【解決手段】 支持体2と、支持体内に埋設されたヒータ線3とを備え、支持体が、グラファイトにアルミニウムが含浸されたグラファイト基アルミニウム複合材で形成されている。このように、グラファイト内で断熱要因となっていた空隙が、含浸されたアルミニウムで埋まっていることで、高い熱伝導率を得ることができる。また、支持体の表面には、アルミニウム膜4が形成されていることが好ましい。
【背景技術】
【0002】
CVD装置やPVD装置などでは、ウエハの加熱用にプレート状のヒータを用いている。例えば、特許文献1では、セラミックス粉体で加圧成型されたセラミックス成型体と、このセラミックス成型体内に埋設されたヒータ線とを備えたセラミックスヒータが記載されている。
また、特許文献2では、アルミナ粉体をプレス成型した作製されたセラミックス基体にヒータパターン(抵抗発熱体)を設けたセラミックスヒータが記載されている。
【0003】
また、特許文献3では、セラミックス基板と、このセラミックス基板上に形成された導電層と、この導電層に積層、被覆されたアルミナからなる溶射被膜とからなるセラミックスヒータが記載されている。
さらに、特許文献4では、ステンレス製やアルミニウム合金製の支持板と、この支持板に埋設されたヒータ線とを備え、支持板の全面にわたってアルマイト被膜やセラミックス溶射が施された基板感熱プレートヒータが記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来の技術には、以下の課題が残されている。
従来のセラミックス製の支持体を用いたヒータでは、アルミナ等のセラミックスの熱伝導率が低く、熱伝導性が十分でないという不都合があった。また、ステンレス製又はアルミニウム製の金属本体にセラミックス溶射等でセラミックス等の被膜を設けた支持体を用いたヒータでは、ステンレスやアルミニウムの金属本体の熱膨張率が高いために、300℃以上の高温時に表面の被膜にひびが発生してしまう問題があった。
【0006】
本発明は、前述の課題に鑑みてなされたもので、高い熱伝導性を有していると共に、低い熱膨張率を有しているヒータ及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前記課題を解決するために以下の構成を採用した。すなわち、第1の発明に係るヒータは、支持体と、前記支持体内に埋設されたヒータ線とを備え、前記支持体が、グラファイトにアルミニウムが含浸されたグラファイト基アルミニウム複合材で形成されていることを特徴とする。
【0008】
このヒータでは、支持体が、グラファイトにアルミニウムが含浸されたグラファイト基アルミニウム複合材で形成されているので、高い熱伝導性を有していると共に、低い熱膨張率を有している。すなわち、グラファイト内で断熱要因となっていた空隙(サイズが約10〜20μm)が、含浸されたアルミニウムで埋まっていることで、高い熱伝導率を得ることができる。また、グラファイトによってアルミニウム単体よりも熱膨張率が大幅に小さく抑えられ、表面に溶射でセラミックス膜を形成した場合でも熱膨張率差が小さくなり、高温時(400℃程度)でもひびが発生することを抑制することができる。
なお、上記アルミニウムとしては、純アルミニウムだけでなく、Mg等の添加物質を含有したアルミニウム合金も含むものである。
【0009】
第2の発明に係るヒータは、第1の発明において、前記支持体の表面にアルミニウム膜が形成されていることを特徴とする。
すなわち、このヒータでは、支持体の表面にアルミニウム膜が形成されているので、支持体表面全体の熱伝導性がさらに高くなると共に、グラファイト基アルミニウム複合材から発生するカーボンすすを防ぐことができる。また、グラファイト内に含浸しているアルミニウムと表面のアルミニウム膜とが連続又は接触していることで、高い熱伝導性が得られる。特に、グラファイト内のアルミニウムと表面のアルミニウム膜とが連続形成されていることで、アルミニウム膜の高い界面強度が保持され、剥がれを防止することができる。さらに、グラファイト基アルミニウム複合材である支持体の熱膨張率が小さいため、表面のアルミニウム膜の伸びを抑制することができ、ひびの発生も抑制することができる。
