特開2017-222077(P2017-222077A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 豊田合成株式会社の特許一覧
<>
  • 特開2017222077-加飾成形品の製造方法 図000003
  • 特開2017222077-加飾成形品の製造方法 図000004
  • 特開2017222077-加飾成形品の製造方法 図000005
  • 特開2017222077-加飾成形品の製造方法 図000006
  • 特開2017222077-加飾成形品の製造方法 図000007
  • 特開2017222077-加飾成形品の製造方法 図000008
  • 特開2017222077-加飾成形品の製造方法 図000009
  • 特開2017222077-加飾成形品の製造方法 図000010
  • 特開2017222077-加飾成形品の製造方法 図000011
  • 特開2017222077-加飾成形品の製造方法 図000012
  • 特開2017222077-加飾成形品の製造方法 図000013
  • 特開2017222077-加飾成形品の製造方法 図000014
  • 特開2017222077-加飾成形品の製造方法 図000015
  • 特開2017222077-加飾成形品の製造方法 図000016
  • 特開2017222077-加飾成形品の製造方法 図000017
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-222077(P2017-222077A)
(43)【公開日】2017年12月21日
(54)【発明の名称】加飾成形品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/16 20060101AFI20171124BHJP
   B29C 33/12 20060101ALI20171124BHJP
【FI】
   B29C45/16
   B29C33/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2016-118734(P2016-118734)
(22)【出願日】2016年6月15日
(71)【出願人】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】小林 賢治
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 達朗
【テーマコード(参考)】
4F202
4F206
【Fターム(参考)】
4F202AA24
4F202AD10
4F202AD29
4F202AH26
4F202CA11
4F202CB01
4F202CB13
4F202CB19
4F202CQ01
4F202CQ05
4F202CQ10
4F206AA24
4F206AD10
4F206AD29
4F206AH26
4F206JA07
4F206JB19
4F206JP30
4F206JQ81
4F206JQ90
(57)【要約】
【課題】加飾模様層の形成位置精度のより高い加飾成形品を製造する。
【解決手段】基材フィルム21上に加飾模様層15が形成されてなるフィルム20を、型開き状態の金型25におけるキャビティ型31に対し位置決めして係止する。先端部57aが他の部分よりも軟質の材料にて形成され、かつキャビティ型31の成形面34に接近及び離間する方向へ移動可能に設けられた複数の押圧部57を用い、フィルム20を全ての先端部57aによりキャビティ型31側へ押して成形面34の一部(突条部33)に押付ける。この状態でフィルム20を、真空吸引により成形面34に密着させた後、型締め状態の金型25内のキャビティに溶融樹脂を射出して成形品本体を成形するとともに、フィルム20の加飾模様層15を成形品本体の意匠面に付着させることで、成形品本体の意匠面が加飾模様層15により加飾された加飾成形品を得る。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャビティ型及びコア型を備える金型を用い、基材フィルム上に加飾模様層が形成されてなるフィルムを、型開き状態の前記金型における前記キャビティ型に対し位置決めして係止し、前記フィルムを真空吸引により前記キャビティ型の成形面に密着させた後、型締め状態の前記金型内において前記フィルムと前記コア型のコア面との間に形成されるキャビティに溶融樹脂を射出して成形品本体を成形するとともに、前記フィルムの加飾模様層を前記成形品本体の意匠面に付着させることにより、前記成形品本体の意匠面が前記加飾模様層により加飾された加飾成形品を製造する方法であって、
先端部が他の部分よりも軟質の材料にて形成され、かつ前記成形面に接近及び離間する方向へ移動可能に設けられた複数の押圧部を用い、前記キャビティ型に係止された前記フィルムを、前記真空吸引に先立ち、複数の前記押圧部の先端部により前記キャビティ型側へ押して前記成形面の一部に押付ける加飾成形品の製造方法。
【請求項2】
前記加飾模様層は複数種類の模様部からなり、
複数の前記押圧部を、隣り合う模様部の境界部分に沿って列をなすように配置し、
それぞれの前記押圧部の先端部による前記フィルムの押付けを、前記模様部の境界部分において行なう請求項1に記載の加飾成形品の製造方法。
【請求項3】
前記押圧部において前記列に沿う方向を幅方向とした場合、各押圧部の先端部による前記フィルムの押付けを、同先端部の幅方向における一部でのみ行なう請求項2に記載の加飾成形品の製造方法。
【請求項4】
複数の前記押圧部として、隣り合う押圧部が互いに接触した状態で配置されたものを用い、
前記押圧部において前記列に沿う方向を幅方向とした場合、各押圧部の先端部による前記フィルムの押付けを、同先端部の幅方向における全部で行なう請求項2に記載の加飾成形品の製造方法。
【請求項5】
前記成形品本体の表層部に溝部を有し、かつ隣り合う模様部の境界部分が前記溝部の内壁面に位置する加飾成形品が製造対象であり、
前記キャビティ型として、前記溝部を成形するための突条部を前記成形面に有するものを用い、
複数の前記押圧部のそれぞれの先端部により、隣り合う模様部の境界部分において前記フィルムを前記突条部に押付ける請求項2〜4のいずれか1項に記載の加飾成形品の製造方法。
【請求項6】
複数の前記押圧部を有する押圧機構を用い、
前記金型が型開きされた状態で前記押圧機構と前記キャビティ型とを接近させることで、複数の前記押圧部のそれぞれの先端部により、前記フィルムを前記キャビティ型側へ押して前記成形面の一部に押付ける請求項1〜5のいずれか1項に記載の加飾成形品の製造方法。
【請求項7】
前記押圧機構として、前記押圧部毎の先端部の少なくとも一部が同一平面上に位置するように揃えられたものを用い、
前記押圧機構と前記キャビティ型との接近に伴い、全ての前記押圧部の先端部を、前記キャビティ型に係止された前記フィルムに同時に接触させる請求項6に記載の加飾成形品の製造方法。
【請求項8】
