【解決手段】逆浸透膜モジュール4と、原水ラインL1と、透過水ラインL2と、濃縮水ラインL3と、濃縮水W3の一部W31を原水ラインL1の合流部J2に返送する循環水ラインL4と、排水ラインL5と、合流部J2よりも上流側の原水ラインL1に設けられる原水ポンプ12と、濃縮水W3の流量を所定の一定流量値に保持する定流量手段5と、定流量手段5の二次側の圧力を検出二次側圧力値として検出する二次側圧力検出手段PS2と、定流量手段5の一次側の圧力に対応する情報を取得一次側情報として取得する一次側情報取得手段PS3と、差圧演算値を演算し、差圧演算値が所定の設定差圧値以上になるように、原水ポンプ12の駆動を制御する原水圧力制御部10と、を備える。
【背景技術】
【0002】
半導体の製造工程、電子部品や医療器具の洗浄等においては、不純物を含まない高純度の純水が使用される。この種の純水は、一般に、地下水や水道水等の原水を、逆浸透膜モジュール(以下、「RO膜モジュール」ともいう)で逆浸透膜分離処理することにより製造される。
【0003】
高分子材料からなる逆浸透膜の水透過係数は、温度により変化する。また、逆浸透膜の水透過係数は、細孔の閉塞(以下、「膜閉塞」ともいう)や、材質の酸化による劣化(以下、「膜劣化」ともいう)によっても変化する。
【0004】
そこで、原水の温度や逆浸透膜の状態にかかわらず、RO膜モジュールにおける透過水の流量を一定に保つため、流量フィードバック水量制御を行う水質改質システムが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この流量フィードバック水量制御では、RO膜モジュールで製造される透過水の流量が目標流量値となるように、加圧ポンプの駆動周波数がインバータにより制御される。
【0005】
流量フィードバック水量制御を行うシステムにおいては、水温が高い場合には、水の粘性が小さく、RO膜モジュールの水透過係数が高くなるため、加圧ポンプの吐出圧力(加圧ポンプの運転圧力、RO膜モジュールの一次側入口ポートへの入力圧力)が低くなるように制御される。また、水温が低い場合には、水の粘性が大きく、RO膜モジュールの水透過係数が低くなるため、加圧ポンプの吐出圧力(加圧ポンプの運転圧力、RO膜モジュールの一次側入口ポートへの入力圧力)が高くなるように制御される。
【0006】
上記水質改質システムにおいて、RO膜モジュールで分離された濃縮水は、RO膜モジュールの一次側出口ポートに接続された濃縮水ラインから送出される。また、RO膜モジュールで分離された透過水は、RO膜モジュールの二次側ポートに接続された透過水ラインから送出される。濃縮水ラインは、循環水ラインと濃縮水排水ラインとに分岐している。循環水ラインは、濃縮水ラインから送出された濃縮水の一部を、加圧ポンプの上流側における原水ラインの合流部に返送するラインである。濃縮水排水ラインは、濃縮水ラインから送出された濃縮水の残部を装置外に排出するラインである。原水ラインは、加圧ポンプを介してRO膜モジュールに原水を供給するラインである。
【0007】
ここで、特許文献1に記載の濃縮水が流通する流路構成を有する技術において、濃縮水ラインを流れる濃縮水の流量を一定に保つために、濃縮水ラインに定流量弁を設ける技術が知られている(例えば、特許文献2参照)。特許文献2に記載の技術においては、定流量弁を通過した濃縮水の一部は、循環水ラインを流通して、原水ラインの合流部に返送される。
【0008】
特許文献2に記載の濃縮水ラインに定流量弁が設けられる技術においては、定流量弁の二次側の圧力が原水ラインの原水圧力となっている。そのため、原水の原水圧力が高い場合には、濃縮水ラインに設けられる定流量弁の一次側と二次側との圧力差が小さくなり、一次側圧力から二次側圧力を減じた差圧を確保できずに、濃縮水の一部を、循環水ラインを介して原水ラインの合流部に返送できないことになる。
【0009】
これに対して、原水ラインを流通する原水の原水圧力を所定の一定圧力値に減圧する減圧弁を用いて、原水の原水圧力を所定の一定圧力値まで減圧して、定流量弁の二次側の圧力を下げることで、定流量弁の一次側と二次側とにおいて、一次側圧力から二次側圧力を減じた差圧が所定差圧以上になるように調整する技術がある。
【0010】
減圧弁を用いて原水の原水圧力を所定の一定圧力値に減圧する理由は、以下の通りである。原水の温度が高い場合には、原水の温度が低い場合と比べて、水の粘性が小さく、RO膜モジュールの水透過係数が高くなるため、流量フィードバック水量制御を行うシステムにおいては、加圧ポンプの吐出圧力(加圧ポンプの運転圧力、RO膜モジュールの一次側入口ポートへの入力圧力)が低くなるように制御される。このように、原水の温度が高くなるに従って加圧ポンプの吐出圧力が低下するため、定流量弁の一次側と二次側との差圧を十分に得るためには、減圧弁を用いて、加圧ポンプの上流側の原水圧力を所定の一定圧力値に減圧する必要があった。
【0011】
また、原水の温度が低い場合には、原水の温度が高い場合と比べて、水の粘性が大きく、RO膜モジュールの水透過係数が低くなるため、流量フィードバック水量制御を行うシステムにおいては、加圧ポンプの吐出圧力(加圧ポンプの運転圧力、RO膜モジュールの一次側入口ポートへの入力圧力)が高くなるように制御される。一方、原水の水温によらず、減圧弁により減圧される原水の原水圧力は、所定の一定圧力値に調整されている。そのため、原水の温度が低い場合には、原水の温度が高い場合と比べて、定流量弁の一次側の圧力は、定流量弁の二次側の圧力に対して、十分に高くなる。また、定流量弁の二次側の圧力は、原水圧力が減圧されているため、低くなる。これにより、原水の温度が低い場合には、原水の温度が高い場合と比べて、定流量弁の一次側と二次側とにおいて、一次側圧力から二次側圧力を減じた差圧は、所定差圧を大きく超えて余裕をもって確保されることになる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の一実施形態に係る逆浸透膜分離装置1について、図面を参照しながら説明する。
図1は、一実施形態に係る逆浸透膜分離装置1の全体構成図である。本実施形態に係る逆浸透膜分離装置1は、例えば、淡水から純水を製造する純水製造システムに適用される。
【0022】
