群管理エレベーターシステムは、エレベーターホールに設けられ、エレベーター利用者が行先階を入力する行先階入力装置500と、複数のエレベーターから、行先階に割り当てるエレベーターを選定する群管理制御システム100と、を備え、行先階入力装置は、所定の情報を表示する表示部を備えるものであって、表示部は、所定の情報を第一の輝度で表示する第一の動作モードと、所定の情報を第一の輝度よりも低い第二の輝度で表示する第二の動作モードと、を有し、群管理制御システムが判定する交通状況に応じて、第一の動作モードおよび第二の動作モードのいずれかが設定される。
エレベーターホールに設けられ、エレベーター利用者が行先階を入力する行先階入力装置と、複数のエレベーターから、前記行先階に割り当てるエレベーターを選定する群管理制御システムと、を備え、前記行先階入力装置は、所定の情報を表示する表示部を備える群管理エレベーターシステムにおいて、
前記表示部は、
所定の情報を第一の輝度で表示する第一の動作モードと、前記所定の情報を前記第一の輝度よりも低い第二の輝度で表示する第二の動作モードと、を有し、
前記群管理制御システムが判定する交通状況に応じて、前記第一の動作モードおよび前記第二の動作モードのいずれかが設定されることを特徴とする群管理エレベーターシステム。
複数の階床に設けられ、エレベーター利用者が行先階を入力する複数の行先階入力装置と、複数のエレベーターから、前記行先階に割り当てるエレベーターを選定する群管理制御システムと、を備え、前記複数の行先階入力装置の各々は、所定の情報を表示する表示部を備える群管理エレベーターシステムにおいて、
前記表示部は、
所定の情報を第一の輝度で表示する第一の動作モードと、前記所定の情報を前記第一の輝度よりも低い第二の輝度で表示する第二の動作モードと、前記所定の情報を前記第二の輝度よりも低い第三の輝度で表示する第三の動作モードと、を有し、
前記群管理制御システムが判定する、前記行先階入力装置が設置される階床の交通状況に応じて、前記第一の動作モード、前記第二の動作モードおよび前記第三の動作モードのいずれかが設定されることを特徴とする群管理エレベーターシステム。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。なお、各図において、参照番号が同一のものは同一の構成要件あるいは類似の機能を備えた構成要件を示している。
【0011】
図1は、本発明の一実施形態である群管理エレベーターシステムの全体構成を示す。
【0012】
図1に示すように、本実施形態の群管理エレベーターシステムは、複数台のエレベーターを個別に制御するエレベーター制御システム210,220,2n0と、エレベーター全体として運行効率が最適となるように各エレベーターの運行を制御する群管理制御システム100とを備えている。また、建物のエントランス階 (出発基準階あるいは移動開始階) のエレベーターホールあるいはその付近には、ホール用の行先階入力装置(以下、「行先階入力装置」と記す)500,510が設置される。これら行先階入力装置500,510は、それぞれ、テンキー方式の行先階入力部501,511、行先階入力情報や割り当てエレベーターを表示する表示部502,512を有し、さらに、セキュリティを強化する場合、つまりエレベーターの使用を特定のエレベーター利用者(以下、「利用者」と記す)に許可してセキュリティ効果を高める場合(500S,510S)、利用者が携帯する機器に格納される個人識別情報や行先階情報などを読取って行先階登録を担う認識部503,513を有する。
【0013】
利用者が携帯する機器としては、カード等のタグであれば、非接触ICカードや、認識部513(例えば、カードリーダ)からの電波をエネルギー源として動作するパッシブ型RFIDを搭載するICタグ(例えば、IDカード)が適用できる。また、携帯電話やスマートフォン(多機能携帯電話)、タブレット端末などの情報端末装置も適用できる。これら機器の通信部としては、ICタグとの近距離無線通信に適用されるNFC(Near Field Communication)インターフェイスや、より多くの情報量を通信できるBluetooth(登録商標)あるいはWi-Fi(登録商標)、3G(3rd Generation)回線、LTE(Long Term Evolution)などのような無線通信プロトコルを有しているものが好ましい。
