特開2017-221281(P2017-221281A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社イノアックコーポレーションの特許一覧

<>
  • 特開2017221281-座席部材およびその製造方法 図000003
  • 特開2017221281-座席部材およびその製造方法 図000004
  • 特開2017221281-座席部材およびその製造方法 図000005
  • 特開2017221281-座席部材およびその製造方法 図000006
  • 特開2017221281-座席部材およびその製造方法 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-221281(P2017-221281A)
(43)【公開日】2017年12月21日
(54)【発明の名称】座席部材およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A47C 7/20 20060101AFI20171124BHJP
   A47C 7/00 20060101ALI20171124BHJP
   A47C 27/15 20060101ALI20171124BHJP
   A47C 27/16 20060101ALI20171124BHJP
【FI】
   A47C7/20
   A47C7/00 C
   A47C27/15 A
   A47C27/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-117445(P2016-117445)
(22)【出願日】2016年6月13日
(71)【出願人】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100076048
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 喜幾
(74)【代理人】
【識別番号】100141645
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 健司
(72)【発明者】
【氏名】犬飼 佳宏
【テーマコード(参考)】
3B084
3B096
【Fターム(参考)】
3B084CA03
3B084CA07
3B084CB01
3B096AB10
3B096AD06
3B096AD07
(57)【要約】
【課題】インサート材としての発泡硬質部材と発泡軟質部材と成形される座席部材では、両部材が接合している部位の接着力が充分でない。このため前記座席部材を車両組み立て現場で取り扱う際や、使用者の着座時に過大な力が加わると、両部材が剥離する課題がある。
【解決手段】発泡硬質部材14と発泡軟質部材12とを発泡形成して座席部材10を製造する際に、発泡硬質部材14と発泡軟質部材12との間に、例えば不織布テープのようなアンカー部材16を介在させることで、両部材が容易に剥離しないようにした。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
着座部や背凭れ部になる発泡軟質部材と、該発泡軟質部材の裏面に設けられる発泡硬質部材とを一体成形してなる座席部材において、
前記発泡軟質部材は、前記発泡硬質部材をその表面側から外周の裏面側に亘り覆って前記座席部材の一部裏面を形成しており、
前記発泡軟質部材の内周縁と前記発泡硬質部材の外周縁との境界に両部材を結合させるアンカー部材を介在させた
ことを特徴とする座席部材。
【請求項2】
前記アンカー部材は不織布テープであって、該不織布テープの一面は前記発泡硬質部材に両面テープを介して接着されると共に、該不織布テープの他面になる不織布面は前記発泡軟質部材に接触して結合される請求項1記載の座席部材。
【請求項3】
前記アンカー部材は、前記発泡軟質部材および発泡硬質部材とは非反応性の接着剤である請求項1記載の座席部材。
【請求項4】
前記発泡硬質部材を覆っている前記発泡軟質部材は、前記座席部材の前框にもなっている請求項1乃至3の何れか一項に記載の座席部材。
【請求項5】
前記発泡硬質部材を覆っている前記発泡軟質部材の外側縁は、前記座席部材の全周に亘っている請求項1乃至4の何れか一項に記載の座席部材。
【請求項6】
開放した上型のキャビティに所要形状に成形した発泡硬質部材の一方の面をセットして、該発泡硬質部材の他方の面を下型のキャビティに指向させる工程と、
前記上型のキャビティにセットした前記発泡硬質部材の外周縁にアンカー部材を付帯させる工程と、
開放状態にある前記下型に発泡軟質部材の原料を供給する工程と、