図1に示すように、本実施形態に係る逆浸透膜分離装置1は、原水ポンプ12と、原水側インバータ13と、加圧ポンプ2と、加圧側インバータ3と、逆浸透膜モジュールとしてのRO膜モジュール4と、定流量手段としての定流量弁5と、逆止弁6と、排水流量調整手段としての排水比例制御弁8(比例制御弁)と、流路切換弁15と、制御部30と、を備える。また、逆浸透膜分離装置1は、二次側圧力検出手段としての二次側圧力センサPS2と、吐出圧力センサPS3と、一次側情報取得手段としての温度センサTE(温度検出手段)と、第1流量検出手段としての第1流量センサFM1と、第2流量検出手段としての第2流量センサFM2と、を備える。なお、制御部30と被制御対象機器との電気的接続線の図示については、省略している。
【0023】
また、逆浸透膜分離装置1は、原水ラインL1と、透過水ラインL2と、濃縮水ラインL3と、循環水ラインL4と、排水ラインL5と、透過水リターンラインL6と、を備える。本明細書における「ライン」とは、流路、経路、管路等の流体の流通が可能なラインの総称である。
【0024】
原水ラインL1は、原水W1をRO膜モジュール4に供給するラインである。原水ラインL1の上流側の端部は、原水W1の供給源(不図示)に接続されている。原水ラインL1の下流側の端部は、RO膜モジュール4の一次側入口ポートに接続されている。原水ラインL1には、上流側から下流側に向けて順に、原水ポンプ12、二次側圧力センサPS2、合流部J2、温度センサTE、加圧ポンプ2、吐出圧力センサPS3、RO膜モジュール4が設けられている。
なお、原水ラインL1を流通する原水W1には、原水W1の供給源(不図示)から直接供給される原水に限らず、例えば、原水W1を濾過処理装置(除鉄除マンガン装置、活性炭濾過装置など)、硬水軟化装置等の前処理装置により前処理された原水も含まれる。
【0025】
原水ポンプ12は、原水ラインL1を流通する原水W1を吸入し、加圧ポンプ2へ向けて圧送(吐出)する装置である。原水ポンプ12には、原水側インバータ13から周波数が変換された駆動電力が供給される。原水ポンプ12は、供給(入力)された駆動電力の周波数(以下、「駆動周波数」ともいう)に応じた回転速度で駆動される。
【0026】
原水ポンプ12は、合流部J2よりも上流側の原水ラインL1に設けられる。原水ポンプ12は、合流部J2よりも上流側の原水ラインL1を流通する原水W1の圧力を調整する。ここで、合流部J2よりも上流側の原水ラインL1は、合流部J2を介して、循環水ラインL4に接続されている。循環水ラインL4は、接続部J1を介して、濃縮水ラインL3に接続されている。濃縮水ラインL3の定流量弁5よりも下流側の部分において、接続部J1と定流量弁5の二次側とが接続されている。つまり、合流部J2よりも上流側の原水ラインL1を流通する原水W1の圧力は、定流量弁5の二次側の圧力と同じであると看做すことができる。
【0027】
原水ポンプ12は、合流部J2よりも上流側の原水ラインL1を流通する原水W1の原水圧力を調整することによって、定流量弁5(後述)の二次側の圧力を所定の設定圧力値に調整して、定流量弁5の一次側の圧力から二次側の圧力を減じた差圧(以下「定流量弁差圧」ともいう)を調整する。なお、定流量弁5の二次側の圧力は、原水ポンプ12と合流部J2との間に配置される二次側圧力センサPS2(後述)により、検出二次側圧力値として検出される。検出二次側圧力値に基づいて、後述する制御部30により、原水側インバータ13に指令信号が入力されて、フィードバック制御が行われる。
【0028】
原水側インバータ13は、原水ポンプ12に、周波数が変換された駆動電力を供給する電気回路(又はその回路を持つ装置)である。原水側インバータ13は、制御部30と電気的に接続されている。原水側インバータ13には、制御部30から指令信号が入力される。原水側インバータ13は、制御部30により入力された指令信号(電流値信号又は電圧値信号)に対応する駆動周波数の駆動電力を原水ポンプ12に出力する。
【0029】
二次側圧力センサPS2は、原水ラインL1における原水ポンプ12と合流部J2との間に配置されている。二次側圧力センサPS2は、定流量弁5の二次側の圧力を検出二次側圧力値として検出する機器である。前述したように、合流部J2よりも上流側であって原水ポンプ12の下流側の原水ラインL1を流通する原水W1の圧力は、定流量弁5の二次側の圧力と同じである。そのため、二次側圧力センサPS2は、原水ポンプ12と合流部J2との間において原水W1の圧力を検出することで、定流量弁5の二次側の圧力を検出二次側圧力値として検出することができる。二次側圧力センサPS2は、制御部30と電気的に接続されている。二次側圧力センサPS2で検出された検出二次側圧力値は、制御部30へ検出信号として送信される。
【0030】
なお、本実施形態においては、二次側圧力センサPS2による、定流量弁5の二次側の圧力の検出位置を、原水ポンプ12と合流部J2との間の位置としたが、これに制限されない。二次側圧力センサPS2は、定流量弁5の二次側の圧力が検出できれば、この位置に制限されない。定流量弁5の二次側の圧力は、原水ラインL1における原水ポンプ12と加圧ポンプ2との間を流通する原水W1の圧力や、濃縮水ラインL3における定流量弁5と接続部J1との間を流通する濃縮水W3の圧力や、循環水ラインL4を流通する濃縮水W3の一部W31の圧力や、排水ラインL5における接続部J1と排水比例制御弁8との間を流通する濃縮水W3の残部W32の圧力と、同じである。そのため、二次側圧力センサPS2の検出位置は、定流量弁5の二次側の圧力を検出できる位置であれば、例えば、濃縮水ラインL3における定流量弁5と接続部J1との間の位置や、循環水ラインL4における接続部J1と合流部J2との間の位置などでもよい。
【0031】
温度センサTEは、原水ラインL1における合流部J2とRO膜モジュール4との間に配置されている。温度センサTEは、原水ラインL1を流通する原水W1の温度を検出温度値として検出する機器である。温度センサTEは、原水W1の検出温度値(定流量弁5の一次側の圧力に対応する情報)を取得一次側情報(の一部)として取得する。取得一次側情報は、制御部30において、前記定流量弁差圧に対応する差圧演算値を演算する際に、用いられる。温度センサTEは、制御部30と電気的に接続されている。温度センサTEで検出された原水W1の検出温度値は、制御部30へ検出信号として送信される。
【0032】
加圧ポンプ2は、合流部J2よりも下流側の原水ラインL1に設けられる。加圧ポンプ2は、合流部J2よりも下流側の原水ラインL1において、原水ラインL1を流通する原水W1を吸入し、RO膜モジュール4へ向けて圧送(吐出)する装置である。加圧ポンプ2には、加圧側インバータ3から周波数が変換された駆動電力が供給される。加圧ポンプ2は、供給(入力)された駆動電力の周波数(以下、「駆動周波数」ともいう)に応じた回転速度で駆動される。
