特開2017-220982(P2017-220982A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 村田機械株式会社の特許一覧

特開2017-220982有軌道走行車システム、組立方法、及び、リニアモータ
<>
  • 特開2017220982-有軌道走行車システム、組立方法、及び、リニアモータ 図000003
  • 特開2017220982-有軌道走行車システム、組立方法、及び、リニアモータ 図000004
  • 特開2017220982-有軌道走行車システム、組立方法、及び、リニアモータ 図000005
  • 特開2017220982-有軌道走行車システム、組立方法、及び、リニアモータ 図000006
  • 特開2017220982-有軌道走行車システム、組立方法、及び、リニアモータ 図000007
  • 特開2017220982-有軌道走行車システム、組立方法、及び、リニアモータ 図000008
  • 特開2017220982-有軌道走行車システム、組立方法、及び、リニアモータ 図000009
  • 特開2017220982-有軌道走行車システム、組立方法、及び、リニアモータ 図000010
  • 特開2017220982-有軌道走行車システム、組立方法、及び、リニアモータ 図000011
  • 特開2017220982-有軌道走行車システム、組立方法、及び、リニアモータ 図000012
  • 特開2017220982-有軌道走行車システム、組立方法、及び、リニアモータ 図000013
  • 特開2017220982-有軌道走行車システム、組立方法、及び、リニアモータ 図000014
  • 特開2017220982-有軌道走行車システム、組立方法、及び、リニアモータ 図000015
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-220982(P2017-220982A)
(43)【公開日】2017年12月14日
(54)【発明の名称】有軌道走行車システム、組立方法、及び、リニアモータ
(51)【国際特許分類】
   B60L 13/00 20060101AFI20171117BHJP
   H02K 41/03 20060101ALI20171117BHJP
   B60L 13/03 20060101ALI20171117BHJP
   E01B 25/30 20060101ALI20171117BHJP
【FI】
   B60L13/00 A
   H02K41/03 A
   B60L13/03 A
   E01B25/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2016-111878(P2016-111878)
(22)【出願日】2016年6月3日
(71)【出願人】
【識別番号】000006297
【氏名又は名称】村田機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】新樹グローバル・アイピー特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】粟屋 太一
【テーマコード(参考)】
2D056
5H113
5H125
5H641
【Fターム(参考)】
2D056DA01
2D056DA05
2D056DA07
2D056FA00
5H113BB02
5H113CC02
5H113CC04
5H113CC07
5H113CD02
5H113CD04
5H113CD06
5H113DB04
5H113DD01
5H113DD10
5H113EE03
5H125AA20
5H125AC04
5H125FF01
5H641BB06
5H641GG03
5H641HH02
5H641HH18
5H641JA02
5H641JA18
(57)【要約】
【課題】有軌道走行車システムにおいて、磁石を軌道の長手方向に沿って配置する際の作業性を向上させる。
【解決手段】有軌道走行車システム1は、軌道7と、スタッカクレーン9と、マグネットレール77と、を備える。スタッカクレーン9は、電磁石911を備えており、軌道7に沿って走行する。マグネットレール77は、複数の磁石772と、非磁性ケース771と、蓋部材776と、を有する。非磁性ケース771は、非磁性材料からなるケースであり、載置面Sと、複数の位置決め部773と、を有する。載置面Sには、複数の磁石772が走行方向に並んで載置される。位置決め部773は、複数の磁石772を走行方向に所定間隔で位置決めする。蓋部材776は、磁性材料からなり、非磁性ケース771に係合するケース係合部776aを備える。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軌道と、
電磁石を備えており、前記軌道に沿って走行する走行車と、
複数の磁石と、非磁性材料からなるケースであり、前記複数の磁石が走行方向に並んで載置される載置面と、前記複数の磁石を前記走行方向に所定間隔で位置決めするための複数の位置決め部を有する非磁性ケースと、磁性材料からなり前記非磁性ケースに係合するケース係合部を備えた蓋部材と、を有するマグネットレールと、
を備える有軌道走行車システム。
【請求項2】
前記非磁性ケースは、前記軌道に係合する軌道係合部を有する、請求項1に記載の有軌道走行車システム。
【請求項3】
前記マグネットレールは走行方向に連続して複数並べられており、
前記非磁性ケースは、前記走行方向端部に設けられた当接部を有しており、
前記当接部は、前記非磁性ケース同士を前記走行方向に並べたときに、互いに当接することで、前記非磁性ケースの近接端に設けられた磁石同士の前記走行方向の距離が前記非磁性ケース内で隣接する磁石同士の距離と等しくする、請求項1又は2に記載の有軌道走行車システム。
【請求項4】
前記非磁性ケースは板状部材からなり、前記複数の位置決め部は折り曲げ部である、請求項1〜3のいずれかに記載の有軌道走行車システム。
【請求項5】
磁性体を敷くステップと、
非磁性材料からなるケースであり、載置面と、走行方向に所定間隔で配置された複数の位置決め部とを有する非磁性ケースを前記磁性体の上に置くステップと、
