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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-222197(P2017-222197A)
(43)【公開日】2017年12月21日
(54)【発明の名称】トランスアクスル装置
(51)【国際特許分類】
   B60K 6/387 20071001AFI20171124BHJP
   B60K 6/442 20071001ALI20171124BHJP
   B60K 6/365 20071001ALI20171124BHJP
   B60K 6/40 20071001ALI20171124BHJP
   B60K 17/04 20060101ALI20171124BHJP
   F16H 3/72 20060101ALI20171124BHJP
   F16H 3/54 20060101ALI20171124BHJP
   F16H 3/62 20060101ALI20171124BHJP
   F16H 3/091 20060101ALI20171124BHJP
   B60L 11/14 20060101ALI20171124BHJP
【FI】
   B60K6/387ZHV
   B60K6/442
   B60K6/365
   B60K6/40
   B60K17/04 G
   F16H3/72 A
   F16H3/54
   F16H3/62 A
   F16H3/091
   B60L11/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2016-117005(P2016-117005)
(22)【出願日】2016年6月13日
(71)【出願人】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000176811
【氏名又は名称】三菱自動車エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092978
【弁理士】
【氏名又は名称】真田 有
(72)【発明者】
【氏名】荻野 大蔵
(72)【発明者】
【氏名】松下 昌弘
【テーマコード(参考)】
3D039
3D202
3J028
3J528
5H125
【Fターム(参考)】
3D039AA04
3D039AA05
3D039AA11
3D039AB01
3D039AC03
3D039AC04
3D039AC22
3D039AC37
3D039AC39
3D202AA02
3D202EE02
3D202EE10
3D202EE16
3D202EE23
3D202FF12
3J028EA11
3J028EB04
3J028EB10
3J028EB33
3J028EB62
3J028EB63
3J028EB66
3J028FA13
3J028FB04
3J028FB05
3J028FB13
3J028FC13
3J028FC32
3J028FC42
3J028FC67
3J528EA11
3J528EB33
3J528EB62
3J528EB63
3J528EB66
3J528EB74
3J528EB85
3J528FA13
3J528FB04
3J528FB05
3J528FB13
3J528FC13
3J528FC32
3J528FC42
3J528FC67
5H125AA01
5H125AC08
5H125BA04
5H125BE05
5H125EE51
5H125FF30
(57)【要約】
【課題】油浴による損失を抑制しながら走行パターンを増やす。
【解決手段】エンジン2,第一の回転電機3及び第二の回転電機4を装備し、エンジン2及び第一の回転電機3の動力を個別に駆動輪側の出力軸12に伝達するとともにエンジン2の動力を第二の回転電機4にも伝達するハイブリッド車両のトランスアクスル装置1であって、エンジン2の回転軸2aと同軸上に接続された入力軸11と、少なくとも入力軸11に介装され、ハイギヤ段11H,15Hとローギヤ段11L,15Lとを切り替える切替機構20Aとを備えている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン,第一の回転電機及び第二の回転電機を装備し、前記エンジン及び前記第一の回転電機の動力を個別に駆動輪側の出力軸に伝達するとともに前記エンジンの動力を前記第二の回転電機にも伝達するハイブリッド車両のトランスアクスル装置であって、
前記エンジンの回転軸と同軸上に接続された入力軸と、
少なくとも前記入力軸に介装され、ハイギヤ段とローギヤ段とを切り替える切替機構と、
を備えたことを特徴とする、トランスアクスル装置。
【請求項2】
前記入力軸と前記出力軸との間の動力伝達経路上に配置されたカウンタ軸を備え、
前記切替機構が、前記ハイギヤ段及び前記ローギヤ段のそれぞれを選択する二つの選択機構から構成され、
前記二つの選択機構のうちの一方が前記入力軸に介装され、他方が前記カウンタ軸上であって前記一方の選択機構に対し軸方向と直交方向において重なる位置に介装された
ことを特徴とする、請求項1記載のトランスアクスル装置。
【請求項3】
前記出力軸に介装されたデファレンシャルギヤを備え、
前記ハイギヤ段が、前記トランスアクスル装置のケーシング内において、前記ローギヤ段に対し前記デファレンシャルギヤの逆側に配置された
ことを特徴とする、請求項1又は2記載のトランスアクスル装置。
【請求項4】
前記切替機構が、前記入力軸に対して相対回転不能であり、且つ、軸方向に摺動自在に結合された環状のスリーブを有し、
前記スリーブは、軸方向へ移動することで前記ハイギヤ段及び前記ローギヤ段の少なくとも一方の遊転ギヤを前記入力軸に対して回転連結状態とする
ことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載のトランスアクスル装置。
【請求項5】
前記第二の回転電機の回転軸と同軸上に接続された第二の回転電機軸を備え、
前記入力軸と前記第二回転電機軸とが連結されるとともに、前記スリーブの移動に際し前記第二の回転電機によって前記入力軸の回転速度を前記駆動輪側の回転速度に合わせる
ことを特徴とする、請求項4記載のトランスアクスル装置。
【請求項6】
前記スリーブは、径方向内側に形成されたスプライン歯を、前記一方の遊転ギヤのドグ歯に係合させることで前記回転連結状態とする
ことを特徴とする、請求項5記載のトランスアクスル装置。
【請求項7】
前記切替機構が、
サンギヤ,キャリア及びリングギヤを持つ遊星ギヤと、
前記遊星ギヤの要素のうちの二つを拘束自在に設けられたクラッチと、
前記遊星ギヤの要素のうちの一つを拘束自在に設けられたブレーキと、を有する
ことを特徴とする、請求項1記載のトランスアクスル装置。
【請求項8】
前記ブレーキは、前記サンギヤを拘束する
ことを特徴とする、請求項7記載のトランスアクスル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンと二つの回転電機とを装備したハイブリッド車両に用いられるトランスアクスル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エンジンと回転電機(モータ,ジェネレータ,モータジェネレータ)とを装備したハイブリッド車両において、走行モードを切り替えながら走行する車両が実用化されている。走行モードには、バッテリの充電電力を用いてモータのみで走行するEVモードや、エンジンによってジェネレータを駆動し、発電しながらモータのみで走行するシリーズモード、エンジンとモータとを併用して走行するパラレルモード等が含まれる。走行モードの切り替えは、トランスアクスル装置内における動力伝達経路上に介装されたスリーブやクラッチ等の機構が制御されることで実施される。この機構は、例えばエンジンとジェネレータとの間の動力伝達経路内の軸上や、エンジンと駆動輪との間の動力伝達経路内の軸上に配置される(特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−170877号公報
【特許文献2】特開2013−180680号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、走行モードを切り替えることなく、運転者の要求する出力や車速等に応じて変速段を切り替えることができれば、走行パターンが増えることになり、ドライバビリティの向上や燃費改善といった効果が見込まれる。これを実現するためには、トランスアクスル装置内に複数の変速段を切り替え可能に設ければよい。しかしながら、トランスアクスル装置のケーシング内には、作動油や潤滑油といった機能を持つオイルが貯留されていることから、複数の変速段とこれを切り替える機構とを単に内蔵しただけでは、オイルによる抵抗が大きくなりかねない。例えば、変速段や切替機構がオイルに浸った状態(いわゆる油浴した状態)では、これらの機構がオイルをかき回すことになり、油浴による損失(オイル抵抗)が増大しうる。
