(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-222058(P2017-222058A)
(43)【公開日】2017年12月21日
(54)【発明の名称】積層造形装置
(51)【国際特許分類】
B29C 67/00 20170101AFI20171124BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20171124BHJP
B22F 3/105 20060101ALI20171124BHJP
B22F 3/16 20060101ALI20171124BHJP
【FI】
B29C67/00
B33Y30/00
B22F3/105
B22F3/16
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-117862(P2016-117862)
(22)【出願日】2016年6月14日
(11)【特許番号】特許第6076532号(P6076532)
(45)【特許公報発行日】2017年2月8日
(71)【出願人】
【識別番号】000132725
【氏名又は名称】株式会社ソディック
(72)【発明者】
【氏名】松本 格
【テーマコード(参考)】
4F213
4K018
【Fターム(参考)】
4F213AC04
4F213AJ02
4F213AJ04
4F213AJ08
4F213AJ11
4F213WA22
4F213WA25
4F213WL03
4F213WL12
4F213WL34
4F213WL43
4F213WL67
4K018AA24
4K018BA13
4K018BB03
4K018BB04
4K018CA44
4K018EA51
4K018EA60
(57)【要約】 (修正有)
【課題】微細形状を有する造形物も安定して成形でき、ブレードの摩耗を抑制し、高品質な造形物を高速に造形する。
【解決手段】造形領域Rを覆うチャンバ1と、造形領域Rに対して所望の三次元造形物を所定高さで分割してなる複数の各分割層毎に材料粉体を均一に撒布して材料粉体層8を形成する粉体層形成装置2と、材料粉体層8の所定の照射領域にレーザ光Lを照射して焼結層9を形成するレーザ照射装置4と、を備え、粉体層形成装置2は、材料粉体を収容し材料粉体を造形領域Rに吐出するリコータヘッド23と、吐出された材料粉体を所定の厚みに均すブレード31,33と、ブレード31,33をリコータヘッド23に保持する保持部材35,37とを含み、ブレード31,33は可撓性を有し、ブレード31,33および保持部材35,37は、非磁性でありかつ導電性を有する積層造形装置を提供する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
造形領域を覆うチャンバと、
前記造形領域に対して所望の三次元造形物を所定高さで分割してなる複数の各分割層毎に材料粉体を均一に撒布して材料粉体層を形成する粉体層形成装置と、
前記材料粉体層の所定の照射領域にレーザ光を照射して焼結層を形成するレーザ照射装置と、を備え、
前記粉体層形成装置は、
前記材料粉体を収容し前記材料粉体を前記造形領域に吐出するリコータヘッドと、
吐出された前記材料粉体を所定の厚みに均すブレードと、
前記ブレードを前記リコータヘッドに保持する保持部材とを含み、
前記ブレードは可撓性を有し、
前記ブレードおよび前記保持部材は、非磁性でありかつ導電性を有する、積層造形装置。
【請求項2】
前記ブレードは炭素繊維強化プラスチックからなり、前記保持部材はオーステナイト系ステンレスからなる、請求項1に記載の積層造形装置。
【請求項3】
