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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-222269(P2017-222269A)
(43)【公開日】2017年12月21日
(54)【発明の名称】車両のカウル構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/08 20060101AFI20171124BHJP
   B60R 11/02 20060101ALI20171124BHJP
   B60R 21/34 20110101ALI20171124BHJP
【FI】
   B62D25/08 H
   B60R11/02 Z
   B60R21/34 691
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-119045(P2016-119045)
(22)【出願日】2016年6月15日
(71)【出願人】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100174366
【弁理士】
【氏名又は名称】相原 史郎
(72)【発明者】
【氏名】中村 真也
(72)【発明者】
【氏名】荒木 満
(72)【発明者】
【氏名】森 浩二
(72)【発明者】
【氏名】川野 慎吾
(72)【発明者】
【氏名】堀内 正直
【テーマコード(参考)】
3D020
3D203
【Fターム(参考)】
3D020BA20
3D020BB01
3D020BC02
3D020BD05
3D203AA02
3D203BB38
3D203CA23
3D203CA30
3D203CA35
3D203CA38
3D203CA43
3D203CA57
(57)【要約】      (修正有)
【課題】本発明は、通常時のノイズ、振動の対策と、車両前部が歩行者に衝突したときの歩行者保護性能とを両立させる車両のカウル構造を提供する。
【解決手段】本発明は、フロントウインドパネルの下端部に設けられ、一端側にフロントウインドパネルを支持する支持部11を有し、他端部が車室内へ延びるカウルアッパパネル7を有するカウルと、カウルアッパパネルの支持部と他端部の間のパネル部分8に車幅方向に形成され、下方への変形を誘発させる脆弱部13と、車両前部と歩行者の衝突を検出する歩行者検出手段と、歩行者検出手段が車両前部と歩行者の衝突を検出したとき、カウルアッパパネルを下方へ引っ張り、当該カウルアッパパネルを脆弱部を基点に凹ませるアクチュエータ15を有し、アクチュエータの引っ張りによってカウルアッパパネルに、フロントウインドパネルのパネル面と交差する方向に折畳み変形可能な谷形の凹み部35を形成する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のフロントウインドパネルの下端部に沿って設けられ、一端側に前記フロントウインドパネルを支持する支持部を有し、他端部が車室内へ延びるカウルアッパパネルを有して構成されるカウルと、
前記カウルアッパパネルの前記支持部と前記他端部の間のパネル部分に車幅方向に沿って形成され、下方への変形を誘発させる脆弱部と、
前記車両の前部と歩行者との衝突を検出する歩行者検出手段と、
前記歩行者検出手段が前記車両の前部と歩行者との衝突を検出したとき、前記カウルアッパパネルを下方へ引っ張り、当該カウルアッパパネルを前記脆弱部を基点に凹ませるアクチュエータとを有し、
前記アクチュエータの引っ張りによって前記カウルアッパパネルに、前記フロントウインドパネルのパネル面と交差する方向に折畳み変形可能な谷形の凹み部を形成する
ことを特徴とする車両のカウル構造。
【請求項2】
車両のフロントウインドパネルの下端部に沿って設けられた一端側に前記フロントウインドパネルを支持する支持部を有し、他端部が車室内へ延びるカウルアッパパネルと、前記カウルアッパパネルの他端部に連結されたカウルロアパネルと、前記カウルアッパパネルと前記カウルロアパネルとの間に掛け渡されたバルクヘッドとを有して構成されるカウルと、
前記カウルアッパパネルの前記支持部と前記他端部の間のパネル部分と、前記バルクヘッドとにそれぞれ車幅方向に沿って形成され、下方への変形を誘発させる脆弱部と、