互いに隣接し合う2つの前記位置決め部の間の前記載置面、及び、前記非磁性ケースの前記走行方向の端部に形成された面と前記走行方向の端部に存在する1つの前記位置決め部との間の前記載置面に複数の磁石を載置することにより、前記非磁性ケースに前記複数の磁石を前記走行方向に並べて載置するステップと、
前記非磁性ケースに、磁性材料からなる蓋部材を係合させるステップと、
前記非磁性ケースを前記磁性体から外し、次に軌道に取り付けるステップと、
を備えた有軌道走行車システムのマグネットレールの組立方法。
【請求項6】
複数の磁石と、非磁性材料からなるケースであり、前記複数の磁石が走行方向に並んで載置される載置面と、前記複数の磁石を前記走行方向に所定間隔で位置決めするための複数の位置決め部を有する非磁性ケースと、磁性材料からなり前記非磁性ケースに係合するケース係合部を備えた蓋部材と、を有するマグネットレールと、
電磁石を備えて、前記マグネットレールに沿って移動する移動体と、
を備えるリニアモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リニアモータ、リニアモータの組立方法、及び、リニアモータにより走行車が走行する有軌道走行車システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、走行車などが移動する軌道に沿って設けられた複数の磁石と、当該走行車に取り付けられ当該複数の磁石に対して引力又は斥力を発生する電磁石と、により構成されるリニアモータが知られている。このようなリニアモータでは、複数の磁石は、磁極(N極、S極)が交互に変化するよう、軌道に沿って所定の間隔にて配置される。
【0003】
比較的小規模のリニアモータにおいて、軌道を構成する部材の長手方向に複数の磁石を配置する方法としては、例えば、特許文献1に開示されている方法がある。この方法では、(i)複数の永久磁石を配置する磁性基板に、所定の角度及び間隔にて貫通孔を設けた位置決め用の非磁性板を固定する、(ii)貫通孔に永久磁石を挿入する、(iii)貫通孔に挿入した永久磁石を接着剤により磁性基板に固定する、との手順にて、磁性基板の長手方向に沿って、複数の永久磁石を、予め決定された角度及び間隔にて配置している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実公平5−45107号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この永久磁石の配置方法においては、位置決め用の非磁性板と永久磁石とを、接着剤により磁性基板に固定している。この場合、接着剤が固化して位置決め用の非磁性板が磁性基板に固定されるまで永久磁石を磁性基板に固定できない。一般的に、接着剤の固化には時間がかかるので、接着剤を用いる永久磁石の配置方法では、多数の永久磁石を軌道に配置するためには多くの時間を必要とする。
【0006】
上記のように、複数の磁石を、接着剤を用いて基板に固定する方法では、多数の磁石を軌道などの長い部材に配置する作業性が悪い。
【0007】
本発明の課題は、走行車がリニアモータにより軌道に沿って走行する有軌道走行車システムにおいて、磁石を軌道の長手方向に沿って配置する際の作業性を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下に、課題を解決するための手段として複数の態様を説明する。これら態様は、必要に応じて任意に組み合せることができる。
本発明の一見地に係る有軌道走行車システムは、軌道と、走行車と、マグネットレールと、を備える。走行車は、電磁石を備えており、軌道に沿って走行する。マグネットレールは、複数の磁石と、非磁性ケースと、蓋部材と、を有する。非磁性ケースは、非磁性材料からなるケースであり、載置面と、複数の位置決め部と、を有する。載置面には、複数の磁石が走行方向に並んで載置される。位置決め部は、複数の磁石を走行方向に所定間隔で位置決めする。蓋部材は、磁性材料からなり、非磁性ケースに係合するケース係合部を備える。
【0009】
上記の有軌道走行車システムにおいて、マグネットレールの非磁性ケースは、載置面に載置された複数の磁石を、走行方向に所定間隔で位置決めする位置決め部を有している。これにより、複数の磁石を、非磁性ケースの位置決め部にて決められた位置に正確に配置できる。また、非磁性ケースに係合する蓋部材が磁性材料からなることにより、非磁性ケースに配置された複数の磁石を、蓋部材と非磁性ケースとの係合と、蓋部材と複数の磁石との間に働く磁力とにより、非磁性ケースに固定できる。
この結果、複数の磁石を、接着剤などによりケースに固定することを要することなく、容易にマグネットレールを組み立てることができる。
【0010】
非磁性ケースは、軌道に係合する軌道係合部を有していてもよい。これにより、非磁性ケースをそのまま軌道に取り付けできるため、マグネットレールを軌道に配置する作業が容易となる。
【0011】
マグネットレールは走行方向に連続して複数並べられていてもよい。この場合、非磁性ケースは、走行方向端部に設けられた当接部を有している。当接部は、非磁性ケース同士を走行方向に並べたときに、互いに当接することで、非磁性ケースの近接端に設けられた磁石同士の走行方向の距離が非磁性ケース内で隣接する磁石同士の距離と等しくする。
これにより、異なる非磁性ケースに入れられた磁石同士の位置を決定するためのスペースを、別部品を用いることなく形成できる。
【0012】
非磁性ケースは板状部材からなり、複数の位置決め部は折り曲げ部であってもよい。これにより、軌道に対して磁石の位置決め固定を行うことなく、精度よく連続した走行軌道とすることができる。
【0013】
本発明の他の見地に係る組立方法は、有軌道走行車システムのマグネットレールの組立方法である。組立方法は、以下のステップを備える。
◎磁性体を敷くステップ。
◎非磁性材料からなるケースであり、載置面と、走行方向に所定間隔で配置された複数の位置決め部とを有する非磁性ケースを磁性体の上に置くステップ。
◎互いに隣接し合う2つの位置決め部の間の載置面、及び、非磁性ケースの走行方向の端部に形成された面と走行方向の端部に存在する1つの位置決め部との間の載置面に磁石を載置することにより、非磁性ケースに複数の磁石を走行方向に並べて載置するステップ。