前記ブレードの先端は前記材料粉体の平均粒径の値以下の表面粗さであるブラシ形状である、請求項1または請求項2に記載の積層造形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、積層造形装置に関する。特に、材料粉体を均一に撒布して材料粉体層を焼結し、焼結層を積層して造形物を生成する積層造形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザ光による粉末焼結積層造形法においては、造形テーブル上に材料粉体を均一に撒布して材料粉体層を形成し、材料粉体層の所定箇所にレーザ光を照射して焼結させることによって焼結層を形成し、この焼結層の上に材料粉体を均一に撒布して新たな材料粉体層を形成し、その新たな材料粉体層にレーザ光を照射して焼結させることによって下の焼結層と接合した新たな焼結層を形成し、そしてこれらを繰り返すことによって、複数の焼結層を積層して一体となる焼結体からなる所望の三次元造形物を形成する。
【0003】
ここで、リコータヘッドを造形テーブル上の水平一軸方向に移動させ、材料粉体を造形テーブル上に供給するとともに、リコータヘッドに取り付けられたブレードで供給された材料粉体を所定の圧力を加えながら均一の厚みに均し、所定の厚みの材料粉体層を形成する積層造形装置が公知である。特許文献1に示されるように、一般に金属製の剛性のある平板状のブレードが用いられる。以下、このような材料粉体層形成動作をリコートと称する。
【0004】
また、レーザ光を照射して材料粉体層を焼結する際に火花粒子が飛散し、この火花粒子が焼結層の表面に付着して突起状の異常焼結部となってしまうことがある。この異常焼結部が材料粉体層の上端面を超える高さに形成されると、リコート時にブレードが異常焼結部に衝突することがある。特許文献2に示されるように、ブレードが異常焼結部に衝突した際、切削工具で異常焼結部を除去する積層造形装置が公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3557970号公報
【特許文献2】特許第5888826号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
以上のような積層造形装置において、造形品が例えば柱状部や立壁部等の微細で不安定な形状(以下、単に微細形状という)を有し、微細形状部に異常焼結部が生成されたとき、リコートや異常焼結部の切削除去においてブレードや切削工具が異常焼結部に接触した際にこれまでに造形された焼結体を破壊してしまう虞がある。あるいは、切削工具が異常焼結部に引っ掛かり破損してしまう虞がある。また、問題なく造形が行えたとしても、異常焼結部の切削除去にはある程度の時間がかかる。
【0007】
また、剛性のあるブレードでリコートを行う際、供給された材料粉体を押し固めながらブレードを移動させるため、焼結体に少なからず圧力がかかっている。そのため、微細形状部上にリコートを行った際、微細形状部は倒され焼結不良となる虞がある。また、ブレードが比較的摩耗しやすく、より短期間での定期的な交換が必要となる。
【0008】
また、平坦な材料粉体層を形成し、ひいては平坦な焼結層を形成するため、リコート時には材料粉体から磁気や静電気が除去されている必要がある。
【0009】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、可撓性を有し非磁性でありかつ導電性を有するブレードによりリコートを行うことで、微細形状を有する造形物も安定して成形できるとともに、ブレードの摩耗を抑制し、高品質な造形物を従来に比して高速に造形できる積層造形装置を提供することを主たる目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、造形領域を覆うチャンバと、前記造形領域に対して所望の三次元造形物を所定高さで分割してなる複数の各分割層毎に材料粉体を均一に撒布して材料粉体層を形成する粉体層形成装置と、前記材料粉体層の所定の照射領域にレーザ光を照射して焼結層を形成するレーザ照射装置と、を備え、前記粉体層形成装置は、前記材料粉体を収容し前記材料粉体を前記造形領域に吐出するリコータヘッドと、吐出された前記材料粉体を所定の厚みに均すブレードと、前記ブレードを前記リコータヘッドに保持する保持部材とを含み、前記ブレードは可撓性を有し、前記ブレードおよび前記保持部材は、非磁性でありかつ導電性を有する、積層造形装置を提供するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る積層造形装置においては、可撓性を有し非磁性でありかつ導電性を有するブレードによりリコートを行う。