前記押圧機構と前記キャビティ型との接近を、全ての前記押圧部の先端部により前記フィルムが前記成形面に押付けられた後に停止する請求項6又は7に記載の加飾成形品の製造方法。
【請求項9】
一部の前記押圧部のみの先端部により前記フィルムが前記成形面に押付けられると、その状態を、残りの全ての前記押圧部の先端部により前記フィルムが前記成形面に押付けられるまでの期間にわたり保持する請求項8に記載の加飾成形品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形品本体の意匠面が加飾模様層によって加飾された加飾成形品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
成形品本体の意匠面が加飾模様層によって加飾された加飾成形品を製造する方法の1つに、インモールド成形法と呼ばれるものがある(例えば、特許文献1参照)。この製造方法では、キャビティ型及びコア型を備える金型と、基材フィルム上に加飾模様層が形成されてなるフィルムとが用いられる。このフィルムが、型開き状態の金型におけるキャビティ型に対し位置決めされた状態で係止される。フィルムが真空吸引によりキャビティ型の成形面に密着させられる。その後、型締め状態の金型内において、フィルムとコア型のコア面との間に形成されるキャビティに溶融樹脂が射出されることにより、成形品本体が成形される。この成形の過程で、フィルムの加飾模様層が成形品本体の意匠面に転写(付着)されることで、目的とする上記加飾成形品が得られる。
【0003】
さらに、上記特許文献1に記載された製造方法では、キャビティ型に係止されたフィルムが、真空吸引に先立ち、コア型又は治具によってキャビティ型側へ押されて成形面に近づけられる。そのため、フィルムと成形面との間隔が狭められずに一気に真空吸引される場合に比べ、真空吸引時におけるフィルムの動き量が少ない。成形面に対する加飾模様層の位置は、フィルムの温度分布のばらつきや、フィルムと成形面との間に形成される密閉空間内での空気の流れのばらつきから影響を受けにくい。その結果、フィルムと成形面との間隔が狭められずに一気に真空吸引される場合よりも、加飾模様層の形成位置の精度が高くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−146956号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、コア型又は治具によってフィルムをキャビティ型側へ押す上記特許文献1に記載された製造方法では、フィルムを成形面に押付けると、フィルムや金型を傷付けるおそれがあることから、フィルムを成形面に近づけるにとどめている。フィルムは、成形面に近づけられた状態で真空吸引される。そのため、成形面に密着するまでにフィルムが動いて、加飾模様層の位置がずれるおそれがある。
【0006】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、加飾模様層の形成位置精度のより高い加飾成形品を製造することのできる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する加飾成形品の製造方法は、キャビティ型及びコア型を備える金型を用い、基材フィルム上に加飾模様層が形成されてなるフィルムを、型開き状態の前記金型における前記キャビティ型に対し位置決めして係止し、前記フィルムを真空吸引により前記キャビティ型の成形面に密着させた後、型締め状態の前記金型内において前記フィルムと前記コア型のコア面との間に形成されるキャビティに溶融樹脂を射出して成形品本体を成形するとともに、前記フィルムの加飾模様層を前記成形品本体の意匠面に付着させることにより、前記成形品本体の意匠面が前記加飾模様層により加飾された加飾成形品を製造する方法であって、先端部が他の部分よりも軟質の材料にて形成され、かつ前記成形面に接近及び離間する方向へ移動可能に設けられた複数の押圧部を用い、前記キャビティ型に係止された前記フィルムを、前記真空吸引に先立ち、複数の前記押圧部の先端部により前記キャビティ型側へ押して前記成形面の一部に押付けている。
【0008】
上記の製造方法では、加飾成形品の製造に際し、フィルムが、型開き状態の金型におけるキャビティ型に対し位置決めされた状態で係止される。
次に、フィルムが、複数の押圧部のそれぞれの先端部によりキャビティ型側へ押される。このときには、基材フィルムは伸びるが、複数の押圧部によって押されていて、同押圧部に対し動きにくい。加飾模様層についても同様であり、各押圧部に対し動きにくい。
【0009】
上記のように、複数の押圧部によって押されることで、フィルムは同押圧部に対する位置を保持しつつ伸びて成形面に近づく。そして、フィルムの押された部分は、キャビティ型の成形面の一部に押付けられる。このとき、複数の押圧部のそれぞれは、成形面に接近及び離間する方向へ移動可能である。そのため、仮に、高低差のある部分を有する成形品本体を成形するために、成形面が非平面であっても、フィルムが成形面に押付けられる位置まで、同フィルムを対応する押圧部によって押すことが可能である。表現を変えると、フィルムのうち、各押圧部によって押された箇所を、成形面に押付けることが可能である。
【0010】
また、フィルムが押付けられるキャビティ型が金属によって形成されていて硬質であるのに対し、フィルムを押す押圧部の先端部は、同押圧部の他の部分よりも軟質の材料によって形成されている。そのため、上記フィルムの成形面に対する押付けは、押圧部の先端部が弾性変形することによって行なわれる。従って、各押圧部の先端部が硬質材によって形成された場合とは異なり、フィルム、キャビティ型及び押圧部のいずれにも傷が付きにくい。
【0011】
そして、フィルムが真空吸引されることにより、そのフィルムは成形面に密着させられて、同成形面に倣った形状に賦形(予備成形)される。このとき、フィルムのうち、複数の押圧部によって成形面に押付けられている箇所は、その箇所から動くことを規制される。そのため、フィルムの全体が成形面から離れた状態で真空吸引される場合とは異なり、成形面に密着するまでにフィルムが各押圧部に対し動いて、加飾模様層の位置がずれることが起こりにくい。
【0012】
続いて、型締め状態の金型内において、フィルムとコア型のコア面との間に形成されるキャビティに溶融樹脂が射出されて成形品本体が成形される。この成形の過程で、溶融樹脂の熱、圧力等により、フィルムの加飾模様層が、成形品本体の意匠面に対し高い形成位置精度で付着する。
【0013】
上記加飾成形品の製造方法において、前記加飾模様層は複数種類の模様部からなり、複数の前記押圧部を、隣り合う模様部の境界部分に沿って列をなすように配置し、それぞれの前記押圧部の先端部による前記フィルムの押付けを、前記模様部の境界部分において行なうことが好ましい。
【0014】
上記の製造方法によれば、複数の押圧部のそれぞれの先端部は、キャビティ型との間隔が狭くなる過程で、加飾模様層の隣り合う模様部の境界部分に接触する。各押圧部の先端部は、さらにキャビティ型との間隔が狭くなることで、フィルムを押して、成形面に押付ける。ここで、複数の押圧部は、模様部の境界部分に沿って列をなしている。そのため、フィルムは、上記境界部分のうち、上記複数の押圧部によって押された長さ方向に広い領域において、成形面に押付けられる。