前記車両の前部と歩行者との衝突を検出する歩行者検出手段と、
前記歩行者検出手段が前記車両の前部と歩行者との衝突を検出したとき、前記カウルアッパパネルおよび前記バルクヘッドのうちの少なくとも一方を下方へ引っ張り、前記カウルアッパパネルを前記脆弱部を基点に凹ませるアクチュエータとを有し、
前記アクチュエータの引っ張りによって前記カウルアッパパネルに、前記フロントウインドパネルのパネル面と交差する方向に折畳み変形可能な谷形の凹み部を形成する
ことを特徴とする車両のカウル構造。
【請求項3】
前記谷形の凹み部は、前記アクチュエータにより、前記脆弱部を境界とした支持部側のカウルアッパパネル部分が、前記フロントウインドパネルのパネル面に対し所定に起立した姿勢に屈曲されることによって、
当該支持部側のカウルアッパパネル部分と、反対側となる前記車室内側のカウルアッパパネル部分とが折畳み変形可能な谷形をなすものである
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両のカウル構造。
【請求項4】
前記脆弱部は、前記カウルの車幅方向に渡り連続して設けられることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の車両のカウル構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両前部と歩行者とが衝突したとき、フロントウインドパネル下部へ加わる衝撃エネルギーを吸収する車両のカウル構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車(車両)の前部に歩行者が衝突すると、歩行者は自動車のフロンウインド側へ倒れることがある。この歩行者を保護するため、自動車のフロントウインド側のカウルを構成するカウルアッパパネルには、車両前部が歩行者に衝突したとき、フロントウインドパネル下部に加わる衝撃エネルギーを吸収し、歩行者を保護する構造が設けられる。
多くは特許文献1に開示されているように、カウルアッパパネルの一部に断面L形の屈曲部を形成した構造が採用される。これにより、フロントウインドパネルの下部へ衝撃が加わると、フロントウインドパネルを支持するカウルアッパパネルが屈曲部から車両前後方向に折畳まれ(Z形)、加わる衝撃エネルギーが同折畳み変形によって吸収される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−173443号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、自動車(車両)では、走行時のNV対策、すなわち走行時におけるノイズや振動の発生をできるだけ抑えることが求められる。
ところが、特許文献1のように歩行者保護性能を向上させるために、カウルアッパパネルに衝撃吸収用の屈曲部を設けると、屈曲部自身が応力の集中しやすい部位となるため、カウルアッパパネルの剛性が低下しやすくなり、車両走行時、屈曲部からノイズ、振動が発生しやすくなる。
【0005】
このノイズ、振動の対策には、カウルアッパパネルに屈曲部を設けない、ことが好ましい。しかし、カウルアッパパネルに衝撃吸収用の屈曲部を設けなかった場合、車両前部が歩行者に衝突したとき、衝突エネルギーを吸収することができず、歩行者保護性能が低下することになる。
そこで、本発明の目的は、通常時のノイズ、振動の対策と、車両前部が歩行者に衝突したときの歩行者保護性能とを両立させる車両のカウル構造を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の態様は、車両のフロントウインドパネルの下端部に沿って設けられ、一端側にフロントウインドパネルを支持する支持部を有し、他端部が車室内へ延びるカウルアッパパネルを有して構成されるカウルと、カウルアッパパネルの支持部と他端部の間のパネル部分に車幅方向に沿って形成され、下方への変形を誘発させる脆弱部と、車両の前部と歩行者との衝突を検出する歩行者検出手段と、歩行者検出手段が車両の前部と歩行者との衝突を検出したとき、カウルアッパパネルを下方へ引っ張り、当該カウルアッパパネルの脆弱部を基点に凹ませるアクチュエータとを有し、アクチュエータの引っ張りによってカウルアッパパネルに、フロントウインドパネルのパネル面と交差する方向に折畳み変形可能な谷形の凹み部を形成するものとした。