そのため、リコート時に焼結体に加わる圧力を極力少なくすることができ、また異常焼結部を除去する必要がない。さらには平坦な材料粉体層を形成することができる。結果として、微細形状を有する造形物も安定して成形できるとともに、ブレードの磨耗を抑制し、高品質な造形物を従来に比して高速に造形することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態の積層造形装置の構成図である。
【
図3】リコータヘッド23の別の角度から見た斜視図である。
【
図4】ブレード31,33および保持部材35,37の正面図および側面図である。
【
図5】本発明の一実施形態の積層造形装置を用いた積層造形方法の説明図である。
【
図6】本発明の一実施形態の積層造形装置を用いた積層造形方法の説明図である。
【
図7】本発明の一実施形態の積層造形装置を用いた積層造形方法の説明図である。
【
図8】本発明の一実施形態の積層造形装置を用いた積層造形方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を用いて本発明の実施形態について説明する。以下に説明される複数の各構成部材における変形例は、それぞれ任意に組み合わせて実施することができる。
【0014】
図1に示すように、本発明の一実施形態の積層造形装置は、実質的に密閉されるように構成されたチャンバ1を備え、チャンバ1内には造形室11が設けられる。チャンバ1内には粉体層形成装置2が設けられる。粉体層形成装置2は、中央の貫通部位に造形領域Rを有するベース台21と、ベース台21上に配置されかつ水平1軸方向(矢印B方向)に移動可能に構成されたリコータヘッド23と、リコータヘッド23から吐出された材料粉体を平坦化して材料粉体層8を形成する一対のブレード31,33と、一対のブレード31,33をそれぞれリコータヘッド23に保持する一対の保持部材35,37と、を備える。造形領域Rには、上下方向(矢印A方向)に移動可能な造形テーブル25が設けられる。積層造形装置の使用時には、造形テーブル25上に造形プレート27が配置され、その上に材料粉体層8が形成される。
【0015】
リコータヘッド23は、
図2および
図3に示すように、
図1に示される材料供給装置13から供給される材料粉体を貯留する材料収容部221と、材料収容部221の上面に設けられ材料粉体の受口となる材料供給部223と、材料収容部221の底面に設けられかつ材料収容部221内の材料粉体を吐出する材料吐出部225とを備える。材料吐出部225は、リコータヘッド23の移動方向(矢印B方向)に直交する水平1軸方向(矢印C方向)に延びるスリット形状である。リコータヘッド23の両側面には一対のブレード31,33が保持部材35,37によってそれぞれ取り付けられる。ブレード31,33は、リコート時に異常焼結部を乗り越えられる程度に可撓性を有し、例えばブラシ形状を有する。材料粉体は、例えば平均粒径25μmの球形をなす鉄粉などの金属粉体である。
【0016】
ここで、
図4に基づき、ブレード31,33および保持部材35,37の具体的な構成を説明する。
図4はブレード31,33および保持部材35,37の正面図および側面図である。ブレード31,33は、多数本の繊維が長手方向(矢印C方向)に均一に配置された帯状のブラシ形状である。保持部材35,37は、ブレード31,33を保持するチャンネル351,371と、チャンネル351,371をリコータヘッド23の側面に固定するフラットバー353,373と、をそれぞれ有する。なお、一対のブレード31,33および保持部材35,37は、それぞれ同一の形状を有する。
【0017】