【0014】
各階のエレベーターホール付近には、行先階入力装置520,5n0が設置される。これら行先階入力装置520,5n0は、それぞれ、テンキー方式の入力装置521,5n1、行先階入力情報や割り当てエレベーターを表示する表示部522,5n2を有し、さらに、セキュリティ効果を高める場合(520S,5n0S)には認識部523,5n3を有する。
【0015】
入出力メイン処理装置400は、行先階入力装置と接続され、群管理制御システム100と行先階入力装置との間におけるデータの入出力を制御する。IDカードに個人識別情報が格納される場合、入出力メイン処理装置400は、予めエレベーター使用を許可された利用者の個人識別情報が登録された個人認証用のデータベースを備え、行先階入力装置の認識部で読み取られる個人識別情報とデータベースを照合することによって、エレベーター使用が許可された利用者であるか否かを判定する。このとき、データベースに、個人識別情報に対応させて行先階情報が登録されていれば、入出力メイン処理装置400は、エレベーター使用が許可された者であると判定すると、個人識別情報に対応する行先階情報を群管理制御システム100に送信する。これにより、セキュリティを確保しつつ、個人毎に行先階が自動登録される。あるいは、入出力メイン処理装置400は、エレベーター使用が許可された利用者であると判定すると、行先階入力装置のテンキーによる行先階情報の入力を許可する。そして、行先階入力装置から入力された行先階情報は、入出力メイン処理装置400から群管理制御システム100に送られて登録される。この場合、行先階を自動登録する場合よりも、個人認証用のデータベースの規模を低減できる。
【0016】
なお、IDカードに、エレベーター使用を許可された者に付与される正規のカードであることを示すカード情報が格納される場合、入出力メイン処理装置400は、行先階入力装置の認識部で読み取られるカード情報に基づき、正規のカードか否かを判断して、正規のカードであると判断したら、行先階入力装置のテンキーによる行先階情報の入力を許可する。そして、行先階入力装置から入力された行先階情報は、入出力メイン処理装置400から群管理制御システムに送られて登録される。これにより、セキュリティが確保される。この場合、IDカードはいわば動作許可カード(入館許可証等)として機能する。このため、個人認証処理における入出力メイン処理装置400の負荷が低減されると共に、大規模な個人認証用データベースを必要としないので入出力メイン処理装置400の構成を簡単化することができる。
【0017】
図1中にエレベーター制御システム210の詳細な構成図を併記する。なお、本構成図は、
図1中、便宜上、エレベーター制御システムとエレベーター間の制御線B1,B2に重ねて記されている。但し、制御線B1,B2は、中断されているように図示されているが、制御線B3と同様に連続している。
【0018】
エレベーター制御システム210,220,2n0は、群管理制御システム100内の運行管理制御系101による制御の下で、自動運転や手動運転等といったエレベーターの運転方式に合った運転を行う運転制御系212と、主に乗りかご310C,320C,3n0Cを昇降するためのモーター制御を行う速度制御系213により、各エレベーターの運行を個別に制御する。また、エレベーター制御システムは、エレベーター毎に、かご内荷重やドアの開閉等の各事象の情報を群管理制御システム100の運行管理制御系101に送信する。群管理運転中、エレベーター制御システム内の運行管理制御系211は動作しない。また、エレベーター制御システムは、エレベーターの乗車前に行先階入力装置によって行先階情報が入力されて登録されると、通常運転中であれば、乗りかご内の操作盤311,321,3n1が備える行先階ボタンの入力を無効とする。
【0019】
群管理制御システム100において、運行管理制御系101は、時々刻々と変化するエレベーター制御システムから送信されるエレベーター情報や行先階情報等の運行データを学習系102へ送信する。送信された運行データに基づいて、学習系102は、交通状況を学習するとともに、既に学習された交通状況と現時点の運行データに基づいて、その時点でどのような運転プログラムが適しているかを判断する。知能系103は、学習系102による学習結果に基づいて、後述する特徴モードを新たに生成すると共に、エレベーター運行シミュレーションを行い、各特徴モードに応じた最適な運転プログラムを自動生成する。運行管理制御系101は、この運転プログラムを用いて、登録された行先階別にどのエレベーターを配車するかを決める割り当て制御を実行し、さらにエレベーター制御システムへ行先階別に割り当て指令を送出する。
