【解決手段】固体酸化型燃料電池200のセルスタックにおいて、任意の単セル201の内部抵抗値及び静電容量値を測定するための燃料電池セルの電気特性測定装置1であって、単セル201、第1抵抗値R
を有し且つ第1外部抵抗11と並列する第2外部抵抗12、及び定電圧直流電源21を含む充電用回路A1と、充電用回路A1における抵抗接続状態を、第1外部抵抗11が接続され且つ第2外部抵抗12が接続されない第1抵抗接続状態A11と、第1外部抵抗11及び第2外部抵抗12が電気的に並列接続される第2抵抗接続状態A12と、に切り換える外部抵抗切換器32と、単セル201の両極に接続され、充電電圧の変化を測定する充電電圧測定器22とを備える。
【発明を実施するための形態】
【0016】
〔第1−1実施形態に係る電気特性測定装置1〕
以下、本発明の第1−1実施形態に係る電気特性測定装置1について、
図1を参照しながら説明する。
図1は、本発明の第1−1実施形態に係る燃料電池セルの電気特性測定装置1において、単セル201の充電用回路A1を形成した状態を示す回路図であり、(A)は第1抵抗接続状態A11を示す図、(B)は第2抵抗接続状態A12を示す図である。
【0017】
図1に示す第1−1実施形態に係る電気特性測定装置1は、固体酸化型燃料電池200のセルスタックを構成する単セル201の内部抵抗値及び静電容量値を測定するための装置である。発電装置として提供される燃料電池ユニットは、燃料電池200、空気予熱器、水蒸発器、改質器、燃焼器等を断熱材で包囲したホットモジュールと、発電動作及び電力供給等に必要な補機群と、熱回収に使用する熱交換器と、をパッケージ化したものである。
【0018】
第1−1実施形態に係る電気特性測定装置1は、定電圧直流電源21と、第1外部抵抗11と、第2外部抵抗12と、充電電圧測定器としての電圧計22と、外部抵抗切換器としてのON/OFFスイッチ32と、を有している。定電圧直流電源21及び第1外部抵抗11は、燃料電池200が発電を行っていない常温下で、測定対象単セル201(単に「単セル201」ともいう)に電気的に直列接続され、単セル201を充電する充電用回路A1を形成する。充電用回路A1は、単セル201、第1外部抵抗11、第2外部抵抗12、及び電圧計22を含む。充電用回路A1において、第2外部抵抗12は、第1外部抵抗11と並列接続される(
図1(B)参照)か、又は、充電用回路A1に接続されない(
図1(A)参照)。
【0019】
定電圧直流電源21は、所定の直流電圧値V
0(数ボルト程度)を充電用回路A1に印加可能に構成されている。第1外部抵抗11は、第1抵抗値R
1を有しており、第2外部抵抗12は、第2抵抗値R
2を有している。第1抵抗値R
1及び第2抵抗値R
2は、それぞれ単セル201の内部抵抗値R
iに基づいて設定される。典型的には、第1抵抗値R
1及び第2抵抗値R
2は、それぞれが単セル201の内部抵抗値R
iの0.1〜10倍程度に設定される。第1実施形態に係る電気特性測定装置1においては、第2抵抗値R
2の大きさは、第1抵抗値R
1よりも小さくてもよく、同じでもよく、或いは大きくてもよい。
【0020】
また、電圧計22は、測定対象単セル201に電気的に並列接続される。電圧計22は、単セル201の2つの電極、即ち、カソードと、アノードとにそれぞれ電気的に接続され、単セル201の充電電圧値を測定可能である。
【0021】
ON/OFFスイッチ32は、第1外部抵抗11と並列する第2外部抵抗12を含む回路上に設けられており、この回路における電気的導通のON/OFFを切り換えできる。そのため、ON/OFFスイッチ32は、充電用回路A1における抵抗接続状態を、
図1(A)に示す、第1外部抵抗11が接続され且つ第2外部抵抗12が接続されない第1抵抗接続状態A11と、
図1(B)に示す、第1外部抵抗11及び第2外部抵抗12が電気的に並列接続される第2抵抗接続状態A12と、に切り換えることができる。具体的には、
図1(A)に示すように、ON/OFFスイッチ32がOFF状態の場合には、充電用回路A1には第2外部抵抗12が接続されず、第1抵抗接続状態A11が形成される。一方、
図1(B)に示すように、ON/OFFスイッチ32がON状態の場合には、充電用回路A1には、第2外部抵抗12が第1外部抵抗11に並列接続され、第2抵抗接続状態A12が形成される。
【0022】
第2抵抗接続状態A12においては、第1外部抵抗11と第2外部抵抗12とが並列接続されており、その合成抵抗値R
12は、次の式(1)で表わされる。
R
12=R
1×R
2/(R
1+R
2) … (1)
【0023】
〔第1−2実施形態に係る電気特性測定装置1A〕
次に、本発明の第1−2実施形態に係る電気特性測定装置1Aについて、
図2を参照しながら説明する。
図2は、本発明の第1−2実施形態に係る燃料電池セルの電気特性測定装置1Aにおいて、単セル201の充電用回路A1を形成した状態を示す回路図であり、(A)は第1抵抗接続状態A11を示す図、(B)は第3抵抗接続状態A13を示す図である。
【0024】
第1−1実施形態に係る電気特性測定装置1は、外部抵抗切換器としてのON/OFFスイッチ32を備えているのに対して、第1−2実施形態に係る電気特性測定装置1Aは、ON/OFFスイッチ32に代えて、外部抵抗切換器としての外部抵抗切換スイッチ33を備える点が、主として異なる。また、第2実施形態に係る電気特性測定装置1Aにおいては、第2抵抗値R
2の大きさは、第1抵抗値R
1よりも小さい必要がある。その他の点については、第1−2実施形態に係る電気特性測定装置1Aは、第1−1実施形態に係る電気特性測定装置1と基本的に同じ構成を有している。特に説明しない点については、第1−1実施形態に係る電気特性測定装置1における説明が、第1−2実施形態に係る電気特性測定装置1Aにも適宜適用又は援用される。
【0025】
外部抵抗切換スイッチ33は、充電用回路A1における抵抗接続状態を、
図2(A)に示す、第1外部抵抗11が接続され且つ第2外部抵抗12が接続されない第1抵抗接続状態A11と、
図2(B)に示す、第2外部抵抗12が接続され且つ第1外部抵抗11が接続されない第3抵抗接続状態A13と、に切り換える。
【0026】
詳細には、外部抵抗切換スイッチ33は、定電圧直流電源21と第1外部抵抗11との間であって、且つ、定電圧直流電源21と第2外部抵抗12との間に設けられている。外部抵抗切換スイッチ33は、測定対象単セル201が、第1抵抗接続状態A11の充電用回路A1又は第3抵抗接続状態A13の充電用回路A1のいずれかに含まれるように、回路接続を切り換える。具体的には、外部抵抗切換スイッチ33は、抵抗接続位置を、