【0015】
この状態で、フィルムが真空吸引されることで、フィルムのうち、複数の押圧部によって成形面に押付けられている箇所、すなわち、隣り合う模様部の境界部分の多くは、その箇所から動くことを規制される。真空吸引により成形面に密着するまでに境界部分が押圧部に対し動いて、位置がずれることが起こりにくい。
【0016】
従って、成形品本体の成形の過程で、加飾模様層は、隣り合う模様部の境界部分が、成形品本体のうち、予め定められた形成予定箇所に位置するように、高い位置精度で付着する。
【0017】
上記加飾成形品の製造方法において、前記押圧部において前記列に沿う方向を幅方向とした場合、各押圧部の先端部による前記フィルムの押付けを、同先端部の幅方向における一部でのみ行なうようにしてもよい。
【0018】
上記の製造方法によれば、加飾模様層の隣り合う模様部の境界部分でのフィルムの成形面への押付けは、その境界部分に沿って列をなすように配置された複数の押圧部のそれぞれの先端部のうち、幅方向における一部のみによって行なわれる。この場合には、加飾模様層の上記境界部分でのフィルムの成形面への押付けは、上記列に沿う方向に離間した複数箇所で行なわれる。
【0019】
上記加飾成形品の製造方法において、複数の前記押圧部として、隣り合う押圧部が互いに接触した状態で配置されたものを用い、前記押圧部において前記列に沿う方向を幅方向とした場合、各押圧部の先端部による前記フィルムの押付けを、同先端部の幅方向における全部で行なうようにしてもよい。
【0020】
上記の製造方法によれば、加飾模様層の隣り合う模様部の境界部分でのフィルムの成形面への押付けは、その境界部分に沿って列をなすように配置された複数の押圧部のそれぞれの先端部のうち、幅方向における全部によって行なわれる。隣り合う押圧部は互いに接触している。そのため、この場合には、加飾模様層の上記境界部分でのフィルムの成形面への押付けは、その境界部分の長さ方向に連続した広い領域で行なわれる。
【0021】
上記加飾成形品の製造方法において、前記成形品本体の表層部に溝部を有し、かつ隣り合う模様部の境界部分が前記溝部の内壁面に位置する加飾成形品が製造対象であり、前記キャビティ型として、前記溝部を成形するための突条部を前記成形面に有するものを用い、複数の前記押圧部のそれぞれの先端部により、隣り合う模様部の境界部分において前記フィルムを前記突条部に押付けることが好ましい。
【0022】
上記の製造方法によれば、位置決めされた状態でキャビティ型に係止されたフィルムは、隣り合う模様部の境界部分において、複数の押圧部の先端部によりキャビティ型側へ押され、突条部に押付けられる。
【0023】
この状態で、フィルムが真空吸引されることで、フィルムのうち各押圧部によって突条部に押付けられている箇所、すなわち、隣り合う模様部の境界部分は、その突条部に対し動くことを規制される。
【0024】
続いて、型締め状態の金型内のキャビティに溶融樹脂が射出されて、溝部を有する成形品本体が成形される。この成形の過程で、隣り合う模様部の境界部分が溝部の内壁面に位置するように、加飾模様層が成形品本体に対し高い形成位置精度で付着する。
【0025】
従って、上記境界部分では、互いに異なる模様部が隣接することになるが、同境界部分が溝部の内壁面に位置することで、溝部とは異なる箇所に位置する場合に比べ境界部分が目立ちにくくなる。
【0026】
上記加飾成形品の製造方法において、複数の前記押圧部を有する押圧機構を用い、前記金型が型開きされた状態で前記押圧機構と前記キャビティ型とを接近させることで、複数の前記押圧部のそれぞれの先端部により、前記フィルムを前記キャビティ型側へ押して前記成形面の一部に押付けることが好ましい。
【0027】
上記の製造方法によれば、真空吸引に先立ち、金型が型開きされた状態で、押圧機構とキャビティ型とが接近させられると、全ての押圧部の先端部が、位置決めされた状態で係止されたフィルムに接触する。押圧機構とキャビティ型とがさらに接近されることで、複数の押圧部の先端部によって押されたフィルムは成形面に近づけられた後、その成形面の一部に押付けられる。
【0028】
上記加飾成形品の製造方法において、前記押圧機構として、前記押圧部毎の先端部の少なくとも一部が同一平面上に位置するように揃えられたものを用い、前記押圧機構と前記キャビティ型との接近に伴い、全ての前記押圧部の先端部を、前記キャビティ型に係止された前記フィルムに同時に接触させることが好ましい。
【0029】
上記の製造方法によれば、金型が型開きされた状態で、押圧機構とキャビティ型とが接近させられると、その接近に伴い全ての押圧部の先端部が、キャビティ型に係止されたフィルムに同時に接触させられる。その後も、押圧機構とキャビティ型との接近が続けられることで、フィルムが全ての押圧部によって押される。
【0030】
従って、フィルムのうち、複数の押圧部によって押される箇所は、どの箇所であっても同じタイミングで押され始める。どの押圧部によって押される場合であっても、フィルムは同時期から同押圧部に対し動きにくくされる。
【0031】
上記加飾成形品の製造方法において、前記押圧機構と前記キャビティ型との接近を、全ての前記押圧部の先端部により前記フィルムが前記成形面に押付けられた後に停止することが好ましい。
【0032】
上記の製造方法によれば、金型が型開きされた状態で、押圧機構とキャビティ型とが接近させられると、フィルムのうち各押圧部の先端部によって押された部分は、キャビティ型の成形面の一部に押付けられる。そして、全ての押圧部の先端部によってフィルムが成形面に押付けられると、押圧機構とキャビティ型との接近が停止される。
【0033】
上記加飾成形品の製造方法において、一部の前記押圧部のみの先端部により前記フィルムが前記成形面に押付けられると、その状態を、残りの全ての前記押圧部の先端部により前記フィルムが前記成形面に押付けられるまでの期間にわたり保持することが好ましい。
【0034】
上記の製造方法によれば、金型が型開きされた状態で、押圧機構とキャビティ型とが接近させられると、フィルムのうち各押圧部の先端部によって押された部分は、キャビティ型の成形面の一部に押付けられる。一部の押圧部のみの先端部によりフィルムが成形面に押付けられると、その状態は、残りの全ての押圧部の先端部によりフィルムが成形面に押付けられるまでの期間にわたり保持される。
【0035】
そのため、仮に、高低差のある部分を有する成形品本体を成形するために、複数の押圧部間で、フィルムを成形面に押付け始めるタイミングが異なっても、最後の押圧部によってフィルムが成形面に押付けられるまでは、先行してフィルムを成形面に押付けた押圧部は、その押付けた状態を維持する。
【発明の効果】
【0036】
上記加飾成形品の製造方法によれば、加飾模様層の形成位置精度のより高い加飾成形品を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】一実施形態における加飾成形品の正面図。