なお、本実施形態では、ブラシ形状のブレード31,33をリコータヘッド23の両側に設けたが、ブレード31,33はリコート時に異常焼結部を乗り越えられる程度に可撓性を有するのであれば他の形態でもよく、例えば平板形状でもよい。また、ブレードはリコータヘッド23の一方の側面に1つだけ設けてもよい。保持部材35,37もブレード31,33をリコータヘッド23に取り付けられるのであれば他の形態でもよく、またブレード31,33と保持部材35,37とが一体に形成されていてもよい。
【0018】
なお、より平滑な材料粉体層8を形成するため、ブレード31,33および保持部材35,37は脱磁され、かつ静電除去されていることが望ましい。そのため、ブレード31,33および保持部材35,37は非磁性であり(磁化率χの絶対値が0.1以下)、かつ導電性を有する(電気伝導率が10
6S/m以上)よう構成される。また、造形テーブル25は内部にヒータを有し、材料粉体層8はレーザ光Lによる焼結に適する温度(望ましくは、50℃以上120℃以下)まで予熱される。そのため、ブレード31,33は材料粉体層8の予熱温度に対して、耐熱性を有することが望ましい。以上のことから、ブレード31,33および保持部材35,37の材質としては、炭素繊維強化プラスチック、オーステナイト系ステンレス等のオーステナイト、銅、アルミニウム、真鍮、導電性シリコーン等が選択される。ただし、ブレード31,33が過剰にたわんでしまうと平坦な材料粉体層8を形成することが困難となるため、ブレード31,33の材質は、曲げ応力が50MPa以上150MPa以下程度であることが望ましい。特に本実施形態では、炭素繊維強化プラスチックは、可撓性がありヤング率が比較的高いため、ブレード31,33の材質として採用される。また本実施形態では、オーテスナイト系ステンレスは、強度があり腐食しにくく比較的安価であるため、保持部材35,37の材質として採用される。より具体的には、本実施形態では、ブレード31,33にはポリアミド66をベースにポリアミド6および導電性カーボンブラックを配合したコンポジット材を使用し、保持部材35,37にはSUS304を使用した。
【0019】
また、より平滑な材料粉体層8を形成するため、ブレード35,37の先端は材料粉体の平均粒径の値以下の表面粗さであることが望ましい。このように構成すれば、より平滑な材料粉体層8が形成できる。例えば、材料粉体の平均粒径が25μmであるとき、ブレード35,37の先端の表面粗さは、最大高さ粗さRz25μm以下であることが望ましい(最大高さ粗さRzは、日本工業規格JIS B 0601:2013にて規定される)。材料粉体は、材料の種類に応じて、平均粒径十数μmから十数μmの焼結に適する所定の大きさに形成されている。
【0020】
チャンバ1の上方にはレーザ照射装置4が設けられ、レーザ照射装置4から出力されたレーザ光Lは、チャンバ1に設けられたウィンドウ12を透過して造形領域Rに形成された材料粉体層8の所定の照射領域に照射され、焼結層9を形成する。所定の照射領域は、造形領域R内に存在し、所望の三次元造形物の輪郭形状で囲繞される領域とおおよそ一致する。レーザ照射装置4は、造形領域Rにおいてレーザ光Lを二次元走査可能に構成されていればよく、例えば、レーザ光Lを生成するレーザ光源と、レーザ光Lを造形領域Rにおいて二次元走査可能とする一対のガルバノスキャナとで構成される。レーザ光Lは、材料粉体を焼結可能なものであればその種類は限定されず、例えば、CO
2レーザ、ファイバレーザ、YAGレーザなどである。ウィンドウ12は、レーザ光Lを透過可能な材料で形成される。例えば、レーザ光Lがファイバレーザ又はYAGレーザの場合、ウィンドウ12は石英ガラスで構成可能である。
【0021】
次に、不活性ガス給排系統について説明する。本実施形態の不活性ガス給排系統は、ヒューム拡散装置51と、不活性ガス供給装置53と、ヒュームコレクタ55と、ダクトボックス57,59と、チャンバ1に設けられる各供給口および各排出口と、不活性ガス供給装置53およびヒュームコレクタ55と各供給口および各排出口とを接続する配管を含む。不活性ガス給排系統は、チャンバ1が常時所定濃度以上の不活性ガスで充満されているように不活性ガスを供給するとともに、レーザ光Lの照射によって発生したヒュームによって汚染された不活性ガスをチャンバ1の外に排出する。なお、本明細書において、不活性ガスとは、金属材料粉体と実質的に反応しないガスであり、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガスなどが例示される。
