特開2017-221721(P2017-221721A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特開2017-221721痛み測定装置および痛み測定システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-221721(P2017-221721A)
(43)【公開日】2017年12月21日
(54)【発明の名称】痛み測定装置および痛み測定システム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/0484 20060101AFI20171124BHJP
   A61B 5/0476 20060101ALI20171124BHJP
【FI】
   A61B5/04 320M
   A61B5/04 322
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2017-159489(P2017-159489)
(22)【出願日】2017年8月22日
(62)【分割の表示】特願2017-501993(P2017-501993)の分割
【原出願日】2016年1月26日
(31)【優先権主張番号】特願2015-34466(P2015-34466)
(32)【優先日】2015年2月24日
(33)【優先権主張国】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成25年度、独立行政法人科学技術振興機構、A−STEP「誘発脳波に基づく客観的かつ高精度な疼痛の有無と強弱の判別法の開発」に係る委託業務、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
【住所又は居所】大阪府吹田市山田丘1番1号
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100118371
【弁理士】
【氏名又は名称】▲駒▼谷 剛志
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】中江 文
【住所又は居所】大阪府吹田市山田丘1番1号 国立大学法人大阪大学内
【テーマコード(参考)】
4C127
【Fターム(参考)】
4C127AA03
4C127DD03
4C127GG05
4C127GG07
(57)【要約】      (修正有)
【課題】痛み測定装置および痛み測定システムを提供すること。
【解決手段】測定対象(99)が有する痛みを測定する痛み測定装置(10)は、測定対象(99)から申告された痛みレベルと測定対象(99)に与えられた刺激量との関係に基づいて、測定対象(99)において基準となる痛みに対応する基準刺激量を決定する決定部(12)と、測定対象(99)から計測された対象脳波データを、基準刺激量に対応する参照脳波データと比較することにより、対象脳波データが計測されたときに測定対象(99)が有する痛みを測定する測定部(13)と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象が有する痛みを測定する痛み測定装置であって、
前記測定対象から申告された痛みレベルと前記測定対象から計測された脳波の振幅との関係に基づいて、前記測定対象において基準となる痛みに対応する基準刺激量を決定する決定部と、
前記測定対象から計測された対象脳波の振幅を、前記基準刺激量に対応する、前記測定対象の参照脳波の振幅と比較することにより、前記対象脳波の振幅が計測されたときに前記測定対象が有する痛みを測定する測定部と、を備える、
痛み測定装置。
【請求項2】
測定対象が有する痛みを測定する痛み測定装置であって、
前記測定対象から申告された痛みレベルと前記測定対象に与えられた刺激量との関係に基づいて、前記測定対象において基準となる痛みに対応する基準刺激量を決定する決定部と、
前記測定対象から計測された対象脳波データを、前記基準刺激量に対応する、前記測定対象の参照脳波データと比較することにより、前記対象脳波データが計測されたときに前記測定対象が有する痛みを測定する測定部と、を備え、
前記決定部は、前記痛みレベルと前記刺激量との関係が表すシグモイド曲線における特徴点を利用して痛みレベルを標準化する、
痛み測定装置。
【請求項3】
測定対象が有する痛みを測定する痛み測定装置であって、
前記測定対象から申告された痛みレベルと前記測定対象に与えられた刺激量との関係に基づいて、前記測定対象において基準となる痛みに対応する基準刺激量を決定する決定部と、
前記測定対象から計測された対象脳波データを、前記基準刺激量に対応する、前記測定対象の参照脳波データと比較することにより、前記対象脳波データが計測されたときに前記測定対象が有する痛みを測定する測定部と、を備え、
前記決定部は、刺激量の増加にともなって痛みレベルが増加する刺激量の範囲の最小値を、前記基準刺激量と決定する、
痛み測定装置。
【請求項4】
測定対象が有する痛みを測定する痛み測定装置であって、
前記測定対象から申告された痛みレベルと前記測定対象に与えられた刺激量との関係に基づいて、前記測定対象において基準となる痛みに対応する基準刺激量を決定する決定部と、
前記測定対象から計測された対象脳波データを、前記基準刺激量に対応する、前記測定対象の参照脳波データと比較することにより、前記対象脳波データが計測されたときに前記測定対象が有する痛みを測定する測定部と、を備え、
前記決定部は、刺激量の増加にともなって痛みレベルが増加する刺激量の範囲の最大値を、前記基準刺激量と決定する、
痛み測定装置。
【請求項5】
測定対象が有する痛みを測定する痛み測定装置であって、
前記測定対象から申告された痛みレベルと前記測定対象から計測された脳波の振幅との関係に基づいて、前記測定対象において基準となる痛みに対応する基準刺激量を決定する決定部と、
前記測定対象から計測された対象脳波の振幅を、前記基準刺激量に対応する、前記測定対象の参照脳波の振幅と比較することにより、前記対象脳波の振幅が計測されたときに前記測定対象が有する痛みを測定する測定部と、を備え、