【0005】
本件は、このような課題に鑑み案出されたもので、油浴による損失を抑制しながら走行パターンを増やすことができるようにした、トランスアクスル装置を提供することを目的の一つとする。なお、この目的に限らず、後述する発明を実施するための形態に示す各構成により導かれる作用効果であって、従来の技術によっては得られない作用効果を奏することも本件の他の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)ここで開示するトランスアクスル装置は、エンジン,第一の回転電機及び第二の回転電機を装備し、前記エンジン及び前記第一の回転電機の動力を個別に駆動輪側の出力軸に伝達するとともに前記エンジンの動力を前記第二の回転電機にも伝達するハイブリッド車両のトランスアクスル装置であって、前記エンジンの回転軸と同軸上に接続された入力軸と、少なくとも前記入力軸に介装され、ハイギヤ段とローギヤ段とを切り替える切替機構と、を備えたことを特徴とする。なお、前記第一の回転電機とは、回転する電機子又は界磁を有し、少なくとも電動機能を有する電動発電機(モータジェネレータ)又は電動機を意味する。また、前記第二の回転電機とは、回転する電機子又は界磁を有し、少なくとも発電機能を有する電動発電機(モータジェネレータ)又は発電機を意味する。
【0007】
(2)前記入力軸と前記出力軸との間の動力伝達経路上に配置されたカウンタ軸を備え、前記切替機構が、前記ハイギヤ段及び前記ローギヤ段のそれぞれを選択する二つの選択機構から構成され、前記二つの選択機構のうちの一方が前記入力軸に介装され、他方が前記カウンタ軸上であって前記一方の選択機構に対し軸方向と直交方向において重なる位置に介装されていることが好ましい。
(3)前記出力軸に介装されたデファレンシャルギヤを備え、前記ハイギヤ段が、前記トランスアクスル装置のケーシング内において、前記ローギヤ段に対し前記デファレンシャルギヤの逆側に配置されていることが好ましい。
【0008】
(4)前記切替機構が、前記入力軸に対して相対回転不能であり、且つ、軸方向に摺動自在に結合された環状のスリーブを有し、前記スリーブは、軸方向へ移動することで前記ハイギヤ段及び前記ローギヤ段の少なくとも一方の遊転ギヤを前記入力軸に対して回転連結状態とすることが好ましい。
【0009】
(5)前記第二の回転電機の回転軸と同軸上に接続された第二の回転電機軸を備え、前記入力軸と前記第二の回転電機軸とが連結されるとともに、前記スリーブの移動に際し前記第二の回転電機によって前記入力軸の回転速度を前記駆動輪側の回転速度に合わせることが好ましい。
(6)前記スリーブは、径方向内側に形成されたスプライン歯を、前記一方の遊転ギヤのドグ歯に係合させることで前記回転連結状態とすることが好ましい。
【0010】
(7)あるいは、前記切替機構が、サンギヤ,キャリア及びリングギヤを持つ遊星ギヤと、前記遊星ギヤの要素のうちの二つを拘束自在に設けられたクラッチと、前記遊星ギヤの要素のうちの一つを拘束自在に設けられたブレーキと、を有することが好ましい。
(8)この場合に、前記ブレーキは、前記サンギヤを拘束することが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
ハイギヤ段とローギヤ段とを切り替える切替機構によって、走行パターンを増やすことができる。また、この切替機構が入力軸に介装されていることから、切替機構が油浴した状態になることを回避しやすくすることができる。したがって、油浴による損失を抑制しながら走行パターンを増やすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態に係るトランスアクスル装置を搭載した車両の内部構成を例示する上面図である。
図2図1のトランスアクスル装置を備えたパワートレインの模式的な側面図である。
図3図2のパワートレインを示すスケルトン図である。
図4】第一変形例に係るパワートレインを示すスケルトン図である。
図5】第二変形例に係るパワートレインを示すスケルトン図である。
図6】第三変形例に係るパワートレインを示すスケルトン図である。
図7】(a)は第四変形例に係るパワートレインを示すスケルトン図であり、(b)は共線図である。
図8】(a)は第五変形例に係るパワートレインを示すスケルトン図であり、(b)は共線図である。
図9】(a)は第六変形例に係るパワートレインを示すスケルトン図であり、(b)は共線図である。
図10】(a)は第七変形例に係るパワートレインを示すスケルトン図であり、(b)は共線図である。
図11】(a)は第八変形例に係るパワートレインを示すスケルトン図であり、(b)は共線図である。
図12】(a)は第九変形例に係るパワートレインを示すスケルトン図であり、(b)は共線図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図面を参照して、実施形態としてのトランスアクスル装置について説明する。以下に示す各実施形態はあくまでも例示に過ぎず、以下の各実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。本実施形態の各構成は、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。また、必要に応じて取捨選択することができ、あるいは適宜組み合わせることができる。
【0014】
[1.全体構成]
本実施形態のトランスアクスル1(トランスアクスル装置)は、図1に示す車両10に適用される。この車両10は、エンジン2と走行用のモータ3(電動機,第一の回転電機)と発電用のジェネレータ4(発電機,第二の回転電機)とを装備したハイブリッド車両である。ジェネレータ4はエンジン2に連結され、モータ3の作動状態とは独立して作動可能とされる。また、車両10にはEVモード,シリーズモード,パラレルモードの三種類の走行モードが用意される。これらの走行モードは、図示しない電子制御装置によって、車両状態や走行状態,運転者の要求出力等に応じて択一的に選択され、その種類に応じてエンジン2,モータ3,ジェネレータ4が使い分けられる。なお、モータ3は発電機能(ジェネレータの機能)を有していてもよいし、また、ジェネレータ4は電動機能(モータの機能)を有していてもよい。
【0015】
EVモードは、エンジン2及びジェネレータ4を停止させたまま、図示しない駆動用のバッテリの充電電力を用いてモータ3のみで車両10を駆動する走行モードである。EVモードは、走行負荷,走行速度が低い場合やバッテリの充電レベルが高い場合に選択される。シリーズモードは、エンジン2でジェネレータ4を駆動して発電しつつ、その電力を利用してモータ3で車両10を駆動する走行モードである。シリーズモードは、走行負荷,走行速度が中程度の場合やバッテリの充電レベルが低い場合に選択される。パラレルモードは、おもにエンジン2で車両10を駆動し、必要に応じてモータ3で車両10の駆動をアシストする走行モードであり、走行負荷,走行速度が高い場合に選択される。
【0016】
駆動輪8には、トランスアクスル1を介してエンジン2及びモータ3が並列に接続され、エンジン2及びモータ3のそれぞれの動力が個別に伝達される。また、エンジン2には、トランスアクスル1を介してジェネレータ4及び駆動輪8が並列に接続され、エンジン2の動力が駆動輪8に加えてジェネレータ4にも伝達される。
【0017】
トランスアクスル1は、デファレンシャルギヤ18(差動装置、以下「デフ18」と呼ぶ)を含むファイナルドライブ(終減速機)とトランスミッション(減速機)とを一体に形成した動力伝達装置であり、駆動源と被駆動装置との間の動力伝達を担う複数の機構を内蔵する。本実施形態のトランスアクスル1は、ハイロー切替(高速段,低速段の切替)が可能に構成されており、パラレルモードでの走行時において、電子制御装置によって走行状態や要求出力等に応じてハイギヤ段とローギヤ段とが切り替えられる。
【0018】
エンジン2は、ガソリンや軽油を燃焼とする内燃機関(ガソリンエンジン,ディーゼルエンジン)である。このエンジン2は、クランクシャフト2a(回転軸)の向きが車両10の車幅方向に一致するように横向きに配置されたいわゆる横置きエンジンであり、トランスアクスル1の右側面に対して固定される。クランクシャフト2aは、駆動輪8のドライブシャフト9に対して平行に配置される。エンジン2の作動状態は、電子制御装置で制御される。
【0019】