図2】(a)は図1の2a−2a線断面図、(b)は図1の2b−2b線部分断面図。
図3】(a),(b)は、一実施形態における加飾成形品を製造する工程の一部を説明する部分側断面図。
図4】(a),(b)は、同じく一実施形態における加飾成形品を製造する工程の一部を説明する部分側断面図。
図5図4(b)における押圧機構を取り出して示す部分側面図。
図6図5における押圧機構の部分平面図。
図7図5における押圧アセンブリの構成部材を分解して示す部分側面図。
図8】(a),(b)は、一実施形態における加飾成形品を製造する工程の一部を説明する部分側断面図。
図9】(a),(b)は、同じく一実施形態における加飾成形品を製造する工程の一部を説明する部分側断面図。
図10図9(b)における押圧機構を取り出して示す部分側面図。
図11】一実施形態において、押圧部によってフィルムが突条部に押付けられた状態を示す部分平断面図。
図12】(a),(b)は、一実施形態における加飾成形品を製造する工程の一部を説明する部分側断面図。
図13】(a),(b)は、同じく一実施形態における加飾成形品を製造する工程の一部を説明する部分側断面図。
図14】押圧機構における押圧部の変形例を示す部分側面図。
図15】加飾成形品の変形例を示す図であり、溝部における加飾模様層の境界部分と、押圧アセンブリとの位置関係を示す正面図。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、加飾成形品の製造方法を具体化した一実施形態について、図1図13を参照して説明する。
最初に、本実施形態の製造方法によって得られる加飾成形品の概略構成について説明する。加飾成形品としては、例えば、自動車用の内装品として具体化されるものを想定している。
【0039】
図1及び図2(a),(b)には、発明の特徴部分を説明するために、加飾成形品11が簡略化して図示されている。加飾成形品11は、成形品本体12及び加飾模様層15を備えている。成形品本体12は、樹脂材料を用い射出成形を行なうことによって形成されている。成形品本体12は、図2(a)の少なくとも上下方向については、中央部分が最も多く突出するように湾曲した状態で形成されている。成形品本体12の表層部には、上下方向に延びる溝部13が形成されている。溝部13は、成形品本体12と同様に、上下方向については、中央部分が最も多く突出するように湾曲している。溝部13は、上下方向のどの箇所でも同様の断面を有している。成形品本体12の外表面の一部は、意匠面14を構成している。上述した溝部13の内壁面もまた意匠面14の一部を構成している。本実施形態では、溝部13の底部の幅W1が0.5mm程度に設定され、深さDが1.0mm程度に設定されている。
【0040】
加飾模様層15は、成形品本体12の意匠面14に形成されて、その意匠面14を加飾(装飾)している。加飾模様層15は、互いに接した状態で隣り合う2種類の模様部16,17によって構成されている。加飾模様層15は、両模様部16,17の境界部分18を、上記溝部13の内壁面に位置させた状態で形成されている。
【0041】
上記加飾成形品11の製造には、図3(a)に示すフィルム20及び金型25が用いられる。
<フィルム20>
フィルム20の主要部は、樹脂材料によって長尺状に形成された基材フィルム21によって構成されている。この基材フィルム21は、透明であってもよいし、不透明であってもよい。基材フィルム21の樹脂材料としては、熱可塑性の樹脂材料であれば任意のものを使用することができる。本実施形態では、こうした樹脂材料として、ポリエチレンテレフタレート(PET)が用いられている。なお、基材フィルム21は、単層からなるものであってもよいし、積層構造を有するものであってもよい。
【0042】
基材フィルム21上には、上記加飾模様層15が、グラビア印刷等の印刷、蒸着等によって、基材フィルム21の長さ方向に一定間隔毎に剥離可能に形成されている。加飾模様層15における模様部16,17は、例えば木目模様、石目模様、砂目模様、金属調模様、幾何学模様、抽象模様等からなる。また、これらの模様部16,17には、文字、記号等が含まれてもよい。
【0043】
上記基材フィルム21上であって、加飾模様層15とは異なる箇所には、位置決め用のマーク(図示略)が印刷等によって加飾模様層15毎に形成されている。
上記フィルム20は、基材フィルム21が内側となり、かつ加飾模様層15が外側となるように巻回されてロール22にされている。
【0044】
<金型25>
金型25は、コア型26及びキャビティ型31を備えている。本実施形態では、コア型26は固定型によって構成されている。キャビティ型31は水平方向へ移動してコア型26に接近及び離間する可動型によって構成されている。
【0045】
コア型26のキャビティ型31側には、同キャビティ型31側へ突出する成形突部27が設けられている。この成形突部27の表面と、コア型26の成形突部27周りの端面26aとによって、コア面28が構成されている。コア型26には、一端が成形突部27の表面に開口するスプルーゲート29が形成されている。
【0046】
これに対し、キャビティ型31のコア型26側には成形凹部32が設けられており、その一部には、上記成形品本体12の溝部13を成形するための突条部33が成形突部27に向けて突設されている。突条部33は、溝部13に対応して上下方向に延びている。「対応して」とは、図3(a),(b)の上下方向における両端部がキャビティ型31のコア型26側の端面31aに最も近く、中央部分に近づくに従い同端面31aから遠ざかるように湾曲していることを意味する。図11に示すように突条部33の先端部は、0.5mm程度の厚みtを有している。そして、上記突条部33の表面を含め、成形凹部32の内壁面によって成形面34が構成されている。
【0047】
図3(a),(b)に示すように、成形面34は、フィルム20を所定の形状に形成するための賦形面としての機能と、溶融樹脂を、所定の形状を有する成形品本体12に成形するための賦形面としての機能とを有している。この成形面34には、キャビティ型31に形成された多数の微細な真空吸引孔(図示略)が開口している。真空吸引孔は真空ポンプ(図示略)に接続されている。
【0048】
キャビティ型31には、環状のクランプ35が設けられている。また、キャビティ型31には、クランプ35を、上記端面31aに接近するクランプ位置(図3(b))と、同端面31aからコア型26側へ離間するクランプ解除位置(図3(a))との間で移動させる駆動機構(図示略)が設けられている。
【0049】
また、図4(a),(b)に示すように、金型25の近傍には、キャビティ型31及びコア型26とは別に、通電により発熱する可動ヒータ39と、押圧機構40とが設けられている。
【0050】
<可動ヒータ39>
可動ヒータ39は、上下方向へ移動可能に設けられている。この可動ヒータ39は、フィルム20を、キャビティ型31側へ押されるとき、及び真空吸引されるときに伸びやすくすることを目的とし、それらの直前に同フィルム20を加熱して軟化させるためのものである。
