【解決手段】本発明は、第1ノードN1と第2ノードN2との間に接続された圧電薄膜共振器20と、前記第1ノードN1と前記第2ノードN2との間に前記圧電薄膜共振器20に並列に接続され、前記圧電薄膜共振器20の反共振周波数をfaとしたとき、共振周波数f0が2×fa×0.92≦f0である共振回路22と、を具備する弾性波デバイスである。
入力端子と出力端子との間に直列に接続された1または複数の直列共振器と、前記入力端子と前記出力端子との間に並列に接続された1または複数の並列共振器と、を備えるフィルタを具備し、
前記1または複数の直列共振器および前記1または複数の並列共振器の少なくとも1つの共振器は前記共振回路が並列に接続された前記圧電薄膜共振器である請求項1から5のいずれか一項記載の弾性波デバイス。
前記1または複数の直列共振器のうち最も前記出力端子に近い直列共振器と、前記1または複数の並列共振器のうち最も前記出力端子に近い並列共振器と、の少なくとも一方の共振器は、前記共振回路が並列に接続された前記圧電薄膜共振器である請求項7記載の弾性波デバイス。
前記1または複数の直列共振器のうち最も前記出力端子に近い直列共振器と、前記1または複数の並列共振器のうち最も前記出力端子に近い並列共振器と、のいずれか一方の共振器は、前記共振回路が並列に接続された前記圧電薄膜共振器であり、
前記最も前記出力端子に近い直列共振器と前記最も前記出力端子に近い並列共振器との他方は、2次高調波がキャンセルされるように分割された第1共振器および第2共振器を含む請求項8記載の弾性波デバイス。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(比較例1)
図1は、比較例および実施例で用いる圧電薄膜共振器の断面模式図である。
図1に示すように、圧電薄膜共振器20は、圧電膜14、下部電極12および上部電極16を備えている。圧電膜14を挟むように下部電極12および上部電極16が設けられている。下部電極12はノードN1に上部電極16はノードN2に接続されている。圧電膜14は例えば窒化アルミニウム(AlN)または酸化亜鉛(ZnO)である。下部電極12および上部電極16は、例えば。圧電膜14側がRu(ルテニウム)膜および外側がCr(クロム)膜の複合膜である。下部電極12および上部電極16として、Ru膜およびCr膜以外にもAl(アルミニウム)、Ti(チタン)、Cu(銅)、Mo(モリブデン)、W(タングステン)、Ta(タンタル)、Pt(白金)、Rh(ロジウム)またはIr(イリジウム)等の単層膜またはこれらの複合膜を用いることができる。
【0021】
圧電薄膜共振器20では、共振周波数の波長λの1/2がほぼ圧電膜14の厚さに相当する。2次高調波の波長はほぼ圧電膜14の厚さに相当する。圧電膜14が上下に対称であれば、上部電極16と下部電極12とで同電位となる。このため2次高調波は生じない。しかしながら、圧電膜14として例えば窒化アルミニウム(AlN)または酸化亜鉛(ZnO)等を用いる場合、良好な特性を得るために、c軸に配向させる。このため、c軸方向50が厚み方向となる。このとき、圧電膜14内でc軸方向の対称性が崩れ、電界の分布に偏りが生じる。このため、上部電極16と下部電極12とに電位差が生じる。これにより、2次高調波が発生する。c軸方向50はより一般的に分極方向でもよい。
【0022】
図2(a)は、比較例1に係る弾性波デバイスの回路図、
図2(b)は、比較例1において生成される2次高調波を示す図である。
図2(a)に示すように、ノードN1とN2との間に圧電薄膜共振器20が接続されている。c軸方向50はノードN1からN2の方向である。
【0023】
図2(b)に示すように、ノードN1から基本波60の高周波信号が入力する。圧電薄膜共振器20において、基本波60から2次高調波62および64が生成され、それぞれノードN1およびN2方向に放射される。これにより、ノードN2から2次高調波62が出力される。2次高調波62および64の周波数は基本波60のほぼ2倍である。2次高調波62と64は逆位相である。
【0024】
比較例1において2次高調波をシミュレーションした。ノードN1に基本波60の信号を入力したときに、圧電薄膜共振器20から放出される2次高調波62および64の大きさを算出した。2次高調波は、圧電膜14に加わる「電界強度の2乗」、「電界強度とひずみの積」、および「ひずみの2乗」に比例した非線形電流を元に算出できる。シミュレーション条件は以下である。
圧電膜14:c軸に配向した窒化アルミニウム(AlN)
通過帯域 :2500MHzから2570MHz(バンド7相当)