【0010】
第3の発明に係るヒータは、第1の発明において、前記支持体の表面にセラミックスとアルミニウムとの複合材でセラミックス−アルミニウム複合層が形成されていることを特徴とする。
すなわち、このヒータでは、支持体の表面にセラミックス−アルミニウム複合層が形成されているので、グラファイト基アルミニウム複合材よりも高剛性かつ高強度のセラミックス−アルミニウム複合層により支持体を補強することができる。特に、セラミックス−アルミニウム複合層はアルミニウム膜よりも熱膨張率が低く、支持体との熱膨張率差が小さくなって内部応力の発生を抑制することができる。また、支持体表面全体の熱伝導性がさらに高くなると共に、グラファイト基アルミニウム複合材から発生するカーボンすすを防ぐことができる。また、グラファイト内に含浸しているアルミニウムと表面のセラミックス−アルミニウム複合層のアルミニウムとが連続又は接触していることで、高い熱伝導性が得られる。特に、グラファイト内のアルミニウムと表面のセラミックス−アルミニウム複合層のアルミニウムとが連続形成されていることで、セラミックス−アルミニウム複合層の高い界面強度が保持され、剥がれを防止することができる。また、セラミックス−アルミニウム複合層が支持体表面に形成されているので、支持体表面にセラミックス溶射をする必要も無くなる。
【0011】
第4の発明に係るヒータは、第3の発明において、前記セラミックスが、SiCであることを特徴とする。
すなわち、このヒータでは、セラミックスが、SiCであるので、セラミックス−アルミニウム複合層がグラファイト基アルミニウム複合材とほぼ同じ熱膨張率のSiC−Al複合材となり、支持体との間で熱膨張率差が生じ難く、内部応力の発生を極力抑制することができる。
【0012】
第5の発明に係るヒータは、第1から第4の発明のいずれかにおいて、前記支持体に溝部が形成されていると共に、前記溝部内に前記ヒータ線が配置され、前記溝部と前記ヒータ線との間にアルミニウムが介在していることを特徴とする。
すなわち、このヒータでは、溝部とヒータ線との間にアルミニウムが介在しているので、グラファイトに含浸しているアルミニウムだけでなく、溝部とヒータ線との間に介在するアルミニウムによって、ヒータ線の熱をより効率的に支持体に熱伝導させることができる。
【0013】
第6の発明に係るヒータの製造方法は、第1から第5の発明のいずれかのヒータを製造する方法であって、溝部が形成されたプリフォームをグラファイトで作製する工程と、前記溝部内にヒータ線を設置する工程と、前記プリフォームにアルミニウムの溶湯を高圧で含浸させ、グラファイトにアルミニウムが含浸されたグラファイト基アルミニウム複合材で形成された支持体を作製する高圧含浸工程とを有していることを特徴とする。
すなわち、このヒータの製造方法では、プリフォームにアルミニウムの溶湯を高圧で含浸させる高圧含浸工程を有しているので、グラファイト内の空隙を埋めてアルミニウムが含浸されてグラファイト基アルミニウム複合材の支持体を形成できると共に、同時に溝部内のヒータ線もアルミニウムで埋めることができる。
【0014】
第7の発明に係るヒータの製造方法は、第6の発明において、前記高圧含浸工程の際に、前記支持体の表面にアルミニウム膜を形成する工程を有していることを特徴とする。
すなわち、このヒータの製造方法では、高圧含浸工程の際に、支持体の表面にアルミニウム膜を形成する工程を有しているので、支持体内に含浸したアルミニウムと表面のアルミニウム膜とが連続した状態となり、アルミニウム膜の高い界面強度が得られ、剥がれを防止することができる。また、支持体内のアルミニウムと表面のアルミニウム膜とが連続していることで、高い熱伝導性が得られる。
【0015】
第8の発明に係るヒータの製造方法は、第6の発明において、予め前記プリフォームの表面をセラミックス粉で覆い、前記高圧含浸工程の際に、前記アルミニウムの溶湯を前記セラミックス粉間にも含浸させ、前記支持体の表面にセラミックスとアルミニウムとの複合材によるセラミックス−アルミニウム複合層を形成することを特徴とする。
