【発明が解決しようとする課題】
【0006】
非外骨格型のアシスト装置を装着する場合には、動力源であるモータやアクチュエータによって相対的に開閉する第1、第2アシスト力伝達部材の回転中心(装置側関節中心)を、装着者の関節中心に合わせる必要がある。すなわち、この状態が形成されるように、第1、第2アシスト力伝達部材のそれぞれを、装着者の関節に繋がる両側の身体部分に固定する必要がある。アシスト装置を装着者の関節に確実に位置決め固定できないと、適切にアシスト力を身体側に伝達できず、装着者に違和感、抵抗感が発生する。また、動作中に各アシスト装置の装着位置にずれが生じ、装着感等がさらに悪化する。
【0007】
アシスト装置を位置ずれが生じないように身体に固定するには、各アシスト装置から身体にアシスト力を伝える第1、第2アシスト力伝達部材を、ずれないように身体に確実に固定する必要がある。各アシスト力伝達部材が大きな力で身体に固定されると、それによって身体側の動きが拘束され、装着感が低下することがある。また、これらの部材が固定されている身体部分が、動作時の筋肉の収縮などによって周長などが変化する。このような身体側の変化にアシスト力伝達部材を固定している部材の側が追従できないと、装着者はアシスト力伝達部材によって動作時に拘束感を覚え、装着感、フィット性が低下してしまう。
【0008】
ここで、これまでに提案されている非外骨格型のアシスト装置は、上記の点において十分なものとは言えない。これに加えて、装着に時間が掛かり、また、装着者一人では適切に装着できない場合が多く、一般に介助者が必要であるという問題がある。
【0009】
例えば、伸縮性のタイツに各アシスト装置が固定されている場合には、各装着者に合わせて各アシスト装置をタイツに固定しておかないと、装着者がタイツを着用した状態において各アシスト装置を各関節に位置決めすることができない。また、動作時に、各アシスト装置が各関節に対して位置ずれが発生しやすいという問題がある。位置ずれを抑えるためにタイツ素材の伸縮力を高めると、タイツを着用するのに時間が掛かり、装着者一人ではタイツを着用できず、着用に介助者が必要になるという問題がある。
【0010】
各アシスト装置を個別に着用者の関節に位置決めして固定する構成の場合には、各アシスト装置が装着者の各関節に確実に位置決めされた状態で固定できる。しかし、各アシスト装置を個別に位置決め固定する必要があるので、装着に多大な時間を要するという問題がある。また、装着の度に位置決めを行う必要があるので、作業が煩雑である。さらに、装着者一人では各アシスト装置を正確に各関節に位置決めして固定する作業を行うことが困難である。例えば、左右の肘関節にアシスト装置を装着する場合などにおいては、装着者一人では装着を行うことができない。このために、装着に介助者が必要になるという問題点がある。
【0011】
本発明の課題は、このような点に鑑みて、アシスト装置を装着する作業を、装着者が一人で短時間のうちに簡単に行うことのできるアシスト装置装着用のウエアおよびアシストウエアシステムを提供することにある。
【0012】
また、本発明の課題は、アシスト装置を一旦位置決めすれば、その後の装着時の位置決め作業が不要となるアシスト装置装着用のウエアおよびアシストウエアシステムを提供することにある。
【0013】
さらに、本発明の課題は、可搬性、収納性に優れたアシスト装置装着用のウエアおよびアシストウエアシステムを提供することにある。
【0014】
また、本発明の課題は、装着感を損なうことなくアシスト装置を位置ずれなく確実に装着者に固定できるアシスト装置装着用のウエアおよびアシストウエアシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明によるアシスト装置装着用のウエアは、関節を中心とする動作をアシストする非外骨格型のアシスト装置を装着するために装着者が着用するウエアである。装着対象の前記アシスト装置は、動力発生部と、この動力発生部が発生する動力を関節回りのアシスト力として装着者に伝える第1、第2アシスト力伝達部材とを備え、前記第1アシスト力伝達部材は、装着者の関節に繋がる一方の第1身体部分に固定される部材であり、第2アシ
スト力伝達部材は、他方の第2身体部分に固定される部材である。
【0016】
本発明のアシスト装置装着用のウエアは、
装着者の関節を含む身体部分を取り囲むウエア部分と、
前記アシスト装置を着脱可能に前記ウエア部分に取り付けるために、前記ウエア部分の外側表面に設けたアシスト装置取付部と、
