【解決手段】有機物分解装置1は、洗浄液を被洗浄設備Fに供給する供給管120と、洗浄液を回収する回収管110と、回収された洗浄液にオゾンを作用させるオゾン処理部20と、洗浄液を脱気する脱気部20と、加熱装置80とを備え、加熱装置80は、オゾン処理部20における入口温度が50℃以上となるように洗浄液を加熱し、有機物分解装置1は、脱気された洗浄液を被洗浄設備Fに再供給する。有機物分解方法は、被洗浄設備Fから回収された洗浄液にオゾンを作用させる工程と、洗浄液を脱気する工程と、洗浄液を加熱する工程と、洗浄液を被洗浄設備Fに再供給する工程とを含み、洗浄液を加熱する工程においては、オゾンを作用させるときの洗浄液の液温が50℃以上となるように洗浄液を加熱する。
前記加熱装置は、前記オゾン処理部における入口温度が50℃以上、且つ、前記被洗浄設備における入口温度が50℃以上となるように前記洗浄液を加熱することを特徴とする請求項1に記載の有機物分解装置。
前記洗浄液を加熱する工程において、前記オゾンを作用させるときの液温が50℃以上、且つ、前記被洗浄設備に供給するときの液温が50℃以上となるように前記洗浄液を加熱することを特徴とする請求項6に記載の有機物分解方法。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[第1実施形態]
はじめに、本発明の第1実施形態に係る有機物分解装置及び有機物分解方法について説明する。なお、以下の各図において共通する構成については、同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
【0020】
図1は、本発明の第1実施形態に係る有機物分解装置の概略構成を示す図である。
図1に示すように、第1実施形態に係る有機物分解装置1は、回収管110と、供給管120と、オゾン生成装置10と、処理槽(オゾン処理部・脱気部)20と、加熱装置80と、温度センサT1,T2とを備えている。この有機物分解装置1は、飲料等の液状製品の製造設備を定置洗浄し、製造設備から回収された洗浄液に含まれている有機物をオゾンを利用して分解処理する装置である。
【0021】
有機物分解装置1は、
図1に示すように、定置洗浄を施すべき液状製品の製造設備(被洗浄設備F)に付帯して備えられている。液状製品には、飲料、液状食品、流動性を持つ半固体食品等の他、化粧品、医薬品、医薬部外品、衛生用品等の非食品の液状製品が含まれる。被洗浄設備Fは、例えば、液状製品、半製品、原料等の液状物が通流する配管や、液状物が貯留されるタンク等を備えて構成されている。そして、被洗浄設備Fには、配管やタンク等が連なることによって、製造ラインとなる液状物の流路(被洗浄流路p)が形成されている。
【0022】
液状物の流路(被洗浄流路p)においては、液状製品の製造にあたって、原料の調合、抽出、加熱、冷却、脱気、ガス圧入、滅菌、充填等の各種工程の全部又は一部がインラインで実施される。そのため、この流路(被洗浄流路p)には、取り扱われる液状物に接し得るようにポンプ、バルブ、熱交換器、計測器、濾過器等の機器類が備えられている。定置洗浄では、このような被洗浄流路pに洗浄液が通されることによって、これらの被洗浄物が洗浄される。
【0023】
図1に示すように、被洗浄設備Fが有する被洗浄流路pの入口には、管路を介して切換弁V1が接続されている。この管路には、循環ポンプ70と加熱装置80とが設置されている。そして、切換弁V1には、給液管101の一端が接続されている。また、被洗浄流路pの出口には、管路を介して切換弁V2が接続されている。そして、切換弁V2には、排液管102の一端が接続されている。
【0024】
給液管101は、被洗浄設備Fに洗浄液を供給する流路を形成している。一端が切換弁V1に接続されている給液管101の他端は、通常、不図示の複数の管路に分岐し、複数備えられる洗浄液供給源のそれぞれに接続される。そして、各洗浄液供給源からの洗浄液の供給が、定置洗浄の計画に従って所定時間毎に切り替え制御されて定置洗浄が行われる。各洗浄液供給源から供給される洗浄液は、切換弁V1を経て被洗浄設備Fが有する被洗浄流路pに順次供給されることになる。
【0025】
被洗浄設備Fには、例えば、アルカリ洗浄に際して、水酸化ナトリウム、次亜塩素酸ナトリウム、界面活性剤等を含むアルカリ性洗浄液が供給され、酸洗浄に際して、硝酸、界面活性剤等を含む酸性洗浄液が供給される。また、殺菌のために、次亜塩素酸ナトリウム等の殺菌用洗浄液が供給される。また、アルカリ洗浄や酸洗浄の事前に行われる前洗浄に際してや、これらの洗浄の合間及び事後に行われる濯ぎに際しては、塩分や金属類を実質的に含有していない清水が供給される。
【0026】
循環ポンプ70は、洗浄液を圧送して被洗浄設備Fに供給する。アルカリ性洗浄液、酸性洗浄液等の洗浄液は、加熱装置80によって必要に応じて加熱された後、循環ポンプ70の稼働により、被洗浄設備Fが有する被洗浄流路pに導入される。そして、洗浄液は、被洗浄流路pを通流して被洗浄物を洗浄した後、被洗浄流路pの出口から排出される。
【0027】
排液管102は、被洗浄物を洗浄した洗浄液を排出する流路を形成している。一端が切換弁V2に接続されている排液管102の他端は、不図示の洗浄液供給源に接続されている。被洗浄流路pを通流した洗浄液は、排液管102を通じて洗浄液供給源に移送された後、再び給液管101を経て被洗浄設備Fに循環供給される。そして、所定時間にわたって被洗浄設備Fに繰り返し供給されて被洗浄物を洗浄した洗浄液は、排液管102の下流や、被洗浄流路pの中間部から系外に排出されて排液処理される。
【0028】
液状製品の製造設備(被洗浄設備F)においては、液状製品の製造にあたって香料が使用されることがある。香料は、香気成分として、炭化水素類、エステル類、ケトン類、芳香族、脂肪酸類、アルデヒド類、アルコール類、エーテル類等の各種の有機物を含有している。香気成分としては、テルペン系化合物のような炭化水素系化合物の他、含硫黄化合物、含窒素化合物等の種々の元素組成の化合物が使用され得る。また、化学結合の種類や、揮発性の程度等も多岐に及んでいる。