【0020】
なお、群管理制御を解除して単独運転を行う場合は、エレベーター制御システムにおける運行管理制御系211によってエレベーターの運行が制御される。このとき、入出力メイン処理装置400は、運行管理制御系211とホール行先階登録装置との間のデータの入出力を制御する。
【0021】
図2は、群管理制御システム100における学習系102の機能ブロック図である。学習系102は、各階の交通需要から、エレベーターの交通量の閑散状態や、夜間における人の乗降が少ない時間帯などを学習・判定する。
【0022】
図2に示すように、かご内乗降人数検出部202は、かご床下に設置される荷重検出装置の出力信号に基づいて乗降人数を検出する。ここで、かご内乗降人数検出部202は、かごが到着し、出発するまでのかご内の荷重変化から乗降人数を検出する。交通状況(交通情報)収集部201は、かご内乗降人数検出部202によって検出される乗降人数を、ブロック内に例示するような単位時間当たりの各階床別、方向(上り、下り)別の交通情報として収集する。このとき、交通状況(交通情報)収集部201は、群管理制御システムに登録される行先階情報203を適宜用いて、階床別に交通情報の収集を行う。
【0023】
なお、かご内乗降人数検出部202は、ホール呼び数(行先階入力装置の操作回数)およびかご呼び数(行先階登録回数)に基づいて乗降人数を検出したり、乗りかご内の乗客の画像情報に基づいて乗降人数を検出したりしても良い。
【0024】
ビル内の人の流れは、階床および方向によって変化し、一般に複雑な分布を持っている。そこで、特徴モード識別部204は、交通状況(交通情報)収集部201によって収集される単位時間当たりの各階床の交通情報が、ビル内におけるエレベーター需要の状況を示す複数の特徴モードのいずれに属するかを識別する。また、特徴モード識別部204は、一日単位で、各特徴モード毎に、収集した交通情報の平均を演算し、この演算結果と前日の演算結果に基づいて、群管理制御システムにおいて記憶されている各特徴モードを示す基準となる交通情報データを更新する。交通情報モード学習部205は、特徴モード識別部204によって更新される交通情報データを、特徴モード(M1,M2,M3,…)毎の交通情報モードとして学習して蓄積する。
【0025】
本実施形態において、特徴モード(M1〜M6)は、上り方向の乗りかごにおける乗降人数と下り方向の乗りかごにおける乗降人数の範囲によって識別される。このような特徴モード識別用データは、特徴モード生成部206に記憶される。上述の特徴モード識別部204は、交通状況(交通情報)収集部201によって収集される単位時間ごとの交通情報を、特徴モード生成部206に記憶する特徴モード識別用データと照合することにより、交通情報が属する特徴モードを識別する。
【0026】
図2中、特徴モード生成部206のブロック内に、特徴モード識別用データの一例を示す。本実施形態における特徴モードM1〜M6は、縦軸および横軸をそれぞれ上りの乗降人数および下りの乗降人数とする座標上において、交通需要の状況が異なる六個の領域に相当する。特徴モードM1,M2,M3,M6は、それぞれ、上り下りともに乗降人数が小さい「閑散」、M1よりも比較的乗降人数が大きな「平常」、上りの乗降人数が大きな「アップピーク」、下りの乗降人数が大きな「ダウンピーク」である。なお、上り下りの乗降人数がピークよりは少ないがどちらも比較的多い交通需要状況は、上りの方が多い特徴モードをM4とし、下りの方が多い特徴モードをM5としている。
【0027】
なお、エレベーターの交通需要状況は、ビル内に入居するテナントの入れ替わりなどにより変化し得る。そこで、特徴モード生成部206は、交通情報モード学習部205に蓄積される交通情報モードデータに基づいて、特徴モードM1〜M6に対応する交通需要状況の変化の傾向を学習して、学習結果に基づいて特徴モード識別用データを修正する機能を有する。また、特徴モード生成部は、交通需要状況の新規特徴を抽出し、特徴モード(Mn)を生成して登録する機能を有する。
