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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-222025(P2017-222025A)
(43)【公開日】2017年12月21日
(54)【発明の名称】ドリルチャック
(51)【国際特許分類】
   B23B 31/12 20060101AFI20171124BHJP
   B23B 31/02 20060101ALI20171124BHJP
【FI】
   B23B31/12 D
   B23B31/02 601F
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【外国語出願】
【全頁数】34
(21)【出願番号】特願2017-109081(P2017-109081)
(22)【出願日】2017年6月1日
(31)【優先権主張番号】10 2016 110 110.9
(32)【優先日】2016年6月1日
(33)【優先権主張国】DE
(71)【出願人】
【識別番号】516049733
【氏名又は名称】レーム ゲー・エム・ベー・ハー
【氏名又は名称原語表記】Roehm GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ペーター シェンク
(72)【発明者】
【氏名】パトリック ヘンクスベアガー
(72)【発明者】
【氏名】ハンス バウマン
【テーマコード(参考)】
3C032
【Fターム(参考)】
3C032BB03
3C032BB05
3C032HH01
(57)【要約】      (修正有)
【課題】接線方向打撃機構の使用時にも確実に機能するドリルチャックを提供する。
【解決手段】チャックボディ2内には、チャック軸線に対して傾斜して配置された爪ガイド部が形成され、爪ガイド部内には、ねじ山付きリングを用いて調節可能な締付け爪6がガイドされ、ねじ山付きリングにトルクを伝達するように連結された締付けスリーブ11と、係止装置7とを備え、係止装置は、ほぼ相対回動不能で、チャックボディに関して軸方向に移動可能とされた係止スリーブ8から形成され、係止スリーブは、ロック部材9を有し、ねじ山付きリングまたはねじ山付きリングに結合された部分に、ロック切欠き10がロック部材を収容するために配置され、ロック部材は、チャックボディに関して回動可能に支承された切換リング37によって、ロック切欠きに噛み合う、ロック配置に対応する位置と、ロック切欠きから解除された、解除配置に対応する位置との間で調節可能である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
接線方向に負荷可能な打撃穿孔スピンドル(1)において作動するドリルチャックであって、前記打撃穿孔スピンドル(1)に結合されるか、または結合可能なチャックボディ(2)を備え、該チャックボディ(2)内には、チャック軸線(3)に対して傾斜して配置された爪ガイド部(4)が形成されており、該爪ガイド部(4)内には、ねじ山付きリング(5)を用いて調節可能な締付け爪(6)がガイドされており、さらに前記ねじ山付きリング(5)にトルクを伝達するように連結された締付けスリーブ(11)と、係止装置(7)とを備え、該係止装置(7)は、前記チャックボディ(2)に関する前記ねじ山付きリング(5)の相対回動を可能にする解除配置と、前記相対回動を妨害または阻止するロック配置との間で調節可能である、ドリルチャックにおいて、
前記係止装置(7)は、ほぼ相対回動不能に、しかし前記チャックボディ(2)に関して軸方向に移動可能に支承された係止スリーブ(8)から形成されており、該係止スリーブ(8)は、少なくとも1つのロック部材(9)を有しており、前記ねじ山付きリング(5)または該ねじ山付きリング(5)に結合された部分に、少なくとも1つのロック切欠き(10)が前記少なくとも1つのロック部材(9)を収容するために対応配置されており、前記少なくとも1つのロック部材(9)は、前記チャックボディ(2)に関して回動可能に支承された切換リング(37)によって、前記少なくとも1つのロック切欠き(10)に噛み合う、前記ロック配置に対応する位置と、前記少なくとも1つのロック切欠き(10)から解除された、前記解除配置に対応する位置との間で調節可能であることを特徴とする、接線方向に負荷可能な打撃穿孔スピンドル(1)において作動するドリルチャック。
