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  • 特開2017222146-インクジェット記録方法 図000005
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-222146(P2017-222146A)
(43)【公開日】2017年12月21日
(54)【発明の名称】インクジェット記録方法
(51)【国際特許分類】
   B41M 5/00 20060101AFI20171124BHJP
   C09D 11/30 20140101ALI20171124BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20171124BHJP
【FI】
   B41M5/00 A
   C09D11/30
   B41J2/01 125
   B41J2/01 501
   B41M5/00 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2016-121268(P2016-121268)
(22)【出願日】2016年6月17日
(71)【出願人】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078732
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 保
(74)【代理人】
【識別番号】100089185
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 誠
(72)【発明者】
【氏名】黒田 あずさ
(72)【発明者】
【氏名】松本 雄大
【テーマコード(参考)】
2C056
2H186
4J039
【Fターム(参考)】
2C056EA04
2C056FC01
2C056HA41
2H186AA04
2H186AB05
2H186BA08
2H186DA09
2H186DA10
2H186FB11
2H186FB15
2H186FB16
2H186FB17
2H186FB22
2H186FB25
2H186FB29
2H186FB48
2H186FB55
2H186FB58
4J039AD00
4J039BC13
4J039BE01
4J039EA42
4J039EA46
4J039FA02
4J039GA24
(57)【要約】
【課題】低吸液性記録媒体を熱変形させることなく、ムラや混色のない良好な画像が得られるインクジェット記録方法を提供する。
【解決手段】低吸液性記録媒体に水系インクを吐出するインクジェットヘッドを備えるインクジェット記録装置を用いて、該記録媒体に記録するインクジェット記録方法であって、該水系インクが、着色剤(A)、有機溶媒(C)、及び水を含有し、該インクジェット記録装置が、静的表面張力の異なる水系インクを2種以上備え、該記録媒体が30〜75℃に加熱されており、該記録媒体に静的表面張力の高い水系インクから順に吐出する、インクジェット記録方法である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
低吸液性記録媒体に水系インクを吐出するインクジェットヘッドを備えるインクジェット記録装置を用いて、該記録媒体に記録するインクジェット記録方法であって、
該水系インクが、着色剤(A)、有機溶媒(C)、及び水を含有し、
該インクジェット記録装置が、静的表面張力の異なる水系インクを2種以上備え、
該記録媒体が30〜75℃に加熱されており、
該記録媒体に静的表面張力の高い水系インクから順に吐出する、インクジェット記録方法。
【請求項2】
着色剤(A)が、顔料を含有する水不溶性ポリマー粒子として、水系インク中に含有される、請求項1に記載のインクジェット記録方法。
【請求項3】
有機溶媒(C)が、グリコールエーテル(c−2)を含む、請求項1又は2に記載のインクジェット記録方法。
【請求項4】
水系インクが、更にポリマー(B)を含有する、請求項1〜3のいずれかに記載のインクジェット記録方法。
【請求項5】
水系インクが、更に界面活性剤(D)を含有する、請求項1〜4のいずれかに記載のインクジェット記録方法。
【請求項6】
界面活性剤(D)が、シリコーン系界面活性剤(d−1)を含む、請求項5に記載のインクジェット記録方法。
【請求項7】
低吸液性記録媒体が、コロナ放電処理されたポリエステルフィルム又はコロナ放電処理された延伸ポリプロピレンフィルムである、請求項1〜6のいずれかに記載のインクジェット記録方法。
【請求項8】
記録媒体に水系インクを吐出するインクジェットヘッドと、該ヘッドに対向する該記録媒体の面とは裏側の面に設けたアンダーヒーターで該記録媒体を加熱する、請求項1〜7のいずれかに記載のインクジェット記録方法。
【請求項9】
記録速度が記録媒体の搬送速度換算で5m/min以上75m/min以下である、請求項1〜8のいずれかに記載のインクジェット記録方法。
【請求項10】
ワンパス方式で記録する、請求項1〜9のいずれかに記載のインクジェット記録方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録方式は、非常に微細なノズルからインク液滴を記録媒体に直接吐出し、付着させて、文字や画像を得る方式である。この方式は、フルカラー化が容易で、かつ安価であり、記録媒体として普通紙が使用可能、被印刷物に対して非接触、という数多くの利点があるため普及が著しい。
一方で、従来の普通紙、コピー紙と呼ばれる高吸液性記録媒体への印刷に加えて、オフセットコート紙のような低吸液性のコート紙、又はポリ塩化ビニル樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエステル樹脂等の非吸液性樹脂のフィルムを用いた商業印刷向けの記録媒体への印刷が求められてきている。
【0003】
これらの低吸液性、非吸液性の記録媒体上にインクジェット記録方法で印刷を行った場合、液体成分の吸収が遅い、又は吸収されないため乾燥に時間がかかり印刷初期の耐擦過性等が劣ることが知られている。
従来、このような低吸液性、非吸液性の記録媒体への印刷では有機溶剤を分散媒とする溶剤系顔料インクや、UV硬化型のインクが主に使用されてきた。これは、有機溶剤が低吸液性、非吸液性媒体中に浸透し、表面を膨潤させることで顔料が記録媒体中に固定化されるという現象を利用したり、印刷後記録媒体上で強固な樹脂被膜を形成させたりすることで滲みや耐擦過性を向上させることができるためである。
しかしながら、こうした従来型のインクでは、インクが乾燥する際に大量の有機溶剤が大気中に拡散されることによる環境への影響や、UV硬化型インクに用いられるラジカル開始剤やモノマーによる安全性上の懸念が生じうるといった問題点を抱えている。このため、現在は、作業環境、自然環境への負担が少ない水系インクの開発が進められている。
一方、水系インクの殆どは、低吸液性、非吸液性の記録媒体上に良好な画質を形成できないという問題を抱えている。
特許文献1には、インクドット形状を安定化させて良好な画像を形成する方法として、インクと反応する成分を含む反応液を記録媒体に付与した後、表面張力の高いインクから順に複数種類のインクを付与して画像形成を行う画像形成方法が開示されている。
特許文献2には、非吸収性記録媒体に濃度ムラや白抜けがない良好な画像を形成する方法として、インクの蒸発率、表面張力が特定の範囲にあり、有機溶剤を2種以上含有し、溶解パラメーターの水素結合項と極性項の和が特定の範囲にあり、かつ界面活性剤の含有量が該界面活性剤の臨界ミセル濃度未満である水系インクを用いるインクジェット記録方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−331171号公報
【特許文献2】特開2012−224658号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1は、表面張力の高い順にインクを付与することで、先に付与されたインク液滴が後に着弾したインク液滴によって押しのけられる現象を緩和し、インクドットの形状の乱れを抑制する技術である。しかしながら、特許文献1ではインクドットの形状及び着弾位置ずれによる画像への影響に対しては評価がなされているが、混色については具体的な検討は何ら行われていない。また、同文献の段落[0013]では反応液を用いた凝集作用により混色を抑制するとされており、反応液を用いない場合には混色により画像が酷く劣化すると明記されている。
また、特許文献2のインクジェット記録方法では、非吸液性の記録媒体上にムラや混色のない良好な画像を得るという課題を十分に満足できていない。
本発明は、凝集作用の有無によらないで、低吸液性記録媒体を熱変形させることなく、ムラや混色のない良好な画像が得られるインクジェット記録方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、低吸液性記録媒体へのインクジェット記録方法において、記録媒体を30〜75℃に加熱し、静的表面張力の異なる2種以上の水系インクを、静的表面張力の高い順に吐出することにより、上記課題を解決し得ることを見出した。
