(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-220983(P2017-220983A)
(43)【公開日】2017年12月14日
(54)【発明の名称】電力線の線路監視装置
(51)【国際特許分類】
H02J 50/10 20160101AFI20171117BHJP
H01F 38/14 20060101ALI20171117BHJP
H02H 9/04 20060101ALI20171117BHJP
【FI】
H02J50/10
H01F38/14
H02H9/04 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-112143(P2016-112143)
(22)【出願日】2016年6月3日
(71)【出願人】
【識別番号】391057764
【氏名又は名称】株式会社巧電社
(74)【代理人】
【識別番号】100081824
【弁理士】
【氏名又は名称】戸島 省四郎
(72)【発明者】
【氏名】木村 年幸
(72)【発明者】
【氏名】松原 千彰
【テーマコード(参考)】
5G013
【Fターム(参考)】
5G013AA09
5G013BA02
5G013CB02
5G013DA05
(57)【要約】
【課題】 高圧交流電力線から、非接触で必要電力を得て電力線の電流の計測・電力線まわりの機器の状態を監視する監視回路等を作動させ、必要電力を常時電池レスで給電できるようにする。及び電力線の大電流に影響を受けず、又コロナ放電・鳥・虫・雨水等から防いで耐久性を高める。
【解決手段】 中央部を大きく開口した断面U字状の環状金属筐体1とこれにゴム層31を介して蓋体3を嵌合した耐候性誘導コイル収納器Y内に環状コア21に電圧コイルを電流コイルを巻回した誘導コイル2を封入し、同誘導コイル2の電圧コイルの交流起電圧を収納器Yと連結した密閉容器5内の半導体回路6の整流回路を用いた直流電源部62へ入力し、同電源部から各回路に5Vの電圧を給電する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透磁性があり且つ良導電性の金属によって製作された断面U字状の環状金属筐体の内部に環状コアにコイルを巻回した起電圧発生用誘導コイルを配装し、同金属筐体の前記開口の口縁に電気絶縁体を介して良電導性金属製蓋体を嵌着して密閉型の耐候性誘導コイル収納器を形成し、同耐候性誘導コイル収納器の中央開口空間に交流電力の送電線の線路を貫通させ、前記耐候性誘導コイル収納器内に又はそれに良導電性の金属取付板で連接された別体の密閉金属容器内に子機半導体回路を封入し、同子機半導体回路として前記起電圧発生用誘導コイルに発生する電圧を整流して所要電圧の直流電力を生成する直流電源部と、前記直流電源部の直流電圧を使用して送電線まわりの機器の状態を監視するセンサー回路あるいはカメラ装置の電気信号を処理するカメラ制御画像処理回路の監視回路と、前記直流電源部又は監視回路の制御信号及びそれらからの情報を電波でこれらを管理する親機又は同親機と電波中継する電波中継装置と送受信する電波通信部とを内蔵した、電力線の線路監視装置。
【請求項2】
前記環状コアにコイルを巻回した前記送電線の線路の電流を検出できる電流検出用誘導コイルを前記起電圧発生用誘導コイルとは別に設け、前記環状コアに前記起電圧発生用誘導コイル及び電流検出用誘導コイルとを巻回した状態で断面U字状の前記環状金属筐体内に配装するとともに、電流検出用誘導コイルに流れる電流値を検出して、その出力から送電線の線路に流れる電流値を算出する電流計測回路を子機半導体回路の監視回路の一つとして設けた、請求項1記載の電力線の線路監視装置。
【請求項3】
前記直流電源部で出力した直流電圧に過電圧保護回路を設け、過大な直流電圧を子機半導体回路に印加しないようにした、請求項1又は2記載の電力線の線路監視装置。
【請求項4】