通過帯域の2倍の帯域:5000MHzから5140MHz
ノードN1に入力する基本波のパワー:28dBm
通過帯域は、バンド7の送信帯域を想定している。
【0025】
圧電薄膜共振器20の条件は以下とした。
共振周波数fr :2530MHz
電気機械結合係数k
2:6.929%
静電容量C0 :1.5pF
【0026】
図3(a)は、比較例1における通過特性(S21)を示す図、
図3(b)は2次高調波を示す図である。
図3(a)に示すように、共振周波数frは2530MHz、反共振周波数faは2605MHzである。
図3(b)に示すように、2次高調波はゆるやかな単峰特性を有する。2次高調波のピークは、5196MHzであり、共振周波数frの2倍の周波数2×frと反共振周波数faの2倍の周波数2×faの間に位置する。2次高調波のピークは、−20dBm程度である。
【0027】
(比較例2)
図4は、比較例2に係る弾性波デバイスの回路図である。
図4に示すように、圧電薄膜共振器20が共振器20aと20bとに直列に分割されている。共振器20aと20bのc軸方向50は逆方向である。すなわちノードN2(またはN1)からみた共振器20aと20bとのc軸方向50は逆方向である。このような分割を逆直列分割と呼ぶ。基本波60がノードN1から入力すると、共振器20aからノードN2およびN1の方向にそれぞれ2次高調波62aおよび64aが放出される。共振器20bからノードN2およびN1の方向にそれぞれ2次高調波62bおよび64bが放出される。共振器20bのc軸方向50は共振器20aの逆方向である。このため、2次高調波62aと62bとは逆位相となる。これにより、2次高調波62aと62bとがキャンセルし、ノードN2から出力される2次高調波が抑制される。
【0028】
比較例2では、共振器20aと20bとを設けるため、チップサイズが大きくなる。2次高調波を抑制するためには、2次高調波62aと62bが逆位相で、振幅が等しいことが好ましい。しかし、共振器20aと20bとの間の配線の寄生容量成分に起因し、2次高調波62aと62bが逆位相からずれる、および/または、振幅が異なる。これにより、2次高調波が十分には抑制されない。
【0029】
以下、圧電薄膜共振器を分割する以外の方法で2次高調波を抑制する実施例について説明する。
【実施例1】
【0030】
図5(a)は、実施例1に係る弾性波デバイスの回路図、
図5(b)は、実施例1において生成される2次高調波を示す図である。
図5(a)に示すように、ノードN1とN2との間に圧電薄膜共振器20と並列に共振回路22が接続されている。共振回路22は、ノードN1とN2との間にインダクタL1とキャパシタC1とが直列に接続されている。
図5(b)に示すように、圧電薄膜共振器20からノードN1方向に放出された2次高調波64は、2次高調波66として共振回路22を介しノードN2に伝搬する。2次高調波62と66は位相が反転し、振幅が等しいため、ノードN3において2次高調波62と66がキャンセルする。これにより、ノードN2から出力される2次高調波68を抑制できる。共振回路22は2次高調波66を通過させ、他の周波数の信号は通過させないことが好ましい。そこで、共振回路22の共振周波数を2次高調波66の周波数とする。
【0031】
実施例1において2次高調波をシミュレーションした。ノードN1に基本波60の信号を入力したときに、ノードN2から出力される2次高調波68の大きさを算出した。
【0032】
共振回路22の条件は以下とした。
共振周波数f0 :5196MHz
C1のキャパシタンス:0.5pF
L1のインダクタンス:1.876nH
L1のQ値 :15
L1のインダクタンスは、共振周波数f0が
図3(b)の比較例1の2次高調波のピークの周波数である5196MHzとなるように、以下の式により算出した。
L1=(1/f0
2)×(1/((2π)
2×C1)) 式1
その他のシミュレーション条件は比較例1と同じである。
【0033】
図6は、実施例1および比較例1の周波数に対する2次高調波を示す図である。
図6に示すように、全周波数領域において、2次高調波が小さくなっている。実施例1の2次高調波のピークの値は約−30dBmであり、比較例1より10dBm小さくなっている。
【0034】
次に、共振回路22の共振周波数f0を変化させ、2次高調波ピーク値の改善量をシミュレーションした。2次高調波ピーク値の改善量は、比較例1の2次高調波のピーク値から、実施例1の2次高調波のピーク値を引いた値である。
図6では、2次高調波ピーク値の改善量は約−10dBmである。シミュレーション条件は以下である。
・圧電薄膜共振器20