【請求項2】
前記係止装置(7)は、前記ロック配置において前記相対回動を、前記ドリルチャックの解除に対応する回動方向でも、前記ドリルチャックの後締付けに対応する回動方向でも阻止するように、構成されている、請求項1記載のドリルチャック。
【請求項3】
前記切換リング(37)は、少なくとも1つの切換収容部(38)を有しており、前記係止スリーブ(8)には、少なくとも1つの切換部材(39)が対応配置されており、該切換部材(39)は、前記ロック配置において、前記少なくとも1つの切換収容部(38)内に収容されている、請求項1または2記載のドリルチャック。
【請求項4】
前記少なくとも1つの切換部材(39)が、少なくとも1つの制御面(40a;40b)を有しており、該制御面(40a;40b)は、前記切換リング(37)が予め規定されたトルクで前記チャックボディ(2)に対して相対的に回動されるや否や、前記切換部材(39)を前記切換収容部(38)から解除するように、形成されている、請求項3記載のドリルチャック。
【請求項5】
前記切換収容部(38)は、前記制御面(40a;40b)に対応する制御カム(41a;41b)を有している、請求項4記載のドリルチャック。
【請求項6】
前記係止スリーブ(8)が、複数のロック部材(9)を備えたロッククラウン(12)を有しており、前記ねじ山付きリング(5)にトルクを伝達するように連結された前記締付けスリーブ(11)に、複数のロック切欠き(10)を備えた収容クラウン(13)が対応配置されている、請求項1から5までのいずれか1項記載のドリルチャック。
【請求項7】
前記チャックボディ(2)が、軸方向ガイド部(42)を有しており、該軸方向ガイド部(42)内で、前記係止スリーブ(8)に設けられたガイド部材(43)がガイドされている、請求項1から6までのいずれか1項記載のドリルチャック。
【請求項8】
前記係止スリーブ(8)には、戻しばね(19)により負荷が加えられている、請求項1から7までのいずれか1項記載のドリルチャック。
【請求項9】
前記戻しばね(19)は、前記締付けスリーブ(11)および/または前記ねじ山付きリング(5)に形成されたばね収容部(44)に支持されている、請求項8記載のドリルチャック。
【請求項10】
前記チャックボディ(2)に相対回動不能にかつ軸方向で移動不可能にストッパスリーブ(45)が配置されており、該ストッパスリーブ(45)が、前記切換リング(37)の回動を制限するための少なくとも1つのストッパ(46a;46b)を有している、請求項1から9までのいずれか1項記載のドリルチャック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接線方向に負荷可能な打撃穿孔スピンドル(Schlagbohrspindel)において作動するドリルチャックであって、打撃穿孔スピンドルに結合されるかまたは結合可能なチャックボディを備え、該チャックボディ内に、チャック軸線に対して傾斜して延びる爪ガイド部が形成されており、該爪ガイド部内に、ねじ山付きリングを用いて調節可能な締付け爪がガイドされており、さらにねじ山付きリングにトルクを伝達するように連結された締付けスリーブと、係止装置とを備え、該係止装置は、チャックボディに関するねじ山付きリングの相対回動を可能にする解除配置と、この相対回動を妨害するかまたは阻止するロック配置との間で調節可能である、ドリルチャックに関する。
【0002】
冒頭で述べた形式のドリルチャックは、独国特許出願公開第102013111731号明細書(DE102013111731A1)から看取され得る。上掲の明細書に示された丸型爪ドリルチャックは、軸方向で操作可能な係止装置を有しており、該係止装置は、ねじ山付きリングの、チャックボディに関する相対回動を妨害するかまたは阻止することが望ましい。これによって、締付け爪が穿孔装置の運転時に解除も付加的な緊締もされないことが保証されることが望まれる。しかしこのドリルチャックでは、打撃穿孔運転またはインパクトドライバ運動時に係止装置がロック配置から解除配置へと移行され得ることが判った。このことは一方では工具の解除をもたらし、他方ではドリルチャックの極端な緊締をもたらし得る。