すなわち、本発明は、低吸液性記録媒体に水系インクを吐出するインクジェットヘッドを備えるインクジェット記録装置を用いて、該記録媒体に記録するインクジェット記録方法であって、該水系インクが、着色剤(A)、有機溶媒(C)、及び水を含有し、該インクジェット記録装置が、静的表面張力の異なる水系インクを2種以上備え、該記録媒体が30〜75℃に加熱されており、該記録媒体に静的表面張力の高い水系インクから順に吐出する、インクジェット記録方法に関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、低吸液性記録媒体を熱変形させることなく、ムラや混色のない良好な画像が得られるインクジェット記録方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施例で印刷評価する際に使用した印刷パターンを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[インクジェット記録方法]
本発明のインクジェット記録方法は、低吸液性記録媒体(以下、単に「記録媒体」ともいう)に水系インク(以下、単に「インク」ともいう)を吐出するインクジェットヘッドを備えるインクジェット記録装置を用いて、該記録媒体に記録するインクジェット記録方法であって、
該水系インクが、着色剤(A)、有機溶媒(C)、及び水を含有し、
該インクジェット記録装置が、静的表面張力の異なる水系インクを2種以上備え、
該記録媒体が30〜75℃に加熱されており、
該記録媒体に静的表面張力の高い水系インクから順に吐出することを特徴とする。
なお、本明細書において、「記録」とは、文字や画像を記録する印刷、印字を含む概念であり、「記録物」とは、文字や画像が記録された印刷物、印字物を含む概念である。
また、「低吸液性」とは、水及び/又はインクの低吸液性及び非吸液性を含む概念であり、低吸液性は、純水の吸水性で評価することができる。より具体的には、記録媒体と純水との接触時間100m秒における該記録媒体の吸水量が、0g/m以上10g/m以下、好ましくは0g/m以上6g/m以下であることを意味する。なお、前記の吸水量は、実施例に記載の方法により測定される。
さらに、「水系」とは、インクに含有される媒体中で、水が最大割合を占めていることを意味するものであり、媒体が水のみの場合もあり、水と一種以上の有機溶媒との混合溶媒の場合も含まれる。
【0010】
本発明のインクジェット記録方法によれば、低吸液性記録媒体を熱変形させることなく、ムラや混色のない良好な画像を得ることができるという効果を奏する。その理由は定かではないが、以下のように考えられる。
本発明のように、記録工程において低吸液性記録媒体を加熱する場合、先に着弾したインク液滴は次の他色のインク液滴が着弾するまでの間に乾燥濃縮される。インクが乾燥濃縮される際、水系インクでは溶剤の蒸発に先行して水が蒸発するために組成が大きく変化する。このインク組成の変化により、インクの静的表面張力が徐々に減少する。そのため、先に着弾したインクに隣接して、次の濃縮されていないインクが着弾すると、静的表面張力の異なるインク液滴同士が接触することになる。静的表面張力の異なる液滴同士が接触すると、その界面においてぬれが生じるため、混色が発生してしまう。そこで、先発のインクよりも後発のインクの静的表面張力を予め下げておけば、乾燥濃縮によるインクの静的表面張力差を縮めることが可能になる。このように、本発明は、加熱乾燥過程における各色インクの静的表面張力の差を縮めることで、ムラや混色を抑制できると考えられる。
また、有機溶媒(C)としてグリコールエーテルを含む有機溶媒を用い、更に必要に応じて、界面活性剤(D)としてシリコーン系界面活性剤を含むことにより、インクジェット記録方法で非吸液性の記録媒体に印刷した場合のドットの拡がりによる画像均一性がより向上し、ムラのない良好な画像が得られると考えられる。
【0011】
<水系インク>
本発明に用いられる水系インクは、着色剤(A)、有機溶媒(C)、及び水を含有する。
<着色剤(A)>
水系インクに用いられる着色剤(A)としては、顔料、染料のいずれも使用することができるが、記録物に耐候性や耐水性を付与する観点から、顔料が好ましい。
顔料は、無機顔料及び有機顔料のいずれであってもよい。また、必要に応じて、それらと体質顔料を併用することもできる。
無機顔料としては、例えば、カーボンブラック、金属酸化物、金属硫化物、金属塩化物等が挙げられる。これらの中では、特に黒色インクにおいては、カーボンブラックが好ましい。カーボンブラックとしては、ファーネスブラック、サーマルランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等が挙げられる。また、白色インクにおいては、酸化チタン、酸化亜鉛、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム等の金属酸化物等が挙げられ、酸化チタンが好ましい。
有機顔料としては、例えば、アゾ顔料、ジアゾ顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、イソインドリノン顔料、ジオキサジン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、チオインジゴ顔料、アントラキノン顔料、キノフタロン顔料等が挙げられる。色相は特に限定されず、イエロー、マゼンタ、シアン、ブルー、レッド、オレンジ、グリーン等の有彩色顔料をいずれも用いることができる。好ましい有彩色の有機顔料の具体例としては、C.I.ピグメント・イエロー、C.I.ピグメント・レッド、C.I.ピグメント・オレンジ、C.I.ピグメント・バイオレット、C.I.ピグメント・ブルー、及びC.I.ピグメント・グリーンから選ばれる1種以上の各品番製品が挙げられる。
上記の顔料及び染料は、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0012】
水系インクに用いられる顔料は、自己分散型顔料、及び顔料をポリマー(B)で分散させた粒子から選ばれる1種以上の形態で用いることができる。
ポリマー(B)は、顔料を分散させるための顔料分散ポリマー(B−1)、及び画像の定着性を向上させるための定着助剤ポリマー(B−2)として用いることができ、これらを併用することもできる。
顔料の形態としては、ムラや混色のない良好な画像を得る観点から、顔料を含有する水不溶性ポリマー(BX)の粒子として水系インク中に含有されることがより好ましい。
【0013】
〔自己分散型顔料〕
自己分散型顔料とは、親水性官能基(カルボキシ基等のアニオン性親水基、又は第4級アンモニウム基等のカチオン性親水基)の1種以上を直接、又は炭素数1〜12のアルカンジイル基等の他の原子団を介して顔料の表面に結合することで、界面活性剤や樹脂を用いることなく水系媒体に分散可能である顔料を意味する。
自己分散型顔料の市販品としては、キャボットジャパン株式会社製のCAB−O−JETシリーズ等が挙げられる。自己分散型顔料は、水に分散された顔料水分散体として用いることが好ましい。
【0014】
〔顔料をポリマー(B)で分散させた粒子〕
顔料をポリマー(B)で分散させた粒子は、例えば、1)顔料とポリマーとを混練し、その混練物を水等の媒体中に分散させた粒子、2)顔料とポリマーを水等の媒体中で撹拌し、顔料を水等の媒体中に分散させた粒子、3)ポリマー原料と顔料を機械的に分散させた状態でポリマー原料を重合し、得られたポリマーにより顔料が水等の媒体中に分散している粒子、等が挙げられる。
また、水系インク中での保存安定性を向上する観点から、これらの顔料をポリマーで分散させた粒子に対して、架橋剤を添加し、ポリマーを架橋してもよい。
【0015】
[ポリマー(B)]
ポリマー(B)としては、ポリウレタン及びポリエステル等の縮合系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、スチレン−アクリル系樹脂、ブタジエン系樹脂、スチレン−ブタジエン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、及びアクリルシリコーン系樹脂等のビニル系ポリマーが挙げられるが、ビニル系ポリマーが好ましい。
ポリマー(B)の重量平均分子量は、顔料の分散性を向上する観点及び得られる画像の定着性を向上する観点から、好ましくは1万以上、より好ましくは2万以上、更に好ましくは3万以上、より更に好ましくは4万以上であり、そして、好ましくは250万以下、より好ましくは100万以下である。
【0016】
(顔料分散ポリマー(B−1))
顔料分散ポリマー(B−1)としては、ポリエステル、ポリウレタン等の縮合系樹脂、ビニル系ポリマー等が挙げられるが、顔料の分散安定性の観点から、ビニル単量体(ビニル化合物、ビニリデン化合物、ビニレン化合物)の付加重合により得られるビニル系ポリマーが好ましい。顔料分散ポリマー(B−1)は、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。
顔料分散ポリマー(B−1)の重量平均分子量は、顔料の分散性を向上する観点から、好ましくは2万以上、より好ましくは3万以上、更に好ましくは4万以上であり、そして、好ましくは50万以下、より好ましくは30万以下、更に好ましくは20万以下である。
ビニル系ポリマーの市販品例としては、アロンAC−10SL(東亜合成株式会社製)等のポリアクリル酸;ジョンクリル67、同611、同678、同680、同690、同819(BASFジャパン株式会社製)等のスチレン−アクリル樹脂等が挙げられる。
【0017】
[定着助剤ポリマー(B−2)]