交流電力の送電線の碍子先端部に設けられた送電線の線路の大気に露出した接続電極板に、導電性金属を用いて前記耐候性誘導コイル収納器及び子機半導体回路を封入した前記密閉金属容器とを連結支持した、請求項1〜3いずれか記載の電力線の線路監視装置。
【請求項5】
前記センサー回路として、交流電力の送電線の前記接続電極板の温度を計測する温度センサー回路を有する、請求項4記載の電力線の線路監視装置。
【請求項6】
前記電波通信部のアンテナが前記密閉金属容器の外側から地表に向けて延びたアンテナである、請求項1〜5いずれか記載の電力線の線路監視装置。
【請求項7】
前記金属筐体及び蓋体の外形状が角のない丸味を帯びた外形状としてコロナ放電を少なくした、請求項1〜6いずれか記載の電力線の線路監視装置。
【請求項8】
密閉金属容器内の子機半導体回路が、密閉金属容器内に設けたポリカーボネート製筐体の内部に配置されたものである、請求項1〜7いずれか記載の電力線の線路監視装置。
【請求項9】
前記請求項1〜8いずれか記載の電力線の線路監視装置を、三相高圧電力線の変電所の開閉器の線路に複数取付け、前記線路監視装置の各電波通信部と電波で双方向通信できる親機を変電所内に設けた、変圧所内の線路監視設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高圧交流電力線における電力線の電流値・線路まわりの機器の状態及び温度の監視・鉄塔又は変電所の変圧器まわりの状況のカメラ監視の為のこれら監視装置を電力線から非接触的に給電を受けて電池レスで遠隔監視を可能にする技術に関する。
【背景技術】
【0002】
交流送電鉄塔又は変電所でその送電電流及び線路の接続部の温度を監視する電力線まわりの監視装置で、しかもこれに使用する直流電力を交流送電線から非接触的に得るようにして電池レス(電池交換作業を不要にした)で可能にした装置を本出願人は開発した。この技術は、特許文献1として公知である。
【0003】
しかしながら、送電線は高い鉄塔・高い位置にあって、高電圧によるコロナ放電で装置回路の誤動作が発生し、又大電流(サージ電流・過電流・短絡事故時に発生)による電磁誘導作用によって周辺の電気機器の故障を誘発させていた。更に、塩害・温度差による繰り返し疲労劣化・紫外線劣化・鳥虫害の被害を受けている。使用する誘導コイルを絶縁テープで巻いて又は防水性絶縁フィルムで被覆するだけでは上記問題の解消するには耐候性が不充分であり、使用寿命は短いものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−311323号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、従来の問題点を解消し、大電流による電気機器の故障を少なくでき、又塩害・鳥虫害の被害がなく、紫外線劣化を少なく、高い耐候性もある安定した電池レスの電力線の線路監視装置を提供することにある。
及び、耐候性が高い金属製の密閉型ケーシング内に誘導コイルを封入しても、密閉型ケーシングが内部のコアの閉ループを形成して誘導コイルの起電圧発生の性能及び線路の電流値の計測の精度が低くならないようにすることにある。更には、コロナ放電を少なく、落雷による破損を少なくすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる課題を解決した本発明の構成は、
1) 透磁性があり且つ良導電性の金属によって製作された断面U字状の環状金属筐体の内部に環状コアにコイルを巻回した起電圧発生用誘導コイルを配装し、同金属筐体の前記開口の口縁に電気絶縁体を介して良電導性金属製蓋体を嵌着して密閉型の耐候性誘導コイル収納器を形成し、同耐候性誘導コイル収納器の中央開口空間に交流電力の送電線の線路を貫通させ、前記耐候性誘導コイル収納器内に又はそれに良導電性の金属取付板で連接された別体の密閉金属容器内に子機半導体回路を封入し、同子機半導体回路として前記起電圧発生用誘導コイルに発生する電圧を整流して所要電圧の直流電力を生成する直流電源部と、前記直流電源部の直流電圧を使用して送電線まわりの機器の状態を監視するセンサー回路あるいはカメラ装置の電気信号を処理するカメラ制御画像処理回路の監視回路と、前記直流電源部又は監視回路の制御信号及びそれらからの情報を電波でこれらを管理する親機又は同親機と電波中継する電波中継装置と送受信する電波通信部とを内蔵した、電力線の線路監視装置