【0033】
加圧側インバータ3は、加圧ポンプ2に、周波数が変換された駆動電力を供給する電気回路(又はその回路を持つ装置)である。加圧側インバータ3は、制御部30と電気的に接続されている。加圧側インバータ3には、制御部30から指令信号が入力される。加圧側インバータ3は、制御部30により入力された指令信号(電流値信号又は電圧値信号)に対応する駆動周波数の駆動電力を加圧ポンプ2に出力する。
【0034】
吐出圧力センサPS3は、加圧ポンプ2の吐出圧力(運転圧力)を検出吐出圧力値として検出する機器である。吐出圧力センサPS3は、加圧ポンプ2の吐出側近傍に配置されている。本実施形態では、加圧ポンプ2から吐出された直後の原水W1の圧力を、加圧ポンプ2の吐出圧力とする。吐出圧力センサPS3は、制御部30と電気的に接続されている。吐出圧力センサPS3で検出された原水W1の検出吐出圧力値は、制御部30へ検出信号として送信される。
【0035】
本実施形態においては、第1流量センサFM1が故障した場合に、第1流量センサFM1の第1検出流量値を用いて実行される流量フィードバック水量制御(後述)に代えて、吐出圧力センサPS3の検出吐出圧力値を用いて実行される圧力フィードバック水量制御(後述)を、バックアップとして実行することができる。本実施形態は、このバックアップのために、加圧ポンプ2の吐出圧力値(運転圧力値)を取得する吐出圧力センサPS3を備えている。
【0036】
本実施形態は、バックアップ用の吐出圧力センサPS3を、定流量弁5の一次側の圧力に対応する情報を取得一次側情報として取得する一次側情報取得手段(の一部)としても利用する。
具体的には、吐出圧力センサPS3は、加圧ポンプ2の検出吐出圧力値(運転圧力値)(定流量弁5の一次側の圧力に対応する情報)を取得一次側情報として取得する。取得一次側情報は、制御部30において、前記定流量弁差圧に対応する差圧演算値(後述)を演算する際に、用いられる。
【0037】
RO膜モジュール4は、加圧ポンプ2から吐出された原水W1を、溶存塩類が除去された透過水W2と、溶存塩類が濃縮された濃縮水W3とに膜分離処理する設備である。RO膜モジュール4は、単一又は複数のRO膜エレメント(不図示)を備える。RO膜モジュール4は、これらRO膜エレメントにより原水W1を膜分離処理し、透過水W2及び濃縮水W3を製造する。
【0038】
透過水ラインL2は、RO膜モジュール4で分離された透過水W2を送出するラインである。透過水ラインL2の上流側の端部は、RO膜モジュール4の二次側ポートに接続されている。透過水ラインL2の下流側の端部は、需要箇所の装置等に接続されている。透過水ラインL2には、流路切換弁15、第1流量センサFM1が設けられている。
【0039】
流路切換弁15は、RO膜モジュール4で分離された透過水W2を、需要箇所の装置等に送出する流路(採水流路)側、又は、透過水ラインL2から分岐させて透過水リターンラインL6を介してRO膜モジュール4の上流側の原水ラインL1へ向けて流通させる流路(循環流路)側に切り換え可能な弁である。流路切換弁15は、例えば、電動式又は電磁式の三方弁により構成される。流路切換弁15は、制御部30と電気的に接続されている。流路切換弁15における流路の切り換えは、制御部30から送信される流路切換信号により制御される。
【0040】
透過水リターンラインL6は、フラッシング運転の実行時において、透過水ラインL2に送出された透過水W2を、原水ラインL1における加圧ポンプ2よりも上流側に返送させるラインである。透過水リターンラインL6の上流側の端部は、流路切換弁15に接続されている。透過水リターンラインL6の下流側の端部は、接続部J3において原水ラインL1に接続されている。接続部J3は、合流部J2と加圧ポンプ2との間に配置されている。透過水リターンラインL6には、逆止弁7が設けられている。
【0041】
流路切換弁15は、逆浸透膜分離装置1の通常運転時には、RO膜モジュール4で分離処理された透過水W2を需要箇所の装置等に送出するために、採水流路側に切り換えられるように制御部30により制御される。
【0042】
また、流路切換弁15は、逆浸透膜分離装置1の起動時やフラッシング運転の実行時においては、次のように制御部30により制御される。起動時には、装置の始動時から安定した水を需要箇所の装置等に供給するため、流路切換弁15を循環流路側に切り換えるように制御する。
また、RO膜モジュール4の膜の汚れの付着による詰まり防止のため、定期的にフラッシングを行う。その際、流路切換弁15を循環流路側に切り換えるように制御すると共に、排水比例制御弁8を開状態となるように制御した状態で、加圧ポンプ2を一定時間運転する。これにより、RO膜モジュール4の膜に付着した汚れを落とすことができる。
【0043】
第1流量センサFM1は、透過水ラインL2を流通する透過水W2の流量を第1検出流量値として検出する機器である。第1流量センサFM1は、透過水ラインL2に接続されている。第1流量センサFM1は、制御部30と電気的に接続されている。第1流量センサFM1で検出された透過水W2の第1検出流量値は、制御部30へパルス信号として送信される。第1流量センサFM1として、例えば、流路ハウジング内に軸流羽根車又は接線羽根車(不図示)を配置したパルス発信式の流量センサを用いることができる。
【0044】
濃縮水ラインL3は、RO膜モジュール4で分離された濃縮水W3を送出するラインである。濃縮水ラインL3の上流側の端部は、RO膜モジュール4の一次側出口ポートに接続されている。また、濃縮水ラインL3の下流側は、接続部J1において、循環水ラインL4及び排水ラインL5に分岐している。
【0045】
濃縮水ラインL3には、上流側から下流側に向けて順に、定流量弁5、接続部J1が設けられている。
定流量弁5は、濃縮水ラインL3を流通する濃縮水W3の流量を所定の一定流量値に保持するように調節する機器である。定流量弁5において保持される一定流量値は、一定流量値に幅がある概念であり、定流量弁における目標流量値のみに限られない。例えば、定流量機構の特性(例えば、材質や構造に起因する温度特性等)を考慮して、定流量弁における目標流量値に対して、±10%程度の調節誤差を有するものを含む。定流量弁5は、補助動力や外部操作を必要とせずに一定流量値を保持するものであり、例えば、水ガバナの名称で呼ばれるものが挙げられる。なお、定流量弁5は、補助動力や外部操作により動作して、一定流量値を保持するものでもよい。