刺激量の増加にともなって痛みレベルが増加する刺激量の範囲の最小値、中央値および最大値を前記基準刺激量として用いて、痛みレベルを、前記刺激量が前記最小値より低い場合には「無」、前記刺激量が前記最小値より高く前記中央値より低い場合には「低レベル」、前記刺激量が前記中央値より高く前記最大値より低い場合には「中レベル」、または前記刺激量が前記最大値より高い場合には「高レベル」と判別する、
痛み測定装置。
【請求項6】
測定対象が有する痛みを測定する痛み測定装置であって、
前記測定対象から申告された痛みレベルと前記測定対象に与えられた刺激量との関係に基づいて、前記測定対象において基準となる痛みに対応する基準刺激量を決定する決定部と、
前記測定対象から計測された対象脳波データを、前記基準刺激量に対応する、前記測定対象の参照脳波データと比較することにより、前記対象脳波データが計測されたときに前記測定対象が有する痛みを測定する測定部と、を備え、
前記決定部は、刺激量の増加にともなって痛みレベルが増加する刺激量の範囲の最小値を、前記基準刺激量と決定し、前記痛みレベルと前記刺激量との関係が表すシグモイド曲線における特徴点を利用して痛みレベルを標準化する、
痛み測定装置。
【請求項7】
測定対象が有する痛みを測定する痛み測定装置であって、
前記測定対象から申告された痛みレベル前記測定対象に与えられた刺激量との関係に基づいて、前記測定対象において基準となる痛みに対応する基準刺激量を決定する決定部と、
前記測定対象から計測された対象脳波データを、前記基準刺激量に対応する、前記測定対象の参照脳波データと比較することにより、前記対象脳波データが計測されたときに前記測定対象が有する痛みを測定する測定部と、を備え、
前記決定部は、刺激量の増加にともなって痛みレベルが増加する刺激量の範囲の最大値を、前記基準刺激量と決定し、前記痛みレベルと前記刺激量との関係が表すシグモイド曲線における特徴点を利用して痛みレベルを標準化する、
痛み測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定対象の脳波データに基づいて、当該測定対象が有する痛みを測定する痛み測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
痛みは、本質的には主観的なものであるが、治療を行う上では客観的に評価されることが望まれる。痛みが過小評価されることにより、患者が不利益を被る場面が多くみられる。そこで、従来、痛みを客観的に測定するための方法が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2010−523226号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の技術では、測定対象の個体差によって痛みを正確に測定できない場合がある。
【0005】
そこで、本発明は、測定対象が有する痛みを客観的かつ高精度に測定することができる痛み測定装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る痛み測定装置は、測定対象が有する痛みを測定する痛み測定装置であって、前記測定対象から申告された痛みレベルと前記測定対象に与えられた刺激量との関係に基づいて、前記測定対象において基準となる痛みに対応する基準刺激量を決定する決定部と、前記測定対象から計測された対象脳波データを、前記基準刺激量に対応する、前記測定対象の参照脳波データと比較することにより、前記対象脳波データが計測されたときに前記測定対象が有する痛みを測定する測定部と、を備える。
【0007】
この構成によれば、測定対象から申告された痛みレベルと測定対象に与えられた刺激量との関係に基づいて、測定対象において基準となる痛みに対応する基準刺激量を決定することができる。そして、基準刺激量に対応する、測定対象の参照脳波データを用いて、痛みを測定することができる。したがって、測定対象の個性に適した参照脳波データを用いて、基準となる痛みに対する測定対象の相対的な痛みを測定することができる。その結果、測定対象が有する痛みを客観的かつ高精度に測定することができる。
【0008】
例えば、前記決定部は、前記痛みレベルと前記刺激量との関係において刺激量の増加に対する痛みレベルの増加率が所定の閾値率を超える刺激量の範囲の代表値を、前記基準刺激量と決定してもよい。
【0009】
この構成によれば、刺激量の増加に対する痛みレベルの増加率が所定の閾値率を超える刺激量の範囲の代表値を基準刺激量と決定することができる。したがって、シグモイド曲線で表される、痛みレベルと刺激量との関係を利用して、基準となる痛みの標準化を図ることができる。その結果、より客観的に痛みを測定することが可能となる。
【0010】
例えば、前記代表値は、最小値、中央値および最大値のうちの少なくとも1つであってもよい。
【0011】
この構成によれば、代表値として、最小値、中央値および最大値のうちの少なくとも1つを用いることができる。
【0012】
例えば、前記測定部は、前記対象脳波データおよび前記参照脳波データの各々から少なくとも1つの特徴量を算出し、前記対象脳波データから算出された少なくとも1つの特徴量と、前記参照脳波データから算出された少なくとも1つの特徴量との比較結果に基づいて、前記測定対象が有する痛みを測定してもよい。
【0013】
この構成によれば、対象脳波データから算出された特徴量と、参照脳波データから算出された特徴量との比較結果に基づいて、測定対象が有する痛みを測定することができる。したがって、対象脳波データと参照脳波データとの比較をより効果的に行うことができる。
【0014】
例えば、前記少なくとも1つの特徴量は、刺激によって誘発された脳波波形の振幅を表す第1の特徴量を含んでもよい。
【0015】
この構成によれば、脳波波形の振幅を表す第1の特徴量を用いて、対象脳波データと参照脳波データとの比較を行うことができる。振幅は、痛みレベルに依存するので、脳波データの比較をより効果的に行うことができ、より高精度に痛みを測定することができる。
【0016】
例えば、前記測定部は、前記参照脳波データから算出された第1の特徴量に対する前記対象脳波データから算出された第1の特徴量の相対的な大きさを示す第1の評価値が第1の閾値よりも大きい場合に、前記測定対象が前記基準となる痛みより大きな痛みを有すると判定してもよい。
【0017】