◎非磁性ケースに、磁性材料からなる蓋部材を係合させるステップ。
◎非磁性ケースを磁性体から外し、次に軌道に取り付けるステップ。
【0014】
上記の組立方法では、非磁性ケースの下に磁性体を敷くことにより、非磁性ケースへの複数の磁石の装着作業性を向上できる。
【0015】
本発明のさらに他の見地に係るリニアモータは、マグネットレールと、移動体と、を有する。マグネットレールは、複数の磁石と、非磁性ケースと、蓋部材と、を有する。非磁性ケースは、非磁性材料からなるケースであり、載置面と、複数の位置決め部と、を有する。載置面には、複数の磁石が走行方向に並んで載置される。位置決め部は、複数の磁石を走行方向に所定間隔で位置決めする。蓋部材は、磁性材料からなり、非磁性ケースに係合するケース係合部を備える。
移動体は、電磁石を備えて、マグネットレールに沿って移動する。
【0016】
上記のリニアモータにおいて、マグネットレールの非磁性ケースは、載置面に載置された複数の磁石を、走行方向に所定間隔で位置決めする位置決め部を有している。これにより、複数の磁石を、位置決め部にて決められた位置に正確に配置できる。また、非磁性ケースに係合する蓋部材が磁性材料からなることにより、非磁性ケースに配置された複数の磁石を、蓋部材と非磁性ケースとの係合と、蓋部材と複数の磁石との間に働く磁力とにより、非磁性ケースに固定できる。
この結果、複数の磁石を、接着剤などによりケースに固定することを要することなく、容易にマグネットレールを組み立てることができる。
【発明の効果】
【0017】
電磁石を備えた移動体を移動させるリニアモータにおいて、複数の磁石を移動体の移動方向に沿って配置する際の作業性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態としての有軌道走行車システムの概略平面図。
図2】有軌道走行車システムの自動倉庫の概略正面図。
図3A】軌道を走行方向に垂直な面で切断したときの断面図。
図3B】軌道の分解斜視図。
図4】マグネットレールの斜視図。
図5】マグネットレールの断面図。
図6】スタッカクレーンの斜視図。
図7】駆動台車の正面図。
図8】駆動台車の斜視図。
図9】マグネットレールの組立工程を模式的に示す図。
図10】部材の挿入により非磁性ケースの側面と複数の磁石との間の隙間を埋めた状態の一例を示す図。
図11】マグネットレールの軌道への取付工程を模式的に示す図
図12】位置決め部の他の実施形態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
1.第1実施形態
(1)有軌道走行車システム
図1及び図2を用いて、有軌道走行車システム1を説明する。本実施形態における有軌道走行車システム1は、「ピッキングシステム」と呼ばれる、倉庫内でピッキング(荷揃え)ができるシステムである。有軌道走行車システム1は、主に、自動倉庫3を有している。図1は、本発明の一実施形態としての有軌道走行車システムの概略平面図である。図2は、有軌道走行車システムの自動倉庫の概略正面図である。なお、この有軌道走行車システム1は、工場の部品倉庫、一般物流倉庫等に適用可能であるが、特に、注文者の数及び商品の数及び種類が多数となるような、例えば、一般消費者用の通信販売用物品倉庫に最適である。
【0020】
自動倉庫3は、複数のラック5を有している。ラック5は、複数段の棚5aを有している。複数のラック5は、図1において、左右方向に延びて並列的に配置されている。棚5aは、図2に示すように、集品棚部材51を収納可能である。なお、棚5aは、例えば1ダースの商品が入った商品収容箱53もパレットPを用いて収納可能である。容器55は、ケース、バケットとも言われ、商品を収納可能な部材である。集品棚部材51は、キャリアとも言われ、複数の容器55を収納可能である。集品棚部材51は、複数段の支持部を有する棚構造を有している。なお、集品棚部材51が収納な可能な容器の数、集品棚部材51の構造は特に限定されない。ただし、集品棚部材51の底面はパレットPの底面と同様の構造を有しており、それによりスタッカクレーン9によって支持及び搬送される。また、図1においてはアルファベットが付されているのは、パレットPである。
自動倉庫3は、ラック5に沿って設けられた軌道7を有している。軌道7は、ラック5より高い位置、すなわち、複数段の棚5aより高い位置に設けられている。軌道7は、複数の周回軌道を有している。
軌道7は、ラック5の間の通路5bの上方に配置されている。
【0021】
自動倉庫3は、スタッカクレーン9(走行車又は移動体の一例)を有している。図1では、1台のスタッカクレーン9が示されているが、台数は特に限定されない。
スタッカクレーン9は、軌道7に沿って走行する。スタッカクレーン9は、図2に示すように、懸垂式のスタッカクレーンであって、軌道7から懸垂した状態で走行する。スタッカクレーン9は、軌道7を利用して駆動走行、分岐走行する。なお、図2に示すように、下部ガイドレール11を設けてスタッカクレーン9の下方を支持してもよい。下部ガイドレール11は、例えば、通路5bのうちラック前面の直線経路部分に設けられる。
【0022】
有軌道走行車システム1は、デジタルアソートシステム・エリア13を有している。このエリア13は、地上に設けられ、軌道7の軌道の一部に平面視で近接して配置されたエリアである。エリア13は、図1に示すように、複数のパレットP及び集品棚部材51を載置可能な載置場所13aを有している。エリア13は、図1に示すように、スタッカクレーン9から集品棚部材51を受け取る集品棚部材受け取り部15と、スタッカクレーン9に集品棚部材51を受け渡す集品棚部材受け渡し部17とを有する。具体的には、上述の集品棚部材51の移載は、スタッカクレーン9の第1移載装置95のスライドフォーク95a(図6)によって行われる。
【0023】
有軌道走行車システム1は、デパレ・ピッキングステーション19を有している。デパレ・ピッキングステーション19は、地上に設けられ、平面視で軌道7の一部に近接して配置されている。デパレ・ピッキングステーション19は、パレットPに載った荷物(例えば、商品収容箱53)をパレットPから降ろす作業に用いられる。降ろされた荷物は、商品収容箱53のままであったり、又は商品収容箱53から商品を取り出して容器55に入れられたりする。デパレ・ピッキングステーション19は、スタッカクレーン9から受け渡された集品棚部材51から容器55を受け取り可能な荷物授受部19aを有している。荷物授受部19aは、コンベア19bと、ロボット(図示せず)とを有している。具体的には、上述の集品棚部材51又はパレットPの移載は、スタッカクレーン9の第1移載装置95のスライドフォーク95aによって行われる。
