特開2017-222198(P2017-222198A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-222198(P2017-222198A)
(43)【公開日】2017年12月21日
(54)【発明の名称】トランスアクスル装置
(51)【国際特許分類】
   B60K 6/405 20071001AFI20171124BHJP
   B60K 6/442 20071001ALI20171124BHJP
   B60K 6/387 20071001ALI20171124BHJP
   B60K 6/40 20071001ALI20171124BHJP
   B60K 17/04 20060101ALI20171124BHJP
   F16H 3/093 20060101ALI20171124BHJP
   F16H 3/72 20060101ALI20171124BHJP
   B60L 11/14 20060101ALI20171124BHJP
   B60K 6/36 20071001ALI20171124BHJP
   B60K 6/365 20071001ALI20171124BHJP
【FI】
   B60K6/405ZHV
   B60K6/442
   B60K6/387
   B60K6/40
   B60K17/04 G
   F16H3/093
   F16H3/72 A
   B60L11/14
   B60K6/36
   B60K6/365
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2016-117006(P2016-117006)
(22)【出願日】2016年6月13日
(71)【出願人】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000176811
【氏名又は名称】三菱自動車エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092978
【弁理士】
【氏名又は名称】真田 有
(72)【発明者】
【氏名】荻野 大蔵
(72)【発明者】
【氏名】松下 昌弘
【テーマコード(参考)】
3D039
3D202
3J028
3J528
5H125
【Fターム(参考)】
3D039AA04
3D039AA05
3D039AB01
3D039AC03
3D039AC04
3D039AC22
3D039AC37
3D202AA02
3D202EE02
3D202EE11
3D202EE13
3D202EE16
3D202EE21
3D202EE23
3D202FF12
3D202FF15
3J028EA25
3J028EB04
3J028EB10
3J028EB33
3J028EB62
3J028EB63
3J028FA13
3J028FB03
3J028FB04
3J028FB13
3J028FC13
3J028FC32
3J028FC42
3J028FC67
3J528EA25
3J528EB33
3J528EB62
3J528EB63
3J528EB74
3J528EB85
3J528FA13
3J528FB03
3J528FB04
3J528FB13
3J528FC13
3J528FC32
3J528FC42
3J528FC67
5H125AA01
5H125AC08
5H125AC12
5H125FF01
5H125FF30
(57)【要約】
【課題】走行パターンを増やすとともに、トランスアクスル装置の大型化を抑制しながらドライブシャフトの接続用スペースを確保する。
【解決手段】エンジン2,第一の回転電機3及び第二の回転電機4を装備し、エンジン2及び第一の回転電機3の動力を個別に駆動輪側の出力軸12に伝達するとともにエンジン2の動力を第二の回転電機4にも伝達するハイブリッド車両のトランスアクスル装置1であって、出力軸12に介装されたデファレンシャルギヤ18と、エンジン2から出力軸12への動力伝達経路上に介装され、ハイギヤ段11H,15Hとローギヤ段11L,15Lとを切り替える切替機構20と、を備える。このハイギヤ段11H,15Hは、トランスアクスル装置1のケーシング1C内において、ローギヤ段11L,15Lに対しデファレンシャルギヤ18の逆側に配置されている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン,第一の回転電機及び第二の回転電機を装備し、前記エンジン及び前記第一の回転電機の動力を個別に駆動輪側の出力軸に伝達するとともに前記エンジンの動力を前記第二の回転電機にも伝達するハイブリッド車両のトランスアクスル装置であって、
前記出力軸に介装されたデファレンシャルギヤと、
前記エンジンから前記出力軸への動力伝達経路上に介装され、ハイギヤ段とローギヤ段とを切り替える切替機構と、を備え、
前記ハイギヤ段が、前記トランスアクスル装置のケーシング内において、前記ローギヤ段に対し前記デファレンシャルギヤの逆側に配置された
ことを特徴とする、トランスアクスル装置。
【請求項2】
前記切替機構が、前記動力伝達経路に対して、前記ハイギヤ段を接続又は切断するハイ側クラッチと前記ローギヤ段を接続又は切断するロー側クラッチとを有する
ことを特徴とする、請求項1記載のトランスアクスル装置。
【請求項3】
前記切替機構は、前記ハイ側クラッチ及び前記ロー側クラッチが組み合わされた一体ものである
ことを特徴とする、請求項2記載のトランスアクスル装置。
【請求項4】
前記切替機構は、前記ハイ側クラッチ及び前記ロー側クラッチが異なる軸上であって軸方向と直交方向において互いに重なる位置に介装された
ことを特徴とする、請求項2記載のトランスアクスル装置。
【請求項5】
前記エンジンの回転軸と同軸上に接続された入力軸を備え、
前記切替機構は、前記ハイ側クラッチ及び前記ロー側クラッチの少なくとも一方が前記入力軸上であって軸方向と直交方向において前記デファレンシャルギヤと重なる位置に介装された
ことを特徴とする、請求項2〜4の何れか1項に記載のトランスアクスル装置。
【請求項6】
前記エンジンの回転軸と同軸上に接続された入力軸と前記出力軸との間の動力伝達経路上に配置されたカウンタ軸と、
前記第一の回転電機及び前記第二の回転電機が取り付けられる取付面から前記カウンタ軸の周囲に軸方向に沿って外方へ突設され、前記第一の回転電機とも前記第二の回転電機とも干渉しない筒状部を有するケーシングと、を備え、