この構成によれば、第1の評価値が第1の閾値よりも大きい場合に、測定対象が基準となる痛みより大きな痛みを有すると判定することができる。したがって、痛みが大きいほど振幅は大きくなるという特徴を利用して、より高精度に痛みを測定することができる。
【0018】
例えば、前記少なくとも1つの特徴量は、刺激によって誘発された脳波波形における潜時を表す第2の特徴量を含んでもよい。
【0019】
この構成によれば、脳波波形における潜時を表す第2の特徴量を用いて、対象脳波データと参照脳波データとの比較を行うことができる。潜時は、痛みレベルに依存するので、脳波データの比較をより効果的に行うことができ、より高精度に痛みを測定することができる。
【0020】
例えば、前記測定部は、前記参照脳波データから算出された第2の特徴量に対する前記対象脳波データから算出された第2の特徴量の相対的な大きさを示す第2の評価値が第2の閾値よりも小さい場合に、前記測定対象が前記基準となる痛みより大きな痛みを有すると判定してもよい。
【0021】
この構成によれば、第2の評価値が第2の閾値よりも大きい場合に、測定対象が基準となる痛みより大きな痛みを有すると判定することができる。したがって、痛みが大きいほど潜時が小さくなるという特徴を利用して、より高精度に痛みを測定することができる。
【0022】
例えば、前記痛み測定装置は、さらに、前記測定対象に複数の第1刺激量の刺激が個別に与えられたときに前記測定対象から申告された第1痛みレベルおよび前記測定対象から計測された第1脳波データに基づいて、前記複数の第1刺激量とは異なる第2刺激量の刺激が前記測定対象に与えられたときに前記測定対象から申告される第2痛みレベルおよび前記測定対象から計測される第2脳波データを推定する推定部を備え、前記決定部は、前記第1痛みレベルおよび前記第2痛みレベルと前記第1刺激量および前記第2刺激量との関係に基づいて、前記基準刺激量を決定してもよい。
【0023】
この構成によれば、測定対象に実際には与えられていない刺激量に対応する痛みレベルおよび脳波データを推定することができる。したがって、測定対象に刺激が与えられる回数を削減すること、および、刺激によって測定対象に生じる痛みを抑制することができる。特に、大きな刺激量に対応する痛みレベルおよび脳波データが推定されることにより、大きな刺激によって測定対象に生じる大きな痛みを回避することができる。
【0024】
また、本発明の一態様に係る痛み測定システムは、測定対象が有する痛みを測定する痛み測定装置と、前記測定対象に複数の刺激量の刺激を個別に与える刺激装置と、(i)前記測定対象に前記複数の刺激量の刺激が与えられたときに前記測定対象の脳波データをそれぞれ計測し、(ii)前記測定対象の痛みの測定に用いる対象脳波データを計測する脳波計と、を備え、前記痛み測定装置は、前記測定対象に前記複数の刺激量の刺激が個別に与えられたときに計測された脳波データを、刺激量および前記測定対象から申告された痛みレベルとともに格納する記憶部と、前記測定対象から申告された痛みレベルと前記測定対象に与えられた刺激量との関係に基づいて、前記測定対象において基準となる痛みに対応する基準刺激量を決定する決定部と、前記測定対象から計測された対象脳波データを、前記基準刺激量に対応する参照脳波データと比較することにより、前記対象脳波データが計測されたときに前記測定対象が有する痛みを測定する測定部と、を備える。
【0025】
この構成によれば、上記痛み測定装置と同様の効果を奏することができる。
【0026】
なお、これらの包括的または具体的な態様は、方法、集積回路、コンピュータプログラムまたはコンピュータ読み取り可能なCD−ROMなどの記録媒体で実現されてもよく、方法、集積回路、コンピュータプログラムおよび記録媒体の任意な組み合わせで実現されてもよい。
【発明の効果】
【0027】
本発明の一態様によれば、測定対象が有する痛みを客観的に測定することができ、かつ、測定精度を向上させることができる。
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
測定対象が有する痛みを測定する痛み測定装置であって、
前記測定対象から申告された痛みレベルと前記測定対象に与えられた刺激量との関係に基づいて、前記測定対象において基準となる痛みに対応する基準刺激量を決定する決定部と、
前記測定対象から計測された対象脳波データを、前記基準刺激量に対応する、前記測定対象の参照脳波データと比較することにより、前記対象脳波データが計測されたときに前記測定対象が有する痛みを測定する測定部と、を備える、
痛み測定装置。
(項目2)
前記決定部は、前記痛みレベルと前記刺激量との関係において刺激量の増加に対する痛みレベルの増加率が所定の閾値率を超える刺激量の範囲の代表値を、前記基準刺激量と決定する、
項目1に記載の痛み測定装置。
(項目3)
前記代表値は、最小値、中央値および最大値のうちの少なくとも1つである、
項目2に記載の痛み測定装置。
(項目4)
前記測定部は、
前記対象脳波データおよび前記参照脳波データの各々から少なくとも1つの特徴量を算出し、
前記対象脳波データから算出された少なくとも1つの特徴量と、前記参照脳波データから算出された少なくとも1つの特徴量との比較結果に基づいて、前記測定対象が有する痛みを測定する、
項目1〜3のいずれか1項に記載の痛み測定装置。
(項目5)
前記少なくとも1つの特徴量は、刺激によって誘発された脳波波形の振幅を表す第1の特徴量を含む、
項目4に記載の痛み測定装置。
(項目6)
前記測定部は、
前記参照脳波データから算出された第1の特徴量に対する前記対象脳波データから算出された第1の特徴量の相対的な大きさを示す第1の評価値が第1の閾値よりも大きい場合に、前記測定対象が前記基準となる痛みより大きな痛みを有すると判定する、
項目5に記載の痛み測定装置。
(項目7)
前記少なくとも1つの特徴量は、刺激によって誘発された脳波波形における潜時を表す第2の特徴量を含む、
項目4〜6のいずれか1項に記載の痛み測定装置。
(項目8)
前記測定部は、
前記参照脳波データから算出された第2の特徴量に対する前記対象脳波データから算出された第2の特徴量の相対的な大きさを示す第2の評価値が第2の閾値よりも小さい場合に、前記測定対象が前記基準となる痛みより大きな痛みを有すると判定する、
