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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-220560(P2017-220560A)
(43)【公開日】2017年12月14日
(54)【発明の名称】積層セラミックコンデンサ
(51)【国際特許分類】
   H01G 4/12 20060101AFI20171117BHJP
   H01G 4/30 20060101ALI20171117BHJP
   H01G 4/232 20060101ALI20171117BHJP
【FI】
   H01G4/12 349
   H01G4/30 301E
   H01G4/12 352
   H01G4/30 301C
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-113924(P2016-113924)
(22)【出願日】2016年6月7日
(71)【出願人】
【識別番号】000204284
【氏名又は名称】太陽誘電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】持木 雅希
(72)【発明者】
【氏名】仲田 要輔
(72)【発明者】
【氏名】角田 伸一
(72)【発明者】
【氏名】真下 康行
【テーマコード(参考)】
5E001
5E082
【Fターム(参考)】
5E001AB03
5E001AC01
5E001AC03
5E001AC04
5E001AD03
5E001AD04
5E001AF06
5E001AH01
5E001AH09
5E001AJ01
5E082AA01
5E082AB03
5E082BC33
5E082BC35
5E082BC36
5E082EE04
5E082EE11
5E082EE35
5E082FF05
5E082FG04
5E082FG22
5E082FG26
5E082FG46
5E082FG54
5E082GG10
5E082GG28
5E082JJ02
5E082JJ03
5E082LL02
(57)【要約】      (修正有)
【課題】高耐圧な積層セラミックコンデンサを提供すること。
【解決手段】複数の内部電極12a,12bと複数の誘電体層11とが交互に積層された積層体10と、前記複数の内部電極のうち一部の内部電極と接続された第1外部電極20と、第1方向において前記第1外部電極に対し前記積層体の反対側に設けられ、前記複数の内部電極のうち残部の内部電極と接続された第2外部電極30と、を備える。前記複数の内部電極と複数の誘電体層の面方向において前記第1方向に交差する第2方向において、前記複数の内部電極の端のうち最も外側に位置する第1端と、前記複数の内部電極の端のうち最も内側に位置する第2端と、の距離をW1(mm)、前記複数の誘電体層の各々の層厚をt1(μm)、前記複数の誘電体層の積層数をNとしたとき、t1×W1/Nは0.1以上である。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の内部電極と複数の誘電体層とが交互に積層された積層体と、
前記複数の内部電極のうち一部の内部電極と接続された第1外部電極と、
第1方向において前記第1外部電極に対し前記積層体の反対側に設けられ、前記複数の内部電極のうち残部の内部電極と接続された第2外部電極と、
を備え、
前記複数の内部電極と複数の誘電体層の面方向において前記第1方向に交差する第2方向において、前記複数の内部電極の端のうち最も外側に位置する第1端と、前記複数の内部電極の端のうち最も内側に位置する第2端と、の距離をW1(mm)、前記複数の誘電体層の各々の層厚をt1(μm)、前記複数の誘電体層の積層数をNとしたとき、
t1×W1/Nは0.1以上である積層セラミックコンデンサ。
【請求項2】
前記誘電体層はチタン酸バリウムを含む請求項1記載の積層セラミックコンデンサ。
【請求項3】
前記一部の内部電極と前記残部の内部電極とは交互に設けられている請求項1または2記載の積層セラミックコンデンサ。
【請求項4】
前記複数の内部電極の前記第2方向における端の位置は、前記積層体の積層方向において周期的に配置されている請求項1から3のいずれか一項記載の積層セラミックコンデンサ。
【請求項5】
前記端の位置が同じ隣接する複数の一定数の内部電極を1グループとして、グループごとに前記端の位置が異なる請求項4記載の積層セラミックコンデンサ。
【請求項6】
前記W1は、前記第1端と前記積層体の前記第2方向の端面との距離の8倍未満である請求項1から5のいずれか一項記載の積層セラミックコンデンサ。
【請求項7】
前記W1は、前記内部電極の前記第2方向の幅の5%未満である請求項1から6のいずれか一項記載の積層セラミックコンデンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層セラミックコンデンサに関し、例えば複数の内部電極と複数の誘電体層とが交互に積層された積層セラミックコンデンサに関する。