【0024】
有軌道走行車システム1は、地上に配置され、平面視で軌道7の一部に近接して配置され、容器55及び/又は商品を他の設備に排出するためのシュート21をさらに備えている。
【0025】
(2)軌道
図3A及び図3Bを用いて、軌道7を説明する。図3Aは、軌道を走行方向に垂直な面で切断したときの断面図である。図3Bは、軌道の分解斜視図である。
軌道7は、長手方向に長く、当該長手方向に垂直な断面がH形状を有するレール本体71を有する。図3Aに示すように、レール本体71のH形状断面の水平方向に延びる一端の平面が天井73に固定されることで、レール本体71は、天井73から吊された軌道7の本体を形成する。
軌道7は、複数の支持部材75を有する。複数の支持部材75は、図3Bに示すように、L字形の板状部材である。L字形の一端が、レール本体71のH形状断面の垂直方向に延びる部分の両平面に固定されて、複数の支持部材75は、レール本体71の長手方向に沿って、所定の間隔を開けて配置される。複数の支持部材75は、一対の走行壁79(後述)を、レール本体71の長手方向に沿って固定する。
【0026】
軌道7は、複数のマグネットレール77を有する。複数のマグネットレール77は、図3Bに示すように、レール本体71のH形状断面の天井73に固定された側とは反対側の平面に、レール本体71の長手方向に沿って、連続して並べられて取り付けられている。これにより、レール本体71に取り付けられた複数のマグネットレール77は、スタッカクレーン9を軌道7に沿って走行させるリニアモータの一部を構成できる。なお、マグネットレール77の構成、及び、マグネットレール77のレール本体71への取付方法については、後ほど詳しく説明する。
【0027】
軌道7は、一対の走行壁79を有する。一対の走行壁79は、図3Bに示すように、長手方向に長く、当該長手方向に垂直な断面がL字形を有する部材である。一方の走行壁79は、レール本体71の幅方向の一方に配置された複数の支持部材75に固定される。他方の走行壁79は、レール本体71の幅方向の他方に配置された複数の支持部材75に固定される。
【0028】
これにより、一対の走行壁79は、レール本体71の長手方向に沿って、レール本体71の幅方向に所定の配置間隔を有して配置されて、スタッカクレーン9が移動可能な軌道を形成する。具体的には、上記の所定の配置間隔は、スタッカクレーン9の駆動台車91(後述)の幅方向の大きさと対応している。これにより、駆動台車91の走行車輪912を、一対の走行壁79のL字形断面により形成される長手方向に延びる面(水平方向の面)上に載置できる。この結果、駆動台車91は、当該走行車輪912の回転により、走行壁79の走行車輪912が載置された面上を、レール本体71(軌道7)に沿って走行できる。
【0029】
(3)マグネットレール
図4及び図5を用いて、マグネットレール77を詳細に説明する。図4は、マグネットレールの斜視図である。図5は、マグネットレールの断面図である。
マグネットレール77は、非磁性ケース771を有する。非磁性ケース771は、非磁性体材料(例えば、SUS304などの非磁性ステンレス、アルミニウムなどの非磁性金属、樹脂などのプラスチック材料)からなるケースである。非磁性ケース771は、載置面Sを有する。載置面Sには、複数の磁石772が載置される。本実施形態において、非磁性ケース771は、非磁性体材料の板状部材から形成される。
【0030】
非磁性ケース771は、複数の位置決め部773を有する。複数の位置決め部773は、非磁性ケース771の長手方向に、非磁性ケース771に載置する磁石772の幅とほぼ同一の間隔(または、磁石772の幅よりも若干大きな間隔でもよい)を開けて、非磁性ケース771の載置面Sに形成されている。
図4に示すように、本実施形態において、各位置決め部773は、非磁性ケース771を形成する板状部材において載置面Sとなる面の一部を、例えば、短冊状片が残るように切り抜いて、当該短冊状片を載置面Sに対してほぼ直角に折り曲げることにより形成される。図4に示すように、本実施形態において、位置決め部773は、当該折り曲げにより形成された一対の面(折り曲げ部の一例)により構成されている。
【0031】
図4に示すように、複数の磁石772のそれぞれは、非磁性ケース771の長手方向に互いに隣接する位置決め部773の間に載置にされる。これにより、複数の磁石772のそれぞれを、位置決め部773にて決定される位置に正確に配置できる。
また、載置面Sに載置された磁石772は、当該磁石772の両端に存在する位置決め部773と当接する。これにより、互いに隣接する2つの磁石772の間隔を、非磁性ケース771内でほぼ一定とできる。
【0032】
なお、後述するように、蓋部材776が磁性材料であるため、蓋部材776が非磁性ケース771に取り付けられた状態(マグネットレール77が、レール本体71に取り付けられた状態)においては、(全て又はいくつかの)磁石772が非磁性ケース771の載置面Sから離れて蓋部材776に磁力により付着していてもよい。
【0033】
なお、本実施形態においては、偶数個(本実施形態では10個)の磁石772を非磁性ケース771に配置するために、奇数個(本実施形態では9個)の位置決め部773が載置面Sに形成されている。
【0034】
また、複数(偶数個)の磁石772は、図4に示すように、載置面Sと対向する磁石772の面の磁極が交互に変化するよう(つまり、磁極がN極、S極、N極、・・・と交互となるよう)、載置面Sに、非磁性ケース771の長手方向(すなわち、スタッカクレーン9の走行方向)に並んで載置される。これにより、非磁性ケース771の長手方向の一端の磁極がN極(又はS極)となる一方、長手方向の他端の磁極はS極(又はN極)となる。