項目7に記載の痛み測定装置。
(項目9)
前記痛み測定装置は、さらに、
前記測定対象に複数の第1刺激量の刺激が個別に与えられたときに前記測定対象から申告された第1痛みレベルおよび前記測定対象から計測された第1脳波データに基づいて、前記複数の第1刺激量とは異なる第2刺激量の刺激が前記測定対象に与えられたときに前記測定対象から申告される第2痛みレベルおよび前記測定対象から計測される第2脳波データを推定する推定部を備え、
前記決定部は、前記第1痛みレベルおよび前記第2痛みレベルと前記第1刺激量および前記第2刺激量との関係に基づいて、前記基準刺激量を決定する、
項目1〜8のいずれか1項に記載の痛み測定装置。
(項目10)
測定対象が有する痛みを測定する痛み測定装置と、
前記測定対象に複数の刺激量の刺激を個別に与える刺激装置と、
(i)前記測定対象に前記複数の刺激量の刺激が与えられたときに前記測定対象の脳波データをそれぞれ計測し、(ii)前記測定対象の痛みの測定に用いる対象脳波データを計測する脳波計と、を備え、
前記痛み測定装置は、
前記測定対象に前記複数の刺激量の刺激が個別に与えられたときに計測された脳波データを、刺激量および前記測定対象から申告された痛みレベルとともに格納する記憶部と、
前記測定対象から申告された痛みレベルと前記測定対象に与えられた刺激量との関係に基づいて、前記測定対象において基準となる痛みに対応する基準刺激量を決定する決定部と、
前記測定対象から計測された対象脳波データを、前記基準刺激量に対応する参照脳波データと比較することにより、前記対象脳波データが計測されたときに前記測定対象が有する痛みを測定する測定部と、を備える、
痛み測定システム。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1図1は、実施の形態1における痛み測定システムの構成を示すブロック図である。
図2図2は、実施の形態1における脳波データおよび痛みレベルの収集処理を示すフローチャートである。
図3図3は、実施の形態1における痛みの測定処理を示すフローチャートである。
図4図4は、実施の形態1における痛みレベルと刺激量との関係の一例を示す図である。
図5図5は、実施の形態1における脳波波形の一例を示す図である。
図6図6は、実施の形態2における痛み測定システムの構成を示すブロック図である。
図7図7は、実施の形態2における痛みの測定処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、実施の形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0030】
なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的または具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置および接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、請求の範囲を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0031】
(実施の形態1)
[痛み測定システムの構成]
図1は、実施の形態1における痛み測定システムの構成を示すブロック図である。痛み測定システムは、痛み測定装置10と、刺激装置20と、脳波計30と、を備える。
【0032】
痛み測定装置10は、測定対象99が有する痛みを測定する。測定対象とは、痛みによって脳波に変化が生じる生体であり、人に限定される必要はない。
【0033】
刺激装置20は、複数の刺激量の刺激を個別に測定対象99に与える。具体的には、刺激装置20は、例えば、刺激量を変えながら複数の刺激を順に測定対象99に与える。
【0034】
ここで、刺激とは、測定対象99に様々なレベルの痛みを生じさせるために測定対象99の外部から測定対象99に与えられるものである。具体的には、刺激は、例えば電気刺激および熱刺激である。
【0035】
測定対象99は、刺激装置20によって与えられた刺激によって生じた痛みの大きさを示す痛みレベルを主観的に申告する。例えば、測定対象99は、刺激が与えられたときに、視覚的評価スケール(VAS:Visual Analog Scale)により痛みレベルを申告する。VASとは、現在の痛みレベルが、0〜100までの痛みレベルを表す10cmの直線上のどの位置にあるかを指し示すことにより、痛みレベルを申告する方法である。
【0036】
脳波計30は、測定対象99の脳内で発生する電気活動を頭皮上の電極で計測する。そして、脳波計30は、計測結果である脳波データを出力する。具体的には、脳波計30は、刺激装置20によって測定対象99に複数の刺激量の刺激が与えられたときに脳波データをそれぞれ計測する。さらに、脳波計30は、測定対象99の痛みの測定に用いる対象脳波データを計測する。
【0037】
刺激装置20によって測定対象99に与えられた刺激の刺激量と、測定対象99から申告された痛みレベルと、脳波計30から出力される脳波データとは、痛み測定装置10に入力され、参照脳波データの取得のために用いられる。
【0038】
[痛み測定装置の機能構成]
次に、痛み測定装置10の詳細な構成について説明する。図1に示すように、痛み測定装置10は、記憶部11と、決定部12と、測定部13と、を備える。
【0039】
記憶部11は、例えば、ハードディスクあるいは半導体メモリである。記憶部11は、刺激装置20によって測定対象99に与えられた刺激の刺激量と、測定対象99から申告された痛みレベルと、脳波計30から出力される脳波データとを記憶している。
【0040】
決定部12は、例えば、プロセッサおよびメモリによって実現される。決定部12は、測定対象99から申告された痛みレベルと測定対象99に与えられた刺激量との関係に基づいて、測定対象99において基準となる痛みに対応する基準刺激量を決定する。例えば、決定部12は、測定対象99から申告された痛みレベルと測定対象99に与えられた刺激量との関係において刺激量の増加によって痛みレベルが増加する範囲の代表値(例えば、最小値、中央値および最大値など)を基準刺激量と決定する。この基準刺激量の決定の詳細については後述する。
【0041】