【0051】
<押圧機構40>
押圧機構40は、上下方向へ移動可能に設けられている。図5及び図6に示すように、押圧機構40は、少なくとも上下方向に延びる基板41を備えている。基板41のキャビティ型31側の面には受け板42が固定されている。基板41からキャビティ型31側に一定距離離れた箇所には、支持板43が同基板41に平行に配置されている。基板41と支持板43とは、その支持板43の隅部において水平方向に延びる複数本の支柱44によって相互に連結されている。
【0052】
支持板43には、複数(本実施形態では4つ)の押圧アセンブリが、上記突条部33(溝部13)に沿う方向である上下方向に列をなすように配置された状態で取付けられている。複数の押圧アセンブリを区別するために、上下方向における中央部分に位置する2つを「押圧アセンブリ46」といい、両端に位置する2つを「押圧アセンブリ45」というものとする。全ての押圧アセンブリ45,46は、互いに同様の構成を有している。
【0053】
各押圧アセンブリ45,46は、一対のリニアブッシュ51,52、シャフト54、ガイドシャフト55、取付板56、押圧部57、ストッパ58及びばね59を備えている。
一対のリニアブッシュ51,52は、支持板43に対し基板41側から取付けられている。各リニアブッシュ51,52は、円筒状をなす外筒53と、その外筒53内に配置されて、複数のボール又はローラを保持する筒状の保持器(いずれも図示略)とを備えて構成されている。
【0054】
シャフト54は、キャビティ型31の移動方向に沿って延びている。シャフト54は、支持板43と一方のリニアブッシュ51とに対し挿通されている。シャフト54は、リニアブッシュ51により滑らかに往復動することを可能にされている。
【0055】
ガイドシャフト55は、シャフト54の側方において、同シャフト54に平行に配置されている。ガイドシャフト55は、支持板43と他方のリニアブッシュ52とに対し挿通されている。ガイドシャフト55は、リニアブッシュ52により、滑らかに往復動することを可能にされている。リニアブッシュ52及びガイドシャフト55は、シャフト54がキャビティ型31の移動方向へ往復動するのをガイドする。
【0056】
取付板56は、支持板43に対し、キャビティ型31側へ離間した箇所に配置されている。取付板56は、シャフト54及びガイドシャフト55のキャビティ型31側の端部に固定されている。
【0057】
押圧部57は、上下方向及びキャビティ型31の移動方向に延びる板状をなしており、コア型26側の端部において取付板56に取付けられている。図11に示すように、押圧部57としては、上記突条部33の厚みtよりも大きな厚みTを有するものが用いられている。
【0058】
図5図7に示すように、押圧部57のうちキャビティ型31側を同押圧部57の先端側とすると、押圧部57の先端部57aは、同押圧部57の他の部分よりも軟質の材料、例えばゴム等の軟質材によって形成されている。先端部57aの先端面は、曲面状に形成されている。量産性、及び加飾模様層15の形成位置精度を考慮すると、軟質材の望ましい硬度は、ショアA硬度で10°〜50°である。軟質材のより望ましい硬度は、ショアA硬度で20°〜40°である。これに対し、押圧部57の先端部57aを除く大部分は、硬質合成樹脂等の硬質材によって形成されている。
【0059】
ストッパ58は、シャフト54のコア型26側の端部又はその近くに取付けられている。ストッパ58は、シャフト54と一緒に動き、リニアブッシュ51に当たることで、それ以上、シャフト54がキャビティ型31側へ移動するのを規制するものである。
【0060】
ばね59は、押圧部57をキャビティ型31側へ付勢する付勢部材として用いられている。本実施形態では、ばね59としてコイルばねが用いられている。ばね59は、シャフト54の外周であって、支持板43と取付板56との間に圧縮された状態で配置されている。
【0061】
上下方向に隣り合う押圧部57は、互いに接触している。ここで、押圧部57において上記列に沿う方向である上下方向を、その押圧部57の幅方向とする。各押圧部57の幅W2は、押圧機構40の構造を過度に複雑にせずに、加飾模様層15の形成位置のばらつきが許容範囲に収まるようにフィルム20を適切に押す観点からは、30mm前後の値に設定されることが望ましい。
【0062】
また、押圧機構40では、先端部57aの先端面から、シャフト54のコア型26側の端面までの長さが、次の条件を満たす長さに設定されている。その条件とは、「図10に示すように、押圧アセンブリ45,46毎のシャフト54を受け板42に当たる位置まで移動させた場合に、先端部57aの先端面が、突条部33に対応した湾曲面上に位置すること」である。
【0063】
さらに、押圧機構40では、押圧アセンブリ45,46毎のストッパ58が、シャフト54に対し、次の条件を満たす箇所に取付けられている。その条件とは、「図5に示すように、押圧アセンブリ45,46毎のシャフト54を、ストッパ58がリニアブッシュ51に当たる位置まで移動させた場合に、全ての先端部57aの先端面が、キャビティ型31の移動方向に対し直交する同一平面上に位置するように揃うこと」である。
【0064】
図3(a)に示すように、上述したフィルム20のロール22は、キャビティ型31の上方近傍に配置されている。また、キャビティ型31の下方近傍には、加飾模様層15の剥離された基材フィルム21を巻き取るための巻取り装置(図示略)が配置されている。
【0065】
次に、本実施形態の作用として、加飾成形品11を製造する方法について説明する。
まず、図3(a)に示すように、キャビティ型31がコア型26から離間する側へ移動させられることにより、金型25が型開きされる。このときには、クランプ35はクランプ解除位置に保持されている。
【0066】
この状態で、巻取り装置が作動させられることで、キャビティ型31の上方のロール22から、フィルム20がキャビティ型31とクランプ35との間へ送り出される。送り出されたフィルム20では、基材フィルム21がキャビティ型31側に位置し、かつ加飾模様層15がコア型26側に位置する。上記フィルム20の送り出しは、加飾模様層15が予め定められた箇所まで移動したところで停止される。すなわち、加飾模様層15のキャビティ型31に対する位置決めが行なわれる。この位置決めは、例えば、上述した位置決め用のマークがセンサによって検出されることをもって行なわれる。
【0067】
次に、金型25が型開き状態に維持されたうえで、図3(b)に示すように、クランプ35がクランプ位置まで移動させられることで、フィルム20がクランプ35によってキャビティ型31に押え付けられる。フィルム20が、キャビティ型31のコア型26側の端面31aにおいて成形面34の周りで密閉状態(シール状態)に保持(係止)される。キャビティ型31の成形面34とフィルム20との間に密閉空間61が形成される。
【0068】
