【課題】 プレイヤキャラクタを操作するユーザの集中状態に応じて、仮想ゲーム空間内で発生した音声の再生音量を調整して出力するゲームを実現するゲームプログラムおよびゲームシステムを提供する。
【解決手段】 ゲームプログラム30aは、CPU(コンピュータ)10を、ゲーム空間生成部40、仮想カメラ制御部43、注目部44、音声再生部47、および、音源位置取得部48、として機能させ、注目部44により照準している場合、音声再生部47は、音源距離と音源方向とに基づき、音声の聴取地点Pでの再生方法を変更する。
仮想ゲーム空間の画像を表示する表示部と、前記仮想ゲーム空間で生じる音声を示す音声データを記憶する記憶部と、前記音声を外部へ出力する音声出力部と、前記仮想ゲーム空間内のプレイヤキャラクタの動作に関するユーザの操作を受け付けるコントローラと、コンピュータと、を備えたゲームシステムにおいて前記コンピュータに実行させるゲームプログラムであって、
前記コンピュータを、
前記仮想ゲーム空間を生成するゲーム空間生成手段、
前記仮想ゲーム空間を撮影する仮想カメラを制御する仮想カメラ制御手段、
ユーザによる前記コントローラの操作に応じて、前記プレイヤキャラクタに注目動作を行わせる注目手段、
ゲーム状況に応じて前記音声データを再生する音声再生手段、および、
前記仮想ゲーム空間における聴取地点を基準として、音声の発生地点までの距離(以下、「音源距離」)と、前記音声の発生地点の方向(以下、「音源方向」)とを取得する音源位置取得手段、
として機能させ、
前記注目手段により注目している場合、前記音声再生手段は、前記音源距離と前記音源方向とに基づき、前記音声の前記聴取地点での再生方法を変更する、ゲームプログラム。
前記音声再生手段は、前記音源距離が大きいほど音量が小さくなるように設定された音量伝達率と、前記音源方向と注目方向との挟角が小さくなるほど前記音声の伝達距離が長くなるよう設定された距離増減率と、に基づき、前記音声の前記聴取地点での音量を決定する、請求項1に記載のゲームプログラム。
前記距離増減率は、前記挟角が0°では前記挟角が180°のときよりも大きい値であり、前記挟角が両者の間では、前記挟角の増加に伴って倍率値が減少するよう設定されている、請求項2に記載のゲームプログラム。
前記注目手段により注目していない場合、前記音声再生手段は、前記音源方向によらずに、前記音声の前記聴取地点での音量を決定する、請求項1〜3の何れかに記載のゲームプログラム。
前記注目手段は、ユーザによる前記コントローラの操作に応じて注目対象のズーム倍率を変更し、前記音声再生手段は、前記ズーム倍率に応じて前記距離増減率を補正する、請求項2〜4の何れかに記載のゲームプログラム。
請求項1〜6の何れかに記載のゲームプログラムを記憶したプログラム記憶部と、該プログラム記憶部に記憶されたプログラムを実行するコンピュータと、を備えたゲームシステム。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態に係るゲームプログラム及びゲームシステムについて、図面を参照しつつ説明する。なお、本実施の形態では、ユーザが仮想ゲーム空間内のプレイヤキャラクタの行動を操作し、敵キャラクタに対して射撃をしつつ目的地へ向けて移動していくガンシューティングゲームを例にして説明する。
【0022】
(ハードウェア構成)
図1は、ゲームシステム1のハードウェア構成を示すブロック図である。ゲームシステム1は、ゲーム装置2及びサーバ装置3を備えている。ゲーム装置2は、他のゲーム装置2及びサーバ装置3との間で、インターネット又はLANなどの通信ネットワークNWを介して互いに通信可能である。このゲーム装置2は、その動作を制御するコンピュータであるCPU10を備え、このCPU10にはバス11を介して、ディスクドライブ12、メモリカードスロット13、プログラム記憶部を成すHDD14及びROM15、並びにRAM16が接続されている。
【0023】
ディスクドライブ12には、DVD−ROM等のディスク型記録媒体30が装填可能である。該ディスク型記録媒体30には、本実施の形態に係るゲームプログラム30a及びゲームデータ30bが記録されている。このゲームデータ30bには、各キャラクタや仮想ゲーム空間の形成に必要なデータ、及び、ゲーム中で再生される音声データなど、本ゲームの進行に必要な各種のデータが含まれる。また、メモリカードスロット13にはカード型記録媒体31が装填でき、ゲームの途中経過等のプレイ状況を示すセーブデータを、CPU10からの指示に応じて記録可能である。