【0029】
一方、製造設備(被洗浄設備F)に備えられる配管や、タンクや、ポンプ等の機器類の接続部には、通常、ガスケットやパッキン等のシール部材が介装されている。こうしたシール部材は、一般に、エチレン・プロピレン・ジエンゴム(EPDM)、ニトリルゴム(NBR)、シリコンゴム等を材質としている。このような材質のシール部材は、香料に含まれている香気成分(有機物)が着香し易い性質を有している。
【0030】
そのため、香料が添加されている液状製品や半製品等が、製造設備(被洗浄設備F)が有する液状物の流路(被洗浄流路p)において取り扱われると、種々の香気成分が、シール部材の表面に強固に付着したり、シール部材の深部にまで浸透したりする。このようにしてシール部材に着香した香気成分は、被洗浄設備Fにアルカリ性洗浄液や酸性洗浄液を供給して洗浄した後にも、シール部材の深部等に残留していることが少なくない。
【0031】
そこで、このような液状製品の製造設備(被洗浄設備F)には、香気成分の脱臭を目的とした脱臭洗浄が施される。詳細には、有機物分解装置1と被洗浄設備Fとの間で洗浄液を循環させることで、被洗浄流路p中のシール部材等に着香している香気成分を洗浄液に溶出させる。そして、香気成分が溶出した洗浄液を有機物分解装置1に回収して被洗浄設備Fを脱臭する。脱臭洗浄は、具体的には、各切換弁V1,V2を切り替えて給液管101と排液管102とを閉鎖し、循環ポンプ70の稼働により、有機物分解装置1と被洗浄設備Fとの間で洗浄液を循環させて行う。
【0032】
脱臭洗浄において好ましく用いられる洗浄液は、50℃以上60℃未満の温水域の洗浄液、又は、60℃以上の熱水域の洗浄液である。そのため、脱臭洗浄においては、洗浄液が加熱装置80により加熱されて、被洗浄設備Fに供給される。洗浄液の液温は、80℃以上であってよいし、90℃以上であってもよい。洗浄液としては、塩分や金属類を実質的に含有していない清水が好ましい。洗浄液が温水域以上の高温であると、香気成分の溶解度が高められると共に、シール部材中における香気成分の拡散速度も速められる。そのため、シール部材に浸透している香気成分は、洗浄液に溶出し易くなり、所要時間が長期化すること無く効率的な脱臭洗浄を行うことが可能になる。また、高温の清水であれば、オゾン水等と比較してシール部材が損傷するようなことも少ない。
【0033】
回収管110は、洗浄液を被洗浄設備Fから回収(返送)する流路を形成している。回収管110の一端は、切換弁V2に接続されている。切換弁V2は被洗浄設備Fが有する被洗浄流路pの出口と管路を介して連結されているため、切換弁V2の切り替えにより、被洗浄設備Fを洗浄した洗浄液が有機物分解装置1に回収される。なお、洗浄液が回収されるとき、切換弁V2の排液管102側の流路は閉鎖される。一方、回収管110の他端は処理槽20に接続されており、回収された洗浄液は、処理槽20から供給管120に流されるようになっている。
【0034】
供給管120は、洗浄液を被洗浄設備Fに供給する流路を形成している。供給管120の一端は、処理槽20に接続されている。一方、供給管120の他端は、切換弁V1に接続されている。切換弁V1は被洗浄設備Fが有する被洗浄流路pの入口と管路を介して連結されているため、切換弁V1の切り替えにより、有機物分解装置1から被洗浄設備Fに洗浄液が供給される。なお、洗浄液が供給されるとき、切換弁V1の給液管101側の流路は閉鎖される。そして、被洗浄設備Fを洗浄した洗浄液は、回収管110を通じて回収された後、供給管120を通じて被洗浄設備Fに再供給されて循環する。
【0035】
洗浄液における香気成分の濃度は、洗浄液が被洗浄設備Fに繰り返し供給されるに伴って次第に増大していく。香気成分の濃度が増大すると、香気成分がシール部材へ再付着し易くなり、脱臭の効率は低下していく。そのため、一般には、循環させている洗浄液を頻繁に取り替える必要がある。しかしながら、洗浄液を取り替える場合には、脱臭洗浄を停止しなければならないため、定置洗浄の所要時間が長期化してしまう。また、洗浄液を取り替える際に膨大な水量を要するし、取り替えられた洗浄液を再加熱するのに多大な加熱経費が掛かる。
【0036】
そこで、有機物分解装置1では、被洗浄設備Fから回収された洗浄液に含まれている香気成分(有機物)をオゾンの作用で分解する有機物分解処理を行う。具体的には、有機物分解処理(有機物分解方法)は、被洗浄設備Fに洗浄液を供給すると共に、被洗浄設備Fを洗浄し、被洗浄設備Fから香気成分(有機物)が溶出した洗浄液を回収する工程と、被洗浄設備Fから回収された洗浄液にオゾンを作用させて、洗浄液に含まれている香気成分(有機物)を分解させる工程と、オゾンを作用させた洗浄液を脱気する工程と、被洗浄設備Fに供給されて回収される洗浄液を加熱する工程と、脱気された洗浄液を被洗浄設備Fに再供給する工程とを含む。
【0037】
この有機物分解方法では、特に、被洗浄設備Fに供給されて回収される洗浄液、すなわち、被洗浄設備Fに循環される洗浄液を、オゾンを作用させるときの液温が50℃以上となるように予め加熱する。オゾン処理される洗浄液の液温を50℃以上に予め調整しておくことにより、洗浄液に溶出している香気成分の分解の効率が高められる。そして、オゾン処理された洗浄液は、脱気されてから被洗浄設備Fに再供給される。洗浄液が脱気されることにより、被洗浄設備F中に洗浄液が到達し難い空気溜まりが形成されるのが防止され、被洗浄設備Fの洗浄性が高く保たれる。
【0038】
図2は、オゾン処理の効率と洗浄液の液温との関係を解析した結果を示す図である。また、
図3は、オゾン処理の効率と洗浄液のpHとの関係を解析した結果を示す図である。
図2及び
図3において、横軸は、酢酸溶液をオゾン処理したときの処理時間(min)、縦軸は、酢酸溶液中の酢酸の残存率(C
i/C
O比)を示している。酢酸溶液は、香気成分が含まれる洗浄液を模擬した試料であり、超純水に酢酸を溶解して調製したTOC(Total Organic Carbon)が10mg/Lの水溶液である。
【0039】
図2についてのオゾン処理は、オゾン濃度が100g/Nm