定着助剤ポリマー(B−2)は、顔料を含有しないポリマー粒子として用いることが好ましい。定着助剤ポリマー(B−2)の分散体は、記録媒体上で成膜してインクの定着性を向上させる。
定着助剤ポリマー(B−2)としては、ポリウレタン及びポリエステル等の縮合系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、スチレン−アクリル系樹脂、ブタジエン系樹脂、スチレン−ブタジエン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂及びアクリルシリコーン系樹脂等のビニル系ポリマーが挙げられる。これらの中では、記録媒体上での乾燥性を早め、画像の定着性を向上させる観点から、アクリル系樹脂が好ましい。
また、定着助剤ポリマー(B−2)は、水系インクの生産性を向上させる観点から、ポリマー粒子を含む分散液として用いることが好ましい。定着助剤ポリマー(B−2)は、例えば乳化重合法等により製造したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。
【0018】
定着助剤ポリマー(B−2)の市販品例としては、Neocryl A1127(DSM NeoResins社製、アニオン性自己架橋水系アクリル樹脂);ジョンクリル390(BASFジャパン株式会社製)等のアクリル樹脂;WBR−2018、WBR−2000U(大成ファインケミカル株式会社製)等のウレタン樹脂;SR−100、同102(日本エイアンドエル株式会社製)等のスチレン−ブタジエン樹脂;ジョンクリル7100、同7600、同537J、同538J、同780、ジョンクリルPDX−7164(BASFジャパン株式会社製)等のスチレン−アクリル樹脂;及びビニブラン700、同ビニブラン701(日信化学工業株式会社製)等の塩化ビニル系樹脂等が挙げられる。
定着助剤ポリマー(B−2)の形態としては、水中に分散した粒子が挙げられる。
【0019】
定着助剤ポリマー(B−2)の重量平均分子量は、定着性の観点から、好ましくは1万以上、より好ましくは2万以上、更に好ましくは3万以上であり、そして、好ましくは250万以下、より好ましくは100万以下である。
また、定着助剤ポリマー(B−2)粒子を含有する分散体中又はインク中の定着助剤ポリマー(B−2)粒子の平均粒径は、インクの保存安定性から、好ましくは10nm以上、より好ましくは30nm以上、更に好ましくは50nm以上であり、そして、好ましくは300nm以下、より好ましくは200nm以下、更に好ましくは150nm以下、より更に好ましくは130nm以下である。
【0020】
<水不溶性ポリマー(BX)>
水不溶性ポリマー(BX)は、ムラや混色のない良好な画像を得る観点から、顔料を含有する水不溶性ポリマーの粒子(以下、「顔料含有ポリマー粒子」ともいう)として用いることが好ましい。ここで「水不溶性」とは、乾燥して恒量に達したポリマーを、25℃の水100gに溶解させたときの溶解量が10g以下、好ましくは5g以下、より好ましくは1g以下であることを意味する。水不溶性ポリマー(BX)がアニオン性ポリマーの場合は、ポリマーのアニオン性基をNaOHで100%中和した時の溶解量である。
水不溶性ポリマー(BX)としては、インクの保存安定性を向上させる観点から、ビニルモノマーの付加重合により得られるビニル系ポリマーが好ましい。ビニル系ポリマーとしては、(b−1)イオン性モノマーと、(b−2)疎水性モノマーとを含むモノマー混合物を共重合させてなるビニル系ポリマーが好ましい。このビニル系ポリマーは、(b−1)成分由来の構成単位と(b−2)成分由来の構成単位を有する。中でも、更に(b−3)マクロモノマー由来の構成単位を含有するものが好ましい。
【0021】
(b−1)イオン性モノマーとしては、アニオン性モノマー及びカチオン性モノマーが挙げられ、アニオン性モノマーが好ましい。アニオン性モノマーとしては、カルボン酸モノマー、スルホン酸モノマー、リン酸モノマー等が挙げられる。
カルボン酸モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、2−メタクリロイルオキシメチルコハク酸等が挙げられる。上記の中では、顔料含有ポリマー粒子のインク中における分散安定性を向上させる観点から、カルボン酸モノマーが好ましく、アクリル酸及びメタクリル酸がより好ましい。
【0022】
(b−2)疎水性モノマーとしては、アルキル(メタ)アクリル酸エステル、芳香族基含有モノマー等が挙げられる。
アルキル(メタ)アクリル酸エステルとしては、炭素数1〜22のアルキル基を有するものが好ましく、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、アミル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、(イソ)ステアリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
芳香族基含有モノマーとしては、ヘテロ原子を含む置換基を有していてもよい、炭素数6〜22の芳香族基を有するビニルモノマーが好ましく、スチレン系モノマー、芳香族基含有(メタ)アクリル酸エステルがより好ましい。
スチレン系モノマーとしてはスチレン、2−メチルスチレン、及びジビニルベンゼンが好ましく、スチレンがより好ましい。芳香族基含有(メタ)アクリル酸エステルとしては、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等が好ましく、ベンジル(メタ)アクリレートがより好ましい。
【0023】
(b−3)マクロモノマーは、片末端に重合性官能基を有する数平均分子量500以上100,000以下の化合物である。片末端に存在する重合性官能基としては、アクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基が好ましい。
(b−3)マクロモノマーの数平均分子量は1,000以上10,000以下が好ましい。なお、数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー法により、標準物質としてポリスチレンを用いて測定される。
(b−3)マクロモノマーとしては、顔料含有ポリマー粒子のインク中における分散安定性を向上させる観点から、芳香族基含有モノマー系マクロモノマー及びシリコーン系マクロモノマーが好ましく、芳香族基含有モノマー系マクロモノマーがより好ましい。
芳香族基含有モノマー系マクロモノマーを構成する芳香族基含有モノマーとしては、前記(b−2)疎水性モノマーで記載した芳香族基含有モノマーが挙げられ、スチレン及びベンジル(メタ)アクリレートが好ましく、スチレンがより好ましい。
スチレン系マクロモノマーの具体例としては、AS−6(S)、AN−6(S)、HS−6(S)(東亞合成株式会社の商品名)等が挙げられる。
【0024】
(b−4)ノニオン性モノマーは、顔料含有ポリマー粒子のインク中における分散安定性を向上させる観点から、モノマー成分として用いることが好ましい。
(b−4)成分としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(n=2〜30、nはオキシアルキレン基の平均付加モル数を示す。以下同じ)(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(n=2〜30)(メタ)アクリレート等のポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(n=1〜30)(メタ)アクリレート等のアルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシ(エチレングリコール・プロピレングリコール共重合)(n=1〜30、その中のエチレングリコール:n=1〜29)(メタ)アクリレート等が挙げられる。
商業的に入手しうる(b−4)成分の具体例としては、新中村化学工業株式会社のNKエステルM−20G、同40G、同90G、同230G等、日油株式会社のブレンマーPE−90、同200、同350等、PME−100、同200、同400等、PP−500、同800、同1000等、AP−150、同400、同550等、50PEP−300、50POEP−800B、43PAPE−600B等が挙げられる。
上記(b−1)〜(b−4)成分は、それぞれ単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0025】
水不溶性ポリマー(BX)中における(b−1)〜(b−4)成分に由来する構成単位の含有量は、顔料含有ポリマー粒子の分散安定性の観点から、次のとおりである。
(b−1)成分の含有量は、好ましくは3質量%以上、より好ましくは5質量%以上、更に好ましくは7質量%以上であり、そして、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下、更に好ましくは20質量%以下である。
(b−2)成分の含有量は、好ましくは25質量%以上、より好ましくは30質量%以上、更に好ましくは35質量%以上であり、そして、好ましくは60質量%以下、より好ましくは55質量%以下、更に好ましくは50質量%以下である。
(b−3)成分の含有量は、0質量%以上、好ましくは5質量%以上、より好ましくは8質量%以上、更に好ましくは10質量%以上であり、そして、好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下、更に好ましくは20質量%以下である。