モータ3及びジェネレータ4はいずれも、電動機としての機能と発電機としての機能とを兼ね備えた電動発電機(モータ・ジェネレータ)である。モータ3は、おもに電動機として機能して車両10を駆動し、回生時には発電機として機能する。ジェネレータ4は、エンジン2を始動させる際に電動機(スターター)として機能し、エンジン2の作動時にはエンジン動力で発電を実施する。モータ3及びジェネレータ4の各周囲(又は各内部)には、直流電流と交流電流とを変換するインバータ(図示略)が設けられる。モータ3及びジェネレータ4の各回転速度は、インバータを制御することで制御される。なお、モータ3,ジェネレータ4,各インバータの作動状態は、電子制御装置で制御される。
【0020】
本実施形態のモータ3は、その外形が回転軸3aを中心軸とした円筒状に形成され、その底面をトランスアクスル1側に向けた姿勢でトランスアクスル1の左側面に対して固定される。また、本実施形態のジェネレータ4は、その外形が回転軸4aを中心軸とした円筒状に形成され、モータ3と同様に、その底面をトランスアクスル1側に向けた姿勢でトランスアクスル1の左側面に対して固定される。
【0021】
図2は、エンジン2,モータ3,ジェネレータ4,トランスアクスル1を含むパワートレイン7を左側から見た側面図である。なお、この側面図ではエンジン2を省略している。図2に示すように、トランスアクスル1の左側面には、モータ3及びジェネレータ4に加えてポンプ5が設けられる。ポンプ5は、駆動輪8側の動力を利用して、作動油や潤滑油といった機能を持つオイルを図示しない油圧回路に圧送する油圧発生装置である。
【0022】
本実施形態のポンプ5は、トランスアクスル1の左側面のうち、比較的低い位置に配置される。図2に示す例では、ポンプ5がドライブシャフト9よりも下方であって、トランスアクスル1のケーシング1Cの底部近傍に配置される。ケーシング1Cの内部には、少なくとも車両10の停止状態において、図中にドット模様を付けた辺りまでオイルが溜まっている。ポンプ5は、その一部がオイルの油面よりも下方に位置するように配置される。なお、図3以降のスケルトン図では、ポンプ5とトランスアクスル1とを一体化させて(ポンプ5をケーシング1Cに内蔵させて)図示する。
【0023】
[2.トランスアクスル]
本実施形態のトランスアクスル1を備えたパワートレイン7のスケルトン図を図3に示す。図2及び図3に示すように、トランスアクスル1には、互いに平行に配列された六つの軸11〜16が設けられる。以下、クランクシャフト2aと同軸上に接続される回転軸を入力軸11と呼ぶ。同様に、ドライブシャフト9,モータ3の回転軸3a,ジェネレータ4の回転軸4aのそれぞれと同軸上に接続される回転軸を、出力軸12,モータ軸13(第一の回転電機軸),ジェネレータ軸14(第二の回転電機軸)と呼ぶ。また、入力軸11と出力軸12との間の動力伝達経路上に配置された回転軸を第一カウンタ軸15と呼び、モータ軸13と出力軸12との間の動力伝達経路上に配置された回転軸を第二カウンタ軸16と呼ぶ。
【0024】
六つの軸11〜16はいずれも、両端部が図示しない軸受を介してケーシング1Cに軸支される。また、入力軸11,出力軸12,モータ軸13,ジェネレータ軸14のそれぞれの軸上に位置するケーシング1Cの側面には図示しない開口が形成されており、これらの開口を通じてクランクシャフト2a等と接続される。なお、第一カウンタ軸15には、ポンプ5の回転軸が接続される。
【0025】
図2に示すように、第一カウンタ軸15は、六つの軸11〜16の中で最も低い位置(ケーシング1Cの底部近傍)に配置され、少なくとも車両10の停止状態において、ケーシング1Cの内部に溜まったオイルに浸かった状態(油浴した状態)とされる。なお、第一カウンタ軸15以外の軸は、車両10の停止状態においてオイルの油面よりも上方に位置し、走行時の振動や車両10の傾きによって、オイルの油面が図2に示す状態から変化したとしても、第一カウンタ軸15と比較してオイルに浸かりにくい配置とされている。
【0026】
トランスアクスル1の内部には、三つの動力伝達経路が形成される。具体的には、図2中に二点鎖線で示すように、入力軸11から出力軸12に至る動力伝達経路(以下「第一経路51」と呼ぶ)と、モータ軸13から出力軸12に至る動力伝達経路(以下「第二経路52」と呼ぶ)と、入力軸11からジェネレータ軸14に至る動力伝達経路(以下「第三経路53」と呼ぶ)とが形成される。
【0027】
第一経路51(第一機構)は、エンジン2から駆動輪8への動力伝達に係る経路であり、エンジン2の作動時における動力の伝達を担うものである。第一経路51の中途には、その動力伝達の断接とハイロー切替とを実施する後述の切替機構20Aが介装される。第二経路52(第二機構)は、モータ3から駆動輪8への動力伝達に係る経路であり、モータ3の動力伝達を担うものである。第二経路52の中途には、その動力伝達を断接する後述の断接機構が介装される。第三経路53(第三機構)は、エンジン2からジェネレータ4への動力伝達に係る経路であり、エンジン始動時の動力伝達及びエンジン2による発電時の動力伝達を担うものである。
【0028】
次に、図3を用いてトランスアクスル1の構成を詳述する。なお、以下の説明において、「固定ギヤ」とは、軸と一体に設けられ、軸に対して相対回転不能な歯車を意味する。また、「遊転ギヤ」とは、軸に対して相対回転可能に枢支された歯車を意味する。
入力軸11には、一つの固定ギヤ11aと二つの遊転ギヤ11H,11Lとが設けられるとともに、切替機構20Aが介装される。固定ギヤ11aは、ケーシング1Cの右側面寄りに配置されており、ジェネレータ軸14に設けられた固定ギヤ14aと常時噛合している。つまり、入力軸11とジェネレータ軸14とは、二つの固定ギヤ11a,14aを介して連結されており、エンジン2とジェネレータ4との間で動力伝達可能とされる。なお、クランクシャフト2a上には、過大トルクを遮断して動力伝達機構を保護する機能を持ったトルクリミッタ6が介装される。
【0029】
二つの遊転ギヤ11H,11Lは、互いに異なる歯数を持ち、第一カウンタ軸15に設けられた互いに歯数の異なる二つの固定ギヤ15H,15Lのそれぞれと常時噛合している。本実施形態では、歯数が少ない一方の遊転ギヤ11Lが固定ギヤ11aと隣接配置され、歯数が多い他方の遊転ギヤ11Hがケーシング1Cの左側面寄り(一方の遊転ギヤ11Lに対してデフ18の逆側)に配置される。歯数が少ない一方の遊転ギヤ11Lは、歯数が多い一方の固定ギヤ15Lと噛み合ってローギヤ段を形成する。反対に、歯数が多い他方の遊転ギヤ11Hは、歯数が少ない他方の固定ギヤ15Hと噛み合ってハイギヤ段を形成する。
【0030】
つまり、第一カウンタ軸15には、デフ18に近い側に大径な固定ギヤ15Lが配置され、デフ18から離れた位置に小径な固定ギヤ15Hが配置される。第一カウンタ軸15は、デフ18が介装される出力軸12に隣接することから、このようなギヤの配置とすることで、例えば、ケーシング1Cにおける第一カウンタ軸15に沿った部分を、外側(デフ18から離れる方向)に向かって縮径させることができる。あるいは、出力軸12の開口が形成されるケーシング側面を、大径な固定ギヤ15Lと小径な固定ギヤ15Hとの間に設けた場合には、ケーシング1Cにおける第一カウンタ軸15に沿った部分を、全体的に小さくすることができる。これらのような構成により、ケーシング1C外における出力軸12の延長線上に、ドライブシャフト9を接続するためのスペースが確保される。
【0031】
遊転ギヤ11Hは、左部に固定ギヤ15Hと噛み合う歯面部を有し、この歯面部の右側に突設された当接部に対して結合されたドグギヤ11dを有する。遊転ギヤ11Lは、右部に固定ギヤ15Lと噛み合う歯面部を有し、この歯面部の左側に突設された当接部に対して結合されたドグギヤ11eを有する。各ドグギヤ11d,11eの先端部(径方向外側の端部)には、図示しないドグ歯が設けられる。
【0032】
切替機構20Aは、二つの遊転ギヤ11H,11Lの間に配置され、エンジン2の動力の断接状態を制御するとともにハイギヤ段とローギヤ段とを切り替えるものである。本実施形態の切替機構20Aは、入力軸11に固定されたハブ21hと、ハブ21h(入力軸11)に対して相対回転不能であり、かつ、入力軸11の軸方向に摺動自在に結合された環状のスリーブ21sとを有する。スリーブ21sは、図示しないアクチュエータが電子制御装置によって制御されることで、図中のニュートラル位置から左右両側へ移動する。スリーブ21sの径方向内側には、ドグギヤ11d,11eのドグ歯と係合するスプライン歯(図示略)が設けられる。スプライン歯とドグ歯とが係合することで、スリーブ21sとドグギヤ11d又はドグギヤ11eとが係合する。
【0033】
スリーブ21sがニュートラル位置である場合には、二つの遊転ギヤ11H,11Lはいずれも空転状態となる。この場合には、エンジン2が作動していても、エンジン2の動力(入力軸11の回転)は出力軸12へは伝達されない。つまり、この場合はエンジン2の動力伝達が遮断された状態となる。なお、この場合に第一カウンタ軸15が回転していれば(すなわち駆動輪8が回転していれば)、二つの遊転ギヤ11H,11Lはこの回転に追従して回転(空転)する。ただし、遊転ギヤ11H,11Lは入力軸11に設けられており油浴した状態ではないことから、第一カウンタ軸15の回転に追従して回転したとしても発生しうる抵抗は小さい。