その他、複数の磁石772を、磁極が所定の周期にて交互に変化するよう(例えば、磁極が、N極、N極、S極、S極、N極、N極、・・・となるよう)載置面Sに載置してもよい。この場合、非磁性ケース771に配置する磁石772の個数は、非磁性ケース771の長手方向の両端の磁極が互いに異なるよう、適宜選択できる。
【0035】
非磁性ケース771は、その幅方向の両端に、載置面Sから高さ方向に垂直に延びる一対の側面774を有する。一対の側面774は、例えば、非磁性ケース771を形成する板状部材の幅方向の両端を、載置面Sに対して直角に折り曲げることにより形成される。一対の側面774のそれぞれは、上端に軌道係合部774aを有する。図4に示すように、軌道係合部774aは、例えば、側面774の上端を、鋭角にて、非磁性ケース771の内側方向へ折り曲げることにより形成できる。
軌道係合部774aは、非磁性ケース771の一対の側面774の上端に「スナップフィット構造」を与える。軌道係合部774aによりスナップフィット構造を形成することにより、マグネットレール77をレール本体71に取り付ける際に、非磁性ケース771をそのままレール本体71に取り付けできる。その結果、マグネットレール77をレール本体71に配置する作業が容易となる。
【0036】
側面774は、長手方向の一端に磁極識別部774bを有する。図4に示すように、本実施形態の磁極識別部774bは、側面774の長手方向の一端に形成された円形の貫通孔である。
磁極識別部774bを形成することにより、マグネットレール77を組み立てた後に、磁石772を視覚的に識別できなくなったとしても、マグネットレール77の長手方向の磁極を識別できる。図4に示す例では、磁極識別部774bが形成された側が、マグネットレール77のN極となる。
【0037】
非磁性ケース771は、その長手方向両端部(すなわち、スタッカクレーン9の走行方向端部)に設けられた、載置面Sから高さ方向に垂直に延びる当接部775を有する。当接部775は、3つの面775a〜775cからなる。これら3つの面775a〜775cは、例えば、非磁性ケース771を形成する板状部材の長手方向の両端に、長手方向に沿った2つの切り込みを入れた後に、上記の側面774と同じ折り曲げ方向に折り曲げることにより形成される。当接部775の3つの面のうち、真ん中の面775bは、他の面775a、775cよりも、非磁性ケース771の内側に形成されている。また、面775bと非磁性ケース771の長手方向の端に位置する位置決め部773との間には、1つの磁石772が配置される。
【0038】
一方、面775a、775cは、非磁性ケース771同士を走行方向に並べた時に、互いに当接する。具体的には、複数のマグネットレール77を走行方向に並べて配置したときに、1つのマグネットレール77の非磁性ケース771の面775a、775cは、当該1つのマグネットレール77に隣接する他のマグネットレール77の非磁性ケース771の面775a、775cと当接する。
【0039】
従って、面775bの形成位置は、面775a、775cが互いに当接したときに、非磁性ケース771の近接端に設けられた磁石772(すなわち、面775bと、非磁性ケース771の長手方向の端に位置する位置決め部773との間に配置された磁石772)同士の走行方向の距離が、非磁性ケース771内で隣接する磁石772同士の距離と等しくなる位置として決められる。このように、互いに隣接する磁石772同士の距離を複数のマグネットレール77に亘り同一とすることにより、軌道7に形成される磁界の状態を、軌道7の延長方向全体において一定にできる。その結果、スタッカクレーン9の走行を安定化できる。
【0040】
当接部775が上記の構成を有することにより、異なる非磁性ケース771に入れられた磁石772同士の位置を決定するためのスペースを、別部品を用いることなく形成できる。
【0041】
なお、非磁性ケース771の位置決め部773、側面774、及び、当接部775は、1つの板状部材を折り曲げることにより形成されていたが、これに限られない。変形例として、例えば、これら全て又は一部の構成要素を、別部材として形成し、その後、当該別部材を非磁性ケース771の載置面Sに溶接などにより固定することにより形成してもよい。
その他、非磁性ケース771を樹脂などのプラスチック材料にて形成する場合には、例えば、射出成形などにより、非磁性ケース771に、位置決め部773、側面774、及び、当接部775を一度に形成してもよい。
【0042】
マグネットレール77は、蓋部材776を有する。蓋部材776は、磁性材料(例えば、SPCC(冷間圧延鋼板)材などの磁性を有する鉄系の金属材料)からなる2枚の板状部材である。蓋部材776は、ケース係合部776aを有する。ケース係合部776aが側面774に形成された溝774cに挿入されることで、蓋部材776は、非磁性ケース771に係合する。
磁性材料が板状部材であることにより、蓋部材776は、非磁性ケース771に係合したときに、非磁性ケース771に載置された複数の磁石772との間に働く磁力により固定される。
【0043】
蓋部材776が非磁性ケース771に係合し、磁力により蓋部材776が複数の磁石772に固定されることにより、組み立て後のマグネットレール77を移動中に、振動などにより、マグネットレール77内の複数の磁石772が適切な配置位置からずれることを回避できる。
【0044】
(4)スタッカクレーン
次に、図6を用いて、スタッカクレーン9を説明する。図6は、スタッカクレーンの斜視図である。図6に示すように、スタッカクレーン9には、8台の駆動台車91(走行車又は移動体の一例)が、軌道7の延長方向である走行方向(白抜き矢印で示す)に並んで配置されている。駆動台車91の詳細は後述する。8台の駆動台車91は、ボギー構造92を構成している。ボギー構造92は、走行方向に隣接する2台の駆動台車91が、少なくとも軸91a(図7)を含む上下方向軸回りに回動自在に支持されている。
ボギー構造92によって、2台の駆動台車91は、ボギー構造92に対して回動自在に支持されている。このような構成によって、スタッカクレーン9は、周回軌道のカーブを安定して走行できる。
【0045】
スタッカクレーン9は、駆動台車91が設けられた上側ベース部材93を有している。上側ベース部材93は、走行方向に長く延びている。スタッカクレーン9は、さらに、上側ベース部材93の両端から下方に延びる一対のマスト94を有している。マスト94は、地面付近まで延びている。上側ベース部材93に対して、一対のマスト94は、ピンによって支持されており、走行方向に揺動可能になっている。以上に述べた構造によって、制振制御と機体重量低減が実現される。