2) 前記環状コアにコイルを巻回した前記送電線の線路の電流を検出できる電流検出用誘導コイルを前記起電圧発生用誘導コイルとは別に設け、前記環状コアに前記起電圧発生用誘導コイル及び電流検出用誘導コイルとを巻回した状態で断面U字状の前記環状金属筐体内に配装するとともに、電流検出用誘導コイルに流れる電流値を検出して、その出力から送電線の線路に流れる電流値を算出する電流計測回路を子機半導体回路の監視回路の一つとして設けた、前記1)記載の電力線の線路監視装置
3) 前記直流電源部で出力した直流電圧に過電圧保護回路を設け、過大な直流電圧を子機半導体回路に印加しないようにした、前記1)又は2)記載の電力線の線路監視装置
4) 交流電力の送電線の碍子先端部に設けられた送電線の線路の大気に露出した接続電極板に、導電性金属を用いて前記耐候性誘導コイル収納器及び子機半導体回路を封入した前記密閉金属容器とを連結支持した、前記1)〜3)いずれか記載の電力線の線路監視装置
5) 前記センサー回路として、交流電力の送電線の前記接続電極板の温度を計測する温度センサー回路を有する、前記4)記載の電力線の線路監視装置
6) 前記電波通信部のアンテナが前記密閉金属容器の外側から地表に向けて延びたアンテナである、前記1)〜5)いずれか記載の電力線の線路監視装置
7) 前記金属筐体及び蓋体の外形状が角のない丸味を帯びた外形状としてコロナ放電を少なくした、前記1)〜6)いずれか記載の電力線の線路監視装置
8) 密閉金属容器内の子機半導体回路が、密閉金属容器内に設けたポリカーボネート製筐体の内部に配置されたものである、前記1)〜7)いずれか記載の電力線の線路監視装置
9) 前記1)〜8)いずれか記載の電力線の線路監視装置を、三相高圧電力線の変電所の開閉器の線路に複数取付け、前記線路監視装置の各電波通信部と電波で双方向通信できる親機を変電所内に設けた、変圧所内の線路監視設備
にある。
【発明の効果】
【0007】
本発明では、透磁性があり良電性の金属製の金属筐体内に起電圧発生用誘導コイルを封入し、同じく良電性の金属製の蓋体を電気絶縁体を介在して連結したことにより金属筐体と蓋体とをその開口縁で直接導通せず、金属製筐体と蓋体とによる閉ループが内部のコアに対して形成しないようにした。これによって、交流電力線から起電圧発生用又は電流検出用誘導コイルは安定した電圧を得るようにした。更に、同金属筐体に良電導体金属で連結して取付けた良電性の金属製の密閉金属容器内に子機半導体回路の直流電源部、電流計測回路、センサー回路又はカメラ制御画像処理回路の監視回路、電気通信部等回路を封入しているので、半導体回路の誤動作を少なくし、耐候性が高く、塩害・雨水・風・鳥虫の被害及び紫外線劣化を防ぎ、耐久性を高くしている。又、送電線とは直接的に電気接続がないので大電流による誤動作・障害を少なくしている。更に、金属製筐体と蓋体とが間接的には導通して密閉されて同電位となっているので、雷及び電界の勾配に対しても耐性がある。半導体回路を密閉金属容器内でポリカーボネート製筐体に収納すれば、更に電界勾配の影響を少なくできる。
【0008】
しかも、本発明の回路に必要な直流電力は起電圧発生用誘導コイルが送電線の交流電流から電圧を発生させて、これを整流して子機半導体回路の為の直流電力を確保しているので、常時電池レスで作動できる。よって、電池の点検・定期的な交換作業も不要となって常時監視が行え、長寿命の使用に耐えるものとなる。
【0009】