前記切替機構は、前記ハイ側クラッチ及び前記ロー側クラッチの少なくとも一方が前記筒状部内に配置された
ことを特徴とする、請求項2〜5の何れか1項に記載のトランスアクスル装置。
【請求項7】
前記エンジンの回転軸と同軸上に接続された入力軸と、
前記第二の回転電機の回転軸と同軸上に接続された第二の回転電機軸と、を備え、
前記切替機構が、前記入力軸と一体回転する要素を有し、
前記要素には、前記第二の回転電機軸に固定された固定ギヤと常時噛合するギヤが固定されている
ことを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載のトランスアクスル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンと二つの回転電機とを装備したハイブリッド車両に用いられるトランスアクスル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エンジンと回転電機(モータ,ジェネレータ,モータジェネレータ)とを装備したハイブリッド車両において、走行モードを切り替えながら走行する車両が実用化されている。走行モードには、バッテリの充電電力を用いてモータのみで走行するEVモードや、エンジンによってジェネレータを駆動し、発電しながらモータのみで走行するシリーズモード、エンジンとモータとを併用して走行するパラレルモード等が含まれる。走行モードの切り替えは、トランスアクスル装置内における動力伝達経路上に介装されたスリーブやクラッチ等の機構が制御されることで実施される。この機構は、例えばエンジンとジェネレータとの間の動力伝達経路内の軸上や、エンジンと駆動輪との間の動力伝達経路内の軸上に配置される(特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−170877号公報
【特許文献2】特開2013−180680号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、走行モードを切り替えることなく、運転者の要求する出力や車速等に応じて変速段を切り替えることができれば、走行パターンが増えることになり、ドライバビリティの向上や燃費改善といった効果が見込まれる。これを実現するためには、トランスアクスル装置内に複数の変速段を切り替え可能に設ければよい。しかしながら、トランスアクスル装置内にはデファレンシャルギヤ(以下「デフ」と呼ぶ)が設けられるため、複数の変速段とこれを切り替える機構も内蔵させた場合には、トランスアクスル装置が大型化しやすいという課題がある。
【0005】
また、デフが介装された出力軸には、トランスアクスル装置のケーシングの外側からドライブシャフトが接続されるため、ケーシング外における出力軸の延長線上には、ドライブシャフトを接続するためのスペースが必要となる。したがって、複数の変速段やこれを切り替える機構をケーシング内に設ける場合には、このスペースを確保したうえで、トランスアクスル装置の大型化を抑制しうる構造の提案が望まれる。
【0006】
本件は、このような課題に鑑み案出されたもので、走行パターンを増やすとともに、トランスアクスル装置の大型化を抑制しながらドライブシャフトの接続用スペースを確保することができるようにした、トランスアクスル装置を提供することを目的の一つとする。なお、この目的に限らず、後述する発明を実施するための形態に示す各構成により導かれる作用効果であって、従来の技術によっては得られない作用効果を奏することも本件の他の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)ここで開示するトランスアクスル装置は、エンジン,第一の回転電機及び第二の回転電機を装備し、前記エンジン及び前記第一の回転電機の動力を個別に駆動輪側の出力軸に伝達するとともに前記エンジンの動力を前記第二の回転電機にも伝達するハイブリッド車両のトランスアクスル装置であって、前記出力軸に介装されたデファレンシャルギヤと、前記エンジンから前記出力軸への動力伝達経路上に介装され、ハイギヤ段とローギヤ段とを切り替える切替機構と、を備え、前記ハイギヤ段が、前記トランスアクスル装置のケーシング内において、前記ローギヤ段に対し前記デファレンシャルギヤの逆側に配置されたことを特徴としている。なお、前記第一の回転電機とは、回転する電機子又は界磁を有し、少なくとも電動機能を有する電動発電機(モータジェネレータ)又は電動機を意味する。また、前記第二の回転電機とは、回転する電機子又は界磁を有し、少なくとも発電機能を有する電動発電機(モータジェネレータ)又は発電機を意味する。
【0008】
(2)前記切替機構は、前記動力伝達経路に対して、前記ハイギヤ段を接続又は切断するハイ側クラッチと前記ローギヤ段を接続又は切断するロー側クラッチとを有することが好ましい。
(3)前記切替機構は、前記ハイ側クラッチ及び前記ロー側クラッチが組み合わされた一体ものであることが好ましい。
(4)あるいは、前記切替機構は、前記ハイ側クラッチ及び前記ロー側クラッチが異なる軸上であって軸方向と直交方向において互いに重なる位置に介装されていることが好ましい。
【0009】
(5)前記エンジンの回転軸と同軸上に接続された入力軸を備え、前記切替機構は、前記ハイ側クラッチ及び前記ロー側クラッチの少なくとも一方が前記入力軸上であって軸方向と直交方向において前記デファレンシャルギヤと重なる位置に介装されていることが好ましい。
(6)前記エンジンの回転軸と同軸上に接続された入力軸と前記出力軸との間の動力伝達経路上に配置されたカウンタ軸と、前記第一の回転電機及び前記第二の回転電機が取り付けられる取付面に、前記カウンタ軸の周囲に軸方向に沿って外方へ突設され、前記第一の回転電機とも前記第二の回転電機とも干渉しない筒状部を有するケーシングと、を備え、前記切替機構は、前記ハイ側クラッチ及び前記ロー側クラッチの少なくとも一方が前記筒状部内に配置されていることが好ましい。
【0010】
(7)前記エンジンの回転軸と同軸上に接続された入力軸と、前記第二の回転電機の回転軸と同軸上に接続された第二の回転電機軸と、を備え、前記切替機構が、前記入力軸と一体回転する要素を有し、前記要素には、前記第二の回転電機軸に固定された固定ギヤと常時噛合するギヤが固定されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