(b−4)成分の含有量は、0質量%以上、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは15質量%以上であり、そして、好ましくは50質量%以下、より好ましくは45質量%以下、更に好ましくは40質量%以下である。
【0026】
〔水不溶性ポリマー(BX)の製造〕
水不溶性ポリマー(BX)は、公知の重合法、例えば溶液重合法により共重合させることにより得ることができる。水不溶性ポリマー(BX)は、後述する顔料含有ポリマー粒子の水分散体の生産性を向上させる観点から、重合反応に用いた溶剤を除去せずに、含有する有機溶媒を後述する工程Iに用いる有機溶媒として用いるために、そのまま水不溶性ポリマー溶液として用いることが好ましい。
【0027】
水不溶性ポリマー(BX)の重量平均分子量は、ムラや混色のない良好な画像を得る観点から、好ましくは5,000以上、より好ましくは1万以上、更に好ましくは2万以上であり、そして、好ましくは50万以下、より好ましくは40万以下、更に好ましくは30万以下、より更に好ましくは20万以下である。
水不溶性ポリマー(BX)の水系インク中での存在形態は、該ポリマーが顔料を内包(カプセル化)した粒子形態、該ポリマー中に顔料が均一に分散された粒子形態、該ポリマーの粒子表面から顔料が露出した粒子形態、該ポリマーが顔料に吸着している形態、及び該ポリマーが顔料に吸着していない形態等が含まれ、これらが混合した形態も含まれる。顔料の分散安定性の観点から、本発明においては顔料含有ポリマー粒子の形態が好ましく、水不溶性ポリマー(BX)が顔料を含有している顔料内包形態がより好ましい。
【0028】
〔顔料を含有する水不溶性ポリマー(BX)の粒子(顔料含有ポリマー粒子)の製造〕
顔料含有ポリマー粒子は、水分散体として下記の工程I、工程II、及び必要に応じて更に工程IIIを有する方法により、効率的に製造することができる。
工程I:水不溶性ポリマー(BX)、有機溶媒、顔料、及び水を含有する混合物(以下、「顔料混合物」ともいう)を分散処理して、顔料含有ポリマー粒子の分散体を得る工程
工程II:工程Iで得られた分散体から前記有機溶媒を除去して、顔料含有ポリマー粒子の水分散体(以下、「顔料水分散体」ともいう)を得る工程
工程III:工程IIで得られた水分散体と架橋剤を混合し、架橋処理して水分散体を得る工程
【0029】
(工程I)
工程Iでは、まず、水不溶性ポリマー(BX)を有機溶媒に溶解させ、次に顔料、水、及び必要に応じて中和剤、界面活性剤等を、得られた有機溶媒溶液に加えて混合し、水中油型の分散体を得る方法が好ましい。
水不溶性ポリマー(BX)を溶解させる有機溶媒に制限はないが、水不溶性ポリマーを溶液重合法で合成した場合には、重合で用いた溶媒をそのまま用いてもよい。
水不溶性ポリマー(BX)がアニオン性ポリマーの場合、中和剤を用いて水不溶性ポリマー中のアニオン性基を中和してもよい。中和剤としては、アルカリ金属の水酸化物、アンモニア、有機アミン等が挙げられる。
工程Iにおける分散処理方法に特に制限はないが、好ましくは顔料混合物を予備分散させた後、更に剪断応力を加えて本分散を行い、顔料粒子の平均粒径を所望の粒径とするよう制御することが好ましい。予備分散装置としては、アンカー翼、ディスパー翼等の一般に用いられている混合撹拌装置が挙げられるが、高速撹拌混合装置が好ましい。
また、本分散装置としては、ロールミル、ニーダー等の混練機、マイクロフルイダイザー(Microfluidic社製)等の高圧ホモジナイザー、ペイントシェーカー、ビーズミル等のメディア式分散機が挙げられるが、顔料を小粒子径化する観点から、高圧ホモジナイザーが好ましい。高圧ホモジナイザーを用いて本分散を行う場合、処理圧力やパス回数の制御により、顔料を所望の粒径になるように制御することができる。
【0030】
(工程II)
工程IIでは、工程Iで得られた分散体から、公知の方法で有機溶媒を除去して顔料水分散体を得ることができる。得られた顔料水分散体中の有機溶媒は実質的に除去されていることが好ましいが、本発明の目的を損なわない限り、多少残存していてもよい。
得られた顔料水分散体は、顔料を含有する固体の水不溶性ポリマー(BX)粒子が水を主媒体とする媒体中に分散しているものである。ここで、顔料含有ポリマー粒子の形態は特に制限はないが、前記のとおり、顔料を含有している顔料内包状態がより好ましい。
【0031】
(工程III)
工程IIIは、任意の工程であるが、工程IIIを行うことが、顔料水分散体及びインクの保存安定性の観点から好ましい。
ここで、架橋剤は、水不溶性ポリマー(BX)がアニオン性基を有するアニオン性水不溶性ポリマーである場合において、該アニオン性基と反応する官能基を有する化合物が好ましく、該官能基を分子中に2以上、好ましくは2〜6有する化合物がより好ましい。
架橋剤の好適例としては、分子中に2以上のエポキシ基を有する化合物、分子中に2以上のオキサゾリン基を有する化合物、分子中に2以上のイソシアネート基を有する化合物が挙げられ、これらの中では、分子中に2以上のエポキシ基を有する化合物が好ましく、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテルがより好ましい。
【0032】
得られた顔料水分散体の固形分濃度は、顔料水分散体の分散安定性を向上させる観点等から、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上であり、また、好ましくは35質量%以下、より好ましくは30質量%以下である。なお、顔料水分散体の固形分濃度は、実施例に記載の方法により測定される。
顔料水分散体中の顔料含有ポリマー粒子の平均粒径は、粗大粒子を低減し、連続吐出性を向上させる観点から、好ましくは40nm以上、より好ましくは60nm以上、更に好ましくは80nm以上、より更に好ましくは85nm以上であり、そして、好ましくは150nm以下、より好ましくは130nm以下、更に好ましくは125nm以下である。
なお、顔料含有ポリマー粒子の平均粒径は、実施例に記載の方法により測定される。
【0033】
<有機溶媒(C)>
有機溶媒(C)は、ムラや混色のない良好な画像を得る観点から、沸点が90℃以上250℃未満であるものが好ましい。有機溶媒(C)の沸点は、好ましくは130℃以上、より好ましくは140℃以上、更に好ましくは150℃以上であり、そして、好ましくは245℃以下、好ましくは240℃以下、好ましくは235℃以下である。
かかる有機溶媒(C)としては、多価アルコール(c−1)、及びグリコールエーテル(c−2)が好適に挙げられる。
【0034】
(多価アルコール(c−1))
多価アルコール(c−1)としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール等の1,2−アルカンジオール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、3−メチル−1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,3−ブタントリオール、ペトリオール等が挙げられる。
これらの中では、インクの保存安定性及び連続吐出性を向上させる観点から、プロピレングリコール(沸点188℃)、ジエチレングリコール(沸点245℃)、1,2−ヘキサンジオール(沸点223℃)等の炭素数2以上6以下のアルカンジオール、及び分子量500〜1000のポリプロピレングリコールから選ばれる1種以上が好ましく、プロピレングリコール、ジエチレングリコール等の炭素数3以上4以下の1,2−アルカンジオール、及び前記ポリプロピレングリコールから選ばれる1種以上がより好ましい。
【0035】
(グリコールエーテル(c−2))
グリコールエーテル(c−2)の具体例としては、アルキレングリコールモノアルキルエーテル、アルキレングリコールジアルキルエーテル等が挙げられるが、連続吐出性を向上させ、かつムラや混色のない良好な画像を得る観点から、アルキレングリコールモノアルキルエーテルが好ましい。アルキレングリコールモノアルキルエーテルのアルキル基の炭素数は、好ましくは1以上、より好ましくは2以上、更に好ましくは3以上であり、そして、好ましくは6以下、より好ましくは4以下である。アルキレングリコールモノアルキルエーテルのアルキル基は、直鎖でも分岐鎖でもよい。
アルキレングリコールモノアルキルエーテルの具体例としては、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコールイソプロピルエーテル、エチレングリコールプロピルエーテル、エチレングリコールブチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテル、ジエチレングリコールイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールイソブチルエーテル、ジエチレングリコールブチルエーテル、トリエチレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールブチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、トリプロピレングリコールメチルエーテル等が挙げられる。