又、前記コアに線路の電流を検出する電流コイルの電流検出用誘導コイルを巻回し、同電流コイルの電流を検出回路で検出して電流計測回路に入力して線路電流の電流値を常時監視できるようにすれば、電力線の線路電流値の管理・電流制御管理を行え易くする。
【0010】
又、直流電源部に過電圧保護回路を設けた発明では、何らかの原因で起電圧発生用誘導コイルから過大な電圧が入力されても過電圧保護回路によって高い直流電圧が出力されないようにして、子機半導体回路を過電圧による故障・障害の発生から防いでいる。
又、送電線の碍子先端の線路の露出した接続電極板はジュール熱で温度が高くなりがちであるが、温度センサーでその温度を感知できるようにすればその接続電極板の温度を常時監視可能にできる。
【0011】
更に、前記接続電極板に導電性の金属でもって良電導性金属の金属筐体と蓋体及び金属密閉容器を連結しているので、接続電極板の熱はこれら筐体・蓋体・金属密閉容器に伝熱して大気に放熱し、接続電極板が極端に高温状態になるのを防いでいる。又、雷に対しても安全にしている。
又、金属筐体及び蓋体の外形状のコーナー部分に丸味を与えれば、コロナ放電も少なくしている。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は本発明の実施例の電力線の線路監視装置の誘導コイル収納器の金属筐体を示す正面図である。
【
図2】
図2は実施例の誘導コイル収納部の蓋体を示す一部切欠正面図である。
【
図4】
図4は実施例の誘導コイル収納器の一部切欠側面図である。
【
図5】
図5は実施例の誘導コイル収納器と子機半導体回路の密閉金属容器の取付状態を示す平面図である。
【
図6】
図6は実施例の直流電源部を示す回路図である。
【
図7】
図7は実施例の過電圧保護回路による回路温度特性を示す特性図である。
【
図8】
図8は密閉金属容器内の子機半導体回路のブロック図である。
【
図9】
図9は実施例の電力線の線路電極板への取付状態を示す説明図である。
【
図10】
図10は実施例の電力線の線路監視装置の変電所の碍子上端の線路に取付状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の透磁性があり且つ良導電性の耐候性ある金属筐体及び蓋体の素材としては、アルミ合金が好ましい。
【0014】
又、子機半導体回路を収納する密閉金属容器の素材としては、軽量なアルミ合金が好ましい。
【0015】
又、誘導コイル収納器の金属筐体内に絶縁されたコイル線の誘導コイルを挿入するときには、金属筐体と直接接触しないように誘導コイルを束ねるゴム弾性体の結束の結束帯を介して挿入することが好ましい。
【0016】
密閉金属容器内の子機半導体回路は高温に耐えられる半導体を使用する。密閉金属容器内の温度が100℃でも一定時間作動できる回路とするのが好ましい。
【0017】
更に、誘導コイルに過大な電流の負荷があっても直流電源部及び他の子機半導体回路が故障しないようにする過電圧保護回路を設けることが好ましい。この過電圧保護回路としてFETを使用して大電流を熱に変換するのがよい。
【0018】
又、鉄塔の電力線の線路に本発明の電力線の線路監視装置を取付ける場合、子機半導体回路の電波通信部は同じ鉄塔の場所に配置した複数の子機の情報・制御・電波通信を集めて行う親機又は鉄塔から少し離れた親機又は電波中継装置又は電波送受信局あるいは近接する監視者が保持している親機と通信するようにしてもよい。あるいは、近接した別の鉄塔の他の電力線の監視装置の子機へ電波で発信元の鉄塔線路IDを付した監視情報又は制御信号で送り、これを受けた電力線の監視装置が更に近くの鉄塔の電力線の監視装置へ情報・制御信号を電波で送信し、鉄塔の子機又は親機をネット化して所定の場所又は集中管理設備・親機へ複数の鉄塔線路の情報・制御信号を送信できるようにしてもよい。
【0019】
これとは別に、一つの鉄塔に一台の親機を設置、親機は高い出力の電波で遠隔地の集中監視設備へ直接鉄塔に設けた複数の電力線の線路監視装置の監視情報・制御信号をそれらにIDを付して送受信できるようにすることもできる。