【0034】
スリーブ21sがニュートラル位置から左右いずれか一方へ移動し、二つの遊転ギヤ11H,11Lのうちの一方のドグギヤ11d,11eと係合すると、入力軸11の回転をいずれか一方の遊転ギヤ11H,11Lに伝達する。以下、この状態を回転連結状態と呼ぶ。本実施形態のトランスアクスル1では、スリーブ21sが右側に移動して遊転ギヤ11Lのドグギヤ11eと係合することで、ローギヤ段の遊転ギヤ11Lを入力軸11に対して回転連結状態とする。反対に、スリーブ21sが左側に移動して遊転ギヤ11Hのドグギヤ11dと係合することで、ハイギヤ段の遊転ギヤ11Hを入力軸11に対して回転連結状態とする。
【0035】
また、本実施形態のトランスアクスル1は、スリーブ21sの移動に際し、ジェネレータ4によって入力軸11の回転速度を駆動輪8側の回転速度に合わせて同期させる。つまり、スリーブ21sを遊転ギヤ11H,11Lのいずれか一方のドグギヤ11d,11eと係合させる場合(ハイギヤ段又はローギヤ段の選択時、あるいは、ハイギヤ段とローギヤ段との切替時)には、その係合に先立ち、入力軸11の回転速度が第一カウンタ軸15の回転速度に合うように、電子制御装置によってジェネレータ4側のインバータが制御される。
【0036】
この制御方法としては、例えば、入力軸11と駆動輪8との回転速度差(回転差)をセンサで検出し、この回転速度差に応じてジェネレータ4から入力軸11の回転に負荷をかけることで同期させる方法が挙げられる。あるいは、駆動輪8の回転速度をセンサで検出し、この回転速度になるようにジェネレータ4の回転速度を制御することで同期させる方法が挙げられる。
【0037】
第一カウンタ軸15には、ロー側の固定ギヤ15Lの右側に隣接して固定ギヤ15aが設けられるとともに、ハイ側の固定ギヤ15Hの左側に隣接してポンプ5が設けられる。ポンプ5から圧送されたオイルは、第一カウンタ軸15に設けられた油路入口(図示略)と、第二カウンタ軸16に設けられた油路入口5bとから油圧回路内に送給される。第一カウンタ軸15の固定ギヤ15aは、出力軸12に設けられたデフ18のリングギヤ18aと常時噛合している。なお、デフ18のリングギヤ18aは、第二カウンタ軸16上であってケーシング1Cの左側面寄りに設けられた固定ギヤ16bとも常時噛合している。
【0038】
第二カウンタ軸16には、遊転ギヤ16a及びクラッチ17を有する断接機構と、固定ギヤ16bと遊転ギヤ16aとの間に配置されたパーキングギヤ19とが設けられる。遊転ギヤ16aは、クラッチ17の一方の係合要素17aに固定されるとともに、モータ軸13に設けられた固定ギヤ13aと常時噛合し、モータ軸13の回転に追従して回転する。クラッチ17は、モータ3の動力の断接状態を制御する多板式クラッチであり、遊転ギヤ16aに固定された一方の係合要素17aと、第二カウンタ軸16に固定された他方の係合要素17bとを有する。なお、クラッチ17は、ケーシング1Cの右側面寄りに配置される。
【0039】
係合要素17aはモータ3からの動力が入力されるものであり、係合要素17bは駆動輪8側に動力を出力するものである。これらの係合要素17a,17bは、油路入口5bから流入したオイルの油圧に応じて互いに離間(切断),接近(係合)する方向に駆動される。クラッチ17を係合すると、モータ3の動力が固定ギヤ13a及び遊転ギヤ16aを介して駆動輪8側へと伝達されるとともに、駆動輪8側の回転がモータ3へと伝わる。つまり、クラッチ17が係合された状態では、モータ3による力行駆動,回生発電が可能となる。反対に、エンジン2での走行時(モータ3の停止時)にクラッチ17を切断すると、遊転ギヤ16aが空転し、駆動輪8側の回転がモータ3に伝わることがないため、モータ3が連れ回されることがなくなり抵抗が小さくなる。
【0040】
なお、油圧回路上に複数のソレノイド弁(オンオフソレノイド弁,リニアソレノイド弁等)で構成された調圧装置を設け、ポンプ5から圧送されたオイルを適切な油圧に調圧することでクラッチ17の断接が制御される構成であってもよい。あるいは、ポンプ5及び多板式のクラッチ17に代えて、電制カップリングを設けて、電子制御装置によって動力の伝達が断接制御される構成としてもよい。
【0041】
パーキングギヤ19は、パーキングロック装置を構成する要素であり、第二カウンタ軸16に固定される。パーキングギヤ19は、運転者によりPレンジが選択されると、図示しないパーキングスプラグと係合し、第二カウンタ軸16(すなわち出力軸12)の回転を禁止する。
デフ18は、リングギヤ18aに伝達された動力を、デフケース,ピニオンシャフト,デフピニオン,サイドギヤを介して出力軸12に伝達する。
【0042】
[3.作用,効果]
(1)上述したトランスアクスル1には切替機構20Aが設けられ、パラレルモードでの走行時に、走行状態や要求出力等に応じてハイギヤ段とローギヤ段とが切り替えられる。つまり、パラレルモードにおいて、エンジン2の動力を二段階に切り替えて伝達(出力)することができるため、走行パターンを増やすことができ、ドライバビリティの向上や燃費改善といった効果が得られ、車両商品性を向上させることができる。
【0043】
また、上述したトランスアクスル1では、第一カウンタ軸15以外の軸がオイルに浸かりにくい配置であるとともに、切替機構20Aが入力軸11に介装されていることから、切替機構20Aが油浴した状態になることを回避しやすくすることができる。これにより、油浴による損失を抑制することができ、トランスアクスル1の伝達効率を向上させることができる。
【0044】
さらに、上述した車両10では、エンジン2及びモータ3の動力を個別に出力可能であるため、ハイロー切替時におけるトルク抜けをモータ3の動力でカバーすることができる。これにより、変速ショックを抑制することができるとともに、ハイロー切替を早急に行う必要性が低くなることから切替機構20Aの構成を簡素化することができる。
【0045】
(2)上述したトランスアクスル1では、ケーシング1C内において、ハイギヤ段(遊転ギヤ11H,固定ギヤ15H)が、ローギヤ段(遊転ギヤ11L,固定ギヤ15L)に対しデフ18の逆側に配置される。すなわち、出力軸12に隣接する軸(第一カウンタ軸15)上には、デフ18に近い側に大径なギヤ(固定ギヤ15L)が配置され、デフ18から離れた位置に小径なギヤ(固定ギヤ15H)が配置されるため、ケーシング1Cにおける第一カウンタ軸15に沿った部分を、例えば外側(デフ18から離れる方向)に向かって縮径させたり、全体的に小さくしたりすることができる。これにより、ケーシング1Cの大型化を回避しつつ、ケーシング1C外における出力軸12の延長線上に、ドライブシャフト9を接続するためのスペースを確保することができる。
【0046】
(3)上述したトランスアクスル1では、入力軸11に設けられた切替機構20Aがスリーブ21sを有しており、このスリーブ21sが軸方向へ移動することで、ハイギヤ段及びローギヤ段の少なくとも一方の遊転ギヤ11H,11Lを入力軸11に対して回転連結状態とすることができる。スリーブ21sを用いた切替機構20Aであれば、ギヤ比の制約がないため、ハイギヤ段,ローギヤ段の各ギヤ比を自由に設定することができる。
【0047】
また、上述したトランスアクスル1では、入力軸11に設けられた遊転ギヤ11H,11Lはどちらか一方が回転連結状態となると、他方の遊転ギヤはトルクが増幅された第一カウンタ軸15によって回される。すなわち、上述した実施形態とは違い、遊転ギヤがエンジン2の動力で回る入力軸11によって回される場合には、この遊転ギヤが一部でも油浴してしまうと、増幅される前のトルク(動力)で回転することになるため、車両10を駆動するトルク(出力トルク)に対する遊転ギヤの消費トルクの割合が高くなってしまう。これに対し、上述した実施形態のように、遊転ギヤ11H,11Lが第一カウンタ軸15で回される構成であれば、遊転ギヤ11H,11Lの一部がたとえ油浴したとしても、その損失(消費トルクの割合)を抑制することができる。
【0048】
(4)上述したトランスアクスル1では、スリーブ21sの移動に際し、入力軸11の回転速度が駆動輪8側の回転速度に合うようにジェネレータ4側のインバータが制御されることから、スリーブ21sと遊転ギヤ11H,11Lのいずれか一方のドグギヤ11d,11eとの係合(すなわち、ハイギヤ段又はローギヤ段の選択、あるいは、ハイギヤ段とローギヤ段との切替)を滑らかに行うことができる。
【0049】