【0003】
独国特許第102010062014号明細書(DE102010062014B3)には、接線方向打撃機構を含む手持ち式工作機械が示されている。上掲の明細書の段落26には、接線方向打撃機構が詳しく説明されているので、接線方向打撃機構に関してはこの箇所を参照されたい。接線方向打撃機構は、通常、打撃穿孔スピンドルを有しており、該打撃穿孔スピンドルには、アンビルが対応して配置されている。このアンビルは、打撃穿孔スピンドルに相対回動不能に結合されている。さらに、機械駆動装置は、回転しながら部分的に接線方向で打撃する運動をアンビルを介して打撃穿孔スピンドルに伝達するハンマを有している。この運転時に一時的に強く高められたトルクが、打撃穿孔スピンドルに連結されたドリルチャックボディに作用する。この高められたトルクによって、ドリルチャックの係止装置が無効にされる虞がある。
【0004】
したがって本発明の課題は、冒頭で述べた形式のドリルチャックを改良して、接線方向打撃機構の使用時にも確実に機能するようにすることである。
【0005】
この課題は、独立請求項1の特徴部に記載の特徴を有するドリルチャックにより解決される。この場合、本発明によれば、係止装置は、ほぼ相対回動不能な、しかしチャックボディに関して軸方向に移動可能に支承された係止スリーブから形成されている。係止スリーブは少なくとも1つのロック部材を有している。この場合、ねじ山付きリングに、または該ねじ山付きリングに結合された部分に少なくとも1つのロック切欠きが少なくとも1つのロック部材を収容するために対応配置されている。さらに、少なくとも1つのロック部材は、チャックボディに関して相対回動可能に支承された切換リングを用いて、少なくとも1つのロック切欠きに噛み合う、ロック配置に対応する位置と、少なくとも1つのロック切欠きから解除された、解除配置に対応する位置との間で調節可能である。この構成には、ドリルチャックが接線方向打撃機構を備えた穿孔機においても使用され得るという利点が結びついている。接線方向打撃機構を備えた穿孔機の運転時に、本発明に係るドリルチャックが意図せずにロック位置から解除位置へとずらされないことが保証されている。
【0006】
これに関連して、係止装置が、ロック配置において相対回動を、ドリルチャックの解除に対応する回動方向でもドリルチャックの後締付けに対応する回動方向でも阻止するように構成されていると有利であることが判った。先行技術から公知のドリルチャックでは、係止装置は穿孔工具の後締付けを許容するように構成されている。したがって公知のドリルチャックでは、回動する締付け爪および該締付け爪に作用する遠心力に基づいて生じる締付け力損失は、後締付けにより補償されることが望ましい。この後締付けは、本発明では阻止されている。なぜならば、接線方向に負荷される打撃穿孔スピンドルの使用時には、ドリルチャックが過度に締め付けられて、使用された工具がもはや解除され得なくなるほど、トルクが高いからである。
【0007】
この場合、少なくとも1つのロック部材が、噛み合っている位置において、少なくとも1つのロック切欠きに形状接続式に噛み合っていると有利である。
【0008】
有利な態様は、切換リングが少なくとも1つの切換収容部を有していて、係止スリーブに少なくとも1つの切換部材が対応配置されており、該切換部材が、ロック配置において、少なくとも1つの切換収容部内に収容されていることを特徴とする。これにより、切換リングのための固定的に設定された切換位置が実現され得る。
【0009】
切換部材を安全に移動させることができるように、本発明の枠内では、少なくとも1つの切換部材が少なくとも1つの制御面を有しており、該制御面は、切換リングが予め規定されたトルクによりチャックボディに対して相対的に回動されるや否や、切換部材を切換収容部から解除するために形成されていると有利であることが示された。さらに、切換収容部が、制御面に対応する制御カムを有していると有意である。有利には、複数の切換部材が設けられている。切換部材の個数は、さらに有利には、切換リングに形成された切換収容部の個数に一致している。