共振周波数fr :2535MHz
反共振周波数fa :2610MHz
電気機械結合係数k
2:6.929%
静電容量C0 :1.5pF
・共振回路22
C1のキャパシタンス:0.5pF
L1のQ値:15
L1のインダクタンス:所望の共振周波数f0となるように式1から算出した。
その他のシミュレーション条件は比較例1と同じである。
【0035】
図7(a)は、共振回路の共振周波数f0に対する2次高調波ピーク値の改善量を示す図である。
図7(a)に示すように、2次高調波ピーク値は共振回路22の共振周波数f0が圧電薄膜共振器20の反共振周波数の2倍2×faである5220MHzのとき最も改善される。共振周波数f0が2×faより大きくなると改善量は緩やかに悪化する。共振周波数が2×faより小さくなると改善量は急激に悪化する。共振周波数f0を2×faより約420MHz低くすると、2次高調波ピーク値の改善量は0dBmとなる。共振周波数f0が2×fa−270MHz≦f0≦2×fa+430MHzの範囲では、2次高調波ピーク値の改善量は−5dBmより小さくなる。
【0036】
次に圧電薄膜共振器20の共振周波数frおよび反共振周波数faを変えてシミュレーションした。シミュレーション条件は以下である。
共振器A:fr=2535MHz、fa=2610MHz
共振器B:fr=2500MHz、fa=2574MHz
共振器C:fr=2570MHz、fa=2647MHz
ここで、共振周波数frおよび反共振周波数faは共振回路22を接続していない圧電薄膜共振器20単体の共振周波数および反共振周波数である。
共振器Aは、
図6と同じ圧電薄膜共振器20に対応する。
その他のシミュレーション条件は、
図7(a)と同じであり説明を省略する。
【0037】
図7(b)は、共振器AからCにおける共振周波数f0に対する2次高調波ピーク値の改善量を示す図である。
図7(b)に示すように、共振器A、BおよびCの改善量のボトムは、それぞれ5220MHz、5148MHzおよび5294MHzである。これは、共振器AからCの2×faに相当する。共振周波数f0に対する改善量の曲線は、2×faに依存してシフトしている。このように、圧電薄膜共振器20の共振周波数frが変化しても共振周波数f0と改善量との関係は変わらない。
【0038】
図7(a)の結果を反共振周波数faの比率で表せば、一般的な共振周波数f0の範囲となる。
改善量を0dBm以下とするためには、(5220−420)/5220=0.92となり、式2を満たせばよい。
2×fa×0.92≦f0 式2
改善量を−5dBm以下とするためには、(5220−270)/5220=0.95および(5220+430)/5220=1.08となり、式3を満たせばよい。
2×fa×0.95≦f0≦2×fa×1.08 式3
【0039】
実施例1によれば、共振回路22の共振周波数f0を2×fa×0.92≦f0とする。これにより、
図5(b)のように、ノードN1から2次高調波62と逆位相の2次高調波66の信号をノードN3に伝送できる。これにより、ノードN3において、2次高調波62と66とがキャンセルし、ノードN2から出力される2次高調波を抑制できる。これにより、比較例2のように圧電薄膜共振器20を分割することなく、2次高調波を抑制できる。2次高調波を抑制するため、2×fa×0.93≦f0が好ましく、2×fa×0.95≦f0がより好ましく、2×fa×0.97≦f0がさらに好ましい。f0≦2×fa×1.15が好ましく、f0≦2×fa×1.08がより好ましく、f0≦2×fa×1.05がさらに好ましい。
【0040】
共振回路22としては、
図5(a)の構成以外の共振回路を用いることができるが、ノードN1とN2との間にキャパシタC1およびインダクタL1が直列に接続されていることが好ましい。これにより2次高調波66の共振回路22の通過特性を良好とすることができる。
【実施例2】
【0041】
図8(a)は、実施例2に係る弾性波デバイスの回路図、
図8(b)は、実施例2において生成される2次高調波を示す図である。
図8(a)に示すように、ノードN1とN2との間に圧電薄膜共振器20と並列に弾性波共振器24が接続されている。
図8(b)に示すように、圧電薄膜共振器20からノードN1方向に放出された2次高調波64は、2次高調波66として弾性波共振器24を介しノードN2に伝搬する。ノードN3において2次高調波62と66がキャンセルする。これにより、ノードN2から出力される2次高調波68を抑制できる。
【0042】
実施例2において、2次高調波68の大きさをシミュレーションした。弾性波共振器24の条件は以下である。