測定部13は、測定対象99から計測された対象脳波データを参照脳波データと比較することにより、対象脳波データが計測されたときに測定対象99が有する痛みを測定する。対象脳波データとは、測定対象99が有する痛みを測定するために測定対象99から計測された脳波データである。また、参照脳波データとは、対象脳波データから痛みを測定するために参照される脳波データであり、本実施の形態では、基準刺激量の刺激が測定対象99に与えられたときに測定対象99から計測された脳波データである。
【0042】
対象脳波データと参照脳波データとの比較には、例えば、対象脳波データおよび参照脳波データの各々から算出された少なくとも1つの特徴量が用いられる。この対象脳波データと参照脳波データとの比較による痛みの測定の詳細については後述する。
【0043】
[痛み測定システムの動作]
次に、以上のように構成された痛み測定システムの動作について説明する。
【0044】
まず、脳波データおよび痛みレベルの収集処理について図2を用いて説明する。図2は、実施の形態1における脳波データおよび痛みレベルの収集処理を示すフローチャートである。
【0045】
刺激装置20において複数の刺激量の中から未選択の1つの刺激量が選択される(S11)。例えば、20μA、40μA、60μA、80μAおよび100μAの電気刺激量の中から未選択の1つの刺激量が選択される。
【0046】
次に、刺激装置20は、選択された刺激量の刺激を測定対象99に与える(S12)。ステップS12において刺激が与えられたときに、脳波計30は、測定対象99から脳波データを計測する(S13)。さらに、ステップS12において与えられた刺激に対して測定対象99から申告された痛みレベルが取得される(S14)。
【0047】
ステップS11において選択された刺激量、ステップS13において計測された脳波データ、および、ステップS14で取得された痛みレベルが記憶部11に格納される(S15)。
【0048】
複数の刺激量のすべてがすでに選択された場合(S16のYes)、処理を終了する。一方、複数の刺激量のいずれかがまだ選択されていない場合(S16のNo)、ステップS11に戻る。
【0049】
以上のように、複数の刺激量の刺激が測定対象99に順に与えられ、各刺激量に対応する脳波データおよび痛みレベルが記憶部11に格納される。
【0050】
次に、痛みの測定処理について図3図5を用いて説明する。図3は、実施の形態1における痛みの測定処理を示すフローチャートである。図4は、実施の形態1における痛みレベルと刺激量との関係の一例を示す図である。図5は、実施の形態1における脳波波形の一例を示す図である。
【0051】
決定部12は、測定対象99から申告された痛みレベルと測定対象99に与えられた刺激量との関係に基づいて、測定対象99において基準となる痛みに対応する基準刺激量を決定する(S21)。
【0052】
図4に示すように、痛みレベルと刺激量との関係は、シグモイド(S字)曲線によって表される。ただし、シグモイド曲線の形状(例えば、最大値および最小値など)は、測定対象によって異なる。そこで、本実施の形態では、シグモイド曲線における特徴点(例えば変曲点など)を利用して痛みレベルを標準化する。具体的には、決定部12は、痛みレベルと刺激量との関係において刺激量の増加にともなって痛みレベルが増加する刺激量の範囲の代表値(例えば、最小値、中央値および最大値など)を基準刺激量と決定する。
【0053】
刺激量の増加にともなって痛みレベルが増加する刺激量の範囲は、刺激量の増加に対する痛みレベルの増加率と所定の閾値率との比較によって定められる。つまり、刺激量の増加にともなって痛みレベルが増加する刺激量の範囲は、刺激量の増加に対する痛みレベルの増加率が所定の閾値率を超える範囲である。所定の閾値率は、実験的あるいは経験的に定められればよい。
【0054】
刺激量の増加にともなって痛みレベルが増加する刺激量の範囲の最小値は、痛みレベルの増加が開始する刺激量に相当する。すなわち、当該範囲の最小値は、刺激量が減少しても痛みレベルがそれ以上減少しない刺激量のうちの最大の刺激量である。
【0055】
刺激量の増加にともなって痛みレベルが増加する刺激量の範囲の最大値は、痛みレベルの増加が終了する刺激量に相当する。すなわち、当該範囲の最大値は、刺激量が増加しても痛みレベルがそれ以上増加しない刺激量のうちの最小の刺激量である。
【0056】
図4では、範囲101において、刺激量の増加にともなって痛みレベルが増加している。そこで、決定部12は、例えば、範囲101の最小値(60μA)を基準刺激量と決定する。また例えば、決定部12は、範囲101の中央値(70μA)を基準刺激量と決定してもよい。また例えば、決定部12は、範囲101の最大値(80μA)を基準刺激量と決定してもよい。また例えば、決定部12は、範囲101の最小値、中央値、および最大値のすべてまたは任意の2つを基準刺激量と決定してもよい。
【0057】
次に、測定部13は、記憶部11から参照脳波データを取得する(S22)。つまり、測定部13は、基準刺激量の刺激が測定対象99に与えられたときに測定対象99から計測された脳波データを参照脳波データとして記憶部11から取得する。
【0058】
続いて、測定部13は、参照脳波データから参照特徴量を算出する(S23)。具体的には、測定部13は、参照脳波データから、第1の特徴量および第2の特徴量を含む参照特徴量を算出する。
【0059】
本実施の形態では、第1の特徴量は、刺激によって誘発された脳波波形の振幅を表す。具体的には、第1の特徴量は、例えば、最大ピーク値と最小ピーク値との差分値(つまり、ピークピーク値(peak−to−peak value))である。例えば図5では、測定部13は、3つの差分値(N1−P1、N2−P2、N1−P2)のうち最大の差分値(N1−P1)を第1の特徴量として算出する。
【0060】
また本実施の形態では、第2の特徴量は、刺激によって誘発された脳波波形における潜時を表す。潜時とは、刺激が与えられてから反応のおこるまでの時間である。具体的には、第2の特徴量は、例えば、刺激が与えられてから当該刺激によって誘発された脳波波形の最初のピークまでの時間である。例えば図5では、測定部13は、刺激が与えられた時刻T0から最初のピークが現れる時刻T1までの時間(T1−T0)を第2の特徴量として算出する。