これらの中では、エチレングリコールイソプロピルエーテル(沸点144℃)、エチレングリコールプロピルエーテル(沸点151℃)、ジエチレングリコールメチルエーテル(沸点194℃)、ジエチレングリコールイソプロピルエーテル(沸点207℃)、ジエチレングリコールイソブチルエーテル(沸点230℃)、及びジエチレングリコールブチルエーテル(沸点230℃)から選ばれる1種以上が好ましく、エチレングリコールイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールイソプロピルエーテル、及びジエチレングリコールイソブチルエーテルから選ばれる1種以上がより好ましい。
【0036】
(その他の有機溶媒)
本発明においては、前記の有機溶媒(C)以外に、水系インクに通常配合されるその他のアルコール、該アルコールのアルキルエーテル、グリコールエーテル、NMP等の含窒素複素環化合物、アミド、アミン、含硫黄化合物等を含有することができる。
例えば、1,6−ヘキサンジオール(沸点250℃)、トリエチレングリコール(沸点285℃)、トリプロピレングリコール(沸点273℃)、ポリプロピレングリコール(沸点250℃以上)、グリセリン(沸点290℃)等を沸点が250℃未満の溶媒と組み合わせて用いることができる。
【0037】
<界面活性剤(D)>
本発明で用いられる水系インクは、ムラや混色のない良好な画像を得る観点から、界面活性剤(D)を含有することが好ましく、界面活性剤(D)としては、シリコーン系界面活性剤(d−1)を含むものが好ましい。
シリコーン系界面活性剤(d−1)は、目的に応じて適宜選択することができるが、インク粘度の上昇を抑制し、連続吐出性を向上させ、かつムラや混色のない良好な記録物を得る観点から、ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤が好ましい。
【0038】
(ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤)
ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤は、インク粘度の上昇を抑制し、またインク同士の混色を抑制することができるため、高速印刷においてムラや混色のない良好な記録物を得ることに寄与すると考えられる。
ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤は、シリコーンオイルの側鎖及び/又は末端の炭化水素基を、ポリエーテル基で置換された構造を有するものである。該ポリエーテル基としては、ポリエチレンオキシ基、ポリプロピレンオキシ基、エチレンオキシ基(EO)とプロピレンオキシ基(PO)がブロック状又はランダムに付加したポリアルキレンオキシ基が好適であり、シリコーン主鎖にポリエーテル基がグラフトした化合物、シリコーンとポリエーテル基がブロック状に結合した化合物等を用いることができる。
ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤のHLB値は、水系インクへの溶解性の観点から、好ましくは3.0以上、より好ましくは4.0以上、更に好ましくは4.5以上である。ここで、HLB値は、界面活性剤の水及び油への親和性を示す値であり、グリフィン法により次式から求めることができる。なお、次式において「界面活性剤中に含まれる親水基」としては、例えば、水酸基及びエチレンオキシ基が挙げられる。
HLB=20×[(界面活性剤中に含まれる親水基の分子量)/(界面活性剤の分子量)]
ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤の具体例としては、信越化学工業株式会社製のKFシリーズ、日信化学工業株式会社製のシルフェイスSAG、ビックケミー・ジャパン株式会社製のBYKシリーズ等が挙げられる。
【0039】
(その他の界面活性剤)
本発明においては、ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤以外の界面活性剤を併用することができる。それらの中では、ノニオン性界面活性剤が好ましい。
ノニオン性界面活性剤としては、例えば、(1)炭素数8〜22の脂肪族又は芳香族アルコール又は多価アルコールに、アルキレンオキシドを付加したポリオキシアルキレンのアルキルエーテル、アルケニルエーテル、(2)炭素数8〜22の炭化水素基を有するアルコールと多価脂肪酸とのエステル、(3)炭素数8〜20のアルキル基又はアルケニル基を有するポリオキシアルキレン脂肪族アミン、(4)炭素数8〜22の高級脂肪酸と多価アルコールのエステル化合物又はそれにアルキレンオキシドを付加した化合物等が挙げられる。
ノニオン性界面活性剤の市販品例としては、日信化学工業株式会社のサーフィノールシリーズ、川研ファインケミカル株式会社製のアセチレノールシリーズ、花王株式会社製のエマルゲン120(ポリオキシエチレンラウリルエーテル)等が挙げられる。
【0040】
[水系インクの各成分の含有量、インク物性]
本発明に用いられる水系インクは、上記成分を適宜混合し、撹拌することにより得ることができる。得られる水系インクの各成分の含有量、物性は以下のとおりである。
(顔料(A)の含有量)
水系インク中の顔料(A)の含有量は、水系インクの記録濃度を向上させる観点から、好ましくは2.0質量%以上、より好ましくは4.0質量%以上、更に好ましくは6.0質量%以上である。また、溶媒揮発時のインク粘度を低くし、連続吐出性を向上させ、かつムラや混色のない良好な画像を得る観点から、好ましくは30.0質量%以下、より好ましくは20質量%以下、更に好ましく15質量%以下、より更に好ましくは10.0質量%以下である。
【0041】
(ポリマー(B)の含有量)
水系インク中のポリマー(B)の含有量は、定着性の観点から、好ましくは1.0質量%以上、より好ましくは2.0質量%以上、更に好ましくは3.0質量%以上であり、そして、好ましくは20質量%以下、より好ましくは13質量%以下、更に好ましくは8.0質量%以下である。
ポリマー(B)を顔料分散ポリマー(B−1)として用いる場合の顔料分散ポリマー(B−1)の含有量は、定着性の観点から、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、更に好ましくは0.1質量%以上であり、そして、好ましくは10質量%以下、より好ましくは7.0質量%以下、更に好ましくは5.0質量%以下である。
ポリマー(B)を定着助剤ポリマー(B−2)として用いる場合の定着助剤ポリマー(B−2)の含有量は、インクの定着性の観点から、好ましくは0.9質量%以上、より好ましくは1.0質量%以上、更に好ましくは1.2質量%以上であり、そして、好ましくは10質量%以下、より好ましくは6.0質量%以下、更に好ましくは3.0質量%以下である。
なお、顔料を含有する水不溶性ポリマー(BX)の粒子を用いる場合は、水系インク中のポリマー(B)の含有量は、顔料含有ポリマー粒子の顔料分散ポリマー(B−1)と定着助剤ポリマー(B−2)を含む合計量である。
【0042】
(有機溶媒(C)の含有量)
水系インク中の有機溶媒(C)の含有量は、インクの連続吐出性を向上させる観点から、好ましくは15質量%以上、より好ましくは20質量%以上、更に好ましくは25質量%以上であり、そして、好ましくは45質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは35質量%以下である。
水系インク中の多価アルコール(c−1)の含有量は、インクの保存安定性及び連続吐出性を向上させる観点から、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上、更に好ましくは20質量%以上であり、そして、好ましくは45質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは35質量%以下である。
水系インク中のグリコールエーテル(c−2)の含有量は、インクの保存安定性及び連続吐出性を向上させる観点から、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上、更に好ましくは3質量%以上であり、そして、好ましくは15質量%以下、より好ましくは12質量%以下、更に好ましくは8質量%以下である。
本発明に用いられる水系インクは、高速印刷において、適度な乾燥性を付与し、ムラや混色のない良好な画像を得る観点から、沸点250℃以上の高沸点有機溶媒の含有量が、好ましくは5質量%以下、より好ましくは4質量%以下、更に好ましくは3質量%以下である。
【0043】
(界面活性剤(D)の含有量)
水系インク中の界面活性剤(D)の含有量は、インク粘度の上昇を抑制し、インクの連続吐出性を向上させ、ムラや混色のない良好な画像を得る観点から、好ましくは0.1質量%以上であり、より好ましくは0.2質量%以上、更に好ましくは0.5質量%以上であり、そして、好ましくは5質量%以下、より好ましくは4質量%以下、更に好ましくは3質量%以下、より更に好ましくは2.5質量%以下である。
水系インク中のシリコーン系界面活性剤(d−1)の含有量は、上記と同様の観点から、好ましくは0.005質量%以上、より好ましくは0.03質量%以上、更に好ましくは0.04質量%以上であり、そして、好ましくは0.5質量%以下、より好ましくは0.4質量%以下、更に好ましくは0.3質量%以下である。