共振器の種類 :圧電薄膜共振器
共振周波数f0r:5205MHz
静電容量C00 :0.5pF
その他の弾性波共振器24の条件は圧電薄膜共振器20と同じである。その他のシミュレーション条件は実施例1の
図6のシミュレーションと同じである。
【0043】
図9は、実施例2および比較例1の周波数に対する2次高調波を示す図である。
図9に示すように、実施例2では、比較例1の2次高調波のピーク付近において、2次高調波を特に小さくできる。また。全周波数領域において、2次高調波を小さくできる。このように、弾性波共振器24の共振周波数f0rを2次高調波のピークの周波数とほぼ同じとすることで、2次高調波を抑制できる。
【0044】
弾性波共振器24の共振周波数f0rは、実施例1と同様の範囲であることが好ましい。
例えば、
2×fa×0.92≦f0r
が好ましく、
2×fa×0.95≦f0r≦2×fa×1.08
がより好ましい。
【0045】
図10(a)および
図10(b)は、それぞれ圧電薄膜共振器20および弾性波共振器24の積層膜の断面図である。
図10(a)および
図10(b)に示すように、圧電薄膜共振器20および弾性波共振器24の積層膜15は、下部電極12、圧電膜14、上部電極16および絶縁膜18を含む。下部電極12は、下層12aおよび上層12bを含む。上部電極16は、下層16aおよび上層16bを含む。圧電薄膜共振器20および弾性波共振器24の共振周波数および反共振周波数は積層膜15の構成で調整できる。
【0046】
圧電薄膜共振器20および弾性波共振器24の圧電膜14の膜厚をそれぞれt1およびt2とし、他の構成を同じとし、共振周波数を算出した。各層の材料および膜厚は以下である。
絶縁膜18:酸化シリコン膜 38nm
上層16b:クロム膜 23nm
下層16a:ルテニウム膜 183nm
圧電膜14:窒化アルミニウム膜
上層12b:ルテニウム膜 152nm
下層12a:クロム膜 76nm
【0047】
図10(c)は、圧電膜の膜厚に対する共振周波数を示す図である。丸は測定点、実線は近似線である。
図10(c)に示すように、圧電膜14の膜厚が小さくなると共振周波数が高くなる。共振周波数が2.5GHzおよび5.0GHzとなる圧電膜14の膜厚は、それぞれ957nmおよび224nmである。よって、膜厚t1およびt2をそれぞれ957nmおよび224nmとする。これにより、圧電薄膜共振器20と弾性波共振器24を形成できる。
【0048】
図11は、圧電薄膜共振器20および弾性波共振器24を同じ基板に形成した例を示す断面図である。
図11に示すように、基板10上に空隙30を介し下部電極12、圧電膜14および上部電極16が形成されている。圧電薄膜共振器20では圧電膜14の膜厚t1を957nmとし、弾性波共振器24では圧電膜14の膜厚t2を224nmとする。このように、圧電膜14以外の積層膜の各膜厚を同じとし、圧電膜14の膜厚を圧電薄膜共振器20および弾性波共振器24で異ならせる。これにより、圧電薄膜共振器20および弾性波共振器24を同じ基板上に形成できる。基板10としては、サファイア基板、スプネル基板、アルミナ基板またはシリコン基板等を用いることができる。空隙30は基板10を貫通していてもよい。空隙30は弾性波を反射する音響反射膜でもよい。
【0049】
実施例2によれば、共振回路として弾性波共振器24を用いることができる。これにより、圧電薄膜共振器20を分割することなく、2次高調波を抑制できる。
【0050】
また、
図10(c)のように、弾性波共振器24の圧電膜14の膜厚t2を圧電薄膜共振器20の圧電膜14の膜厚t1の1/2以下とする。これにより、弾性波共振器24の共振周波数を圧電薄膜共振器20の共振周波数の略2倍とすることができる。
【0051】
図11のように、圧電薄膜共振器20および弾性波共振器24は同じ基板10に設けられている。弾性波共振器24の下部電極12および上部電極16の材料および膜厚を、圧電薄膜共振器20の下部電極12および上部電極16の材料および膜厚と同じとする。圧電膜14の膜厚を異ならせる。これにより、同一基板10上に圧電薄膜共振器20および弾性波共振器24を簡便に形成することができる。
【0052】
(実施例2の変形例1)
図12は、実施例2の変形例1に係る弾性波デバイスの断面図である。
図12に示すように、弾性波共振器24aとしてラム波共振器を用いている。弾性波共振器24aでは空隙30上に圧電膜14および櫛型電極26が設けられている。弾性波共振器24aとしてラム波共振器を用いることで、圧電膜14を圧電薄膜共振器20および弾性波共振器24で共通に用いることができる。これにより、同一基板10上に圧電薄膜共振器20および弾性波共振器24を簡便に形成することができる。