【発明の効果】
【0007】
本発明のカウル構造によれば、カウルアッパパネルは、通常時に屈曲部を形成することなく、車両前部と歩行者とが衝突したときに、フロントウインドパネルの下部から加わる衝撃に備えて、谷形の凹み部を形成することができる。
これにより、通常時におけるノイズ、振動の問題は解消されるうえ、車両前部と歩行者とが衝突したときには、フロントウインドパネル下部へ加わる衝撃を吸収できる体制が整う。このため、車両前部が歩行者に衝突し、フロントウインドパネル下部へ衝撃が加わることになっても、凹み部での折畳み変形により、フロントウインドパネル下部に加わる衝撃エネルギーを効果的に吸収し、歩行者を保護することができる。
【0008】
それ故、困難とされるノイズ、振動の対策と歩行者保護性能とを両立させることができる。しかも、歩行者(人)以外の衝突物に衝突した際は、カウルには凹み部は形成されることはないので、歩行者(人)以外の衝突部の軽衝突時には不要にカウルを交換することはなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の第1の実施形態に係る態様となる車両のカウル構造を制御ブロックと共に示す斜視図。
図2】同カウル構造において、車両前部と歩行者とが衝突したときのカウルアッパパネルに凹み部が形成されるときから、フロントウインドパネルに加わる衝撃エネルギーを吸収するまでを説明する断面図。
図3】本発明の第2の実施形態に係る態様となる車両のカウル構造を示す斜視図。
図4】同カウル構造において、車両前部と歩行者とが衝突したときのカウルアッパパネルに凹み部が形成されるときから、フロントウインドパネルに加わる衝撃エネルギーを吸収するまでを説明する断面図。
図5】本発明の第3の実施形態に係る態様となる車両のカウル構造を、車両前部と歩行者とが衝突したときのカウルアッパパネルに凹み部が形成されるときから、フロントウインドパネルに加わる衝撃エネルギーを吸収するまでの状態と共に示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を図1から図6に示す第1の実施形態にもとづいて説明する。
図1は自動車(車両)のフロント側のカウル構造を示し、図2は自動車の前部(以下、車両前部という)と歩行者(図示しない)とが衝突したときのカウル構造における断面の変化を時系列的に示している。なお、図1中の矢印Xは自動車(車両)の前後方向、矢印Yは自動車(車両)の車幅(左右)方向、矢印Zは自動車(車両)の上下方向をそれぞれ示している。
【0011】
図1(a)を説明すると、図中1は車両フロント側に後傾して配置されたフロントウインドパネル(ガラスパネルなどで構成)、3はダッシュパネルである。ダッシュパネル3は、上下方向に沿って配置され、車両前部に有するパワーユニットルーム4a(エンジンなどを収容する領域)と車両中央部に有する車室内4bとの間を仕切る。
ダッシュパネル3の上端部には、フロントウインドパネル1の下端部(車幅方向全域)に沿ってカウル5が設けられている。カウル5は、最上部にカウルアッパパネル7を有して構成された部品、例えば鋼板製の部品でなる。ここでは、例えばカウル5は、横方向に沿って延びる最上部のカウルアッパパネル7と、このカウルアッパパネル7の車室内4b端から下方へ延びるカウルロアパネル9とを有して構成された部品が用いられている。ちなみに、カウルアッパパネル7、カウルロアパネル9は、フロントウインドパネル1の下端部(車幅方向全域)に沿って延在する。
【0012】
具体的には図1(b)にも示されるようにカウルアッパパネル7は、一端部がフロントウインドパネル1の下端部へ延び、他端部が車室内4b側へ延びるパネル部材(鋼板)で構成される。そして、カウルアッパパネル7の他端部に形成されたフランジ部7aとカウルロアパネル9の上端部に形成されたフランジ部9aとが接合され、カウルロアパネル9の下端部に形成されたフランジ部9bとダッシュパネル3の上端部に形成されたフランジ部3aとが接合され、パワーユニットルーム4aと車室内4bとの間を仕切っている。またカウルアッパパネル7の一端側には、上方へ隆起した台部分でなるウインド支持部11(本願の支持部に相当)が設けられ、同ウインド支持部11にて、後傾したフロントウインドパネル1の下端部を下側から支持している。ちなみにフロントウインドパネル1の下端部は、図示はしないが接着材などでウインド支持部11に取着される。