水系インク中のポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤の含有量は、上記と同様の観点から、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.02質量%以上、更に好ましくは0.03質量%以上であり、そして、好ましくは0.5質量%以下、より好ましくは0.4質量%以下、更に好ましくは0.2質量%以下である。
水系インク中のノニオン性界面活性剤(d−2)の含有量は、上記と同様の観点から、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.8質量%以上、更に好ましくは1.5質量%以上であり、そして、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3.5質量%以下、更に好ましくは2.5質量%以下である。
【0044】
(水の含有量)
水系インク中の水の含有量は、インクの連続吐出性及び保存安定性を向上させ、ムラや混色のない良好な画像を得る観点から、好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上、更に好ましくは40質量%以上であり、そして、好ましくは85質量%以下、より好ましくは80質量%以下、更に好ましくは75質量%以下である。
本発明で用いられる水系インクには、上記成分の他に、通常用いられる保湿剤、湿潤剤、浸透剤、消泡剤、防腐剤、防黴剤、防錆剤等の各種添加剤を添加することができる。
【0045】
<水系インクの物性>
本発明のインクジェット記録方法においては、黒色インク、白色インク、有彩色インクから選ばれる2種以上のインクであって、静的表面張力が異なる水系インクを使用する。水系インクは、好ましくは3種以上、より好ましくは4種以上用いられ、そして、好ましくは8種以下、好ましくは7種以下用いられる。複数の水系インクの組み合わせとして、例えば、黒色インク、シアンインク、マゼンタインク及びイエローインクの4種の組み合わせ、黒色インク、シアンインク、マゼンタインク、イエローインク及び白色インクの5種の組み合わせ、黒色インク、シアンインク、マゼンタインク、イエローインク、レッドインク、グリーンインク及びブルーインクの7種の組み合わせ、黒色インク、シアンインク、マゼンタインク、イエローインク、レッドインク、グリーンインク、ブルーインク及び白インクの8種の組み合わせが挙げられる。
水系インクの20℃における静的表面張力は、ムラや混色のない良好な画像を得る観点、及び水系インクの吐出性を向上させる観点から、好ましくは22mN/m以上、より好ましくは24mN/m以上、更に好ましくは25mN/m以上であり、そして、好ましくは45mN/m以下、より好ましくは40mN/m以下、更に好ましくは35mN/m以下である。
上記2種以上のインクの静的表面張力の差は、ムラや混色のない良好な画像を得る観点から、好ましくは0.1mN/m以上、より好ましくは0.2mN/m以上、更に好ましくは0.3mN/m以上あることが好ましい。
インクの静的表面張力は、例えば、有機溶媒(C)や界面活性剤(D)の種類や含有量を選択することにより調整することができる。
【0046】
水系インクに含まれる粒子の平均粒径は、保存安定性、吐出性の観点から、好ましくは40nm以上、より好ましくは60nm以上、更に好ましくは80nm以上であり、そして、好ましくは250nm以下、より好ましくは220nm以下、更に好ましくは200nm以下、より更に好ましは180nm以下である。
なお、平均粒径、静的表面張力は、実施例に記載の方法により測定される。
水系インクの32℃の粘度は、インクの連続吐出性を向上させる観点から、好ましくは2.0mPa・s以上、より好ましくは3.0mPa・s以上、更に好ましくは4.0mPa・s以上であり、そして、好ましくは12mPa・s以下、より好ましくは9.0mPa・s以下、更に好ましくは7.0mPa・s以下である。
水系インクのpHは、保存安定性等の観点、及びムラや混色のない良好な記録物を得る観点から、好ましくは7.0以上、より好ましくは8.0以上、更に好ましくは8.5以上、より更に好ましくは8.7以上であり、部材耐性、皮膚刺激性の観点から、好ましくは11.0以下、より好ましくは10.0以下である。
【0047】
<インクジェット記録方法>
本発明のインクジェット記録方法は、低吸液性記録媒体に、上記の水系インクを吐出するインクジェットヘッドを備えるインクジェット記録装置を用いる方法であって、該インクジェット記録装置が、静的表面張力の異なる水系インクを2種以上備え、該記録媒体が30〜75℃に加熱されており、該記録媒体に静的表面張力の高い水系インクから順に吐出する、インクジェット記録方法である。
本発明のように、吐出する先発のインクよりも後発のインクの静的表面張力を予め下げておくように設定することにより、加熱乾燥過程における各色インクの静的表面張力の差を縮めることができるため、ムラや混色を抑制できると考えられる。
【0048】
(低吸液性記録媒体)
本発明で用いられる低吸液性記録媒体としては、低吸液性のコート紙及び樹脂フィルムが挙げられ、枚葉紙でも巻き取り紙でもよいが、生産性の観点から、ロール状の記録媒体が好ましい。
コート紙としては、汎用光沢紙「OKトップコートプラス」(王子製紙株式会社製、接触時間100m秒における吸水量(以下同じ)4.9g/m)、多色フォームグロス紙(王子製紙株式会社製、吸水量5.2g/m)、UPMFinesse Gloss(UPM社製、吸水量3.1g/m)等が挙げられる。
樹脂フィルムとしては、透明合成樹脂フィルムが挙げられ、例えば、ポリエステルフィルム、塩化ビニルフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンフィルム、ナイロンフィルム等が挙げられる。これらのフィルムは、二軸延伸フィルム、一軸延伸フィルム、無延伸フィルムであってもよい。これらの中では、ポリエステルフィルム、延伸ポリプロピレンフィルムがより好ましく、コロナ放電処理されたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム等のポリエステルフィルム、コロナ放電処理された二軸延伸ポリプロピレン(OPP)フィルム等の延伸ポリプロピレンフィルムがより好ましい。
樹脂フィルムの厚さは特に制限はない。厚さ1〜20μm未満の薄肉フィルムでもよいが、記録媒体の外観不良の抑制、及び入手性の観点から、好ましくは20μm以上、より好ましくは30μm以上、更に好ましくは35μm以上であり、そして、好ましくは100μm以下、より好ましくは80μm以下、更に好ましくは75μm以下である。
透明合成樹脂フィルムの市販品例としては、ルミラーT60(東レ株式会社製、PET)、太閤FE2001(フタムラ化学株式会社製、コロナ放電処理PET)、太閤FOR−AQ(フタムラ化学株式会社製、コロナ放電処理OPP)、PVC80B P(リンテック株式会社製、塩化ビニル)、カイナスKEE70CA(リンテック株式会社製、ポリエチレン)、ユポSG90 PAT1(リンテック株式会社製、PP)、ボニールRX(興人フィルム&ケミカルズ株式会社製、ナイロン)等が挙げられる。
【0049】
(インクジェット記録装置)
本発明に用いられるインクジェット記録装置は、水系インクを2種以上備える。インクジェット記録装置が複数の水系インクを備えるとは、複数の各水系インクを吐出するインクジェットヘッドの吐出口を有することを意味する。例えば、インクジェット記録装置が2種の水系インクを備える場合、2種の水系インクのそれぞれを吐出するインクジェットヘッドの吐出口を有する。この場合、インクジェットヘッドの数は1であっても2であってもよい。インクジェット記録装置は、水系インクを2種以上備えるものであり、ムラや混色のない良好な画像を得る観点から、水系インクを好ましくは3種以上、より好ましくは4種以上備え、そして、水系インクを好ましくは8種以下、好ましくは7種以下を備える。
本発明に用いられるインクジェット記録装置は、記録媒体を30〜75℃に加熱するために、送り方向に移動する記録媒体に水系インクを吐出するインクジェットヘッドと、該ヘッドに対向する該記録媒体の面とは裏側の面から該記録媒体を加熱するアンダーヒーターとを備えるものが好ましい。
【0050】
(インクジェットヘッド)
インクジェットヘッドとしては、シリアルヘッド方式、ラインヘッド方式が挙げられるが、ラインヘッド方式が好ましい。ラインヘッド方式は、ヘッドを固定して、記録媒体を搬送方向に移動させ、この移動に連動してヘッドのノズル開口からインク液滴を吐出させ、記録媒体に付着させる方式であり、画像等をワンパス方式で記録することができる。
インク液滴の吐出方式はピエゾ方式が好ましい。ピエゾ方式では、多数のノズルが、各々圧力室に連通しており、この圧力室の壁面をピエゾ素子で振動させることにより、ノズルからインク液滴を吐出させる。なお、サーマル方式を採用することもできる。
記録ヘッドの印加電圧は、高速印刷の効率性等の観点から、好ましくは5V以上、より好ましくは10V以上、更に好ましくは15V以上であり、そして、好ましくは40V以下、より好ましくは35V以下、更に好ましくは30V以下である。
駆動周波数は、高速印刷の効率性等の観点から、好ましくは2kHz以上、より好ましくは5kHz以上、更に好ましくは8kHz以上であり、そして、好ましくは80kHz以下、より好ましくは70kHz以下、更に好ましくは60kHz以下である。
【0051】
(記録条件等)