ハイギヤ段とローギヤ段とを切り替える切替機構によって、走行パターンを増やすことができる。また、ハイギヤ段とローギヤ段との位置関係によって、トランスアクスル装置の大型化を抑制しながらドライブシャフトを接続するためのスペースを確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態に係るトランスアクスル装置を搭載した車両の内部構成を例示する上面図である。
図2図1のトランスアクスル装置を備えたパワートレインの模式的な側面図である。
図3図1のトランスアクスル装置を動力伝達経路に沿って軸方向に切断した断面図である。
図4図3のトランスアクスル装置を備えたパワートレインを示すスケルトン図である。
図5】第一変形例に係るパワートレインを示すスケルトン図である。
図6】第二変形例に係るパワートレインを示すスケルトン図である。
図7】第三変形例に係るパワートレインを示すスケルトン図である。
図8】第四変形例に係るパワートレインを示すスケルトン図である。
図9】第五変形例に係るパワートレインを示すスケルトン図である。
図10】第六変形例に係るパワートレインを示すスケルトン図である。
図11】第七変形例に係るパワートレインを示すスケルトン図である。
図12】第八変形例に係るパワートレインを示すスケルトン図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図面を参照して、実施形態としてのトランスアクスル装置について説明する。以下に示す各実施形態はあくまでも例示に過ぎず、以下の各実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。本実施形態の各構成は、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。また、必要に応じて取捨選択することができ、あるいは適宜組み合わせることができる。
【0014】
[1.全体構成]
本実施形態のトランスアクスル1(トランスアクスル装置)は、図1に示す車両10に適用される。この車両10は、エンジン2と走行用のモータ3(電動機,第一の回転電機)と発電用のジェネレータ4(発電機,第二の回転電機)とを装備したハイブリッド車両である。ジェネレータ4はエンジン2に連結され、モータ3の作動状態とは独立して作動可能とされる。また、車両10にはEVモード,シリーズモード,パラレルモードの三種類の走行モードが用意される。これらの走行モードは、図示しない電子制御装置によって、車両状態や走行状態,運転者の要求出力等に応じて択一的に選択され、その種類に応じてエンジン2,モータ3,ジェネレータ4が使い分けられる。なお、モータ3は発電機能(ジェネレータの機能)を有していてもよいし、また、ジェネレータ4は電動機能(モータの機能)を有していてもよい。
【0015】
EVモードは、エンジン2及びジェネレータ4を停止させたまま、図示しない駆動用のバッテリの充電電力を用いてモータ3のみで車両10を駆動する走行モードである。EVモードは、走行負荷,走行速度が低い場合やバッテリの充電レベルが高い場合に選択される。シリーズモードは、エンジン2でジェネレータ4を駆動して発電しつつ、その電力を利用してモータ3で車両10を駆動する走行モードである。シリーズモードは、走行負荷,走行速度が中程度の場合やバッテリの充電レベルが低い場合に選択される。パラレルモードは、おもにエンジン2で車両10を駆動し、必要に応じてモータ3で車両10の駆動をアシストする走行モードであり、走行負荷,走行速度が高い場合に選択される。
【0016】
駆動輪8には、トランスアクスル1を介してエンジン2及びモータ3が並列に接続され、エンジン2及びモータ3のそれぞれの動力が個別に伝達される。また、エンジン2には、トランスアクスル1を介してジェネレータ4及び駆動輪8が並列に接続され、エンジン2の動力が駆動輪8に加えてジェネレータ4にも伝達される。
【0017】
トランスアクスル1は、デファレンシャルギヤ18(差動装置、以下「デフ18」と呼ぶ)を含むファイナルドライブ(終減速機)とトランスミッション(減速機)とを一体に形成した動力伝達装置であり、駆動源と被駆動装置との間の動力伝達を担う複数の機構を内蔵する。本実施形態のトランスアクスル1は、ハイロー切替(高速段,低速段の切替)が可能に構成されており、パラレルモードでの走行時において、電子制御装置によって走行状態や要求出力等に応じてハイギヤ段とローギヤ段とが切り替えられる。
【0018】
エンジン2は、ガソリンや軽油を燃焼とする内燃機関(ガソリンエンジン,ディーゼルエンジン)である。このエンジン2は、クランクシャフト2a(回転軸)の向きが車両10の車幅方向に一致するように横向きに配置されたいわゆる横置きエンジンであり、トランスアクスル1の右側面に対して固定される。クランクシャフト2aは、駆動輪8のドライブシャフト9に対して平行に配置される。エンジン2の作動状態は、電子制御装置で制御される。
【0019】
モータ3及びジェネレータ4はいずれも、電動機としての機能と発電機としての機能とを兼ね備えた電動発電機(モータ・ジェネレータ)である。モータ3は、おもに電動機として機能して車両10を駆動し、回生時には発電機として機能する。ジェネレータ4は、エンジン2を始動させる際に電動機(スターター)として機能し、エンジン2の作動時にはエンジン動力で発電を実施する。モータ3及びジェネレータ4の各周囲(又は各内部)には、直流電流と交流電流とを変換するインバータ(図示略)が設けられる。モータ3及びジェネレータ4の各回転速度は、インバータを制御することで制御される。なお、モータ3,ジェネレータ4,各インバータの作動状態は、電子制御装置で制御される。
【0020】
本実施形態のモータ3は、その外形が回転軸3aを中心軸とした円筒状に形成され、その底面をトランスアクスル1側に向けた姿勢でトランスアクスル1の左側面(取付面)に対して固定される。また、本実施形態のジェネレータ4は、その外形が回転軸4aを中心軸とした円筒状に形成され、モータ3と同様に、その底面をトランスアクスル1側に向けた姿勢でトランスアクスル1の左側面に対して固定される。
【0021】
図2は、エンジン2,モータ3,ジェネレータ4,トランスアクスル1を含むパワートレイン7を左側から見た側面図である。なお、この側面図ではエンジン2を省略している。図2に示すように、トランスアクスル1の左側面には、モータ3及びジェネレータ4に加えてポンプ5が固定される。ポンプ5は、駆動輪8側の動力を利用して、作動油や潤滑油といった機能を持つオイルを図示しない油圧回路に圧送する油圧発生装置である。
