特開2017-222195(P2017-222195A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本精機株式会社の特許一覧

<>
  • 特開2017222195-車両用警音器の制御装置 図000003
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-222195(P2017-222195A)
(43)【公開日】2017年12月21日
(54)【発明の名称】車両用警音器の制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60Q 11/00 20060101AFI20171124BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20171124BHJP
【FI】
   B60Q11/00 610F
   B60Q11/00 615A
   B60R16/02 650J
   B60R16/02 660D
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-116989(P2016-116989)
(22)【出願日】2016年6月13日
(71)【出願人】
【識別番号】000231512
【氏名又は名称】日本精機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】大塚 泰裕
(57)【要約】
【課題】 車両用警音器の動作状態を精度良く監視する。
【解決手段】 本発明の一実施形態である車両用表示装置Mは、警音器11に第1電流を出力すると共に第1電流に比例した第1電圧を出力する駆動手段2と、駆動手段2に第1電流の出力をオン/オフさせる切替信号を出力すると共に切替信号の状態と第1電圧と所定の閾値との対比結果とに基づいて警音器11の状態を判定する制御手段6と、駆動手段2の温度を検出する温度検出手段5と、を備え、制御手段6は、温度検出手段5が検出した温度に基づいて第1電圧または所定の閾値を補正する。これによれば、使用環境温度に応じて変化する駆動手段2の第1電流から第1電圧に変換する変換特性が考慮されて警音器11の動作状態が判定され、動作状態の判定の精度が高まる。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
警音器に第1電流を出力すると共に前記第1電流に比例した第1電圧を出力する駆動手段と、
前記駆動手段に前記第1電流の出力をオン/オフさせる切替信号を出力すると共に前記切替信号の状態と前記第1電圧と所定の閾値との対比結果とに基づいて前記警音器の状態を判定する制御手段と、
前記駆動手段の温度を検出する温度検出手段と、を備え、
前記制御手段は、前記温度検出手段が検出した温度に基づいて前記第1電圧または前記所定の閾値を補正する
ことを特徴とする車両用警音器の制御装置。
【請求項2】
警音器に第1電流を出力すると共に前記第1電流に比例した第1電圧を出力する駆動手段と、
前記駆動手段に前記第1電流の出力をオン/オフさせる切替信号を出力すると共に前記切替信号の状態と前記第1電圧と所定の閾値との対比結果とに基づいて前記警音器の状態を判定する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、前記駆動手段に供給される第2電圧を検出し、前記検出した第2電圧に基づいて前記第1電圧または前記所定の閾値を補正する
ことを特徴とする車両用警音器の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載される警音器の動作状態を監視する車両用警音器の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の車両用警音器の制御装置として、特許文献1に開示されたものがある。この車両用警音器の制御装置は、警音器を制御する信号を監視し、吹鳴させるべく電流を流す前に短い時間だけ電流を流して警音器の故障を検出する検出手段を備えたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−40052号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的に、このような車両用警音器の制御装置は、例えば−40℃から120℃までの幅広い温度範囲で正常な動作を保障することが求められる。しかしながら、従来の車両用警音器の制御装置では検出手段の温度特性を考慮していないため、断線や短絡を精度良く検出できない虞がある。
【0005】
また、このような車両用警音器の制御装置は、車両のバッテリの例えば8〜16Vの電圧範囲で正常な動作を保障することが求められる。しかしながら、従来の車両用警音器の制御装置では検出手段の駆動電圧特性を考慮していないため、断線や短絡を精度良く検出できない虞がある。
【0006】
本発明は、上述した課題を鑑みてなされたものであり、警音器の動作状態を精度良く監視する車両用警音器の制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る車両用警音器の制御装置は、
警音器に第1電流を出力すると共に前記第1電流に比例した第1電圧を出力する駆動手段と、
前記駆動手段に前記第1電流の出力をオン/オフさせる切替信号を出力すると共に前記切替信号の状態と前記第1電圧と所定の閾値との対比結果とに基づいて前記警音器の状態を判定する制御手段と、
前記駆動手段の温度を検出する温度検出手段と、を備え、