【0024】
HDD14はゲーム装置2が内蔵する大容量記録媒体であって、ディスク型記録媒体30から読み込んだゲームプログラム30a及びゲームデータ30b、更にはセーブデータ等を記録する。ROM15は、マスクROM又はPROMなどの半導体メモリであり、ゲーム装置2を起動する起動プログラムや、ディスク型記録媒体30が装填されたときの動作を制御するプログラムなどを記録している。RAM16は、DRAM又はSRAMなどから成り、CPU10が実行すべきゲームプログラム30aや、その実行の際に必要になるゲームデータ30bなどを、ゲームのプレイ状況に応じてディスク型記録媒体30又はHDD14から読み込んで一時的に記録する。
【0025】
また、CPU10には更に、バス11を介してグラフィック処理部17、オーディオ合成部20、無線通信制御部23、及びネットワークインタフェース26が接続されている。
【0026】
このうちグラフィック処理部17は、CPU10の指示に従って仮想ゲーム空間や各キャラクタ等を含むゲーム画像を描画する。すなわち、仮想ゲーム空間中に設定した仮想カメラの位置、向き、ズーム倍率(画角)等を調整し、仮想ゲーム空間を撮影する。そして、撮影した画像をレンダリング処理し、表示用の二次元のゲーム画像を生成する。また、グラフィック処理部17には、ビデオ変換部18を介して外部のディスプレイ(表示部)19が接続されている。グラフィック処理部17にて描画されたゲーム画像は、ビデオ変換部18において動画形式に変換され、このディスプレイ19にて表示される。
【0027】
オーディオ合成部20は、CPU10の指示に従って、ゲームデータ30bに含まれるデジタル形式の音声データを再生及び合成する。また、オーディオ合成部20にはオーディオ変換部21を介して音声出力部を成す外部のスピーカ22が接続されている。従って、オーディオ合成部20にて再生及び合成された音声データは、オーディオ変換部21にてアナログ形式にデコードされ、スピーカ22から外部へ出力される。その結果、本ゲームをプレイしているユーザは、仮想ゲーム空間で発生した音声を聴取することができる。
【0028】
無線通信制御部23は、2.4GHz帯の無線通信モジュールを有し、ゲーム装置2に付属するコントローラ24との間で無線により接続され、データの送受信が可能となっている。ユーザは、このコントローラ24に設けられたボタン等の操作部25(
図2参照)を操作することにより、ゲーム装置2へ信号を入力することができ、ディスプレイ19に表示されるプレイヤキャラクタの動作を制御する。
【0029】
図2は、コントローラ24の構成を説明する図面である。コントローラ24は、上記無線通信制御部23との間で通信する通信部24aの他、複数の操作部25(251〜253)を有している。具体的に説明すると、操作部25には、ボリュームスイッチ式の第1操作部251、スティック式の第2操作部252、更に、オン/オフ式の第3操作部253が含まれている。
【0030】
ボリュームスイッチ式の第1操作部251は、ユーザ操作によって、物理的かつ連続的に変位するよう構成されている。そして、ユーザによる操作量(第1操作部251の物理的な変位量)とその出力信号値(例えば、電圧値又は周波数など)とが一対一の関係にある。典型的には、
図2中のグラフに示すように、第1操作部251の操作量と出力信号値とは比例関係にある。
【0031】
つまり、例えば第1操作部251の操作量を連続的に増加させると、出力信号値も連続的に増加する。また、操作量を連続的に減少させると、出力信号値も連続的に減少する。このように第1操作部251は、操作量の増減に応じて出力信号値も可逆的に増減する。従ってCPU10は、第1操作部251からの出力信号に基づき、ユーザによる第1操作部251の操作量を一義的に取得できる。本実施の形態に係るゲームシステム1では、この第1操作部251の変位量の連続的な変化に応じて、仮想カメラのズーム倍率と音声データの再生方法とが連続的に変化する(詳細は後述する)。
【0032】
第1操作部251の具体的な構成例としては、