【0013】
このカウル5には、フロントウインドパネル1の下部に歩行者が衝突する場合に備えて、カウルアッパパネル7に歩行者保護用の衝撃吸収構造を形成する手段が講じられている。
同手段は、図1(a),(b)に示されるようにカウルアッパパネル7の、ウインド支持部11とフランジ部7a(カウルアッパパネル7の他端部に相当)との間のパネル部分8に設けたノッチ部13と、ノッチ部13から同カウルアッパパネル7のパネル部分8を下方へ引き込むアクチュエータ15と、車両前部と歩行者とが衝突したときアクチュエータ15を作動させるアクチュエータ制御部17とを組み合わせて構成される。
【0014】
具体的にはノッチ部13は、例えばウインド支持部11とフランジ部7a間のパネル部分8の中間部裏面に、カウル5の車幅方向に沿ってV形の切欠部を形成してなる。ノッチ部13は、カウル5の車幅方向の全域に渡り連続して設けられる。図1(b)では一部しか図示していない。このノッチ部13が形成されるパネル部分8の部位は、他のパネル部分よりも強度が弱い、脆弱な部分となる。つまり、カウルアッパパネル7には、ノッチ部13を基点にパネル部分8の下方への変形を誘発する脆弱部が形成される。
【0015】
アクチュエータ15は、例えば図1および図2に示されるように、カウルアッパパネル7の車幅方向中央下側に設置されたガス作動式のピストンユニット19と、同ピストンユニット19の生ずる変位をカウルアッパパネル7のノッチ部13(脆弱部)へ伝える伝達部材、例えばワイヤー部材21とを有して構成される。
すなわち、ピストンユニット19は、ピストン23aを往復動可能に収めた筒形のシリンダ23と、ガスを発生させるインフレータ25とを一体化して構成される。ちなみにピストン23aは、常態時のとき伸長位置に有る。シリンダ23は、ピストン23aから延びた作動杆22の端部を上部に向け、さらにシリンダ23全体を後傾させて設置される。さらに述べれば作動杆22の端部は、ノッチ部13へ近づく方向へ延び、延出端にはノッチ部13にならって車幅方向両側へ延びる中継杆27が設けられている。つまり中継杆27は、ノッチ部13の下側(直下)で並行に配置される。そして、例えばノッチ部13における複数個所、例えば所定間隔で規定された複数の位置と、同位置の直下に配置される中継杆27の各位置との間が、それぞれ複数本のワイヤー部材21で連結されている。これら各部で構成される伝達部により、ピストン23aの収縮方向(下方方向)の変位が、カウルアッパパネル7のノッチ部13(脆弱部)へ伝えられる構造となっている。
【0016】
またインフレータ25は、ピストン収縮側のシリンダ室24(図2)へ発生ガスが送り込まれるようシリンダ23に組み付けてある。これにより、インフレータ25の作動によりガスが発生すると、ピストン23aが収縮方向へ変位され、ノッチ部13が各地点から下方へ引っ張られる。この引っ張りにより、ノッチ部13を基点にカウルアッパパネル7のパネル部分8全体(ウインド支持部11とフランジ部7a間)は、下側へ屈曲され、当該パネル部分8に谷形の凹み部35が形成されるようにしている。
【0017】
特にカウルアッパパネル7のパネル部分8は、ピストン23aおよび中継杆27の後傾姿勢や、ピストン23aの変位量などの設定によって、所定の谷形形状に屈曲されるようにしている。これには、後傾したピストン23aの姿勢やピストン23aの変位量などの設定から、ノッチ部13を境界としたウインド支持部11側のパネル部分8aが、フロントウインドパネル1のパネル面に対して所定の起立した姿勢(例えばL形姿勢:パネル面と直交する向き)まで屈曲されることによって、折畳み変形可能な谷形の凹み部35を得る技術が用いられている。すなわち、パネル部分8aがL形に屈曲されると、ノッチ部13を境界にウインド支持部11側のパネル部分8aと反対側となる車室内4b側のパネル部分8bとが重なり合う方向に折畳み変形が可能(Z形変形)な谷形をなす。つまり、谷形の凹み部35は、フロントウインドパネル1のパネル面と交差する方向から折畳み変形(Z形変形)可能な谷形となる。ちなみに、Z形の変形(折畳み)は、フロントウインドパネル1の下部に衝撃が加わる場合(フロントウインドパネル1の下部に歩行者が衝突する場合)に有効なものとされる(衝撃エネルギーが十分に吸収されるため)。