インクの吐出液滴量は、インク液滴の着弾位置の精度を維持する観点及び画質向上の観点から、1滴あたり好ましくは0.5pL以上、より好ましくは1.0pL以上、更に好ましくは1.5pL以上、より更に好ましくは1.8pL以上であり、そして、好ましくは20pL以下、より好ましくは15pL以下、更に好ましくは13pL以下である。
記録ヘッド解像度は、好ましくは400dpi(ドット/インチ)以上、より好ましくは500dpi以上、更に好ましくは550dpi以上である。
記録時のヘッド内、好ましくはラインヘッド内の温度は、インクの粘度を下げ、連続吐出性を向上させる観点から、好ましくは20℃以上、より好ましくは25℃以上、更に好ましくは30℃以上であり、そして、好ましくは45℃以下、より好ましくは40℃以下、更に好ましくは38℃以下である。
記録ヘッド、好ましくはラインヘッドがインクを吐出する領域と対面する記録媒体の表面温度は、ムラや混色のない良好な記録物を得る観点から、30℃以上に加熱され、記録物の熱変形を抑制する観点、及び製造エネルギーの消費を抑制する観点から、75℃以下とされる。記録媒体の温度は、好ましくは35℃以上、より好ましくは40℃以上、更に好ましくは45℃以上であり、そして、好ましくは70℃以下、より好ましくは65℃以下、更に好ましくは60℃以下、より更に好ましくは55℃以下である。
記録媒体の温度は、アンダーヒーターの温度を調整することにより行うことができる。
記録速度は、生産性の観点から、記録媒体が記録の際に移動する方向に対する搬送速度換算で通常5m/min以上であり、好ましくは10m/min以上、より好ましくは20m/min以上、更に好ましくは30m/min以上であり、そして、操作性の観点から、好ましくは75m/min以下である。
水系インクの記録媒体上の付着量は、記録物の画質向上及び記録速度の観点から、固形分として、好ましくは0.1g/m以上であり、そして、好ましくは25g/m以下、より好ましくは20g/m以下である。
【0052】
(アンダーヒーター)
インクジェット記録装置に設けられるアンダーヒーターは、水系インクの記録ヘッドに対向する、記録媒体の面とは裏側の面に配置され、記録媒体を加熱する。アンダーヒーターは、例えば、温水式や、熱電式のステンレス又はセラミック板を有するヒーターとすることができる。アンダーヒーターは、複数のインクを吐出する記録ヘッドが複数ある場合は、それぞれの記録ヘッドに対向する位置に配置することが好ましい。
アンダーヒーターは、印刷時において、記録媒体の裏側の面から、好ましくは0.05mm以上、より好ましくは0.1mm以上、更に好ましくは0.2mm以上、より更に好ましくは0.4mm以上であり、そして、好ましくは5.0mm以下、より好ましくは4.0mm以下、更に好ましくは3.0mm以下、より更に好ましくは2.0mm以下、より更に好ましくは1.5mm以下離れた位置に配置される。
本発明のインクジェット記録方法においては、一種のインクを吐出して画像を記録し、引き続いて次のインクが吐出されても各インクの液滴同士が混色しないようにするために、更にヒーター等の熱エネルギーを付与する定着・硬化手段を設けることもできる。
【0053】
上述した実施形態に関し、本発明は更に以下のインクジェット記録方法を開示する。
<1> 低吸液性記録媒体に水系インクを吐出するインクジェットヘッドを備えるインクジェット記録装置を用いて、該記録媒体に記録するインクジェット記録方法であって、
該水系インクが、着色剤(A)、有機溶媒(C)、及び水を含有し、
該インクジェット記録装置が、静的表面張力の異なる水系インクを2種以上備え、
該記録媒体が30〜75℃に加熱されており、
該記録媒体に静的表面張力の高い水系インクから順に吐出する、インクジェット記録方法。
<2> 着色剤(A)が、顔料を含有する水不溶性ポリマー粒子として、水系インク中に含有される、前記<1>に記載のインクジェット記録方法。
<3> 有機溶媒(C)が、グリコールエーテル(c−2)を含む、前記<1>又は<2>に記載のインクジェット記録方法。
<4> 水系インクが、更にポリマー(B)を含有する、前記<1>〜<3>のいずれかに記載のインクジェット記録方法。
<5> 水系インクが、更に界面活性剤(D)を含有する、前記<1>〜<4>のいずれかに記載のインクジェット記録方法。
<6> 界面活性剤(D)が、シリコーン系界面活性剤(d−1)を含む、前記<5>に記載のインクジェット記録方法。
<7> 低吸液性記録媒体が、コロナ放電処理されたポリエステルフィルム又はコロナ放電処理された延伸ポリプロピレンフィルムである、前記<1>〜<6>のいずれかに記載のインクジェット記録方法。
<8> 記録媒体に水系インクを吐出するインクジェットヘッドと、該ヘッドに対向する該記録媒体の面とは裏側の面に設けたアンダーヒーターで該記録媒体を加熱する、前記<1>〜<7>のいずれかに記載のインクジェット記録方法。
<9> 記録速度が記録媒体の搬送速度換算で5m/min以上75m/min以下である、前記<1>〜<8>のいずれかに記載のインクジェット記録方法。
<10> ワンパス方式で記録する、前記<1>〜<9>のいずれかに記載のインクジェット記録方法。
【実施例】
【0054】
以下の製造例、実施例及び比較例において、「部」及び「%」は特記しない限り「質量部」及び「質量%」である。なお、各物性の測定方法は、以下のとおりである。
【0055】
(1)水不溶性ポリマーの重量平均分子量の測定
N,N−ジメチルホルムアミドに、リン酸及びリチウムブロマイドをそれぞれ60mmol/Lと50mmol/Lの濃度となるように溶解した液を溶離液として、ゲル浸透クロマトグラフィー法〔東ソー株式会社製GPC装置(HLC−8120GPC)、東ソー株式会社製カラム(TSK−GEL、α−M×2本)、流速:1mL/min〕により、標準物質として、予め分子量が既知の単分散ポリスチレンを用いて測定した。
(2)顔料水分散体の固形分濃度の測定
30mlのポリプロピレン製容器(φ=40mm、高さ=30mm)にデシケーター中で恒量化した硫酸ナトリウム10.0gを量り取り、そこへサンプル約1.0gを添加して、混合させた後、正確に秤量し、105℃で2時間維持して、揮発分を除去し、更にデシケーター内で15分間放置し、質量を測定した。揮発分除去後のサンプルの質量を固形分として、添加したサンプルの質量で除して固形分濃度とした。
【0056】
(3)顔料含有ポリマー粒子及びポリマー粒子の平均粒径の測定
レーザー粒子解析システム「ELS−8000」(大塚電子株式会社製)を用いてキュムラント解析を行い測定した。測定条件は、温度25℃、入射光と検出器との角度90°、積算回数100回であり、分散溶媒の屈折率として水の屈折率(1.333)を入力した。測定濃度は、5×10−3質量%(固形分濃度換算)で行った。
【0057】
(4)水系インクの粘度の測定
E型粘度計「TV−25」(東機産業株式会社製、標準コーンロータ1°34’×R24使用、回転数50rpm)を用いて、32℃にて粘度を測定した。
(5)水系インクの静的表面張力
表面張力計(協和界面科学株式会社製、商品名:CBVP−Z)を用いて、白金プレートを5gの水系インクの入った円柱ポリエチレン製容器(直径3.6cm×深さ1.2cm)に浸漬させ、20℃にて水系インクの静的表面張力を測定した。
(6)水系インクのpHの測定
pH電極「6337−10D」(株式会社堀場製作所製)を使用した卓上型pH計「F−71」(株式会社堀場製作所製)を用いて、25℃における水系インクのpHを測定した。
【0058】
(7)記録媒体と純水との接触時間100m秒における記録媒体の吸水量
自動走査吸液計(熊谷理機工業株式会社製、KM500win)を用いて、23℃、相対湿度50%の条件下にて、純水の接触時間100msにおける転移量を測定し、100m秒の吸水量とした。測定条件を以下に示す。
「Spiral Method」
Contact Time : 0.010〜1.0(sec)
Pitch (mm): 7
Length Per Sampling (degree): 86.29
Start Radius (mm): 20 End Radius (mm): 60
Min Contact Time (ms): 10 Max Contact Time (ms): 1000
Sampling Pattern (1-50): 50
Number of Sampling Points (> 0): 19
「Square Head」
Slit Span (mm) : 1 Slit Width (mm) : 5
【0059】
製造例1(水不溶性ポリマーの合成)
メタクリル酸(和光純薬工業株式会社製)16部、スチレン(和光純薬工業株式会社製)44部、スチレンマクロモノマー「AS−6S」(東亞合成株式会社製、数平均分子量6,000、固形分50%)30部、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート「ブレンマーPME−200」(日油株式会社)25部を混合し、モノマー混合液115部を調製した。
反応容器内に、メチルエチルケトン18部及び連鎖移動剤である2−メルカプトエタノール0.03部、及び前記モノマー混合液の10%(11.5部)を入れて混合し、窒素ガス置換を十分に行った。