図2(A)に示すように、定電圧直流電源21と第1外部抵抗11と測定対象単セル201とが電気的に直列接続される、第1抵抗接続状態A11の充電用回路A1を構成する第1抵抗接続位置と、
図2(B)に示すように、定電圧直流電源21と第2外部抵抗12と測定対象単セル201とが電気的に直列接続される、第3抵抗接続状態A13の充電用回路A1を構成する第3抵抗接続位置と、の間で切り換え可能である。
【0027】
第2抵抗値R
2の大きさは、測定対象単セル201を満充電状態にするまでの時間を短縮する観点から、第1抵抗値R
1の10〜80%程度に設定するのが好ましい。
【0028】
〔第1実施形態に係る燃料電池セルの電気特性測定方法〕
次に、本発明の第1実施形態に係る燃料電池セルの電気特性測定方法について、
図3を参照しながら説明する。
図3は、本発明の第1実施形態に係る電気特性測定方法による単セルの充電曲線C1−1である。
【0029】
第1実施形態に係る燃料電池セルの電気特性測定方法は、前述の第1−1実施形態に係る電気特性測定装置1、又は第1−2実施形態に係る電気特性測定装置1Aを用いて実施される。いずれの電気特性測定装置を用いた場合でも、電気特性測定方法の内容は基本的に同じであるため、共通して説明する。第1実施形態に係る燃料電池セルの電気特性測定方法は、(第1/第2)充電曲線記録工程と、内部抵抗値算出工程と、静電容量値算出工程と、満充電時間判定工程と、を含んでいる。
【0030】
充電曲線記録工程は、第1充電曲線記録工程と第2充電曲線記録工程との2種類があり、一の単セル201に対する電気特性測定において、択一的に実施される。具体的には、後述するように、満充電時間判定工程による判定結果によって、第1充電曲線記録工程に代えて、第2充電曲線記録工程が行われる。
【0031】
第1充電曲線記録工程では、燃料電池200が発電を行っていない常温下で、任意の単セル201に対して、第1抵抗接続状態A11の充電用回路A1(
図1(A)、
図2(A)参照)を形成することにより、
図3に示すように、単セル201の充電電圧値の時間変化を充電曲線C1−1として記録する。
【0032】
一方、第2充電曲線記録工程では、燃料電池200が発電を行っていない常温下で、任意の単セル201に対して、第2抵抗接続状態A12の充電用回路A1(
図1(B)参照)、又は第3抵抗接続状態A13の充電用回路A1(
図2(B)参照)を形成することにより、
図3に示すように、単セル201の充電電圧値の時間変化を充電曲線C1−1として記録する。
【0033】
なお、第1充電曲線記録工程において記録される充電曲線C1−1と、第2充電曲線記録工程において記録される充電曲線C1−1とは、曲線プロファイル(特に、充電電圧値が満充電電圧値V
Sになるまでの時間)が異なるが、指数関数的に充電電圧値が上昇するという同じ挙動を示すため、
図3では両者を区別していない。以下には、特に区別する必要が無いときには、第1充電曲線記録工程と第2充電曲線記録工程とを区別せずに、共通して説明する。
【0034】
先ず、第1充電曲線記録工程を行う。第1充電曲線記録工程では、燃料電池200が燃料電池ユニットに搭載されていない状態(典型的には、組立・焼成・還元処理済みセルスタックが出荷前の状態)で、測定対象単セル201に対して、上述した第1−1実施形態に係る電気特性測定装置1又は第1−2実施形態に係る電気特性測定装置1Aを接続する。そして、測定対象単セル201に所定の直流電圧値V
0を印加して充電を開始する。単セル201の充電中は、電圧計22により充電曲線C1−1を記録し、充電電圧値が飽和した時点で満充電電圧値V
Sに達したものと判断して充電操作を終了する。
【0035】
第1充電曲線記録工程に続く内部抵抗値算出工程では、第1抵抗値R
1、定電圧直流電源21により印加した直流電圧値V
0、及び充電曲線C1−1より求めた測定対象単セル201の満充電電圧値V
Sに基づいて、測定対象単セル201の内部抵抗値R
iを算出する。具体的には、次の式(2)を使用して内部抵抗値R
iを求める。なお、式(2)は、満充電時に単セル201に流れる電流値と、第1外部抵抗11に流れる電流値とが等しいという関係から導ける数式である。
R
i=V
S×R
1÷(V
0−V
S) … (2)
【0036】
内部抵抗値算出工程に続く静電容量値算出工程では、充電曲線C1−1より求めた測定対象単セル201の時定数τ
i、及び内部抵抗値R
iに基づいて、測定対象単セル201の静電容量値C
iを求める。具体的には、次の式(3)を使用して静電容量値C
iを求める。
C
i=τ
i÷R
i … (3)
【0037】
ここで、単セル201の時定数τ
iは、充電終了時点の充電電圧値(すなわち、満充電電圧値V
S)を100%として、充電中の充電電圧値が満充電電圧値V
Sの63.2%(=1−1/e×100)まで到達するのに要する時間である。
図3の充電曲線C1−1に示すように、充電開始時刻をt
1とし、充電電圧値がV
S×(1−1/e)となった時刻をt
2とすると、単セル201の時定数τ
iは、次の式(4)で表わされる。
τ
i=t
2−t
1 … (4)
【0038】
満充電時間判定工程は、第1充電曲線記録工程の後の任意のタイミングで行われる。満充電時間判定工程では、第1充電曲線記録工程において、満充電時間t
f1(
図3参照)が基準充電時間t
s(図示せず)よりも長いか否かを判定する。「満充電時間t
f1」は、充電開始時刻t
1から、充電電圧値が満充電電圧値V
Sになる時刻t
fまでの時間である。
【0039】
満充電時間判定工程により満充電時間t
f1が基準充電時間t
s(図示せず)よりも長いと判定された場合には、次回の燃料電池セルの電気特性測定のときに、第1充電曲線記録工程に代えて、第2充電曲線記録工程を行う。第2充電曲線記録工程は、燃料電池200が発電を行っていない常温下で、外部抵抗切換器(ON/OFFスイッチ32、外部抵抗切換スイッチ33)により充電用回路A1における抵抗接続状態が第2抵抗接続状態A12又は第3抵抗接続状態A13に切り換えられた状態で、測定対象単セル201に対して定電圧直流電源21を接続して充電用回路A1を形成することにより、測定対象単セル201の充電電圧値の時間変化を充電曲線C1−1として記録する工程である。