【0046】
循環水ラインL4は、濃縮水ラインL3から分岐するラインであって、RO膜モジュール4で分離された濃縮水W3の一部W31を、原水ラインL1におけるRO膜モジュール4及び加圧ポンプ2よりも上流側の合流部J2に返送するラインである。循環水ラインL4の上流側の端部は、接続部J1において、濃縮水ラインL3に接続されている。また、循環水ラインL4の下流側の端部は、合流部J2において、原水ラインL1に接続されている。循環水ラインL4には、逆止弁6が設けられている。
【0047】
排水ラインL5は、接続部J1において濃縮水ラインL3から分岐され、RO膜モジュール4で分離された濃縮水W3の残部W32を装置外(系外)に排出するラインである。排水ラインL5には、第2流量センサFM2、排水流量調整手段としての排水比例制御弁8が設けられている。
【0048】
第2流量センサFM2は、排水ラインL5を流通する濃縮水W3の残部W32の排水流量を第2検出流量値として検出する機器である。第2流量センサFM2は、制御部30と電気的に接続されている。第2流量センサFM2で検出された濃縮水W3の残部W32の第2検出流量値は、制御部30へパルス信号として送信される。第2流量センサFM2として、例えば、流路ハウジング内に軸流羽根車又は接線羽根車(不図示)を配置したパルス発信式の流量センサを用いることができる。
【0049】
排水比例制御弁8は、排水ラインL5から装置外へ排出する濃縮水W3の残部W32の排水流量を調整可能な弁である。排水比例制御弁8は、排水ラインL5における第2流量センサFM2よりも下流側に配置されている。排水比例制御弁8は、制御部30と電気的に接続されている。排水比例制御弁8の弁開度は、制御部30から送信される駆動信号により制御される。制御部30から電流値信号(例えば、4〜20mA)を排水比例制御弁8に送信して、弁開度を制御することにより、濃縮水W3の残部W32の排水流量を調整することができる。
排水比例制御弁8における制御部30による制御の詳細は後述する。
【0050】
制御部30は、CPU及びメモリを含むマイクロプロセッサ(不図示)により構成される。以下、制御部30の機能について説明する。
【0051】
<透過水W2の水量制御>
制御部30は、透過水W2の水量制御を実行可能である。RO膜(逆浸透膜)に代表される半透膜は、原水の温度や膜の状態(細孔の閉塞や材質の酸化劣化)により水透過係数が変化する。そこで、逆浸透膜分離装置1では、原水の温度や膜の状態にかかわらず、透過水の流量を常に一定に保つために、透過水W2の水量制御が行われる。
【0052】
制御部30は、透過水W2の水量制御として、例えば、流量フィードバック水量制御、圧力フィードバック水量制御、又は温度フィードフォワード水量制御のいずれかを選択して実行できる。各水量制御の概要は、次の通りである。
【0053】
流量フィードバック水量制御
制御部30(加圧ポンプ駆動制御部)は、加圧ポンプ2の駆動を制御する。制御部30は、第1流量センサFM1により検出された透過水W2の第1検出流量値が予め設定された目標流量値となるように、第1流量センサFM1の第1検出流量値(系内の物理量)をフィードバック値として、加圧ポンプ2を駆動するための駆動周波数を演算する。そして、制御部30は、駆動周波数の演算値に対応する指令信号(電流値信号又は電圧値信号)を加圧側インバータ3に出力する(以下、「流量フィードバック水量制御」ともいう)。なお、本水量制御における駆動周波数の演算には、例えば、速度形デジタルPIDアルゴリズムを用いることができる。
【0054】
圧力フィードバック水量制御
制御部30(加圧ポンプ駆動制御部)は、透過水W2の流量が予め設定された目標流量値となるように、吐出圧力センサPS3の検出吐出圧力値(系内の物理量)をフィードバック値として、加圧ポンプ2の駆動周波数を演算する。そして、制御部30は、駆動周波数の演算値に対応する指令信号(電流値信号又は電圧値信号)を加圧側インバータ3に出力する(以下、「圧力フィードバック水量制御」ともいう)。なお、本水量制御における駆動周波数の演算には、例えば、速度形デジタルPIDアルゴリズムを用いることができる。本実施形態においては、第1流量センサFM1が故障した場合に、第1流量センサFM1の第1検出流量値を用いて実行される流量フィードバック水量制御に代えて、吐出圧力センサPS3の検出吐出圧力値を用いて実行される圧力フィードバック水量制御を、バックアップとして実行することができる。本実施形態は、バックアップに備えて、加圧ポンプ2の吐出圧力値(運転圧力値)を取得する吐出圧力センサPS3を備えている。
【0055】
温度フィードフォワード水量制御
制御部30(加圧ポンプ駆動制御部)は、透過水W2の流量が予め設定された目標流量値となるように、温度センサTEの検出温度値(系内の物理量)をフィードフォワード値として、加圧ポンプ2の駆動周波数を演算する。そして、制御部30は、駆動周波数の演算値に対応する指令信号(電流値信号又は電圧値信号)を加圧側インバータ3に出力する(以下、「温度フィードフォワード水量制御」ともいう)。
【0056】
水温と加圧ポンプ2の吐出圧力との関係
透過水W2の水量制御を行うシステムにおいては、水温が高い場合には、水の粘性が小さく、RO膜モジュールの水透過係数が高くなるため、加圧ポンプ2の吐出圧力(加圧ポンプ2の運転圧力、RO膜モジュール4の一次側入口ポートへの入力圧力)が低くなるように制御される。また、水温が低い場合には、水の粘性が大きく、RO膜モジュールの水透過係数が低くなるため、加圧ポンプ2の吐出圧力(加圧ポンプ2の運転圧力、RO膜モジュール4の一次側入口ポートへの入力圧力)が高くなるように制御される。
【0057】
濃縮水W3の循環比の調節
濃縮水W3の循環比とは、RO膜モジュール4の二次側ポートから流出する透過水W2の流量と一次側出口ポートから流出する濃縮水W3の流量との比率(濃縮水W3の流量/透過水W2の流量)である。循環比の所定値は、“5”程度が目安となる。
ここで、本実施形態においては、濃縮水ラインL3には、定流量弁5が設けられている。そのため、定流量弁5で濃縮水W3の流量を一定に保持しながら、前述したいずれかの水量制御により透過水W2の流量を一定に保持することで、濃縮水W3の循環比は、所定値に調節されることになる。
【0058】
<透過水W2の回収率制御>