【0028】
次に、行先階入力装置の動作について説明する。以下に説明するように、本実施形態において、行先階入力装置は、上記特徴モードがM1すなわち「閑散」である場合において、液晶ディスプレイなどの表示部を省エネ点灯モードで動作させる。これにより、利用者に対するサービスを低下することなく群管理エレベーターシステムの消費電力を低減することができる。
【0029】
図3は、本実施形態における行先階入力装置に対する制御処理の基本フロー図である。
【0030】
行先階入力装置に、群管理制御システムやエレベーター制御システム210,220,2n0から入出力メイン処理装置400を介して運転情報や一般情報を送信する前に、群管理制御システム100の運行管理制御系101は、学習系102の交通情報モード学習部105(
図2)に蓄積されている、基準となる特徴モード別交通情報データを参照して、省エネモードの条件が成立しているか否かを判定する(ステップS301)。この条件とは、交通需要状況の特徴モードがM1すなわち「閑散」となる時間帯であることである。
【0031】
条件が成立していないと判定される場合(S301,NO)、すなわち閑散状態でなければ、運行管理制御系101は、各階に設置される全行先階入力装置に対し、入出力メイン処理装置400を介して通常の点灯表示モードでの表示指令を送信する(ステップS302)。また、条件が成立していると判定される場合(S301,YES)、すなわち閑散状態であれば、運行管理制御系101は、各階における全行先階入力装置に対し、省エネ点灯モード(例えば輝度を一段下げる)での表示指令を同様に送信する(ステップS303)。
【0032】
本実施形態においては、各階床ごとに、
図3に示す制御が実行される。なお、ビル全体として、特徴モードが設定される場合は、全階床に設置される全行先階入力装置に対し、同じ表示指令が送信される。また、エントランス階だけは、顧客の利便性などのために、制御対象外として、常時、通常モードとしても良い。
【0033】
図4は、行先階入力装置の各動作モード(通常モード、省エネモード)での表示例を示す。本表示例では、バックライト付き液晶タッチパネルディスプレイによって構成される表示部の輝度(あるいは光度)を変更することによって、消費電力を低減する。なお、表示部としては、輝度を制御することができるプラズマディスプレイや有機ELディスプレイなどを用いても良い。
【0034】
図4に示すように、行先階入力装置510Sは、通常モード(a)の場合、すなわち通常の点灯表示モードでの表示指令を受信している場合は、バックライトを制御することにより、表示部512の輝度を、標準的な輝度、例えば400カンデラ(国際単位系(SI))程度に設定する。これにより、多くの利用者に対して、所望の情報を鮮明に表示することができる。従って、利用者が情報を容易に確認できるので、行先階入力を迅速に行える。このため、多くの利用者が、効率的に行先階を登録することができる。また、運行情報以外の一般情報(例えば、テナント情報や気象情報など)を表示する場合、利用者が容易に確認することができるので、多くの利用者に情報を報知することができる。
【0035】
また、行先階入力装置510Sは、省エネモード1(b)の場合、すなわち省エネ点灯モードでの表示指令を受信している場合は、バックライトを制御することにより、表示部512の輝度を、通常モード(a)よりも低い、例えば、通常モードの400カンデラの約50%である200カンデラ程度に設定する。これにより、行先階入力装置510Sの消費電力が、通常モードよりも低減する。
【0036】
さらに、行先階入力装置の所定動作時に、例えば省エネモード1(b)が所定時間継続する場合、すなわちエレベーター需要の閑散状態が所定時間以上継続した場合、行先階入力装置510Sは、
図4中の省エネモード(c)のように、表示部512の輝度を、省エネモード1よりも低い、例えば、通常モードの400カンデラの約25%である100カンデラ程度に設定する。これにより、行先階入力装置510Sの消費電力が、省エネモード1よりもさらに低減する。
【0037】
なお、省エネモード1,2における表示部512の輝度の値は、行先階を登録する利用者が行先階入力装置を操作する時に、表示されている情報を十分確認できるような値に設定される。