図2に示すように、弾性体等によって突出方向に付勢された操作子251aを採用できる。このような構成の場合、突出状態(非操作位置)にある操作子251aを、例えば人差し指で押し込むように操作すると、所定位置(最大操作位置)まで押し込むことができる。また、人差し指の押し込み圧力を緩和すると、操作子251aは付勢力によって初期状態へと復帰する。そして、第1操作部251は、非操作位置(変位量;0%)から最大操作位置(変位量;100%)までの間の任意の位置(変位量;x%)において、非操作位置からの操作子251aの変位量(操作量)に応じた出力信号値を出力する。
【0033】
スティック式の第2操作部252は、例えばユーザの親指で操作されるスティック状の操作子252aを有する。この操作子252aは、直立状態の基準位置を中心とする360度の全方位へ傾倒操作できる。この第2操作部252を操作すると、その傾倒方向に応じて、例えばプレイヤキャラクタが移動したり、仮想ゲーム空間中に表示された射撃用の照準マークが移動したり、仮想ゲーム空間を撮影する仮想カメラの向きが変更したりする。
【0034】
オン/オフ式の第3操作部253は、例えばユーザの親指で操作されるボタン状の操作子253aであり、コントローラ24には複数の操作子253aが備えられている。この第3操作部253は、ユーザの操作時にオン信号を出力し、非操作時にはオフ信号を出力する(あるいは、オン信号を出力しない)。第3操作部253は、例えばコンフィグ画面における各種設定事項の決定に用いられる。
【0035】
また、第3操作部253の操作によって、仮想ゲーム空間中の任意の対象に対し、プレイヤキャラクタが注目する動作を実行したり解除したりもする。このような「注目」の典型例として「照準」が挙げられる。つまり、第3操作部253は、照準の実行/解除(例えば、スコープの使用/不使用)の決定や、照準へ向けた射撃などのプレイヤキャラクタの所定の動作の実行(決定)などに用いられる。上記「照準」は一例であり、「注目」として他の態様を採用してもよい。
【0036】
なお、各形式の操作部251〜253は1つに限られず、夫々が複数備えられていてもよい。また、上述した各操作部251〜253の構成は一例であって、具体的な構成はこれに限られず、適宜他の構成を採用できる。
【0037】
図1の説明に戻り、ネットワークインタフェース26は、インターネット又はLANなどの通信ネットワークNWに対してゲーム装置2を接続するものであり、他のゲーム装置2及びサーバ装置3との間で通信可能である。そして、ゲーム装置2を、通信ネットワークNWを介して他のゲーム装置2と接続し、互いにデータを送受信することにより、同一のゲーム空間内で同期して複数のプレイヤキャラクタを表示させることができる。従って、複数人が共同してゲームを進行させるマルチプレイが可能になっている。
【0038】
(ゲーム装置の機能的構成)
図3は、ゲームシステム1が備えるゲーム装置2の機能的な構成を示すブロック図である。ゲーム装置2は、本発明のゲームプログラムを実行することで、ゲーム空間生成部40、キャラクタ制御部41、ゲーム画像生成部42、仮想カメラ制御部43、注目部44、操作取得部45、ゲーム進行制御部46、音声再生部47、および音響位置取得部48として機能する。なお、このような各機能は、ハード的には
図1に示すCPU10,HDD14,ROM15,RAM16,グラフィック処理部17,ビデオ変換部18、オーディオ合成部20、オーディオ変換部21、無線通信制御部23等から構成されている。
【0039】
ゲーム空間生成部40は、プレイヤキャラクタが行動する舞台となる三次元の仮想ゲーム空間を生成する。例えば、フレームレートに応じて1フレーム経過ごとに、オブジェクトの位置やテクスチャを決定し、光源の設定を決定し、フォグや火の粉などのエフェクトの設定を決定するなどして、仮想ゲーム空間を生成する。
【0040】
キャラクタ制御部41は、ユーザが行動を操作するプレイヤキャラクタと、ユーザが操作できないノンプレイヤキャラクタとを仮想ゲーム空間中に生成する。また、ユーザによる操作部25の操作に応じてプレイヤキャラクタの動作を制御したり、ゲームの状況に応じてノンプレイヤキャラクタの動作を制御したりする。例えば、ユーザが第2操作部252をある方向へ傾倒操作すると、プレイヤキャラクタの姿勢をその方向へ変えたり、プレイヤキャラクタをその方向へ移動させたりする。