【0022】
[2.トランスアクスル]
図3は、本実施形態のトランスアクスル1を動力伝達経路に沿って軸方向に切断した断面図であり、図4はこのトランスアクスル1を備えたパワートレイン7のスケルトン図である。なお、図4以降のスケルトン図では、ポンプ5とトランスアクスル1とを一体化させて(ポンプ5をケーシング1Cに内蔵させて)図示する。
【0023】
図2図4に示すように、トランスアクスル1には、互いに平行に配列された六つの軸11〜16が設けられる。以下、クランクシャフト2aと同軸上に接続される回転軸を入力軸11と呼ぶ。同様に、ドライブシャフト9,モータ3の回転軸3a,ジェネレータ4の回転軸4aのそれぞれと同軸上に接続される回転軸を、出力軸12,モータ軸13(第一の回転電機軸),ジェネレータ軸14(第二の回転電機軸)と呼ぶ。また、入力軸11と出力軸12との間の動力伝達経路上に配置された回転軸を第一カウンタ軸15と呼び、モータ軸13と出力軸12との間の動力伝達経路上に配置された回転軸を第二カウンタ軸16と呼ぶ。
【0024】
図3に示すように、六つの軸11〜16はいずれも、両端部が軸受11e〜16eを介してケーシング1Cに軸支される。また、入力軸11,出力軸12,モータ軸13,ジェネレータ軸14のそれぞれの軸上に位置するケーシング1Cの側面には開口が形成されており、これらの開口を通じてクランクシャフト2a等と接続される。なお、クランクシャフト2a上には、過大トルクを遮断して動力伝達機構を保護する機能を持ったトルクリミッタ6が介装される。また、図4に示すように、第一カウンタ軸15には、ポンプ5の回転軸が接続される。
【0025】
トランスアクスル1の内部には、三つの動力伝達経路が形成される。具体的には、図2中に二点鎖線で示すように、入力軸11から出力軸12に至る動力伝達経路(以下「第一経路51」と呼ぶ)と、モータ軸13から出力軸12に至る動力伝達経路(以下「第二経路52」と呼ぶ)と、入力軸11からジェネレータ軸14に至る動力伝達経路(以下「第三経路53」と呼ぶ)とが形成される。
【0026】
第一経路51(第一機構)は、エンジン2から駆動輪8への動力伝達に係る経路であり、エンジン2の作動時における動力の伝達を担うものである。第一経路51の中途には、その動力伝達の断接とハイロー切替とを実施する後述の切替機構20が介装される。第二経路52(第二機構)は、モータ3から駆動輪8への動力伝達に係る経路であり、モータ3の動力伝達を担うものである。第三経路53(第三機構)は、エンジン2からジェネレータ4への動力伝達に係る経路であり、エンジン始動時の動力伝達及びエンジン2による発電時の動力伝達を担うものである。
【0027】
次に、図3及び図4を用いてトランスアクスル1の構成を詳述する。なお、以下の説明において、「固定ギヤ」とは、軸と一体に設けられ、軸に対して相対回転不能な歯車を意味する。また、「遊転ギヤ」とは、軸に対して相対回転可能に枢支された歯車を意味する。
入力軸11には、二つの固定ギヤ11H,11Lが設けられる。二つの固定ギヤ11H,11Lは、互いに異なる歯数を持ち、第一カウンタ軸15に設けられた互いに歯数の異なる二つの遊転ギヤ15H,15Lのそれぞれと常時噛合している。
【0028】
本実施形態では、歯数が少ない一方の固定ギヤ11Lが右側(デフ18側)に配置され、歯数が多い他方の固定ギヤ11Hが左側(一方の固定ギヤ11Lに対してデフ18の逆側)に配置される。歯数が少ない一方の固定ギヤ11Lは、歯数が多い一方の遊転ギヤ15Lと噛み合ってローギヤ段を形成する。反対に、歯数が多い他方の固定ギヤ11Hは、歯数が少ない他方の遊転ギヤ15Hと噛み合ってハイギヤ段を形成する。なお、固定ギヤ11Lは、ジェネレータ軸14に設けられた固定ギヤ14aと常時噛合しており、エンジン2とジェネレータ4との間で動力を伝達する。
【0029】
第一カウンタ軸15には、デフ18に近い側に大径な遊転ギヤ15Lが配置され、デフ18から離れた位置に小径な遊転ギヤ15Hが配置される。第一カウンタ軸15は、デフ18が介装される出力軸12に隣接することから、このようなギヤの配置とすることで、例えば、ケーシング1Cにおける第一カウンタ軸15に沿った部分を、外側(デフ18から離れる方向)に向かって縮径させることができる。あるいは、出力軸12の開口が形成されるケーシング側面を、大径な遊転ギヤ15Lと小径な遊転ギヤ15Hとの間に設けた場合には、ケーシング1Cにおける第一カウンタ軸15に沿った部分を、全体的に小さくすることができる。これらのような構成により、ケーシング1C外における出力軸12の延長線上に、ドライブシャフト9を接続するためのスペースが確保される。
【0030】
本実施形態のケーシング1Cは、モータ3及びジェネレータ4が取り付けられる左側面に、第一カウンタ軸15の周囲に軸方向に沿って外方(左側)へ突設された筒状部1Dを有する。筒状部1Dは、筒状に形成されたケーシング1Cの一部であり、モータ3ともジェネレータ4とも干渉しない配置及び形状とされる。筒状部1Dは、パワートレイン7を左側から見て(側面視で)、モータ3の回転軸3a(モータ軸13)とジェネレータ4の回転軸4a(ジェネレータ軸14)との間の領域内に配置される。なお、ここでいう「間の領域」とは、側面視で、二つの軸3a,4aを結んだ直線に対して直交するとともに各軸3a,4aを通る二直線で挟まれた領域を意味する。なお、筒状部1Dの外端面(左側の端面)には、ポンプ5が取り付けられる。
【0031】
本実施形態の二つの遊転ギヤ15H,15Lは、同軸(第一カウンタ軸15)上に配置されるとともに、二重管構造をなしている。具体的には、ロー側の遊転ギヤ15Lが右部に固定ギヤ11Lと噛み合う歯面部を有し、この歯面部の左側に突設された円筒部(すなわち遊転ギヤ15Lの左部)の先端に切替機構20の係合要素21Lが固定される。また、ハイ側の遊転ギヤ15Hは、固定ギヤ11Hと噛み合う歯面部の左側に切替機構20の係合要素21Hが固定される。さらに、この遊転ギヤ15Hは、ロー側の遊転ギヤ15Lの円筒部の外周に相対回転可能に枢支される。
【0032】