【0061】
次に、測定部13は、対象脳波データを取得する(S24)。つまり、測定部13は、測定対象99が有する痛みを測定するために測定対象99から計測された脳波データを対象脳波データとして取得する。
【0062】
続いて、測定部13は、対象脳波データから対象特徴量を算出する(S25)。具体的には、測定部13は、ステップS23と同様に、対象脳波データから第1の特徴量および第2の特徴量を含む対象特徴量を算出する。
【0063】
それから、測定部13は、対象特徴量を参照特徴量と比較する(S26)。具体的には、測定部13は、対象特徴量に含まれる第1の特徴量を、参照特徴量に含まれる第1の特徴量と比較する。本実施の形態では、測定部13は、参照特徴量に含まれる第1の特徴量に対する、対象特徴量に含まれる第1の特徴量の相対的な大きさを示す第1の評価値を、第1の特徴量の比較結果として算出する。第1の評価値は、例えば、以下の式(1)を用いて算出される。
【0064】
E1=100×(Ax−Ar)/Ar・・・(1)
【0065】
ここで、E1は、第1の評価値を表す。また、Axは、対象特徴量に含まれる第1の特徴量を表す。また、Arは、参照特徴量に含まれる第1の特徴量を表す。
【0066】
さらに、測定部13は、対象特徴量に含まれる第2の特徴量を、参照特徴量に含まれる第2の特徴量と比較する。本実施の形態では、測定部13は、参照特徴量に含まれる第2の特徴量に対する、対象特徴量に含まれる第2の特徴量の相対的な大きさを示す第2の評価値を、第2の特徴量の比較結果として算出する。第2の評価値は、例えば、以下の式(2)を用いて算出される。
【0067】
E2=Bx−Br・・・(2)
【0068】
ここで、E2は、第2の評価値を表す。また、Bxは、対象特徴量に含まれる第2の特徴量を表す。また、Brは、参照特徴量に含まれる第2の特徴量を表す。
【0069】
このように、測定部13は、対象特徴量と参照特徴量の比較結果として、第1の評価値および第2の評価値を算出する。
【0070】
次に、測定部13は、対象特徴量と参照特徴量との比較結果に基づいて、測定対象99が有する痛みを測定する(S27)。本実施の形態では、測定部13は、第1の評価値および第2の評価値が予め定められた条件を満たす場合に、測定対象99が基準刺激量に対応する痛みより大きな痛みを有すると判定する。
【0071】
具体的には、測定部13は、例えば、第1の評価値が第1の閾値よりも大きく、かつ、第2の評価値が第2の閾値よりも小さい場合に、測定対象99が基準刺激量に対応する痛みより大きな痛みを有すると判定する。この場合、予め定められた条件は、以下の(3)で表される。
【0072】
E1>Th1、かつ、E2<Th2・・・(3)
【0073】
ここで、Th1は、第1の閾値である。また、Th2は、第2の閾値である。
【0074】
例えば、基準刺激量として範囲101の最小値が用いられた場合、測定部13は、条件(3)が満たされれば「痛み有り」と判定し、条件(3)が満たされなければ「痛み無し」と判定する。また、基準刺激量として範囲101の中央値が用いられた場合、測定部13は、条件(3)が満たされれば「中レベル以上の痛み有り」と判定し、条件(3)が満たされなければ「痛み無し」または「低レベルの痛み有り」と判定する。また、基準刺激量として範囲101の最大値が用いられた場合、測定部13は、条件(3)が満たされれば「高レベルの痛み有り」と判定し、条件(3)が満たされなければ「痛み無し」または「中レベル以下の痛み有り」と判定する。測定部13は、これらの3つの基準刺激量を組み合わせて用いることにより、測定対象99が有する痛みの程度を、「無」、「低レベル」、「中レベル」、および「高レベル」の4つのいずれかに判別することができる。
【0075】
[効果]
以上のように、本実施の形態に係る痛み測定装置10によれば、決定部12は、測定対象99から申告された痛みレベルと測定対象99に与えられた刺激量との関係に基づいて、測定対象99において基準となる痛みに対応する基準刺激量を決定することができる。そして、測定部13は、基準刺激量に対応する、測定対象99の参照脳波データを用いて、痛みを測定することができる。したがって、痛み測定装置10は、測定対象99の個性に適した参照脳波データを用いて、基準となる痛みに対する測定対象99の相対的な痛みを測定することができる。その結果、痛み測定装置10は、測定対象99が有する痛みを客観的かつ高精度に測定することができる。
【0076】
また、本実施の形態に係る痛み測定装置10によれば、決定部12は、刺激量の増加にともなって痛みレベルが増加する刺激量の範囲の代表値を基準刺激量と決定することができる。したがって、決定部12は、シグモイド曲線で表される、痛みレベルと複数の刺激量との関係を利用して、基準となる痛みの標準化を図ることができる。その結果、痛み測定装置10は、より客観的に痛みを測定することが可能となる。
【0077】
また、本実施の形態に係る痛み測定装置10によれば、測定部13は、対象脳波データから算出された特徴量と、参照脳波データから算出された特徴量との比較結果に基づいて、測定対象が有する痛みを測定することができる。したがって、測定部13は、対象脳波データと参照脳波データとの比較をより効果的に行うことができる。
【0078】
また、本実施の形態に係る痛み測定装置10によれば、測定部13は、脳波波形の振幅を表す第1の特徴量を用いて、対象脳波データと参照脳波データとの比較を行うことができる。振幅は、痛みレベルに依存するので、測定部13は、脳波データの比較をより効果的に行うことができ、より高精度に痛みを測定することができる。
【0079】
また、本実施の形態に係る痛み測定装置10によれば、測定部13は、第1の評価値が第1の閾値よりも大きい場合に、測定対象が基準となる痛みより大きな痛みを有すると判定することができる。したがって、測定部13は、痛みが大きいほど振幅は大きくなるという特徴を利用して、より高精度に痛みを測定することができる。
【0080】
発明者が実際に15名の被験者に対して第1の閾値として「10」を用いて実験を行った結果、11名の被験者で正確に痛みの有無を判別することができた。
【0081】