【0046】
スタッカクレーン9は、第1移載装置95を昇降させるための昇降装置96を有している。昇降装置96は、マスト94に支持された昇降台97と、昇降台97を昇降させるための昇降部98とを有している。第1移載装置95は、昇降台97に設けられている。昇降部98は、モータ、ベルト、ガイドローラなどからなる公知の装置である。
【0047】
なお、この実施形態では、4台の駆動台車91が走行方向前側のマスト94に対応して配置されており、4台の駆動台車91が走行方向後側のマスト94に対応して配置されている。特に、4台の駆動台車91の走行方向中心がマスト94に対応するように、4台の駆動台車91が配置されている。以上の構成により、マスト94から作用する荷重を駆動台車91が均等に支持できる。ただし、駆動台車91の数及び配置は前記実施形態に限定されない。
【0048】
(5)駆動台車
図7及び図8を用いて、駆動台車91を詳細に説明する。図7は、駆動台車の正面図である。図8は、駆動台車の斜視図である。
駆動台車91は、磁界発生側が、レール本体71の下端に取り付けられたマグネットレール77に対向するよう配置された導線コイルからなる電磁石911を有している。電磁石911は、走行方向に(好ましくは、マグネットレール77において互いに隣接する磁石の772配置間隔と同じ間隔にて)配置された複数の導線コイルにて構成されていてもよい。
【0049】
電磁石911への電力は、例えば、軌道7において走行方向に沿って設けられた非接触給電線(図示せず)から発生する交番磁界を、電磁石911に接続された受電コイル(図示せず)にて入力することにより供給できる。非接触給電線からの交番磁界は、例えば、非接触給電線に交流電流を流すことにより発生できる。
非接触給電線から発生する交番磁界を受電コイルにて入力することにより、受電コイルに接続された電磁石911には、非接触給電線から発生する交番磁界に対応した交流電流が流れる。
電磁石911に交流電流が流れることにより、電磁石911とマグネットレール77中のいずれかの磁石772との間に引力又は斥力が働き、駆動台車91(スタッカクレーン9)は、当該引力と斥力により、軌道7に沿って走行する。駆動台車91の走行速度は、電磁石911に流れる交流電流の周波数により決定される。
上記の電磁石911とマグネットレール77が、駆動台車91を、軌道7に沿って走行させるリニアモータを構成する。
【0050】
駆動台車91は、走行車輪912を有している。走行車輪912は、軌道7の走行壁79の水平面79a(走行壁79のL字形状断面により形成される長手方向かつ水平方向に延びる面)上に置かれている。
【0051】
駆動台車91は、ガイドローラ913を有している。ガイドローラ913は、軌道7の一対の走行壁79の垂直面79b(走行壁79のL字形状断面により形成される長手方向かつ垂直方向に延びる面)によってガイドされる。この実施形態ではガイドローラ913は、走行方向に並んで一対ずつ設けられ、合計4個である。
【0052】
駆動台車91は、分岐合流切替装置914を有している。分岐合流切替装置914は、周回軌道において分岐・合流地点において走行経路を選択するための行うための装置である。分岐合流切替装置914は、切替ローラ915を有している。この実施形態では切替ローラ915は、走行方向に並んで一対ずつ設けられ、合計4個である。切替ローラ915は、ガイドローラ913の上方に配置されている。切替ローラ915同士の左右方向の距離は、ガイドローラ913同士の左右方向の距離より短い。切替ローラ915同士は、プレート916によって連結されており、プレート916は、左右方向にスライド可能である。分岐合流切替装置914は、プレート916をスライド駆動するための動力を発生するモータ917を有している。
【0053】
(6)マグネットレールの組立方法
次に、図9を用いて、マグネットレール77の組立方法を説明する。図9は、マグネットレールの組立工程を模式的に示す図である。
マグネットレール77の組み立てを開始すると、まず、図9の(1)に示すように、マグネットレールの組立作業を行う作業台Dの上に、磁性体シートMS(例えば、マグネットシートなどの磁性体材料からなる板状部材)を設置する。この磁性体シートMSは、非磁性ケース771の載置面Sに複数の磁石772を載置する際に、その磁力により、複数の磁石772を非磁性ケース771の載置位置から移動しないようにする。
【0054】
なお、磁性体シートMSから発生する磁束密度は、適切な範囲内にあることが好ましい。磁性体シートMSから発生する磁束密度が過大である場合、過大な磁力が、非磁性ケース771の底面全体と磁性体シートMSとの間に働く結果、組み立て後のマグネットレール77を、磁性体シートMSから取り外しにくくなる。
一方、磁性体シートMSから発生する磁束密度が過小である場合、例えば、複数の磁石772間に働く磁力が磁性体シートMSと磁石772との間に働く磁力を打ち消して、非磁性ケース771の載置面Sに複数の磁石772を固定できなくなる。
【0055】
磁性体シートMSを設置後、図9の(2)に示すように、作業台Dの上に設置した磁性体シートMSの上に、さらに非磁性ケース771を載置する。その後、図9の(3)に示すように、磁性体シートMS上に載置された非磁性ケース771の載置面Sに、複数の磁石772を載置(装着)する。
具体的には、図4に示すように、複数の磁石772の電磁石911(載置面S)に向く側の面の磁極が、非磁性ケース771の長手方向において交互に変化するよう、複数の磁石772を、互いに隣接し合う2つの位置決め部773の間の載置面S、及び、非磁性ケース771の長手方向の端部の1つの位置決め部773と面775bとの間の載置面Sに載置する。これにより、複数の磁石772が、非磁性ケース771の長手方向に並んで載置される。
【0056】
なお、変形例として、複数の磁石772を非磁性ケース771の載置面Sに載置する際に、図10に示すように、非磁性ケース771の側面774の内側に、複数の磁石772と側面774との間の隙間を埋める部材Tが挿入されてもよい。部材Tを側面774と磁石772との間に挿入することにより、複数の磁石772が非磁性ケース771の幅方向に移動することを抑制できる。図10は、部材の挿入により非磁性ケースの側面と複数の磁石との間の隙間を埋めた状態の一例を示す図である。