【背景技術】
【0002】
積層セラミックコンデンサの耐電圧性能向上のため、内部電極の重なり部分の面積を大きくすることが知られている(特許文献1)。耐電圧を向上させるため、複数の内部電極の辺を積層方向で合致させないことが知られている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−306761号公報
【特許文献2】特開2009−200092号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1、2は、積層セラミックコンデンサの耐電圧性能を向上させることを目的としているが、耐電圧は十分でない。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、高耐圧な積層セラミックコンデンサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、複数の内部電極と複数の誘電体層とが交互に積層された積層体と、前記複数の内部電極のうち一部の内部電極と接続された第1外部電極と、第1方向において前記第1外部電極に対し前記積層体の反対側に設けられ、前記複数の内部電極のうち残部の内部電極と接続された第2外部電極と、を備え、前記複数の内部電極と複数の誘電体層の面方向において前記第1方向に交差する第2方向において、前記複数の内部電極の端のうち最も外側に位置する第1端と、前記複数の内部電極の端のうち最も内側に位置する第2端と、の距離をW1(mm)、前記複数の誘電体層の各々の層厚をt1(μm)、前記複数の誘電体層の積層数をNとしたとき、t1×W1/Nは0.1以上である積層セラミックコンデンサである。
【0007】
上記構成において、前記誘電体層はチタン酸バリウムを含む構成とすることができる。
【0008】
上記構成において、前記一部の内部電極と前記残部の内部電極とは交互に設けられている構成とすることができる。
【0009】
上記構成において前記複数の内部電極の前記第2方向における端の位置は、前記積層体の積層方向において周期的に配置されている構成とすることができる。
【0010】
上記構成において、前記端の位置が同じ隣接する複数の一定数の内部電極を1グループとして、グループごとに前記端の位置が異なる構成とすることができる。
【0011】
上記構成において、前記W1は、前記第1端と前記積層体の前記第2方向の端面との距離の8倍未満である構成とすることができる。
【0012】
上記構成において、前記W1は、前記内部電極の前記第2方向の幅の5%未満である構成とすることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、高耐圧な積層セラミックコンデンサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、実施形態における積層セラミックコンデンサの部分断面斜視図である。
図2図2は、図1のA−A断面図である。
図3図3は、図1のB−B断面図である。
図4図4(a)および図4(b)は、1つのコンデンサを示す図である。
図5図5は、比較形態における積層セラミックコンデンサの断面図である。
図6図6は、実施形態における積層セラミックコンデンサの断面図である。
図7図7は、算出したX位置に対するストレスを示す図である。
図8図8は、実施形態の一例を示す積層セラミックコンデンサの断面図である。
図9図9は、実施例および比較例における各サンプルの各寸法を示す図である。
図10図10は、実施例および比較例におけるt1×W1/Nに対する耐電圧BDVを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しつつ、実施形態について説明する。
【0016】
(実施形態)
まず、積層セラミックコンデンサについて説明する。図1は、実施形態における積層セラミックコンデンサの部分断面斜視図である。図2は、図1のA−A断面図である。図3は、図1のB−B断面図である。図1から図3に示すように、積層セラミックコンデンサ100は、直方体形状を有する積層体10と、積層体10のいずれかの対向する両端面に設けられた外部電極20および30とを備える。積層体10は、誘電体として機能するセラミック材料を含む複数の誘電体層11と、複数の内部電極12とが、交互に積層された構成を有する。誘電体層11および内部電極12の積層方向をZ方向、外部電極20および30が設けられた方向をY方向、Y方向とZ方向に直交する方向をX方向とする。
【0017】