【0018】
一方、アクチュエータ制御部17は、フロントウインドパネル1に衝撃が加わることが懸念される車両前部と歩行者とが衝突するときに、カウルアッパパネル7のパネル部分8を凹ませる制御を実施するものである。
例えばアクチュエータ制御部17は、車両に搭載されたECU31(例えばマイクロコンピュータなどから構成)と、車両前部と歩行者との衝突を検出する歩行者検出部16(本願の歩行者検出手段に相当)とを有して構成される。ECU31にインフレータ25は接続される。
【0019】
歩行者検出部16は、例えば、車両のフロントバンパ(図示しない)に設けた衝突センサ33と、車両の前部に設けた車両前方を撮像するカメラ装置34とを併用して、車両前部にどのような衝突物が衝突したのかを捉え、ECU31に設定された歩行者判定部32にて、カメラ装置33で撮像した画像情報から衝突物が歩行者と判定する構成が用いられる。つまり、衝突センサ33、カメラ装置34、ECU31にて、車両前部と歩行者とが衝突したことが検出される構成となっている。
【0020】
ECU31には、車両前部と歩行者とが衝突したと判定されると、インフレータ25を作動させる機能が設定されている。つまり、車両前部と歩行者とが衝突したときに、歩行者の保護に備えて、平坦状のカウルアッパパネル7のパネル部分8に、フロントウインドパネル1のパネル面と交差する方向から折畳み変形可能とした谷形の凹み部35が形成される構成となっている。
【0021】
なお、図1および図2中の符号37は、ピストン23aの作動杆22をガイドするガイドローラを示している。
つぎに、図2を参照して、このように構成されたカウル構造の作用を説明する。
車両前部で衝突が生じたとする。すると、衝突センサ33により同衝突が検出され、カメラ装置34により、車両前部に何が衝突したのかが検出される。この衝突センサ33からの衝突信号と共に、カメラ装置34から出力された画像情報がECU31に入力される。ついで、ECU31の歩行者判定部32(例えば画像処理による)にて、車両前部に衝突した衝突物が、歩行者(人)か、それ以外の衝突物かの判定が行われる。
【0022】
歩行者判定部32にて衝突物が歩行者と判定された場合は、ECU31からアクチュエータ15を作動させる信号が出力される。これにより、インフレータ25は作動し、ガスを発生する。この発生ガスがシリンダ23のシリンダ室24(伸縮側)へ送り込まれ、待機状態のピストン23aを収縮方向へ変位させる。
すると、図2(a)中の矢印で示されるようにピストン23aの収縮方向の変位は、中継杆27および複数本のワイヤー部材21を介して、カウルアッパパネル7のパネル部分8(ウインド支持部11とフランジ部7a間)に伝わり、同パネル部分8の車幅方向各部を下方へ引っ張る。これにより、パネル部分8は歪み、図2(b)に示されるようにパネル部分8には、ノッチ部13を基点に谷形に屈曲した凹み部35が形成される。詳しくはウインド支持部11側のパネル部分8aは、ノッチ部13を基点にフロントウインドパネル1のパネル面に対して起立するよう屈曲、具体的にはフロントウインドパネル1のパネル面と直交する姿勢となるL形まで屈曲される。また反対側のパネル部分8bは、パネル部分8aの屈曲に追従して屈曲され、パネル部分8aの全体に、当該パネル部分8a,8bを斜面とした谷形の凹み部35が形成される。
【0023】
この谷形の凹み部35は、ウインド支持部11側のパネル部分8aがフロントウインドパネル1のパネル面に対し起立する向き(例えばフロントウインドパネル1のパネル面と直交する向きからフロント側へ若干、寄る向きの範囲)で屈曲されるため、フロントウインドパネル下部のパネル面から衝撃が加わる場合、衝撃の加わるフロントウインドパネル1のパネル面と交差する方向から折畳み変形が可能となる。具体的には図2(c)の如く谷形の凹み部35は、ノッチ部13を基点にウインド支持部11側のパネル部分8aが、反対側のパネル部分8bに対して折畳まれる方向に変形可能となる。
【0024】
こうした一連の挙動から、当初は平坦状であったカウルアッパパネル7は、フロントウインドパネル1から衝撃が加わる場合に備えて、車両前部と歩行者との衝突時、衝撃吸収構造を構成する折畳み変形可能な凹み部35が形成される。これにより、フロントウインドパネル下部へ加わる衝撃エネルギーを効果的に吸収できる体制が整う。