3のオゾンガスを、種々の液温に調温した酢酸溶液中に2L/minで散気し、計2Lの酢酸溶液を半回分的に処理する方法によった。また、
図3についてのオゾン処理は、液温を90℃にして種々のpHに調整した点を除いて、
図2についてのオゾン処理と同様の方法によった。なお、pHの調整は、硝酸及び水酸化ナトリウムで行った。酢酸の残存率(C
i/C
O比)は、初期の有機体の炭素量(C
O)に対する、処理後の無機体の炭素量(C
i)の割合に相当する値である。
【0040】
図2に示すように、液温が20℃や30℃の常温域では、処理時間が経過しても、酢酸の残存率(C
i/C
O比)が殆ど変化しない。酢酸は、C=O結合を含む複数の共有結合を有する解離エネルギが比較的高い有機物であり、飽和炭化水素鎖を持っている。常温域で主に起こるオゾンによる直接酸化のみでは、無機体にまで分解させることが困難であるため、残存率(C
i/C
O比)は高いままである。
【0041】
一方、液温が50℃や90℃の温水域以上では、処理時間の経過と共に、酢酸の残存率(C
i/C
O比)が大きく低下している。温水域以上では、オゾンが速やかに自己分解し、ヒドロキシルラジカル等の活性種が多量に生成されるので、これら酸化力が強い活性種が酢酸の分解に寄与したとみられる。この結果が示すように、洗浄液の液温を50℃以上に調整しておけば、オゾンの自己分解により生成する活性種の寄与により、香気成分の分解の効率を高めることができる。分解すべき有機物にオゾンを直ちに作用させれば、オゾンの溶解度が低い50℃以上の反応場においても、有機物を速やかに分解させることが可能であることが示されている。
【0042】
また、
図3に示すように、pHが5.5から10の非酸性域では、処理時間の経過と共に、酢酸の残存率(C
i/C
O比)が大きく低下している。一方、pHが4の酸性域では、処理時間が経過しても、酢酸の残存率(C
i/C
O比)が小さい低下に留まっている。酸性域では、水酸化物イオンが不足してラジカル生成反応が開始され難くなり、ヒドロキシルラジカル等の活性種の生成量が低下している可能性が高い。具体的には、通常の温度条件及び散気条件において、pHが3.5未満の酸性域では、解離エネルギが高い有機物の分解が困難となる。したがって、オゾンを作用させるときの洗浄液のpHは、非酸性域に保たれることが好ましく、3.5以上であることがより好ましいといえる。
【0043】
図1に示す有機物分解装置1では、洗浄液にオゾンを作用させるオゾン処理が、洗浄液を滞留させることが可能な処理槽20において行われる。オゾンは、処理槽20に滞留している洗浄液に散気されて混合され、処理槽20に滞留している間に作用する。そして、オゾン処理された洗浄液は、処理槽20で脱気されてから被洗浄設備Fに再供給され、洗浄液の循環による脱臭洗浄が継続的に続けられる。有機物分解装置1において行われる有機物分解処理(第1実施形態に係る有機物分解方法)は、オゾンを作用させるときの洗浄液の液温が50℃以上となるように被洗浄設備Fに供給される洗浄液を加熱し、洗浄液にオゾンガスを散気して混合することによりオゾンを作用させるものである。
【0044】
図1に示すように、有機物分解装置1は、洗浄液を加熱する加熱装置80を備えている。加熱装置80は、被洗浄設備Fに循環される洗浄液の流路上において、被洗浄設備Fへの供給側、すなわち、処理槽20の出口よりも下流、且つ、被洗浄設備Fの入口よりも上流に配置されている。加熱装置80としては、例えば、熱交換器、通電加熱装置、蒸気加熱等を行う直接加熱装置等の適宜の加熱原理による装置が利用される。有機物分解装置1では、被洗浄設備Fに供給する洗浄液にオゾンを溶存させないため、加熱原理がオゾンを消散させないものに制約されることは無い。
【0045】
被洗浄設備Fに循環される洗浄液の流路上には、被洗浄設備Fの出口よりも下流、且つ、処理槽20の入口よりも上流に、処理槽(オゾン処理部)20の入口温度を計測する第1温度センサT1が設置されている。また、処理槽20の出口よりも下流、且つ、被洗浄設備Fの入口よりも上流に、被洗浄設備Fの入口温度を計測する第2温度センサT2が設置されている。例えば、第1温度センサT1及び第2温度センサT2は、加熱装置80の制御を行う不図示の制御装置に計測温度信号を出力し、その制御装置によって加熱装置80の入熱量等がフィードバック制御される。
【0046】
加熱装置80は、オゾンを作用させるときの洗浄液の液温、すなわち、処理槽20における入口温度が50℃以上となるように洗浄液を加熱する。具体的には、加熱装置80の加熱目標温度は、洗浄液の放熱による温度低下を加味して、50℃よりも高い温水域又は熱水域に設定される。そして、加熱装置80による加熱温度は、第1温度センサT1による計測温度が50℃以上に維持されるように制御される。加熱装置80は、被洗浄設備Fへの供給側に配置されているため、被洗浄設備Fにおける入口温度も50℃以上となる。洗浄液が温水域以上に加熱されて被洗浄設備Fに供給されることにより、被洗浄物に着香している香気成分が洗浄液に溶出し易くなり、脱臭の効率も高められる。
【0047】
オゾンを作用させるときの洗浄液の液温は、好ましくは50℃以上95℃以下、より好ましくは50℃以上80℃以下、さらに好ましくは50℃以上70℃以下である。洗浄液の液温が50℃以上であれば、オゾンの自己分解が熱により顕著に促進され、ヒドロキシルラジカル等の活性種が常温域と比較して多量に生成されると共に、香気成分の分解の反応速度も高くなる。一方、洗浄液の液温が高過ぎると、オゾンの溶解度は低くなり、香気成分の分解の効率が頭打ちとなるため、熱水域よりも温水域の方がオゾンを有効に利用できる。
【0048】
図1に示すように、オゾン生成装置10は、圧縮機11と、酸素濃縮器12と、オゾン発生器13と、濃度計14とを備えている。オゾン生成装置10は、オゾンを生成し、オゾンを成分として含むオゾンガスを、被洗浄設備Fから回収された洗浄液に供給する。オゾン生成装置10が備える圧縮機11には、オゾンを生成させるための空気が、外部から給気されるようになっている。
【0049】