【0040】
満充電時間判定工程による判定結果によって、第1充電曲線記録工程に代えて、第2充電曲線記録工程を行う技術的意義は次の通りである。固体酸化型燃料電池200のセルスタックを構成する単セル201の内部抵抗値R
i及び静電容量値C
iを測定する電気特性測定装置においては、単セル201の内部抵抗値R
iの大きさに合わせて、充電用回路A1を構成する外部抵抗の抵抗値を単セル201の内部抵抗値R
iと同程度に大きく設定する必要がある。一方、充電用回路A1を構成する外部抵抗の抵抗値を大きく設定すると、単セル201へ流れる電流が小さくなり、そのため、単セル201のコンデンサ成分への充電が終わり、電圧が一定になるまでの時間(前述の満充電時間t
f1)が長くなる。
【0041】
そこで、第1実施形態に係る燃料電池セルの電気特性測定方法においては、まず、充電曲線記録工程として第1充電曲線記録工程を行い、これに基づいて満充電時間判定工程により満充電時間t
f1の長短を判定し、満充電時間t
f1が基準充電時間t
sよりも長いと判定された場合、第1充電曲線記録工程に代えて、満充電時間t
f1を短くできる第2充電曲線記録工程を行うことにしている。つまり、充電用回路A1を構成する外部抵抗の抵抗値を小さくして(R
1 ⇒ R
12(
図1(B)参照)又はR
2(
図2(B)参照))、単セル201へ流れる電流を大きくすることにより、単セル201のコンデンサ成分への充電が終わり、電圧が一定になるまでの時間(前述の満充電時間t
f1)を短くすることができる。
【0042】
第2充電曲線記録工程を行う場合には、第2充電曲線記録工程の後の充電曲線記録工程に続く内部抵抗値算出工程では、第1抵抗値R
1と第2抵抗値R
2との合成抵抗値R
12(又は第2抵抗値R
2)、定電圧直流電源21により印加した直流電圧値V
0、及び充電曲線C1より求めた測定対象単セル201の満充電電圧値V
Sに基づいて、測定対象単セル201の内部抵抗値R
iを算出する。具体的には、次の式(5)を使用して内部抵抗値R
iを求める。なお、式(5)は、満充電時に単セル201に流れる電流値と、第1外部抵抗11と第2外部抵抗12との合成抵抗(又は第2抵抗値R
2)に流れる電流値とが等しいという関係から導ける数式である。
R
i=V
S×R
12÷(V
0−V
S) … (5a)
R
i=V
S×R
2÷(V
0−V
S) … (5b)
【0043】
その後、第1充電曲線記録工程を行う場合と同様に、静電容量値算出工程が行われる。
【0044】
〔燃料電池セルスタックの診断方法〕
次に、燃料電池セルスタックの診断方法について説明する。燃料電池セルスタックの診断方法は、上述した燃料電池セルの電気特性測定方法に従う電気特性測定工程と、異特性セル判別工程と、を含んでいる。電気特性測定工程では、内部抵抗値算出工程で求めた内部抵抗値R
i及び静電容量値算出工程で求めた静電容量値C
iを取得し、単セルの異質性を判別するための情報として利用する。
【0045】
電気特性測定工程に続く異特性セル判別工程では、単セル201ごとの内部抵抗値R
iどうし、及び、静電容量値C
iどうしを比較し、セルスタックが特性の異なる単セル201を含むか否かを判別する。そして、セルスタックが異質な単セル201を所定割合以上(例えば、全セル数に対して数%程度)含む場合には、セルスタックの健全性が担保されていないと判断し、当該セルスタックを燃料電池ユニットに搭載することなく補修する。補修が困難な場合は、再利用可能な部品を回収した後、廃棄等の処分を行ってもよい。
なお、異特性セル判別工程では、単セル201どうしの特性値を比較して異質性を判別するだけでなく、各単セル201の特性値を予め設定した基準値(例えば、全セルの特性値の平均値)と比較することにより、その異質性を判別してもよい。
【0046】
〔第1実施形態の効果〕
第1−1実施形態に係る電気特性測定装置1及び第1−2実施形態に係る電気特性測定装置1A、並びに第1実施形態に係る燃料電池セルの電気特性測定方法によれば、以下のような効果を得ることができる。
【0047】
第1−1実施形態に係る電気特性測定装置1は、固体酸化型燃料電池200のセルスタックにおいて、任意の単セル201の内部抵抗値及び静電容量値を測定するための燃料電池セルの電気特性測定装置であって、測定対象単セル201、第1抵抗値R
1を有する第1外部抵抗11、第2抵抗値R
2を有し且つ第1外部抵抗11と並列する第2外部抵抗12、及び定電圧直流電源21を含む充電用回路A1と、充電用回路A1における抵抗接続状態を、第1外部抵抗11が接続され且つ第2外部抵抗12が接続されない第1抵抗接続状態A11と、第1外部抵抗11及び第2外部抵抗12が電気的に並列接続される第2抵抗接続状態A12と、に切り換えるON/OFFスイッチ32と、測定対象単セル201の両極に接続され、充電電圧の変化を測定する電圧計22と、を備える。
【0048】
また、第1−2実施形態に係る電気特性測定装置1Aは、固体酸化型燃料電池200のセルスタックにおいて、任意の単セル201の内部抵抗値及び静電容量値を測定するための燃料電池セルの電気特性測定装置であって、測定対象単セル201、第1抵抗値R
1を有する第1外部抵抗11、第1抵抗値R
1よりも小さい第2抵抗値R
2を有し且つ第1外部抵抗11と並列する第2外部抵抗12、及び定電圧直流電源21を含む充電用回路A1と、充電用回路A1における抵抗接続状態を、第1外部抵抗11が接続され且つ第2外部抵抗12が接続されない第1抵抗接続状態A11と、第2外部抵抗12が接続され且つ第1外部抵抗11が接続されない第3抵抗接続状態A13と、に切り換える外部抵抗切換スイッチ33と、測定対象単セル201の両極に接続され、充電電圧の変化を測定する電圧計22と、を備える。
【0049】
第1実施形態に係る燃料電池セルの電気特性測定方法は、第1−1実施形態に係る電気特性測定装置1又は第1−2実施形態に係る電気特性測定装置1Aによる燃料電池セルの電気特性測定方法であって、燃料電池200が発電を行っていない常温下で、外部抵抗切換器32,33により充電用回路A1における抵抗接続状態が第1抵抗接続状態A11に切り換えられた状態で、測定対象単セル201に対して定電圧直流電源21を接続して充電用回路A1を形成することにより、測定対象単セル201の充電電圧値の時間変化を充電曲線C1−1として記録する第1充電曲線記録工程と、定電圧直流電源21より印加した直流電圧値、第1抵抗値R