前記アシスト装置取付部に取り付けられた状態の前記アシスト装置を前記身体部分に固定するためのアシスト装置固定部材と
を有していることを特徴としている。
【0017】
本発明のアシスト装置装着用のウエアは、アシスト装置を着脱可能に取り付けるためのアシスト装置取付部を備えている。装着者は、アシスト装置が取り付けられていない状態のアシスト装置装着用のウエアを着用し、着用後に、アシスト装置取付部にアシスト装置を取り付ければよい。
【0018】
予めアシスト装置が固定されているウエアの場合には、重量があり、アシスト装置には所定の剛性を備えた構成部品が備わっているので、柔軟な通常のウエアの場合と同様に取り扱うことが困難である。本発明のアシスト装置装着用のウエアは、軽量であり、取り扱いも容易であるので、普通の衣服と同様に、短時間で労力を要せずに装着者が一人で着用できる。また、着用後は、ウエアに配置されているアシスト装置取付部にアシスト装置(例えば、アシスト装置の第1、第2アシスト力伝達部材)を取り付け、次に、ウエアに配置されているアシスト装置固定部材を用いてアシスト装置(例えば、アシスト装置の第1、第2アシスト力伝達部材)を身体側に固定すればよい。よって、装着者が各アシスト装置を個別に関節位置に位置決めして固定する場合に比べて、装着作業を短時間で労力を要せずに装着者一人で行うことができる。
【0019】
また、持ち運ぶ場合、収納しておく場合等においては、アシスト装置の全体あるいはアシスト装置の一部(例えば、重量のある動力発生部)を取り外しておけば、通常の衣服と同様にコンパクトに畳むことができるので、持ち運びが容易であり、収納にも場所を取らないので便利である。
【0020】
本発明のアシスト装置装着用のウエアにおいて、前記アシスト装置取付部は、前記アシスト装置の前記ウエア部分に対する取付位置を所定範囲内で変更できるように構成されていることが望ましい。
【0021】
このようにすれば、装着者の関節に対して、アシスト装置を正確に位置決めして固定することができる。また、一旦、アシスト装置を位置決めしてアシスト装置取付部に取り付ければ、次回以降の装着時には、アシスト装置の位置決め作業が不要になる。
【0022】
すなわち、アシスト装置を外す場合には、アシスト装置固定部材による固定を解除し、アシスト装置がアシスト装置取付部に取り付けられた状態のまま、アシスト装置装着用のウエアを脱げばよい。次回にアシスト装置装着用のウエアを着用すると、そこに取り付けられているアシスト装置は関節に位置決めされた状態となっているので、アシスト装置固定部材を締め付けてアシスト装置を身体側に固定する作業を行うだけでよい。よって、装着作業を、装着者一人で、簡単かつ短時間のうちに行うことができる。
【0023】
本発明において、前記アシスト装置取付部を、前記アシスト装置(例えば、アシスト装置の第1、第2アシスト力伝達部材)が機械的に掛止されるウエア側掛止部を備えた構成とすることができる。また、前記アシスト装置固定部材を、前記アシスト装置を前記身体部分に着脱可能に固定するための巻き付け部材を備えた構成とすることができる。この場
合には、前記巻き付け部材は、前記ウエア側掛止部から前記ウエア部分の周方向に延び、前記ウエア側掛止部に対して機械的に掛止可能な巻き付け部材側掛止部を備えており、前記巻き付け部材側掛止部は、少なくとも、前記巻き付け部材の先端部分に設けられている構成を採用することができる。
【0024】
例えば、前記ウエア側掛止部および前記巻き付け部材側掛止部は面ファスナーによって規定することができる。面ファスナーを用いれば、ワンタッチでアシスト装置の着脱および位置調整を行うことができるので便利である。なお、部材側掛止部はネジ、マグネット、ボタン、ファスナーなどでも規定することができる。
【0025】
なお、他の機械的な掛止機構、例えば、複数個のスナップボタンを用いる機構、スライド溝に沿ったスライド位置に締結用ボルトを用いて固定する機構などを用いて、アシスト装置の取付位置を調整できるようにすることも可能である。
【0026】
アシスト装置固定部材として用いる巻き付け部材は、アシスト装置を身体側に固定するための部材であり、固定するための機能と、アシスト装置から伝達されるアシスト力を身体側に伝達するためのウエア側アシスト力伝達部材として機能する。したがって、位置ずれが発生することなく固定し、確実に力を身体側に伝達できるように、所定以上の固定力で、アシスト装置を身体側に固定する必要がある。一方、巻き付け部材が巻き付けられている身体部分は、動作時の筋肉の収縮等によって周長などが変動する。したがって、巻き付け部材には、このような身体側の変動に追従でき、しかも、必要とされる固定力でアシスト装置を固定できることが望ましい。