【0038】
このような省エネ点灯モードでの表示によれば、行先階を登録する少数の利用者に対し、行先階入力装置の操作に関する情報、例えば
図4に示す「画面の下にカードをかざしてください」というような情報や、エレベーターの運行情報を、確実に報知しながらも、行先階入力装置の消費電力を低減することができる。これにより、行先階入力装置の寿命が向上する。なお、省エネ点灯モードにおける消費電力が、定格消費電力よりも低くなるような輝度に設定すれば、より効果的に行先階入力装置を長寿命化できる。
【0039】
図5は、閑散時における行先階入力装置の動作状態の推移の一例を示す。図中、(a),(b),(c),(d),(e),(f)の順に、動作状態が推移する。なお、
図3で説明したように、行先階入力装置には、群管理制御システムから省エネ点灯モードでの表示指令が送信されている。従って、
図5は、行先階入力操作がなされる行先階入力装置の動作を示し、同じ階床に設置されているが入力操作がなされない他の行先階入力装置は、省エネ点灯モードによる待機状態(
図5中(a))が維持される。
【0040】
動作状態(a)では、行先階入力装置510Sは待機状態であり、表示部の光度(輝度)は、通常モードと省エネモード1および省エネモード2(
図4)の内、輝度が最も低い省エネモード2に設定されている。
【0041】
動作状態(b)では、利用者が動作状態(a)における表示部512に表示される情報に従って認識部513にIDカードをかざすと、行先階入力装置510Sは、一時的に表示部512の輝度を通常モードに設定する。これにより、利用者は、容易に行先階入力装置510Sを操作することができる。この時、認識部513から、IDカードへ電波が放射されると、この電波によってIDカードに電力が供給される。この電力によって、IDカードが備えるICタグが動作して、ICタグに格納されるカード情報がIDカードからの反射波に載せられる。
【0042】
認識部513で受信される反射波に載せられているカード情報に基づいて、利用者がエレベーターの使用を許可されている正規の利用者であるか否か、あるいは、IDカードがエレベーターの使用を許可されている者に付与された正規のIDカードであるか否かが判定される。そして、正規の利用者あるいは正規のカードであると判定されると、動作状態(c)に移り、行先階入力操作が可能となる。
【0043】
動作状態(c)では、表示部512の表示が、利用者に対して行先階入力操作が可能であることを示すと共に行先階登録操作を促すために、「行き先階を入力してください」というメッセージに替わる。メッセージに従って、利用者が、テンキーを押して、行き先階、ここでは「5」を入力すると、動作状態(d)へ移る。
【0044】
動作状態(d)では、利用者が入力した行先階(ここでは「5」)が表示部に表示される。これにより、利用者は、入力の正誤を確認できる。テンキー入力が一定時間とだえると行先階入力が完了したと判断され、入力された行き先階情報が群管理制御システム100に伝送され登録される。群管理制御システム100は、登録された行先階に対して最適なエレベーターを割り当てる。そして、群管理制御システム100は、割り当てたエレベーターのエレベーター制御システムに対し、行先階が入力された行先階入力装置が設置されている階床へのかごの配車を指令する。
【0045】
動作状態(e)では、群管理制御システムによって割り当てられたエレベーターの号機番号あるいは号機名称(ここでは、「Lift1」)が表示部512に表示される。これにより、利用者は、乗車するエレベーターを確認することができる。所定時間後、動作状態(f)へ移る。
【0046】
動作状態(f)は、動作状態(b)と同じである。従って、表示部512の輝度は通常モードに設定される。これにより、他の利用者が続けて行き先階を登録する際、表示部を容易に確認することができる。
【0047】
なお、動作状態(f)において、所定時間、行先階入力装置510Sが操作されず、かつ閑散状態が継続している場合、すなわち、いまだ閑散状態にある時間帯であり、群管理制御システムから通常モードによる表示指令が送信されていない場合、行先階入力装置510Sの動作状態は動作状態(a)に戻るようにしても良い。すなわち、表示部512の輝度は省エネモード2(