1、及び充電曲線C1−1より求めた測定対象単セル201の満充電電圧値V
Sに基づいて、測定対象単セル201の内部抵抗値を算出する内部抵抗値算出工程と、充電曲線C1−1より求めた測定対象単セル201の時定数τ
i、及び内部抵抗値に基づいて、測定対象単セル201の静電容量値を算出する静電容量値算出工程と、第1充電曲線記録工程において、充電開始時刻t
1から充電電圧値が満充電電圧値V
Sになる時刻t
fまでの満充電時間t
f1が基準充電時間よりも長いか否かを判定する満充電時間判定工程と、を含み、満充電時間判定工程により満充電時間t
f1が基準充電時間よりも長いと判定された場合には、次回の燃料電池セルの電気特性測定のときに、第1充電曲線記録工程に代えて、燃料電池200が発電を行っていない常温下で、外部抵抗切換器(ON/OFFスイッチ32、外部抵抗切換スイッチ33)により充電用回路A1における抵抗接続状態が第2抵抗接続状態A12又は第3抵抗接続状態A13に切り換えられた状態で、測定対象単セル201に対して定電圧直流電源21を接続して充電用回路A1を形成することにより、測定対象単セル201の充電電圧値の時間変化を充電曲線C1−1として記録する第2充電曲線記録工程を行う。
【0050】
固体酸化型燃料電池200のセルスタックを構成する単セル201の内部抵抗値R
i及び静電容量値C
iを測定する電気特性測定装置においては、単セル201の内部抵抗値R
iの大きさに合わせて、充電用回路A1を構成する外部抵抗の抵抗値を単セル201の内部抵抗値R
iと同程度に大きく設定する必要がある。一方、充電用回路A1を構成する外部抵抗の抵抗値を大きく設定すると、単セル201へ流れる電流が小さくなり、そのため、単セル201のコンデンサ成分への充電を行う際に、充電が終わり、充電電圧値が一定になるまでの時間(前述の満充電時間t
f1)が長くなる。
【0051】
これに対して、第1実施形態によれば、単セル201のコンデンサ成分への充電を行う際に、抵抗接続状態を第2抵抗接続状態A12又は第3抵抗接続状態A13に切り換えた状態で充電を行えば、第2抵抗接続状態A12又は第3抵抗接続状態A13において、外部抵抗の抵抗値(第1−1実施形態における第1抵抗値R
1と第2抵抗値R
2との合成抵抗値R
12;或いは、第1−2実施形態における第2抵抗値R
2)は、第1抵抗接続状態A11における抵抗値(第1抵抗値R
1)よりも小さくなる。そのため、充電速度を向上させることができ、満充電時間t
f1を短くすることができる。例えば、
図3に、抵抗接続状態が第1抵抗接続状態A11である場合の充電曲線C1−2を破線で示す。このように、抵抗接続状態が第1抵抗接続状態A11である場合の充電曲線C1−2と比べて、抵抗接続状態が第2抵抗接続状態A12又は第3抵抗接続状態A13である場合の充電曲線C1−1は、充電速度が速く、満充電時間t
f1が短い。
【0052】
なお、後述の
図4及び
図9において、充電曲線C1−2と同趣旨の充電曲線をそれぞれ「充電曲線C2−3」及び「充電曲線C3−4」で示している。
【0053】
特に、第1実施形態に係る燃料電池セルの電気特性測定方法によれば、先ずは、充電用回路A1における抵抗接続状態が第1抵抗接続状態A11に切り換えられた状態で、第1充電曲線記録工程を行う。また、満充電時間判定工程により満充電時間t
f1の長短を判定し、満充電時間t
f1が基準充電時間t
sよりも長いと判定された場合に、第1充電曲線記録工程に代えて、第2充電曲線記録工程を行っている。このため、第2抵抗接続状態A12又は第3抵抗接続状態A13への切り換えの必要性を確認し、必要性が有るときのみ、抵抗接続状態は、第2抵抗接続状態A12又は第3抵抗接続状態A13に切り換えられる。そして、単セル201のコンデンサ成分への充電を速やかに行うことができ、満充電時間t
f1を短くすることができる。その結果、燃料電池ユニットを作動させる前に、セルスタックの全体に亘って単セル201の内部抵抗値R
i及び静電容量値C
iを正確且つ短時間で計測ことができる。
【0054】
〔第2−1実施形態及び第2−2実施形態に係る電気特性測定装置〕
次に、本発明の第2−1実施形態に係る電気特性測定装置、及び第2−2実施形態に係る電気特性測定装置の回路の構成について、再び
図1又は
図2を参照しながら説明する。
【0055】
第2−1実施形態における電気特性測定装置は、
図1に示す第1−1実施形態で使用したものと基本的に同じ構成を有している。また、第2−2実施形態に係る電気特性測定装置は、
図2に示す第1−2実施形態で使用したものと基本的に同じ構成を有している。第2−1実施形態及び第2−2実施形態は、それぞれ第1−1実施形態及び第1−2実施形態と比べて、定電圧直流電源21の接続を遮断して放電用回路A2(図示省略)を形成可能になっている点が、主に相違している。
【0056】
特に説明しない点については、第1−1実施形態に係る電気特性測定装置1及び第1−2実施形態に係る電気特性測定装置1Aにおける説明が、それぞれ第2−1実施形態に係る電気特性測定装置及び第2−2実施形態に係る電気特性測定装置にも適宜適用又は援用される。また、後述の第3−1実施形態に係る電気特性測定装置3及び第3−2実施形態に係る電気特性測定装置3Aにおける説明が、それぞれ第2−1実施形態に係る電気特性測定装置及び第2−2実施形態に係る電気特性測定装置にも適宜適用又は援用される。
【0057】
放電用回路A2は、
図1又は
図2において、定電圧直流電源21と第1外部抵抗11の間の電気接続を切断、第1外部抵抗11と単セル201の間の電気接続を切断、又は単セル201と定電圧直流電源21との間の電気接続を切断することにより実行される。必要に応じて、ON/OFFスイッチ32又は外部抵抗切換スイッチ33が操作されて、第2外部抵抗12への電気接続が切断される。
【0058】
なお、実用的な回路設計においては、予め電気特性測定装置の所要の箇所にスイッチを介在させておき、このスイッチを操作することにより充電用回路A1と放電用回路A2との切り換えを行えばよい。これらの測定対象単セル201が充電用回路A1又は放電用回路A2のいずれかに含まれるように回路接続を切り換える機器(スイッチ等)を「充放電切換器」と総称する。充放電切換器としては、後述の第3−1実施形態又は第3−2実施形態における充放電切換器としての充放電切換スイッチ36が例示される。