切替機構20は、エンジン2の動力の断接状態を制御するとともにハイギヤ段とローギヤ段とを切り替えるものであり、第一カウンタ軸15に介装されるとともに筒状部1D内に配置される。本実施形態の切替機構20は、第一経路51に対してハイギヤ段を接続,切断するハイ側の多板式クラッチ(ハイ側クラッチ)と、第一経路51に対してローギヤ段を接続,切断するロー側の多板式クラッチ(ロー側クラッチ)とが組み合わされた一体ものとして設けられる。各クラッチの作動油圧は、第一カウンタ軸15に設けられた二つの油路入口5a,5a′からそれぞれ供給される。
【0033】
本実施形態の切替機構20は、ハイ側クラッチを構成する二つの係合要素21H,22Hと、ロー側クラッチを構成する二つの係合要素21L,22Lとを有する。駆動側の係合要素21H,21Lは、二つの遊転ギヤ15H,15Lのそれぞれに固定されており、エンジン2からの動力が入力される。一方、被駆動側の係合要素22H,22Lは、第一カウンタ軸15にそれぞれ固定されており、駆動輪8側に動力を出力する。ハイ側の係合要素21H,22H及びロー側の係合要素21L,22Lのそれぞれは、油路入口5a′,5aから流入したオイルの油圧に応じて互いに離間(切断),接近(係合)する方向に駆動される。なお、ポンプ5から圧送されたオイルを適切な油圧に調圧する調圧装置を油圧回路上に設けてもよい。調圧装置は、例えば複数のソレノイド弁(オンオフソレノイド弁,リニアソレノイド弁等)から構成される。
【0034】
切替機構20の全ての係合要素21H,22H,21L,22Lが切断された場合には、二つの遊転ギヤ15H,15Lはいずれも空転状態となる。この場合には、エンジン2が作動していても、エンジン2の動力(入力軸11の回転)は出力軸12へは伝達されない。つまり、この場合はエンジン2の駆動輪8側への動力伝達が遮断された状態となる。一方、切替機構20のハイ側及びロー側のクラッチの一方が係合されて他方が切断された場合には、ハイギヤ段又はローギヤ段が選択されて、エンジン2の動力が出力軸12へと伝達される。
【0035】
すなわち、ハイ側クラッチの係合要素21H,22Hが係合され、ロー側クラッチの係合要素21L,22Lが切断されると、ハイギヤ段が選択される。この場合、エンジン2の動力が固定ギヤ11H及び遊転ギヤ15Hを介して駆動輪8側へと伝達される。反対に、ロー側クラッチの係合要素21L,22Lが係合され、ハイ側クラッチの係合要素21H,22Hが切断されると、ローギヤ段が選択される。この場合、エンジン2の動力が固定ギヤ11L及び遊転ギヤ15Lを介して駆動輪8側へと伝達される。
【0036】
なお、第一カウンタ軸15には、ロー側の遊転ギヤ15Lの右側に隣接して固定ギヤ15aが設けられる。この固定ギヤ15aは、出力軸12に設けられたデフ18のリングギヤ18aと常時噛合している。
また、第二カウンタ軸16には、二つの固定ギヤ16a,16bとパーキングギヤ19とが設けられる。ケーシング1Cの右側面寄りに配置された固定ギヤ16aは、モータ軸13に設けられた固定ギヤ13aと常時噛合している。一方、ケーシング1Cの左側面寄りに配置された固定ギヤ16bは、デフ18のリングギヤ18aと常時噛合している。すなわち、モータ3の動力は、固定ギヤ13a,16a,16b及びデフ18を介して出力軸12へと伝達される。
【0037】
パーキングギヤ19は、パーキングロック装置を構成する要素であり、第二カウンタ軸16に固定される。パーキングギヤ19は、運転者によりPレンジが選択されると、図示しないパーキングスプラグと係合し、第二カウンタ軸16(すなわち出力軸12)の回転を禁止する。
なお、デフ18は、図3に示すように、リングギヤ18aに伝達された動力を、デフケース18b,ピニオンシャフト18c,デフピニオン18d,サイドギヤ18eを介して出力軸12に伝達する。
【0038】
[3.作用,効果]
(1)上述したトランスアクスル1には切替機構20が設けられ、パラレルモードでの走行時に、走行状態や要求出力等に応じてハイギヤ段とローギヤ段とが切り替えられる。つまり、パラレルモードにおいて、エンジン2の動力を二段階に切り替えて伝達(出力)することができるため、走行パターンを増やすことができ、ドライバビリティの向上や燃費改善といった効果が得られ、車両商品性を向上させることができる。
【0039】
また、上述したトランスアクスル1では、ケーシング1C内において、ハイギヤ段(固定ギヤ11H,遊転ギヤ15H)が、ローギヤ段(固定ギヤ11L,遊転ギヤ15L)に対しデフ18の逆側に配置される。すなわち、出力軸12に隣接する軸(第一カウンタ軸15)上には、デフ18に近い側に大径なギヤ(遊転ギヤ15L)が配置され、デフ18から離れた位置に小径なギヤ(遊転ギヤ15H)が配置されるため、ケーシング1Cにおける第一カウンタ軸15に沿った部分を、例えば外側(デフ18から離れる方向)に向かって縮径させたり、全体的に小さくしたりすることができる。つまり、上述したトランスアクスル1によれば、トランスアクスル1の大型化を抑制しつつ、ケーシング1C外における出力軸12の延長線上にドライブシャフト9を接続するためのスペースを確保することができる。
【0040】
さらに、上述した車両10では、エンジン2及びモータ3の動力を個別に出力可能であるため、ハイロー切替時におけるトルク抜けをモータ3の動力でカバーすることができる。これにより、変速ショックを抑制することができる。
【0041】
(2)上述したトランスアクスル1では、ハイ側クラッチ及びロー側クラッチを有する切替機構20によってハイロー切替が実施されるため、構成を簡素化することができる。
(3)また、上述したトランスアクスル1では、切替機構20がハイ側クラッチ及びロー側クラッチを組み合わせた一体ものとして設けられることから、トランスアクスル1のコンパクト化を図ることができる。
【0042】
(4)上述したトランスアクスル1では、切替機構20がケーシング1Cの筒状部1D内に配置される。この筒状部1Dは、モータ3及びジェネレータ4が取り付けられる左側面に突設された部位であり、モータ3ともジェネレータ4とも干渉しないように設けられることから、この筒状部1D内に切替機構20を内蔵させることで、パワートレイン7を大型化することなく切替機構20をトランスアクスル1に組み込むことができる。
【0043】
[4.変形例]
上述したトランスアクスル1は一例であって、その構成は上述したものに限られない。以下、トランスアクスル1の変形例について、図5図12を用いて説明する。図5図12は、第一変形例〜第八変形例に係るトランスアクスル1を備えたパワートレイン7を示すスケルトン図である。なお、上述した実施形態やそれまでに説明した変形例と同様の構成については、上述した実施形態や変形例の符号と同一の符号又は同様の符号(同一の数字に異なるアルファベット等)を付し、重複する説明は省略する。