【0041】
また、キャラクタ制御部41は、ユーザが第3操作部253を押下操作すると、プレイヤキャラクタに所定の攻撃行動を実行させる。例えば本ゲームのプレイヤキャラクタは、ライフルなどの銃器を用いて、遠方の敵キャラクタに対して射撃することができる。このとき、下記注目部44によりスコープ等を用いた照準合わせを併用することで、より遠方の敵キャラクタに対しても高い精度で射撃することができる。
【0042】
ゲーム画像生成部42は、仮想カメラが撮影した画像に基づき、ディスプレイ19に表示するゲーム画像を所定のフレームレートで生成する。例えば、ゲーム空間生成部40によって生成された仮想ゲーム空間に基づき、仮想カメラで撮影した二次元のゲーム画像を得るためにレンダリング処理を行う。このレンダリング処理では、ソリッド処理、抜き処理、トランスペアレンシー処理、エフェクト処理、及び、スクリーン処理などの公知の画像処理を、必要に応じて適宜行う。
【0043】
仮想カメラ制御部43は、仮想ゲーム空間を撮影する仮想カメラを制御する。例えば、ユーザが第2操作部252をある方向へ傾倒操作すると、その方向へ仮想カメラの向きを変更する。
【0044】
注目部44は、ユーザによるコントローラ24の操作に応じて、仮想ゲーム空間内の任意の対象に対して、プレイヤキャラクタに注目動作を行わせる。以下、本実施の形態では、この「注目」の具体例として上述した「照準」を採用した場合について説明する。
【0045】
この場合、注目部44は、仮想カメラの撮影対象の少なくとも一部に対する照準を実行したり、照準の実行を解除したりする。例えば、ユーザが第3操作部253を押下操作した場合に、ディスプレイ19に表示されているゲーム画像の一部に照準する演出を行う。この演出としては、表示中のゲーム画像の所定箇所(照準対象,注目対象)を、照準の実行に伴って所定の倍率(1倍も含む)で拡大表示してもよい。あるいは、表示中のゲーム画像において、仮想ゲーム空間を表す二次元画像の手前にレティクルを重ねて表示することで、照準の実行を演出してもよい。
【0046】
また、注目部44は、照準の実行中、ユーザによるコントローラ24の操作に応じて、仮想カメラによる照準対象のズーム倍率を変更する。例えば、照準の実行中にユーザが第1操作部251を操作すると、その操作量(物理的な変位量)に応じて、照準対象の表示倍率(ズーム倍率,仮想カメラの画角)を変更する。
【0047】
操作取得部45は、ユーザによる各操作部25への操作の有無、及び操作量を取得する。すなわち、操作取得部45は、第1操作部251についてはユーザによる操作量(物理的な変位量)を取得し、第2操作部252についてはスティックの傾倒操作の有無と傾倒方向とを取得し、第3操作部253については押下操作の有無を取得する。
【0048】
ゲーム進行制御部46は、ユーザの操作及びゲーム内時間の経過等に応じて、ゲームの進行を制御する。例えば、ユーザの操作によりプレイヤキャラクタが所定の動作を行なった場合に、所定のイベントを発生させて一定期間だけ所定のプリレンダリングムービーを再生する。また、ゲーム内時間の経過に伴って、仮想ゲーム空間内の環境を変化させる。更に、プレイヤキャラクタの所在等に応じて、仮想ゲーム空間の各所に敵キャラクタを出現させる。
【0049】
音声再生部47は、ゲーム状況に応じて音声データを再生する。音声データには、少なくとも背景音および効果音が含まれる。ここで、背景音には、ゲーム中に再生されるBGMが含まれる。このBGMとしては、プレイヤキャラクタが位置するフィールドの種類、季節および時刻、進行中のミッションの種類、発生したイベントの種類など、様々の状況に応じて異なる音楽がゲームデータ30bに記憶されている。また、効果音には、各キャラクタの周囲で生じる環境音(風雨の音、壁掛け時計の音など)や、各キャラクタの動作に伴って生じる音(足音や扉の開閉音、射撃音、発声音など)が含まれる。
【0050】
音源位置取得部48は、仮想ゲーム空間内での音声の発生位置、つまり音源位置を取得する。より具体的には、仮想ゲーム空間内に設定された所定の聴取位置を基準としたときの、音源までの距離(音源距離)と音源の方向(音源方向)とを取得する。なお、音声の聴取位置(マイクの位置)としては、仮想カメラの設定位置を採用してもよいし、仮想カメラとは別の位置に設定してもよい。本実施の形態では、一例として、プレイヤキャラクタと仮想カメラとマイクとを同じ位置に設定している。
