範囲に亘る応力緩和構造が容易に得られる。
【0026】
本実施形態に係るコンタクト1は、導体圧着部30の近傍にスリット45が形成されている。これにより、導体圧着部30に生じた引張り応力が効率的に緩和される。これによ
り、焼鈍し処理を省いたH材のままでも圧着による割れ、裂け、およびバリ発生が抑制可能なコンタクト1が得られる。
【0027】
本実施形態に係るコンタクト1は、スリット45と導体圧着部30との間に肉厚の薄い前後方向の変形能を有する緩衝壁46が形成されている。これにより、焼鈍し処理を省いたH材のままでも圧着による割れ、裂け、およびバリ発生が抑制可能なコンタクト1が得られる。
【0028】
〈他の実施形態〉 本発明は、本実施形態の構造、形状、あるいは材料に限定的に解釈されるものではない。発明の要旨を逸脱しない範囲で構造、形状、あるいは材料などは種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0029】
1 コンタクト
10 コンタクト接続部
20 電線接続部
30 導体圧着部
40 延伸部
45 スリット
46 緩衝壁
50 電線
55 導体
図1
図2
図3
図4
図5
図6