【0044】
[4−1.第一変形例]
図5に示すように、第一変形例に係るトランスアクスル1は、遊転ギヤ11H′,11L′及び切替機構20′の配置が異なる点を除いて、上述した実施形態と同様に構成される。本変形例では、ハイ側の遊転ギヤ11H′及びロー側の遊転ギヤ11L′がいずれも入力軸11に設けられるとともに二重管構造をなし、さらに切替機構20′がこれらと同軸(入力軸11)上に介装される。
【0045】
ハイ側の遊転ギヤ11H′は、ロー側の遊転ギヤ11L′に対しデフ18の逆側(左側)に配置され、第一カウンタ軸15に設けられたハイ側の固定ギヤ15H′と常時噛合している。ロー側の遊転ギヤ11L′は、入力軸11に設けられた固定ギヤ11aと隣接配置され、第一カウンタ軸15に設けられたロー側の固定ギヤ15L′と常時噛合している。なお、固定ギヤ11aは、ケーシング1Cの右側面寄りに配置され、ジェネレータ軸14の固定ギヤ14aと常時噛合している。つまり、入力軸11とジェネレータ軸14とは、二つの固定ギヤ11a,14aを介して連結されており、エンジン2とジェネレータ4との間で動力伝達可能とされる。
【0046】
本変形例の切替機構20′も、ハイ側クラッチとロー側クラッチとが組み合わされた一体ものである。切替機構20′は、駆動側の係合要素21H′,21L′がいずれも入力軸11に固定され、被駆動側の係合要素22H′,22L′のそれぞれが遊転ギヤ11H′,11L′に固定される。ハイ側クラッチの係合要素21H′,22H′及びロー側クラッチの係合要素21L′,22L′のそれぞれは、ポンプ5から圧送されたオイルが入力軸11に設けられた油路入口5b,5b′から供給され、各油圧に応じて(あるいは調圧された油圧に応じて)互いに離間(切断),接近(係合)する方向に駆動される。
【0047】
切替機構20′の全ての係合要素21H′,22H′,21L′,22L′が切断された場合には、二つの遊転ギヤ11H′,11L′はいずれも空転状態となり、エンジン2の駆動輪8側への動力伝達が遮断される。一方、ハイ側クラッチ及びロー側クラッチのいずれか一方が係合されて他方が切断された場合には、ハイギヤ段又はローギヤ段が選択されて、エンジン2の動力が出力軸12へと伝達される。このような構成によっても、上述した実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0048】
なお、本変形例に係るトランスアクスル1には、第二経路52の中途である第二カウンタ軸16上に、モータ3からの動力伝達を断接する断接機構が設けられる。断接機構は、遊転ギヤ16c及びモータ側クラッチ17を有する。遊転ギヤ16cは、モータ側クラッチ17の第一係合要素17aに固定されるとともに、モータ軸13に設けられた固定ギヤ13aと常時噛合し、モータ軸13の回転に追従して回転する。モータ側クラッチ17は、モータ3の動力の断接状態を制御する多板式クラッチであり、第一係合要素17aと、第二カウンタ軸16に固定された第二係合要素17bとを有する。なお、モータ側クラッチ17は、ケーシング1Cの右側面寄りに配置される。
【0049】
第一係合要素17aはモータ3からの動力が入力されるものであり、第二係合要素17bは駆動輪8側に動力を出力するものである。これらの係合要素17a,17bは、ポンプ5から圧送されたオイルが油路入口5cから供給され、その油圧に応じて(あるいは調圧された油圧に応じて)互いに離間(切断),接近(係合)する方向に駆動される。モータ側クラッチ17が係合されると、モータ3の動力が固定ギヤ13a及び遊転ギヤ16cを介して駆動輪8側へと伝達されるとともに、駆動輪8側の回転がモータ3へと伝わる。つまり、モータ側クラッチ17が係合された状態では、モータ3による力行駆動,回生発電が可能となる。
【0050】
反対に、エンジン2での走行時(モータ3の停止時)にモータ側クラッチ17が切断されると、遊転ギヤ16cが空転し、駆動輪8側の回転がモータ3に伝わることがないため、モータ3が連れ回されることがなくなり抵抗が小さくなる。なお、ポンプ5及び多板式のモータ側クラッチ17に代えて、電制カップリングを設けて、電子制御装置によって動力の断接が制御される断接機構としてもよい。これらのような断接機構を設けることで、モータ3の連れ回りを防止でき、走行抵抗を小さくすることができる。
なお、断接機構は必須の構成ではなく、省略してもよい。また、本変形例ではパーキングギヤ19が第二カウンタ軸16に設けられているが、パーキングギヤ19の配置もこれに限られない。
【0051】
[4−2.第二変形例]
図6に示すように、第二変形例に係るトランスアクスル1は、第一変形例(図5)のものと比較して、切替機構20′と遊転ギヤ11H′,11L′との位置関係が異なるとともに、ジェネレータ4へ動力を伝達するギヤが異なる。すなわち、本変形例においても、切替機構20′及び遊転ギヤ11H′,11L′は入力軸11に設けられるが、これらの位置関係が異なる。また、第一変形例の固定ギヤ11aの代わりにギヤ11bが設けられる。
【0052】
本変形例では、切替機構20′が、ケーシング1C内における右側面寄りに配置され、切替機構20′の左側に二つの遊転ギヤ11H′,11L′が配置される。具体的には、切替機構20′が、軸方向と直交方向(以下「幅方向」という)においてデフ18のリングギヤ18aと重なる位置に配置される。図3に示すように、デフ18のリングギヤ18aには第一カウンタ軸15の固定ギヤ15aが噛み合っているため、第一カウンタ軸15上の他のギヤ(例えば遊転ギヤ15L)と噛み合うギヤ(例えば固定ギヤ11L)を入力軸11に設ける場合には、リングギヤ18aと幅方向においてオフセットした位置にしか配置できない。つまり、デフ18(特にリングギヤ18a)と幅方向において重なる入力軸11の周囲の空間は、デッドスペースになりやすかった。
【0053】
これに対し、図6に示すように、本変形例の切替機構20′は、このデッドスペースに配置される。また、ロー側の遊転ギヤ11L′は切替機構20′の左側に隣接して配置され、ハイ側の遊転ギヤ11H′はこの遊転ギヤ11L′の左側に隣接して(ローギヤ段に対しデフ18の逆側に)配置される。遊転ギヤ11H′,11L′はいずれも、左部に固定ギヤ15H′,15L′のそれぞれと噛み合う歯面部を有し、右部に切替機構20′の被駆動側の係合要素22H′,22L′を有する。