前記上型および下型を閉じて前記原料を発泡させ、前記発泡硬質部材に前記発泡軟質部材を一体成形することで、前記発泡硬質部材の外周縁および発泡軟質部材の内周縁が前記アンカー部材により結合された座席部材を製造する工程とからなる
ことを特徴する座席部材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、インサート材を有する座席部材およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、車両用の座席部材として、パイプからなるシートフレームで軟質のウレタンフォームからなるシートパッドを固定し、支持ワイヤーで表皮材をシートパッドに貼り付けた構造のものが従来から使用されている。しかし最近では、座席全体の軽量化やコスト低減を図るため、所謂嵩上げ材としての硬質インサート材をコアとし、該インサート材に軟質のウレタンフォームを付帯させた座席部材が広く実用化されている。一例として、実用新案登録第3074384号には、軟質ウレタンフォームからなるクッション本体に、硬質のインサート材の少なくとも一部が一体的に設けられたシートクッション体(座席部材)が開示されている。ここで硬質のインサート材としては、当該明細書の表1に、チップスラブ材や発泡スチロールその他発泡ウレタンフォームが例示してある。なお、本明細書に云う座席部材は、着座部となるシートクッションおよび背凭れ部となるシートバックの何れか、または着座部と背凭れ部との両方を指すものとする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第3074384号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
先に述べたように、前記座席部材における軟質ウレタンフォームのクッション本体と、硬質のインサート材とは一体的に発泡成形されている。しかし、軟質ウレタンフォームと硬質インサート材とは一般に馴染みが余り良くなく、両部材の接触境界面のせん断方向に過重な負荷が加わると剥がれ易くなる傾向がある。このことは、前記実用新案登録第3074384号の表1に、軟質ウレタンフォームとインサート材としての発泡スチロールとの接着具合について、「剥がれ有り」と評価されている。
【0005】
具体的な案件を、図4および図5を参照して説明する。図4に示す座席部材10は、インサート材としての発泡硬質部材14を発泡軟質部材12により包み込んだシートクッションに係るものである。すなわち、着座部となるシートクッション(座席部材)10は、例えば発泡ポリプロピレン(EPP)や発泡ポリスチレン(EPS)を所要形状に成形した発泡硬質部材14を前記インサート材としている。また前記発泡軟質部材12は、例えばウレタンフォームとして知られるポリウレタン(PUR)を材質とし、前記発泡硬質部材14をセットした金型35(後述)に前記ポリウレタンの原料を供給し該金型35中で発泡させることで、前記発泡硬質部材14と発泡軟質部材12とが一体成形された座席部材10を得るものである。この座席部材10は、前述したように、嵩上げ材として機能する発泡硬質部材14をインサート材に使用しているので、座席の軽量化やコスト低減を図り得るメリットがある。なお前記発泡軟質部材12は、一般に前記発泡硬質部材14よりも広い着座面(シートバックであれば背凭れ面)を有している。図4の座席部材の裏面を示す概略底面図である図5に示すように、前記座席部材10の側面から裏面側まで回り込んでいる。
【0006】
ところで、前記発泡硬質部材14になる発泡ポリプロピレンや発泡ポリスチレンと、前記発泡軟質部材12になる発泡ポリウレタンとは、化学的に馴染みが良好でなく、前記金型35での一体発泡を行っても両部材は基本的に接合しない。このため、両部材14,12を一体成形した座席部材10を工場から搬出したり、車両製造現場で座席をアセンブルしたりする際に、作業者が図4図5に丸Aで示す部位を掴んで持ち上げたりすると、前記発泡軟質部材12が引っ張り上げられて、前記発泡硬質部材14から容易に剥がれてしまう。殊に、座席部材10から剥がれ易い部位としては、図5に示す該座席部材10の裏側において、前記発泡硬質部材14と発泡軟質部材12とが接触する境目や着座部の端末等が上げられる。また、前記座席部材10を長く使用している間に、乗員の姿勢変化や体重変位に起因して、前記発泡軟質部材12が経年的に剥がれ易くなることもある。
【0007】