すなわち、このヒータの製造方法では、予めプリフォームの表面をセラミックス粉で覆い、高圧含浸工程の際に、アルミニウムの溶湯をセラミックス粉間にも含浸させ、支持体の表面にセラミックスとアルミニウムとの複合材によるセラミックス−アルミニウム複合層を形成するので、支持体内に含浸したアルミニウムと表面のセラミックス−アルミニウム複合層のアルミニウムとが連続した状態となり、セラミックス−アルミニウム複合層の高い界面強度が得られ、剥がれを防止することができる。また、支持体内のアルミニウムと表面のセラミックス−アルミニウム複合層のアルミニウムとが連続していることで、高い熱伝導性が得られる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、以下の効果を奏する。
すなわち、本発明に係るヒータによれば、支持体が、グラファイトにアルミニウムが含浸されたグラファイト基アルミニウム複合材で形成されているので、高い熱伝導性を有していると共に、低い熱膨張率を有している。また、本発明に係るヒータの製造方法によれば、プリフォームにアルミニウムの溶湯を高圧で含浸させる高圧含浸工程を有しているので、グラファイト基アルミニウム複合材の支持体を形成できると共に、同時に溝部内のヒータ線もアルミニウムで埋めることができる。
したがって、本発明のヒータ及びその製造方法では、支持体の表面処理においてセラミックス膜等を形成しても、高温時にひびが発生し難く高い信頼性が得られると共に、高い熱伝導性によって効率的な加熱が可能になり、Siウエハ等の成膜加熱用、CVD又はPVD装置用のヒータとして好適である。また、熱拡散率が高く、熱応答性が良いと共に均熱性に優れ、スループットを向上させることが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係るヒータの第1実施形態を、
図1から
図7を参照しながら説明する。
【0019】
本実施形態のヒータ1は、Siウエハ等の成膜加熱用、CVD装置用又はPVD装置用などのヒータであって、
図1に示すように、支持体2と、支持体2内に埋設されたヒータ線3とを備えている。
上記支持体2は、グラファイトにアルミニウムが含浸されたグラファイト基アルミニウム複合材で形成されている。
【0020】
また、支持体2の表面には、アルミニウム膜4が形成されている。
さらに、支持体2の下面には溝部2aが形成されていると共に、溝部2a内にヒータ線3が配置されている。また、溝部2aとヒータ線3との間には、アルミニウムが介在している。
支持体2は、円盤状に形成されており、溝部2aが、支持体2の外周に沿って略円形状又は渦巻き状等に延在して配されている。すなわち、ヒータ線3も略円形状又は渦巻き状等に配されている。
【0021】
上記ヒータ線3は、シースヒータであって、金属シースとしてはSUS(ステンレス)、アルミニウム又はインコネル(登録商標)等が採用可能である。
なお、このヒータ線3は、支持体2の下面中央部に一対の端子部3aが突出した状態で設けられている。
【0022】
上記支持体2を構成するグラファイト基アルミニウム複合材について、熱膨張、ヤング率、高温条件(寸法安定性が確保可能な温度)、熱伝導率、熱拡散率及びコスト(アルミニウムを1とした場合)について、セラミックス(AlN)及びアルミニウム単体(A1050)と比較したものを表1に示す。
この表1からわかるように、グラファイト基アルミニウム複合材は、熱膨張率がアルミニウム単体よりも大幅に低いと共に、熱伝導率がセラミックス(AlN)よりも高い。
【0024】
本実施形態のヒータ1では、支持体2表面のアルミニウム膜4の熱膨張率が20ppm/k程度であるが、内部の支持体2を構成するグラファイト基アルミニウム複合材の熱膨張率が小さいため、アルミニウム膜4の伸びを抑制することができ、実際の熱膨張率が9〜10ppm/k程度となる。
【0025】
次に、本実施形態のヒータ1を製造する方法は、
図2から