続いて、金型25が型開き状態に維持されたうえで、図4(a)に示すように、可動ヒータ39が下降させられる。この下降は、可動ヒータ39が、フィルム20とコア型26の成形突部27との間に位置するまで行なわれる。通電により可動ヒータ39が発熱させられ、フィルム20が加熱される。この加熱により、フィルム20は軟化して伸びやすくなる。
【0069】
フィルム20の加熱後、可動ヒータ39が次サイクルでの加熱に備え上昇させられる。引き続き、押圧機構40が、図4(b)に示すように、全ての先端部57aが突条部33に対向する高さまで下降させられる。このとき、押圧機構40では、押圧アセンブリ45,46毎の押圧部57がばね59によってキャビティ型31側へ付勢されているが、ストッパ58がリニアブッシュ51に当たることで、各押圧部57のキャビティ型31側への移動が規制されている。押圧アセンブリ45,46毎の先端部57aの先端面は、同一平面上に位置していて揃っている。押圧アセンブリ45,46毎のシャフト54は、受け板42からキャビティ型31側へ離れている。
【0070】
次に、キャビティ型31が押圧機構40側へ移動させられる。この移動に伴い、キャビティ型31が押圧アセンブリ45,46に近づく。そして、上記移動に伴い、図8(a)に示すように、成形面34の周りで密閉状態(シール状態)に保持(係止)されているフィルム20が全ての先端部57aに対し、一斉に(同時に)接触する。しかも、その接触は、両模様部16,17の境界部分18において、先端部57a毎の先端面に対し、幅方向の全面を対象としてなされる。
【0071】
ここで、複数の押圧部57は、模様部16,17の境界部分18に沿う方向である上下方向に列をなすように配置されている。しかも、隣り合う押圧部57は互いに接触している。そのため、全ての押圧部57は、加飾模様層15の境界部分18の長さ方向における広い領域にわたって接触することになる。
【0072】
キャビティ型31が押圧機構40側へさらに移動させられることで、フィルム20が、境界部分18において、全ての先端部57aによってキャビティ型31側へ押され始める。従って、フィルム20のうち、複数の押圧部57によって押される箇所は、どの箇所であっても同じ時期から押され始める。
【0073】
そして、図8(b)に示すように、フィルム20のうち全ての押圧部57によって押された箇所は、成形凹部32内に押し込まれていく。このときには、基材フィルム21は伸びるが、全ての押圧部57によって押されていて、同押圧部57に対し動きにくい。また、どの押圧部57によって押される場合であっても、フィルム20は同時期から同押圧部57に対し動きにくい。加飾模様層15についても同様であり、境界部分18は押圧部57に対し動きにくい。
【0074】
キャビティ型31に係止され、かつ加熱により軟化されているフィルム20は、上記のように全ての押圧部57によって押されることで、同押圧部57に対する位置を保持しつつ伸びて成形面34に近づく。
【0075】
上下方向に延びる突条部33は、中央部分に近づくほど端面31aから遠ざかるように湾曲している。そのため、キャビティ型31の上記移動に伴い、突条部33のうち最も端面31aに近い部分である上下両端部に対し、フィルム20のうち、上下両押圧アセンブリ45における押圧部57によって押された部分が押付けられる。この押付けは、押圧アセンブリ45毎の押圧部57の幅方向における角部においてのみ行なわれる。
【0076】
このとき、フィルム20を突条部33に押付けている上下両押圧アセンブリ45と、フィルム20を突条部33に押付けていない中央部分の両押圧アセンブリ46とで、シャフト54のコア型26側の端部の位置が異なっている。すなわち、押圧アセンブリ46におけるシャフト54のコア型26側の端部が、押圧アセンブリ45におけるシャフト54のコア型26側の後端部よりも、同コア型26側に位置している。
【0077】
この状態で、キャビティ型31が押圧機構40側へさらに移動されると、図9(a)に示すように、中央部分の両押圧アセンブリ46における各シャフト54が受け板42に接触する。上下の両押圧アセンブリ45におけるシャフト54は、受け板42から離れている。
【0078】
キャビティ型31がさらに押圧機構40側へ移動されると、上下の両押圧アセンブリ45におけるシャフト54が受け板42によって動きを規制されないのに対し、中央部分の両押圧アセンブリ46におけるシャフト54は受け板42によって動きを規制される。
【0079】
そのため、中央部分の両押圧アセンブリ46における押圧部57は、キャビティ型31の移動に拘わらずに停止するのに対し、上下の両押圧アセンブリ45における押圧部57は、受け板42側へ移動し続ける。
【0080】
キャビティ型31の移動に伴い、図9(b)に示すように、突条部33のうち端面31aから最も遠い部分である中央部分に対し、フィルム20のうち、中央部分の両押圧アセンブリ46における押圧部57によって押された部分が押付けられる。この押付けも、各押圧部57の幅方向における角部においてのみ行なわれる。
【0081】
このように、本実施形態では、複数の押圧部57のそれぞれが、成形面34に接近及び離間する方向へ移動可能であることから、成形面34が非平面であるにも拘らず、フィルム20が突条部33に押付けられる位置まで、同フィルム20が対応する押圧部57によって押される。
【0082】
ここで、複数の押圧部57は、上述したように模様部16,17の境界部分18に沿う方向である上下方向に列をなすように配置されている。そのため、フィルム20は、加飾模様層15の境界部分18のうち、複数の押圧部57によって押された広い領域において、突条部33の多くの部分に押付けられる。ただし、この押付けは、各押圧部57の幅方向における角部においてのみ行なわれることから、各押圧部57の配列方向(上下方向)に互いに離間した複数箇所で行なわれる。
【0083】
また、上下の両押圧アセンブリ45における押圧部57のみの先端部57aによりフィルム20が突条部33に押付けられると、その状態は、中央部分の両押圧アセンブリ46における押圧部57の先端部57aによりフィルム20が突条部33に押付けられるまでの期間にわたり保持される。
【0084】
そのため、上下の両押圧アセンブリ45と中央部分の両押圧アセンブリ46とで、フィルム20を突条部33に押付けるタイミングが異なる。しかし、中央部分の両押圧アセンブリ46における押圧部57によってフィルム20が突条部33に押付けられるまでは、先行してフィルム20を突条部33に押付けた、上下の両押圧アセンブリ45における押圧部57は、その押付けた状態に保持される。
【0085】
さらに、フィルム20の押付けられるキャビティ型31が金属によって形成されていて硬質であるのに対し、フィルム20を押す各押圧部57の先端部57aは、同押圧部57の他の部分よりも軟質の軟質材によって形成されている。そのため、上記フィルム20の突条部33に対する押付けは、各先端部57aが弾性変形することによって行なわれる。従って、各押圧部57の先端部57aが硬質材によって形成された場合とは異なり、フィルム20、キャビティ型31、押圧機構40の押圧部57のいずれについても傷が付くのを抑制することができる。