透過水W2の回収率とは、RO膜モジュール4に供給される原水W1の流量に対する透過水W2の流量の比率(透過水W2の流量/原水W1の流量)である。透過水W2の回収率制御は、RO膜モジュール4の透水能力を維持するために、透過水W2の回収率を調整して、膜面へのスケールの析出やファウリング(膜面汚れ)を防止しながら運転する制御である。
【0059】
制御部30は、透過水W2の回収率制御として、例えば、温度フィードフォワード回収率制御、水質フィードフォワード、又は水質フィードバック回収率制御のいずれかを選択して実行できる。各回収率制御の概要は、次の通りである。
【0060】
温度フィードフォワード回収率制御
制御部30は、予め取得された原水W1のシリカ濃度、及び温度センサTEの検出温度値から決定したシリカ溶解度に基づいて、濃縮水W3におけるシリカの許容濃縮倍率を演算する。そして、制御部30は、許容濃縮倍率の演算値、及び透過水W2の目標流量値から排水流量を演算し、濃縮水W3の実際排水流量(第2流量センサFM2の第2検出流量値)が排水流量の演算値(目標排水流量)となるように、排水比例制御弁8の弁開度を制御する(以下、「温度フィードフォワード回収率制御」ともいう)。制御部30は、温度フィードフォワード回収率制御を実行する場合、逆浸透膜分離装置1においては、透過水W2の回収率を最大としつつ、RO膜モジュール4におけるシリカ系スケールの析出をより確実に抑制することができる。
【0061】
水質フィードフォワード回収率制御
制御部30は、予め取得された炭酸カルシウムの溶解度、及び硬度センサ(不図示)の測定硬度値に基づいて、濃縮水W3における炭酸カルシウムの許容濃縮倍率を演算する。そして、制御部30は、許容濃縮倍率の演算値、及び透過水W2の目標流量値から排水流量を演算し、濃縮水W3の実際排水量(第2流量センサFM2の第2検出流量値)が排水流量の演算値(目標排水流量)となるように、排水比例制御弁8の弁開度を制御する(以下、「水質フィードフォワード回収率制御」ともいう)。制御部30は、水質フィードフォワード回収率制御を実行する場合、仮に前段に硬水軟化装置(不図示)が配置された場合に、前段の硬水軟化装置からの硬度リーク量が増加した場合でも、逆浸透膜分離装置1においては、透過水W2の回収率を最大としつつ、RO膜モジュール4における炭酸カルシウム系スケールの析出をより確実に抑制することができる。
【0062】
水質フィードバック回収率制御
制御部30は、透過水W2の測定電気伝導率値が予め設定された目標電気伝導率となるように、排水比例制御弁8の弁開度をダイレクトに制御する(以下、「水質フィードバック回収率制御」ともいう)。なお、本制御における弁開度の決定には、例えば、速度形デジタルPIDアルゴリズムを用いることができる。制御部30は、水質フィードバック回収率制御を実行するため、逆浸透膜分離装置1においては、透過水W2に要求される水質を満たしつつ、透過水W2の回収率を最大限にまで高めることができる。
【0063】
<排水比例制御弁8による排水流量の調節制御>
本調節制御は、前述した回収率制御のうち、温度フィードフォワード回収率制御又は水質フィードフォワード回収率制御に付随して実行される。
制御部30(排水制御部)は、第2流量センサFM2の第2検出流量値が、前述した回収率制御で決定した排水流量の演算値(目標排水流量)となるように、排水流量調整手段としての排水比例制御弁8の弁開度を流量フィードバック制御する。なお、本調節制御における弁開度の演算には、例えば、速度形デジタルPIDアルゴリズムを用いることができる。
【0064】
<透過水W2の水量制御及び回収率制御の組み合わせの制御例>
透過水W2の水量制御及び回収率制御は、組み合わされて実行される。
「流量フィードバック水量制御」と「温度フィードフォワード回収率制御」とが組み合わされて実行される第1制御パターンや、「圧力フィードバック水量制御」と「水質フィードフォワード回収率制御」とが組み合わされて実行される第2制御パターンや、「温度フィードフォワード水量制御」と「水質フィードバック回収率制御」とが組み合わされて実行される第3制御パターンが、例示される。なお、本発明では、第1制御パターン〜第3制御パターン以外の組み合わせを排除するものではない。
第1制御パターンにおいては、温度フィードフォワード回収率制御は、流量フィードバック水量制御と並行して実行される。第2制御パターンにおいては、温度フィードフォワード回収率制御は、圧力フィードバック水量制御と並行して実行される。第3制御パターンにおいては、水質フィードバック回収率制御は、温度フィードフォワード水量制御と並行して実行される。
【0065】
<原水ポンプ12による原水圧力の調整制御>
まず、本発明において、原水ポンプ12の駆動により原水W1の原水圧力の調整制御を行う理由について、以下に説明する。
濃縮水ラインL3に定流量弁5が設けられる本実施形態においては、定流量弁5の二次側の圧力が原水ラインL1の原水圧力と同じになっている。そのため、原水W1の原水圧力が高い場合には、濃縮水ラインL3に設けられる定流量弁5の一次側と二次側との圧力差が小さくなり、前記定流量弁差圧を確保できずに、濃縮水W3の一部W31を、循環水ラインL4を介して原水ラインL1の合流部J2に返送できないことになる。
【0066】
これに対して、原水ラインL1を流通する原水W1の原水圧力を所定の一定圧力値に減圧する減圧弁(不図示)を用いて、原水W1の原水圧力を所定の一定圧力値まで減圧して、定流量弁5の二次側の圧力を下げることで、定流量弁5の一次側と二次側とにおいて、前記定流量弁差圧が所定差圧以上になるように調整することが考えられる。
【0067】
ここで、原水W1の温度が低い場合には、原水W1の温度が高い場合と比べて、水の粘性が高く、RO膜モジュール4の水透過係数が低くなるため、透過水W2の水量制御を行うシステムにおいては、加圧ポンプ2の吐出圧力(加圧ポンプ2の運転圧力、RO膜モジュール4の一次側入口ポートへの入力圧力)が高くなるように制御される。一方、原水W1の水温によらず、減圧弁(不図示)により減圧される原水の原水圧力は、所定の一定圧力値に調整されている。そのため、原水W1の温度が低い場合には、原水W1の温度が高い場合と比べて、定流量弁5の一次側の圧力は、定流量弁5の二次側の圧力に対して、十分に高くなる。また、定流量弁5の二次側の圧力は、原水圧力が減圧されているため、低くなる。これにより、原水W1の温度が低い場合には、原水W1の温度が高い場合と比べて、定流量弁5の一次側と二次側とにおいて、定流量弁差圧は、所定差圧を大きく超えて余裕をもって確保される。
【0068】