図3)に復帰するようにしても良い。これにより、消費電力を低減できる。
【0048】
図5のように、閑散状態において、行先階入力装置の動作状態を推移させることにより、少数の利用者に対する利便性を確保しながら、行先階入力装置の消費電力を低減できる。また、輝度が高い通常モードによる表示時間が短縮されるので、表示部の寿命が向上する。
【0049】
なお、カード情報に行先階情報を含み、行先階が自動登録される場合、
図5における動作状態(c)(テンキーによる手動行先階入力)を経ることなく、(a),(b),(d),(e),(f)の順に動作状態が推移する。また、行先階入力装置510Sは、IDカードからの反射波を受信したら、あるいは、カードまたは利用者を認証したら、行先階入力装置510Sが設けられている階床では閑散状態が解消されていると判定して、表示部512の光度(輝度)を通常モードに設定し、以後、輝度を通常モードに維持しても良い。
【0050】
図6は、閑散時における行先階入力装置の動作状態の推移の一例を示す。なお、
図5の例と異なる点について説明する。
【0051】
図6の例においては、動作状態(b)以降において、表示部512の輝度が、
図5の例とは異なり、省エネモード1(
図4)に設定される。本例によっても、閑散状態において、少数の利用者に対する利便性を確保しながら、行先階入力装置の消費電力を低減できる。また、輝度が高い通常モードによる表示時間が短縮されるので、表示部の寿命が向上する。
【0052】
図5および
図6の例においては、閑散状態において、行先階入力装置に対して行先階登録のための操作がなされた時に表示部の輝度が待機状態よりも高くなるように変更されるが、上述の階床別の交通需要データや、行先階入力装置に対する所定の操作やかご床下の荷重検出装置の出力信号などに基づいて、階床毎に、一時的に閑散状態が緩和あるいは解消されていると判断したら、表示部の輝度が変更されるようにしても良い。また、階床ごとに、
図5および
図6の例のいずれかを選択しても良い。
【0053】
次に、行先階入力装置に対する詳細な制御処理について説明する。
【0054】
図7は、本実施形態における行先階入力装置の表示部に対する輝度設定制御処理を示すフローチャートである。
【0055】
まず、ステップS701で、全ての行先階入力装置に対して順に輝度設定処理を実行するため、行先階入力装置500〜5n0及び500S〜5n0Sの台数n、すなわちビルの階床数nの設定や、各階床に対する省エネモード適用要否に関する設定などの初期化処理が実行される。
【0056】
次に、ステップS702では、最初の行先階入力装置に関して、その行先階入力装置が、表示の輝度を下げるモード、すなわち省エネモードが適用される階床に設置されたものか否かを判定する。行先階入力装置が、表示の輝度を下げるモードが適用される階床に設置されたものではないと判定された場合(S702,NO)、ステップS706が実行される。このステップS706では、表示部に、最も輝度が高い通常モードによる表示が指令される。また、行先階入力装置が、表示の輝度を下げるモードが適用される階床に設置されたものであると判定された場合(S702,YES)、ステップS703が実行される。
【0057】
ステップS703では、輝度を下げる条件が成立しているか否かを判定する。このような条件は、例えば、前述した交通需要の特徴モードがM1,M2である時間帯であること、すなわち混雑状態以外の交通需要状況である時間帯であることである。また、本実施形態では、本条件として、エレベーターホールが外部から日射を受け、行先階入力装置の周囲が明るい時間帯であることも含む。輝度を下げる条件が成立していないと判定された場合(S703,NO)、ステップS704が実行される。
【0058】
ステップS704では、行先階入力装置が設置されている階床が不停止階であるか否かを判定する。不停止階であると判定された場合(S704,YES)、ステップS705が実行される。このステップS705では、表示部の輝度が最も低い省エネモード2(
図4)が設定されると共に、エスカレーターや階段などの他の昇降手段の利用案内を表示する。また、不停止階ではないと判定された場合(S704,NO)、前述のステップS706が実行される。
【0059】
ステップS703において、輝度を下げる条件が成立していると判定された場合(S703,YES)、次に、ステップS707が実行される。