この凹み部35により、歩行者がフロントウインドパネル1の下部に衝突した場合、凹み部35の変形によって、歩行者の保護が行える。
【0025】
すなわち、例えば図2(c)のように歩行者の頭部の代わりに前方からインパクタ38がフロントウインドパネル1の下端側に衝突した場合を想定すると、凹み部35のウインド支持部11側のパネル部分8aは、ノッチ部13を基点として、車室内4b側へ屈曲しながら、反対側のパネル部分8b(車室内4b側)と重なり合うよう折畳まれる。つまり、Z形に変形する。Z形変形は、衝撃エネルギーの吸収には効果的である。このため凹み部35の折畳み変形により、加わる衝撃エネルギーは十分に吸収される。これにより、歩行者の頭部は保護される。
【0026】
またECU31の歩行者判定部32にて、衝突物が人(歩行者)以外と判定された場合は、インフレータ25は作動しない。つまり、カウルアッパパネル7(カウル)には凹み部35は形成されない。
以上のようにカウルアッパパネル7は、通常時は屈曲部がなく、フロントウインドパネル側から衝撃が加わることが懸念される場合(車両前部と歩行者との衝突時)に、谷形の凹み部35が形成されるので、通常時(走行時)における屈曲部を要因としたノイズ、振動の問題は解消できる。しかも、車両前部と歩行者との衝突時は、凹み部35の形成によりフロントウインドパネル下部へ加わる衝撃エネルギーが吸収可能な体制が整うため、車両前部が歩行者に衝突し、フロントウインドパネル下部に衝撃が加わることになっても、凹み部35の折畳み変形によって衝撃エネルギーを効果的に吸収し、歩行者を保護することができる。
【0027】
それ故、困難とされるノイズ、振動の対策と歩行者保護性能とを両立させることができる。しかも、衝突物が歩行者と判定したときのみに、凹み部35(屈曲部)を形成するようにしたので、歩行者(人)以外の衝突物に衝突した際は、カウルアッパパネル7に凹み部35(屈曲部)に形成することはない。このため、歩行者(人)以外の衝突物と衝突するような軽衝突時にはカウル5を交換することはなく、不要なカウル5の交換がなくなる。
【0028】
そのうえ、谷形の凹み部35は、ノッチ部13を境界としたウインド支持部11側のパネル部分8aをフロントウインドパネル1のパネル面に対し所定に起立した姿勢に屈曲させて、ウインド支持部11側のパネル部分8aと、反対側のパネル部分8bと折畳み変形可能にしてあるので、簡単に、衝撃エネルギーの吸収性に優れた構造とすることができる。
【0029】
加えて、ノッチ部13は、カウル5の車幅方向全体に渡り連続して形成したので、どのようにフロントウインドパネル1の下部へ衝撃が加わる場合に対しても、同一の凹み部35で対応できる。
図3および図4は、本発明の第2の実施形態を示す。
本実施形態は、第1の実施形態とは異なり、カウルアッパパネル7と、カウルロアパネル9と、カウルアッパパネル7の裏面部とカウルロアパネル9の側面部との間に掛け渡した板金製のバルクヘッド10で構成されるカウル5に、本発明を適用したものである。ちなみにカウル5は、カウルアッパパネル7、カウルロアパネル9、カウルアッパパネル7で囲まれる部位が閉空間となる構造なので、剛性の高い部品となる。ここでは、逆J形のバルクヘッド10は、ウインド支持部11からノッチ部13寄りの地点とカウルロアパネル9の上段部との間を連結している例を挙げている。
【0030】
第1の実施形態と異なる部位について説明すると、本実施形態では、図3(a),(b)に示されるようにノッチ部13(脆弱部に相当)は、カウルアッパパネル7だけでなく、バルクヘッド10の中間部(例えば屈曲部の有る地点)にも同様に形成され、カウルアッパパネル7のパネル部分8とバルクヘッド10との両者に対して、下方への変形を誘発させる構造としている。
【0031】
ピストンユニット19(本願のアクチュエータに相当)のピストン23aに続く中継杆27には、ワイヤーでなく、例えば中継杆27と一体な複数の連結杆40が設けられている。各連結杆40の端部は、バルクヘッド10のノッチ部13aへ向かって延びている。そして、各延出端がノッチ部13aの複数個所に連結され、バルクヘッド10にピストン23aの変位を伝える構造にしている。これにより、カウルアッパパネル7およびバルクヘッド10のうちの一方、ここではバルクヘッド10を下方へ引っ張ることで、カウルアッパパネル7のパネル部分8を、ノッチ部13を基点に谷形に凹ませる。