【0051】
ここで、上述した音声再生部47は、照準の実行中は、音源位置に応じて音声の再生方法を変更する。つまり、照準中のユーザは照準方向(注目方向)へ注意を向けているため、その方向で発生した音声は聴取しやすく再生する一方、反対方向で発生した音声は聴取しにくく再生することで、リアルな音響効果を演出する。更に、これと併せて照準対象のズーム倍率に応じた再生方法の変更も実行する。詳細については後述する。
【0052】
(ゲームシステムの動作)
次に、本ゲームでの音声の再生に関するゲームシステムの動作例について説明する。
【0053】
[動作例1]
図4は、ゲームシステム1の動作例1に係る制御内容を示すフローチャートである。この動作例1では、照準中に発生した音声について、音源の位置に応じて音声の再生音量を変更する態様について説明する。なお、音声として、敵キャラクタの歩行時の効果音(歩行音)を例にする。
【0054】
図4に示すように、ゲームシステム1は、照準を実行中であるか否かを判断する(ステップS1)。例えば、ユーザによる第3操作部253の操作によってスコープが使用され、仮想ゲーム空間中の所定のオブジェクトに対して照準されていれば、照準の実行中(ステップS1:YES)と判断する。なお、照準中の状態は、照準するための所定の操作入力がコントローラ24を介してユーザにより入力されている状態であればよく、照準対象が拡大表示されていること(ズーム倍率が1倍より大きい状態)は必須ではない。
【0055】
次に、仮想ゲーム空間中で発生する音声の音源位置を取得する(ステップS2)。つまり、上述したように音源位置として、音源距離および音源方向を取得する。
【0056】
図5は、ステップS2で取得する音源位置を説明する模式図である。
図5では、プレイヤキャラクタは仮想ゲーム空間VS中の位置Pに存在している。また、仮想カメラは任意の方向(照準方向D)へ向かって照準している。そして、プレイヤキャラクタから離れた任意の位置に音源SS1および音源SS2があり、各音源にて音声(敵キャラクタの歩行音)が発生するとする。なお、本実施の形態では、上述したようにプレイヤキャラクタと仮想カメラとマイクとを同一位置に設定しているので、上記位置Pが聴取位置となる。
【0057】
音源位置取得部48は、音源距離として、聴取位置Pから音源までの最短距離を取得し、音源方向として、聴取位置Pから音源を見た方向と照準方向Dとの間の角度、つまり挟角(0°以上かつ180°以下の角度)を取得する。
図5の例の場合、音源位置取得部48は、音源SS1については音源距離d1および音源方向a1を取得する。また、音源SS2については音源距離d2および音源方向a2を取得する。
【0058】
次に音声再生部47は、ステップS2で取得した音源位置に基づいて、各音声の聴取位置Pでの音量を決定する(ステップS3)。具体的には、音源距離が大きいほど音量が小さくなるように設定された音量伝達率と、音源方向を示す挟角が小さくなるほど音声の伝達距離が長くなるように設定された距離増減率とに基づき、音量を決定する。
【0059】
図6は、音量伝達率の一例を示すグラフであり、横軸は音源から聴取位置までの音源距離、縦軸は聴取位置での音量である。グラフ中の実線で示すように、音声には、音源距離と音量との関係を示す音量伝達率に関する基準値(基準伝達率)Tが設定されている。音声は、非照準時(ステップS1:NO)には、この基準伝達率Tと音源距離とに基づいて聴取位置Pでの音量が決定される。なお、本実施形態では、音源SS1および音源SS2は同一の歩行音であって同一の基準伝達率Tを用いるが、効果音が異なる場合には個別に基準伝達率Tを設定してもよい。
【0060】
図6の例では、仮想ゲーム空間VS内での音源距離が0mのときに音量が最大(MAX)であり、音源距離が増加するほど音量が小さくなり、音源距離が10mのときに音量が最小(ゼロ)となるように基準伝達率Tが設定されている。つまり、この音声の場合、非照準時では、聴取位置Pから10m(基準限界距離)だけ離れた位置に音源が存在する場合が、聞き取れる限界となっている。