【0054】
切替機構20′の駆動側の係合要素21H′,21L′は、入力軸11に固定される。本変形例では、入力軸11と一体回転する係合要素21L′としてのクラッチパックの外周面に、ジェネレータ軸14の固定ギヤ14aと常時噛合するギヤ11bが固定される。すなわち、入力軸11とジェネレータ軸14とは、ギヤ11b及び固定ギヤ14aを介して連結されており、エンジン2とジェネレータ4との間で動力伝達可能とされる。
【0055】
したがって、本変形例に係るトランスアクスル1によっても、上述した実施形態と同様の効果を得ることができる。また、本変形例の切替機構20′が配置される空間は、従来の構造ではデッドスペースとなっていた。このため、本変形例のトランスアクスル1であれば、デッドスペースを有効活用することができ、ケーシング1C内のスペース効率を向上させることができる。さらに、ジェネレータ14へ動力を伝達するギヤ11bがクラッチパック(係合要素21L′)に固定されていることから、入力軸11の軸方向寸法を短縮することができ、トランスアクスル1のコンパクト化を図ることができる。
【0056】
なお、切替機構20′を、デフ18のリングギヤ18a以外の要素(例えばデフケース18bやデフピニオン18d等)と幅方向において重なる位置に配置してもよい。また、切替機構20′の係合要素21L′(クラッチパック)の外周にギヤ11bを固定する代わりに、上述した第一変形例の固定ギヤ11aを入力軸11に設けてもよい。
【0057】
[4−3.第三変形例]
図7に示すように、第三変形例に係るトランスアクスル1は、第一変形例(図5)のものと比較して、切替機構が互いに異なる軸に介装されたハイ側クラッチ30Hとロー側クラッチ30Lとを有する点が異なる。ハイ側クラッチ30Hは第一カウンタ軸15の左側面寄りに配置され、ロー側クラッチ30Lは入力軸11の右側面寄りであってデフ18のリングギヤ18aと幅方向において重なる位置に配置される。
【0058】
入力軸11には、ロー側クラッチ30Lの左側に隣接して遊転ギヤ11Laが設けられる。また、この遊転ギヤ11Laの左側にハイ側の固定ギヤ11Hと固定ギヤ11aとが設けられる。第一カウンタ軸15には、ハイ側クラッチ30Hの右側に隣接して遊転ギヤ15Haが設けられる。また、この遊転ギヤ15Haの右側にロー側の固定ギヤ15L′と固定ギヤ15aとが設けられる。ハイ側クラッチ30Hは、遊転ギヤ15Haの左側に固定された駆動側の係合要素31Hと、第一カウンタ軸15に固定された被駆動側の係合要素32Hとを有する。ロー側クラッチ30Lは、入力軸11に固定された駆動側の係合要素31Lと、遊転ギヤ11Laの右側に固定された被駆動側の係合要素32Lとを有する。
【0059】
ハイ側クラッチ30Hの係合要素31H,32H及びロー側クラッチ30Lの係合要素31L,32Lのそれぞれは、ポンプ5から圧送されたオイルが油路入口5a,5bのそれぞれから供給され、その油圧に応じて(あるいは調圧された油圧に応じて)互いに離間(切断),接近(係合)する方向に駆動される。ハイ側クラッチ30Hが係合されるとともにロー側クラッチ30Lが切断されると、ハイギヤ段が選択される。この場合、エンジン2の動力が固定ギヤ11H及び遊転ギヤ15Haを介して駆動輪8側へと伝達される。反対に、ロー側クラッチ30Lが係合されるとともにハイ側クラッチ30Hが切断されると、ローギヤ段が選択される。この場合、エンジン2の動力が遊転ギヤ11La及び固定ギヤ15L′を介して駆動輪8側へと伝達される。
【0060】
したがって、本変形例に係るトランスアクスル1であっても、上述した実施形態の(1)の効果を得ることができる。さらに、上述した第二変形例と同様に、デッドスペースを有効活用することができ、ケーシング1C内のスペース効率を向上させることができる。
なお、本変形例において、ロー側クラッチ30Lをデフ18のリングギヤ18a以外の要素(例えばデフケース18bやデフピニオン18d等)と幅方向において重なる位置に配置してもよい。
【0061】
[4−4.第四変形例]
図8に示すように、第四変形例に係るトランスアクスル1は、第三変形例(図7)のものと比較して、切替機構が有する二つのクラッチ30H′,30L′の配置と遊転ギヤ11Ha,15Laの配置とが異なる。すなわち、本変形例では、入力軸11に、上記の固定ギヤ11a,11Lが設けられるとともに、ハイ側クラッチ30H′及び遊転ギヤ11Haが設けられる。また、第一カウンタ軸15に、上記の固定ギヤ15a,15H′が設けられるとともに、ロー側クラッチ30L′及び遊転ギヤ15Laが設けられる。
【0062】
ハイ側クラッチ30H′は、入力軸11に固定された駆動側の係合要素31H′とハイ側の遊転ギヤ11Haの右側に固定された被駆動側の係合要素32H′とを有する。ロー側クラッチ30L′は、ロー側の遊転ギヤ15Laの左側に固定された駆動側の係合要素31L′と、第一カウンタ軸15に固定された被駆動側の係合要素32L′とを有する。これらの係合要素31H′,32H′,31L′,32L′は、上述した第三変形例と同様に、油圧に応じて係合,切断される。
【0063】
本変形例では、ハイギヤ段を形成する遊転ギヤ11Ha及び固定ギヤ15H′がケーシング1Cの左側面寄りに配置され、ジェネレータ軸14の固定ギヤ14aと常時噛合する固定ギヤ11aが右側面寄りに配置される。また、ハイ側クラッチ30H′は遊転ギヤ11Haの右側に介装され、このクラッチ30H′と固定ギヤ11aとの間にローギヤ段を形成する固定ギヤ11L及び遊転ギヤ15Laが配置される。一方、ロー側クラッチ30L′は、遊転ギヤ15Laの左側に介装され、幅方向においてハイ側クラッチ30H′と重なる位置に介装される。
【0064】
したがって、本変形例に係るトランスアクスル1であっても、ハイギヤ段がローギヤ段に対しデフ18の逆側に配置されていることから、上述した実施形態の(1)の効果を得ることができる。また、本変形例では、ハイ側の遊転ギヤ11Haとロー側の遊転ギヤ15Laとが異なる軸上に配置されるとともに、それぞれの遊転ギヤ11Ha,15Laと同軸上の二つのクラッチ30H′,30L′が、幅方向において互いに重なる位置に介装される。このため、トランスアクスル1の軸方向寸法(全長)を短縮することができ、トランスアクスル1のコンパクト化を図ることができる。
【0065】