各内部電極12の端縁は、積層体10の外部電極20が設けられた端面と、外部電極30が設けられた端面とに、交互に露出している。これにより、各内部電極12は、外部電極20と外部電極30とに、交互に導通している。図2および図3において、内部電極12aが外部電極20と電気的に接続され、内部電極12bが外部電極30に電気的に接続されている。これにより、積層セラミックコンデンサ100は、複数のセラミックコンデンサが積層された構成を有する。また、積層体10において、誘電体層11と内部電極12との積層方向の両端面は、カバー層13によって覆われている。例えば、カバー層13の材料は、誘電体層11と同じである。図3のように、X方向において内部電極12aおよび12bの端縁の位置が異なっている。
【0018】
外部電極20、30および内部電極12は、Ni(ニッケル)、Cu(銅)、Sn(スズ)、Ag(銀)、Pd(パラジウム)、Au(金)またはPt(白金)等の金属を主成分とする。誘電体層11は、例えば一般式ABOで表されるペロブスカイト構造を有するセラミック材料を主成分とする。誘電体層11に含まれるペロブスカイト構造のセラミック材料としては、例えばBaTiO(チタン酸バリウム)、SrTiO(チタン酸ストロンチウム)、CaTiO(チタン酸カルシウム)、MgTiO(チタン酸マグネシウム)、CaZrO(ジルコン酸カルシウム)、CaTiZr1−x(チタン酸ジルコン酸カルシウム)、BaZrO(ジルコン酸バリウム)、PbTiZr1−x(チタン酸ジルコン酸鉛:PZT)を用いる。誘電体層11に含まれるセラミック材料はTiO(酸化チタン)でもよい。誘電体層11は、例えば焼結体であり、マクロには結晶方位に対し等方的である。ペロブスカイト構造を有するセラミック材料は化学量論的な組成から外れていてもよく、例えばMg(マグネシウム)、Mn(マンガン)、V(バナジウム)、Cr(クロム)、および希土類元素(Y(イットリウム)、Dy(ジスプロシウム)、Tm(ツリウム)、Ho(ホルミウム)、Tb(テルビウム)、Yb(イッテルビウム)、Er(エルビウム)、Sm(サマリウム)、Eu(ユウロピウム)、Gd(ガドリニウム))、Co(コバルト)、Li(リチウム)、B(ホウ素)、Na(ナトリウム)、K(カリウム)並びにSi(シリコン)の少なくとも1つの酸化物、またはガラス等が添加されていてもよい。
【0019】
図2および図3のように、積層体10のZ方向の厚さT、積層体10のY方向の長さL、および積層体10のX方向の幅Wとする。誘電体層11の各々の厚さt1とする。内部電極12のX方向の幅Wiとする。X方向において内部電極12の端のうち最も外側の端の位置X1と、最も内側の端の位置X2と、の距離をずらし量W1とする。最も外側の内部電極12の端から積層体10の端面までの距離をサイドマージンSMとする。誘電体層11の積層数Nとする。
【0020】
発明者らは、積層セラミックコンデンサの耐電圧が低くなる原因として、以下のような電歪効果を考えた。内部電極12aと12bとの間に電圧が印加されたとき、電歪効果により積層体10内に応力が発生し、応力が集中する箇所にクラック等が発生する。このクラック等により、積層セラミックコンデンサが破壊されると考えた。
【0021】
図4(a)および図4(b)は、1つのセラミックコンデンサを示す図である。図4(a)に示すように、厚さt1の誘電体層11の上下に内部電極12aおよび12bが設けられている。図4(b)に示すように、内部電極12aに内部電極12bに対し正の電圧が印加される。このとき誘電体層11には積層方向に電界が加わる。このため電歪効果により誘電体層11は矢印50のように積層方向に伸びるような変位が生じる。
【0022】
図5は、比較形態における積層セラミックコンデンサの断面図である。図5に示すように、外部電極20に接続された内部電極12aを点線で示し、外部電極30に接続された内部電極12bを実線で示す。X方向における内部電極12の端の位置がほぼ一致している。誘電体層11のうち電歪効果により変位が生じる領域は、Z方向に内部電極12に挟まれた領域40である。領域40は、領域40以外の誘電体層11と区別するため、ハッチングの方向を誘電体層11と逆に傾斜させている。積層体10内において、変位量が急激に変化するところに応力が集中しやすい。よって、矢印42の内部電極12の端の箇所に応力が集中し易くなる。
【0023】
電歪効果による積層された誘電体層11全体の変位量ΔDtは、1層の誘電体層11の変位量ΔDに誘電体層11の積層数Nを乗じたものとなる。つまり、ΔDt=ΔD×Nとなる。また、1層の誘電体層11における変位量ΔDは誘電体層11内の電界の大きさの2乗に比例する。電界の大きさは誘電体層11の厚さt1に反比例する。つまりΔD∝1/(t1)である。よって、ΔDt∝N/(t1)である。
【0024】
図6は、実施形態における積層セラミックコンデンサの断面図である。図6に示すように、X方向における内部電極12の端の位置が異なる。この例では、隣接する1層の内部電極12aと1層の内部電極12bを1グループとして、内部電極12の端のX方向の位置を0、+L、0、および−Lと順に3水準変化させている。1周期Pには誘電体層11が8層含まれる。このとき、ずらし量W1は2Lである。
【0025】