【0061】
図5に、非照準時に聴取位置Pを基準にしてこの音声を聴取できる限界の音源位置(聴取位置Pから基準限界距離だけ離れた地点を結んだ円周)を表す基準限界線Lxを細い実線で示している。先に説明した音源SS1は、聴取位置Pに対して基準限界線Lxの外側に位置し、音源SS2は基準限界線Lxの内側に位置している。従って、非照準時のプレイヤキャラクタに対し、音源SS1の音声は再生されず(音量=ゼロ)、音源SS2の音声は聴取可能に再生される(音量>0)。
【0062】
なお、上述した基準伝達率Tは、音声ごとに予めゲームデータ30bに含めておいてもよいし、当該音声の発生時などの適宜のタイミングで諸条件に基づいて任意に決定してもよい。
【0063】
図7は、距離増減率の一例を示すグラフであり、横軸は音源方向を示す挟角、縦軸は音声の伝達距離の増減率(倍率)である。このうち挟角は、0°から180°の範囲で設定されている。距離増減率は、挟角が0°のときに最大値の3倍(>1)、挟角が180°のときに最小値の0.25倍(<1)、そして、挟角の増加に伴って単調減少するよう設定されている。つまり、音源が仮想カメラの正面方向に近いほどその音声の伝達距離は長くなり、音源が仮想カメラの背面方向に近いほど伝達距離は短くなる。また、挟角が90°より若干小さい角度a0のときに、距離増減率は1倍となるように設定されている。
【0064】
なお、任意の挟角に対応する距離増減率は上記に限られず、適宜設定可能である。例えば、
図7のグラフにおいて、距離増減率が1倍となる角度を90°に設定してもよい。また、距離増減率は、挟角0°での値が挟角180°での値よりも大きく、かつ、挟角の増加に伴って値が減少するように設定してもよい。
【0065】
音声再生部47は、上述した音量伝達率と距離増減率とに基づいて、音声の聴取位置Pでの再生音量を決定し(ステップS3)、その音量で音声を再生する(ステップS4)。
【0066】
音量の決定手順について具体的に説明する。対象の音声について、まずはその音源方向(挟角)と
図7のグラフとから距離増減率(倍率値)を取得する(ステップS3-1)。次に、この距離増減率と
図6の基準伝達率Tとを掛け合せて、当該音声に関する個別の伝達率を取得する(ステップS3-2)。例えば、基準伝達率Tを示すグラフを、距離増減率に応じて横軸方向に伸縮して個別伝達率を取得する。そして、この個別伝達率と音源距離とから音量を取得する(ステップS3-3)。
【0067】
なお、
図6に示すように、挟角が0°のときは破線のグラフTmaxで示すような個別伝達率となり、聴取限界は音源から30m(10m×3倍)の位置となる。また、挟角が180°のときは破線のグラフTminで示すような個別伝達率となり、聴取限界は音源から2.5m(10m×0.25倍)の位置となる。このように、照準時には、挟角に応じて聴取限界までの距離が異なることとなる。
図5に、音源SS1や音源SS2の音声と同一の音声(歩行音)について、照準時の聴取限界位置を示す照準時限界線Lyを破線で示す。照準時は、この照準時限界線Lyより内側であれば、聴取位置Pにて歩行音を聴取することができる。
【0068】
図5で示した音源SS1および音源SS2について、ステップS3での音量の決定手順をより具体的に説明する。
【0069】
音源SS1は、音源方向を示す挟角a1が角度a0未満であり、基準限界線Lxの外側に位置している。音声再生部47は、まず挟角a1と
図7のグラフとから距離増減率c1(>1)を取得する。次に、
図6の基準伝達率Tと距離増減率c1とを掛け合せて個別伝達率T1を取得する。そして、個別伝達率T1と音源距離d1(>10m)とから、聴取位置Pでの再生音量V1を取得する。
【0070】
この音源SS1は基準限界線Lxの外側に位置しており、非照準時であれば音量がゼロでありユーザは聴取できない。しかし、挟角が0°に近くて距離増幅率c1が1倍より大きくなるため、照準時は、音声の伝達距離が基準限界距離以上(10m以上)に設定される。その結果、音源SS1は、照準時には照準時限界線Lyの内側に位置することとなるため(
図5参照)、再生音量V1はゼロより大きくなってユーザは聴取可能となる。
【0071】
一方、音源SS2は、挟角a2が角度a0より大きく、基準限界線Lxの内側に位置している。音声再生部47は、まず上記と同様に挟角a2と