これに対処する手段として、発泡硬質部材14が発泡軟質部材12に接触することになる部位をヤスリ等で削って表面を粗すことで、該発泡軟質部材12と接触する面積を増大させて剥がれ難くする試みも実行されている。しかし、図4図5に丸Aで囲んだ部分のように、両部材14,12が薄肉になる領域では、前記金型35内での発泡時にエアーが前述した表面粗し部から逃げ出して、座席の成形性が非常に悪くなる欠点がある。そこで、前記発泡硬質部材14を成形する前工程において、後工程で発泡軟質部材12に接触することになる該発泡硬質部材14の表面に小さな凹凸を施しておくことで、該発泡軟質部材12との接触面積(摩擦面積)を増大させることも為されているが、これも充分ではない。
【0008】
本発明は、前述した従来技術に係るインサート材を有する座席部材に内在している欠点を解決するべく提案されたものであって、前記インサート材になる発泡硬質部材と発泡軟質部材とが接触する境界部分において、両部材が容易には剥離し難くなる構成と、その構成を備えた座席部材を効率的に製造する方法とを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決し、所期の目的を達成するため請求項1に記載の発明は、着座部や背凭れ部になる発泡軟質部材と、該発泡軟質部材の裏面に設けられる発泡硬質部材とを一体成形してなる座席部材において、
前記発泡軟質部材は、前記発泡硬質部材をその表面側から外周の裏面側に亘り覆って前記座席部材の一部裏面を形成しており、
前記発泡軟質部材の内周縁と前記発泡硬質部材の外周縁との境界に両部材を結合させるアンカー部材を介在させたことを要旨とする。
請求項1に係る発明によれば、座席部材を構成する発泡軟質部材と発泡硬質部材との接合面がアンカー部材により確実に固定されるため、作業者が該座席部材の発泡成形部位を手で把持したりしても両発泡部材が容易に剥離することがない。
【0010】
請求項2に記載の発明では、前記アンカー部材は不織布テープであって、該不織布テープの一面は前記発泡硬質部材に両面テープを介して接着されると共に、該不織布テープの他面になる不織布面は前記発泡軟質部材に接触して結合されることを要旨とする。
請求項2に係る発明によれば、金型内での発泡成形時に不織布テープの不織布面に発泡軟質部材のウレタンが浸透して固化するため、結合強度が極めて優れたものになる。
【0011】
請求項3に記載の発明では、前記アンカー部材は、前記発泡軟質部材および発泡硬質部材とは非反応性の接着剤であることを要旨とする。
請求項3に係る発明によれば、接着剤を発泡硬質部材の適所に塗布するだけで簡単に両部材の接合強度を高めることができる。
【0012】
請求項4に記載の発明では、前記発泡硬質部材を覆っている前記発泡軟質部材は、前記座席部材の前框にもなっていることを要旨とする。
請求項4に係る発明によれば、作業者や乗員の手が触れ易い前框の部分にアンカー部材が位置しているので、両部材が剥がれ難い利点がある。
【0013】
請求項5に記載の発明では、前記発泡硬質部材を覆っている前記発泡軟質部材の外側縁は、前記座席部材の全周に亘っていることを要旨とする。
請求項5に係る発明によれば、作業者や乗員の手が触れ易い発泡軟質部材の全周に亘る外側縁にアンカー部材が位置しているので、両部材が剥がれ難い利点がある。
【0014】
前記課題を解決し、所期の目的を達成するため請求項6に記載の発明は、開放した上型のキャビティに所要形状に成形した発泡硬質部材の一方の面をセットして、該発泡硬質部材の他方の面を下型のキャビティに指向させる工程と、
前記上型のキャビティにセットした前記発泡硬質部材の外周縁にアンカー部材を付帯させる工程と、
開放状態にある前記下型に発泡軟質部材の原料を供給する工程と、
前記上型および下型を閉じて前記原料を発泡させ、前記発泡硬質部材に前記発泡軟質部材を一体成形することで、前記発泡硬質部材の外周縁および発泡軟質部材の内周縁が前記アンカー部材により結合された座席部材を製造する工程とからなることを要旨とする。
請求項6に係る発明によれば、発泡硬質部材に発泡軟質部材を一体的に発泡成形するに際し、アンカー部材を両部材の間に同時に位置させることができて、効率的な座席部材の製造を実現できる。
【発明の効果】
【0015】
インサート材としての発泡硬質部材と発泡軟質部材との間にアンカー部材が介在しているので、両部材が確実に結合され、座席部材としての耐剥離性が格段に向上する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施例に係る座席部材の縦断側面図であって、発泡軟質部材と発泡硬質部材とはアンカー部材により部分的に結合されている。