1周期Pあたり、位置−2L、−L、0、Lおよび2Lにおいて含まれる誘電体層11の層数は、それぞれ、0層、1層、5層、8層および0層となる。よって、各位置における全体の変位量ΔDtは以下となる。
位置−2L:0
位置−L :(1/8)×N×ΔD
位置 0 :(5/8)×N×ΔD
位置 L :(8/8)×N×ΔD
位置 2L:(0/8)×N×ΔD
【0026】
ストレスは、位置に対する変位量の傾きに対応する。よって、各位置間におけるストレスは以下となる。
位置−2.5L:0
位置−1.5L:(1/8)×N×ΔD/L
位置−0.5L:(1/2)×N×ΔD/L
位置0.5L :(3/8)×N×ΔD/L
位置1.5L :0
【0027】
L0を一定値として、Lを以下の5つの場合について各位値のストレスを計算した。Lは、L=0.5×L0、0.75×L0、1.0×L0、1.5×L0、2.0×L0の5つの場合である。L=0.5×L0のときの最大ストレスを1として規格化している。
【0028】
図7は、算出したX位置に対するストレスを示す図である。図7に示すように、Lを大きくするとストレスの最大値が小さくなる。ストレスの最大値はX方向の位置が−0.5Lのときであり、Lに反比例する。
【0029】
このようにストレスの最大値は、NおよびΔDに比例しL(すなわちW1)に反比例する。ΔDは(t1)に反比例するから、ストレスの最大値はNに比例しL(すなわちW1)、t1に反比例する。つまり、ストレスの最大値∝N/[(t1)×W1)]である。積層セラミックコンデンサの耐電圧BDVはストレスの最大値に反比例すると、耐電圧BDVは以下となる。
BDV∝[(t1)×W1)]/N (式1)
【0030】
実際は、BVDは[(t1)×W1)]/Nに厳密には比例しなくとも、[(t1)×W1)]/Nが大きくなるとBVDが大きくという相関が成り立つ。積層セラミックコンデンサの小型化、大容量化のためには、t1は小さくNは大きくすることになる。よって、耐電圧BDVは低くなる方向となる。そこで、本実施形態ではずらし量W1を大きくする。これにより、耐電圧BDVを向上できる。
【0031】
上記考察に基づけば、電歪効果を有する誘電体層11であれば、式1または同様の相関が成り立つ。また、内部電極12をX方向にずらすパターンによらず、式1は一般的に成り立つ。
【0032】
図8は、実施形態の一例を示す積層セラミックコンデンサの断面図である。図8に示すように、隣接する3層の内部電極12を1グループとして、内部電極12の端のX方向の位置を0、L、0、および−Lと順に変化させている。この例では1周期Pには誘電体層11が12層含まれる。このように変化させるグループに含まれる誘電体層11の層数は任意である。
【0033】
また、位置0のグループ内の内部電極12を2層とし、位置Lおよび−Lのグループ内の内部電極12を3層とすることもできる。このように、1つのグループ内の内部電極12の層数を変化させることもできる。
【0034】
さらに、内部電極12の端のX方向の位置を0、L、2L、L、0、−L、−2L、および−Lのように3水準以外の水準で変化させることもできる。
【0035】
本実施形態によれば、複数の内部電極12のうち一部の内部電極12a(第1内部電極)は外部電極20(第1外部電極)と電気的に接続されている。複数の内部電極12のうち残部の内部電極12b(第2内部電極)は外部電極30と電気的に接続されている。外部電極30は、Y方向(第1方向)において外部電極20に対し積層体10の反対側に設けられている。このような、積層セラミックコンデンサにおいて、t1×W1/Nを一定以上とする。ここで、W1(mm)は、Y方向(内部電極12と誘電体層11の面方向において第1方向と交差する第2方向)において、複数の内部電極12の端のうち最も外側に位置する第1端と、複数の内部電極12の端のうち最も内側に位置する第2端と、の距離である。t1(μm)は、複数の誘電体層11の各々の層厚である。Nは、複数の誘電体層11の積層数である。
【0036】
これにより、電歪効果に起因したストレスを分散し、耐電圧を向上できる。t1×W1/Nは、0.1以上が好ましく、0.5以上が好ましく、1以上がより好ましい。t1×W1/Nが大きいと、積層体10のX方向の幅が大きくなる。よって、t1×W1/Nは2以下が好ましく、1以下がより好ましい。
【0037】
誘電体層11の電歪効果が大きいと、ストレスが大きくなり耐電圧が低くなる。よって、ずらし量W1を大きくすることが好ましい。電歪効果の大きい材料として、チタン酸バリウムを主成分とする焼結体が挙げられる。
【0038】
複数の内部電極12のY方向における端の位置は周期的に配置されていることが好ましい。これにより、応力をより均一に分散できる。よって、ストレスをより分散することができ、耐電圧をより向上できる。
【0039】
Y方向における端の位置が同じ隣接する複数の一定数の内部電極12を1グループとして、グループごとに端の位置が異なることが好ましい。これにより、応力をより均一に分散できる。よって、ストレスをより分散することができ、耐電圧をより向上できる。