濃縮水ラインL3に定流量弁5が設けられる技術においては、原水W1の温度が低い場合に、前記定流量弁差圧を十分に確保できるにもかかわらず、加圧ポンプ2の上流側において、原水W1の原水圧力を減圧弁(不図示)により、原水W1の温度が高い場合と同じ所定の一定圧力値に減圧することになる。一方で、減圧弁(不図示)の下流側の原水ラインL1において、減圧弁(不図示)で減圧された原水を加圧ポンプ2により加圧する。原水W1の温度が低い場合において、前記定流量弁差圧が必要以上に大きくなくても、前記定流量弁差圧を所定差圧以上に確保できれば十分である。
【0069】
このため、原水W1の温度が低い場合に、前記定流量弁差圧を確保しつつ、RO膜モジュール4に向けて流通させるために、原水W1の原水圧力を高いまま有効に利用できれば、原水W1に原水圧力を圧送する加圧ポンプ2の消費電力を低減できる。
【0070】
以上の説明のように、前記定流量弁差圧を確保しつつ、原水W1の温度が低い場合であっても、原水ラインL1を流通する原水W1の原水圧力を有効に利用するために、本発明においては、制御部30(原水圧力制御部)は、差圧演算値を演算し、差圧演算値が所定の設定差圧値以上となるように、原水ポンプ12の駆動を制御する。
【0071】
差圧演算値は、定流量弁5の一次側の圧力と二次側の圧力との差圧(前記定流量弁差圧)に対応する。差圧演算値は、二次側圧力センサPS2により検出された検出二次側圧力値と、温度センサTEにより検出された検出温度値(取得一次側情報)及び吐出圧力センサPS3により検出される検出吐出圧力値(取得一次側情報)と、に基づいて演算される。本実施形態においては、取得一次側情報は、温度センサTEにより検出された検出温度値及び吐出圧力センサPS3により検出される検出吐出圧力値である。
【0072】
ここで、定流量弁5の一次側の圧力と二次側の圧力との差圧は、定流量弁5の一次側の圧力を一次側圧力センサ(不図示)で測定し、定流量弁5の二次側の圧力を二次側圧力センサPS2で測定し、一次側圧力センサ(不図示)で測定した一次側の圧力から二次側圧力センサPS2で測定した二次側の圧力を減じた差圧を直接的に算出することができる。しかしながら、2箇所で圧力を測定するため、2つの圧力センサを必要とする。
【0073】
本実施形態においては、定流量弁5の一次側の圧力を検出する圧力センサに要するコストを低減するために、定流量弁5の一次側の圧力を検出する圧力センサを設けずに、定流量弁5の一次側の圧力を代替手段により間接的に検出する。詳細には、定流量弁5の一次側圧力を、温度センサTEにより検出された検出温度値T及び吐出圧力センサPS3により検出される検出吐出圧力値Pdを用いて、間接的に検出することで演算することができる。
【0074】
ここで、本実施形態は、圧力フィードバック水量制御を流量フィードバック水量制御のバックアップとして実行するために、加圧ポンプ2の吐出圧力(運転圧力)を取得する吐出圧力センサPS3を備えている。本実施形態は、定流量弁5の一次側圧力を検出するために新たな圧力センサを設けることなく、バックアップのために設けられる吐出圧力センサPS3により検出される検出吐出圧力値Pdを、定流量弁5の一次側圧力を間接的に検出するための取得一次側情報として取得して利用する。
【0075】
次に、定流量弁5の一次側の圧力を、温度センサTEにより検出された検出温度値T及び吐出圧力センサPS3により検出される検出吐出圧力値Pdを用いて間接的に演算する方法について、具体的に説明する。
定流量弁5の一次側圧力(膜出口圧力)P1[MPa]は、下記の式(1)にて表現できる。
P1=Pd−ΔPm (1)
(但し、Pd[MPa]:加圧ポンプ2の検出吐出圧力値(運転圧力値)、ΔPm[MPa]:RO膜モジュール4の膜面差圧)
【0076】
RO膜モジュール4の膜面差圧ΔPmについて、透過水W2の透過流束の変化率から推測して演算する。具体的には、透過水W2の透過流束の低下分の変化率は、RO膜モジュール4の膜面差圧が上昇したことによる加圧ポンプ2の検出吐出圧力値(運転圧力値)と看做す。そのため、透過水W2の透過流束の低下分、加圧ポンプ2の検出吐出圧力値(運転圧力値)及び透過水W2の水温に基づいて、透過流束の低下率が100%となる膜面差圧を求めることで、透過水W2の透過流束の低下分の変化率の全てを膜面差圧が上昇したことによるものとして、RO膜モジュール4の膜面差圧ΔPmを計算する。
【0077】
基準温度(例えば、25℃)における初期の透過流束J[L・h
−1・MPa
−1]の演算値は、下記の式(2)にて表現できる。透過流束は、逆浸透膜分離装置1の膜の詰まり状態を示す指標で、単位時間当たり、透過する水の量を単位膜差圧当たりとして標準温度条件下に換算したものである。
J=Qp/[{Pd−(ΔPm1÷2)−Pout−Δπ}×K] (2)
(但し、Qp:透過水W2の第1検出流量値[m
3/s]、Pout:RO膜モジュール4の二次側の出口背圧[MPa]、Δπ:浸透圧、K:温度補正係数、ΔPm1:初期膜面差圧)
【0078】
これに対して、リアルタイムの透過流束J1は、下記の式(3)にて表現できる。
J1=Qp/[{Pd−(ΔPm÷2)−Pout−Δπ}×K] (3)
透過流束Jに対してリアルタイムの透過流束J1が同じ場合又は大きい場合((J/J1)≦1.0)には、初期膜面差圧から膜の悪化がないため、膜面差圧に変化がないと看做す(膜面差圧ΔPm=初期膜面差圧ΔPm1)。
一方、透過流束Jに対してリアルタイムの透過流束J1が低下した場合((J/J1)>1.0)には、透過水W2の透過流束の低下分の変化率の全てを膜面差圧が上昇したことによるものとして、RO膜モジュール4の膜面差圧ΔPmを計算する。
膜面差圧ΔPmは、下記の式(4)にて表現できる。
ΔPm=−2×[Qp/(J×K)−Pd+Pout+Δπ] (4)
【0079】
ここで、加圧ポンプ2の検出吐出圧力値(運転圧力値)Pdは、吐出圧力センサPS3により測定して取得する。原水W1の水温は、温度センサTEにより測定して取得する。
【0080】
そして、加圧ポンプ2の検出吐出圧力値(運転圧力値)Pdの実測値及び原水W1の検出温度値Tの実測値を用いて、上記式(3)により、RO膜モジュール4の膜面差圧ΔPmを算出する。そして、上記式(1)により、定流量弁5の一次側圧力(膜出口圧力)P1を、換算一次側圧力値として換算することができる。
【0081】
式(2)及び式(3)において、透過水W2の第1検出流量値Qpは、第1流量センサFM1(