【0022】
リコータヘッド供給口61は、リコータヘッド23が材料供給装置13の設置位置に対して所定の照射領域を挟んで反対側に位置しているときにチャンバ排出口71と対面するように、矢印C方向に沿ってリコータヘッド23の片面に設けられる。
【0023】
チャンバ排出口71は、リコータヘッド供給口61に対面するように所定の照射領域から所定距離離れてチャンバ1の側板に設けられる。好ましくは、チャンバ排出口71に接続するように不図示の吸引装置が設けられ、レーザ光Lの照射経路からヒュームが効率よく排除される。このとき、吸引装置によって、チャンバ排出口71において、より多くの量のヒュームを排出することができ、造形室11内にヒュームが拡散しにくくなる。
【0024】
チャンバ供給口63は、ベース台21の端上に所定の照射領域を間に置いてチャンバ排出口71に対面するように設けられる。チャンバ供給口63は、リコータヘッド23が所定の照射領域を通過してリコータヘッド供給口61が所定の照射領域を間に置かずにチャンバ排出口71に直面する位置にあるとき、リコータヘッド供給口61から選択的に切り換えられて開放される。そのため、チャンバ供給口63は、リコータヘッド供給口61から供給される不活性ガスと同じ所定の圧力と流量の不活性ガスをチャンバ排出口71に向けて供給するので、常に同じ方向に不活性ガスの流れを作り出し、安定した焼結を行なえる点で有利である。
【0025】
リコータヘッド排出口73は、リコータヘッド23のリコータヘッド供給口61が設けられている片面に対して反対側の側面に、矢印C方向に沿って設けられる。リコータヘッド供給口61から不活性ガスを供給できないとき、換言すれば、チャンバ供給口63から不活性ガスを供給するときに、所定の照射領域のより近くで不活性ガスの流れを作り出していくらかのヒュームを排出するので、ヒュームをより効率よくレーザ光Lの照射経路から排除することができる。
【0026】
また、本実施形態の不活性ガス給排系統は、チャンバ排出口71に対面するようにチャンバ1の側板に設けられヒュームコレクタ55から送給されるヒュームが除去された清浄な不活性ガスを造形室11に供給する副供給口65と、チャンバ1の上面に設けられヒューム拡散装置51へ不活性ガスを供給するヒューム拡散装置供給口67と、チャンバ排出口71の上側に設けられチャンバ1の上側に残留するヒュームを多く含む不活性ガスを排出する副排出口75とを備える。
【0027】
チャンバ1の上面には、ウィンドウ12を覆うようにヒューム拡散装置51が設けられる。ヒューム拡散装置51は、円筒状の筐体511と、筐体511内に配置された円筒状の拡散部材512を備える。筐体511と拡散部材512の間に不活性ガス供給空間513が設けられる。また、筐体511の底面には、拡散部材512の内側に開口部514が設けられる。拡散部材512には多数の細孔515が設けられており、ヒューム拡散装置供給口67を通じて不活性ガス供給空間513に供給された清浄な不活性ガスは細孔515を通じて清浄空間516に充満される。そして、清浄空間516に充満された清浄な不活性ガスは、開口部514を通じてヒューム拡散装置51の下方に向かって噴出される。この噴出された清浄な不活性ガスは、レーザ光Lの照射経路に沿って流れ出てレーザ光Lの照射経路からヒュームを排除し、ウィンドウ12がヒュームによって汚れることを防止する。
【0028】
本実施形態の積層造形装置は、不活性ガス供給装置53と、ヒュームコレクタ55とを備える。不活性ガス供給装置53は、不活性ガスを供給する機能を有し、例えば、周囲の空気から窒素ガスを取り出す膜式窒素セパレータを備える装置である。ヒュームコレクタ55は、その上流側及び下流側にそれぞれダクトボックス57,59を有する。チャンバ1から排出されたヒュームを含む不活性ガスは、ダクトボックス57を通じてヒュームコレクタ55に送られ、ヒュームコレクタ55においてヒュームが除去された清浄な不活性ガスがダクトボックス59を通じてチャンバ1の副供給口65へ送られる。このような構成により、不活性ガスの再利用が可能になっている。