【0086】
また、突条部33と押圧部57との間隙にばらつきがあっても、先端部57aを弾性変形させることで、そのばらつきを吸収することができる。
さらに、両模様部16,17の境界部分18が、弾性変形した先端部57aによって押付けられる。特に、図11に示すように、各押圧部57の厚みTが、突条部33の厚みtよりも大きいことから、弾性変形した先端部57aが境界部分18の押付けに関わる箇所の面積が大きい。境界部分18は、弾性変形した先端部57aによって突条部33に押付けられやすい。従って、境界部分18は、先端部57aに対し動きにくい。
【0087】
なお、この状態では、フィルム20のうち、突条部33に押付けられていない部分と成形面34との間に密閉空間61が形成される。
そして、図9(b)に示すように、全ての先端部57aによってフィルム20が突条部33に押付けられると、キャビティ型31の押圧機構40側への移動が停止される。
【0088】
次に、真空ポンプ(図示略)による真空吸引が開始され、上記密閉空間61(図11参照)が減圧される。この減圧により、キャビティ型31に係止され、かつ加熱により軟化されているフィルム20は、成形面34側へ引き込まれて伸びる。伸びたフィルム20は、成形面34に密着させられて、同成形面34に倣った形状に賦形(予備成形)される(図12(a)参照)。
【0089】
特に、本実施形態では、キャビティ型31の成形面34が深く、フィルム20を成形面34に密着させるために大きく伸ばす必要がある。この点、複数の押圧部57の先端部57aによりフィルム20をキャビティ型31側へ押す前に同フィルム20を加熱して軟化させているため、フィルム20を、成形面34に密着させるのに必要な量だけ伸ばすことが容易である。
【0090】
また、このとき、図9(b)及び図11に示すように、フィルム20のうち複数の押圧部57によって突条部33に押付けられている箇所、すなわち、隣り合う模様部16,17の境界部分18の多くは、その突条部33に対し動くことを規制される。そのため、単にフィルム20が成形面34に近づけられた状態、すなわち、成形面34に押付けられない状態で真空吸引された場合(特許文献1)とは異なり、成形面34に密着するまでに境界部分18が押圧部57に対し動いて、位置がずれることが起こりにくい。また、成形面34に対する加飾模様層15の位置は、フィルム20の温度分布のばらつきや、密閉空間61内での空気の流れのばらつきから影響を受けにくい。
【0091】
そのため、真空吸引に先立ち、フィルム20をキャビティ型31側へ押して成形面34に近づけるにとどまるもの(特許文献1)に比べ、真空吸引時におけるフィルム20の動き量を少なくすることができる。加飾模様層15のより正確な位置合わせが可能となる。
【0092】
特に、本実施形態のように、成形品本体12の表層部に湾曲した溝部13を有し、かつ隣り合う模様部16,17の境界部分18が溝部13の内壁面に位置する加飾成形品11が製造対象である場合には、その溝部13を成形するための突条部33もまた湾曲する。こうした突条部33に対し、仮に、単一の押圧部57のみによってフィルム20を押付けようとすると、その押圧部57の先端部57aとしては、突条部33に対応する湾曲面を有するものが用いられることとなる。しかし、この場合には、湾曲面の最先端部が最初にフィルム20に接触する。湾曲面のフィルム20に接触する部分は、キャビティ型31の押圧機構40側への移動に伴い増加していく。湾曲面の最先端部がフィルム20に接触を開始してから、湾曲面の残部がフィルム20に接触し終えるまでに時間差が生ずる。この時間差によりフィルム20が伸ばされ、境界部分18の位置がずれ、加飾模様層15の形成位置精度が低下するおそれがある。
【0093】
しかし、本実施形態では、上述したように、全ての押圧部57の先端部57aをフィルム20に対し同時に接触させている。そのため、上記のような時間差に起因してフィルム20が伸ばされることが起こりにくく、加飾模様層15の形成位置精度が低下することが抑制される。
【0094】
キャビティ型31は、押圧機構40側への移動を停止した後、一旦、同押圧機構40から離間する側へ移動(後退)させられる。その後、押圧機構40は、金型25の外部の待機位置へ移動(退避)させられる。
【0095】
続いて、図12(a),(b)に示すように、金型25の型締めが行なわれる。この型締めは、キャビティ型31がコア型26側へ移動させられることにより行なわれる。型締めにより、フィルム20のうちキャビティ型31の成形面34に密着した部分と、コア型26のコア面28との間にキャビティ62が形成される。
【0096】
図13(a)に示すように、スプルーゲート29を通じて溶融樹脂63がキャビティ62に射出される。その後、溶融樹脂63が冷却されることで、溝部13を有する成形品本体12が成形される(図13(b)参照)。この成形の過程で、溶融樹脂63の熱、射出の圧力等により、フィルム20の基材フィルム21から加飾模様層15が剥離する。加飾模様層15は、隣り合う模様部16,17の境界部分18が、成形品本体12のうち、予め定められた形成予定箇所である、溝部13の内壁面に位置する(図2(b)参照)ように、成形品本体12の意匠面14に対し、高い位置精度で、転写(付着)される。この転写(付着)により、成形品本体12の意匠面14に対し、加飾模様層15が高い形成位置精度で形成された加飾成形品11が得られる。得られた加飾成形品11は、従来(特許文献1)よりも質感の高いものとなる。
【0097】
このように、成形品本体12の成形時に加飾模様層15が同成形品本体12に転写(付着)させられるため、成形品本体12が成形された後に、同成形品本体12の意匠面14に塗装等の加飾処理を施す必要がなく、その分、製造コストを低減することができる。
【0098】
また、図2(b)に示すように、境界部分18では、互いに異なる模様部16,17が隣接することになるが、同境界部分18が溝部13の内壁面に位置することで、模様(柄)が溝部13内で切り替わる。境界部分18は、加飾成形品11の溝部13とは異なる箇所に位置する場合に比べて目立ちにくくなる。
【0099】
その後、図13(b)に示すように、キャビティ型31がコア型26から離間する側へ移動させられることで金型25の型開きが行なわれる。そして、金型25から上記加飾成形品11が取り出される。また、このときには、次サイクルの加飾成形品11の製造に備えて、クランプ35がクランプ解除位置へ移動させられる。
【0100】
そして、巻取り装置によりフィルム20が所定長さだけ巻き取られる(送り出される)ことにより、加飾成形品製造のための1サイクルが終了する。
以上のように、本実施形態では、フィルム20の成形加工(予備成形加工)を含む加飾成形品11の全ての製造工程を、同一の金型25を用いて行なっている。そのため、フィルム20を成形してなる成形体を予め製作しておき、この成形体を金型内に設置するとともに、その成形体の裏面側に溶融樹脂63を射出等することによって、加飾成形品11を製造する場合に比べ、工程数を減らして効率化を図ることができる。