【実施例】
【0020】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。本実施例は、高電圧75KVの変電所の三相交流電線の各相の電路に2,000A以上の電流が流れても計測可能であり、又複数の子機の情報・制御を電波で双方向通信行う親機を変電所内に設置、各線路の電流と線路接続部の温度の監視を変電所内又はその情報を集中管理する管理局で行えるようにした。
【0021】
(実施例の符号の説明)
Gは本発明の実施例の電力線の線路監視装置、Lは75KVの高圧の三相交流の送電線の線路、INSは同線路の接続部を空中で保持する碍子、Fは変電所の建物室内に配置された親機で、複数の子機とのデータ・制御の通信を行い、コンピュータを用いてデータの記憶・データの経時変化・データの分析・警報を行う親機、Yは実施例の電力線の線路監視装置Gの耐候性誘導コイル収納器、1は同誘導コイル収納器Yの透磁性で良導電性のアルミ合金を使用した断面U字状の環状の金属筐体、11は同金属筐体1の内部の誘導コイル設置空間、12は金属筐体の中央の開口空間、13は誘導コイル設置空間11の内側底面が拡巾した取付面、14は同取付面に設けた3個の連結ボルト17の貫通孔、15は取付面13と反対側に設けた駒部材15aに穿孔した連結ボルト貫通孔、16は誘導コイル2の電圧コイル2a及び電流コイル2bの出力線用孔、17は良電導性の連結ボルトである。2は誘導コイルで、2aは起電圧発生用誘導コイル(電圧コイル)であり、2bは電流検出用誘導コイル(電流コイル)である。21はその中心部にある環状の磁性体のコア、22は同コアに絶縁テープで被覆された誘導コイルの電圧コイル2aと電流コイル2bのコイル線、23は誘導コイル2を結束して金属筐体1との直接接触しないように弾支する図中点線で表示された結束ゴム帯、24は誘導コイル2の電圧コイル2aと電流コイル2bの出力線である。3はアルミ合金製の蓋体、31は同蓋体の内側全面に付着した電気絶縁性のゴム層、32は同蓋体に設けた連結ボルト取付用孔、33は蓋体3の外周を丸味加工してコロナが発生しないようにした湾曲コーナー部である。4は金属筐体1の取付面13の外側に連結ボルト17で取付けられるL字状良導電性の金属取付板、41はその連結用ボルト孔である。42は金属取付板4の折曲されて先端が拡巾した鉛直な長方形状の取付面、43は同取付面に連結されるL字状の導電性の線路取付板で、金属取付板4の取付面42とボルト44で連結されている。45はボルト44のナットと線路取付板43との間に設けたアルミ製スペーサー、46はL字状の線路取付板43の金属取付板4の取付面42に対し直角に立設した水平の接続電極板で、三相交流の一つの相の碍子INS上端(図示せず)に取付けられている水平の接続電極板46でこれとボルト44で連結されて実施例の電力線の線路監視装置G全体を固定支持している。前記アルミ製のスペーサー45の温度及びこれと熱的に接続されている線路取付板43を介して線路の接続部の温度を計測するため、温度センサー64aがスペーサー45の孔に埋設している。5は子機半導体回路6を磁気シールドする耐久性と耐候性ある密閉金属容器で、金属取付板4に強固に取付けられている。51は密閉金属容器5を金属取付板4の取付面42に連結する連結ボルト、52は密閉金属容器5と金属取付板4の取付面42との間に設けたアルミ製スペーサーで、連結ボルト51を貫通させている。6は同密閉金属容器5内のポリカーボネートを使用したプラスチック容器61内に取付けられた子機半導体回路、62はその直流電源部、62aはFETを用いた過電圧保護回路、63は誘導コイル2の電流コイル2bの電流値をオペアンプで増巾してその出力を入力して線路Lの電流値を算出する電力線の線路Lの電流計測回路、64は変電所の開閉器近くの電力線の線路Lの接続部の温度を計測する温度センサー64aの温度センサー回路、65はCPUを用いた各種回路の情報と制御の処理を行う制御情報処理ミニコン、66は線路周辺を撮影するカメラ66aの制御を行うカメラ監視回路、67は各回路の情報及び制御信号を親機Fと通信する電波通信部、67aはその電波のアンテナで、地表方向に向けて落雷を避けるようにしている。