(5)また、このようにジェネレータ4を用いて回転が同期されることから、ドグギヤ11d,11eのドグ歯とスリーブ21sのスプライン歯とを係合させるだけで、ハイギヤ段又はローギヤ段の選択、あるいは、ハイギヤ段とローギヤ段との切替を行うことができる。すなわち、高価なシンクロ機構を使用しなくても良いため、切替機構20Aを簡素な構成とすることができ、安価に製造することができる。
【0050】
[4.変形例]
上述したトランスアクスル1は一例であって、その構成は上述したものに限られない。以下、トランスアクスル1の変形例について、図4図12を用いて説明する。図4図12は、第一変形例〜第九変形例に係るトランスアクスル1を備えたパワートレイン7を示すスケルトン図である。なお、上述した実施形態やそれまでに説明した変形例と同様の構成については、上述した実施形態や変形例の符号と同一の符号又は同様の符号(同一の数字に異なるアルファベット等)を付し、重複する説明は省略する
【0051】
図4図6に示す三つの変形例に係るトランスアクスル1はいずれも、上述した実施形態と同様に、スリーブを有する切替機構が設けられたものである。一方、図7図12に示す六つの変形例に係るトランスアクスル1はいずれも、遊星ギヤとクラッチとブレーキとを有する切替機構を備えたものである。これらの切替機構はいずれも、上述した切替機構20Aと同様に、少なくとも入力軸11に介装されており、ハイギヤ段とローギヤ段とを切り替えるものである。以下、各変形例について説明する。
【0052】
[4−1.第一変形例]
図4に示すように、第一変形例に係るトランスアクスル1は、ハイギヤ段を形成する遊転ギヤ11H及び固定ギヤ15Hと、ローギヤ段を形成する遊転ギヤ11L及び固定ギヤ15Lとの配置が異なる点を除いて、上述した実施形態と同様に構成される。すなわち、本変形例では、ローギヤ段がハイギヤ段に対しデフ18の逆側に配置される。このような構成であっても、上述した(2)を除く効果を得ることができる。
【0053】
[4−2.第二変形例]
図5に示すように、第二変形例に係るトランスアクスル1は、切替機構20Bが、ハイギヤ段及びローギヤ段のそれぞれを選択する二つの選択機構22,23から構成される点を除いて、上述した実施形態と同様に構成される。二つの選択機構22,23のうちの一方は入力軸11に介装され、他方は第一カウンタ軸15に介装される。また、これらの選択機構22,23は、軸方向と直交する方向において互いに重なる位置に配置される。
【0054】
本変形例では、選択機構22が、入力軸11に固定されたハブ22hと、ハブ22h(入力軸11)対して相対回転不能であり、かつ、入力軸11の軸方向に摺動自在に結合された環状のスリーブ22sとを有する。同様に、選択機構23が、第一カウンタ軸15に固定されたハブ23hと、ハブ23h(第一カウンタ軸15)に対して相対回転不能であり、かつ、第一カウンタ軸15の軸方向に摺動自在に結合された環状のスリーブ23sとを有する。これらのスリーブ22s,23sも、径方向内側に図示しないスプライン歯を有する。
【0055】
また、入力軸11には、上述した遊転ギヤ11Lよりも歯数が多い固定ギヤ11H′が選択機構22よりも左側に設けられ、第一カウンタ軸15には、上述した固定ギヤ15Lよりも歯数が少ない遊転ギヤ15H′が選択機構23よりも左側に設けられる。これらの固定ギヤ11H′及び遊転ギヤ15H′は、常時噛合している。また、遊転ギヤ15H′は、左部に固定ギヤ11H′と噛み合う歯面部を有し、この歯面部の右側に突設された当接部に対して結合されたドグギヤ15dを有する。なお、このドグギヤ15dも、その先端部に図示しないドグ歯を有する。
【0056】
スリーブ22s,23sがいずれもニュートラル位置である場合には、二つの遊転ギヤ15H′,11Lはいずれも空転状態となり、エンジン2の動力伝達が遮断された状態となる。スリーブ23sがニュートラル位置で、スリーブ22sが空転状態から右側へ移動して遊転ギヤ11Lのドグギヤ11eと係合すると、エンジン2の動力(入力軸11の回転)が遊転ギヤ11L及び固定ギヤ15Lを介して出力軸12へと伝達される。すなわちこの場合には、ローギヤ段の遊転ギヤ11Lが入力軸11に対して回転連結状態となる。また、スリーブ22sがニュートラル位置で、スリーブ23sが空転状態から左側へ移動して遊転ギヤ15H′のドグギヤ15dと係合すると、エンジン2の動力が固定ギヤ11H′及び遊転ギヤ15H′を介して出力軸12へと伝達される。すなわちこの場合には、ハイギヤ段の遊転ギヤ15H′が第一カウンタ軸15に対して回転連結状態となる。
【0057】
このような構成であっても、切替機構20Bを構成する二つの選択機構22,23のうちの一方が入力軸11に配置されることから、油浴による損失を抑制することができる。また、本変形例によれば、切替機構20Bが二つの選択機構22,23から構成され、これらの選択機構22,23が軸方向と直交する方向において互いに重なる位置に配置されることから、上述した切替機構20Aを備えたトランスアクスル1と比較して、トランスアクスル1の軸方向寸法(全長)を短縮することができる。
【0058】
さらに、二つの選択機構22,23を同時に作動させてハイロー切替を実施することができるため、一つの切替機構20Aの場合と比較して、ハイロー切替に要する時間を短縮することができる。すなわち、二つの選択機構22,23を備えていれば、二つの遊転ギヤ15H′,11Lのうちの一方を空転状態から回転連結状態に切り替え、これと同時に他方を回転連結状態から空転状態に切り替えることができるため、ハイロー切替を速やかに実施することができる。
【0059】
[4−3.第三変形例]
図6に示すように、第三変形例に係るトランスアクスル1は、入力軸11に設けられた切替機構20Cと二つの遊転ギヤ11H,11Lとの位置関係及びこれらの形状が異なる点を除いて、上述した実施形態と同様に構成される。本変形例の切替機構20Cは、固定ギヤ11aとロー側の遊転ギヤ11Lとの間に配置されており、二つの遊転ギヤ11H,11Lは隣接配置される。すなわち、ハイ側の遊転ギヤ11Hがロー側の遊転ギヤ11Lよりもケーシング1Cの左側面寄りに配置されている。
【0060】
切替機構20Cは、入力軸11に固定されたハブ21hと、ハブ21h(入力軸11)に対して相対回転不能であり、かつ、入力軸11の軸方向に摺動自在に結合された環状のスリーブ21s′とを有する。ロー側の遊転ギヤ11Lは、その内径が上述した実施形態のものよりも大きく形成されており、左部に固定ギヤ15Lと噛み合う歯面部を有し、歯面部の右側に突設された当接部に対して結合されたドグギヤ11eを有する。一方、ハイ側の遊転ギヤ11Hは、左端に固定ギヤ15Hと噛み合う歯面部を有し、右端にドグギヤ11dと結合された当接部を有し、これらの間(中間部)に外径の小さな円筒部を有する。この円筒部は、遊転ギヤ11Lの内部(軸心側)を貫通する部分である。これにより、遊転ギヤ11Hのドグギヤ11dは、遊転ギヤ11Lのドグギヤ11eの右側に配置される。
【0061】
スリーブ21s′の左部には、遊転ギヤ11H,11Lの各ドグギヤ11d,11eのドグ歯と係合するスプライン歯が設けられる。スリーブ21s′が図中のニュートラル位置である場合には、二つの遊転ギヤ11H,11Lはいずれも空転状態となり、エンジン2の動力伝達が遮断された状態となる。スリーブ21s′が空転状態から右側へ移動すると、スリーブ21s′は遊転ギヤ11Lのドグギヤ11eと係合し、エンジン2の動力が遊転ギヤ11L及び固定ギヤ15Lを介して出力軸12へと伝達される。すなわちこの場合には、ローギヤ段の遊転ギヤ11Lが入力軸11に対して回転連結状態となる。
【0062】
反対に、スリーブ21s′が空転状態から左側へ移動すると、スリーブ21s′は遊転ギヤ11Hのドグギヤ11dと係合し、エンジン2の動力が遊転ギヤ11H及び固定ギヤ15Hを介して出力軸12へと伝達される。すなわちこの場合には、ハイギヤ段の遊転ギヤ11Hが入力軸11に対して回転連結状態となる。
したがって、本変形例に係るトランスアクスル1の構成であっても、上述した実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0063】
[4−4.第四変形例]
図7(a)に示すように、第四変形例に係るトランスアクスル1には、シングルピニオン式の遊星ギヤ30Dと、遊星ギヤ30Dの要素のうちの二つを拘束自在に設けられたクラッチ35Dと、遊星ギヤ30Dの要素のうちの一つを拘束自在に設けられたブレーキ36Dとを有する切替機構20Dが設けられる。なお、図7(b)は共線図であり、図中縦軸は回転速度(あるいは回転速度比)に対応し、図中横軸のS,C,Rはそれぞれ、サンギヤ,キャリア,リングギヤに対応する。
【0064】