【0053】
実施例2およびその変形例1によれば、
図11および
図12のように弾性波共振器24または24aは別の圧電薄膜共振器またはラム波共振器である。圧電薄膜共振器20および弾性波共振器24または24aは同一の基板10上に形成されている。圧電薄膜共振器20の圧電膜14および弾性波共振器24または24aの圧電膜14は一体である。これにより、同一基板10上に圧電薄膜共振器20および弾性波共振器24または24aを簡便に形成することができる。
【0054】
弾性波共振器24の例として、圧電薄膜共振器およびラム波共振器を説明したが、弾性表面波共振器でもよい。
【0055】
(比較例3:ラダー型フィルタ)
次に、ラダー型フィルタの2次高調波をシミュレーションした。
図13(a)は、比較例3に係るフィルタの回路図、
図13(b)は、比較例3のシミュレーションに用いた各共振器の条件を示す図である。
図13(a)に示すように、入力端子Tinと出力端子Toutとの間に直列共振器S1からS4が直列に接続されている。入力端子Tinと出力端子Toutとの間に並列共振器P1からP3が並列に接続されている。
【0056】
入力端子Tinに基本波を入力し、出力端子Toutから出力される2次高調波の大きさをシミュレーションした。シミュレーション条件は以下である。
通過帯域:2500MHz〜2570MHz(バンド7に相当)
通過帯域の2倍の周波数帯域:5000MHz〜5140MHz
入力端子に入力する基本波:28dBm
共振器の種類:圧電薄膜共振器
各共振器の容量値および共振周波数は
図13(b)とした。
【0057】
図13(c)は、比較例3における周波数に対する2次高調波の大きさを示す図である。
図13(c)に示すように、帯域の低周波端と高周波端で2次高調波が大きく、中央で2次高調波が小さい凹形状である。低周波端および高周波端の2次高調波の大きさは、それぞれ−23dBmおよび−29dBmである。帯域全体として2次高調波が大きい。
【実施例3】
【0058】
図14(a)から
図14(c)は、それぞれ実施例3のフィルタAからCの回路図である。
図14(a)に示すように、フィルタAでは、直列共振器S4に共振回路22が並列に接続された圧電薄膜共振器20を用いている。その他の構成は比較例3と同じであり説明を省略する。
図14(b)に示すように、フィルタBでは、並列共振器P3に共振回路22が並列に接続された圧電薄膜共振器20を用いている。その他の構成は比較例3と同じであり説明を省略する。
図14(c)に示すように、フィルタCでは、直列共振器S4および並列共振器P3に共振回路22が並列に接続された圧電薄膜共振器20を用いている。その他の構成は比較例3と同じであり説明を省略する。
【0059】
出力端子Toutから出力される2次高調波の強度の大半は、直列共振器S1からS4のうち出力端子Toutに最も近い直列共振器S4および/または並列共振器P1からP3のうち出力端子Toutに最も近い並列共振器P3から放出された2次高調波である。これは、入力端子Tin側の共振器から放出された2次高調波は出力端子Tout側の共振器を通過する過程で減衰するためである。そこで、フィルタAからCでは、出力端子Toutに最も近い直列共振器S4および/または並列共振器P3に共振回路22を設けている。
【0060】
フィルタAからCにおいて、入力端子Tinに基本波を入力し、出力端子Toutから出力される2次高調波の大きさをシミュレーションした。シミュレーション条件は、実施例1の
図6および比較例3と同じである。
【0061】
図15(a)から
図15(c)は、それぞれフィルタAからCの周波数に対す2次高調波を示す図である。
図15(a)から
図15(c)に示すように、フィルタAからCは比較例3に比べ帯域内の2次高調波が低減している。フィルタAでは高周波側の2次高調波が低減されている。フィルタBでは低周波側の2次高調波が低減されている。フィルタCでは帯域全体で2次高調波が低減されている。
【0062】
図16(a)から
図16(c)は、それぞれフィルタAからCの通過特性を示す図、
図16(d)から
図16(f)は、それぞれフィルタAからCの反射特性を示す図である。
図16(a)から
図16(f)に示すように、フィルタAの通過特性および反射特性は比較例3と同程度である。フィルタBおよびCの通過特性および反射特性は比較例3より劣化している。共振回路22を付加するとインピーダンスが変化する。これにより、フィルタBおよびCでは、比較例から通過特性および反射特性が変化したものと考えられる。