【0057】
複数の磁石772を非磁性ケース771に装着後、図9の(4)に示すように、2枚の磁性体からなる蓋部材776を非磁性ケース771に取り付ける。具体的には、まず、蓋部材776のケース係合部776aを、側面774に形成された溝774cに挿入して、蓋部材776を非磁性ケース771に係合させる。その後、蓋部材776を複数の磁石772の方向へ傾けて、蓋部材776の主面を複数の磁石772に当接させる。蓋部材776の主面を磁石772に当接させることにより、蓋部材776は、蓋部材776の主面と複数の磁石772との間に働く磁力により固定される。
【0058】
なお、非磁性ケース771の載置面Sに載置されていた(全て又はいくつか)磁石772が蓋部材776の主面に付着したときに、当該磁石772が非磁性ケース771の載置面Sから離れてもよい。
【0059】
このように、蓋部材776を非磁性ケース771に係合させ、その後、当該蓋部材776を複数の磁石772の磁力により固定することにより、複数の磁石772を、接着剤などにより非磁性ケース771に固定する必要がなくなる。その結果、容易にマグネットレール77を組み立てることができる。
【0060】
複数の磁石772の磁力により蓋部材776を固定後、組み立て後のマグネットレール77を、磁性体シートMSから取り外す。なお、非磁性ケース771の側面774と複数の磁石772との間に部材Tを挿入した場合には、当該部材Tを非磁性ケース771から引き抜いてもよい。
【0061】
(7)マグネットレールの軌道への取付方法
次に、図11を用いて、マグネットレール77を軌道7(のレール本体71)に取り付ける方法を説明する。図11は、マグネットレールの軌道への取付工程を模式的に示す図である。マグネットレール77のレール本体71への取付は、側面774の上端に形成された軌道係合部774aにより構成される「スナップフィット構造」を用いてなされる。
具体的には、まず、図11の(1)に示すように、一対の軌道係合部774aのいずれか一方の先端を、レール本体71のH形状断面の水平方向に延びる面(天井73に固定されている側とは反対側の面)の一方に当接させる。図11に示す例では、紙面の左側の軌道係合部774aの先端を、レール本体71の幅方向の紙面の左側に延びる面上に当接させている。
次に、図11の(2)に示すように、一方の軌道係合部774aをレール本体71の水平方向に延びる一方の面上に置いた状態にて、マグネットレール77をレール本体71の方向に傾けることにより、他方の軌道係合部774aを、レール本体71の水平方向に延びる他方の面に当接させる。
【0062】
他方の軌道係合部774aを、レール本体71の水平方向の他方に延びる面に当接させた後、マグネットレール77をレール本体71に向けてさらに傾けると、当該他方の軌道係合部774aが形成された側面774は、レール本体71に押されて弾性変形する。
その後、レール本体71の水平方向に延びる面とマグネットレール77(蓋部材776)とが平行になると、図11の(3)に示すように、弾性変形していた側面774が元の形状に戻り、他方の軌道係合部774aの先端が、レール本体71の水平方向に延びる他方の面の上面と当接する。この結果、非磁性ケース771の幅方向両端の軌道係合部774aの先端とレール本体71とが当接し、マグネットレール77は、一対の当該軌道係合部774aによって、レール本体71に支持される。
【0063】
上記のように、非磁性ケース771の側面774の上部に軌道係合部774aを形成し、当該軌道係合部774aを用いて、マグネットレール77を軌道7のレール本体71に取り付けることにより、マグネットレール77の非磁性ケース771を、そのまま軌道7に取り付けできるため、マグネットレール77を軌道7に配置する作業が容易となる。
【0064】
(8)実施形態の共通事項
上記第1実施形態は、下記の構成及び機能を共通に有している。
有軌道走行車システム1(有軌道走行車システムの一例)は、軌道7(軌道の一例)と、スタッカクレーン9(走行車の一例)と、マグネットレール77(マグネットレールの一例)と、を備える。スタッカクレーン9は、電磁石911(電磁石の一例)を備えており、軌道7に沿って走行する。マグネットレール77は、複数の磁石772(複数の磁石の一例)と、非磁性ケース771(非磁性ケースの一例)と、蓋部材776(蓋部材の一例)と、を有する。非磁性ケース771は、非磁性材料からなるケースであり、載置面S(載置面の一例)と、複数の位置決め部773(複数の位置決め部の一例)と、を有する。載置面Sには、複数の磁石772が走行方向に並んで載置される。位置決め部773は、複数の磁石772を走行方向に所定間隔で位置決めする。蓋部材776は、磁性材料からなり、非磁性ケース771に係合するケース係合部776a(ケース係合部の一例)を備える。
【0065】
有軌道走行車システム1において、マグネットレール77の非磁性ケース771は、載置面Sに載置された複数の磁石772を、走行方向に所定間隔で位置決めする位置決め部773を有している。これにより、複数の磁石772を、位置決め部773にて決められた位置に正確に配置できる。また、非磁性ケース771に係合する蓋部材776が磁性材料からなることにより、非磁性ケース771のあらかじめ決められた位置に配置された複数の磁石772を、蓋部材776と非磁性ケース771との係合と、蓋部材776の複数の磁石772との間に働く磁力により、非磁性ケース771に固定できる。
この結果、複数の磁石772を、接着剤などにより非磁性ケース771に固定することを要することなく、容易にマグネットレール77を組み立てることができる。
【0066】
2.他の実施形態
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。特に、本明細書に書かれた複数の実施形態及び変形例は必要に応じて任意に組み合せ可能である。
(A)位置決め部についての他の実施形態(その1)