【0040】
動作電圧が高くかつ大型の積層セラミックコンデンサは、電歪効果によるストレスが大きい。よって、動作電圧が100V以上、または200V以上の積層セラミックコンデンサにおいて、ずらし量W1を大きくすることが好ましい。また、積層体10の長さLおよび幅Wが各々10mm以上の積層セラミックコンデンサにおいて、ずらし量W1を大きくすることが好ましい。
【実施例】
【0041】
実施形態に係る積層セラミックコンデンサを作製した。内部電極12および外部電極20および30はニッケルを主成分とした。誘電体層11は、チタン酸バリウムを主成分とした。実施例1から実施例9と比較例1および比較例2を作製した。作製したサンプルの耐電圧BDVを測定した。BDVの測定は、外部電極20と30の間に直流電圧を印加し、昇圧速度を50秒/1kVとする。サンプルが破壊された電圧を耐電圧BDVとした。
【0042】
図9は、実施例および比較例における各サンプルの各寸法を示す図である。図9に示すように、積層体10の長さLを14mmから34mmとした。積層体10の幅Wを19mmから59mmとした。積層体10の厚さTを3.3mmから4.6mmとした。内部電極12の幅Wiを15mmから52mmとした。なお、内部電極12の幅は全ての内部電極12で同じである。ずらし量W1を実施例では1.2mmから2.4mmとし、比較例では0.01mm以下とした。サイドマージンSMを0.3mmから3.5mmとした。誘電体層11の厚さt1を13.3μmから61.3μmとした。積層数Nを64から213とした。
【0043】
図10は、実施例および比較例におけるt1×W1/Nに対する耐電圧BDVを示す図である。黒丸は実施例の測定結果、白三角は比較例の測定結果を示す。実線は傾向を示す補助線である。図10に示すように、耐電圧BDVは、[(t1)×W1]/Nと比例していないものの、非常によい相関が得られている。この結果から、耐電圧BDVは主に[(t1)×W1]/Nに依存し、他の寸法等にはほとんど依存しない。
【0044】
比較例では、耐電圧BDVは約500Vである。補助線を参照すると、[(t1)×W1]/Nが0.1程度以上で耐電圧BDVが比較例より大きくなる。[(t1)×W1]/Nが1程度以上で耐電圧BDVは600V程度以上となり、比較例と有意な差となる。[(t1)×W1]/Nが5程度以上で耐電圧BDVは1000V程度以上となり、比較例のBDVの2倍以上となる。[(t1)×W1]/Nが20程度以上で耐電圧BDVは1500V程度以上となり、比較例のBDVの3倍以上となる。[(t1)×W1]/Nが50程度以上で耐電圧BDVは2000V程度以上となり、比較例のBDVの4倍以上となる。[(t1)×W1]/Nが80程度以上で耐電圧BDVは2500V程度以上となり、比較例のBDVの5倍以上となる。
【0045】
図10をさらに詳しく検討すると、実施例7は補助線より耐電圧BDVが若干低い。図9のように実施例7では、サイドマージンSMを0.3mmと他の実施例より小さくしている。サイドマージンSMが小さいと積層体10の側面付近で、ストレスの分散が均一化できずに耐電圧が低下したと考えられる。実施例8、9では、サイドマージンSMが0.8mmでも耐電圧BDVは補助線とほぼ同程度である。このことから、サイドマージンSMは0.3mmより大きいことが好ましく、0.5mm以上がより好ましく、0.8mm以上がさらに好ましい。ずらし量W1を大きくする観点からずらし量W1はサイドマージンSM以上であることが好ましい。しかし、実施例7のように、ずらし量W1をサイドマージンSMの8倍とすると耐電圧BDVが低下する。一方、実施例8、9では、ずらし量W1がサイドマージンSMの1.5倍では耐電圧BDVは低下していない。よって、ずらし量W1はサイドマージンSMの8倍未満が好ましく、5倍以下がより好ましく、1.5倍以下がさらに好ましい。
【0046】
さらに、図10から、実施例1は補助線より耐電圧BDVが若干高い。図9のように実施例1では内部電極12の幅Wiが52mmと他の実施例より大きい。内部電極12の幅Wiが大きいと、ストレスの分散をより均一化できるためと考えられる。この観点から、内部電極12の幅Wiは、10mm以上が好ましく、30mm以上がより好ましく、50mm以上がより好ましい。他の実施例のように、ずらし量W1は内部電極12の幅Wiの5%から10%程度で耐電圧BDVは十分高くなる。実施例1のように、ずらし量W1は内部電極12の幅Wiの5%以下が好ましい。
【0047】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明はかかる特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0048】
10 積層体
11 誘電体層
12 内部電極
13 カバー層
20、30 外部電極
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10