【0029】
不活性ガス供給系統として、
図1に示すように、不活性ガス供給装置53と、リコータヘッド供給口61、チャンバ供給口63およびヒューム拡散装置供給口67とがそれぞれ接続される。また、ヒュームコレクタ55と副供給口65とがダクトボックス59を通じて接続される。
【0030】
ヒューム排出系統として、
図1に示すように、チャンバ排出口71、リコータヘッド排出口73および副排出口75とヒュームコレクタ55とがダクトボックス57を通じてそれぞれ接続される。ヒュームコレクタ55においてヒュームが取り除かれた後の清浄な不活性ガスは、チャンバ1へと返送され再利用される。
【0031】
ここで、
図5から
図8に基づき、本発明の積層造形装置における積層造形方法について説明する。
図5から
図8において以下の説明に不必要な構成は適宜省略されている。まず、
図5に示すように、造形テーブル25上に造形プレート27を載置し、造形テーブル25の高さを適切な位置に調整する。この状態で、材料収容部221内に材料粉体が充填されているリコータヘッド23を矢印B方向に造形領域Rの左側から右側に移動させる。材料吐出部225より造形プレート27上に吐出された材料粉体は、リコータヘッド23の移動に伴いブレード33によって所定の厚みに均される。このとき、材料粉体には殆ど圧力が加えられない。このようにして、造形プレート27上に所定厚の材料粉体層8が形成される。次に、
図6に示すように、材料粉体層8中の所定の照射領域にレーザ光Lを照射し、材料粉体層8のレーザ光照射部位を焼結させることによって、1層目の焼結層91を得る。
【0032】
同様に、造形テーブル25の高さを材料粉体層8の1層分下げ、リコータヘッド23を造形領域Rの右側から左側に移動させることによって、吐出された材料粉体をブレード31によって均一に均し、1層目の焼結層91を覆うように造形テーブル8上に所定厚の材料粉体層8を形成する。次に、
図7に示すように、材料粉体層8中の所定の照射領域にレーザ光Lを照射し、材料粉体層8のレーザ光照射部位を焼結させることによって、2層目の焼結層92を得る。
【0033】
以上の工程を繰り返すことによって、3層目以降の焼結層9が順次形成される。上下に隣接する焼結層9は、互いに強く固着される。
【0034】
なお、
図8に示すように、材料粉体層8の焼結時に焼結層9の上に突起状の異常焼結部が形成されてしまうことがあるが、ブレード31,33は異常焼結部を乗り越えられる程度に可撓性を有しているため、次層の材料粉体層8を形成する際の支障にはならない。また、殆ど圧力をかけずに材料粉体層8を形成できるため、微細形状を有する焼結層9の上にリコートを行う時も焼結層9が破損する虞が少ない。
【0035】
さらには、ブレード31,33および保持部材35,37は脱磁され、かつ静電除去されているため、ブレード31,33および保持部材35,37における磁力や静電気による材料粉体の付着を抑制でき、より平坦な材料粉体層8を形成することができる。
【0036】
なお本発明の積層造形装置は、切削工具を取り付け可能なスピンドルを有する加工ヘッドを備え、所定数の焼結層9を形成する度に造形物の端面に対して切削加工を行ってもよい。また、造形物の表面に形成された異常焼結部を切削加工によって除去してもよい。ただし、微細形状の破損を避けるため、これらの切削加工は、造形物の内、破損する可能性の少ない微細形状を有さない箇所にのみ行うことが望ましい。
【0037】
本発明は、すでにいくつかの例が具体的に示されているように、図面に示される実施形態の構成に限定されず、本発明の技術思想を逸脱しない範囲で種々の変形または応用が可能である。
【符号の説明】
【0038】
1 チャンバ
2 粉体層形成装置
4 レーザ照射装置
8 材料粉体層
9 焼結層
23 リコータヘッド
31,33 ブレード
35,37 保持部材
L レーザ光
R 造形領域