図7のグラフとから距離増減率c2(<1)を取得する。次に、
図6の基準伝達率Tと距離増減率c2とを掛け合せて個別伝達率T2を取得する。そして、個別伝達率T2と音源距離d2(<10m)とから、聴取位置Pでの再生音量V2を取得する。
【0072】
この音源SS2は基準限界線Lxの内側に位置しており、非照準時であればユーザは聴取できる。しかし、挟角が180°に近くて距離増幅率c2が1倍より小さくなるため、照準時は、音声の伝達距離が基準限界距離未満(10m未満)に設定される。その結果、音源SS2は、照準時には照準時限界線Lyの外側に位置することとなるため(
図5参照)、再生音量V2はゼロとなってユーザは聴取不可となる。
【0073】
以上に説明したように、この動作例1によれば、照準時には音源距離と音源方向とに基づいて音量を調整できる。その結果、ユーザの集中状態に応じた音響効果を実現することができる。特に、照準方向で発生した音声は遠くても聴取しやすくなる一方、照準方向とは反対の方向で発生した音声は聴取しにくくできる。従って、照準方向に注意を向けている人の耳の聞こえ具合を模した音響効果を実現できる。
【0074】
なお、音源距離は、聴取位置と音源位置とを直接結ぶ直線距離でなくてもよい。例えば、聴取位置と音源位置との間に壁などの障害物が存在する場合には、障害物を迂回したときの最短距離を採用してもよい。また、音声が伝搬する媒体の種類(空気、水など)に応じて、三次元的な距離に適宜係数を掛けて音源距離としてもよい。例えば媒体が空気であるときに係数を1とすると、媒体が水であるときには1より大きい係数を設定することで、空気中よりも水中の方が音声の伝搬距離が長くなる音響効果を実現できる。
【0075】
また、
図7に示すように、本実施形態に係る距離増減率は、挟角の変化に対する増減率の変化の割合(
図7のグラフの傾き)が、0°付近や180°付近より、距離減衰率が1倍となる挟角a0付近のときに大きくなっている。これにより、聴取位置に対して音源が、前方から後方へ、あるいは後方から前方へ移動するのを、ユーザは視覚によらずとも音量の変化によって感覚的に把握することができる。
【0076】
また、
図5では、仮想ゲーム空間VSを平面視して、プレイヤキャラクタの位置Pを通る照準方向Dに沿った仮想線に対して右側の領域の音源SS1,SS2のみを例示したが、左側の領域に音源が存在する場合も上述したのと同様に処理すればよい。また、プレイヤキャラクタと同一平面内に音源が存在する場合に限らず、上方や下方に音源が存在する場合も、音源方向と音源距離とに基づき、音声の再生方法を変更できる。
【0077】
また、上記では再生音量を変更する場合について説明したが、他の態様によって再生方法を変更してもよい。例えば、挟角が小さいほど、ユーザの聴覚によって感知しやすい音質となるよう、再生音の周波数を変更してもよい。あるいは、再生対象の音声が複数ある場合、挟角に応じて全ての音声の音量を変化させるのではなく、予め設定された一部の音声についてのみ音量を変化させてもよい。例えば、BGMや風雨などの環境音は挟角に応じて音量を変更せず、話し声や足音などのキャラクタの動作に伴う音声のみ、挟角に応じて音量を変更する。これにより照準時には、ユーザが特に注意を向けている対象(敵キャラクタ)に関する音声のみを聴取しやすくできる。
【0078】
[動作例2]
上述したように、本ゲームの照準部44は、ユーザによる第3操作部253への操作により照準を実行し、かつ、第1操作部251への操作量に応じてズーム倍率を変更する。動作例2では、照準中に発生した音声について、音源の位置に加えてズーム倍率も考慮して音声の再生音量を決定する態様について説明する。
図8は、ゲームシステム1の動作例2に係る制御内容を示すフローチャートである。
図9は、距離増減率の他の例を示すグラフである。
【0079】
図8に示すように、ゲームシステム1は、照準を実行中であるか否かを判断する(ステップS11)。照準中(ステップS11:YES)であれば、仮想ゲーム空間中で発生する音声の音源位置として、音源距離および音源方向を取得する(ステップS12)。これらの処理は、動作例1のステップS1,S2と同様であるので、ここでの詳細説明は省略する。
【0080】