図2図1に示す座席部材を製造する工程を経時的に示す縦断側面図であって、(a)は下型に対し上型を開放した状態を示し、(b)は開放した上型のキャビティに予め成形したインサート材としての発泡硬質部材をセットすると共に、発泡軟質部材の原料を下型に供給している状態を示す。(c)は上下の金型を閉成して、金型内部で発泡硬質部材と発泡軟質部材とを一体的に発泡成形している状態を示し、(d)は下型に対し上型を開放して成形済みの座席部材を取り出している状態を示す。
図3図2(b)に丸Cで示す部分の拡大図であって、(a)〜(c)は不織布テープを貼り付ける経時的な過程を示している。
図4】従来技術に係るインサート材を備えた座席部材の一例を示す縦断側面図である。
図5図4に示す座席部材の裏側を示す概略底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明に係る座席部材および該座席部材の製造方法について、好適な実施例を挙げて添付図面を参照しながら説明する。なお、本発明の座席部材は、先に述べた如く、着座部となるシートクッションおよび/または背凭れ部となるシートバックであるが、本明細書では前者の着座部になるシートクッションについて説明する。従って、後者の背凭れ部となるシートバックや、前記シートクッションおよびシートバックからなる座席部材についても、本発明はそっくり適用される。また、本発明に係る座席部材の基本構造は、図4および図5で説明したインサート材を有する座席部材10と同じであるから、同一部材については同じ符号を付して詳細な説明は省略する。
【0018】
図1は、本発明に係る座席部材10の概略構成を示す縦断側面図であって、発泡軟質部材12と発泡硬質部材14との境界(境目)に、例えば不織布テープのようなアンカー部材16を介在させることで両部材12,14を強固に結合させている。すなわち、前記座席部材10は、着座面や背凭れ面になる前記発泡軟質部材12と、該発泡軟質部材12の裏面に位置するインサート材としての前記発泡硬質部材14とを一体成形してなるものである。前記発泡硬質部材14は、例えばポリプロピレン原料を別途他の金型中で発泡させることで所要のインサート材の形状に成形されている。また前記発泡軟質部材12は、図2に関して後述するように、前記発泡硬質部材14を内部にセットした上型30と、発泡軟質部材の原料を供給した下型34とを閉成して該原料を発泡させることで、該発泡硬質部材14の上面および側面、更には裏面の一部まで包み込む形で一体的に発泡成形されている。すなわち、図4および図5に示すように、前記発泡軟質部材12は、前記発泡硬質部材14をその表面側から覆うと共に、該発泡硬質部材14の外周の裏面側に亘って覆うことで前記座席部材10の裏面の一部も形成している。このとき前記発泡硬質部材14を覆っている前記発泡軟質部材12は、図1の丸Bで示す座席部材10の前框21になっている。更に、前記発泡硬質部材14を覆っている前記発泡軟質部材12の外側縁は、図5の底面図に示すように、前記座席部材10の全周に亘っている。なお、前記発泡硬質部材14および発泡軟質部材12における材質の詳細は、先に「発明が解決しようとする課題」で述べた通りである。
【0019】
図1に示すように、前記発泡軟質部材12の内周縁と前記発泡硬質部材14の外周縁との境界には、両部材12,14を確実に結合するためのアンカー部材16が介在させてある。このアンカー部材16が介在されるのは、先に図4を参照して説明したように、前記発泡軟質部材12および発泡硬質部材14の接合領域であって、かつ丸Aで囲んだ両部材が剥がれ易い領域乃至部位とするのが好適である。
【0020】
ここでアンカー部材16は、前記発泡軟質部材12と発泡硬質部材14とを確実に所定の強度で結合するものであれば、種々のものを採用し得る。例えば、前記アンカー部材16は不織布テープであって、図3に示すように、該不織布テープ16の一面は前記発泡硬質部材14に両面テープ19を介して接着され、この不織布テープ16の他面になる不織布面が金型35のキャビティ内での発泡成形時に前記発泡軟質部材12に接触し、毛羽立った不織部に発泡軟質部材12の原料が発泡時に含浸して結合される。また、アンカー部材16は接着剤であってもよく、このときは前記発泡軟質部材12および発泡硬質部材14とは非反応性の接着剤が選択される。無溶剤系で発泡スチロール用接着剤であれば良い。例えば、セメダイン社製、接着剤CA−196、スリーエム社製、スコッチ接着剤6225N等、市販の接着剤が挙げられる。更に、例えば合成樹脂を材質とし、本体部のピンに螺旋の抜け止めが形成されると共に、該ピンよりも直径の大きなヘッドを備えたアンカーピンであってもよい。この場合は、アンカーピンをインサート材としての発泡硬質部材14の適所に打ち込んで、ヘッドを露出させた状態とし、発泡軟質部材12の発泡時にウレタン等がヘッドを覆い囲むことで、結合力を発揮する。