また、本実施の形態に係る痛み測定装置10によれば、測定部13は、脳波波形における潜時を表す第2の特徴量を用いて、対象脳波データと参照脳波データとの比較を行うことができる。潜時は、痛みレベルに依存するので、測定部13は、脳波データの比較をより効果的に行うことができ、より高精度に痛みを測定することができる。
【0082】
また、本実施の形態に係る痛み測定装置10によれば、測定部13は、第2の評価値が第2の閾値よりも大きい場合に、測定対象が基準となる痛みより大きな痛みを有すると判定することができる。したがって、測定部13は、痛みが大きいほど潜時が小さくなるという特徴を利用して、より高精度に痛みを測定することができる。
【0083】
発明者が実際に15名の被験者に対して第2の閾値として「0」を用いて実験を行った結果、7名の被験者で痛みの有無を正確に判別することができた。
【0084】
また、発明者が実際に15名の被験者に対して第1の閾値として「10」を用い、かつ、第2の閾値として「0」を用いて実験を行った結果、12名の被験者で痛みの有無を正確に判別することができた。
【0085】
(実施の形態2)
次に、実施の形態2について説明する。本実施の形態では、測定対象に実際には与えられていない刺激量に対応する痛みレベルおよび脳波データを推定し、推定結果を用いて基準刺激量を決定する点が上記実施の形態1と異なる。以下に、上記実施の形態1と異なる点を中心に本実施の形態について説明する。
【0086】
[痛み測定システムの構成]
図6は、実施の形態2における痛み測定システムの構成を示すブロック図である。図6において、図1と実質的に同一の構成要素については、同一の符号を付し、適宜説明を省略する。本実施の形態に係る痛み測定システムは、痛み測定装置10Aと、刺激装置20と、脳波計30と、を備える。
【0087】
痛み測定装置10Aは、測定対象99が有する痛みを測定する。痛み測定装置10Aは、記憶部11と、決定部12と、測定部13と、推定部14Aと、を備える。
【0088】
推定部14Aは、実際に測定対象99から申告された痛みレベルおよび測定対象99から測定された脳波データに基づいて、実際には測定対象99に与えられていない刺激量に対応する痛みレベルおよび脳波データを推定する。つまり、推定部14Aは、測定対象99に複数の第1刺激量の刺激が個別に与えられたときに測定対象99から申告された第1痛みレベルおよび測定対象99から計測された第1脳波データに基づいて、複数の第1刺激量とは異なる第2刺激量の刺激が測定対象99に与えられたときに測定対象99から申告される第2痛みレベルおよび測定対象99から計測される第2脳波データを推定する。ここでは、推定された痛みレベルおよび脳波データは、刺激量とともに記憶部11に格納される。推定部14Aにより推定される脳波データは、脳波波形である必要はなく、脳波の特徴量(例えば振幅、潜時など)であってもよい。
【0089】
なお、推定部14Aによる痛みレベル及び脳波データの推定方法は、どのような方法であってもよく、特に限定される必要はない。例えば、推定方法として、回帰分析あるいは機械学習が用いられてもよい。例えば、推定部14Aは、測定対象99に複数の刺激量の刺激が個別に与えられたときに測定対象99から申告された痛みレベルおよび測定対象99から計測された脳波データを回帰分析することにより、実際には測定対象99に与えられていない刺激量の刺激が測定対象99に与えられたと仮定したときの痛みレベルおよび脳波データを推定してもよい。また例えば、推定部14Aは、測定対象99とは異なる生体に刺激を与えることで得られた痛みレベルおよび脳波データを訓練データとして用いた機械学習によって構築されたモデルを用いて、実際には測定対象99に与えられていない刺激量に対する痛みレベルおよび脳波データを推定してもよい。
【0090】
[痛み測定システムの動作]
次に、以上のように構成された痛み測定システムの動作について説明する。脳波データおよび痛みレベルの収集処理については、与えられる刺激の数を除いて、実施の形態1と実質的に同一であるので、図示を省略する。
【0091】
本実施の形態では、測定対象99に与えられる刺激によって生じる痛みを抑制するために、測定対象99には、小さな刺激量の刺激のみが与えられる。例えば、刺激装置20は、70μA以下の電気刺激を測定対象99に与える。その結果、70μA以下の電気刺激が個別に与えられたときに測定対象99から申告された痛みレベルと測定対象99から計測された脳波データとが刺激量ととともに記憶部11に格納される。
【0092】
図7は、実施の形態2における痛みの測定処理を示すフローチャートである。図7において、図4と実質的に同一の処理については、同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0093】
本実施の形態では、基準刺激量を決定する前に、実際には測定対象99に与えられていない刺激量に対する痛みレベルおよび脳波データを推定する(S20A)。具体的には、推定部14Aは、ステップS15において記憶部11に格納された痛みレベル(つまり、第1痛みレベル)および脳波データ(つまり、第1脳波データ)に基づいて、未知の刺激量の刺激が測定対象99に与えられたときに測定対象99から申告される痛みレベル(つまり、第2痛みレベル)および測定対象99から計測される脳波データ(つまり、第2脳波データ)を推定する。
【0094】
例えば、推定部14Aは、70μA以下の電気刺激が測定対象99に実際に与えられたときに測定対象99から申告された痛みレベルと電気刺激の刺激量との関係を用いて、70μAより大きい電気刺激が測定対象99に与えられたときに測定対象99から申告される痛みレベルと測定対象99から測定される脳波データとを推定する。なお、実際に与えられる電気刺激の大きさと痛みレベル等が推定される電気刺激の大きさとの関係は、これに限定されない。例えば、70μAより大きい電気刺激が実際に測定対象99に与えられ、70μA以下の電気刺激に対応する痛みレベル等が推定されてもよい。また例えば、60μA〜80μAの電気刺激が実際に測定対象99に与えられ、60μA未満および80μAより大きい電気刺激に対応する痛みレベル等が推定されてもよい。
【0095】
続いて、決定部12は、記憶部11に格納されている刺激量と痛みレベルとの関係に基づいて、測定対象99において基準となる痛みに対応する基準刺激量を決定する(S21A)。つまり、決定部12は、実際に申告された痛みレベルと推定された痛みレベルとの両方を用いて基準刺激量を決定する。