前記制御手段は、前記温度検出手段が検出した温度に基づいて前記第1電圧または前記所定の閾値を補正する。
【0008】
本発明に係る車両用警音器の制御装置は、
警音器に第1電流を出力すると共に前記第1電流に比例した第1電圧を出力する駆動手段と、
前記駆動手段に前記第1電流の出力をオン/オフさせる切替信号を出力すると共に前記切替信号の状態と前記第1電圧と所定の閾値との対比結果とに基づいて前記警音器の状態を判定する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、前記駆動手段に供給される第2電圧を検出し、前記検出した第2電圧に基づいて前記第1電圧または前記所定の閾値を補正する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、警音器の動作状態を精度良く監視する車両用警音器の制御装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係る車両用警音器の制御装置の電気的構成図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面に基づいて、本発明の実施形態を説明する。
【0012】
本発明に係る車両用警音器の制御装置は、図1に示すように、液晶表示器10と、ハイサイドドライバ(駆動手段)2と、定電圧回路3と、送受信回路4と、温度検出手段5と、制御手段6と、を備えた自動二輪車に搭載される車両用表示装置Mである。
車両用表示装置Mはケース体で覆われており、このケース体に、ハイサイドドライバ2と定電圧回路3と送受信回路4と温度検出手段5と制御手段6とが実装された回路基板と、液晶表示器10とが収容されている。
車両用表示装置Mのハイサイドドライバ2には、車両に搭載された警音器11に接続されている。
【0013】
液晶表示器10は、車両の走行速度やエンジン回転数などの車両情報を画像で表示する表示器であり、例えば、薄膜トランジスタ型ディスプレイで構成される。
【0014】
警音器11は、車両の搭乗者が周囲に危険を警告する音を吹鳴する車両用ホーンである。
【0015】
ハイサイドドライバ2は、イグニッションIGがオンされると車両のバッテリBから8〜16V(第2電圧)の電源が供給されて起動し、後述する制御手段6に制御されて警音器11への電源の供給をオン/オフする。警音器11は電源の供給がされると音を吹鳴する。ハイサイドドライバ2が警音器11に電源を供給すると所定の電流(第1電流)が流れる。ハイサイドドライバ2は、第1電流が流れる電流経路に抵抗器を内部に設けて、その抵抗器における電圧降下を測定することによって第1電流を計測し、この第1電流に比例した電圧(第1電圧)を制御手段6に出力する。
【0016】
定電圧回路3は、車両のバッテリBから供給される8〜16Vの電圧を所定の電圧(例えば、5V)に変圧して制御手段6に供給する。
【0017】
送受信回路4は、例えば、CANトランシーバ回路である。送受信回路4は、CAN( Controller Area Network )プロトコルの車内ネットワークLANに接続し、制御手段6と外部制御手段Eとの間で相互に通信を行う。外部制御手段Eは、車両のエンジンなどを制御する制御手段であり、制御手段6はこの送受信回路4を介して、外部制御手段Eから車両の走行速度、エンジン回転数などの各種車両情報を入力し、外部制御手段Eに対し車両用表示装置Mの動作状態を出力する。
【0018】
温度検出手段5は、温度変化に対して電気抵抗の変化が大きい抵抗体からなるサーミスタである。温度検出手段5は、ハイサイドドライバ2の温度を検出して制御手段6へ出力する。
【0019】
制御手段6は、車両用表示装置Mの全体を統括して制御する。制御手段6は、CPUと、CPUが動作させるプログラムを格納するメモリと、時間を計時するタイマと、各種入出力ポートと、を備えたマイクロコントローラである。
【0020】
制御手段6は、定電圧回路3から電源が供給されると起動する。制御手段6は、送受信回路4を介して入力された車両情報を液晶表示器10に画像で表示させる。また、制御手段6は、図示しない警音器スイッチが押下されている間、ハイサイドドライバ2に警音器11への電源の供給をオンさせる切替信号を出力して警音器11に音を吹鳴させる。
【0021】
制御手段6には、第2電圧が流れる経路に抵抗器Rを設け、所定の電圧範囲に第2電圧を電圧降下させた第3電圧が入力される。
【0022】
制御手段6は、ハイサイドドライバ2に出力する切替信号の状態(オン/オフ)と、ハイサイドドライバ2から入力される第1電圧と所定の閾値との対比結果と、に基づいて警音器11が正常な吹鳴/正常な消音/短絡/断線などの動作状態を判定する。具体的な判定について以下に述べる。
【0023】
(断線の判定)
切替信号の状態がオンであるときに第1電圧が第1の閾値未満であるときは、警音器11に音を吹鳴させるべく制御しているにも関わらず警音器11が音を吹鳴していないと推定して、警音器11が断線していると判定する。制御手段6は警音器11が断線していると判定すると、切替信号をオフにして、液晶表示器10に警音器11が断線して正常に動作できない状態である旨の表示をする。
【0024】
(短絡の判定)
切替信号の状態がオンであるときに第1電圧が第1の閾値よりも高い第2の閾値以上であるときは、警音器11に音を吹鳴させるべく制御した結果、警音器11に過剰な電流が流れていると推定して、警音器11が短絡していると判定する。制御手段6は警音器11が短絡していると判定すると、ハイサイドドライバ2の発熱することを防ぐため、切替信号をオフにして警音器11への電源の供給を停止し、液晶表示器10に警音器11が短絡して正常に動作できない状態である旨の表示をする。