図1参照)の実測値を用いる。温度補正係数Kは、検出温度値Tの関数であり、検出温度値Tが基準温度に等しいときには、1となる。上記式(3)におけるRO膜モジュール4の膜面差圧ΔPmの計算において、Pout及びΔπの各値は、定常運転中は、ほぼ一定と看做せるため、予め設定した値を使用することができる。従って、逆浸透膜分離装置1の運転中に、透過水W2の第1検出流量値Qp、温度センサTEの検出温度値T及び加圧ポンプ2の検出吐出圧力値(運転圧力値)Pdからなるパラメータを取得すれば、基準温度におけるRO膜モジュール4の膜面差圧ΔPmを演算することができる。
【0082】
なお、上記式(3)において、加圧ポンプ2の検出吐出圧力値(運転圧力値)Pdの実測値及び原水W1の検出温度値Tの実測値を用いて、RO膜モジュール4の膜面差圧ΔPmを算出している。そして、上記式(1)により、定流量弁5の一次側圧力(膜出口圧力)P1を、換算一次側圧力値として換算している。ここで、水温変動が小さい場合には、原水W1の検出温度値Tを検出することを省略して、定流量弁5の一次側圧力(膜出口圧力)P1を換算することができる。
【0083】
以上により演算された定流量弁5の一次側圧力(膜出口圧力)P1を換算した換算一次側圧力値を用いて、定流量弁5の一次側圧力(膜出口圧力)P1を換算した換算一次側圧力値と、二次側圧力センサPS2に検出された検出二次側圧力値と、に基づいて、定流量弁5の一次側と二次側の圧力との差圧に対応する差圧演算値を演算する。
【0084】
そして、制御部30は、差圧演算値が所定の設定差圧値以上となるように、原水ポンプ12の駆動を制御する。設定差圧値は、定流量弁5の一次側の圧力から二次側の圧力を減じた差圧値である。設定差圧値は、定流量弁5の一次側から二次側に濃縮水W3が流れることが可能な下限の値が設定される。本実施形態においては、設定差圧値を、例えば、0.2Mpaに設定する。
なお、本調整制御における弁開度の演算には、例えば、速度形デジタルPIDアルゴリズムを用いることができる。
【0085】
次に、制御部30による定流量弁5の一次側と二次側との差圧を調整するために原水ポンプ12の駆動の制御について説明する。
図2は、制御部30において原水ポンプ12の駆動を制御することで前記定流量弁差圧を調整する場合の処理手順を示すフローチャートである。
図2に示すフローチャートの処理は、逆浸透膜分離装置1の運転中において、繰り返し実行される。
【0086】
本フローチャートにおける逆浸透膜分離装置1の起動時においては、原水ポンプ12は、所定の圧力値(例えば、0.3MPa)で原水W1を吐出するように制御されている。
【0087】
ステップS1において、制御部30は、透過水W2の水量制御として、例えば、前述したように、流量フィードバック水量制御、圧力フィードバック水量制御、又は温度フィードフォワード水量制御を実行する。
【0088】
ステップS2において、制御部30は、透過水W2の水量制御と並行して実行される回収率制御を実行する。制御部30は、透過水W2の回収率制御として、例えば、前述したように、温度フィードフォワード回収率制御、水質フィードフォワード、又は水質フィードバック回収率制御を実行する。
【0089】
ステップS3において、制御部30は、温度センサTEで検出された原水W1の検出温度値T(取得一次側情報)を取得する。制御部30は、温度センサTEで検出された原水W1の検出温度値を取得一次側情報の一部として取得する。
【0090】
ステップS4において、制御部30は、二次側圧力センサPS2で検出された定流量弁5の二次側の検出二次側圧力値を取得する。
【0091】
ステップS5において、制御部30は、吐出圧力センサPS3で検出された加圧ポンプ2の検出吐出圧力値Pdを取得する。制御部30は、吐出圧力センサPS3で検出された加圧ポンプ2の検出吐出圧力値Pdを取得一次側情報の一部として取得する。
【0092】
ステップS6において、制御部30は、ステップS4において取得した検出二次側圧力値と、ステップS3において取得した検出温度値T(取得一次側情報)及びステップS7において取得した検出吐出圧力値Pd(取得一次側情報)とに基づいて、差圧演算値を演算する。
【0093】
具体的には、前述したように、加圧ポンプ2の検出吐出圧力値Pdの実測値及び原水W1の検出温度値Tの実測値を用いて、前述の式(3)により、RO膜モジュール4の膜面差圧ΔPmを算出する。そして、前述の式(1)により、定流量弁5の一次側圧力(膜出口圧力)P1を、換算一次側圧力値として換算する。
そして、定流量弁5の一次側圧力(膜出口圧力)P1を換算した換算一次側圧力値を用いて、定流量弁5の一次側圧力(膜出口圧力)P1を換算した換算一次側圧力値と、二次側圧力センサPS2に検出された検出二次側圧力値と、に基づいて、定流量弁5の一次側と二次側の圧力との差圧に対応する差圧演算値を演算する。
【0094】
ステップS7において、制御部30は、ステップS6で演算した差圧演算値が所定の設定差圧値(例えば、0.2MPa)以上となるように、原水ポンプ12の駆動を制御する。これにより、例えば原水W1の温度が高い場合などでは、加圧ポンプ2の吐出圧力(加圧ポンプ2の運転圧力、RO膜モジュール4の一次側入口ポートへの入力圧力)が低く、定流量弁5の一次側の圧力と二次側の圧力との差圧が小さくなるため、原水W1の原水圧力を原水ポンプ12の下流側において低くなるように原水ポンプ12を制御することで定流量弁5の一次側の圧力と二次側の圧力との差圧を確保することができる。よって、原水ラインL1を流通する原水W1の原水圧力を減圧弁や比例弁などで減圧することなく有効に利用することができる。
ステップS7の後に、本フローチャートの処理は終了する(ステップS1へリターンする)。
【0095】
上述した本実施形態に係る逆浸透膜分離装置1によれば、例えば、以下のような効果が得られる。
本実施形態に係る逆浸透膜分離装置1においては、RO膜モジュール4と、原水ラインL1と、透過水ラインL2と、濃縮水ラインL3と、濃縮水ラインL3から分岐されRO膜モジュール4で分離された濃縮水W3の一部W31を原水ラインL1の合流部J2に返送する循環水ラインL4と、濃縮水ラインL3から分岐される排水ラインL5と、合流部J2よりも上流側の原水ラインL1に設けられる原水ポンプ12と、濃縮水ラインL3を流通する濃縮水W3の流量を所定の一定流量値に保持する定流量弁5と、定流量弁5の二次側の圧力を検出二次側圧力値として検出する二次側圧力センサPS2と、定流量弁5の一次側の圧力に対応する検出温度値(情報)を取得一次側情報として取得する温度センサTE及び検出吐出圧力値(情報)を取得一次側情報として取得する吐出圧力センサPS3と、検出二次側圧力値及び取得一次側情報に基づいて定流量弁5の一次側の圧力と二次側の圧力との差圧に対応する差圧演算値を演算し、差圧演算値が所定の設定差圧値以上になるように、原水ポンプ12の駆動を制御する制御部30と、を備える。