【0032】
また所定の谷形形状にパネル部分8を屈曲させるため、ピストン23a、中継杆27および連結杆40といった各部の姿勢や、ピストン23aの変位量やバルクヘッド10との連結位置など各部が設定されている。これにより、図4(a),(b)に示されるように車両前部に歩行者が衝突するときに、ウインド支持部11側のパネル部分8aが、第1の実施形態と同様、フロントウインドパネル1のパネル面に対して所定の起立した姿勢(例えばL形姿勢:パネル面と直交する向き)まで屈曲され、パネル部分8に折畳み変形可能な谷形の凹み部35が形成される。
【0033】
このように閉断面カウル5のカウルアッパパネル7のパネル部分8に、車両前部と歩行者との衝突時、谷形の凹み部35が形成するようにしても、第1の実施形態と同様、フロントウインドパネル1から衝撃が加わることが懸念されるときだけ、フロントウインドパネル下部へ加わる衝撃エネルギーが吸収可能な体制が整う。
したがって、図4(c)のように、車両前部に歩行者が衝突してフロントウインドパネル下部に衝撃が加わる場合、凹み部35の折畳み変形によって、加わる衝撃エネルギーを効果的に吸収し、歩行者を保護することができる。これにより、第1の実施形態と同様、ノイズ、振動の対策と歩行者保護性能とを両立させることができる。
【0034】
むろん、図示はしないがピストンユニット19(本願のアクチュエータに相当)のピストン23aの変位を、直接、カウルアッパパネル7に伝えて、カウルアッパパネル7のパネル部分8を谷形に屈曲させて、谷形の凹み部35を形成するようにしても構わない。
但し、図3および図4において、第1の実施形態と同じ部分には同一符号を付してその説明を省略した。
【0035】
図5は、本発明の第3の実施形態を示す。
本実施形態は、第2の実施形態の変形例で、ピストンユニット19(本願のアクチュエータに相当)のピストン23aの変位を、カウルアッパパネル7のパネル部分8とバルクヘッド10の中間部との双方に伝えて、第2の実施形態と同様、カウルアッパパネル7のパネル部分8の屈曲により、谷形の凹み部35を形成するようにしたものである。
【0036】
本実施形態では、カウルアッパパネル7とバルクヘッド10との双方が下方へ引っ張られるよう、第2の実施形態の連結杆に代えて、ピストン23aに続く中継杆27から二股に分かれて、カウルアッパパネル7のノッチ部13とバルクヘッド10のノッチ部13aに至るワイヤー部材41を用いている。
第3の実施形態の場合、図5に示されるようバルクヘッド10は、ウインド支持部11の裏面(カウルアッパパネル7)に連結してある。
【0037】
こうしたカウルアッパパネル7とバルクヘッド10との双方を下方へ引っ張る構造でも、第1の実施形態と同様の効果を奏する。
但し、図5において、第2の実施形態と同じ部分には同一符号を付してその説明を省略した。
なお、上述した実施形態における各構成およびそれの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨から逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能であることはいうまでもない。また本発明は、上述した実施形態によって限定されることはなく、「特許請求の範囲」によってのみ限定されることはいうまでもない。例えば上述の実施形態では衝突センサとカメラ装置とを用いて、車両前部と歩行者との衝突を検出したが、これに限らず、例えば衝突センサだけを用い、同衝突センサで検出した衝突値から車両前部と歩行者とが衝突したことを判定するようにしてもよく、車両前部と歩行者との衝突を検出する構成は他の構成でも構わない。また例えば上述の実施形態では、アクチュエータとしてガス作動式のピストンユニットを採用した例を挙げたが、これに限らず、他の機器を用いても構わない。
【符号の説明】
【0038】
1 フロントウインドパネル
5 カウル
7 カウルアッパパネル
9カウルロアパネル
10 バルクヘッド
11 ウインド支持部(支持部)
13,13a ノッチ部(脆弱部)
15 アクチュエータ
32,33,34 衝突センサ,カメラ装置,歩行者判定部(歩行者検出手段)
35 凹み部
図1
図2
図3
図4
図5