上記の第1実施形態において、位置決め部773は、載置面Sにて切り抜かれた短冊状片を直角に折り曲げることにより形成された折り曲げ部であった。位置決め部773は、磁石772の非磁性ケース771の長手方向の動きを制限できればよいので、短冊状片による折り曲げ部に限られない。例えば、位置決め部773を、図12に示すような「ブリッジ曲げ」にて形成してもよい。図12は、位置決め部の他の実施形態を示す図である。
「ブリッジ曲げ」にて形成された位置決め部773は、「角」の数が少ないので、磁石772と位置決め部773とが当接したときに、磁石772などが傷ついたり、位置決め部773が損傷したりすることを回避できる。
【0067】
(B)位置決め部についての他の実施形態(その2)
上記の第1実施形態において、複数の位置決め部773は、非磁性ケース771の長手方向に沿ってのみ設けられていた。また、第1実施形態においては、非磁性ケース771に複数の磁石772を載置するときに、必要に応じて、非磁性ケース771の側面774と磁石772との隙間を埋める部材Tを挿入することにより、磁石772が非磁性ケース771の幅方向にて移動するのを抑制していた。
【0068】
しかし、上記に限られず、複数の磁石772の非磁性ケース771の幅方向への移動を抑制する位置決め部を、非磁性ケース771(例えば、非磁性ケース771の載置面S、及び/又は、側面774)にさらに形成してもよい。このような幅方向への移動を抑制する位置決め部を非磁性ケース771に設けることにより、例えば、複数の磁石772を非磁性ケース771に載置する際に、部材Tなどを磁石772と非磁性ケース771の側面774との間に挿入することなく、複数の磁石772を、非磁性ケース771の幅方向に対しても、正確に位置決めできる。
【0069】
非磁性ケース771の幅方向の移動を抑制する位置決め部も、第1実施形態に係る位置決め部773と同様にして、例えば、載置面S及び/又は側面774の一部を切り出して短冊状片を形成し、当該短冊状片を折り曲げることにより形成できる。
その他、幅方向の移動の抑制用の位置決め部を個別の部材として形成し、当該個別の部材として形成した位置決め部を、溶接などにより、載置面S及び/又は側面774に固定してもよい。
【0070】
(C)マグネットレールの組立方法についての他の実施形態
上記の第1実施形態においては、マグネットレール77を組み立てる際に、作業台Dに磁性体シートMSを敷く(配置する)ことにより、非磁性ケース771に載置された磁石772が移動することを抑制していた。
しかしながら、非磁性ケース771に載置された磁石772の移動を抑制する方法は、作業台Dに磁性体シートMSを敷く方法に限られない。
【0071】
例えば、作業台Dの下に電磁石(例えば、導電コイル)を設置して、当該電磁石の上に非磁性ケース771を置き、非磁性ケース771に磁石772を載置する際に電磁石から磁界を発生させてもよい。そして、非磁性ケース771に複数の磁石772を載置後に、例えば、導電コイルへの電流の供給を停止して、電磁石からの磁界の発生を停止してもよい。
【0072】
電磁石の磁力により磁石772を非磁性ケース771に固定する場合には、例えば、非磁性ケース771の各磁石の配置位置に対応するように、作業台Dに複数の電磁石を設置し、当該複数の電磁石が交互に異なる磁極を発生するように、例えば、各電磁石への電流の印加方向を制御する。
これにより、複数の磁石772を、駆動台車91の電磁石911と対向する側の磁極を交互に異ならせて、非磁性ケース771に載置できる。
【0073】
複数の磁石772を非磁性ケース771に載置する際に、載置した磁石772を電磁石にて非磁性ケース771に固定することにより、複数の磁石772を非磁性ケース771に載置した後に、複数の磁石772を非磁性ケース771に固定するための磁力を停止できる。その結果、組み立て完了後のマグネットレール77を、軽い力(マグネットレール77の重量分の力のみ)にて、作業台Dから取り外すことができる。
【0074】
(D)リニアモータの他の実施形態
上記の第1実施形態において、電磁石911とマグネットレール77とから構成されるリニアモータは、軌道7にマグネットレール77を、駆動台車91に電磁石911を配置していた。しかし、これに限られず、軌道7の走行方向に沿って複数の電磁石を配置し、駆動台車91の例えば軌道7の電磁石に対向する位置に上記のマグネットレールを配置してもよい。
この場合には、非接触給電線及び受電コイルを必要とすることなく、例えば、交流電源又はインバータ電源を用いて、軌道7に設けられた電磁石に交流電流を供給することで、スタッカクレーン9(駆動台車91)を、軌道7に沿って走行できる。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明は、リニアモータ、リニアモータの組立方法、及び、リニアモータにより走行車が走行する有軌道走行車システムに広く適用できる。
【符号の説明】
【0076】
1 有軌道走行車システム
3 自動倉庫
5 ラック
5a 棚
5b 通路
51 集品棚部材
53 商品収容箱
55 容器
7 軌道
71 レール本体
73 天井
75 支持部材
77 マグネットレール
771 非磁性ケース
772 磁石
773 位置決め部
774 側面
774a 軌道係合部
774b 磁極識別部
774c 溝
775 当接部
775a、775b、775c 面
776 蓋部材
776a ケース係合部
79 走行壁
79a 水平面
79b 垂直面
9 スタッカクレーン
91 駆動台車
91a 上下方向軸
911 電磁石
912 走行車輪
913 ガイドローラ
914 分岐合流切替装置
915 切替ローラ
916 プレート
917 モータ
92 ボギー構造
93 上側ベース部材
94 マスト
95 第1移載装置
95a スライドフォーク
96 昇降装置
97 昇降台
98 昇降部
11 下部ガイドレール
13 デジタルアソートシステム・エリア
13a 載置場所
15 集品棚部材受け取り部
17 集品棚部材受け渡し部
19 自動搬送車
21 アソートカート
23 デバレ・ピッキングステーション
23a 荷物授受部
23b コンベア
25 シュート
D 作業台
MS 磁性体シート
P パレット
S 載置面
T 部材
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12