【0059】
〔第2実施形態に係る燃料電池セルの電気特性測定方法〕
次に、第2実施形態に係る燃料電池セルの電気特性測定方法について、
図4を参照しながら説明する。
図4は、本発明の第2実施形態に係る電気特性測定方法による単セルの充電曲線C2−1及び放電曲線C2−2である。第2実施形態に係る燃料電池セルの電気特性測定方法は、前述の第2−1実施形態に係る電気特性測定装置、又は第2−2実施形態に係る電気特性測定装置を用いて実施される。いずれの電気特性測定装置を用いた場合でも、電気特性測定方法の内容は基本的に同じであるため、共通して説明する。
【0060】
第2実施形態に係る燃料電池セルの電気特性測定方法は、(第1/第2)充放電曲線記録工程と、内部抵抗値算出工程と、静電容量値算出工程と、満充電時間判定工程と、を含んでいる。特に説明しない点については、第1実施形態に係る燃料電池セルの電気特性測定方法における説明、及び後述の第3実施形態に係る燃料電池セルの電気特性測定方法における説明が、第2実施形態に係る燃料電池セルの電気特性測定方法にも適宜適用又は援用される。
【0061】
第1充放電曲線記録工程では、燃料電池200が発電を行っていない常温下で、任意の単セル201に対して、第1抵抗接続状態A11の充電用回路A1(
図1(A)、
図2(A)参照)を形成することにより、
図4に示すように、単セル201の充電電圧値の時間変化を充電曲線C2−1として記録する。その後、定電圧直流電源21の接続を遮断して放電用回路A2を形成することにより、単セル201の充電電圧値の時間変化を放電曲線C2−2として記録する。
【0062】
第2充放電曲線記録工程では、燃料電池200が発電を行っていない常温下で、任意の単セル201に対して、第2抵抗接続状態A12の充電用回路A1(
図1(B)参照)、又は第3抵抗接続状態A13の充電用回路A1(
図2(B)参照)を形成することにより、
図4に示すように、単セル201の充電電圧値の時間変化を充電曲線C2−1として記録する。その後、定電圧直流電源21の接続を遮断して放電用回路A2を形成することにより、単セル201の充電電圧値の時間変化を放電曲線C2−2として記録する。
【0063】
具体的には、(第1/第2)充放電曲線記録工程では、先ず、燃料電池200が燃料電池ユニットに搭載されていない状態(典型的には、組立・焼成・還元処理済みセルスタックが出荷前の状態)で、測定対象単セル201に対して、上述した第2−1実施形態又は第2−2実施形態に係る電気特性測定装置を接続する。そして、測定対象単セル201に所定の直流電圧値V
0を印加して充電を開始する。単セル201の充電中は、電圧計22により充電曲線C2−1を記録し、充電電圧値が飽和した時点で満充電電圧値V
Sに達したものと判断して充電操作を終了する。
【0064】
次に、測定対象単セル201に直流電圧値V
0が印加されないように電圧印加を遮断し、放電を開始する。単セル201の放電中は、電圧計22により放電曲線C2−2を記録し、充電電圧値が満充電電圧値V
Sの36.8%(=1/e×100)相当の値に達した時点以降で放電操作を終了する。
【0065】
第1充放電曲線記録工程に続く内部抵抗値算出工程では、第1抵抗値R
1、定電圧直流電源21により印加した直流電圧値V
0、及び充電曲線C2−1より求めた測定対象単セル201の満充電電圧値V
Sに基づいて、測定対象単セル201の内部抵抗値R
iを算出する。具体的には、上述した式(2)を使用して内部抵抗値R
iを求める。
【0066】
一方、第2充放電曲線記録工程に続く内部抵抗値算出工程では、第1抵抗値R
1と第2抵抗値R
2との合成抵抗値R
12(又は第2抵抗値R
2)、定電圧直流電源21により印加した直流電圧値V
0、及び充電曲線C2−1より求めた測定対象単セル201の満充電電圧値V
Sに基づいて、測定対象単セル201の内部抵抗値R
iを算出する。具体的には、上述した式(5)を使用して内部抵抗値R
iを求める。
【0067】
内部抵抗値算出工程に続く静電容量値算出工程では、放電曲線C2−2より求めた測定対象単セル201の時定数τ
i、及び内部抵抗値R
iに基づいて、測定対象単セル201の静電容量値C
iを求める。具体的には、上述した式(3)を使用して静電容量値C
iを求める。
【0068】
ここで、単セル201の時定数τ
iは、放電開始時点の充電電圧値(すなわち、満充電電圧値V
S)を100%として、放電中の充電電圧値が満充電電圧値V
Sの36.8%(=1/e×100)まで低下するのに要する時間である。
図4の放電曲線C2−2に示すように、放電開始時刻をt
21とし、充電電圧値がV
S×1/eとなった時刻をt
22とすると、単セル201の時定数τ
iは、次の式(6)で表わされる。
τ
i=t
22−t
21 … (6)
【0069】
〔第2実施形態の効果〕
第2−1実施形態に係る電気特性測定装置及び第2−2実施形態に係る電気特性測定装置、並びに第2実施形態に係る電気特性測定方法によれば、第1実施形態と同様の効果が奏されると共に、以下のような効果を得ることができる。
第2−1実施形態に係る電気特性測定装置及び第2−2実施形態に係る電気特性測定装置は、それぞれ第1−1実施形態に係る電気特性測定装置1及び第1−2実施形態に係る電気特性測定装置1Aが備える構成に加えて、測定対象単セル201が含まれ且つ定電圧直流電源21が含まれない放電用回路A2と、測定対象単セル201が充電用回路A1又は放電用回路A2のいずれかに含まれるように回路接続を切り換える充放電切換器(前述の各種機器)と、を備える。
【0070】
第2実施形態に係る電気特性測定方法は、第2−1実施形態に係る電気特性測定装置及び第2−2実施形態に係る電気特性測定装置による燃料電池セルの電気特性測定方法であって、燃料電池が発電を行っていない常温下で、外部抵抗切換器により充電用回路における抵抗接続状態が第1抵抗接続状態に切り換えられた状態で、測定対象単セルが充電用回路に含まれるように充放電切換器を切り換えることにより、測定対象単セルの充電電圧値の時間変化を充電曲線C2−1として記録した後、測定対象単セルが放電用回路に含まれるように充放電切換器を切り換えることにより、測定対象単セルの充電電圧値の時間変化を放電曲線C2−2として記録する第1充放電曲線記録工程と、定電圧直流電源により印加した直流電圧値、第1抵抗値、及び充電曲線C2−1より求めた測定対象単セルの満充電電圧値V