【0060】
ステップS707では、行先階入力装置が設置されている階床が不停止階であるか否かが判定される。不停止階であると判定された場合(S707,YES)、ステップS708が実行される。このステップS708では、行先階入力装置が操作されているか否かが判定される。行先階入力装置が操作されたと判定された場合(S708,YES)、前述のステップS705が実行される。また、行先階入力装置が操作されていないと判定された場合(S708,NO)、ステップS709が実行される。さらに、ステップS707において、不停止階ではないと判定された場合(S707,NO)もステップS709が実行される。
【0061】
ステップS709では、所定時間以上、例えば1分以上、行先階入力装置が操作されていない状態が継続しているか否かを判定する。継続していないと判定された場合(S709,NO)、ステップS710が実行される。
【0062】
ステップS710では、輝度を下げるモードの条件が、行先階入力装置の周囲が明るい時間帯であるか否かが判定される。周囲が明るい時間帯であると判定された場合(S710,YES)、ステップS711が実行される。ステップS711では、表示部に、輝度が最も低い省エネモード2(
図4)による表示が指令される。また、周囲が明るい時間帯ではないと判定された場合(S710,NO)、ステップS712が実行される。ステップS712では、表示部に、通常モードよりも輝度を一段下げた省エネモード1(
図4)による表示が指令される。
【0063】
ステップS709において、1分以上行先階入力装置が操作されていないと判定された場合(S709,YES)、ステップS713が実行される。
【0064】
ステップS713では、閑散状態のため所定時間以上エレベーターの稼働無し状態が続いている状況に対応して、表示部に、輝度が最も低い省エネモード2(
図4)による表示が指令される。
【0065】
輝度が設定されるステップS705,S706,S711,S712およびS713のいずれかが実行されると、次に、ステップS714が実行される。ステップS714では、全ての行先階入力装置について上述した輝度設定処理が終了したか否かを判定する。終了していないと判定された場合(S714,NO)、ステップS702に戻り、ステップS702以降の処理が繰り返し実行される。
【0066】
これにより、行先階入力装置が設置される階床ごとに、その階床におけるエレベーターの利用者が無いか、あるいは少ない場合に、省エネモードによる表示を行うことができる。また、階床の状況(混雑状況,明るさ,不停止階)に応じて、表示部の輝度を設定できる。従って、利用者へのサービスを低下させずに、行先階入力装置の消費電力を低減できる。
【0067】
図8は、行先階入力装置に対する、セキュリティ性を向上した制御処理を示すフローチャートである。
【0068】
まず、ステップS801において、操作された行先階入力装置が出発基準階(例えば、エントランス階やロビー階など)に設置される行先階入力装置であるか否かが、群管理制御システムによって判定される。これにより、ビルへの入館者の有無について判定できる。操作された行先階装置が出発基準階の行先階入力装置であると判定された場合(S801,YES)、ステップS802が実行される。
【0069】
ステップS802では、出発基準階の行先階入力装置の操作を有効とすると共に、群管理制御システムの運行管理制御系101(
図1)に記録される入館人数の値が一人増加される。ステップS802実行後、処理は終了する。
【0070】
操作された行先階入力装置が出発基準階の行先階入力装置ではないと判定された場合(S801,NO)、ステップS803が実行される。この時、操作された行先階入力装置は、出発基準階以外の一般階に設置されているものであり、行先階入力装置を操作した利用者は、一般階からの退場者である。
【0071】
ステップS803では、行先階入力装置を操作した利用者が一般階からの最終退場者であるか否かが判定される。このような判定は、群管理制御システムによって、例えば、次のような手段でなされる。まず、各階床別に、出発基準階における行先階登録回数を計数することにより、各階の入場者数を計測し、かつ一般階における行先階入力装置の操作回数を計数することにより各階からの退場者数を計測する。退場者数が入場者数に等しければ、最終退場者であると判定される。従って、最終退場者とは、就業時間後の最終退勤者だけでなく、同じ階における残留者が零になる場合の退場者を含む。