【0021】
このように、前記発泡軟質部材12と発泡硬質部材14との境界面を所要のアンカー部材16で結合することにより両部材12,14が強固に接合され、従って作業者が作業する際に接合領域を把持したりしても容易に剥離することがない。また、従来実施されていた発泡硬質部材14の表面をヤスリ等で粗くする予備加工や、当該表面に凹凸を形成する等の余分な加工を必要とせず、作業工程を低減させることができる。
【0022】
次に、本発明に係る座席部材を製造する方法について、図2および図3を参照して説明する。図2は、斜めに開閉自在に構成した発泡成形用の金型40を示すもので、下型34と上型30とをヒンジ部29で軸支したものである。図2(a)に示すように、斜め上方へ開放した上型30の内面には、図1に示した前記発泡硬質部材14(インサート材)の一方の面をそっくり受容し得る形状のキャビティ32に形成されている。また、前記下型34の内面には、図1に示す座席部材10における発泡軟質部材12の着座面を形成し得る形状のキャビティ36に形成されている。
【0023】
次に、図2(b)に示すように、開放状態にある前記上型30のキャビティ32に対して、別工程で予め所要形状に成形したインサート材としての前記発泡硬質部材14をセットする。この場合、発泡硬質部材14が前記キャビティ32に接する側には、例えば図5の底面図に示すように、各種の凹凸部15が形成されている。勿論、前記上型30のキャビティ32にも、前記凹凸部15を反転させた凸凹部(図示せず)が形成されているので、前記発泡硬質部材14は前記上型30のキャビティ32に確実に固定され、脱落することはない。
【0024】
次いで、図2(b)で前述した前記上型30のキャビティ32にセットした前記発泡硬質部材14の適所に、前記アンカー部材16として不織布テープを付帯させる。これに関連して、図2(b)で上型30の丸Cで囲んだ部分を、図3(a)〜(c)に拡大して示す。すなわち図3(a)において、前記発泡硬質部材14における前記前框21となる部位に両面テープ19の一方の粘着面を貼り付ける。次いで、図3(b)に示すように、前記両面テープ19の他方の粘着面に前記不織布テープ16を貼り付ける。この場合は、前記不織布テープ16の毛羽立った不織布面の裏側を前記両面テープ19に貼り付けることは勿論である。これにより図3(c)に示す如く、不織布テープ16は両面テープ19を介して前記発泡硬質部材14の適所に貼り付けられ、該不織布テープ16の不織布面を外方へ臨ませていることになる。なお、前記アンカー部材として前述した接着剤を使用するときは、該接着剤を前記発泡硬質部材14の適所に塗布することになる。また、前記アンカーピン(図示せず)を使用するときは、前記発泡硬質部材14の適所に必要数のアンカーピンを打ち込んで、大径の頭部を露出させる。
【0025】
また図2(b)において、開放状態にある前記下型34のキャビティ36へ前記発泡軟質部材12のウレタン原料Uを必要量だけ供給する。次いで、前記上型30を下型34に向けて閉成(図2(c)参照)し、金型40の内部で前記ウレタン原料Uを発泡させることで、前記発泡硬質部材14と前記発泡軟質部材12とが一体的に発泡形成されて前記座席部材10が得られる。所要のキュアータイムを経た後に、図2(d)に示す如く金型40の上型30を開放して、成形された前記座席部材10を取り出す。この座席部材10には、図1に示すように、前記発泡硬質部材14と発泡軟質部材12との接合個所にアンカー部材としての不織布テープ16が介在しているため、両部材14,12は互いに強力に接合されている。
【0026】
このように本発明の実施例に係る座席部材では、アンカー部材として不織布テープを使用したので、発泡軟質部材12のウレタン成分が該テープの毛羽立った不織布面に含浸して硬化するために、発泡硬質部材14と発泡軟質部材12とを固着する力が極めて優れており、両部材14,12が容易に剥離することがない。また、図2(c)に示したように金型40内で発泡成形する場合に、発泡中のガスは前記発泡硬質部材14と発泡軟質部材12とのパーティングラインになっている前記不織布テープ16から逃出するので、残留ガスが前記発泡軟質部材12の成形固化を阻害することがない。更に、アンカー部材16として前述した接着剤を使用したり、アンカーピンを使用した場合でも、同様に発泡硬質部材14と発泡軟質部材12との接合面を強固に固定することができる。
【符号の説明】
【0027】
10 座席部材,12 発泡軟質部材,14 発泡硬質部材,
16 アンカー部材(不織布テープ),19 両面テープ,30 上型,
32 キャビティ,34 下型,36 キャビティ
図1
図2
図3
図4
図5