Sに基づいて、測定対象単セルの内部抵抗値を算出する内部抵抗値算出工程と、放電曲線C2−2より求めた測定対象単セルの時定数τ
i、及び内部抵抗値に基づいて、測定対象単セルの静電容量値を算出する静電容量値算出工程と、第1充放電曲線記録工程において、充電開始時刻t
1から充電電圧値が満充電電圧値V
Sになる時刻t
fまでの満充電時間t
f1が、基準充電時間よりも長いか否かを判定する満充電時間判定工程と、を含み、満充電時間判定工程により満充電時間t
f1が基準充電時間よりも長いと判定された場合には、次回の燃料電池セルの電気特性測定のときに、第1充放電曲線記録工程に代えて、燃料電池が発電を行っていない常温下で、外部抵抗切換器により充電用回路における抵抗接続状態が第2抵抗接続状態A12又は第3抵抗接続状態A13に切り換えられた状態で、測定対象単セルが充電用回路に含まれるように充放電切換器を切り換えることにより、測定対象単セルの充電電圧値の時間変化を充電曲線C2−1として記録した後、測定対象単セルが放電用回路に含まれるように充放電切換器を切り換えることにより、測定対象単セルの充電電圧値の時間変化を放電曲線C2−2として記録する第2充放電曲線記録工程を行う。
【0071】
一般に、燃料電池の単セルの静電容量値を計測する場合、次のような不都合がある。第1実施形態のように充電曲線C1−1から単セル201の時定数τ
iを求めるケースでは、充電開始時刻t
1と充電電圧値がV
S×(1−1/e)となった時刻t
2の2つを計測した上で、式「τ
i=t
2−t
1」に代入する必要があるが、充電曲線C1−1の充電開始時刻t
1の部分が屈折していないと、充電開始時刻t
1を正確に求めることができない。したがって、充電開始時刻t
1の計測誤差がそのまま時定数τ
iの誤差となる。
【0072】
これに対して、第2実施形態では、単セル201の時定数τ
iを満充電状態から放電を開始して求めるように構成しているので、放電開始時刻t
21が明確である。そのため、単セル201の時定数τ
iを充電ゼロの状態から充電を開始して求める場合に比べて、時定数τ
iを正確に測定可能である。その結果、セル数が数十〜数百にも達するセルスタックにおいて、全ての単セル201の静電容量値C
iを効率よく正確に測定することができる。
【0073】
〔第3−1実施形態に係る電気特性測定装置3〕
以下、本発明の第3−1実施形態に係る電気特性測定装置3について、
図5及び
図6を参照しながら説明する。
図5は、本発明の第3−1実施形態に係る燃料電池セルの電気特性測定装置3において、単セル201の充電用回路A1を形成した状態を示す回路図であり、(A)は第1抵抗接続状態A11を示す図、(B)は第2抵抗接続状態A12を示す図である。
図6は、本発明の第3−1実施形態に係る燃料電池セルの電気特性測定装置3において、単セル201の放電用回路A2を形成した状態を示す回路図である。
【0074】
第3−1実施形態に係る電気特性測定装置3は、定電圧直流電源21と、第1外部抵抗11と、第2外部抵抗12と、充電電圧測定器としての電圧計22と、外部抵抗切換器としてのON/OFFスイッチ32と、第3外部抵抗13と、充放電切換器としての充放電切換スイッチ36と、を有している。つまり、第3−1実施形態に係る電気特性測定装置3は、第1−1実施形態に係る電気特性測定装置1が有する構成に加えて、第3外部抵抗13と、充放電切換スイッチ36と、を更に有している。定電圧直流電源21、第1外部抵抗11、及び充放電切換スイッチ36は、燃料電池200が発電を行っていない常温下で、測定対象単セル201に電気的に直列接続され、測定対象単セル201を充電する充電用回路A1を形成する。充電用回路A1は、単セル201、第1外部抵抗11、第2外部抵抗12、及び電圧計22を含む。充電用回路A1において、第2外部抵抗12は、第1外部抵抗11と並列接続される(
図5(B)参照)か、又は、充電用回路A1に接続されない(
図5(A)参照)。
【0075】
第3外部抵抗13は、燃料電池200が発電を行っていない常温下で、測定対象単セル201に電気的に並列接続され、測定対象単セル201を放電する放電用回路A2(
図6参照)を形成する。また、電圧計22は、測定対象単セル201に電気的に並列接続される。電圧計22は、単セル201の2つの電極、即ち、カソードと、アノードとにそれぞれ電気的に接続され、単セル201の充電電圧値を測定可能である。
【0076】
ON/OFFスイッチ32は、第1外部抵抗11と並列する第2外部抵抗12を含む回路上に設けられており、この回路における電気的導通のON/OFFを切り換えできる。そのため、ON/OFFスイッチ32は、充電用回路A1における抵抗接続状態を、
図5(A)に示す、第1外部抵抗11が接続され且つ第2外部抵抗12が接続されない第1抵抗接続状態A11と、
図5(B)に示す、第1外部抵抗11及び第2外部抵抗12が電気的に並列接続される第2抵抗接続状態A12と、に切り換えることができる。具体的には、
図5(A)に示すように、ON/OFFスイッチ32がOFF状態の場合には、充電用回路A1には第2外部抵抗12が接続されず、第1抵抗接続状態A11が形成される。一方、
図5(B)に示すように、ON/OFFスイッチ32がON状態の場合には、充電用回路A1には、第2外部抵抗12が第1外部抵抗11に並列接続され、第2抵抗接続状態A12が形成される。
【0077】
第3外部抵抗13は、第3抵抗値R
3を有しており、この第3抵抗値R
3は、単セル201の時定数τ
iに基づいて設定される。具体的には、単セル201の内部抵抗及び第3外部抵抗13からなる合成抵抗の時定数τ
pが数秒から1分程度になるように、第3外部抵抗13の第3抵抗値R
3を設定する。参考までに、第3外部抵抗13の第3抵抗値R
3を単セル201の内部抵抗値R
iの3倍に設定すると、合成抵抗の時定数τ
pは単セルの時定数τ
iの75%になる。また、第3外部抵抗13の第3抵抗値R
3を単セル201の内部抵抗値R
iの0.3倍に設定すると、合成抵抗の時定数τ
pは単セルの時定数τ
iの23%になる。本実施形態では、第3抵抗値R
3は、単セル201の内部抵抗値R
iと同等の値(合成抵抗の時定数τ
pが単セルの時定数τ
iの50%)に設定される。
【0078】
充放電切換スイッチ36は、第1外部抵抗11と単セル201との間であって、且つ、単セル201と第3外部抵抗13との間に設けられている。充放電切換スイッチ36は、単セル201が充電用回路A1又は放電用回路A2のいずれかに含まれるように、回路接続を切り換える。具体的には、充放電切換スイッチ36は、