【0072】
なお、最終退場者の判定は、IDカードなどに記録され行先階入力装置の認識部によって読み取られる個人識別情報に基づき、各利用者について、入場および退場に関する履歴を記録することによっても可能である。なお、このような履歴は、本実施形態における群管理制御システムによって作成しても良いし、他の一般的な個人認証システムによって作成しても良い。
【0073】
ステップS803において、最終退場者であると判定された場合(S803,YES)、ステップS804が実行される。
【0074】
ステップS804では、利用者が乗りかごに乗車して戸閉完了した後、操作された行先階入力装置の表示部の輝度を、操作中の輝度(通常モードあるいは省エネモード1(
図4))から輝度が最も低い省エネモード2(
図4)に変更すると共に、以後の操作を無効にする。なお、この時、最終退場者による操作の後になされる操作は、正規の利用者による操作ではないとみなしている。ステップS804実行後、処理は終了する。
【0075】
ステップS803において、最終退場者ではないと判定される場合(S803,NO)、ステップS805が実行される。ここで、最終退場者ではない場合には、最終退場者ではないが退場者である場合(退場者数<入場者数)と、最終退場者以降に一般階の行先階登録装置が操作される場合(退場者数>入場者数)とが含まれるが、
図8においては、後者の場合であるとする。具体的には、一般階においてビル内の保守・点検調査のため管理人や警備員等が非常階段から一般階へ入場した場合や、出発基準階に設置の行先階入力装置のメンテナンス中に入場した場合等が相当する。
【0076】
この場合は、既にステップS803およびステップS804が実行されて、行先階入力装置の入力操作が無効となっている。そこで、ステップS805では、一般階の行先階入力装置に対して、所定の暗号操作がなされたか否かが判定される。ここで、所定の暗号操作とは、例えば、タッチパネルにおけるテンキーの異なる二個のボタンの同時押し、タッチパネルにおける異なる二個の記号ボタン(例えば、「*」および「−」)の連続入力、並びにこれらの操作とスマートフォン等の情報発信機の操作との組合せ等がある。
【0077】
ステップS805において、所定の暗号操作がなされていないと判定された場合(S805,NO)、行先階入力装置の操作無効状態は解除されずに、処理は終了する。また、所定の暗号操作がなされたと判定された場合(S805,YES)、ステップS806が実行される。
【0078】
ステップS806では、利用者が乗りかごに乗車して戸閉完了するまで、一時的に行先階入力装置の操作の無効状態が解除されると共に、表示部の輝度が、省エネモード2から省エネモード1に変更される。
【0079】
図8に示すような処理動作により、セキュリティを確保しながら行先階入力装置の消費電力を低減できる。
【0080】
図8の処理動作においては、最終退場者が退場した以降の一般階における行先階入力装置の操作を無効としているが、これに限らず、セキュリティを確保するために所定の操作を無効にしても良い。例えば、出社日でかつ出社時間の2時間前等といった、入館者はいるが退場者はいないような所定時刻である場合に、出発基準階以外の一般階における行先階入力装置の操作を無効としても良い。
【0081】
なお、本発明は前述した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、前述した実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置き換えをすることが可能である。
【0082】
例えば、出発基準階(エントランス階)が複数設けられる場合にも、上記実施形態は適用できる。
【0083】
また、特徴モードM1,M2に対して、それぞれ省エネモード2,1を設定しても良い。 さらに、特徴モードM2から特徴モードM1へ移行する場合に、省エネモード1から省エネモード2へ変更しても良い。
【0084】
また、まず省エネモード1が設定され、その後、行先階入力装置が所定時間操作されない時に、省エネモード2へ変更しても良い。