[4−5.第五変形例]
図9に示すように、第五変形例に係るトランスアクスル1は、第三変形例(図7),第四変形例(図8)のものと比較して、切替機構が有する二つのクラッチ30H′,30L及び遊転ギヤ11Ha,11Laがいずれも入力軸11に設けられる点で異なる。すなわち、本変形例では、入力軸11上であってケーシング1Cの右側面寄りに設けられた固定ギヤ11aの左側にローギヤ段(遊転ギヤ11La,固定ギヤ15L′)が配置され、遊転ギヤ11Laの左側にロー側クラッチ30Lが介装される。また、ローギヤ段の左側にハイギヤ段(遊転ギヤ11Ha,固定ギヤ15H′)が配置され、遊転ギヤ11Haの左側にハイ側クラッチ30H′が介装される。
【0066】
本変形例では、ハイ側及びロー側のクラッチ30H′,30Lの被駆動側の各係合要素32H′,32Lが、遊転ギヤ11Ha,11Laの左側にそれぞれ固定される。なお、これらの係合要素32H′,32Lが、第三,第四変形例と同様に、遊転ギヤ11Ha,11Laの右側に固定されていてもよい。このような構成であっても、上述した実施形態の(1)の効果を得ることができる。
【0067】
[4−6.第六変形例]
図10に示すように、第六変形例に係るトランスアクスル1は、第五変形例(図9)のものと比較して、切替機構が有する二つのクラッチ30H,30L′及び遊転ギヤ15Ha,15Laがいずれも第一カウンタ軸15に設けられる点で異なる。すなわち、本変形例では、入力軸11上であってケーシング1Cの右側面寄りに設けられた固定ギヤ11aの左側にローギヤ段(固定ギヤ11L,遊転ギヤ15La)が配置され、ローギヤ段の左側にハイギヤ段(固定ギヤ11H,遊転ギヤ15Ha)が配置される。各クラッチ30H,30L′は、遊転ギヤ15Ha,15Laの左側に介装される。このような構成であっても、上述した実施形態の(1)の効果を得ることができる。
【0068】
[4−7.第七変形例]
図11に示すように、第七変形例に係るトランスアクスル1は、第五変形例(図9)のものと比較して、遊転ギヤ11Hb,11Lbに対する各クラッチ40H,40Lの位置が異なる。本変形例では、遊転ギヤ11Hb,11Lbの内径が、上記の実施形態や第一〜第六変形例のものと比較して大きく形成されており、各遊転ギヤ11Hb,11Lbの径方向内側(以下「内側」という)にクラッチ40H,40Lがそれぞれ配置される。
【0069】
本変形例の切替機構も、エンジン2の動力の断接状態を制御するとともにハイギヤ段とローギヤ段とを切り替えるものであり、いずれも多板式クラッチで構成されたハイ側クラッチ40Hとロー側クラッチ40Lとを有する。ハイ側クラッチ40Hは、入力軸11に固定された駆動側の係合要素41Hと、ハイギヤ段を形成する遊転ギヤ11Hbの内側に固定された被駆動側の係合要素42Hとを有する。また、ロー側クラッチ40Lは、入力軸11に固定された駆動側の係合要素41Lと、ローギヤ段を形成する遊転ギヤ11Lbの内側に固定された被駆動側の係合要素42Lとを有する。これらの係合要素41H,42H,41L,42Lは、上述した他の変形例と同様に、油圧に応じて係合,切断される。
【0070】
したがって、本変形例に係るトランスアクスル1であっても、上述した実施形態の(1)の効果を得ることができる。また、本変形例の構成によれば、遊転ギヤ11Hb,11Lbの内側にクラッチ40H,40Lを設けることから、軸方向寸法を短縮することができ、トランスアクスル1のコンパクト化を図ることができる。
【0071】
[4−8.第八変形例]
図12に示すように、第八変形例に係るトランスアクスル1は、第七変形例(図11)のものと比較して、遊転ギヤ15Hb,15Lb及びクラッチ40H′,40L′の配置が異なる。本変形例では、遊転ギヤ15Hb,15Lbがいずれも第一カウンタ軸15に設けられるとともに、これらの遊転ギヤ15Hb,15Lbの内側にクラッチ40H′,40L′がそれぞれ配置される。
【0072】
ハイ側クラッチ40H′は、ハイギヤ段を形成する遊転ギヤ15Hbの内側に固定された駆動側の係合要素41H′と、第一カウンタ軸15に固定された被駆動側の係合要素42H′とを有する。また、ロー側クラッチ40L′は、ローギヤ段を形成する遊転ギヤ15Lbの内側に固定された駆動側の係合要素41L′と、第一カウンタ軸15に固定された被駆動側の係合要素42L′とを有する。これらの係合要素41H′,42H′,41L′,42L′は、上述した他の変形例と同様に、油圧に応じて係合,切断される。このような構成であっても、上述した第七変形例と同様の効果を得ることができる。
【0073】
[5.その他]
以上、本発明の実施形態及び変形例を説明したが、本発明は上述した実施形態等に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形することが可能である。
例えば、上述した各変形例のトランスアクスル1には断接機構が設けられるが、上述した実施形態のように断接機構が設けられていなくてもよい。また、パーキングギヤ19の位置は特に限られず、適宜設定可能である。
【0074】
上述した切替機構はいずれも、ハイ側クラッチとロー側クラッチとを有しているが、クラッチの代わりにスリーブや遊星ギヤ等を用いてハイギヤ段とローギヤ段とを切替可能な構成を設けてもよい。
また、トランスアクスル1に対するエンジン2,モータ3,ジェネレータ4,ポンプ5の相対位置は上述したものに限らない。これらの相対位置に応じて、トランスアクスル1内の六つの軸11〜16の配置を設定すればよい。また、トランスアクスル1内の各軸に設けられるギヤの配置も一例であって、上述したものに限られない。
【符号の説明】
【0075】
1 トランスアクスル(トランスアクスル装置)
1C ケーシング
1D 筒状部
2 エンジン
2a クランクシャフト(回転軸)
3 モータ(電動機,第一の回転電機)
4 ジェネレータ(発電機,第二の回転電機)
4a 回転軸
8 駆動輪
10 車両
11 入力軸
11b ギヤ
12 出力軸
14 ジェネレータ軸(第二の回転電機軸)
15 第一カウンタ軸(カウンタ軸)
18 デフ(デファレンシャルギヤ)
20,20′ 切替機構
30H,30H′,40H,40H′ ハイ側クラッチ(切替機構)
30L,30L′,40L,40L′ ロー側クラッチ(切替機構)
51 第一経路(動力伝達経路)
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