図5に示すように、定電圧直流電源21と、第1外部抵抗11(
図5(A)参照)又は、第1外部抵抗11と第2外部抵抗12との合成抵抗(
図5(B)参照)と、単セル201とが電気的に直列接続される充電用回路A1を構成する充電側位置と、
図6に示すように、単セル201と第3外部抵抗13とによって閉回路である放電用回路A2が構成されて、単セル201において放電が行われる放電側位置と、の間で切り換え可能である。
【0079】
〔第3−2実施形態に係る電気特性測定装置3A〕
次に、本発明の第3−2実施形態に係る電気特性測定装置3Aについて説明する。
図7は、本発明の第3−2実施形態に係る燃料電池セルの電気特性測定装置3Aにおいて、単セル201の充電用回路A1を形成した状態を示す回路図であり、(A)は第1抵抗接続状態A11を示す図、(B)は第3抵抗接続状態A13を示す図である。
図8は、本発明の第3−2実施形態に係る燃料電池セルの電気特性測定装置3Aにおいて、単セル201の放電用回路A2を形成した状態を示す回路図である。
【0080】
第3−1実施形態に係る電気特性測定装置3は、外部抵抗切換器としてのON/OFFスイッチ32を備えているのに対して、第3−2実施形態に係る電気特性測定装置3Aは、ON/OFFスイッチ32に代えて、外部抵抗切換スイッチ33を備える点が、主として異なる。また、第3−2実施形態に係る電気特性測定装置3Aにおいては、第2抵抗値R
2の大きさは、第1抵抗値R
1よりも小さい必要がある。その他の点については、第3−2実施形態に係る電気特性測定装置3Aは、第3−1実施形態に係る電気特性測定装置3と基本的に同じ構成を有している。特に説明しない点については、第3−1実施形態に係る電気特性測定装置3における説明が、第3−2実施形態に係る電気特性測定装置3Aにも適宜適用又は援用される。
【0081】
外部抵抗切換スイッチ33は、充電用回路A1における抵抗接続状態を、
図7(A)に示す、第1外部抵抗11が接続され且つ第2外部抵抗12が接続されない第1抵抗接続状態A11と、
図7(B)に示す、第2外部抵抗12が接続され且つ第1外部抵抗11が接続されない第3抵抗接続状態A13と、に切り換える。
【0082】
外部抵抗切換スイッチ33は、定電圧直流電源21と第1外部抵抗11との間であって、且つ、定電圧直流電源21と第2外部抵抗12との間に設けられている。外部抵抗切換スイッチ33は、測定対象単セル201が、第1抵抗接続状態A11の充電用回路A1又は第3抵抗接続状態A13の充電用回路A1のいずれかに含まれるように、回路接続を切り換える。具体的には、外部抵抗切換スイッチ33は、
図7(A)に示すように、定電圧直流電源21と、第1外部抵抗11と、測定対象単セル201とが電気的に直列接続される、第1抵抗接続状態A11の充電用回路A1を構成する第1抵抗接続位置と、
図7(B)に示すように、定電圧直流電源21と、第2外部抵抗12と、測定対象単セル201とが電気的に直列接続される、第3抵抗接続状態A13の充電用回路A1を構成する第3抵抗接続位置と、の間で切り換え可能である。
【0083】
〔第3実施形態に係る燃料電池セルの電気特性測定方法〕
次に、上述の第3−1実施形態に係る電気特性測定装置3又は第3−2実施形態に係る電気特性測定装置3Aを用いる第3実施形態に係る燃料電池セルの電気特性測定方法について、
図9を参照しながら説明する。
図9は、本発明の第3実施形態に係る電気特性測定方法による単セルの充電曲線C3−1及び放電曲線C3−2である。第3実施形態に係る燃料電池セルの電気特性測定方法は、(第1/第2)充放電曲線記録工程と、内部抵抗値算出工程と、静電容量値算出工程と、満充電時間判定工程と、を含んでいる。
【0084】
第1充放電曲線記録工程では、燃料電池200が発電を行っていない常温下で、任意の単セル201に対して、第1抵抗接続状態A11の充電用回路A1(
図5(A)、
図7(A)参照)を形成することにより、
図9に示すように、単セル201の充電電圧値の時間変化を充電曲線C3−1として記録する。その後、
図6に示すように、測定対象単セル201が放電用回路A2に含まれるように、充放電切換器としての充放電切換スイッチ36を切り換えることにより、測定対象単セル201の充電電圧値の時間変化を放電曲線C3−2として記録する。
【0085】
一方、第2充放電曲線記録工程では、燃料電池200が発電を行っていない常温下で、任意の単セル201に対して、第2抵抗接続状態A12の充電用回路A1(
図5(B)参照)、又は第3抵抗接続状態A13の充電用回路A1(
図7(B)参照)を形成することにより、
図9に示すように、単セル201の充電電圧値の時間変化を充電曲線C3−1として記録する。その後、
図8に示すように、測定対象単セル201が放電用回路A2に含まれるように、充放電切換器としての充放電切換スイッチ36を切り換えることにより、測定対象単セル201の充電電圧値の時間変化を放電曲線C3−2として記録する。
【0086】
第1充放電曲線記録工程では、先ず、燃料電池200が燃料電池ユニットに搭載されていない状態(典型的には、組立・焼成・還元処理済みセルスタックが出荷前の状態)で、測定対象単セル201に対して、上述した第3−1実施形態に係る電気特性測定装置3又は第3−2実施形態に係る電気特性測定装置3Aを接続する。そして、第2抵抗接続状態A12の充電用回路A1(
図5(B)参照)、又は第3抵抗接続状態A13の充電用回路A1(
図7(B)参照)を形成すると共に、充放電切換スイッチ36を充電側位置へ切り換え(
図5、
図7)、測定対象単セル201に所定の直流電圧値V
0を印加して充電を開始する。単セル201の充電中は、電圧計22により充電曲線C3−1を記録し、充電電圧値が飽和した時点で満充電電圧値V
Sに達したものと判断して充電操作を終了する。
【0087】
次に、充放電切換スイッチ36を放電側位置へ切り換え(
図6、
図8)、測定対象単セル201への印加電圧を遮断して放電を開始する。単セル201の放電中は、電圧計22により放電曲線C3−2を記録し、充電電圧値が満充電電圧値V
Sの36.8%相当の値に達した時点以降で放電操作を終了する。
【0088】
第1充放電曲線記録工程に続く内部抵抗値算出工程では、充電曲線C3−1より求めた測定対象単セル201の満充電電圧値V