圧縮機11は、空気を圧縮することによって圧縮空気を生成する。そして、生成された圧縮空気は、酸素濃縮器12に導入される。酸素濃縮器12は、例えば、PSA(pressure swing adsorption)方式とされ、ゼオライト等の吸着材が充填された吸着塔を備えている。吸着材は、窒素や水分等に対して吸着能を有しており、所定圧以上に加圧された圧縮空気に含まれている窒素や水分等を除去するものである。
【0050】
酸素濃縮器12は、吸着塔に導入された圧縮空気から窒素や水分等を除去し、酸素濃度が高められた酸素濃縮ガスを生成する。一方で、酸素濃縮器12の吸着材は、所定圧未満の空気に対しては、吸着している窒素や水分等を脱離させる。そのため、酸素濃縮器12では、加減圧の繰り返しによって、酸素濃縮ガスの生成と、吸着材の吸着能の再生とが繰り返される。
【0051】
オゾン発生器13は、酸素濃縮ガス中にオゾンを発生させてオゾンガスを生成する。オゾン発生器13におけるオゾンの発生方式は、放電式、電気分解式、紫外線式等の適宜の形態とすることができる。但し、好ましい形態は、オゾンの大量生成に適した放電式によるものである。放電式のオゾン発生器13は、例えば、誘電体で被覆された電極対を備えるものである。この電極間に、酸素濃縮ガスが導入されると共に、交流電圧が印加されることによって、無声放電の発生に伴いオゾンガスが生成する。
【0052】
オゾンガスは、オゾンを好ましくは230g/m
3以下の濃度で含有し、残部が主として酸素によって組成される混成ガスである。オゾン発生器13において生成されたオゾンガスは、濃度計14によってオゾン濃度が計測された後、被洗浄設備Fから回収された洗浄液に供給される。洗浄液に対して供給されるオゾンガスのオゾン濃度は、より好ましくは40g/m
3以上210g/m
3以下、200g/m
3付近である。
【0053】
処理槽20は、被洗浄設備Fから回収された洗浄液を滞留させることが可能な密閉型の槽となっている。処理槽20には、被洗浄設備Fを洗浄した洗浄液が回収管110を通じて回収される。処理槽20は、回収管110や供給管120と比較して容積が大きく設けられているため、回収された洗浄液が処理槽20の内空に一時的に滞留するようになっている。処理槽20は、定液量を保持するように運用され、洗浄液の液相と共に気相が維持される。
【0054】
図1に示すように、処理槽20は、内空に散気装置22を備えている。散気装置22は、微小気泡を放出可能な多孔質構造を有している。また、散気装置22には、オゾン生成装置10が接続されており、オゾン生成装置10が生成したオゾンガスは、処理槽20に滞留している洗浄液に散気されて混合されるようになっている。
【0055】
オゾンガスは、気泡径が1μm未満程度のナノバブル、気泡径が1μm以上100μm未満程度のマイクロバブル、及び、気泡径が100μm程度以上の粗大気泡のいずれの形態で散気されてもよい。一方で、オゾンガスは、気泡径が1000μm程度以下であることが好ましい。オゾンガスの気泡径を微細にすると、比表面積が大きくなると共に気泡の内圧が高められ易くなる。そのため、洗浄液に対するオゾンの溶解度を向上させることができる。また、気泡径が100μm程度以上の粗大気泡であれば、気泡の上昇速度がマイクロバブル等と比較して速くなるため、洗浄液から気泡内に揮発した香気成分や、オゾンが分解して消失した後の気泡を、洗浄液から速やかに排除することができる。
【0056】
処理槽20では、被洗浄設備Fから回収された洗浄液にオゾンを作用させて、洗浄液に含まれている香気成分(有機物)を分解させる処理を行う。オゾンガスに含まれているオゾンの一部は、洗浄液に溶解し、液相において香気成分を直接酸化して分解したり、水分の存在下に水酸化物イオン等と反応して自己分解したりする。また、オゾンの一部は、気相に揮発した香気成分を直接酸化して分解したり、気相において自己分解して分子状酸素と共に酸素ラジカルを発生したりする。さらに、液相や気相におけるオゾンの自己分解を契機として、各種のラジカル種や活性酸素種が発生し、これらの活性種も香気成分の分解に寄与する。
【0057】
香気成分の分解の反応速度は、オゾンやその他の活性種の酸化力に影響される。オゾンの酸化還元電位は、約2.07Vである。したがって、結合エネルギが比較的小さい、炭素水素間結合、二重結合(C=C結合)、芳香環、エーテル結合等については、オゾンによる直接酸化によって開裂が生じ、香気成分が速やかに分解されることになる。その一方で、結合エネルギが比較的大きいC=O結合等については、オゾンによる直接酸化では分解し難い。
【0058】
これに対して、オゾンの自己分解により開始される連鎖反応では、より強い酸化力を有するラジカル種が生成し得る。例えば、気相中のオゾンが分解する等して酸素ラジカル(O)が生じ得る。酸素ラジカルの酸化還元電位は、約2.42Vである。また、水分の存在下にオゾンが自己分解し、ヒドロトリオキシルラジカル(HO
3)の生成を経てヒドロキシルラジカル(OH)が生じ得る。ヒドロキシルラジカルの酸化還元電位は、取り分け高く約2.81Vである。これらのラジカル種によれば、C=O結合等のように結合エネルギが比較的大きい結合をも開裂させることが可能である。
【0059】
処理槽20は、
図1に示すように、内空の気体を排出するための排気孔140を有している。排気孔140には、ミストセパレータ26が設置されている。ミストセパレータ26は、排出される気体に含まれている洗浄液の飛沫を捕集し、気体と共に洗浄液が排出されるのを防止するように働く。また、排気孔140には、排気処理装置60が設置された排気管が接続されている。そして、排気処理装置60の排気側には、吸引ポンプ62が設けられている。
【0060】
処理槽20では、洗浄液のオゾン処理に加えて、オゾンを作用させた洗浄液を脱気する処理を行う。処理槽20の内空に存在している気体は吸引ポンプ62によって吸引され、処理槽20の気相部は減圧雰囲気とされる。そのため、処理槽20に滞留している洗浄液からは、未反応のオゾン、オゾンの自己分解によって発生した酸素、未分解の香気成分、香気成分の分解によって生成した各種気体成分等が脱気される。そして、脱気された洗浄液は、供給管120を通じて被洗浄設備Fに再供給されて循環を続ける。その一方で、洗浄液から脱気した気体は、排気処理装置60に送られる。