図7に示すように、溝部2aが形成されたプリフォーム5をグラファイトで作製する工程と、溝部2a内にヒータ線3を設置する工程と、プリフォーム5にアルミニウムの溶湯を高圧で含浸させ、グラファイトにアルミニウムが含浸されたグラファイト基アルミニウム複合材で形成された支持体2を作製する高圧含浸工程とを有している。
また、ヒータ1の製造方法では、上記高圧含浸工程の際に、支持体2の表面にアルミニウム膜4を形成する工程を有している。
【0026】
本実施形態の製造方法では、まず
図2に示すように、グラファイト製のプリフォーム5を円盤状に作製する。また、このプリフォーム5の一方の面には、溝部2aをヒータ線パターンに沿って形成する。次に、
図3に示すように、このプリフォーム5の溝部2a内にヒータ線3を設置する。このとき、プリフォーム5の中央部には、ヒータ線3の一対の端子部3aを突出状態に設置しておく。
なお、プリフォーム5を構成するグラファイト特性は、等方性グラファイトであって、体積率Vf:80〜85%、厳密度1.75〜1.85g/cm
3、熱伝導率130〜140w/m・k、熱膨張率4〜5ppm/kのものを使用している。
【0027】
このようにヒータ線3を設置したプリフォーム5を、
図4に示すように、溝部2a側(一方の面側)を下側にして鉄製の板状ベースである治具7上にセットする。この治具7の上面には、ヒータ線3の端子部3a用に一対の逃げ穴7aが形成されており、これら逃げ穴7a内に一対の端子部3aを差し込んでプリフォーム5をセットする。また、このとき、プリフォーム5と治具7との間にスペーサとしてコマ6を設置し、プリフォーム5と治具7との間に隙間を設けておく。
【0028】
次に、
図5に示すように、治具7にセットした上記プリフォーム5を金型8内にセットし、溶湯アルミAlを金型8内に流し込み、治具7と共にプリフォーム5全体を溶湯アルミAlの中に浸す。このとき、コマ6によって空けられたプリフォーム5と治具7との隙間にも溶湯アルミAlが回り込むと共に、溝部2aとヒータ線3との隙間にも溶湯アルミAlが入り込む。
なお、溶湯アルミAlのアルミニウムの種類としては、A1050,AC3A,A5052などの純アルミニウム又はアルミニウム合金が用途に合わせて選択される。
【0029】
さらに、
図6に示すように、高圧プレスの押し子10を金型8内に押し込み、金型8内に満たされた溶湯アルミAlを高圧でプレスすることで、プリフォーム5内に溶湯アルミAlを含浸させる。
すなわち、高圧でプレスされた溶湯アルミAlがプリフォーム5内のグラファイト間に介在する空隙に浸入して空隙を埋め、プリフォーム5がグラファイト基アルミニウム複合材で形成された支持体2となる。
【0030】
溶湯アルミAlが冷えて硬化した後、
図7に示すように、金型8のノックアウト9で、治具7及び支持体2を周囲のアルミニウム層4aと共に押し上げて取り出す。さらに取り出した支持体2から治具7を取り外す。
このように取り出した支持体2の表面には、アルミニウム層4aが厚く形成されているので、このアルミニウム層4aを適切な膜厚(本実施形態では、膜厚2〜3mm)まで研磨してアルミニウム膜4を形成することで、
図1に示す本実施形態のヒータ1が作製される。
【0031】
このように本実施形態のヒータ1では、支持体2が、グラファイトにアルミニウムが含浸されたグラファイト基アルミニウム複合材で形成されているので、高い熱伝導性を有していると共に、低い熱膨張率を有している。すなわち、グラファイト内で断熱要因となっていた空隙(サイズが約10〜20μm)が、含浸されたアルミニウムで埋まっていることで、高い熱伝導率を得ることができる。また、グラファイトによってアルミニウム単体よりも熱膨張率が大幅に小さく抑えられ、表面に溶射でセラミックス膜を形成した場合でも熱膨張率差が小さくなり、高温時(400℃程度)でもひびが発生することを抑制することができる。
【0032】