S、定電圧直流電源21により印加した直流電圧値V
0、及び第1抵抗値R
1に基づいて、測定対象単セル201の内部抵抗値R
iを算出する。具体的には、前述の式(2)を使用して内部抵抗値R
iを求める。
【0089】
第2充放電曲線記録工程に続く内部抵抗値算出工程では、充電曲線C3−1より求めた測定対象単セル201の満充電電圧値V
S、定電圧直流電源21により印加した直流電圧値V
0、及び、第1抵抗値R
1と第2抵抗値R
2との合成抵抗値R
12(又は第2抵抗値R
2)に基づいて、測定対象単セル201の内部抵抗値R
iを算出する。具体的には、前述の式(5)を使用して内部抵抗値R
iを求める。
【0090】
内部抵抗値算出工程に続く静電容量値算出工程では、放電曲線C3−2より求めた合成抵抗(すなわち、測定対象単セル201の内部抵抗及び第3外部抵抗13からなる合成抵抗)の時定数τ
p、内部抵抗値R
i及び第3抵抗値R
3に基づいて、測定対象単セル201の静電容量値C
iを求める。具体的には、次の式(7),(8)を使用して静電容量値C
iを求める。なお、式中のR
pは、内部抵抗値R
i及び第3抵抗値R
3の合成抵抗値である。
R
p=R
i×R
3/(R
i+R
3) … (7)
C
i=τ
p÷R
p … (8)
【0091】
ここで、合成抵抗の時定数τ
pは、放電開始時点の充電電圧値(すなわち、満充電電圧値V
S)を100%として、放電中の充電電圧値が満充電電圧値V
Sの36.8%(=1/e×100)まで低下するのに要する時間である。
図9の放電曲線C3−2に示すように、放電開始時刻をt
21とし、充電電圧値がV
S×1/eとなった時刻をt
22とすると、合成抵抗の時定数τ
pは、次の式(9)で表わされる。
τ
p=t
22−t
21 … (9)
【0092】
〔第3実施形態の効果〕
第3−1実施形態に係る電気特性測定装置3及び第3−2実施形態に係る電気特性測定装置3A、並びに第3実施形態に係る燃料電池セルの電気特性測定方法によれば、第1実施形態及び第2実施形態と同様の効果が奏されると共に、以下のような効果を得ることができる。
【0093】
第3−1実施形態に係る電気特性測定装置3及び第3−2実施形態に係る電気特性測定装置3Aは、それぞれ、第1−1実施形態に係る電気特性測定装置1及び第1−2実施形態に係る電気特性測定装置1Aの構成に加えて、測定対象単セル201が含まれ且つ定電圧直流電源21が含まれない放電用回路A2と、測定対象単セル201が充電用回路A1又は放電用回路A2のいずれかに含まれるように回路接続を切り換える充放電切換スイッチ36と、を更に備える。また、放電用回路A2は、第3抵抗値R
3を有し且つ電圧計22に電気的に並列接続される第3外部抵抗13を更に含む。
【0094】
第3実施形態に係る燃料電池セルの電気特性測定方法は、燃料電池200が発電を行っていない常温下で、外部抵抗切換器32,33により充電用回路A1における抵抗接続状態が第1抵抗接続状態A11に切り換えられた状態で、測定対象単セル201が充電用回路A1に含まれるように充放電切換器36を切り換えることにより、測定対象単セル201の充電電圧値の時間変化を充電曲線C3−1として記録した後、測定対象単セル201が放電用回路A2に含まれるように充放電切換器36を切り換えることにより、測定対象単セル201の充電電圧値の時間変化を放電曲線C3−2として記録する第1充放電曲線記録工程と、定電圧直流電源21により印加した直流電圧値、第1抵抗値R
1、及び充電曲線C3−1より求めた測定対象単セル201の満充電電圧値V
Sに基づいて、測定対象単セル201の内部抵抗値を算出する内部抵抗値計算出工程と、放電曲線C3−2より求めた内部抵抗値と第3抵抗値R
3との合成抵抗の時定数τ
p、内部抵抗値及び第3抵抗値R
3に基づいて、測定対象単セル201の静電容量値を算出する静電容量値算出工程と、第1充放電曲線記録工程において、充電開始時刻t
1から充電電圧値が満充電電圧値V
Sになる時刻t
fまでの満充電時間t
f1が、基準充電時間よりも長いか否かを判定する満充電時間判定工程と、を含み、満充電時間判定工程により満充電時間t
f1が基準充電時間よりも長いと判定された場合には、次回の燃料電池セルの電気特性測定のときに、第1充放電曲線記録工程に代えて、燃料電池200が発電を行っていない常温下で、外部抵抗切換器32,33により充電用回路A1における抵抗接続状態が第2抵抗接続状態A12又は第3抵抗接続状態A13に切り換えられた状態で、測定対象単セル201が充電用回路A1に含まれるように充放電切換器36を切り換えることにより、測定対象単セル201の充電電圧値の時間変化を充電曲線C3−1として記録した後、測定対象単セル201が放電用回路A2に含まれるように充放電切換器36を切り換えることにより、測定対象単セル201の充電電圧値の時間変化を放電曲線C3−2として記録する第2充放電曲線記録工程を行う。
【0095】
一般に、燃料電池の単セルの静電容量値を計測する場合、次のような不都合がある。第2実施形態のように、放電曲線C2−2(
図4参照)から単セル201の時定数τ
iを求めるケースでは、単セル201の内部抵抗値R
iや静電容量値C
iが大きいと、
図9に破線で示す放電曲線C3−3のようにセル内での放電に時間が掛かる。したがって、単セル201の状態によっては、時定数τ
iを決定するまでに長時間を要することになる。
【0096】
これに対して、第3実施形態では、測定対象単セル201に第3外部抵抗13を並列に接続し、単セル201の内部抵抗及び第3外部抵抗13からなる合成抵抗を形成している。この合成抵抗の合成抵抗値R
pは、単セル201の内部抵抗値R
iよりも小さく、合成抵抗の時定数τ
pが単セル201の時定数τ
iよりも短くなるので、放電曲線C3−2に示すように短時間で単セル201の放電が行える。
【0097】
〔変形例〕
本発明は、上記実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲に記載された技術的範囲において変形が可能である。例えば、上記実施形態では、燃料電池200が燃料電池ユニットに搭載されていない状態で、測定対象単セル201の電気特性を測定するケースを例示した。しかし、燃料電池200が発電を行っていない常温下であれば、燃料電池200が燃料電池ユニットに搭載されている状態で、測定対象単セル201の電気特性を測定してもよい。