【0061】
排気処理装置60は、洗浄液から脱気した気体に含まれ得るオゾンを無害化処理する。排気処理装置60は、例えば、冷却器、オゾン分解器等が直列状に接続されて構成される。冷却器は、気体に含まれる水分を凝縮して処理槽20に戻し、オゾン分解器は、気体に含まれるオゾンをオゾン分解触媒により酸素分子に分解し、系外への意図しない放出を防止する。その後、排気処理装置60において無害化された気体は、系外に排気される。
【0062】
以上の第1実施形態に係る有機物分解装置及び有機物分解方法によれば、被洗浄設備から回収された香気成分(有機物)を含む洗浄液が50℃以上に加熱されてオゾン処理されるため、熱によってオゾンの自己分解が促進され、オゾンの自己分解を契機とした連鎖反応により、ヒドロキシルラジカル等の活性種が多量に生成される。洗浄液に含まれている香気成分は、オゾンによる直接酸化に加えて、ヒドロキシルラジカル等の活性種の攻撃を受けるため、被洗浄設備から回収された洗浄液に難分解性の香気成分が含まれていたとしても、香気成分の多くを確実且つ速やかに分解させることができる。また、洗浄液が50℃以上に加熱されてオゾン処理されるため、熱によって香気成分の分解の反応速度が高められる。その結果、洗浄液を被洗浄設備に再供給したとき、未分解の香気成分が再着香するようなことが無くなり、また、洗浄液を頻繁に取り替える必要も無くなる。そのため、液状製品の製造設備を速やかに脱臭することが可能である。ひいては、定置洗浄の所要時間が長期化することが無くなり、洗浄液の必要量、オゾンの生成のコスト、洗浄液の加熱のコスト等も削減される。
【0063】
また、第1実施形態に係る有機物分解装置及び有機物分解方法によれば、加熱された洗浄液が被洗浄設備に供給されるため、被洗浄物に着香している香気成分の溶解度や拡散速度が高められ、香気成分を効率的に溶出させることができる。また、脱気された洗浄液が被洗浄設備に供給されるため、被洗浄物がオゾンによって劣化したり、洗浄液が被洗浄設備内に気泡を発生させたりするのが防止される。気泡の発生が防止される結果、被洗浄設備中には空気溜まりが形成され難くなるので、洗浄液が到達し難い箇所が生じて洗浄性が悪化することも防止される。また、オゾンを作用させた洗浄液が脱気されるため、オゾンの作用で分解できなかった未分解の香気成分についても、洗浄液から積極的に揮発させて排除することができる。
【0064】
また、第1実施形態に係る有機物分解装置及び有機物分解方法によれば、香気成分に対して被洗浄設備の外部でオゾンを作用させることができるため、オゾンを被洗浄設備に導入する場合と比較して、より適切にオゾンの反応条件を管理することができる。通常、洗浄液に混合されたオゾンは急速に自己分解するため、香気成分の分解反応は、洗浄液とオゾンが混合された直後の短時間で終息し、洗浄液が被洗浄設備の出口に到達するまでは持続し難い。そのため、オゾンを被洗浄設備に導入したとしても、未分解の香気成分の残留量は多くなり、回収した洗浄液を被洗浄設備に再供給したときに再着香を生じ易い。これに対して、被洗浄設備の外部では、分解し易いオゾンや消失し易い活性種を、香気成分に対して直ちに作用させることができる。
【0065】
また、第1実施形態に係る有機物分解装置及び有機物分解方法によれば、洗浄液に300ppb以下の濃度で含まれている極低濃度の香気成分を分解することが可能である。加熱された洗浄液は、被洗浄物に着香している香気成分を効率的に溶出し、香気成分が溶出した洗浄液は、被洗浄設備の外部において適切なオゾン濃度でオゾン処理される。そのため、300ppb以下の極低濃度の香気成分を、更に0.1ppb以下程度まで低下せしめることができる。つまり、一般には対応が困難とされている極微量の汚染に対応することが可能である。
【0066】
また、第1実施形態に係る有機物分解装置及び有機物分解方法によれば、被洗浄設備Fから回収された洗浄液にオゾンを作用させるオゾン処理部が、被洗浄設備Fから回収された洗浄液を滞留させる処理槽20であり、オゾンは、処理槽20に滞留している洗浄液に散気されて混合される。そのため、洗浄液に含まれている香気成分は、オゾンガスの気泡内に揮発して、気相においてオゾンと反応したり、オゾンガスの気泡によって形成される水蒸気密度が高い気液界面においてオゾンと反応したりすることができる。すなわち、ヒドロキシルラジカル等の活性種が気液界面付近で多量に生成し、その寿命が気相付近で保たれるようになるため、香気成分の分解の効率が良好になる。
【0067】
[第1変形例]
本発明に係る有機物分解装置及び有機物分解方法は、洗浄液を加熱する加熱装置の配置や、洗浄液を加熱する工程の時期について、特に制限されるものではない。例えば、洗浄液を加熱する加熱装置80は、処理槽(オゾン処理部)20における入口温度が50℃以上となる限り、被洗浄設備Fに供給されて回収される洗浄液をいずれの段階で加熱してもよい。すなわち、加熱装置80は、被洗浄設備Fに循環される洗浄液の流路上において、任意の位置に配置してよい。また、洗浄液を加熱する工程は、被洗浄設備Fに供給される洗浄液及び被洗浄設備Fから回収された洗浄液のうちのいずれかのみ、又は、両方を加熱する工程であってよい。例えば、次の装置及び方法(第1変形例に係る有機物分解装置及び有機物分解方法)のように、複数の加熱装置及び加熱工程を備える構成としてもよい。
【0068】
図4は、本発明の第1変形例に係る有機物分解装置の概略構成を示す図である。
図4に示すように、第1変形例に係る有機物分解装置1Aは、被洗浄設備Fに循環される洗浄液の流路上に、第1加熱装置81と、第2加熱装置82とを備えている。有機物分解装置1Aのその他の構成は、前記の有機物分解装置1と同様である。
【0069】