68は誘導コイル2の電圧コイル2aと電流コイル2bの出力線24を前記直流電源部62又は電流計測回路63とを接続するコネクター、69はセンサー64aとセンサー回路64とを接続するコネクターである。Fは変電所に設置され電力線の三相線路毎に取付けた複数の実施例の電力線の線路監視装置Gの電波通信部67と双方向通信で情報伝達と制御信号を送り出す変電所内に設けた親機であって、コンピュータを用いて各電力線の線路監視装置Gのセンサー,画像,電流値,温度値等データを記憶して且つ経時的に記憶してその経過が分るようにし、又異常の状態を検出できて警報できるシステムとなっている。
【0022】
(実施例の動作説明)
この実施例は、
図9,10に示すように高圧75KVの三相の交流電力線の各相の線路Lを実施例の環状をした耐候性誘導コイル収納器Yの中央の開口空間12を貫通するように配線している。又、実施例の電力線の線路監視装置Gは、線路Lを保持している碍子INSの先端に固定されている接続電極板46に実施例のL字状の線路取付板43を複数のボルト44で連結し、同線路取付板43はL字状の金属取付板4とボルト44で連結されて、更に同L字状金属板4には耐候性誘導コイル収納器Yが取付けられている。同耐候性誘導コイル収納器Y内の誘導コイル2の出力線24は、同じ金属取付板4の取付面42でL字状の線路取付板43の接続電極板46と反対面に連結ボルト51で取付けられた密閉金属容器5内の半導体回路6と接続されている。
【0023】
この線路監視装置Gを75KVの三相の各線路Lに取付けて線路Lに交流電力が流れれば、耐候性誘導コイル収納器Y内の起電圧発生用誘導コイル2(電圧コイル2a)には線路Lの交番電流によって交流の磁場が発生し、磁性体のコア21を有する起電圧発生用誘導コイル2(電圧コイル2a)には交流の起電圧が発生する。この場合、アルミ合金の金属筐体1の口縁と蓋体3の口縁とは電気絶縁体のゴム層31が間にあるため電気的に直接導通していず、この金属筐体1と蓋体3が閉ループを形成せず、金属筐体1内のコア21内の磁束が金属筐体1と蓋体3に影響受けず、線路Lの交流電流に応じて交流磁束が発生し、その電圧コイル2aのコイル線22の誘導コイル2には起電圧は発生する。
【0024】
このように、起電圧発生用及び電流検出用の誘導コイル2を耐候性誘導コイル収納器Yに封入したことで、金属筐体1とゴム層31と蓋体3とによって雨水・虫・鳥・紫外線の影響を受けず、耐久性があるものとしながら、線路Lの高圧の交流電流から誘導コイル2に起電圧を発生して直流電源部62で5V程の直流電圧の電力源として使用し、電池レスで作動し、電池交換の必要性もほとんどなく常時且つ長寿命で監視できるようにできた。
【0025】
誘導コイル2の起電圧・電流は出力線24を介して密閉金属容器5の中の更にプラスチック容器61内の半導体回路6の直流電源部62と電流計測回路63へ入力される。
この直流電源部62は
図6の回路のもので、誘導コイル2の出力電圧は整流回路で直流に変換され、更にFETを用いた過電圧保護回路62aによって安定した5Vで一定電圧を安定出力できるようにした。又、線路Lの線路電流2,000Aの連続通電の過電流にも耐えた。過電圧保護回路62aのFETの温度上昇値dTf=30℃であった。この線路電流I1(L)と出力電圧とFETの温度上昇値dTfの関係を
図7の動作特性図で示している。これによって、線路電流I1が1,000A以上連続して流れたときに過電圧保護回路62aと子機半導体回路6が故障しないことが確かめられた。
【0026】
又、密閉金属容器5内でポリカーボネート製のプラスチック容器61内に半導体回路6が封入されたことで、同回路及び使用しているCPUに短絡大電流の強磁界により電子回路の閉ループ内に誘導電圧や電流により故障しないようにした。又、電界の勾配を少なくでき、その影響を防いでいる。