【0101】
なお、本実施形態の効果を確認するために、得られた加飾成形品11と、比較例とについて、加飾模様層15の形成位置の精度を測定した。測定に際しては、溝部13の底面のうち、溝部13の幅方向における中央部を基準位置とした。そして、基準位置から、隣り合う模様部16,17の境界部分18までの距離を、連続する20サイクル(ショット)で得られた加飾成形品11について測定した。なお、比較例は、フィルム20を成形面34に近づけるにとどめる特許文献1に対応している。
【0102】
測定の結果、距離が、比較例では、±(0.6mm〜0.7mm)の範囲内でばらつくのに対し、本実施形態では、±(0.3mm〜0.4mm)の範囲内でばらついた。このことから、加飾模様層15の形成位置の精度が従来(特許文献1)よりも高くなっていることが判る。従って、溝部13の内壁面のうち一方の側壁の深さ方向における中央部を、隣り合う模様部16,17の境界部分18の目標形成位置とすれば、その境界部分18を、位置のばらつきを考慮しても一方の側壁に位置させることができ、境界部分18をより一層目立ちにくくすることができる。
【0103】
なお、上記実施形態は、これを以下のように変更した変形例として実施することもできる。
<押圧機構40について>
・押圧機構40がコア型26とは別に設けられた上記実施形態とは異なり、同押圧機構40がコア型26の一部として設けられてもよい。
【0104】
・押圧機構40として、隣り合う押圧部57が互いに離間した状態で配置されたものが用いられてもよい。
・各押圧部57における先端部57aの形状が、上記実施形態とは異なる形状に変更されてもよい。図14はその一例を示している。図14では、各押圧部57における先端部57aが、突条部33に対応する形状に形成されている。対応する形状とは、各押圧部57がフィルム20を押して突条部33に押付けたとき、その押付けを同先端部57aの幅方向における全部で行なうことのできる形状である。この場合、押圧部57における先端部57aとは異なる硬質部分の先端面も、突条部33に対応する形状に変更されることが望ましい。
【0105】
このようにすると、キャビティ型31の押圧機構40側への移動に伴い、全ての先端部57aがフィルム20に対し、一斉に(同時に)接触する。ただし、この接触は、先端部57a毎の先端面の一部(角部)のみにおいて、両模様部16,17の境界部分18に対しなされる。この状態で、フィルム20が全ての押圧部57によってキャビティ型31側へ押される。
【0106】
そして、加飾模様層15の境界部分18でのフィルム20の成形面34への押付けは、その境界部分18に沿って列をなすように配置された複数の押圧部57のそれぞれの先端部57aのうち、幅方向における全部によって行なわれる。隣り合う押圧部57は互いに接触している。そのため、この場合には、境界部分18でのフィルム20の成形面34への押付けを、その境界部分18の長さ方向における連続した広い領域で行なうことができる。
【0107】
・全ての押圧部57の先端部57aが、成形面34の周りでキャビティ型31に係止されているフィルム20に対し、少しずつタイミングをずらして接触されるように変更されてもよい。すなわち、先端部57aがフィルム20に接触するタイミングが、押圧部57間で異ならせられてもよい。
【0108】
・押圧機構40は、可動ヒータ39に対し一体に設けられてもよい。
・押圧機構40とキャビティ型31とを接近及び離間させるために、押圧機構40が水平方向に移動可能に設けられてもよい。
【0109】
<金型25について>
・上記実施形態とは逆に、キャビティ型31が固定型によって構成され、コア型26が可動型によって構成されてもよい。
【0110】
・キャビティ型31及びコア型26の一方が固定型によって構成され、他方が、水平方向に代えて上下動することにより上記固定型に対し接近及び離間する可動型によって構成されてもよい。
【0111】
・キャビティ型31の成形面34において、押圧部57によってフィルム20が押付けられる箇所が、上記突条部33とは異なる箇所に変更されてもよい。該当する箇所には、成形面34において平坦な可箇所が含まれる。要するに、上記箇所は、全ての押圧部57の先端部57aによって押されたフィルム20を受け止めることができる箇所であればよい。
【0112】
<フィルム20について>
・加飾模様層15は、模様部16,17の一方のみによって構成されてもよいし、3種類以上の複数の模様部によって構成されてもよい。後者の場合、フィルム20において押圧部57によって押される箇所は、隣り合う模様部毎の境界部分18であることが望ましい。
【0113】
・フィルム20として、透明な樹脂材料(例えばアクリル樹脂等)によって形成された基材フィルム21と、その基材フィルム21上に接着された加飾模様層15とを備えるものが用いられてもよい。
【0114】
この場合、成形品本体12の成形の過程で、加飾模様層15が成形品本体12の意匠面14上に形成されるとともに、その加飾模様層15上に、上記基材フィルム21からなる透明樹脂層が形成される。上記実施形態との相違点は、基材フィルム21も加飾成形品11の一部を構成することである。
【0115】
この加飾成形品11では、加飾模様層15及び成形品本体12が透明樹脂層によって覆われて保護される。
<その他>
・上記加飾成形品の製造方法は、キャビティ型31の成形面34が深い場合に特に有効であるが、成形面34が浅い場合であっても適用可能である。この場合には、可動ヒータ39によるフィルム20の加熱処理を省略することも可能である。
【0116】
・上記加飾成形品の製造方法は、湾曲せず、直線状に延びる溝部13を表層部に有する加飾成形品11を製造する場合にも適用可能である。この場合、溝部13は屈曲するものであってもよい。
【0117】
図15に示すように、溝部13は直線部分と湾曲部分との両者を有するものであってもよい。
この場合、複数の押圧アセンブリ45(46)は、同図15において二点鎖線で示すように、溝部13に沿って列をなすように配置される。この場合であっても、上記実施形態と同様の効果が得られる。
【0118】
・上記加飾成形品の製造方法は、表層部に溝部13を有しない加飾成形品11を製造する場合にも適用可能である。
・上記加飾成形品の製造方法は、自動車用の内装品に限らず自動車における各種加飾成形品を製造する場合に適用可能である。
【0119】
また、上記製造方法は、自動車以外の分野、例えば家電部品、雑貨品、日用品等における各種加飾成形品を製造する場合にも適用可能である。
【符号の説明】
【0120】
11…加飾成形品、12…成形品本体、13…溝部、14…意匠面、15…加飾模様層、16,17…模様部、18…境界部分、20…フィルム、21…基材フィルム、25…金型、26…コア型、28…コア面、31…キャビティ型、33…突条部、34…成形面、40…押圧機構、57…押圧部、57a…先端部、62…キャビティ、63…溶融樹脂。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15