第1加熱装置81は、洗浄液の流路上において、被洗浄設備Fからの回収側、すなわち、被洗浄設備Fの出口よりも下流、且つ、処理槽20の入口よりも上流に配置されている。一方、第2加熱装置82は、洗浄液の流路上において、被洗浄設備Fへの供給側、すなわち、処理槽20の出口よりも下流、且つ、被洗浄設備Fの入口よりも上流に配置されている。第1加熱装置81や第2加熱装置82としては、例えば、熱交換器、通電加熱装置、直接加熱装置等の適宜の加熱原理による装置が利用される。
【0070】
図4に示す有機物分解装置1Aでは、洗浄液を加熱する処理が、第1加熱装置81と第2加熱装置82の両方によって行われる。有機物分解装置1Aにおいて行われる有機物分解処理(第1変形例に係る有機物分解方法)は、オゾンを作用させるときの液温が50℃以上、且つ、被洗浄設備Fに供給するときの液温が50℃以上となるように、被洗浄設備Fに供給される洗浄液及び被洗浄設備Fから回収された洗浄液を加熱し、オゾン処理と脱臭洗浄とを継続的に続けるものである。
【0071】
具体的には、第1加熱装置81は、第1温度センサT1によって計測される処理槽20における入口温度が50℃以上となるように洗浄液を加熱する。洗浄液は、被洗浄設備Fを通流する間に放熱し、オゾン処理に適さない低温にまで液温が低下することがある。第1加熱装置81が加熱を行うことにより、オゾン処理の反応場の温度が高められ、洗浄液に混合されたオゾンの自己分解が促進されると共に、オゾンや各種の活性種による香気成分の分解の反応速度も高められる。
【0072】
一方、第2加熱装置82は、第2温度センサT2によって計測される被洗浄設備Fにおける入口温度が50℃以上となるように洗浄液を加熱する。洗浄液は、オゾン処理や脱気処理が行われている間に放熱し、被洗浄設備Fに着香している香気成分を溶出させるのに適さない低温にまで液温が低下することがある。第2加熱装置82が加熱を行うことにより、被洗浄設備Fに導入される洗浄液の液温が高められ、被洗浄設備Fに着香している香気成分の溶出の効率が高められる。
【0073】
以上の第1変形例に係る有機物分解装置及び有機物分解方法によれば、オゾンを作用させるときの洗浄液の液温、及び、被洗浄設備を洗浄するときの洗浄液の液温の両方が50℃以上に加熱される。そのため、被洗浄物に着香している香気成分については、溶解度と拡散速度とを高めて速やかに溶出させることができるし、洗浄液に溶出させた香気成分については、多量に生成させた活性種を利用して確実に分解させることができる。そのため、脱臭洗浄の所要時間が短縮されると共に、洗浄液の必要量、オゾンの生成のコストも削減される。
【0074】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態に係る有機物分解装置及び有機物分解方法について説明する。
【0075】
図5は、本発明の第2実施形態に係る有機物分解装置の概略構成を示す図である。
図5に示すように、第2実施形態に係る有機物分解装置2は、回収管110と、供給管120と、オゾン生成装置10と、エジェクタ(オゾン処理部)20Aと、反応管(オゾン処理部)130と、脱気装置(脱気部)50と、加熱装置80と、第1温度センサT1と、第2温度センサT2とを備えている。この有機物分解装置2は、前記の有機物分解装置1と同様に、飲料等の液状製品の製造設備を定置洗浄し、製造設備から回収された洗浄液に含まれている有機物をオゾンを利用して分解処理する装置である。
【0076】
図5に示す有機物分解装置2では、洗浄液にオゾンを作用させるオゾン処理が、洗浄液を負圧とするエジェクタ20Aと反応管130において行われる。オゾンは、エジェクタ20Aによって負圧とされた洗浄液に吸引されて混合され、反応管130を通流する間に作用する。そして、オゾン処理された洗浄液は、脱気装置50で脱気されてから被洗浄設備Fに再供給され、洗浄液の循環による脱臭洗浄が継続的に続けられる。有機物分解装置2において行われる有機物分解処理(第2実施形態に係る有機物分解方法)は、オゾンを作用させるときの洗浄液の液温が50℃以上となるように洗浄液を加熱し、負圧とした洗浄液にオゾンガスを吸引させて混合することによりオゾンを作用させるものである。
【0077】
エジェクタ20Aは、洗浄液が通流する方向に縮径したノズルと、洗浄液が通流する方向に拡径したディフューザと、ノズルに開口した吸気口とを備えている。エジェクタ20Aでは、回収管110を通じて被洗浄設備Fから回収された洗浄液が、管路が狭められたノズルに導入されて流速が高められることにより負圧とされる。そのため、オゾン生成装置10が生成したオゾンガスは、負圧とされた洗浄液に吸気口から吸引されて混合される。エジェクタ20Aのディフューザでは、洗浄液の流速が減速されて圧力が昇圧される。そして、オゾンガスが混合された洗浄液は、反応管130に移送される。
【0078】
反応管130は、オゾンガスと洗浄液とを加圧状態に保持する管状の反応器である。反応管130の一端は、エジェクタ20Aに接続されている。一方、反応管130の他端は、脱気装置50に接続されている。なお、反応管130の終端側には、洗浄液にオゾンを溶解させるにあたって反応管130の内圧を高圧に維持する観点から、絞り弁、オリフィス、多孔板等を設けてもよい。
【0079】
脱気装置50は、オゾンを作用させた洗浄液を脱気する処理を行う。脱気装置50は、例えば、膜型、中空糸型等の適宜の気液分離膜を備える減圧脱気装置等によって構成される。気液分離膜の一次側には、供給管120の一端が接続され、二次側には、排気処理装置60が設置された排気管が接続される。排気処理装置60の排気側には、吸引ポンプ62が設けられている。
【0080】
脱気装置50が備える気液分離膜の一次側には、循環ポンプ70によって洗浄液が通される。一方、気液分離膜の二次側には、吸引ポンプ62によって真空引きが施される。そのため、循環している洗浄液は、クロスフロー式の濾過によって気液分離されて、未反応のオゾン、オゾンの自己分解によって発生した酸素、未分解の香気成分、香気成分等の分解によって生成した気体成分等が脱気される。そして、脱気された洗浄液は、供給管120を通じて被洗浄設備Fに再供給される。その一方で、洗浄液から脱気した気体は、排気処理装置60に送られる。
【0081】