また、支持体2の表面にアルミニウム膜4が形成されているので、支持体2表面全体の熱伝導性がさらに高くなると共に、グラファイト基アルミニウム複合材から発生するカーボンすすを防ぐことができる。また、グラファイト内に含浸しているアルミニウムと表面のアルミニウム膜4とが連続又は接触していることで、高い熱伝導性が得られる。特に、グラファイト内のアルミニウムと表面のアルミニウム膜4とが連続形成されていることで、アルミニウム膜4の高い界面強度が保持され、剥がれを防止することができる。さらに、グラファイト基アルミニウム複合材である支持体2の熱膨張率が小さいため、表面のアルミニウム膜4の伸びを抑制することができ、ひびの発生も抑制することができる。
【0033】
また、溝部2aとヒータ線3との間にアルミニウムが介在しているので、グラファイトに含浸しているアルミニウムだけでなく、溝部2aとヒータ線3との間に介在するアルミニウムによって、ヒータ線3の熱をより効率的に支持体2に熱伝導させることができる。
【0034】
さらに、本実施形態のヒータ1の製造方法では、プリフォーム5に溶湯アルミAlを高圧で含浸させる高圧含浸工程を有しているので、グラファイト内の空隙を埋めてアルミニウムが含浸されてグラファイト基アルミニウム複合材の支持体2を形成できると共に、同時に溝部2a内のヒータ線3もアルミニウムで埋めることができる。
【0035】
また、高圧含浸工程の際に、支持体2の表面にアルミニウム膜4を形成する工程を有しているので、支持体2内に含浸したアルミニウムと表面のアルミニウム膜4とが連続した状態となり、上述したように、アルミニウム膜4の高い界面強度が得られ、剥がれを防止することができる。また、支持体2内のアルミニウムと表面のアルミニウム膜4とが連続していることで、高い熱伝導性が得られる。
【0036】
次に、本発明に係るヒータの第2実施形態について、
図8から
図10を参照して以下に説明する。なお、以下の実施形態の説明において、上記実施形態において説明した同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0037】
第2実施形態と第1実施形態との異なる点は、第1実施形態では、支持体2の表面にアルミニウム膜4が形成されているのに対し、第2実施形態のヒータ21では、
図8に示すように、支持体22の表面にセラミックスとアルミニウムとの複合材でセラミックス−アルミニウム複合層24が形成されている点である。
また、第2実施形態のヒータの製造方法では、
図9及び
図10に示すように、予めプリフォーム5の表面をセラミックス粉24aで覆い、高圧含浸工程の際に、アルミニウムの溶湯(溶湯アルミAl)をセラミックス粉24a間にも含浸させ、支持体22の表面にセラミックスとアルミニウムとの複合材によるセラミックス−アルミニウム複合層24を形成している。
【0038】
より具体的には、ヒータ線3を設置したプリフォーム5を、
図9に示すように、溝部2a側(一方の面側)を下側にして鉄製容器27上にセットする。この鉄製容器27の上面には、ヒータ線3の端子部3a用に一対の逃げ穴が形成されており、これら逃げ穴内に一対の端子部3aを差し込んでプリフォーム5をセットする。また、このとき、プリフォーム5と鉄製容器27との間にスペーサとしてコマ6を設置し、プリフォーム5と鉄製容器27との間に隙間を設けておく。なお、コマ6は、体積率(Vf)が50%のSiCで形成されている。
【0039】
さらに、プリフォーム5全体を覆うように鉄製容器27とプリフォーム5との間にセラミックス粉24aを詰める。
上記セラミックス粉24aは、例えばSiC粉である。SiC粉としては、例えば#600と#150との粉体を2:1の割合で混合したものを用いている。また、SiC粉は、体積率(Vf)が50〜60%になるように詰めている。
【0040】
上記セラミックス粉24aを詰めた状態で、鉄製容器27を鉄製蓋部材28で蓋をする。この鉄製蓋部材28には、複数の貫通孔28aが形成されている。
上記鉄製容器27にプリフォーム5をセットしセラミックス粉24aを詰めたものを金型8にセットした状態で、第1実施形態と同様に、溶湯アルミAlを金型8内に流し込む。このとき、鉄製蓋部材28の貫通孔28aから溶湯アルミAlが鉄製容器27内に流れ込み、セラミックス粉24a間に浸透する。また、コマ6によって空けられたプリフォーム5と鉄製容器27との隙間のセラミックス粉24a間にも溶湯アルミAlが回り込むと共に、溝部2aとヒータ線3との隙間にも溶湯アルミAlが入り込む。