【0063】
実施例3によれば、1または複数の直列共振器S1からS4および1または複数の並列共振器P1からP3の少なくとも1つの共振器は共振回路22が並列に接続された圧電薄膜共振器20である。これにより、共振器を分割することなく(すわなち、チップサイズを大きくすることなく)2次高調波を抑制できる。
【0064】
また、出力端子Toutから出力される2次高調波に最も影響する直列共振器S4および並列共振器P3の少なくとも一方の共振器は、共振回路22が並列に接続された圧電薄膜共振器20である。これにより、2次高調波をより抑制できる。
【0065】
(実施例3の変形例1)
図17(a)および
図17(b)は、それぞれ実施例3の変形例1のフィルタDおよびEの回路図である。
図17(a)に示すように、フィルタDでは、直列共振器S4に共振回路22が並列に接続された圧電薄膜共振器20を用いている。並列共振器P3は共振器P3aおよびP3bに逆直列分割されている。共振器P3aおよびP3bは、c軸方向50の同じ方向の下部電極または上部電極が同電位である。すなわちグランド(または直列共振器S3とS4との間のノード)からみた共振器P3aとP3bとのc軸方向50は逆方向である。その他の構成は比較例3と同じであり説明を省略する。
【0066】
図17(b)に示すように、フィルタEでは、並列共振器P3は共振器P3aおよびP3bに逆並列分割されている。共振器P3aおよびP3bは、c軸方向50の反対の方向の下部電極または上部電極が同電位である。すなわちグランド(または直列共振器S3とS4との間のノード)からみた共振器P3aとP3bとのc軸方向50は逆方向である。その他の構成はフィルタDと同じであり説明を省略する。
【0067】
図18(a)は、フィルタDの周波数に対する2次高調波を示す図、
図18(b)および
図18(c)は、それぞれ通過特性および反射特性である。
図18(a)に示すように、フィルタDの2次高調波は、帯域全体にわたり比較例3より10dBm以上改善している。
図18(b)および
図18(c)に示すように、フィルタDの通過特性および反射特性は比較例3と同程度である。
【0068】
図16(a)から
図16(f)のように、共振回路22を設けると通過特性および反射特性が劣化することがある。そこで、実施例3の変形例では、直列共振器S4は、共振回路22が並列に接続された圧電薄膜共振器20である。並列共振器P3は2次高調波がキャンセルされるように分割された共振器P3a(第1共振器)および共振器P3b(第2共振器)を含む。共振器を分割してもインピーダンスは変化しない。これにより、フィルタBおよびCのような通過特性および反射特性の劣化を抑制できる。また、フィルタAおよびBに比べ2次高調波を抑制できる。さらに、直列共振器S4および並列共振器P3の両方を分割したフィルタに比べチップサイズを小型化できる。
【0069】
フィルタBおよびCでは、並列共振器P3に共振回路22を設けることにより通過特性および反射特性が劣化したが、直列共振器S4に共振回路22を設けることにより通過特性および反射特性が劣化することもある。よって、直列共振器S4および並列共振器P3のいずれか一方の共振器が、共振回路22が並列に接続された圧電薄膜共振器20であり、直列共振器S4および並列共振器P3の他方が2次高調波をキャンセルするように分割(すなわち逆直列分割または逆並列分割)されていればよい。
【実施例4】
【0070】
図19は、実施例4に係るデュプレクサの回路図である。
図19に示すように、共通端子Antと送信端子Txとの間に送信フィルタ40が接続されている。共通端子Antと受信端子Rxとの間に受信フィルタ42が接続されている。送信フィルタ40は、送信端子Txから入力された信号のうち送信帯域の信号を送信信号として共通端子Antに通過させ、他の周波数の信号を抑圧する。受信フィルタ42は、共通端子Antから入力された信号のうち受信帯域の信号を受信信号として受信端子Rxに通過させ、他の周波数の信号を抑圧する。送信フィルタ40および受信フィルタ42の少なくとも一方に実施例3およびその変形例のフィルタを用いることができる。
【0071】
マルチプレクサの例としてデュプレクサを説明したが、マルチプレクサは、トリプレクサまたはクワッドプレクサでもよい。
【0072】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明はかかる特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。