【0096】
[効果]
以上のように、本実施の形態に係る痛み測定装置10Aによれば、推定部14Aは、測定対象99に実際には与えられていない刺激量に対応する痛みレベルおよび脳波データを推定することができる。したがって、痛み測定システムは、測定対象99に刺激が与えられる回数を削減すること、および、刺激によって測定対象99に生じる痛みを抑制することができる。特に、大きな刺激量に対応する痛みレベルおよび脳波データが推定されることにより、大きな刺激によって測定対象99に生じる大きな痛みを回避することができる。
【0097】
(他の実施の形態)
以上、本発明の1つまたは複数の態様に係る痛み測定装置について、実施の形態に基づいて説明したが、本発明は、この実施の形態に限定されるものではない。本発明の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を本実施の形態に施したものも、本発明の1つまたは複数の態様の範囲内に含まれてもよい。
【0098】
例えば、上記各実施の形態における記憶部11は、痛み測定装置10、10Aに含まれなくてもよい。この場合、記憶部11は、痛み測定装置10、10Aに通信ネットワークを介して接続された記憶装置であってもよい。
【0099】
また、上記各実施の形態では、VASにより痛みレベルが測定対象から申告される場合について説明したが、必ずしもVASに限定される必要はない。痛みレベルの申告は、測定対象によって明示的に行われなくてもよい。例えば、痛みレベルによって測定対象の行動が変化する場合は、その行動が痛みレベルの申告として取り扱われてもよい。
【0100】
また、上記各実施の形態における基準刺激量は一例であり、これに限定されない。例えば、基準刺激量は、範囲101の最小値と中央値との平均値であってもよい。
【0101】
また、上記各実施の形態では、対象脳波データと参照脳波データとの比較に、第1の特徴量および第2の特徴量が用いられていたが、これらの特徴量は用いられなくてもよい。この場合、例えば、対象脳波データと参照脳波データとの比較は、パターンマッチングによって行われてもよい。また、第1の特徴量および第2の特徴量のうちの一方のみが用いられてもよい。
【0102】
また、上記各実施の形態における第1の特徴量および第2の特徴量は一例であり、これに限定されない。例えば、第1の特徴量は、ピークピーク値ではなく、単なるピーク値であってもよい。
【0103】
また、上記各実施の形態における第1の評価値および第2の評価値は一例であり、これに限定されない。例えば、線形距離またはマハラノビス距離が評価値として用いられてもよい。
【0104】
また、上記各実施の形態における痛み測定装置が備える構成要素の一部または全部は、1個のシステムLSI(Large Scale Integration:大規模集積回路)から構成されているとしてもよい。
【0105】
システムLSIは、複数の構成部を1個のチップ上に集積して製造された超多機能LSIであり、具体的には、マイクロプロセッサ、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などを含んで構成されるコンピュータシステムである。前記ROMには、コンピュータプログラムが記憶されている。前記マイクロプロセッサが、前記コンピュータプログラムに従って動作することにより、システムLSIは、その機能を達成する。
【0106】
なお、ここでは、システムLSIとしたが、集積度の違いにより、IC、LSI、スーパーLSI、ウルトラLSIと呼称されることもある。また、集積回路化の手法はLSIに限るものではなく、専用回路または汎用プロセッサで実現してもよい。LSI製造後に、プログラムすることが可能なFPGA(Field Programmable Gate Array)、あるいはLSI内部の回路セルの接続や設定を再構成可能なリコンフィギュラブル・プロセッサを利用してもよい。
【0107】
さらには、半導体技術の進歩または派生する別技術によりLSIに置き換わる集積回路化の技術が登場すれば、当然、その技術を用いて機能ブロックの集積化を行ってもよい。バイオ技術の適用等が可能性としてありえる。
【0108】
また、本発明の一態様は、このような痛み測定装置だけではなく、痛み測定装置に含まれる特徴的な構成部をステップとする痛み測定方法であってもよい。また、本発明の一態様は、痛み測定方法に含まれる特徴的な各ステップをコンピュータに実行させるコンピュータプログラムであってもよい。また、本発明の一態様は、そのようなコンピュータプログラムが記録された、コンピュータ読み取り可能な非一時的な記録媒体であってもよい。
【0109】
なお、上記各実施の形態において、各構成要素は、専用のハードウェアで構成されるか、各構成要素に適したソフトウェアプログラムを実行することによって実現されてもよい。各構成要素は、CPUまたはプロセッサなどのプログラム実行部が、ハードディスクまたは半導体メモリなどの記録媒体に記録されたソフトウェアプログラムを読み出して実行することによって実現されてもよい。ここで、上記各実施の形態の痛み測定装置などを実現するソフトウェアは、次のようなプログラムである。
【0110】
すなわち、このプログラムは、コンピュータに、測定対象が有する痛みを測定する痛み測定方法であって、前記測定対象から申告された痛みレベルと前記測定対象に与えられた刺激量との関係に基づいて、前記測定対象において基準となる痛みに対応する基準刺激量を決定する決定ステップと、前記測定対象から計測された対象脳波データを、前記基準刺激量に対応する、前記測定対象の参照脳波データと比較することにより、前記対象脳波データが計測されたときに前記測定対象が有する痛みを測定する測定ステップと、を含む痛み測定方法を実行させる。
【産業上の利用可能性】
【0111】
測定対象が有する痛みを測定する痛み測定装置として利用することができる。
【符号の説明】
【0112】
10、10A 痛み測定装置
11 記憶部
12 決定部
13 測定部
14A 推定部
20 刺激装置
30 脳波計
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7