以上の第2実施形態に係る有機物分解装置及び有機物分解方法によれば、被洗浄設備から回収された香気成分(有機物)を含む洗浄液が50℃以上に加熱されてオゾン処理されることにより、前記の第1実施形態と同様、ヒドロキシルラジカル等の活性種が多量に生成されると共に、香気成分の分解の反応速度が高められる。そのため、液状製品の製造設備を速やかに脱臭することが可能である。
【0082】
また、第2実施形態に係る有機物分解装置及び有機物分解方法によれば、被洗浄設備Fから回収された洗浄液にオゾンを作用させるオゾン処理部が、エジェクタ20Aであり、オゾンは、エジェクタ20Aによって負圧とされた洗浄液に吸引されて混合される。そのため、オゾンを含む気泡を微細化して洗浄液に混合することが可能であり、オゾンを効率的に洗浄液に溶解させることができる。また、エジェクタ20Aは、比較的小型であるし、洗浄液に対してオゾンを混合するにあたり特別な動力を要しない。加えて、有機物分解装置2によれば、回収管110の出口から供給管120の入口に至るまで、インライン型の流路が形成され得る。そして、この流路では、循環ポンプ70のみによって洗浄液を送液することも可能である。そのため、有機物分解装置が省スペース化されると共に、有機物分解装置自体の保守や洗浄を簡略化することができ、使用性に優れたものとなる。
【0083】
また、第2実施形態に係る有機物分解装置及び有機物分解方法によれば、オゾン処理された洗浄液が気液分離膜によって気液分離されて脱気される。洗浄液は、被洗浄設備に循環されながら気液分離膜によって確実に脱気されるため、被洗浄設備内に供給されたとき、空気溜りが形成されるのが防止される。また、オゾンの作用で分解できなかった未分解の香気成分についても、気液分離膜によって積極的に気液分離されて排除されるため、脱臭洗浄の効率がより高くなる。
【0084】
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態に係る有機物分解装置及び有機物分解方法について説明する。
【0085】
図6は、本発明の第3実施形態に係る有機物分解装置の概略構成を示す図である。
図6に示すように、第3実施形態に係る有機物分解装置3は、回収管110と、供給管120と、オゾン生成装置10と、気液混合ポンプ(オゾン処理部)20Bと、反応管(オゾン処理部)130と、脱気装置(脱気部)50と、加熱装置80と、第1温度センサT1と、第2温度センサT2とを備えている。この有機物分解装置3は、前記の有機物分解装置1と同様に、飲料等の液状製品の製造設備を定置洗浄し、製造設備から回収された洗浄液に含まれている有機物をオゾンを利用して分解処理する装置である。
【0086】
図6に示す有機物分解装置3では、洗浄液にオゾンを作用させるオゾン処理が、洗浄液とオゾンを含むガスとの気液二相流を圧送する気液混合ポンプ20Bと反応管130において行われる。オゾンは、気液混合ポンプ20Bによって渦流とされている洗浄液に混合され、反応管130を通流する間に作用する。そして、オゾン処理された洗浄液は、脱気装置50で脱気されてから被洗浄設備Fに再供給され、洗浄液の循環による脱臭洗浄が継続的に続けられる。有機物分解装置3において行われる有機物分解処理(第3実施形態に係る有機物分解方法)は、オゾンを作用させるときの洗浄液の液温が50℃以上となるように洗浄液を加熱し、渦流とされている洗浄液にオゾンガスを気液混合することによりオゾンを作用させるものである。
【0087】
気液混合ポンプ20Bは、液体と気体とを汲み上げ、気液二相流を加圧するポンプである。気液混合ポンプ20Bには、オゾン生成装置10が生成したオゾンガスと、被洗浄設備Fから回収管110を通じて回収された洗浄液とがそれぞれ汲み上げられる。気液混合ポンプ20Bは、例えば、筒状のケーシングと、ケーシング内に収められた羽根車とを備えている。混合ポンプ20Bでは、羽根車が回転することによって渦流とされた洗浄液にオゾンガスが供給され、渦流によってオゾンガスと洗浄液とが気液混合される。そして、オゾンガスが混合された洗浄液は、反応管130に移送される。
【0088】
反応管130は、オゾンガスと洗浄液とを加圧状態に保持する管状の反応器である。反応管130の一端は、気液混合ポンプ20Bに接続されている。有機物分解装置3におけるその他の構成は、前記の有機物分解装置2と同様である。
【0089】
以上の第3実施形態に係る有機物分解装置及び有機物分解方法によれば、被洗浄設備から回収された香気成分(有機物)を含む洗浄液が50℃以上に加熱されてオゾン処理されることにより、前記の第1実施形態と同様、ヒドロキシルラジカル等の活性種が多量に生成されると共に、香気成分の分解の反応速度が高められる。そのため、液状製品の製造設備を速やかに脱臭することが可能である。
【0090】
また、第3実施形態に係る有機物分解装置及び有機物分解方法によれば、被洗浄設備Fから回収された洗浄液にオゾンを作用させるオゾン処理部が、気液混合ポンプ20Bであり、オゾンは、気液混合ポンプ20Bによって渦流とされている洗浄液に混合される。気液混合ポンプ20Bは、洗浄液の圧送能力、及び、洗浄液とオゾンガスとの攪拌力の両方について比較的優れた性能を有している。そのため、有機物分解装置3は、大容量の洗浄液や高流量の洗浄液を被洗浄設備Fとの間で循環させるのに適し、大規模の製造設備の脱臭洗浄に好適に用いることができる。加えて、有機物分解装置3によれば、回収管110の出口から供給管120の入口に至るまで、インライン型の流路が形成され得る。そして、この流路では、気液混合ポンプ20Bと循環ポンプ70とによって洗浄液を送液することが可能である。そのため、洗浄液の揚程を稼ぐことができ、装置の設計、構成が制約され難い利点がある。
【0091】
[第2変形例]
本発明に係る有機物分解装置及び有機物分解方法は、次の装置及び方法(第2変形例に係る有機物分解装置及び有機物分解方法)のように、オゾン処理について促進酸化処理(Advanced Oxidation Process;AOP)を行う構成としてもよい。
【0092】
図7は、本発明の第2変形例に係る有機物分解装置の概略構成を示す図である。