遊星ギヤ30Dは、遊転ギヤで構成されたサンギヤ31dと、連結要素37dを介して入力軸11に接続されたリングギヤ33dと、サンギヤ31d及びリングギヤ33dの間に配置されたキャリア32dと、キャリア32dに回動可能に支持されてサンギヤ31d及びリングギヤ33dと常時噛合しているピニオンギヤ34dとを有する。クラッチ35Dは、エンジン2の動力の断接状態と変速段とを制御する多板式クラッチであり、二つの係合要素35a,35bを有する。ブレーキ36Dは、遊星ギヤ30D及びクラッチ35Dとともに変速段を制御する多板式ブレーキであり、二つの要素36a,36bを有する。
【0065】
本変形例のリングギヤ33dは、ピニオンギヤ34dと噛合する内側の歯に加え、ジェネレータ軸14の固定ギヤ14aと噛合する外側の歯を有する。リングギヤ33dは入力軸11に固定された連結要素37dと固定されていることから、エンジン2の動力は連結要素37dを介してリングギヤ33dに入力される。キャリア32dには、クラッチ35Dの一方の係合要素35aが固定される。この係合要素35aには、第一カウンタ軸15に設けられた固定ギヤ15bと常時噛合する遊転ギヤ11bが固定される。すなわち、この遊転ギヤ11bは、キャリア32dと一体で回転するものであり、エンジン2の動力を出力軸12へと伝達する。サンギヤ31dは、入力軸11に対して相対回転可能に枢支され、左部にピニオンギヤ34dと噛み合う歯面部を持ち、この歯面部の右側に突設された突出部に、クラッチ35Dの他方の係合要素35bとブレーキ36Dの第一要素36aとが固定される。
【0066】
クラッチ35Dは、入力軸11の左端に設けられた油路入口5cから流入したオイルの油圧に応じて、係合要素35a,35bが互いに離間(切断),接近(係合)する方向に駆動される。すなわち、クラッチ35Dは、遊星ギヤ30Dの要素のうち、サンギヤ31dとキャリア32dとを油圧に応じて開放又は拘束する。また、ブレーキ36Dは、サンギヤ31dの突出部の先端側に配置され、第二要素36bがケーシング1Cの右側面に固定される。ブレーキ36Dは、入力軸11の右端に設けられた油路入口5dから流入したオイルの油圧に応じて、二つの要素36a,36bが互いに離間(切断),接近(係合)する方向に駆動されて、サンギヤ31dを拘束又は開放する。
【0067】
本変形例のトランスアクスル1では、クラッチ35Dが係合された状態か、又は、ブレーキ36Dがサンギヤ31dを拘束した状態であれば、リングギヤ33dに入力された動力がキャリア32dから出力されて、遊転ギヤ11b及び固定ギヤ15bを介して第一カウンタ軸15(駆動輪8側)へと伝達される。一方、クラッチ35Dが切断されるとともにブレーキ36Dがサンギヤ31dを開放している場合には、リングギヤ33dに入力された動力は駆動輪8側へ伝達されない。すなわち、この場合はエンジン2の動力伝達が遮断された状態となる。なお、リングギヤ33dに入力されたエンジン2の動力は、クラッチ35D及びブレーキ36Dの状態にかかわらず、固定ギヤ14aからジェネレータ4にも伝達される。
【0068】
クラッチ35Dが係合された状態でブレーキ36Dが開放されると、サンギヤ31dとキャリア32dとが拘束されて一体回転する。この場合の共線図は図7(b)の左側に示す通りであり、回転速度は三要素とも同一となることから、変速比は1となる。一方、クラッチ35Dが切断された状態でブレーキ36Dがサンギヤ31dを拘束すると、サンギヤ31dの回転が禁止される。この場合の共線図は図7(b)の右側に示す通りであり、キャリア32d(出力)の回転速度がリングギヤ33d(入力)の回転速度よりも小さくなる。
【0069】
すなわち、サンギヤ31dの回転が禁止されると、エンジン2の回転が減速されて(トルクが増幅されて)キャリア32dから出力されることから、変速比は1よりも大きい状態となる。言い換えると、この場合は、サンギヤ31dとキャリア32dとを拘束した状態(変速比1の状態)に対し、ローギヤ段となる。なお、共線図から明らかなように、サンギヤ31dの回転を禁止することで、キャリア32dやリングギヤ33dの回転を禁止する場合と比較して、ローギヤ段の変速比がハイギヤ段の変速比(変速比1)に近い値となる。
【0070】
以上説明したように、本変形例に係るトランスアクスル1では、切替機構20Dが有するクラッチ35D及びブレーキ36Dを制御することで、ハイギヤ段(変速比1)とローギヤ段とを切り替えることができる。また、クラッチ35Dの切断,係合と、ブレーキ36Dによる拘束,開放とを切り替えることでハイロー切替が可能なため、上述したスリーブ21s等による切替制御と比較して制御がしやすく、また、切替時の音の発生を抑制することができる。
【0071】
ところで、エンジン2の動力で走行するパラレルモードは、走行負荷,走行速度が高い場合に選択される走行モードであることから、パラレルモードにおいてハイギヤ段とローギヤ段の変速比を設計する場合には、高車速域での変速を想定していることからこれらの変速比を近い値にする必要がある。これに対し、本変形例に係るトランスアクスル1では、ブレーキ36Dがサンギヤ31dを拘束するため、ハイギヤ段とローギヤ段の変速比を近い値にすることができる。
なお、本変形例に係るトランスアクスル1も、上述した実施形態と同様に、切替機構20Dが入力軸11に設けられることから、油浴による損失を抑制することができる。
【0072】
[4−5.第五変形例]
図8(a)に示すように、第五変形例に係るトランスアクスル1には、シングルピニオン式の遊星ギヤ30Eと、遊星ギヤ30Eの要素のうちの二つを拘束自在に設けられたクラッチ35Eと、遊星ギヤ30Eの要素のうちの一つを拘束自在に設けられたブレーキ36Eとを有する切替機構20Eが設けられる。本変形例のトランスアクスル1は、第四変形例のものに対し、入力軸11から切替機構20Eの遊星ギヤ30Eまでの動力伝達経路が異なるとともに、切替機構20Eの構成が異なる。
【0073】
本変形例の入力軸11は、上述した実施形態の入力軸11と比較して軸方向長さが短く、その左端が第一連結要素37eに固定される。第一連結要素37eは、その中心で入力軸11と固定され、その径方向外端部において第二連結要素38eと固定される。第二連結要素38eは、入力軸11に設けられた遊転ギヤ11cと、遊星ギヤ30Eのリングギヤ33eとを連結するものである。なお、遊転ギヤ11cは、ジェネレータ軸14の固定ギヤ14aと常時噛合している。したがって、エンジン2の動力は、入力軸11から第一連結要素37e,第二連結要素38eを介して、遊転ギヤ11c(ジェネレータ4)及びリングギヤ33eに伝達される。
【0074】
入力軸11の左側には、入力軸11と同軸上であって入力軸11から離隔して配置された第二軸39が設けられる。第二軸39は、その両端部が図示しない軸受を介してケーシング1Cに軸支されている。第二軸39には、遊星ギヤ30Eのサンギヤ31eが固定ギヤとして設けられるとともに、クラッチ35Eの一方の係合要素35bとブレーキ36Eの第一要素36aとが固定される。また、本変形例のキャリア32eには、クラッチ35Eの他方の係合要素35aが固定されるとともに、上述した遊転ギヤ11bが固定される。
【0075】
クラッチ35Eは、第二軸39の左端に設けられた油路入口5cから流入したオイルの油圧に応じて、係合要素35a,35bが互いに離間(切断),接近(係合)する方向に駆動されて、サンギヤ31eとキャリア32eとを油圧に応じて開放又は拘束する。一方、ブレーキ36Eは、第一要素36aが第二軸39に固定され、第二要素36bがケーシング1Cの左側面に固定される。ブレーキ36Eは、油路入口5dから流入したオイルの油圧に応じて、二つの要素36a,36bが互いに離間(切断),接近(係合)する方向に駆動されて、サンギヤ31eを拘束又は開放する。
【0076】
したがって、本変形例のトランスアクスル1においても、第四変形例と同様に、クラッチ35Eが係合された状態か、又は、ブレーキ36Eがサンギヤ31eを拘束した状態であれば、リングギヤ33eに入力された動力がキャリア32eから出力されて、遊転ギヤ11b及び固定ギヤ15bを介して第一カウンタ軸15(駆動輪8側)へと伝達される。一方、クラッチ35Eが切断されるとともにブレーキ36Eがサンギヤ31eを開放している場合には、エンジン2の動力伝達が遮断された状態となる。なお、リングギヤ33eに入力されたエンジン2の動力は、クラッチ35E及びブレーキ36Eの状態にかかわらず、固定ギヤ14aからジェネレータ4にも伝達される。
【0077】
クラッチ35Eが係合された状態でブレーキ36Eが開放されると、サンギヤ31eとキャリア32eとが拘束されて一体回転する。この場合の共線図を図8(b)の左側に示す。また、クラッチ35Eが切断された状態でブレーキ36Eがサンギヤ31eを拘束すると、サンギヤ31eの回転が禁止される。この場合の共線図を図8(b)の右側に示す。これらの共線図から明らかなように、本変形例に係るトランスアクスル1によっても、第四変形例と同様に、切替機構20Eが有するクラッチ35E及びブレーキ36Eを制御することで、ハイギヤ段(変速比1)とローギヤ段とを切り替えることができる。また、その他にも第四変形例と同様の効果を得ることができる。