【0010】
特に安定的な係止装置を提供することができるように、係止スリーブが、複数のロック部材を備えるロッククラウンを有しており、ねじ山付きリングにトルクを伝達するように連結された締付けスリーブに、複数のロック切欠きを備える収容クラウンが対応配置されていると有利である。
【0011】
チャックボディが、軸方向ガイド部を有していて、該軸方向ガイド部内で係止スリーブに設けられたガイド部材がガイドされていると特に有利であることが判った。ドリルチャックを特にコンパクトに形成するために、ガイド部材が切換部材に一体的に形成されていると有利である。
【0012】
さらに、係止スリーブに、戻しばねにより負荷が加えられていると有利であることが判った。これにより係止スリーブは、戻しばねにより常に噛み合った位置の方向へと押圧される。言い換えると、ドリルチャックは、ロック配置へ移動される必要性を有している。ドリルチャックが解除配置へと移行されると、ロック部材をロック切欠きから押し出すために、ユーザは、切換リングを、有利には予め規定されたトルクで能動的にチャックボディに関連して戻しばねのばね力に抗して移動させなければならない。切換リングの解放または戻し回動時に、少なくとも1つの切換部材が、切換リングの対応する切換収容部に整合しないことが生じると、接線方向打撃機構を備えたドリルチャックの作動時に、切換部材は切換収容部に関して、再び互いに整合するまで回動させられる。この場合、戻しばねは、切換部材を切換収容部内へと押圧し、これによりさらにロック部材が自動的に噛み合った位置へともどされる。このことは、ロッククラウンのロック部材が収容クラウンのロック切欠きに整合しない場合にも行われる。ここでもロッククラウンは、収容クラウンに関して、ロック部材が再び噛み合った位置へと移行可能である限り回動させられる。これにより、ロック位置がユーザにより能動的に生ぜしめられない場合でも、ドリルチャックが自動的に解除位置からロック位置へと移動することが保証されている。
【0013】
有利には、戻しばねは、締付けスリーブおよび/またはねじ山付きリングに形成されたばね収容部において支持されている。
【0014】
切換リングのための予め規定された切換位置を提供するために、チャックボディに相対回動不能にかつ軸方向で移動不可能にストッパスリーブが配置されており、ストッパスリーブが、切換リングの回動を制限するためのストッパを有していると有意である。
【0015】
以下に、本発明を図面に示した実施の形態につき詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明に係るドリルチャックを部分的に切り取って示した斜視図である。
図2図1に示したドリルチャックを部分的に切り取って解除配置で示した側面図である。
図3図1に示したドリルチャックを部分的に切り取ってロック配置で示した側面図である。
図4図1に示したドリルチャックを、締付けスリーブおよび切換リングなしで示した斜視図である。
図5図1に示したドリルチャックの縦断面図である。
図6図5に示したI−I線の断面図である。
図7図5に示したII−II線の断面図である。
図8】本発明に係るドリルチャックの別の実施の形態を、接続された打撃穿孔スピンドルと共に示す図である。
図9】本発明に係るドリルチャックの別の実施の形態を示す図である。
【0017】
図面には、チャックボディ2を備えたドリルチャックが示されている。チャックボディ2は、接線方向に負荷可能な打撃穿孔スピンドル1において作動するために設けられている。図1から図7に示した実施の形態では、打撃穿孔スピンドル1は、チャックボディ2に固く結合されおり、チャックボディ2に一体的に形成されている。打撃穿孔スピンドル1は、接線方向打撃機構のアンビルのための接続部23を有している。この接続部23は本実施の形態では、アンビルの回動固定された位置を設定する2つの扁平加工部24により形成されている。図8および図9に示した実施の形態では、択一的なスピンドル収容部25がチャックボディ2内に形成されている。スピンドル収容部25には、対応する打撃穿孔スピンドル1が接続可能である。図8に示した実施の形態では、スピンドル収容部25が収容部ねじ山26を備えて形成されており、該ねじ山26内に、ねじ山部材47を備えた打撃穿孔スピンドル1が螺入される。図9に示した実施の形態では、非円形の横断面を有するスピンドル収容部25がスピンドル頸部を収容するために成形されている。