図7に示すように、第2変形例に係る有機物分解装置2Aは、エジェクタ(オゾン処理部)20Aの下流、且つ、脱気装置(脱気部)50の上流に紫外線照射装置40を備えている。有機物分解装置2Aのその他の構成は、前記の有機物分解装置2と同様である。
【0093】
紫外線照射装置40は、紫外線塔41と、紫外線光源42とを備えて構成されている。紫外線塔41は、中空構造を有する反応塔となっており、一端側に洗浄液の入口を有し、他端側に洗浄液の出口を有している。紫外線塔41の入口は、エジェクタ20Aと管路を介して接続されており、出口は、脱気装置50と管路を介して接続されている。紫外線塔41の内空には、紫外線を発する紫外線光源42が支持されている。
【0094】
紫外線光源42は、
図7においては、長尺棒状の低圧水銀ランプとされている。低圧水銀ランプは、紫外線塔41の入口の付近から出口の付近まで洗浄液の流路に沿って配置されており、紫外線塔41を流される洗浄液に対して、紫外線の照射時間が確保されている。但し、紫外線光源42の形態、設置数、配置等は特に制限されるものでなく、発光ダイオード等であってもよいし、複数基設置してもよいし、紫外線塔41の内空を臨むように壁部に設置してもよい。
【0095】
図7に示す有機物分解装置2Aでは、オゾン処理させる洗浄液に紫外線を照射する処理が行われる。有機物分解装置2Aにおいて行う有機物分解処理(第2変形例に係る有機物分解方法)は、洗浄液にオゾンを作用させると共に紫外線を照射して香気成分(有機物)を分解するものである。
【0096】
具体的には、紫外線照射装置40は、オゾンを混合した後、脱気する前の洗浄液に紫外線を照射する。洗浄液に紫外線を照射し、オゾン分子や水分子を励起させることにより、オゾンの自己分解や水分子のラジカル化を促進させて促進酸化処理による香気成分の分解を行う。例えば、波長253.7nm付近の紫外線によると、オゾンの自己分解と、これを契機とするラジカル生成反応とが進む。そのため、多量のヒドロキシルラジカル等の活性種を発生させることができる。また、波長185nm付近の紫外線によると、水分子がラジカル化するため、直接的にヒドロキシルラジカルを発生させることもできる。
【0097】
以上の第2変形例に係る有機物分解装置及び有機物分解方法によれば、紫外線による促進酸化処理により、香気成分の効率的な分解を行うことができる。特に、多量のヒドロキシルラジカルを発生させることができるため、被洗浄設備から回収された洗浄液に難分解性の香気成分が含まれていたとしても、香気成分の多くを速やかに分解させることができる。また、紫外線によってオゾンの自己分解が促進されるため、オゾン処理した後のオゾン濃度をより確実に低減させることができる。そのため、洗浄液が被洗浄設備に供給されたとき、オゾンによって被洗浄物が劣化したり、被洗浄設備内に空気溜まりが形成されるのが確実に防止される。また、オゾンを無害化処理するための排気処理装置60を簡略化することができる。
【0098】
以上、本発明の実施形態及び変形例について説明したが、本発明は、前記の実施形態や変形例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。或る実施形態や変形例の構成の一部を他の実施形態や変形例の構成に置き換えたり、或る実施形態や変形例の構成の一部を他の実施形態や変形例に追加したり、或る実施形態や変形例の構成の一部を省略したりすることが可能である。
【0099】
例えば、前記の変形例1が備える第1加熱装置81及び第2加熱装置82の構成は、前記の第1実施形態から第3実施形態のいずれに適用することも可能である。また、前記の変形例2が備える紫外線照射装置40の構成は、前記の第1実施形態から第3実施形態のいずれに適用することも可能である。更に、前記の変形例1が備える構成と、前記の変形例2が備える構成とを併用することも可能である。
【0100】
また、加熱装置80は、洗浄液の流路上において、被洗浄設備Fからの回収側のみ、すなわち、被洗浄設備Fの出口よりも下流、且つ、オゾン処理部の入口よりも上流にのみ配置し、被洗浄設備Fに供給するときの液温が50℃以上となるように、被洗浄設備Fから回収された洗浄液のみを加熱してもよい。洗浄液を回収側で加熱する構成であると、供給側のみで加熱する構成と比較して、低い加熱コストでオゾン処理の温度のみを調整することができる。このような配置においては、オゾンを作用させるときの液温、すなわち、オゾン処理部における入口温度が50℃以上、且つ、被洗浄設備Fに供給するときの液温、すなわち、被洗浄設備Fにおける入口温度が50℃以上となるように洗浄液を加熱することが好ましい。或いは、加熱装置80は、オゾン処理部(処理槽20等)に組み込まれていてもよいし、液状製品の製造設備(被洗浄設備F)に備えられる加熱殺菌機等がその機能を兼ねてもよい。
【0101】
また、有機物分解装置(1,2,3,1A,2A)は、アルカリ洗浄や酸洗浄を行う定置洗浄ユニットとは別体に設けてもよい。例えば、循環ポンプ70、加熱装置80、給液管101、排液管102、切換弁V1、及び、切換弁V2は、それぞれ独立に、有機物分解装置と一体として設けてもよいし、有機物分解装置とは別体として設けてもよい。別体として設けるときは、被洗浄設備Fの一部として設けてもよいし、その他の定置洗浄装置(ユニット)の一部として設けてもよい。洗浄液専用の配管を被洗浄設備Fに接続し、アルカリ洗浄液や酸洗浄液を流すための配管とは異なる配管によって洗浄液を供給又は回収してもよい。
【0102】
また、オゾン生成装置10は、洗浄液に作用するオゾンを生成する限り、適宜の装置で構成してよい。例えば、オゾンを含むオゾンガスを生成して洗浄液に気液混合する間接方式に代えて、触媒電極により洗浄液中で水を電解してオゾンを生成する直接方式としてもよい。また、脱気装置50は、気液分離膜を備える形態に代えて、沸騰により気液分離を行う加熱脱気装置、遠心分離の原理で気液分離を行う遠心脱気装置、超音波の伝達により気液分離を行う超音波脱気装置、気相部を減圧して気液分離を行う減圧脱気装置等の形態としてもよい。