【0041】
さらに、
図10に示すように、高圧プレスの押し子10を金型8内に押し込み、金型8内に満たされた溶湯アルミAlを高圧でプレスすることで、プリフォーム5内に溶湯アルミAlを含浸させる。
すなわち、高圧でプレスされた溶湯アルミAlがプリフォーム5内のグラファイト間に介在する空隙に浸入して空隙を埋め、プリフォーム5がグラファイト基アルミニウム複合材で形成された支持体22となる。
【0042】
また、溶湯アルミAlが冷えて硬化すると、支持体22の表面には、セラミックスとアルミニウムとの複合材によるセラミックス−アルミニウム複合層24が形成される。このセラミックス−アルミニウム複合層24は、SiC−Al複合層である。
溶湯アルミAlが硬化後、金型8のノックアウト9で、鉄製容器27及び支持体22を押し上げて取り出す。さらに鉄製容器27から鉄製蓋部材28を取り外すと共に支持体22を取り出す。
【0043】
このように作製されたヒータ21は、表面のセラミックス−アルミニウム複合層24が熱膨張率6〜7ppm/kであり、支持体22のグラファイト基アルミニウム複合材の熱膨張率7〜8ppm/kとほぼ同じである。なお、セラミックス−アルミニウム複合層24の他の特性は、密度3.0g/cm
3、曲げ350MPa、ヤング率240GPa、熱伝導率260W/m・kである。
【0044】
なお、他のセラミックス−アルミニウム複合層としては、ホウ酸アルミニウム粉を用いたアルミニウムとホウ素との複合材で形成されたものや、アルミナ粉を用いたアルミナ−アルミニウム複合材で形成されたもの等が採用可能である。
【0045】
このように第2実施形態のヒータ21では、支持体22の表面にセラミックス−アルミニウム複合層24が形成されているので、グラファイト基アルミニウム複合材よりも高剛性かつ高強度のセラミックス−アルミニウム複合層24により支持体22を補強することができる。特に、セラミックス−アルミニウム複合層24はアルミニウム膜よりも熱膨張率が低く、支持体22との熱膨張率差が小さくなって内部応力の発生を抑制することができる。また、支持体22表面全体の熱伝導性がさらに高くなると共に、グラファイト基アルミニウム複合材から発生するカーボンすすを防ぐことができる。
【0046】
また、グラファイト内に含浸しているアルミニウムと表面のセラミックス−アルミニウム複合層24のアルミニウムとが連続又は接触していることで、高い熱伝導性が得られる。特に、グラファイト内のアルミニウムと表面のセラミックス−アルミニウム複合層24のアルミニウムとが連続形成されていることで、セラミックス−アルミニウム複合層24の高い界面強度が保持され、剥がれを防止することができる。また、セラミックス−アルミニウム複合層24が支持体22の表面に形成されているので、支持体22表面にセラミックス溶射をする必要も無くなる。
【0047】
特に、上記セラミックスが、SiCであるので、セラミックス−アルミニウム複合層24がグラファイト基アルミニウム複合材とほぼ同じ熱膨張率のSiC−Al複合材となり、支持体22との間で熱膨張率差が生じ難く、内部応力の発生を極力抑制することができる。
【0048】
さらに、第2実施形態のヒータ21の製造方法では、予めプリフォーム5の表面をセラミックス粉24aで覆い、高圧含浸工程の際に、アルミニウムの溶湯をセラミックス粉24a間にも含浸させ、支持体22の表面にセラミックスとアルミニウムとの複合材によるセラミックス−アルミニウム複合層24を形成するので、支持体22内に含浸したアルミニウムと表面のセラミックス−アルミニウム複合層24のアルミニウムとが連続した状態となり、セラミックス−アルミニウム複合層24の高い界面強度が得られ、剥がれを防止することができる。また、支持体22内のアルミニウムと表面のセラミックス−アルミニウム複合層24のアルミニウムとが連続していることで、高い熱伝導性が得られる。
【0049】
なお、本発明の技術範囲は上記各実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。