【0018】
ドリルチャックの全ての実施の形態において、チャック軸線3に対して傾斜して延びる複数の爪ガイド部4が形成されている。これらの爪ガイド部4内に複数の締付け爪6がガイドされている。締付け爪6は、歯列27を有している。歯列27は、ねじ山付きリング5の締付けねじ山28に噛み合っている(図5図8図9)。これらの締付け爪6は、その間に工具収容部を形成する。ねじ山付きリング5の回動は、締付け爪6の間に配置されている穿孔工具またはドライバ工具を締め付けるかまたは解放するために、締付け爪6の開放または閉鎖を生ぜしめる。ねじ山付きリング5を外部から回動させることができるように、トルク伝達式に連結された締付けスリーブ11が設けられている。この締付けスリーブ11は、ユーザによって有利には手で操作可能である。
【0019】
例示的に図示されたドリルチャックは、さらに係止装置7を有している。この係止装置7は、チャックボディ2に関するねじ山付きリング5の相対回動を可能にする解除配置もしくは締付け配置と、チャックボディ2に関するねじ山付きリング5のこの相対回動を妨害または阻止するロック配置との間で調節可能である。
【0020】
係止装置7は、チャックボディ2に関して実質的に相対回動不能に配置された係止スリーブ8を有している。しかしこの係止スリーブ8は、軸方向でチャックボディ2に関して移動可能に支承されている。係止スリーブ8は、少なくとも1つのロック部材9を有している。この場合、図示された実施の形態では、係止スリーブ8は、複数のロック部材9を備えたロッククラウン12を有している(図1)。さらに、係止装置7は、ねじ山付きリング5、この場合は該ねじ山付きリング5に相対回動不能に結合された締付けスリーブ11に対応配置された少なくとも1つのロック切欠き10を少なくとも1つのロック部材9を収容するために有している。図示された実施の形態では、締付けスリーブ11は、その内側に位置する、締付け爪6に面した側に、複数のロック切欠き10を備えた収容クラウン13を有している。この場合、ロック切欠き10の個数はロック部材9の個数に相当する。
【0021】
係止スリーブ8は、チャックボディ2に対して回動可能に支承された切換リング37により軸方向に調節可能である。
【0022】
図2および図3に示した対比図から判るように、締付けスリーブ11および切換リング37は、解除配置において、かつロック配置において、チャックボディ2に関して軸方向に固定されている。締付けスリーブ11は、軸方向で前方に向かって、つまりドリルチャックの、打撃穿孔スピンドル1とは反対の側に向かう方向で、有利には回動可能に支承された保護キャップ29により支持されている。保護キャップ29自体は、止め輪30によりチャックボディ2に固定されている。後方に向かって、つまりドリルチャックの、打撃穿孔スピンドル1に面した側に向かう方向で、締付けスリーブ11の位置は有利にはストッパ31によりねじ山付きボディ5において固定されている。
【0023】
係止スリーブ8の、打撃穿孔スピンドル1に面した側に、切換部材39が一体的に成形されている。この切換部材39によって、係止スリーブ8は軸方向でチャックボディ2に関して移動可能である。切換部材39は、ロック配置では切換リング37内に形成された切換収容部38内に収容されている(図3)。例示的に示された実施の形態の切換リング37は、まさに3つの切換収容部38を有している。これらの切換収容部38内には、対応する個数の切換部材39がロック配置において噛み合っている。3つよりも多いかまたは少ない切換部材39および切換収容部38も可能である。遠心力を補償するために、切換部材39もしくは切換収容部38は全周にわたって均一に分配されている。