【0078】
[4−6.第六変形例]
図9(a)に示すように、第六変形例に係るトランスアクスル1には、シングルピニオン式の遊星ギヤ30Fと、遊星ギヤ30Fの要素のうちの二つを拘束自在に設けられたクラッチ35Fと、遊星ギヤ30Fの要素のうちの一つを拘束自在に設けられたブレーキ36Fとを有する切替機構20Fが設けられる。本変形例のトランスアクスル1は、第五変形例のものに対し、遊星ギヤ30Fに対する動力の入出力経路が異なるとともに、切替機構20Fの構成が異なる。
【0079】
本変形例の入力軸11も、上述した第五変形例と同様に、その左端が第一連結要素37fに固定される。ただし、第一連結要素37fは、その径方向外端部においてキャリア32fに固定される。さらに、このキャリア32fには、入力軸11に設けられた遊転ギヤ11cが固定される。なお、遊転ギヤ11cは、ジェネレータ軸14の固定ギヤ14aと常時噛合している。したがって、エンジン2の動力は、入力軸11から第一連結要素37fを介してキャリア32fに伝達されるとともに、遊転ギヤ11cを介してジェネレータ4へ伝達される。
【0080】
本変形例のトランスアクスル1にも、第五変形例と同様の第二軸39が設けられる。また、この第二軸39には、遊星ギヤ30Fのサンギヤ31fが固定ギヤとして設けられるとともに、クラッチ35Fの一方の係合要素35bとブレーキ36Fの第一要素36aとが固定される。また、本変形例のリングギヤ33fには、第二連結要素38fを介して遊転ギヤ11bが接続される。第二連結要素38f及び遊転ギヤ11bはいずれも、第二軸39に対して相対回転可能に設けられ、リングギヤ33fと一体回転する。第二連結要素38fには、クラッチ35Fの他方の係合要素35aが固定される。
【0081】
クラッチ35Fは、第五変形例と同様に、油路入口5cから流入したオイルの油圧に応じて、係合要素35a,35bが互いに離間(切断),接近(係合)する方向に駆動されて、サンギヤ31fとリングギヤ33fとを油圧に応じて開放又は拘束する。また、ブレーキ36Fは、第五変形例と同様に、第一要素36aが第二軸39に固定され、第二要素36bがケーシング1Cの左側面に固定される。ブレーキ36Fは、油路入口5dから流入したオイルの油圧に応じて、二つの要素36a,36bが互いに離間(切断),接近(係合)する方向に駆動されて、サンギヤ31fを拘束又は開放する。
【0082】
本変形例のトランスアクスル1では、クラッチ35Fが係合された状態か、又は、ブレーキ36Fがサンギヤ31fを拘束した状態であれば、キャリア32fに入力された動力がリングギヤ33fから出力されて、遊転ギヤ11b及び固定ギヤ15bを介して第一カウンタ軸15(駆動輪8側)へと伝達される。一方、クラッチ35Fが切断されるとともにブレーキ36Fがサンギヤ31fを開放している場合には、エンジン2の動力伝達が遮断された状態となる。なお、キャリア32fに入力されたエンジン2の動力は、クラッチ35F及びブレーキ36Fの状態にかかわらず、遊転ギヤ11cからジェネレータ4にも伝達される。
【0083】
クラッチ35Fが係合された状態でブレーキ36Fが開放されると、サンギヤ31fとリングギヤ33fとが拘束されて一体回転する。この場合の共線図は図9(b)の左側に示す通りであり、回転速度は三要素とも同一となることから、変速比は1となる。一方、クラッチ35Fが切断された状態でブレーキ36Fがサンギヤ31fを拘束すると、サンギヤ31fの回転が禁止される。この場合の共線図は図9(b)の右側に示す通りであり、リングギヤ33f(出力)の回転速度がキャリア32f(入力)の回転速度よりも大きくなる。
【0084】
すなわち、サンギヤ31fの回転が禁止されると、エンジン2の回転が増速されてリングギヤ33fから出力されることから、変速比は1よりも小さい状態となる。言い換えると、この場合は、サンギヤ31fとリングギヤ33fとを拘束した状態(変速比1の状態)に対し、ハイギヤ段となる。なお、共線図から明らかなように、サンギヤ31fの回転を禁止することで、キャリア32fやリングギヤ33fの回転を禁止する場合と比較して、ハイギヤ段の変速比がローギヤ段の変速比(変速比1)に近い値となる。
【0085】
したがって、本変形例のトランスアクスル1によっても、上述した第四変形例と同様に、ハイギヤ段とローギヤ段(変速比1)とが切り替えられるため、制御がしやすく、ハイロー切替時の音の発生を抑制することができる。また、第四変形例と同様にブレーキ36Fがサンギヤ31fを拘束するため、ハイギヤ段とローギヤ段の変速比を近い値にすることができる。なお、本変形例に係るトランスアクスル1も、上述した実施形態と同様に、切替機構20Fが入力軸11に設けられることから、油浴による損失を抑制することができる。
【0086】
[4−7.第七変形例]
図10(a)に示すように、第七変形例に係るトランスアクスル1には、ステップピニオン式の遊星ギヤ30Gと、遊星ギヤ30Gの要素のうちの二つを拘束自在に設けられたクラッチ35Gと、遊星ギヤ30Gの要素のうちの一つを拘束自在に設けられたブレーキ36Gとを有する切替機構20Gが設けられる。すなわち、本変形例のトランスアクスル1は、上記の第四〜第六変形例のものに対し、遊星ギヤ30Gがステップピニオン式である点が大きく異なる。
【0087】
本変形例のトランスアクスル1には、第五変形例と同様の第二軸39が設けられる。入力軸11の左端は、クラッチ35Gの一方の係合要素35aに固定される。サンギヤ31gは第二軸39に対して固定ギヤとして設けられ、キャリア32gは係合要素35aに固定される。また、キャリア32gには、互いに歯数が異なる二つのピニオンギヤ34g,34g′が回動可能に支持される。歯数が多い一方のピニオンギヤ34gはサンギヤ31gと常時噛合し、歯数が少ない他方のピニオンギヤ34g′はリングギヤ33gと常時噛合している。
【0088】
リングギヤ33gは、連結要素38gを介して遊転ギヤ11bに接続される。連結要素38g及び遊転ギヤ11bはいずれも、第二軸39に対して相対回転可能に設けられ、リングギヤ33gと一体回転する。なお、遊転ギヤ11bは、第一カウンタ軸15の固定ギヤ15bと常時噛合している。すなわち、本変形例では、エンジン2の動力はキャリア32gに入力され、リングギヤ33gから出力される。
【0089】
第二軸39には、サンギヤ31gの右側にクラッチ35Gの他方の係合要素35bが固定され、サンギヤ31gの左側にブレーキ36Gの第一要素36aが固定される。なお、ブレーキ36Gの第二要素36bは、ケーシング1Cに固定される。クラッチ35Gは、第五変形例と同様に、油路入口5cから流入したオイルの油圧に応じて係合要素35a,35bが互いに離間(切断),接近(係合)する方向に駆動されて、サンギヤ31gとキャリア32gとを油圧に応じて開放又は拘束する。また、ブレーキ36Gは、図示しない油路入口から流入したオイルの油圧に応じて、二つの要素36a,36bが互いに離間(切断),接近(係合)する方向に駆動されて、サンギヤ31gを拘束又は開放する。
【0090】
本変形例のトランスアクスル1では、クラッチ35Gが切断されるとともにブレーキ36Gがサンギヤ31gを開放している場合には、エンジン2の動力伝達が遮断された状態となる。一方、クラッチ35Gが係合された状態でブレーキ36Gが開放されると、サンギヤ31gとキャリア32gとが拘束されて一体回転するため、図10(b)の左側の共線図に示すように変速比は1となる。一方、クラッチ36Gが切断された状態でブレーキ36Gがサンギヤ31gを拘束すると、サンギヤ31gの回転が禁止されるため、図10(b)の右側の共線図に示すように、リングギヤ33g(出力)の回転速度がキャリア32g(入力)の回転速度よりも大きくなる。すなわち、この場合にはエンジン2の回転が増速されてリングギヤ33gから出力されることから、変速比は1よりも小さい状態(ハイギヤ段)となる。
【0091】
したがって、本変形例のトランスアクスル1によっても、上述した実施形態と同様に、ハイギヤ段とローギヤ段(変速比1)とを切り替えることができる。また、上述した実施形態及び第四変形例と同様の構成からは、同様の効果を得ることができる。
【0092】
[4−8.第八変形例]
図11(a)に示すように、第八変形例に係るトランスアクスル1には、CR−CR式の遊星ギヤ30Hと、遊星ギヤ30Hの要素のうちの少なくとも二つを拘束自在に設けられたクラッチ35Hと、遊星ギヤ30Hの要素のうちの一つを拘束自在に設けられたブレーキ36Hとを有する切替機構20Hが設けられる。なお、図11(b)に示す共線図において、右列の遊星ギヤの要素には、ダッシュ(′)を付す。
【0093】