【0027】
このために、本発明においては、前記巻き付け部材は、少なくとも、前記ウエア側掛止部から前記先端部分までの間の部分が伸縮部分となっており、前記伸縮部分は、前記巻き付け部材の長さ方向に伸縮可能となっている。伸縮部分の伸縮によって、身体側の変動に追従でき、巻き付け部材が全体として、必要とされる固定力でアシスト装置を身体部分に対して位置ずれしないように固定された状態を形成することができる。
【0028】
本発明において、ウエア部分のアシスト装置取付部には、そこに取り付けられるアシスト装置の重量が作用する。この部分のウエア素材の強度、耐久性を確保するために、前記ウエア部分における前記ウエア側掛止部を包含する範囲の部分が、連続した帯状の補強材によって補強されていることが望ましい。
【0029】
これに加えて、前記ウエア部分における前記ウエア側掛止部が配置されている部分も、それぞれ個別に補強材によって補強されていることが望ましい。
【0030】
本発明において、アシスト装置装着用のウエアを上衣として構成することができる。この場合には、
前記ウエア部分は、装着者の左右の肩関節および左右の肘関節を取り囲む部分を備えた上衣形状をしており、
前記ウエア部分には、前記アシスト装置として、少なくとも、装着者の左右一方の肩関節に固定される肩関節アシスト装置、および、左右一方の肘関節に固定される肘関節アシスト装置のそれぞれを固定するためのアシスト装置取付部およびアシスト装置固定部材が備わっている。
【0031】
本発明において、アシスト装置装着用のウエアをパンツ、ズボンなどの下衣として構成する場合には、
前記ウエア部分は、装着者の左右の股関節および左右の膝関節を取り囲む部分を備えた下衣形状をしており、
前記ウエア部分には、前記アシスト装置として、装着者の股関節に固定される股関節アシスト装置、および、膝関節に固定される膝関節アシスト装置のそれぞれを固定するためのアシスト装置取付部およびアシスト装置固定部材が備わっている。
【0032】
本発明において、アシスト装置装着用ウエアは、上衣および下衣が繋がった一体型の衣服として構成する場合には、
前記ウエア部分は、装着者の左右の肩関節および左右の肘関節を取り囲む部分を備えた上衣部分と、装着者の左右の股関節および左右の膝関節を取り囲む部分を備えた下衣部分とが繋がった形状をしており、
前記ウエア部分には、前記アシスト装置として、少なくとも、装着者の左右一方の肩関節に固定される肩関節アシスト装置、左右一方の肘関節に固定される肘関節アシスト装置、左右一方の股関節に固定される股関節アシスト装置、および、左右一方の膝関節に固定される膝関節アシスト装置のそれぞれを固定するためのアシスト装置取付部およびアシスト装置固定部材が備わっている。
【0033】
本発明において、股関節アシスト装置を取り付ける部分は次のように構成することができる。すなわち、
前記股関節アシスト装置を固定するための前記アシスト装置固定部材は、
前記股関節アシスト装置を前記装着者の腰の外側面に固定するために、前記巻き付け部材に加え、前記ウエア側掛止部から延びている内側巻き付け部材を更に備えており、
前記内側巻き付け部材は、前記ウエア側掛止部に対して機械的に掛止可能な内側巻き付け部材側掛止部を備えており、
前記ウエア側掛止部と前記内側巻き付け部材側掛止部との間に、前記股関節アシスト装置が固定された状態で、その上から前記巻き付け部材を重ねると、前記巻き付け部材側掛止部を前記ウエア側掛止部に掛止可能である。
【0034】
一方、本発明のアシストウエアシステムは、
上記構成のアシスト装置装着用のウエアと、少なくとも一台の非外骨格型のアシスト装置とを有している。例えば、前記アシスト装置は、動力発生ユニットと、この動力発生ユニットが発生する動力を関節回りのアシスト力として装着者に伝える第1、第2アシスト力伝達部材を備えたアシスト力伝達ユニットと、前記動力発生ユニットを着脱可能に取り付けるために、前記アシスト力伝達ユニットに設けた動力発生ユニット取付部とを備えている。この場合には、前記第1アシスト力伝達部材は、装着者の関節に繋がる一方の第1身体部分に固定される部材であり、第2アシスト力伝達部材は、他方の第2身体部分に固定される部材である。
【0035】
本発明のアシストウエアシステムのアシスト装置装着用のウエアは、装着者が一人で、短時間のうちに装着できる。また、アシスト装置を位置決めした後は、そのままアシスト装置をウエアに取り付けたまましておけば、次回以降においてアシスト装置の位置決めが不要になるので便利である。