【0024】
示された実施の形態の切換部材39は、それぞれ両側に配置された制御面40a,40bを有しており、これにより、切換リング37の、第1の方向および第2の方向での回動時に、切換部材39は制御面40a,40bにより切換収容部38から解除され得る。この解除を付加的に容易にすることができるように、切換収容部38は有利には両側で一体的に成形された制御カム41a,41bを有している。
【0025】
係止スリーブ8は、軸方向で前方で戻しばね19により支持されているので、この戻しばね19の戻し力は係止スリーブ8に常に打撃穿孔スピンドル1の方向に向かって作用する。戻しばね19は、係止スリーブ8とは反対の側で、締付けスリーブ11に形成されたばね収容部44において支持されている。択一的には、戻しばね19は、チャックボディ2の一部において、またはねじ山付きリング5において支持されていてもよい。戻し力は、切換部材39が切換収容部38の方向に向かって押圧されることを保証することが望ましく、このことは、同時にロック部材9がロック切欠き10の方向に向かって押圧されることをもたらす。
【0026】
切換リング37の回動により、係止スリーブ8に対応配置されたロック部材9は、締付けスリーブ11の少なくとも1つのロック切欠き10に噛み合う、ロック配置に対応する位置と、少なくとも1つのロック切欠き10から解除された、解除配置に対応する位置との間で、調節され得る。言い換えると、ロック部材9を備えたロッククラウン12が、戻しばね19によってロック切欠き10を備えた収容クラウン13内に押し込まれる。したがって、ねじ山付きリング5の回動後に、ロック部材9がロック切欠き10に整合しないようにロッククラウン12が位置決めされている場合、ロッククラウン12が収容クラウン13の端面上に当接している、かつ/または切換部材39が切換リング37の端面48に当接している。後者の場合に、ドリルチャックが接線方向のインパクトドライバ運転または接線方向の打撃穿孔運転で駆動されると、切換部材39が切換収容部38に整合するまで、切換部材39を切換リング37の端面48に沿って「移動」させることができるトルクが作用することができる。この運動により、ロック部材9はロック切欠き10に対して位置調整され、ロッククラウン12は、戻しばね19の力によって噛み合った位置へと調節される(図7)。この噛み合った位置では、チャックボディ2に関するねじ山付きリング5の相対回動が、ドリルチャックの解除に対応する回動方向でも、ドリルチャックの後締付けに対応する回動方向でも阻止されている。
【0027】
係止スリーブ8は、複数のガイド部材43を有している。これらのガイド部材43によって、チャックボディ2に関する係止スリーブ8の回動固定された位置が固定される。チャックボディ2は、これらのガイド部材43に対して軸方向ガイド部42を有している。この軸方向ガイド部42内では、係止スリーブ8のガイド部材43がガイドされている。切換部材39は、示された実施の形態では二重の機能を提供しており、同時にガイド部材43としても構成されている(図4)。
【0028】
図5に示したI−I線の断面である図6から判るように、チャックボディ2に相対回動不能にかつ軸方向で移動不可能にストッパスリーブ45が配置されている。このストッパスリーブ45は、切換リング37を、打撃穿孔スピンドル1に面した側において軸方向でチャックボディ2に関して制限するもしくは固定する。このストッパスリーブ45は、切換リング37の回動を制限するための少なくとも1つのストッパ46a,46bを提供する。示された実施の形態では、ストッパスリーブ45は複数の窓部49を有している。これらの窓部49には、切換リング37のストッパエレメント50がガイドされている。これらの窓部49は、それぞれストッパスリーブ45の第1のストッパ46aおよび第2のストッパ46bにより画定される。ストッパエレメント50が第1のストッパ46aまたは第2のストッパ46bに当て付けられている場合、切換部材39は、切換収容部38内に位置しておらず、ロック部材9はロック切欠き10から解除されている(図2)。ストッパエレメント50がもはやストッパスリーブ45のストッパ46a,46bにもはや当て付けられていないように切換リング37が回動させられると、作用する戻しばね19に基づいて、ストッパエレメント50は自動的にセンタリングされた位置(図3)へと滑る。この場合に、切換部材39の制御面40a,40bは、切換収容部38の制御カム41a,41bに沿ってガイドされ、これによりドリルチャックはロック配置へと移行される。