本変形例のトランスアクスル1には、第七変形例と同様の第二軸39が設けられる。入力軸11の左端は、クラッチ35Hの一方の係合要素35aに固定される。また、遊星ギヤ30Hは、左列のキャリア32hと右列のリングギヤ33h′とが連結されるともに、左列のリングギヤ33hと右列のキャリア32h′とが連結される。左列のキャリア32hは、第一カウンタ軸15の固定ギヤ15bと常時噛合する遊転ギヤ11bに接続される。すなわち、エンジン2の動力は、左列のキャリア32hから出力される。
【0094】
また、左列のサンギヤ31hは第二軸39に対して固定ギヤとして設けられ、右列のサンギヤ31h′は第二軸39に対して遊転ギヤとして設けられる。第二軸39の右端には、クラッチ35Hの他方の係合要素35bが固定されており、この係合要素35bが入力軸11に固定された係合要素35aと係合することで、左列のサンギヤ31hに対してエンジン2の動力が入力される。なお、クラッチ35Hの他方の係合要素35b′は、右列のキャリア32h′に対しても固定される。また、右列のサンギヤ31h′には、ブレーキ36Hの第一要素36aが固定される。なお、ブレーキ36Hの第二要素36bは、ケーシング1Cに固定される。
【0095】
クラッチ35Hは、油路入口5cから流入したオイルの油圧に応じて、入力軸11に固定された係合要素35aに対し、二つの係合要素35b,35b′のそれぞれが互いに離間(切断),接近(係合)する方向に駆動される。二つの係合要素35b,35b′が全て切断されている場合には、エンジン2の動力伝達が遮断された状態となる。また、係合要素35a,35bが係合された状態では、エンジン2の動力が左列のサンギヤ31hに伝達される。
【0096】
係合要素35aに対し、係合要素35bに加えて係合要素35b′が係合されるととともにブレーキ36Hが開放されると、左列のサンギヤ31hと、左列のリングギヤ33h(右列のキャリア32h′)及び左列のキャリア32h(右列のリングギヤ33h′)とが拘束されて一体回転する。この場合の共線図は図11(b)の左側に示す通りであり、回転速度は六要素とも同一となることから、変速比は1となる。一方、係合要素35aに対し、係合要素35bのみが係合されるとともにブレーキ36Hが右列のサンギヤ31h′を拘束すると、サンギヤ31h′の回転が禁止される。この場合の共線図は図11(b)の右側に示す通りであり、左列のキャリア32h(出力)の回転速度が左列のサンギヤ31h(入力)の回転速度よりも小さくなる。
【0097】
すなわち、サンギヤ31h′の回転が禁止されると、エンジン2の回転が減速されて(トルクが増幅されて)キャリア32hから出力されることから、変速比は1よりも大きい状態(ローギヤ段)となる。したがって、本変形例のトランスアクスル1によっても、上述した実施形態と同様に、ハイギヤ段(変速比1)とローギヤ段とを切り替えることができる。また、上述した実施形態及び第四変形例と同様の構成からは、同様の効果を得ることができる。
【0098】
[4−9.第九変形例]
図12(a)に示すように、第九変形例に係るトランスアクスル1には、ラビニヨン式の遊星ギヤ30Jと、遊星ギヤ30Jの要素のうちの少なくとも二つを拘束自在に設けられたクラッチ35Jと、遊星ギヤ30Jの要素のうちの一つを拘束自在に設けられたブレーキ36Jとを有する切替機構20Jが設けられる。
【0099】
すなわち、遊星ギヤ30Jは、シングルピニオン式の遊星ギヤ(右列)とダブルピニオン式の遊星ギヤ(左列)とが組み合わされたものであり、右列のピニオンギヤ34j′が左列のピニオンギヤ34jと常時噛合するロングピニオンとして設けられる。また、キャリア32j,リングギヤ33jは二つの遊星ギヤ列に共用化される。なお、図12(b)に示す共線図では、左列のサンギヤ31jを“S”と表し、右列のサンギヤ31j′を“S′”と表す。
【0100】
本変形例のトランスアクスル1では、入力軸11に対してクラッチ35Jの一方の係合要素35aが固定される。遊星ギヤ30Jは、リングギヤ33jが連結要素38jを介して遊転ギヤ11bに接続される。連結要素38j及び遊転ギヤ11bはいずれも、入力軸11に対して相対回転可能に設けられ、リングギヤ33jと一体回転する。なお、遊転ギヤ11bは、第一カウンタ軸15の固定ギヤ15bと常時噛合している。すなわち、本変形例では、エンジン2の動力がリングギヤ33jから出力される。
【0101】
また、左右のサンギヤ31j,31j′はいずれも、入力軸11に対して遊転ギヤとして設けられる。また、クラッチ35Jの他方の係合要素35b,35b′は、左右のサンギヤ31j,31j′のそれぞれに対して固定される。さらに、右列のサンギヤ31j′には、ブレーキ36Jの第一要素36aが固定される。なお、ブレーキ36Jの第二要素36bは、ケーシング1Cに固定される。
【0102】
クラッチ35Jは、油路入口5cから流入したオイルの油圧に応じて、入力軸11に固定された係合要素35aに対し、二つの係合要素35b,35b′のそれぞれが互いに離間(切断),接近(係合)する方向に駆動される。二つの係合要素35b,35b′が全て切断されている場合には、エンジン2の動力伝達が遮断された状態となる。また、係合要素35a,35bが係合された状態では、エンジン2の動力が左列のサンギヤ31jに伝達される。すなわち、本変形例では、エンジン2の動力が左列のサンギヤ31jに入力される。
【0103】
係合要素35aに対し、係合要素35b及び35b′が係合されるととともにブレーキ36Jが開放されると、左右のサンギヤ31j,31j′が拘束されて一体回転する。この場合の共線図は図12(b)の左側に示す通りであり、回転速度は四要素とも同一となることから、変速比は1となる。一方、係合要素35aに対し、係合要素35bのみが係合されるとともにブレーキ36Jが右列のサンギヤ31j′を拘束すると、サンギヤ31j′の回転が禁止される。この場合の共線図は図12(b)の右側に示す通りであり、リングギヤ33j(出力)の回転速度が左列のサンギヤ31j(入力)の回転速度よりも小さくなる。
【0104】
すなわち、サンギヤ31j′の回転が禁止されると、エンジン2の回転が減速されて(トルクが増幅されて)リングギヤ33jから出力されることから、変速比は1よりも大きい状態(ローギヤ段)となる。したがって、本変形例のトランスアクスル1によっても、上述した実施形態と同様に、ハイギヤ段(変速比1)とローギヤ段とを切り替えることができる。また、上述した実施形態及び第四変形例と同様の構成からは、同様の効果を得ることができる。
【0105】
[5.その他]
以上、本発明の実施形態及び変形例を説明したが、本発明は上述した実施形態等に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形することが可能である。例えば、ハイギヤ段とローギヤ段とを切り替える切替機構として、上述したスリーブ21s等に代えて、多板式のクラッチを設けてもよい。また、切替機構が遊星ギヤとクラッチとブレーキとを有している場合に、サンギヤ以外の一要素をブレーキで拘束するとともに、二つの要素をクラッチで拘束することで、ハイギヤ段とローギヤ段とを切り替えるように構成してもよい。
【0106】
また、トランスアクスル1に対するエンジン2,モータ3,ジェネレータ4,ポンプ5の相対位置は上述したものに限らない。これらの相対位置に応じて、トランスアクスル1内の六つの軸11〜16の配置を設定すればよい。また、トランスアクスル1内の各軸に設けられるギヤの配置も一例であって、上述したものに限られない。なお、モータ3から駆動輪8への動力伝達に係る第二経路52の中途に介装されたクラッチ17を省略してもよい。
【符号の説明】
【0107】
1 トランスアクスル(トランスアクスル装置)
1C ケーシング
2 エンジン
2a クランクシャフト(回転軸)
3 モータ(電動機,第一の回転電機)
4 ジェネレータ(発電機,第二の回転電機)
8 駆動輪
10 車両
11 入力軸
12 出力軸
14 ジェネレータ軸(第二の回転電機軸)
15 第一カウンタ軸(カウンタ軸)
18 デフ(デファレンシャルギヤ)
20A,20B,20C,20D,20E,20F,20G,20H,20J 切替機構
21s,21s′,22s,23s スリーブ
22,23 選択機構
30D,30E,30F,30G,30H,30J 遊星ギヤ
31d,31e,31f,31g,31h,31h′,31j,31j′ サンギヤ
32d,32e,32f,32g,32h,32h′,32j キャリア
33d,33e,33f,33g,33h,33h′,33j リングギヤ
35D,35E,35F,35G,35H,35J クラッチ
36D,36E,36F,36G,36H,36J ブレーキ
図1
図2
図3
図4
図5
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図7
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図10
図11
図12