【0025】
(正常な吹鳴の判定)
切替信号の状態がオンであるときに第1電圧が第1の閾値以上であり、且つ、第2の閾値未満であると、切替信号の状態と警音器11の状態がどちらも警音器11が音を吹鳴する状態であると推定して、警音器11が正常に音を吹鳴していると判定する。
【0026】
(正常な消音の判定)
切替信号の状態がオフであるときに第1電圧が第1の閾値未満であるときは、切替信号の状態と警音器11の状態がどちらも警音器11が音を吹鳴していない状態であると推定して警音器11が正常に消音していると判定する。
【0027】
以上のように、制御手段6は、ハイサイドドライバ2から入力される第1電圧から警音器11に流れる第1電流を監視して警音器11の動作状態を判定する。しかしながら、ハイサイドドライバ2は使用環境温度によって第1電流から第1電圧へ変換する変換特性が変化する点や、ハイサイドドライバ2に供給される電源の電圧(第2電圧)によって第1電流が変化するため、これらを考慮しないと警音器11の動作状態を誤判定する虞がある。
【0028】
そこで、制御手段6は、第1電圧に対し以下の補正を行う。
【0029】
(第1の補正)
制御手段6は、予めハイサイドドライバ2の動作温度範囲における第1電流から第1電圧へ変化する変換特性に対応した第1電圧の補正値(第1補正値)を変換テーブルとしてメモリに記憶する。
制御手段6は、温度検出手段5から入力されたハイサイドドライバ2の温度に対応する第1補正値を、メモリに記憶された変換テーブルから参照して、ハイサイドドライバ2から入力された第1電圧を補正する。
【0030】
(第2の補正)
制御手段6は、予め測定したハイサイドドライバ2の動作電圧範囲における最大電圧と最小電圧における所定の閾値(第1の閾値,第2の閾値)それぞれの補正値(第2補正値)をメモリに記憶する。
制御手段6は、電圧降下されて入力された第3電圧から推定された第2電圧に対応する第2補正値を、メモリに記憶された最大電圧と最小電圧における第2補正値から所定の補間法を用いて算出し、この補間法によって算出された補正値によって所定の閾値(第1の閾値,第2の閾値)それぞれを補正する。なお、補間法は、内挿/外挿を問わずスプライン補間やラグランジュ補間など種々の補間法を適宜定めればよい。
【0031】
以上、本発明の一実施形態である車両用表示装置Mは、警音器11に第1電流を出力すると共に第1電流に比例した第1電圧を出力する駆動手段2と、駆動手段2に第1電流の出力をオン/オフさせる切替信号を出力すると共に切替信号の状態と第1電圧と所定の閾値との対比結果とに基づいて警音器11の状態を判定する制御手段6と、駆動手段2の温度を検出する温度検出手段5と、を備え、制御手段6は、温度検出手段5が検出した温度に基づいて第1電圧または所定の閾値を補正する。
これによれば、ハイサイドドライバ2の使用環境温度が考慮されて第1電圧から第1電流を推定できるため、警音器の動作状態を精度良く監視できる。
【0032】
また、本発明の一実施形態である車両用表示装置Mは、警音器11に第1電流を出力すると共に第1電流に比例した第1電圧を出力する駆動手段2と、駆動手段2に第1電流の出力をオン/オフさせる切替信号を出力すると共に切替信号の状態と第1電圧と所定の閾値との対比結果とに基づいて警音器11の状態を判定する制御手段6と、を備え、制御手段6は、駆動手段2に供給される第2電圧を検出し、検出した第2電圧に基づいて第1電圧または所定の閾値を補正する。
これによれば、ハイサイドドライバ2に供給される第2電圧が考慮されて第1電圧と比較する所定の閾値(第1の閾値,第2の閾値)が定められるため、警音器の動作状態を精度良く監視できる。
【0033】
本発明は上記の実施形態(図面の内容を含む)によって限定されるものではない。本発明の主旨に従う範囲で、上記の実施形態に変更(構成要素の削除も含む)を加えることができる。
【0034】
例えば、第1の補正を行う第1補正値は第1電圧を補正するものであったが、第1電圧と対比する所定の閾値を補正するようにしてもよい。同様に、第2の補正を行う第2補正値は所定の閾値を補正するものであったが、所定の閾値と対比する第1電圧を補正するようにしてもよい。
【0035】
また、第1の補正では複数の補正値を変換テーブルとしてメモリに記憶させて、対応する補正値を参照するように構成し、第2の補完では複数の補正値をメモリに記憶させて、対応する補正値を補間法で算出したが、これらを組み合わせて求めるものであってもよい。
【0036】
また、制御手段6が、予めハイサイド2の動作温度範囲における第1電流から第1電圧へ変換する変換特性テーブルをメモリに記憶し、この変換特性テーブルを用いて第1電圧から第1電流を推定して警音器11の状態を判定するように構成してよい。この場合、推定した第1電流とこの第1電流に対応する所定の閾値とを対比して警音器11の動作状態を推定できる。
【0037】
また、温度検出手段5は、ハイサイドドライバ2の周辺に配設することが好ましいが、これに限らず、車両用表示装置Mのケース体内の雰囲気温度を検出し、この雰囲気温度からハイサイドドライバ2の温度を推定するように構成してもよい。
【符号の説明】
【0038】
M :車両用表示装置(車両用警音器の制御装置)
10 :液晶表示器
11 :警音器
2 :ハイサイドドライバ(駆動手段)
3 :定電圧回路
4 :送受信回路
5 :温度検出手段
6 :制御手段
B :バッテリ
E :外部制御手段
図1