【0029】
以下に本発明に係るドリルチャックの機能形式をもう一度説明する。穿孔工具またはドライバ工具を工具収容部内で緊締することができるように、ユーザによって切換リング37が戻しばね19のばね力に抗して回動され得る。この回動により、切換部材39が切換収容部38から押し出され、これにより、係止スリーブ8が戻しばね19の力に抗して締付け爪6に向かう方向に押圧される。この場合に係止スリーブ8の回動は行われない。なぜならば、係止スリーブ8は、チャックボディ2の軸方向ガイド部42内でガイドされるガイド部材43を有しているからである。係止スリーブ8のこの軸方向の運動時に、ロック部材9が、噛み合っている位置から、ロック切欠き10から解除された位置へと移行させられる。ドリルチャックは、いまや解除配置に位置しているので、ねじ山付きリング5は、締付け爪6がガイドされているチャックボディ2に関して回動することができる。今、締付けスリーブ11がねじ山付きリング5と一緒に、緊締に対応する回動方向でチャックボディ2に対して回動させられると、締付け爪6の緊締面が穿孔工具またはドライバ工具のシャフトに当て付けられるまで、締付け爪6により形成された工具収容部が締められる。
【0030】
今、切換リング37は再び回動され得るので、次いで戻しばね19のばね力によって自動的に切換部材39が再び後方に向かって切換収容部38内へと押し込まれる。切換部材39が切換収容部38に整合するか、ロック部材9がロック切欠き10に整合すると、次いでドリルチャックは自動的にロック配置へと移行させられる。しかし、切換部材39が切換収容部38に整合しない、もしくはロック部材9がロック切欠き10に整合しない場合、ロッククラウン12は、収容クラウン13の端面上に当接しており、ドリルチャックはまだ解除配置に位置している。しかしドリルチャックの接線方向打撃運転時に、収容部クラウン13に関するロッククラウン12の自動的な回動をもたらすトルクが導入される。つまり(たとえば短時間後に)ロック部材9が再びロック切欠き10に整合する場合、ロック部材9はロック切欠き10内に戻しばね19により作用する力に基づいて噛み合い、本発明に係るドリルチャックが自動的にロック配置へと移行されることが保証されている。
【0031】
ドリルチャックを再び解除するためには、切換リング37が改めて戻しばね19の力に抗して回動され得る。この場合に、係止スリーブ8は改めて軸方向に移動させられて、これによりロック部材9は解除された位置へと移動する。いまや、ねじ山付きリング5に結合された締付けスリーブ11は、穿孔工具またはドライバ工具が締付け爪6から再び解放されるまで、解除に対応する回動方向へと回動され得る。
【符号の説明】
【0032】
1 打撃穿孔スピンドル(接線方向の打撃穿孔スピンドル)
2 チャックボディ
3 チャック軸線
4 爪ガイド部
5 ねじ山付きリング
6 締付け爪
7 係止装置
8 係止スリーブ
9 ロック部材
10 ロック切欠き
11 締付けスリーブ
12 ロッククラウン
13 収容クラウン
19 戻しばね
23 接続部
24 扁平加工部
25 スピンドル収容部
26 収容部ねじ山
27 歯列
28 締付けねじ山
29 保護キャップ
30 止め輪
37 切換リング
38 切換収容部
39 切換部材
40a (第1の)制御面
40b (第2の)制御面
41a (第1の)制御カム
41b (第2の)制御カム
42 軸方向ガイド部
43 ガイド部材
44 ばね収容部
45 ストッパスリーブ
46a 第1のストッパ
46b 第2のストッパ
47 ねじ山付き部材
48 端面
49 窓部
50 ストッパエレメント
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【外国語明細書】