【0027】
半導体回路6の直流電源部62で5V直流を供給し、電流計測回路63は誘導コイル2の電流コイル2bで発生する電流の値を検出して増巾して入力し、その入力値に応じて線路I1の電流値を算出し、出力できるようにしている。又、センサー回路64は線路取付板43とボルト44で圧着しているアルミのスペーサー45に埋め込んだ温度センサー64aの温度情報を得て、線路(盤)に発生する温度を接続電極板46・スペーサー45と伝熱して温度センサー64aによって感知され、線路の接続部分の温度として計測される。
又、この密閉金属容器5には所要の線路外の観察すべき部分(鳥の巣・強風による線路・電力線の破断・曲がり等)を撮影できるカメラ66aが設けられ、線路周辺の状態を画像として出力できるようになっている。
【0028】
これらの半導体回路6の直流電圧値、線路電流値、線路接続部の温度値、カメラ画像の出力された情報は制御情報処理ミニコン65に入力され、必要情報を電波通信部67へ出力され、親機Fに向けて電波で送信できるようになっている。電波通信部67のアンテナ67aは下向きとなっているので雷を回避でき、又金属筐体1及び蓋体3の外周には角部をなくし、丸味(湾曲)を与えることでコロナ放電を少なくしている。又、親機Fからの制御信号・情報出力の制御信号も受けて半導体回路6をその制御信号に応じて作動するようにしている。
【0029】
この実施例では、電波として429MHzの特定小電力無線の周波数を使用し、その電波は通信距離見通し200m〜300m可能とし、変圧所内の100mでは充分な電波による双方向通信を可能としている。従って、送電線鉄塔でも遠隔から情報を得ることができるものとなっている。
子機は複数台設けることができ、親機Fは1sec/1子機程のポーリング方式で各子機(線路監視装置)から線路に関する上記情報を入手して記憶保存し、異常がないかのソフト検査したり、異常があれば警報してその異常個所の表示と異常状態を表示できるようにできる。
【0030】
以上のように、本実施例では厳しい電力環境(高電圧環境・コロナ放電による材質劣化・電子回路の誤動作を防ぎ、又サージ電流・過電流・短絡事故時の過大電流)に耐え、更に塩害・ヒートサイクル劣化・紫外線劣化・鳥虫害被害を効果的に保護できるものとして、長寿命で電池レス作動を可能とした。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明は、高圧電流の送電鉄塔、変電所以外の地下空間等の場所における線路の監視を電池レス(電池の交換不要)で行え、又その監視も線路電流以外の絶縁物の漏洩電流・接地電流・構造物の歪・応力値計測もでき、又カメラを取付けることで線路周辺のカメラ観察を可能とし、又航空障害灯の点灯等にも応用できる。
【符号の説明】
【0032】
G 実施例の電力線の線路監視装置
F 親機
L 線路
INS 碍子
Y 耐候性誘導コイル収納器
1 金属筐体
11 誘導コイル設置空間
12 開口空間
13 取付面
14 貫通孔
15 連結ボルト貫通孔
15a 駒部材
16 出力線用孔
17 連結ボルト
2 誘導コイル
2a 電圧コイル(起電圧発生用誘導コイル)
2b 電流コイル(電流検出用誘導コイル)
21 コア
22 コイル線
23 結束ゴム帯
24 出力線
3 蓋体
31 ゴム層
32 孔
33 湾曲コーナー部
4 金属取付板
41 ボルト孔
42 取付面
43 線路取付板
44 ボルト
45 スペーサー
46 接続電極板
5 密閉金属容器
51 連結ボルト
52 スペーサー
6 半導体回路
61 プラスチック容器
62 直流電源部
62a 過電圧保護回路
63 電流計測回路
63a 電流検出回路
64 温度センサー回路
64a 温度センサー
65 制御情報処理ミニコン
66 カメラ監視回路
66a カメラ
67 電波通信部
67a アンテナ
68,69 コネクター