一方、モノマー混合液の残りの90%(103.5部)と前記連鎖移動剤0.27部、メチルエチルケトン42部及び重合開始剤2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)「V−65」(和光純薬工業株式会社製)3部を混合した混合液を滴下ロートに入れ、窒素雰囲気下、反応容器内の混合溶液を撹拌しながら75℃まで昇温し、滴下ロート中の混合溶液を3時間かけて滴下した。滴下終了から75℃で2時間経過後、前記重合開始剤3部をメチルエチルケトン5部に溶解した溶液を加え、更に75℃で2時間、80℃で2時間熟成させ、更にメチルエチルケトン50部を加え、水不溶性ポリマー(重量平均分子量:50,000)の溶液を得た。水不溶性ポリマー溶液の固形分濃度は45質量%であった。
【0060】
製造例2(黒顔料含有ポリマー粒子の水分散体の製造)
前記製造例1で得られた水不溶性ポリマー溶液95.2部をメチルエチルケトン53.9部に溶かし、その中に中和剤として5N水酸化ナトリウム水溶液15.0部と25%アンモニア水0.5部、及びイオン交換水341.3部を加え、更にカーボンブラック顔料としてC.I.ピグメント・ブラック7(P.B.7、キャボット社製)100部を加え、顔料混合液を得た。中和度は78.8モル%であった。顔料混合液をディスパー翼を用いて7000rpm、20℃の条件下で1時間混合した。得られた分散液をマイクロフルイダイザー「高圧ホモジナイザーM-140K」(Microfluidics社製)を用いて、180MPaの圧力で15パス分散処理した。
得られた顔料含有ポリマー粒子の分散液を、減圧下60℃でメチルエチルケトンを除去し、更に一部の水を除去し、遠心分離し、液層部分をフィルター「ミニザルトシリンジフィルター」(ザルトリウス社製、孔径:5μm、材質:酢酸セルロース)でろ過して粗大粒子を除き、顔料含有ポリマー粒子の水分散体を得た。固形分濃度は25質量%であった。得られた顔料含有ポリマー粒子の水分散体100部に対して、デナコールEX321L(ナガセケムテックス株式会社製)を0.45部とイオン交換水15.23部を加え、撹拌しながら70℃、3時間の加熱処理を行った。室温まで冷却後、液層部分をフィルター「ミニザルトシリンジフィルター」(ザルトリウス社製、孔径:5μm、材質:酢酸セルロース)でろ過して粗大粒子を除き、顔料含有ポリマー粒子の水分散体(固形分濃度22.0質量%)を得た。顔料含有ポリマー粒子の平均粒径は100nmであった。
【0061】
製造例3〜5(シアン、マゼンタ、イエロー顔料含有ポリマー粒子の水分散体の製造)
製造例2において、黒顔料をシアン顔料(DIC株式会社製、P.B.15:3)、マゼンタ顔料(富士色素株式会社製、P.R.150)、又はイエロー顔料(大日精化工業株式会社製、P.Y.74)に変え、表1に示す条件で、顔料含有ポリマー粒子の水分散体(固形分濃度は22質量%)を得た。結果を表1に示す。
【0062】
【表1】
【0063】
製造例6(定着助剤ポリマーエマルションの製造)
1000mLセパラブルフラスコ中にメチルメタクリレート(和光純薬工業株式会社製)145部、2−エチルヘキシルアクリレート(和光純薬工業株式会社製)50部、メタクリル酸(和光純薬工業株式会社製)5部、ラテムルE118B(花王株式会社製、乳化剤、有効分26%)18.5部、イオン交換水96部、過硫酸カリウム(和光純薬工業株式会社製)を仕込み、撹拌羽根で撹拌を行い(300rpm)モノマー乳化液を得た。
反応容器内に、ラテムルE118B 4.6部、イオン交換水186部、過硫酸カリウム0.08部を入れ窒素ガス置換を十分行った。窒素雰囲気下、撹拌羽根で撹拌(200rpm)しながら80℃まで昇温し、上記モノマー乳化液を滴下ロート中に仕込みのこのモノマー乳液を3時間かけて滴下、反応させた。この反応液にイオン交換水を加え固形分41.6重量%の定着助剤ポリマーエマルションを得た。このポリマーエマルションの平均粒径は100nmであった。
【0064】
製造例7(黒インクの製造)
製造例2で得られた黒顔料含有ポリマー粒子の水分散体(固形分22.0質量%)4626.75g、製造例6で得られた定着助剤ポリマーエマルション(固形分41.6重量%)438.87g、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル100.00g、プロピレングリコール2300.00g、シリコーン系活性剤(信越化学工業株式会社製、KF−6011)20.00g、アセチレン系活性剤(日信化学工業株式会社製、サーフィノール440)100.00g、イオン交換水2414.38gを添加して混合した。得られた混合液をフィルター「ミニザルトシリンジフィルター」(ザルトリウス社製、孔径:5.0μm、材質:酢酸セルロース)で濾過し、水系インクを得た。水系インクの各種物性は表2に示した。
【0065】
製造例8〜10(シアン、マゼンタ、イエローインクの製造)
製造例7において、黒顔料含有ポリマー粒子の水分散体を、製造例3〜5で得られたシアン、マゼンタ、イエローの各顔料含有ポリマー粒子の水分散体に変え、表2に示す条件で、シアン、マゼンタ、イエローの各水系インクを得た。結果を表2に示す。また、製造例7〜10により得た4色のインクをインクセット1とした。各物性は表2に示した。
【0066】
製造例11〜14、15〜18、19〜22
製造例7〜10と同様に、表2に示す条件で製造例11〜14により得られた4色のインクをインクセット2、製造例15〜18により得られたインクをインクセット3、製造例19〜22により得られたインクをインクセット4とした。結果を表2に示す。
【0067】
【表2】
【0068】
実施例1〜2、比較例1
コロナ処理PET(フタムラ化学株式会社製、太閤ポリエステルフィルムFE2001、記録媒体と純水との接触時間100m秒における該記録媒体の吸水量0g/m)に、製造例で得られたインクセット1〜4を用いて、以下のインクジェット記録方式により画像を形成した。
(インクジェット記録方式)
温度25±1℃、相対湿度30±5%の環境で、インクジェットヘッド(京セラ株式会社製、「KJ4B-HD06MHG-STDV」、ピエゾ式)を装備したワンパス方式の印刷評価装置(株式会社トライテック製)に水系インクを充填した。これらのインクジェットヘッドは、記録媒体の送り方向の上流側から、黒インク、シアンインク、マゼンタインク、イエローインクの順に印刷評価装置に備える。この時、黒インク、シアンインク、マゼンタインク、イエローインクを充填したそれぞれのインクジェットヘッドの間隔は55cmに設定した。
ヘッド電圧26V、周波数10kHz、吐出液適量3pl、ヘッド温度32℃、解像度600dpi、吐出前フラッシング回数200発、負圧−4.0kPaを設定し、記録媒体の長手方向と搬送方向が同じになる向きに、記録媒体を印刷評価装置に固定した。
印刷評価装置は、記録媒体に水系インクを吐出するインクジェットヘッドと、該ヘッドに対向する該記録媒体の面とは裏側の面から該記録媒体を加熱するアンダーヒーターとを備える。アンダーヒーターと記録媒体の距離は0.25mm、インクジェットヘッドと記録媒体との間の距離は1.0mmに設定し、アンダーヒーターの表面温度を55℃に設定した(記録媒体の温度は50℃)。
記録媒体の搬送台にA4サイズのフィルムヒーター(株式会社河合電器製作所製)を固定して、記録媒体を加温できるようにした。フィルムヒーター温度は20℃、40℃、60℃とした。記録媒体の搬送速度は、25m/minとした。
前記印刷評価装置に印刷命令を転送し、黒インク、シアンインク、マゼンタインク、イエローインクの順にてインクを吐出させ、各色のベタ画像の2色が直交して重なるように図1に示す3つのパターンの印刷を行った。その後、60℃の温風乾燥機にて5分間乾燥させて印刷物を得た。
得られた印刷物について、以下の方法・基準で、混色評価、加熱による基材変形の評価、及びベタ均一性の評価を行った。評価結果を表3に示す。
【0069】
(印刷物の混色評価方法)
印刷物の異なる色同士のベタ印刷画像が直交して混色が生じる部分において、一方の色が直交する他色のベタ画像に対して侵食した箇所の直交部分からはみ出した幅を計測した。各色の組み合わせ毎に得た計測値から平均値を算出し、その平均値により混色の程度を比較して、以下の基準で評価した。
A:平均値が80μm未満であり、混色が殆ど確認できない。
B:平均値が80μ以上100μm未満であり、混色は目立たず実使用上問題ない。
C:平均値が100μm以上200μm未満であり、混色が若干確認されるが実使用上問題ない。
D:平均値が200μm以上であり、明らかな混色が確認され実使用できない。
【0070】
(加熱による印刷物の変形の評価基準)
A:印刷物の変形が見られない。
B:印刷物が変形する。
(ベタ印刷均一性の評価基準)
A:ベタ印刷部分に濃淡のムラが見られない。
B:ベタ印刷部分の面積10%未満に濃淡ムラが見られるが、実使用上問題はない。
C:ベタ印刷部分の面積10%以上にムラがあり、実使用上問題がある。
【0071】
実施例3及び4、比較例2
表3に示すインクセットに変えた以外は実施例1と同様に行った。
実施例5及び比較例3
記録媒体をコロナ処理PETから、コロナ放電処理OPP(フタムラ化学株式会社製、太閤ポリプロピレンフィルムFOR−AQ)に変えた以外は実施例1と同様に行った。比較例3ではさらにアンダーヒーター温度を80℃に変えた。
【0072】
【表3】
【0073】
表3において、実施例1〜2と比較例1との対比、実施例3、4と比較例2との対比、実施例5と比較例3との対比から、実施例のインクジェット記録方法は、比較例のインクジェット記録方法に比べて、印刷物の混色や変形が少なく、均一性に優れた画像が得られることが分かる。
図1