次に、音声再生部47は、ズーム倍率を取得する(ステップS13)。つまり、操作取得部45が取得した各操作部25の操作に関する情報のうち、ズーム倍率を決定する第1操作部251の操作量を取得する。そして、音源位置(音源距離および音源方向)とズーム倍率とに基づき、聴取位置での音量を決定する(ステップS14)。
【0081】
音量の決定手順について具体的に説明する。対象の音声について、まずはズーム倍率に応じて距離増幅率のグラフを補正し、補正後のグラフと挟角とから距離増減率(倍率値)を取得する(ステップS14-1)。例えば、
図9に示すように、距離増減率と挟角との関係を示すグラフとして、ズーム倍率が最大のときのグラフと最小のときのグラフとを予め用意しておく。そして、ある挟角に対応する距離増減率を、2つのグラフ上の値をズーム倍率に応じた比で分ける値として定める。これを挟角の全範囲(0°〜180°)において取得すれば、ズーム倍率に応じた距離増減率のグラフが得られる。
図9に、補正後のグラフの一例を破線で示す。
【0082】
なお、距離増減率のグラフの補正方法は上記に限られず、他の方法によって補正してもよい。また、補正したグラフから対象の音源の挟角に応じた距離増減率を取得するのではなく、所定のズーム倍率に対応するグラフ(例えば、ズーム倍率が最大のときのグラフ)から距離増減率の暫定値を取得し、この暫定値を、実際のズーム倍率に応じて補正することで、距離増減率の確定値を取得することとしてもよい。
【0083】
このようにして距離増減率を取得すると(ステップS14-1)、以下、動作例1と同様にして、個別の音量伝達率の取得(ステップS14-2)、および、音量の取得(ステップS14-3)を実行し、得られた音量に基づいて音声を再生する(ステップS15)。
【0084】
例えば、補正後の距離増減率のグラフが、
図9の破線で示すものであったとする。このとき音声再生部47は、
図5の音源SS1(音源距離;d1,挟角a1<a0)について距離増減率c1'を取得する。この距離増減率c1'は、ズーム倍率が最大のときの値(c1)よりも小さい(
図7参照)。従って、音源SS1からの音声は、非照準時(距離増減率;1倍)によりも遠くへ到達するが、ズーム倍率が最大のときほど遠くへは到達しない。
【0085】
また、このとき音声再生部47は、
図5の音源SS2(音源距離;d2,挟角a2>a0)について距離増減率c2'を取得する。この距離増減率c2'は、ズーム倍率が最大のときの値(c2)よりも大きい(
図7参照)。従って、音源SS2からの音声は、非照準時(距離増減率;1倍)よりも近くまでしか到達しないものの、ズーム倍率が最大のときよりは遠くへ到達し得る。
【0086】
以上に説明したように、動作例2によれば、照準時には音源距離と音源方向と、更にズーム倍率とに基づいて音量を調整できる。その結果、ユーザの集中状態により応じた音響効果を実現することができる。特に、ズーム倍率の大小は、照準時の集中度合いの大小とみなすことができる。従って、動作例2によれば、ユーザが注意する方向と、その注意の程度の両方を考慮した音響効果を実現できる。
【0087】
また、本発明は、トップビュー画面でのズーム倍率に応じて、仮想ゲーム空間VSで生じる音声を再生する場合にも適用できる。つまり、仮想カメラが、仮想ゲーム空間VSを空中から俯瞰するように設定され、ゲーム画像としてトップビュー画面がディスプレイ19に表示されている場合、ズーム倍率に応じて、照準方向で生じる音声の音量を変更してもよい。
【0088】
また、動作例1,2では「注目」の一例として「照準」を採用した場合について説明したが、他の例を採用してもよい。例えば、単に仮想ゲーム空間中の任意の対象に焦点を合わせる動作でもよいし、任意の対象を単に拡大表示する動作でもよい。つまり、仮想ゲーム空間中の一部にプレイヤキャラクタが注目する動作であれば、採用可能である。
【0089】
以上では、本発明に係る「第1操作部」としてボリュームスイッチ式の第1操作部251を例示したが、これに限定されない。例えば、キネクト(KINECT)(登録商標)のように、カメラなどで検知したユーザの動きに基づいてゲームを進行させるシステムが知られている。このようなシステムの場合、動作するユーザ自身が「第1操作部」であり、ユーザの動きを検知する手段が本発明に係る「第1操作取得手段」に該当する。