【0096】
そのため、原水ポンプ12の駆動を制御することで、前記定流量弁差圧を、定流量弁5の一次側から二次側に濃縮水W3が流れる差圧となるように、調整することができる。また、例えば原水温度が高い場合などでは、加圧ポンプ2の吐出圧力(加圧ポンプ2の運転圧力、RO膜モジュール4の一次側入口ポートへの入力圧力)が低く、定流量弁5の一次側の圧力と二次側の圧力との差圧が小さくなる場合には、原水W1の原水圧力を原水ポンプ12の下流側において低くなるように原水ポンプ12を制御することで定流量弁5の一次側の圧力と二次側の圧力との差圧を確保することができる。これにより、原水ラインL1を流通する原水W1の原水圧力を減圧弁や比例弁などで減圧することなく有効に利用することができる。
【0097】
また、本実施形態は、圧力フィードバック水量制御を流量フィードバック水量制御のバックアップとして実行するために、加圧ポンプ2の検出吐出圧力値(運転圧力値)を取得する吐出圧力センサPS3を備えている。本実施形態は、この吐出圧力センサPS3により検出される検出吐出圧力値を利用して、定流量弁5の一次側圧力を検出するために新たな圧力センサを設けることなく、吐出圧力センサPS3により検出される検出吐出圧力値を、定流量弁5の一次側圧力を間接的に検出するための取得一次側情報として取得する。これにより、前記定流量弁差圧を調整する制御を行う場合に、定流量弁5の一次側圧力を検出する圧力センサを新たに設ける必要がないため、圧力センサに要するコストを低減できる。
【0098】
また、本実施形態に係る逆浸透膜分離装置1においては、制御部30は、流量フィードバック水量制御により透過水W2の流量を制御する。流量フィードバック水量制御で用いる速度形デジタルPIDアルゴリズムでは、前回の操作量からの変化分を演算し、これに前回の操作量を加算して今回の操作量を求める方式であるため、第1検出流量値が離散値の場合でも、目標流量値との偏差を高速に解消することができる。そのため、温度変化や膜の閉塞等によりRO膜モジュール4の水透過係数が急激に変化した場合でも、その変化に十分に追従することができる。従って、RO膜モジュール4の水透過係数が急激に変化した場合に、透過水W2の流量を目標流量値に短時間で収束させ、安定した水量の透過水W2を製造することができる。
【0099】
また、本実施形態に係る逆浸透膜分離装置1においては、制御部30は、圧力フィードバック水量制御により透過水W2の流量を制御する。この圧力フィードバック水量制御は、流量フィードバック水量制御のバックアップとして実行することができる。このため、流量フィードバック水量制御の実行中において、第1流量センサFM1(
図1参照)に故障が発生した場合でも、圧力フィードバック水量制御に切り換えることにより、安定した水量の透過水W4を製造することができる。
【0100】
また、本実施形態に係る逆浸透膜分離装置1においては、制御部30は、温度フィードフォワード水量制御により透過水W2の流量を制御する。この温度フィードフォワード水量制御は、第1実施形態における流量フィードバック水量制御のバックアップとして実行することができる。このため、流量フィードバック水量制御の実行中において、第1流量センサFM1(
図1参照)に故障が発生した場合でも、温度フィードフォワード水量制御に切り換えることにより、安定した水量の透過水W2を製造することができる。
【0101】
また、本実施形態に係る逆浸透膜分離装置1においては、制御部30は、温度フィードフォワード回収率制御を実行する。このため、逆浸透膜分離装置1においては、透過水W2の回収率を最大としつつ、RO膜モジュール4におけるシリカ系スケールの析出をより確実に抑制することができる。
【0102】
また、本実施形態に係る逆浸透膜分離装置1においては、制御部30は、水質フィードフォワード回収率制御を実行する。このため、例えば、前段の硬水軟化装置からの硬度リーク量が増加した場合でも、逆浸透膜分離装置1においては、透過水W2の回収率を最大としつつ、RO膜モジュール4における炭酸カルシウム系スケールの析出をより確実に抑制することができる。
【0103】
また、本実施形態に係る逆浸透膜分離装置1においては、制御部30は、水質フィードバック回収率制御を実行する。このため、逆浸透膜分離装置1においては、透過水W2に要求される水質を満たしつつ、透過水W2の回収率を最大限にまで高めることができる。
【0104】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明した。しかし、本発明は、上述した実施形態に限定されることなく、種々の形態で実施することができる。
例えば、前記実施形態では、温度センサTEが原水W1の温度を検出する例について説明した。しかし、これに限らず、例えば、温度センサTEは、RO膜モジュール4で得られた透過水W2又は濃縮水W3(W31,W32)の温度を検出してもよい。原水W1、透過水W2及び濃縮水W3(W31,W32)の温度は同じであると看做せるからである。透過水W2の温度を検出する場合には、温度センサを、透過水ラインL2に設ければよい。濃縮水W3(W31,W32)の温度を検出する場合には、温度センサを、濃縮水ラインL3、循環水ラインL4又は排水ラインL5に設ければよい。
【0105】
また、前記実施形態では、取得一次側情報として、原水W1の検出温度値及び加圧ポンプ2の検出吐出圧力値を用いたが、これに限られない。水温変動が小さい場合には、原水W1の検出温度値Tを検出することを省略して、定流量弁5の一次側圧力(膜出口圧力)P1を換算して、前記定流量弁差圧に対応する差圧演算値を演算することができる。従って、取得一次側情報として、原水W1の検出温度値を検出しなくてもよく、この場合には、取得一次情報を検出するための温度センサを設けなくてよい。
【0106】
また、前記実施形態では、各回収率制御において、排水比例制御弁8の弁開度を制御することにより、濃縮水W3の排水流量を調整する例について説明した。これに限らず、複数の排水バルブを並列に設けた構成とし、排水バルブの開弁数を増減することにより、濃縮水W3の残部W32の排水流量を段階的に調整するように制御してもよい。これにより、濃縮水W3の残部W32の排水流量を調整することができる。